説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、内燃機関の制御装置に関し、ターボチャージャの運転状況によらず、ウェイストゲートバルブの動作状態の判断が可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内燃機関10の1サイクルにおいて、ツインエントリ型のターボチャージャに接続された片方の排気通路18には、#2及び#3気筒の爆発行程により360°CAごとに周期をもつ排気脈動が生じる(図2(a)細線)。排気通路18の内部圧力は、ウェイストゲートバルブ30の開弁時には360°CAごとにピーク特性を示すのに対し、閉弁時には#2及び#3気筒の爆発行程による影響を受けるため、180°CAごとにピーク特性を示す(図2(a)太線)。これらのピーク特性を排気通路16に配置した圧力センサ32により取得し、ウェイストゲートバルブ30の動作状態の判断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、この発明は、内燃機関の制御装置に関し、より詳細には、複数のタービン入口を有するターボチャージャ付き内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、タービンスクロール部を2つの排気通路で構成し、このうちの一部の排気通路に配置された制御弁の故障を検出する過給機付き内燃機関が開示されている。この制御弁は、2つの排気通路を連通・遮断することを目的として設けられ、マップの開閉領域に対応して制御されるが、故障をしてしまうと、ターボチャージャに所望量の排気ガス供給することができない。例えば、マップは閉領域であるにも拘らず制御弁が開いた状態であると、正常時に比べて過給圧の上昇度合いが低下する。したがって、この過給圧の低下を、予め定めた設定過給圧との比較で捉える。こうすることで、制御弁の故障を検知することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−328765号公報
【特許文献2】特開2006−207509号公報
【特許文献3】特開2006−348894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボチャージャ付き内燃機関の排気通路には、過給過剰となることを防止するために、排気の一部にタービンをバイパスさせるためのウェイストゲートバルブが設けられているものがある。このウェイストゲートバルブは、開閉されることにより、背圧の低減による燃費の向上や、バイパスによる排気温度の上昇を図ることが可能になる。このため、ウェイストゲートバルブについても、特許文献1の制御弁と同様、動作状態を判断し、故障検知できることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1の制御弁は、過給圧の上昇度合いの低下を捉えて故障を検知している。これはつまり、過給圧が上昇するような領域でしか故障が検知できないことを示している。したがって、特許文献1の制御弁では、ターボチャージャのあらゆる運転状況において、ウェイストゲートバルブの動作状態の判断ができるとは限らなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ターボチャージャの運転状況によらず、ウェイストゲートバルブの動作状態の判断が可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
複数の入口を備えたタービンを有するターボチャージャと、
前記ターボチャージャの上流に配置され、前記複数の入口と内燃機関の気筒群とを連通する複数の上流側排気通路と、
前記ターボチャージャの下流に配置された下流側排気通路と、
前記タービンを通らずに前記複数の上流側排気通路と前記下流側排気通路とを接続する複数のバイパス通路と、
前記複数のバイパス通路を開閉制御可能なウェイストゲートバルブと、
前記複数の上流側排気通路のうちの少なくとも1つの排気通路内及び/又は前記下流側排気通路内における排気圧力を取得する排気圧力取得手段と、
前記排気圧力に基づいて前記ウェイストゲートバルブの動作状態を判断する動作状態判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記ウェイストゲートバルブの開閉指令情報を取得する指令情報取得手段と、
前記排気圧力の波形情報と前記開閉指令情報とに基づいて、前記ウェイストゲートバルブの故障を診断する故障診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記波形情報は、前記少なくとも1つの排気通路内における排気脈動の周波数であり、
前記故障診断手段は、前記排気脈動の周波数と、前記開閉指令情報に対応する理論上の周波数とを比較する周波数比較手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記周波数比較手段は、前記内燃機関の1サイクル当りの排気脈動のピーク数と理論上の排気脈動のピーク数とを比較するピーク数比較手段を備え、
前記理論上の排気脈動のピーク数は、前記ウェイストゲートバルブの開弁時では前記気筒群に含まれる全気筒数に対応し、前記ウェイストゲートバルブの閉弁時では前記気筒群に含まれる全気筒数を前記複数の入口の数で除した数に対応することを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第2の発明において、
前記波形情報は前記下流側排気通路における排気脈動の振幅であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、ターボチャージャの上流側の複数の排気通路のうちの少なくとも1つの排気通路内及び/又はターボチャージャの下流側の排気通路内における排気圧力に基づいてウェイストゲートバルブの動作状態を判断することができる。排気圧力は、ターボチャージャの運転状況に関係なく取得することができる。したがって、ターボチャージャの運転状況によらず、ウェイストゲートバルブの動作状態の判断ができる。
【0013】
第2の発明によれば、ウェイストゲートバルブの開閉指令情報を取得し、排気圧力の波形情報と、開閉指令情報とからウェイストゲートバルブの故障診断をすることができる。開閉指令情報は、排気圧力の波形情報と同様、ターボチャージャの運転状況に関係なく取得することができる。したがって、ターボチャージャの運転状況によらず、ウェイストゲートバルブの故障診断ができる。
【0014】
第3の発明によれば、ターボチャージャ上流における排気脈動の周波数と、開閉指令情報に対応する理論上の周波数とを比較することができる。排気脈動の周波数は、ウェイストゲートバルブの実際の動作を示す指標であり、理論上の周波数は、ウェイストゲートバルブの理論上の動作を示す指標である。このため、両指標を比較することにより、ウェイストゲートバルブの故障診断を確実に行うことができる。
【0015】
理論上の排気脈動のピーク数は、ウェイストゲートバルブの開弁時には内燃機関の気筒群に含まれる全気筒数に対応し、閉弁時にはこの気筒群に含まれる全気筒数をタービンの入口数で割った数に対応する。このため、第4の発明によれば、両ピーク数を比較することにより、ウェイストゲートバルブの故障診断を確実に行うことができる。
【0016】
第5の発明によれば、ターボチャージャ下流における排気脈動の振幅に基づいてウェイストゲートバルブの故障診断を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0018】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成の説明]
先ず、図1を参照して、本実施の形態1に係るシステム構成について説明する。実施形態1のシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、例えば車両の動力源として用いられる。内燃機関10は、1番〜4番の気筒を有する直列4気筒型の内燃機関であり、各気筒の番号を#1〜#4と表記するものとする。内燃機関10においては、クランクシャフトが2回転(=720°CA)する間に#1→#2→#4→#3の順で爆発行程が行われるものとする。
【0019】
内燃機関10の#1及び#4気筒の排気ポートは、共通する排気マニホールド12に連通している。また、内燃機関10の#2及び#3気筒の排気ポートは、共通する排気マニホールド14に連通している。これら2つの排気マニホールド12、14は、2つの並列に配置された排気通路16、18を経由してターボチャージャ20の2つの排気入口に接続されている。ターボチャージャ20は、ツインエントリ型のターボチャージャであり、2つの排気入口を有するタービンを備えている。ターボチャージャ20の下流出口には、排気通路22が接続されている。排気通路22には、排気を浄化するための触媒28が配置されている。
【0020】
排気通路16、18には、ターボチャージャ20を避けて排気を排気通路22へ流すためのバイパス通路24、26がそれぞれ配置されている。また、バイパス通路24、26には、開閉制御が可能なウェイストゲートバルブ30が配置されている。ウェイストゲートバルブ30は、開閉制御されることにより、排気通路16、18と、排気通路22とを同時に連通又は遮断するように構成されている。ウェイストゲートバルブ30は、ターボチャージャ20への排気の過剰過給を防止することや、始動時における触媒28の早期暖機を達成することを目的として設けられるものである。
【0021】
ターボチャージャ20の上流の排気通路18には、圧力センサ32が配置されている。圧力センサ32は、排気通路18の内部圧力に応じて出力を発するように構成されている。尚、圧力センサ32は、ターボチャージャ20の上流の排気通路16に配置されていても良い。
【0022】
本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50には、上述したセンサ、アクチュエータ等が接続されている。ECU50は、これらのセンサの出力等に基づいて、ウェイストゲートバルブ30の開度等を制御するよう構成されている。
【0023】
図2は、タービン上流における排気脈動を説明するための図である。図2の横軸は、クランク角(CA)を示し、720°CAが内燃機関10の1サイクルに対応するものとする。また、図2の(a)で示す2つの波形は#2、#3気筒由来の排気脈動、すなわち圧力センサ32により取得される排気通路18の内部圧力の変化を示すものとする。また、図2(b)で示す2つの波形は#1、#4気筒由来の排気脈動は、排気通路16の内部圧力の変化を示すものとする。また、図2(a)又は(b)において、細線で示す波形はウェイストゲートバルブ(W/G)を閉弁したときの圧力変化を、一方、太線で示す波形は開弁したときの圧力変化をそれぞれ示すものとする。
【0024】
内燃機関10の1サイクルにおいては、#1〜#4気筒の爆発行程により生じた排気が排気通路16、18を流れる。すなわち、排気通路16には、#1及び#4気筒の爆発行程により360°CAごとに周期をもつ排気脈動が生じる。同様に、排気通路18には、#2及び#3気筒の爆発行程により360°CAごとに周期をもつ排気脈動が生じる。
【0025】
ウェイストゲートバルブ30が閉じている場合には、排気通路16、18は独立している。このため、360°CAごとに周期をもつ排気脈動が排気通路16、18にそれぞれ生じる。したがって、図2(a)の細線で示すように、圧力センサ32により取得される排気通路18の内部圧力は、360°CAごとのピーク特性を示す。また、図2(b)の細線で示すように、排気通路16の内部圧力は、360°CAごとにピーク特性を示す。
【0026】
一方、ウェイストゲートバルブ30が開いている場合には、排気通路16がバイパス通路24、26を介して排気通路18と連通される。このため、#1、#4気筒の爆発行程により生じた排気がバイパス通路24、26を経由して排気通路18を流れる排気に影響を及ぼす。したがって、図2(a)の太線で示すように、圧力センサ32により取得される排気通路18の内部圧力は、180°CAごとのピーク特性を示すことになる。同様に、#2、#3気筒の爆発行程により生じた排気がバイパス通路26、24を経由して排気通路16を流れる排気脈動に影響を及ぼす。したがって、図2(b)の太線で示すように、排気通路16の内部圧力は、180°CAごとのピーク特性を示すことになる。
【0027】
このように、ウェイストゲートバルブ30の開弁時と閉弁時とで、排気通路16、18の内部圧力のピーク特性が変化する。これにより、ウェイストゲートバルブ30の動作状態の判断が可能となる。また、ウェイストゲートバルブ30開弁時では、内部圧力の波の数(ピーク数)が気筒数と同じとなるのに対して、閉弁時では、その半分に変化する。そこで、実施形態1のシステムでは、圧力センサ32による取得波形を内部圧力のピーク特性として用い、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うこととしている。
【0028】
ウェイストゲートバルブ30の故障としては、閉固着、開固着が挙げられる。例えば、ウェイストゲートバルブ30がECU50によって開弁制御されているにも拘らず、圧力センサ32による取得波形が閉弁時の波形であれば、閉固着であると判断できる。また、例えば、ウェイストゲートバルブ30が閉弁制御されているにも拘らず、圧力センサ32による取得波形が開弁時の波形であれば、開固着と判断できる。
【0029】
圧力センサ32による取得波形は、そのまま利用することでウェイストゲートバルブ30の動作状態の判断が可能であるが、故障診断をする場合には、取得波形からピークの数を導き出して利用することが好ましい。ピークの数を利用した場合、故障診断は、例えばこのピーク数と、開閉情報に基づいて算出される理論上のピーク数とを比較することで行うことができる。
【0030】
理論上のピーク数は、ウェイストゲートバルブ30の開弁時と、閉弁時とで異なる値を設定する。開弁時における理論上のピーク数Nopenは、気筒群に含まれる全気筒数に対応する値である。一方、閉弁時における理論上のピーク数Ncloseは、気筒群に含まれる全気筒数を、タービンの入口数で割った数に対応する値である。本実施形態では、1つの気筒群を#1〜#4気筒が構成しており、また、タービンの入口数は2である。このため、例えば1サイクル当りで考えれば、Nopenは4、Ncloseは2とすることができる。尚、Nopen、Ncloseは、波形のサンプリング時間に対応させて変更することが可能である。これらNopen及びNcloseの値は、予めECU50に記憶されている。
【0031】
このように、実施形態1のシステムによれば、圧力センサ32からの取得派形を利用して、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うことができる。言い換えれば、圧力センサ32を用いるのみでウェイストゲートバルブ30の故障診断ができる。したがって、実施形態1のシステムによれば、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を簡易に行うことができる。また、従来故障診断のために必要とされたリフトセンサや排気温度センサが不要となり、ウェイストゲート装置の軽量化やコストダウンを図ることも可能となる。
【0032】
また、実施形態1のシステムによれば、ターボチャージャ20の作動状態と関係なく、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うことができる。すなわち、ターボチャージャ20に対する過給要求の有無と関係なく、幅広い運転領域においてウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うことができる。
【0033】
[実施の形態1における具体的処理]
図3は、本実施の形態においてECU50が実行するウェイストゲートバルブ30の故障診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、例えば、内燃機関10の1サイクル毎に繰り返し行われるものとする。
【0034】
先ず、ステップ100では、ウェイストゲートバルブ30の開閉情報が取得される(ステップ100)。上述したように、ウェイストゲートバルブ30は、開閉制御されている。具体的には、ウェイストゲートバルブ30は、ECU50によって、図3に示すルーチンとは別のルーチンにより開閉制御されている。このため、ECU50には、この別のルーチンからの開閉情報が取得される。
【0035】
続いて、ステップ110では、取得波形からピークの数が取得される。上述のとおり、圧力センサ32によって、排気通路18内の圧力に応じた出力波形がECU50に入力される。このため、ECU50には、この波形に基づいてピーク数が取得される。
【0036】
続いて、ステップ120では、ウェイストゲートバルブ30の制御指令値が定常であるか否かが判定される。上述したように、ウェイストゲートバルブ30は、図3に示すルーチンとは別のルーチンに基づいて開閉制御されている。また、この開閉制御の指令情報は、ステップ100でECU50に取得されている。このため、本ステップでは、開閉指令の値が定常であるか否かが判定される。この結果、定常であると判定された場合は、ステップ130へ進み、定常ではないと判定された場合には、ステップ100に戻る。
【0037】
ステップ130では、ウェイストゲートバルブ30の制御指令値が開弁状態であるか否かが判定される。そして、開弁状態であると判定された場合には、ステップ140で、開弁状態に対応した理論上のピーク数NopenがECU50に読み込まれる。一方、開弁状態ではないと判定された場合には、ステップ150で閉弁状態に対応した理論上のピーク数NcloseがECU50に読み込まれる。
【0038】
続いて、ステップ160では、ステップ110で取得されたピーク数と、ステップ140又は150により読み込まれた理論上のピーク数とが比較される。この結果、両者が一致した場合にはステップ170へ進み、ウェイストゲートバルブは故障でないと診断される。一方、一致しない場合には、ステップ180へと進み、ウェイストゲートバルブの故障が診断される。
【0039】
以上、図3の故障診断ルーチンによれば、排気通路18内の圧力に応じた出力波形のピーク数と理論上のピーク数とを比較して、ウェイストゲートバルブ30が故障であるかを正確に診断することができる。
【0040】
尚、実施形態1においては、直列4気筒の内燃機関10を用いたが、内燃機関10の気筒数や気筒配列はこれに限定しなくてもよい。上述したように、ウェイストゲートバルブ30の開弁時における理論上のピーク数Nopenは、気筒群を構成する全気筒数に対応する値である。また、閉弁時における理論上のピーク数Ncloseは、気筒群当たりの全気筒数をターボチャージャ20の入口数で割った数に対応する値である。このため、例えば直列6気筒の内燃機関で入口数が2であれば、気筒群当たり6気筒、2入口となるため、Nopenは6、Ncloseは3とすることができる。さらに、例えば、V型8気筒のツインターボの内燃機関で、ターボチャージャ当りの入口数が2であれば、気筒群当たり4気筒、2入口となるため、Nopenは4、Ncloseは2とすることができる。尚、本変形例は、後述する実施形態2においても同様である。
【0041】
また、実施形態1においては、排気通路18にのみ圧力センサ32を配置してウェイストゲートバルブ30の故障診断を行ったが、排気通路16にも圧力センサを配置してもよい。こうすることで、2つの圧力センサから取得される圧力の情報に基づいて、高精度な故障診断が実現できる。尚、本変形例は、後述する実施形態2においても同様である。
【0042】
また、実施形態1においては、ウェイストゲートバルブ30は、バイパス通路24、26に1つだけ配置され、開閉制御されることにより、排気通路16、18と、排気通路22とを同時に連通又は遮断したが、ウェイストゲートバルブは、バイパス通路24、26毎に配置されていてもよい。この場合には、それぞれのウェイストゲートバルブがECU50によって同時に開閉制御される。このため、2つのウェイストゲートバルブと圧力センサ32の配置との組み合わせにより、ウェイストゲートバルブの片方、双方の故障診断が可能となる。尚、本変形例は、後述する実施形態2においても同様である。
【0043】
尚、上述した実施形態1においては、排気マニホールド12、14及び排気通路16、18が前記第1の発明における「複数の上流側排気通路」に、排気通路22が前記第1の発明における「下流側排気通路」に、それぞれ相当する。また、ECU50が、上記ステップ110の処理を実行することにより前記第1の発明における「排気圧力取得手段」が、上記ステップ130〜180の一連の処理を実行することにより前記第1の発明における「動作状態判断手段」が、それぞれ実現されている。
【0044】
尚、上述した実施形態1においては、ECU50が、上記ステップ100の処理を実行することにより前記第2の発明における「指令情報取得手段」が、上記ステップ130〜180の一連の処理を実行することにより前記第2の発明における「故障診断手段」が、それぞれ実現されている。
【0045】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、上記ステップ160の処理を実行することにより前記第3の発明における「周波数比較手段」が実現されている。
【0046】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、上記ステップ160の処理を実行することにより前記第4の発明における「ピーク数比較手段」が実現されている。
【0047】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成の説明]
実施形態2のシステムは、実施形態1のシステムで用いた圧力センサ32の代わりに、圧力センサ34を用いたことを特徴とする。このため、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略又は簡略する。
【0048】
排気通路16、18には、ターボチャージャ20を避けて排気を排気通路22へ流すためのバイパス通路24、26がそれぞれ配置されている。また、バイパス通路24、26には、開閉制御が可能なウェイストゲートバルブ30が配置されている。
【0049】
ターボチャージャ20の下流出口には、排気通路22が接続されている。排気通路22には、排気を浄化するための触媒28が配置されている。触媒28とターボチャージャ20との間には、圧力センサ34が配置されている。圧力センサ34は、排気通路22の内部の圧力に応じて出力を発するように構成されている。
【0050】
図5は、タービン下流における排気脈動を説明するための図である。図5の横軸は、図2同様、クランク角(CA)を示すものとする。図5に示す2つの波形は、排気通路22内の排気脈動、すなわち圧力センサ34により取得される排気通路22の内部圧力の変化を示すものとする。なお、図5において、細線で示す波形はウェイストゲートバルブ(W/G)を閉弁したときの圧力変化を、一方、太線で示す波形は開弁したときの圧力変化をそれぞれ示すものとする。
【0051】
ウェイストゲートバルブ30が閉じている場合には、#1〜#4気筒の爆発行程で発生した排気が180°CAごと排気通路22に流れてくる。この排気は、ターボチャージャ20を経由して排気通路22を流れる際に減衰される。したがって、図5の細線で示すように、圧力センサ34により取得される排気通路22の内部圧力は、180°CAごとに現れるピーク強度が弱い。
【0052】
一方、ウェイストゲートバルブ30の開いている場合には、排気通路16、18がバイパス通路24、26を介して排気通路22と連通される。このため、ターボチャージャ20で減衰されない排気脈動が、直接、排気通路22に流入する。したがって、図5の太線で示すように、圧力センサ34により取得される排気通路22の内部圧力のピーク強度は、ウェイストゲートバルブ30が閉じている場合に比べて強い。
【0053】
このように、ウェイストゲートバルブ30の開弁時と閉弁時とで、排気通路22の内部圧力のピーク強度が変化する。これにより、ウェイストゲートバルブ30の動作状態の判断が可能となる。本実施形態2のシステムでは、圧力センサ34による取得波形のピーク強度を求め、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うこととしている。
【0054】
ウェイストゲートバルブ30の故障としては、閉固着、開固着が挙げられる。例えば、ウェイストゲートバルブ30がECU50によって開弁制御されているにも拘らず、圧力センサ34による取得波形のピーク強度が閉弁時のピーク強度であれば、閉固着であると判断できる。また、例えば、ウェイストゲートバルブ30が閉弁制御されているにも拘らず、圧力センサ34による取得波形のピーク強度が開弁時のピーク強度であれば、開固着であると判断できる。
【0055】
故障診断は、例えばサンプリング回数あたりのピーク強度の平均値Iaverageと、開閉情報に基づいて算出される理論上のピーク強度とを比較することで行うことができる。理論上のピーク強度は、ウェイストゲートバルブ30の開弁時と、閉弁時とで異なる値を設定する。開弁時における理論上のピーク強度Iopen、閉弁時における理論上のピーク強度Icloseは、内燃機関10の負荷に対応させて別途実験等により求めておく。また、ピーク強度の平均値Iaverageと理論上のピーク強度との比較は、両者の差の絶対値と、予め設定した閾値とを比較することにより行われる。これらIopen、Iclose、閾値は、予めECU50に記憶されている。
【0056】
このように、実施形態2のシステムによれば、圧力センサ34からの取得派形を利用して、ウェイストゲートバルブ30の故障診断を行うことができる。したがって、実施形態2のシステムによれば、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
[実施の形態2における具体的処理]
図6は、本実施の形態においてECU50が実行するウェイストゲートバルブ30の故障診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、例えば、内燃機関10の4サイクル毎に繰り返し行われるものとする。
【0058】
先ず、ステップ100でウェイストゲートバルブ30の開閉指令情報が取得された後、ステップ200では、排気脈動のピーク強度の平均値Iaverageが取得される。上述のとおり、圧力センサ34によって、排気通路22の内部圧力に応じた出力波形がECU50に入力される。このため、ECU50には、この波形に基づいて、排気脈動のピーク強度の平均値Iaverageが取得される。
【0059】
続いて、ステップ120では、ウェイストゲートバルブ30の制御指令値が定常であるか否かが判定される。この結果、定常であると判定された場合は、ステップ130へ進み、定常ではないと判定された場合には、ステップ100に戻る。
【0060】
ステップ130では、ウェイストゲートバルブ30の制御指令値が開弁状態であるか否かが判定される。そして、開弁状態であると判定された場合には、ステップ210で、開弁状態に対応した理論上のピーク強度IopenがECU50に読み込まれる。一方、開弁状態ではないと判定された場合には、ステップ220で閉弁状態に対応した理論上のピーク強度IcloseがECU50に読み込まれる。
【0061】
続いて、ステップ230では、ステップ200で取得されたピーク強度の平均値Iaverageと、ステップ210又は220により読み込まれた理論上のピーク強度とが比較される。この結果、両者の差の絶対値が閾値よりも小さい場合には、ステップ240へ進みウェイストゲートバルブは故障でないと診断される。一方、一致しない場合には、ステップ250へと進み、ウェイストゲートバルブの故障が診断される。
【0062】
以上、図6の故障診断ルーチンによれば、排気通路22の内部圧力に応じた出力波形のピーク強度と理論上のピーク強度とを比較して、ウェイストゲートバルブ30が故障であるかを正確に診断することができる。
【0063】
尚、本実施形態2においては、圧力センサ34を排気通路22に配置し、圧力センサ34から取得される排気脈動のピーク強度からウェイストゲートバルブ30の故障診断を行ったが、実施の形態1と同様に、圧力センサ32を排気通路18に配置し、圧力センサ32から取得される排気脈動のピーク数と組み合わせてウェイストゲートバルブ30の故障診断を行ってもよい。こうすることで、より高精度な故障診断が実現できる。
【0064】
尚、上述した実施形態2においては、ECU50が上記ステップ230の処理を実行することにより前記第5の発明における「振幅比較手段」が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】タービン上流における排気脈動を説明するための図である。
【図3】実施の形態1においてECU50が実行するウェイストゲートバルブ30の故障診断ルーチンのフローチャートである。
【図4】実施の形態2のシステム構成を説明するための図である。
【図5】タービン下流における排気脈動を説明するための図である。
【図6】実施の形態2においてECU50が実行するウェイストゲートバルブ30の故障診断ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 内燃機関
12、14 排気マニホールド
16、18 排気通路
20 ターボチャージャ
22 排気通路
24、26 バイパス通路
30 ウェイストゲートバルブ
32、34 圧力センサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入口を備えたタービンを有するターボチャージャと、
前記ターボチャージャの上流に配置され、前記複数の入口と内燃機関の気筒群とを連通する複数の上流側排気通路と、
前記ターボチャージャの下流に配置された下流側排気通路と、
前記タービンを通らずに前記複数の上流側排気通路と前記下流側排気通路とを接続する複数のバイパス通路と、
前記複数のバイパス通路を開閉制御可能なウェイストゲートバルブと、
前記複数の上流側排気通路のうちの少なくとも1つの排気通路内及び/又は前記下流側排気通路内における排気圧力を取得する排気圧力取得手段と、
前記排気圧力に基づいて前記ウェイストゲートバルブの動作状態を判断する動作状態判断手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ウェイストゲートバルブの開閉指令情報を取得する指令情報取得手段と、
前記排気圧力の波形情報と前記開閉指令情報とに基づいて、前記ウェイストゲートバルブの故障を診断する故障診断手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記波形情報は、前記少なくとも1つの排気通路内における排気脈動の周波数であり、
前記故障診断手段は、前記排気脈動の周波数と、前記開閉指令情報に対応する理論上の周波数とを比較する周波数比較手段を備えることを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記周波数比較手段は、前記内燃機関の1サイクル当りの排気脈動のピーク数と理論上の排気脈動のピーク数とを比較するピーク数比較手段を備え、
前記理論上の排気脈動のピーク数は、前記ウェイストゲートバルブの開弁時では前記気筒群に含まれる全気筒数に対応し、前記ウェイストゲートバルブの閉弁時では前記気筒群に含まれる全気筒数を前記複数の入口の数で除した数に対応することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記波形情報は、前記下流側排気通路における排気脈動の振幅であることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106787(P2010−106787A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280911(P2008−280911)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】