説明

内燃機関の制御装置

【課題】機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】この装置は、車載内燃機関と機関駆動式のオイルポンプとオイルを機関各部に供給するオイル供給経路とを有する機関システムに適用される。このシステムは、オイル供給経路内のオイル圧力を低圧に調節する第1作動態様と高圧に調節する第2作動態様とを含む作動範囲内において作動状態が変更される圧力調節装置を備える。機関始動開始後の所定期間にわたり第2作動態様で圧力調節装置の作動を制御するオイル圧力制御を実行する。圧力調節装置を第2作動態様に変更することのできない異常が発生したと判定されたときに(S302:YES)、自動停止制御を通じた内燃機関の運転停止の実行を禁止する(S303の処理をジャンプする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に供給されるオイルの圧力を調節するオイル圧力制御を実行する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、内燃機関にはオイルが貯留されるオイルパンと、機関出力軸によって駆動されてオイルパン内のオイルを圧送するオイルポンプとが設けられている。そして、このオイルポンプにより圧送されたオイルは、潤滑などを目的として、内燃機関の内部に形成されたオイル供給経路を介して同内燃機関の各部に供給されるようになっている。
【0003】
ここで、内燃機関の運転に際して必要になるオイルの供給量は機関運転状態に応じて異なる。そのため、全ての機関運転領域において十分なオイル供給量が確保されるようにオイルポンプの圧送性能を設定すると、必要なオイルの量が少ない機関運転領域においてオイルポンプの作動負荷が不要に大きくなってしまう。
【0004】
そのため従来、オイル供給経路内のオイル圧力を調節するための圧力調節装置を設けるとともに、同装置の作動制御(オイル圧力制御)を通じて機関各部に供給されるオイルの圧力を機関運転状態に応じて可変設定することが提案されている。こうしたオイル圧力制御を実行することにより、オイルポンプの作動負荷がそのときどきの機関運転状態に見合うように調節されるために、同オイルポンプの作動負荷の低減、ひいては内燃機関の燃費性能の向上が図られるようになる。
【0005】
そうした圧力調節装置としては特許文献1に記載の装置などが知られている。この装置は、上記オイル供給経路内のオイルの一部をオイルパンに戻すためのリリーフ弁を備えている。そして、このリリーフ弁の設定圧力(詳しくは、同リリーフ弁が開弁するようになるオイル圧力)を内燃機関の運転状態に応じて変更することにより、オイル供給経路内からオイルパンに戻されるオイルの量が調節されて、同オイル供給経路内のオイルの圧力、ひいては機関各部に供給されるオイルの圧力が調節される。
【0006】
また特許文献1に記載の圧力調節装置では、内燃機関の始動開始直後の所定期間にわたりオイル供給経路内のオイル圧力が高圧になるように、オイル圧力制御が実行される。これは次のような理由による。内燃機関の運転停止時においてはオイルポンプの運転も停止されるために、オイル供給経路内のオイルが徐々に流出して減少するようになる。そのため、内燃機関の始動開始時においてはオイル供給経路内のオイルが少なくなっている可能性が高いと云え、その直後におけるオイルポンプからのオイル圧送によってオイル供給経路内に十分な量のオイルが満たされるまでの期間において内燃機関の各部へのオイル供給量の不足を招き易いと云える。そして機関各部へのオイル供給量が不足すると、これが騒音の発生や摩耗の早期進行などといった種々の不都合の発生を招くこととなってしまう。
【0007】
特許文献1に記載の装置では、内燃機関の始動開始直後においてオイル供給経路内のオイル圧力が高圧に設定されるために、リリーフ弁を介してオイルタンクに戻されるオイルが少なくなり、その分だけオイルポンプからオイル供給経路内に供給されるオイルの量が多くなる。これにより、速やかにオイル供給経路内が十分な量のオイルによって満たされるようになるため、上記不都合の発生が抑えられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−138831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、例えば特許文献1に記載の装置においてリリーフ弁の設定圧力を変更するシステムが故障して同設定圧力が低い圧力から変化しなくなるなど、オイル供給経路内のオイル圧力を高い圧力に変更することができなくなることがある。この場合には、内燃機関の始動開始直後においてオイル供給経路内が十分な量のオイルで満たされるようになるまでに要する時間が長くなってしまうために、上述した機関各部へのオイル供給量の不足による不都合を招くおそれがある。このように、オイル圧力制御が実行される装置においてオイル供給経路内のオイル圧力を高い圧力に変更することができなくなった場合には、機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を招く可能性が高くなる。これは内燃機関の信頼性や耐久性を低下させる一因となるために好ましくない。
【0010】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明では、その機関システムにおいて、オイルパンに貯留されているオイルがオイルポンプによって圧送されるとともにオイル供給経路を介して車載内燃機関の各部に供給される。このオイルポンプとしては、内燃機関の出力軸により駆動される機関駆動式のものが採用される。また、圧力調節装置の作動制御(オイル圧力制御)が、オイル供給経路内のオイル圧力が比較的低圧になる第1作動態様と高圧になる第2作動態様とを含む作動範囲内において実行される。このオイル圧力制御では、機関始動開始後の所定期間にわたって圧力調節装置の作動状態が第2作動態様に設定されて、このときオイル供給経路内の圧力が比較的高い圧力に調節される。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、例えば圧力調節装置の作動状態が第1作動態様から変化しなくなるなどその作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常が発生した場合、言い換えれば機関始動後におけるオイル供給経路内へのオイルの充填速度が緩慢になるために機関始動直後における騒音の発生や摩耗の早期進行が懸念される場合において、内燃機関の運転停止の実行条件が変更されて同内燃機関の運転停止の実行が制限される。そのため、内燃機関の運転が停止される回数を抑えることによって騒音や摩耗の早期進行の原因となる機関始動の実行回数を少なく抑えたりすることにより、オイル供給経路内のオイルが過度に少ない状態で内燃機関が運転される期間を短くすることができ、その分だけ機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【0013】
近年、交差点における車両の停止時において駆動源としての内燃機関の運転を一時的に停止させるなど、車載内燃機関の運転を一時的に停止させる制御(自動停止制御)を実行することが提案され、実用されている。こうした自動停止制御を実行することにより、車両運転中における内燃機関の運転時間が短縮されるようになるため、車両の燃費性能の向上が図られるようになる。ただし、こうした自動停止制御が実行される装置では、同制御が実行されない装置と比較して、内燃機関が始動される頻度が高いためにオイル供給経路内のオイル量が少ない状態で機関始動が実行される回数が多くなることから、上述した機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行などの不都合を招く可能性が高くなると云える。
【0014】
この点、請求項2に記載の発明では、そうした自動停止制御が実行される装置において、上述したように圧力調節装置の作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常が発生したときに、自動停止制御による内燃機関の運転停止の実行が制限される。そのため、このとき機関始動の実行回数を少なく抑えたり、機関停止の実行期間に上限を設定することによって機関停止時に伴うオイル供給経路内のオイルの過度の減少を抑えたりすることができるようになり、機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができるようになる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、機関始動直後における騒音の発生や摩耗の早期進行が懸念される場合において自動停止制御による内燃機関の運転停止が禁止されるために、車両の運転機能は維持しつつ、同車両の燃費性能の向上を目的として実行される機関運転の停止を禁止することができる。そのため、騒音や摩耗の早期進行の原因となる機関始動の実行回数を少なく抑えることができ、その分だけ機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【0016】
請求項4によるように、オイル圧力制御は、圧力調節装置の作動状態を第1作動態様および第2作動態様のいずれか一方に選択的に切り替えるといったように実行することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、圧力センサによってオイル供給経路内のオイル圧力が検出される。そうした装置において、圧力調節装置の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力以上であり且つ同作動態様が第2作動態様であるときのオイル圧力未満である判定圧力よりも前記圧力調節装置が第2作動態様に制御されているときに上記圧力センサによって検出されたオイル圧力が低いことをもって、上記異常、すなわち圧力調節装置を第2作動態様に変更することができなくなる異常が発生したと判定することができる。
【0018】
なお、前記第1作動態様および前記第2作動態様のいずれか一方に切り替えるといった前記オイル圧力制御の実行を実現可能な圧力調節装置としては、請求項6によるように、前記オイル供給経路内のオイル圧力の上昇に伴い開弁して同オイル供給経路内のオイルの一部を前記オイルパンに戻すリリーフ弁と、同リリーフ弁が開弁する圧力を前記第1作動態様の選択時には低圧に設定する一方で前記第2作動態様の選択時には高圧に設定する切替弁とを有するものを採用することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、駆動源として車両に搭載される内燃機関の運転を車両運転中において一時的に停止させる自動停止制御が、自動停止条件の成立をもって内燃機関の運転を自動停止させるとともに再始動条件の成立をもって内燃機関を再始動させてその運転を再開させるといったように実行される。そして、そうした自動停止制御が実行される装置において、上記異常が発生した場合における自動停止条件の成立に伴う機関運転の自動停止を制限することにより、機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態にかかる内燃機関の制御装置が適用される車両の概略構成を示す略図。
【図2】オイル圧力制御の実行手順を示すフローチャート。
【図3】圧力調節装置の作動状態と機関運転領域との関係を示す略図。
【図4】異常判定処理の具体的な実行手順を示すフローチャート。
【図5】設定マップのマップ構造を示す略図。
【図6】自動停止処理の具体的な実行手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施の形態にかかる内燃機関の制御装置について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる内燃機関の制御装置が適用される車両の概略構成を示している。
【0022】
同図1に示すように、車両10には駆動源としての内燃機関11を含む機関システムが搭載されている。内燃機関11の出力軸であるクランクシャフト12には自動変速機13を介して駆動輪14が接続されている。そして、内燃機関11が発生する動力は、自動変速機13を介して駆動輪14に伝達される。
【0023】
上記クランクシャフト12にはスタータモータ15が接続されている。このスタータモータ15は、乗員による運転スイッチ(図示略)の操作によって内燃機関11を始動する際や後述のように内燃機関11を自動始動する際に電動機として機能する。詳しくは、スタータモータ15の駆動によって内燃機関11のクランクシャフト12が強制的に回転駆動(クランキング)されて、同クランクシャフト12に内燃機関11の始動のための補助トルクが付与される。
【0024】
上記内燃機関11の燃焼室16には吸気通路17を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁18から噴射された燃料が供給される。そして、そうした吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火プラグ19による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン20が往復移動し、内燃機関11のクランクシャフト12が回転する。燃焼後の混合気は排気として内燃機関11の燃焼室16から排気通路21に送り出される。
【0025】
車両10には、その運転のための各種制御を実行する電子制御ユニット30が設けられている。この電子制御ユニット30は、各種制御に関係する各種の演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、その演算に必要なプログラムやデータが記憶された不揮発性メモリ(ROM)、CPUの演算結果が一時的に記憶される揮発性メモリ(RAM)、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
【0026】
電子制御ユニット30の入力ポートには各種のセンサ類が接続されている。そうしたセンサ類としては、例えば車両10の走行速度SPDを検出するための速度センサ31や、アクセルペダル(図示略)の踏み込み量(アクセル踏み込み量AC)を検出するためのアクセルセンサ32、同アクセルペダルの踏み込みの有無を検出するためのアイドルスイッチ33が設けられている。また、ブレーキペダル(図示略)の踏み込みの有無を検出するためのブレーキスイッチ34や、吸気通路17に設けられたスロットルバルブ22の開度(スロットル開度TA)を検出するためのスロットルセンサ35、吸気通路17を通過する空気の量(通路空気量GA)を検出するための空気量センサ36が設けられている。さらに、内燃機関11の冷却水の温度THWを検出するための水温センサ37や、クランクシャフト12の回転速度(機関回転速度NE)を検出するための回転センサ38が設けられている。その他、後述するオイル供給経路26内のオイルの圧力(オイル圧力PO)を検出するための圧力センサ39や、同オイル供給経路26内のオイルの温度(オイル温度THO)を検出するためのオイル温度センサ40等も設けられている。
【0027】
電子制御ユニット30は、各種センサ類の出力信号に基づき、機関回転速度NEや機関負荷KLなどといった内燃機関11の運転状態を把握する。なお機関負荷KLは、アクセル踏み込み量AC、スロットル開度TAおよび通路空気量GAに基づいて求められる内燃機関11の吸入空気量と機関回転速度NEとに基づき算出される。電子制御ユニット30は、そのようにして把握した内燃機関11の運転状態に応じて、出力ポートに接続された各種の駆動回路に指令信号を出力する。このようにして電子制御ユニット30により、スタータモータ15の駆動制御や、燃料噴射弁18の作動制御(燃料噴射制御)、点火プラグ19の作動制御(点火時期制御)、スロットルバルブ22の作動制御(スロットル制御)、後述する圧力調節装置50の作動制御(オイル圧力制御)などといった各種制御が実行される。
【0028】
本実施の形態にかかる車両10は、その燃費改善やエミッション低減を図るべく交差点等で車両10が停止したときに内燃機関11を自動停止させるとともに同自動停止中における任意のタイミングで内燃機関11を自動始動して車両10を発進可能とさせる自動停止再始動機能を備えている。
【0029】
以下、この自動停止再始動機能を実現する制御(自動停止制御)について説明する。
ここでは先ず、内燃機関11を自動停止させる処理の実行手順について説明する。
なお、この処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット30により実行される。
【0030】
この処理では先ず、上記各種のセンサ類の出力信号を通じて車両10や内燃機関11の運転状態が読み込まれるとともに、それらの運転状態から自動停止条件が成立したか否かが判断される。具体的には、例えば以下の[条件1]〜[条件5]が全て満たされたことをもって、自動停止条件が成立したと判断される。
[条件1]内燃機関11の暖機が終了していること(冷却水温度THWが水温下限値より高いこと)。
[条件2]アクセルペダルが踏まれていないこと(アイドルスイッチ33が「オン」されていること)。
[条件3]ブレーキペダルが踏み込まれていること(ブレーキスイッチ34が「オン」されていること)。
[条件4]車両10が停止していること(走行速度SPDが「0」もしくは略「0」であること)。
[条件5]上記[条件1]〜[条件4]の全てが満たされた後において、内燃機関11の自動停止が実行された履歴がないこと。
【0031】
そして、上記[条件1]〜[条件5]のいずれか一つでも満足されていない場合には、自動停止条件が成立しておらず、内燃機関11の自動停止を実行する条件下にないとして、内燃機関11の運転が継続される。その後、交差点において車両10が停止する等して上記自動停止条件が成立すると、例えば内燃機関11への燃料供給が停止される等して内燃機関11の運転が停止される。
【0032】
次に、内燃機関11を再始動させる処理の実行手順について説明する。
この処理についても、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット30により実行される。
【0033】
この処理では先ず、上記各種のセンサ類の出力信号を通じて車両10や内燃機関11の運転状態が読み込まれるとともに、それらの運転状態から再始動条件が成立したか否かが判断される。具体的には、上述した自動停止処理を通じて内燃機関11が停止状態にあるとの条件下において、上記[条件1]〜[条件4]のうちの1つでも満足されなくなった場合に再始動条件が成立したと判断される。
【0034】
そして、内燃機関11が自動停止されていない場合、あるいは内燃機関11が自動停止されている場合であっても上記[条件1]〜[条件4]の全てが満足されている場合には再始動条件が成立しておらず、内燃機関11の再始動を実行する条件下にないとして、同内燃機関11が停止状態のまま維持される。その後、内燃機関11の自動停止状態において上記[条件1]〜[条件4]の一つでも満足されなくなると、再始動条件が成立したとして、内燃機関11の運転を再開させるべくその再始動のための処理が実行される。具体的には、前記スタータモータ15が駆動されて前記クランキング動作の実行が開始される。また、これに併せて燃料噴射制御や点火時期制御が実行されて、内燃機関11が再始動される。
【0035】
内燃機関11には、その各部にオイルを供給するためのオイル供給装置が設けられている。以下、そうしたオイル供給装置について説明する。
内燃機関11には、オイルを備蓄するためのオイルパン23と、同オイルパン23内のオイルを圧送するためのオイルポンプ24とが取り付けられている。このオイルポンプ24としては、クランクシャフト12に駆動連結された機関駆動式のものが採用されている。内燃機関11が運転されてクランクシャフト12が回転すると、この回転によってオイルポンプ24が駆動されることにより、オイルパン23に貯留されているオイルが汲み上げ油路25を介して汲み上げられるとともに、内燃機関11におけるオイルが供給される部位(供給対象部位)にオイル供給経路26を介して圧送されるようになる。なお、上記汲み上げ油路25にはオイルに含まれる異物のうち比較的大きなものを濾過するオイルストレーナ27が設けられている。また、オイル供給経路26にはオイルに含まれる微小な異物を濾過するオイルフィルタ28が設けられている。
【0036】
また内燃機関11には、オイル供給経路26内のオイル圧力POを調節するための圧力調節装置50が設けられている。この圧力調節装置50は、オイルポンプ24を迂回して延びるとともにオイル供給経路26と汲み上げ油路25とを互いに接続するように延びるリリーフ油路51を備えている。このリリーフ油路51の途中には、オイル供給経路26内のオイル圧力POの上昇に伴って開弁するリリーフ弁52が設けられている。リリーフ弁52が開弁されると、リリーフ油路51を介してオイル供給経路26内のオイルの一部が汲み上げ油路25にリリーフされるようになるため、このときオイル供給経路26内のオイル圧力POが低下するようになる。
【0037】
圧力調節装置50は、リリーフ弁52の設定圧力(詳しくは、同リリーフ弁52が開弁するようになるオイル圧力)を変更するための変更機構53を備えている。以下、この変更機構53について説明する。
【0038】
リリーフ弁52の内部には、往復移動可能な状態でスリーブ54が設けられるとともに、同スリーブ54の移動方向における一方側(図1における下方側)の端部54Aと同リリーフ弁52の内壁面とによって切替室55が区画形成されている。そして、この切替室55にオイルが供給されると、同オイルの圧力によってスリーブ54の端部54Aが押圧されて、同切替室55を拡大させる方向(図1における上方側)にスリーブ54が移動するようになる。一方、切替室55内からオイルが排出されると、同切替室55を縮小させる方向(図1における下方側)にスリーブ54が移動するようになる。
【0039】
スリーブ54の内部には、その移動方向に沿って延びる弁内部油路56が形成されている。この弁内部油路56の内部には、スリーブ54と同一の方向において往復移動可能な状態でピストン57が設けられている。このピストン57は、スプリング58によって移動方向における一方側(図1における上方側)に常時付勢されている。
【0040】
リリーフ弁52の壁部には、上記ピストン57の移動方向における中間部位において開口するように、その内部と外部とを連通する貫通孔52Aが形成されている。また、スリーブ54には、上記ピストン57の移動方向における中間部位において開口するように、その内部と外部とを連通する貫通孔54Bが形成されている。
【0041】
上記リリーフ弁52は、リリーフ油路51(詳しくは、リリーフ弁52より上流側の部分[上流側油路51A])から弁内部油路56内にオイルが導入されるとともに、その導入されたオイルの圧力が上記スプリング58の付勢力に抗して(図1における下方側に)ピストン57を押圧するように作用する構造になっている。
【0042】
こうしたリリーフ弁52では、機関回転速度NEが低くオイルポンプ24のオイル圧送量が少ないときにはオイル供給経路26および上流側油路51Aを介して弁内部油路56に導入されるオイルの圧力が低いために、ピストン57の移動量が少ない。そのため、ピストン57の移動位置が上記スリーブ54の貫通孔54Bより上方側の位置、すなわち上流側油路51Aとリリーフ油路51における上記リリーフ弁52より下流側の部分(下流側油路51B)との連通を遮断する位置(例えば図中に二点差線で示す位置)になることから、このときリリーフ弁52は開弁されない。
【0043】
一方、機関回転速度NEが高くなってオイルポンプ24のオイル圧送量が多くなると、オイル供給経路26および上流側油路51Aを介して弁内部油路56に導入されるオイルの圧力が高くなるために、ピストン57の移動量が大きくなる。これにより、ピストン57の移動位置が上記スリーブ54の貫通孔54Bより下方側の位置、すなわちリリーフ油路51の上流側油路51Aと下流側油路51Bとの連通を許容する位置(例えば図中に実線で示す位置)になるために、このときリリーフ弁52が開弁されるようになる。
【0044】
リリーフ弁52の開弁時においては、上流側油路51A、弁内部油路56、スリーブ54の貫通孔54B、リリーフ弁52の外壁の貫通孔52A、下流側油路51Bといった順にオイルが流れることにより、オイル供給経路26内のオイルが汲み上げ油路25にリリーフされるようになる。
【0045】
このように本実施の形態では、上記リリーフ弁52がオイル供給経路26内のオイル圧力POの上昇に伴い開弁して同オイル供給経路26内のオイルの一部をオイルパン23(詳しくは、汲み上げ油路25)に戻すといったように機能する。
【0046】
また上記リリーフ弁52では、スリーブ54の移動位置が変化すると、それに伴って同スリーブ54の貫通孔52Aの位置も変化する。そのため、リリーフ油路51の上流側油路51Aと下流側油路51Bとの連通が許容されるようになるピストン57の移動位置が変化するようになって、リリーフ弁52の設定圧力が変化するようになる。
【0047】
本実施の形態では、上述したように切替室55にオイルが供給される状態と同切替室55からオイルが排出される状態とを切り替えることによってスリーブ54の移動位置を変更することの可能な構造になっている。そのため、そうしたスリーブ54の移動位置の変更を通じてリリーフ弁52の設定圧力を変更可能になっている。
【0048】
上記変更機構53は、切替室55内にオイルが供給される状態と切替室55内からオイルが排出される状態とを切り替えるための切替弁59を備えている。
この切替弁59には、上流側油路51Aに接続された第1切替油路60と、切替室55に接続された第2切替油路61と、下流側油路51Bに接続された第3切替油路62とがそれぞれ接続されている。そして、切替弁59は各切替油路60〜62に対応して設けられたポート間の連通状態を変更することにより、切替室55にオイルが供給される状態と同切替室55から潤滑油が排出される状態との切り替えを行う。
【0049】
具体的には、切替弁59の作動制御を通じて、上記第1切替油路60と第2切替油路61とが連通されるとともに第1切替油路60と第3切替油路62との連通が遮断された状態(第1連通状態)になると、オイル供給経路26内のオイルが上流側油路51A、第1切替油路60、および第2切替油路61を介して切替室55に供給されるようになる。
【0050】
一方、切替弁59の作動制御を通じて、上記第1切替油路60と第2切替油路61との連通および第1切替油路60と第3切替油路62との連通が共に遮断されるとともに第2切替油路61と第3切替油路62とが連通された状態(第2連通状態)になると、切替室55のオイルが第2切替油路61、第3切替油路62および下流側油路51Bを介して汲み上げ油路25に排出されるようになる。
【0051】
なお、切替弁59の作動態様(詳しくは、スリーブ54の移動位置)が同一であっても、リリーフ弁52の開弁時におけるオイル供給経路26内のオイル圧力POは、リリーフ油路51を介して同オイル供給経路26から汲み上げ油路25にリリーフされるオイルの量に応じて変化するため、一定にはならない。具体的には、機関回転速度NEが高いときほど、オイル供給経路26内のオイル圧力POは高くなる。
【0052】
圧力調節装置50の作動制御(オイル圧力制御)は、以下のような考えのもとに実行される。
図2に、オイル圧力制御の実行手順を示す。
【0053】
同図2に示すように、内燃機関11の始動開始後の経過時間が所定時間T1(例えば、10秒)未満であるときには(ステップS101:YES)、リリーフ弁52の設定圧力が高圧に設定される(ステップS102)。このとき切替室55内からオイルが排出される状態(前記第2連通状態)になるように切替弁59の作動制御が実行されて、圧力調節装置50の作動状態がオイル供給経路26内のオイル圧力POを高圧に調節する第2作動態様になる。
【0054】
このように本実施の形態では、内燃機関11の始動開始後の所定期間にわたりオイル供給経路26内のオイル圧力POが高圧になるように、オイル圧力制御が実行される。これにより、内燃機関11の運転停止に伴いオイル量の少なくなったオイル供給経路26内に、同内燃機関11の始動開始後において速やかに十分な量のオイルが満たされるようになるため、オイル供給経路26内のオイルの不足に起因する騒音の発生や摩耗の早期進行などといった種々の不都合の発生が抑えられるようになる。
【0055】
内燃機関11の始動開始後において所定時間T1以上が経過すると(ステップS101:NO)、機関回転速度NEと機関負荷KLとにより定まる内燃機関11の運転領域に応じてリリーフ弁52の設定圧力が切り替えられる。
【0056】
具体的には、機関回転速度NEが低く且つ機関負荷KLが小さい機関運転領域(低回転低負荷領域)においては(ステップS103:YES)、リリーフ弁52の設定圧力が低圧に設定される(ステップS104)。すなわち、このとき切替室55内にオイルが供給される状態(前記第1連通状態)になるように切替弁59の作動制御が実行されて、圧力調節装置50の作動状態がオイル供給経路26内のオイル圧力POを低圧に調節する第1作動態様になる。
【0057】
一方、機関回転速度NEが高い機関運転領域(高回転領域)や機関負荷KLが大きい機関運転領域(高負荷領域)においては(ステップS103:NO)、リリーフ弁52の設定圧力が高圧に設定される(ステップS102)。すなわち、このとき圧力調節装置50の作動状態が第2作動態様になる。
【0058】
ここで、オイル供給経路26内のオイル圧力POを高くすると、その分だけオイルポンプ24の作動負荷が大きくなるために、内燃機関11の燃費性能が低くなってしまう。そのため、燃費性能の向上を図るうえでは、リリーフ弁52の設定圧力を低い圧力に設定することが望ましい。
【0059】
また、機関回転速度NEが高い機関運転領域(高回転領域)や機関負荷KLが大きい機関運転領域(高負荷領域)では、機関各部の潤滑に必要になるオイルの量が多くなる。そのため高回転領域や高負荷領域では、潤滑性能を確保するために、オイル供給経路26内のオイル圧力POを高圧に設定することが好ましい。
【0060】
こうした実情をふまえて本実施の形態では、機関始動開始後に所定時間T1以上が経過した後において、低回転低負荷領域ではリリーフ弁52の設定圧力が低圧に設定されて燃費性能の向上が図られるとともに、高回転領域や高負荷領域ではリリーフ弁52の設定圧力が高圧に設定されて潤滑性能が確保されるようになっている。
【0061】
図3に、そうしたリリーフ弁52の設定圧力(詳しくは、圧力調節装置50の作動状態)と機関運転領域との関係を示す。
同図3に示すように、機関回転速度NEと機関負荷KLとにより定まる機関運転領域が境界ラインLによって低圧領域R1と高圧領域R2との二つの領域に区画されている。そして、低圧領域R1としては、境界ラインLよりも機関回転速度NEが低い側であり且つ機関負荷KLが小さい側である運転領域が設定されている。この低圧領域R1では、圧力調節装置50の作動が第1作動態様になるように制御される。一方、高圧領域R2としては境界ラインLよりも機関回転速度NEが高い側の運転領域あるいは機関負荷KLが大きい側の運転領域が設定されている。この高圧領域R2では、圧力調節装置50の作動が第2作動態様になるように制御される。
【0062】
このように本実施の形態では、オイル圧力制御が、圧力調節装置50の作動状態を第1作動態様および第2作動態様のいずれか一方に選択的に切り替えるといったように実行される。また本実施の形態では、切替弁59が、前記第1作動態様の選択時にはリリーフ弁52の設定圧力を低圧に設定する一方で前記第2作動態様の選択時にはリリーフ弁52の設定圧力を高圧に設定するといったように機能する。
【0063】
ここで、本実施の形態では、例えば切替弁59が固着したりリリーフ弁52が固着したりするなどしてリリーフ弁52の設定圧力が低圧から変化しなくなると、オイル供給経路26内のオイル圧力POを高い圧力に変更することができなくなってしまう。この場合、内燃機関11の始動開始直後においてオイル供給経路26内が十分な量のオイルで満たされるようになるまでに要する時間が長くなってしまうために、上述したオイル供給量の不足に起因する不都合を招くおそれがある。しかも、本実施の形態の装置では自動停止制御が実行されるために、同制御が実行されない装置と比較して内燃機関11が始動される頻度が高いことから、オイル供給経路26内のオイル量が少ない状態で内燃機関11が始動される回数が多くなって、上記不都合を招く可能性が高くなると云える。そして、そうした不都合の発生は、内燃機関11の信頼性や耐久性を低下させる一因となるために好ましくない。
【0064】
こうした実情をふまえて、本実施の形態では、圧力調節装置50の作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常の発生の有無を判定するとともに、同異常が発生したと判定されたときに自動停止制御を通じた内燃機関11の運転停止の実行を禁止するようにしている。
【0065】
これにより、圧力調節装置50の作動状態が第1作動態様から変化しなくなるなど、同作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常が発生した場合、言い換えれば機関始動後におけるオイル供給経路26内へのオイルの充填速度が緩慢になるために機関始動直後における騒音の発生や摩耗の早期進行が懸念される場合において、自動停止制御による内燃機関11の運転停止の実行が禁止されるようになる。言い換えれば、車両10の運転機能を維持しつつ、同車両10の燃費性能の向上を目的として実行される内燃機関11の運転停止が禁止されるようになる。
【0066】
これにより、機関停止の実行回数を抑えることができるために、騒音や摩耗の早期進行の原因となる機関始動の実行回数を少なく抑えることができる。したがって、その分だけオイル供給経路26内のオイルが過度に少ない状態で内燃機関11が運転される期間を短くすることができ、同内燃機関11の運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【0067】
以下、そのようにして内燃機関11の自動停止の実行を禁止するための処理の具体的な実行手順について説明する。
ここでは先ず、上記異常の有無を判定する処理(異常判定処理)について詳細に説明する。
【0068】
図4は上記異常判定処理の具体的な実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット30により実行される。本実施の形態では、この異常判定処理が判定手段として機能する。
【0069】
図4に示すように、この処理では先ず、判定条件が成立しているか否かが判断される(ステップS201)。ここでは、[条件6]〜[条件9]の全てが満たされることをもって判定条件が成立していると判断される。
[条件6]内燃機関11の始動開始後における経過時間が所定時間T1以上であること。
[条件7]内燃機関11の運転領域が低圧領域R1(図3参照)であること。
[条件8]圧力調節装置50の作動状態を第2作動態様にするべく切替室55内のオイルが汲み上げ油路25に排出される状態(前記第1連通状態)に切替えられた後の経過時間が所定時間以上であること。
[条件9]圧力センサ39が正常に機能していること。
【0070】
そして、上記判定条件が満たされていないときには(ステップS201:NO)、上記異常の発生の有無を精度よく判定することのできる状況ではないとして、以下の処理を実行することなく、本処理は一旦終了される。
【0071】
その後、本処理が繰り返し実行されて判定条件が満たされると(ステップS201:YES)、このとき上記異常の発生の有無を精度よく判定することのできる状況になったと判断されて、その判定が以下のように実行される。
【0072】
すなわち先ず、機関回転速度NEおよびオイル温度THOに基づいて判定圧力Jが設定される(ステップS202)。この判定圧力Jとしては、標準的な特性を有するシステムにおいて圧力調節装置50の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力以上であり、且つ同作動状態が第2作動態様であるときのオイル圧力未満である値が設定される。具体的には、機関回転速度NEが高いときほど、またオイル温度THOが低いときほど判定圧力Jとして高い圧力が設定される。
【0073】
本実施の形態では、機関回転速度NEおよびオイル温度THOにより定まる機関運転領域と判定圧力Jとの関係であって、上記異常の発生の有無を早期に且つ精度よく判定することの可能な関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められるとともに、その関係が設定マップとして電子制御ユニット30に記憶されている。図5に上記設定マップのマップ構造を示すように、上記設定マップは、機関回転速度NEと判定圧力Jとの関係が規定された二次元マップであって、且つオイル温度THO(THO1、THO2、・・・THOn)毎に定められた複数の二次元マップにより構成されている。そして、上記ステップS202の処理では、オイル温度THOに応じて上記設定マップにおける何れかの二次元マップを選択するとともに同二次元マップから機関回転速度NEをもとに判定圧力Jを設定するといったように、機関回転速度NEとオイル温度THOとに基づいて判定圧力Jが設定される。
【0074】
前述したようにオイル供給経路26内のオイル圧力POは、圧力調節装置50の作動状態が同一の条件下であっても、機関回転速度NEが高いときほど、またオイル温度THOが低いときほど高くなるといった傾向を示す。そのため、上述のように判定圧力Jを設定することにより、そうした傾向に合わせて判定圧力Jが設定されるようになり、同判定圧力Jに基づく上記異常の発生の有無の判定が精度よく実行されるようになる。
【0075】
このように判定圧力Jが設定された後、圧力センサ39により検出されるオイル圧力POが同判定圧力J未満であるか否かが判断される(ステップS203)。そして、オイル圧力POが判定圧力J未満である場合には(ステップS203:YES)、このとき圧力調節装置50の作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常が発生しているとして、異常フラグがオン操作された後(ステップS204)、本処理は一旦終了される。一方、オイル圧力POが判定圧力J以上である場合には(ステップS203:NO)、上記異常が発生している可能性は低いとして、異常フラグをオン操作することなく(ステップS204の処理をジャンプして)、本処理は一旦終了される。
【0076】
次に、内燃機関11を自動停止させる処理(自動停止処理)について詳細に説明する。
図6は上記自動停止処理の具体的な実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として、電子制御ユニット30により実行される。
【0077】
図6に示すように、この処理では先ず、前述した自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS301)。すなわち、ここでは前記[条件1]〜[条件5]の全てが満たされたことをもって自動停止条件が成立したと判断される。
【0078】
自動停止条件が成立している場合には(ステップS301:YES)、上記異常フラグがオン操作されているか否かが判断される(ステップS302)。
そして、異常フラグがオン操作されている場合には(ステップS302:YES)、このとき内燃機関11の始動直後における騒音の発生や摩耗の早期進行が懸念される状況になっているとして、内燃機関11の自動停止は実行されない(ステップS303の処理がジャンプされる)。すなわち、この場合には自動停止制御における内燃機関11の自動停止の実行が禁止される。これにより、騒音や摩耗の早期進行の原因となる機関始動の実行回数を少なく抑えることができ、その分だけ機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。本実施の形態では、ステップS302の処理が、内燃機関の運転停止の実行を制限するように該運転停止の実行条件を変更する変更手段として機能する。
【0079】
一方、異常フラグがオフ操作されているときには(ステップS302:NO)、上記状況になる可能性は低いとして、内燃機関11の自動停止が実行される(ステップS303)。
【0080】
なお、自動停止条件が成立していないときには(ステップS301:NO)、そもそも内燃機関11の自動停止を実行する条件下にないとして、内燃機関11の自動停止は実行されない(ステップS302およびステップS303の処理がジャンプされる)。
【0081】
このように、自動停止条件の成立態様や異常フラグの操作態様に応じて内燃機関11の自動停止が適宜実行された後、本処理は一旦終了される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
【0082】
(1)圧力調節装置50の作動状態を第2作動態様に変更することのできない異常の発生の有無を判定するとともに、同異常が発生したと判定されたときに自動停止制御を通じた内燃機関11の運転停止の実行を禁止するようにした。そのため、機関停止の実行回数を抑えることができ、騒音や摩耗の早期進行の原因となる機関始動の実行回数を少なく抑えることができる。したがって、その分だけオイル供給経路26内のオイルが過度に少ない状態で内燃機関11が運転される期間を短くすることができ、同内燃機関11の運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【0083】
(2)標準的な特性を有するシステムにおいて圧力調節装置50の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力以上であり且つ同作動状態が第2作動態様であるときのオイル圧力未満である値を判定圧力Jとして設定するようにした。そのため、圧力調節装置50の作動状態が第2作動態様に制御されているときにおいて圧力センサ39によって検出されたオイル圧力POが判定圧力Jより低いことをもって上記異常が発生したと判定することができる。
【0084】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・自動停止制御における自動停止条件や再始動条件は任意に変更することができる。
・リリーフ弁52と切替弁59とを備えた圧力調節装置50に限らず、オイル供給経路26内のオイル圧力POを低圧の状態と比較的高圧の状態との何れかに選択的に切り替えることのできるものであれば、任意の構成の圧力調節装置を採用することができる。そうした圧力調節装置の一例としては、例えば以下の[例1]および[例2]などが挙げられる。
[例1]リリーフ弁52のスリーブ54の移動位置を、電磁駆動式のアクチュエータを用いて変更するなど、オイル圧力以外の動力によって変更するもの。
[例2]開弁圧力の低い第1チェック弁と開弁圧力の高い第2チェック弁と同第1チェック弁が機能する状態および機能しない状態を切り替える切替弁とを備えたオイル回路をオイル供給経路26と汲み上げ油路25とを繋ぐように設けるとともに、上記切替弁の作動を制御することによってオイル供給経路26内のオイル圧力POを調節するもの。
【0085】
・判定圧力Jの設定態様は任意に変更することができる。具体的には、機関回転速度NEのみに基づいて判定圧力を設定することができる。また、圧力調節装置の作動状態が同一の条件下であれば機関回転速度NEの変化によることなくオイル供給経路26内のオイル圧力POがほぼ一定になる内燃機関の制御装置においては、オイル温度THOのみに基づいて判定圧力を設定することや、予め定めた一定値を判定圧力として設定することなども可能である。要は、標準的な特性を有するシステムにおいて圧力調節装置の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力以上であり且つ同作動状態が第2作動態様であるときのオイル圧力未満である値であって、上記異常の発生の有無を精度よく判定することのできる値を判定圧力として設定することができればよい。
【0086】
・前記異常の発生有りと判定する条件は任意に変更することができる。そうした異常判定処理の具体例としては以下の[例3]や[例4]などが挙げられる。
[例3]機関運転領域が高圧領域R2であり、且つ標準的な特性を有するシステムにおいて圧力調節装置50の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力と圧力センサ39により検出されるオイル圧力POが略等しいこと。
[例4]圧力調節装置50の作動状態を第2作動態様にするべく電子制御ユニット30から指令信号が出力されており、且つ標準的な特性を有するシステムにおいて圧力調節装置50の作動状態が第1作動態様であるときのオイル圧力と圧力センサ39により検出されるオイル圧力POとが略等しいこと。
【0087】
・前記異常の発生有りと判定されたときに、前記自動停止制御を通じた内燃機関11の運転停止の実行を禁止することに代えて、例えば機関運転を停止する期間に上限を設定するなど、同内燃機関11の運転停止の実行を制限するようにしてもよい。こうした構成によれば、自動停止制御を通じて内燃機関11の運転停止の実行が許容されるとはいえ、その運転停止に伴うオイル供給経路26内のオイルの過度の減少を抑えることができる。そのため、オイル供給経路26内のオイルが過度に少ない状態で内燃機関11が運転される期間を短くすることができ、その分だけ機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。なお上記構成は、例えば次のように実現することができる。すなわち、前述した再始動条件に「異常フラグがオン操作されており、且つ内燃機関11の運転が自動停止された後の経過時間が所定時間(例えば、数十秒)以上であること」との[条件10]を加えるととともに、前記[条件1]〜[条件4]のうちの1つでも満足されなくなった場合、または[条件10]が満たされた場合に再始動条件が成立したと判断する。
【0088】
・圧力調節装置の作動状態をオイル供給経路26内のオイル圧力POが低圧になる第1作動態様と同オイル圧力POが高圧になる第2作動態様との二段階に切り替えることに代えて、三段階以上の多段階に切り替えるようにしてもよい。また、オイル供給経路26内のオイル圧力POを所定圧力範囲内において無段階に変化させるように圧力調節装置の作動状態を変更するようにしてもよい。要は、圧力調節装置の作動制御(オイル圧力制御)が、オイル供給経路26内のオイル圧力POが比較的低圧になる第1作動態様と高圧になる第2作動態様とを含む作動範囲内において実行される装置であれば、上記実施の形態にかかる制御装置はその構成を適宜変更した上で適用することができる。
【0089】
・本発明は、車両の運転中において内燃機関の運転を一時的に停止させる自動停止制御が実行されるとともに、同内燃機関の始動後の所定期間にわたり圧力調節装置の作動状態がオイル供給経路内のオイル圧力を高圧に調節する作動態様に変更される車両であれば、駆動源として内燃機関と電動機とが搭載された車両、いわゆるハイブリッド車両にも適用することができる。なお、車両の運転中とは、車両の運転を開始するべく運転スイッチがオン操作されてから同車両の運転を停止させるべく運転スイッチがオフ操作されるまでの期間であり、自動停止制御が実行される装置においては内燃機関が自動停止されている期間を含む。
【0090】
・本発明は、自動停止制御が実行されない車両にも適用することができる。そうした構成としては、例えば次のような構成を挙げることができる。制御装置に、車両の運転を停止させるべく乗員によって運転スイッチがオフ操作されたときに内燃機関の運転を継続させるための構成(例えば電子制御ユニットや内燃機関の各部位に電力が供給される状態を維持するための遅延リレーなど)が設けられる。そして、圧力調節装置の作動状態を前記第2作動態様に変更することのできない異常が発生したと判定された場合には以下の[停止条件]が成立したことを条件に内燃機関の運転を停止させる一方、上記異常が発生したと判定されない場合には同[停止条件]によることなく内燃機関の運転を停止させる。
[停止条件]運転スイッチがオフ操作された後において同運転スイッチがオン操作されることなく所定時間が経過したこと。
【0091】
こうした構成によれば、上記異常が発生したと判定された場合に、内燃機関の運転を停止させるべく運転スイッチがオフ操作されたときであっても、その後において所定時間が経過するまでの間に運転スイッチがオン操作されたときには内燃機関の運転が停止されない。そのため、そのようにして内燃機関の運転停止が禁止される分だけ、同内燃機関の運転が停止される回数を抑えることが可能になる。したがって、機関始動後におけるオイル供給経路内へのオイルの充填速度が緩慢になるために機関始動直後における騒音の発生や摩耗の早期進行が懸念される場合において、内燃機関が始動される回数を少なくすることができ、その分だけ機関運転に伴う騒音の発生や摩耗の早期進行を抑えることができる。
【符号の説明】
【0092】
10…車両、11…内燃機関、12…クランクシャフト、13…自動変速機、14…駆動輪、15…スタータモータ、16…燃焼室、17…吸気通路、18…燃料噴射弁、19…点火プラグ、20…ピストン、21…排気通路、22…スロットルバルブ、23…オイルパン、24…オイルポンプ、25…汲み上げ油路、26…オイル供給経路、27…オイルストレーナ、28…オイルフィルタ、30…電子制御ユニット、31…速度センサ、32…アクセルセンサ、33…アイドルスイッチ、34…ブレーキスイッチ、35…スロットルセンサ、36…空気量センサ、37…水温センサ、38…回転センサ、39…圧力センサ、40…オイル温度センサ、50…圧力調節装置、51…リリーフ油路、51A…上流側油路、51B…下流側油路、52…リリーフ弁、52A…貫通孔、53…変更機構、
54…スリーブ、54A…端部、54B…貫通孔、55…切替室、56…弁内部油路、
57…ピストン、58…スプリング、59…切替弁、60…第1切替油路、61…第2切替油路、62…第3切替油路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力軸により駆動されてオイルパンに貯留されているオイルを圧送するオイルポンプと、同オイルポンプにより圧送されるオイルを前記内燃機関の各部に供給するオイル供給経路と、前記オイル供給経路内のオイル圧力を低圧に調節する第1作動態様および同オイル圧力を高圧に調節する第2作動態様を含む作動範囲内において作動状態が変更される圧力調節装置と、を有する機関システムに適用されて、前記内燃機関の始動開始後の所定期間にわたり前記第2作動態様で前記圧力調節装置の作動を制御するオイル圧力制御を実行する内燃機関の制御装置において、
前記圧力調節装置の作動状態を前記第2作動態様に変更することのできない異常の発生の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記異常の発生有りと判定されたときに、前記内燃機関の運転停止の実行を制限するように該運転停止の実行条件を変更する変更手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、駆動源として車両に搭載される前記内燃機関の運転を同車両の運転中において一時的に停止させる自動停止制御を実行するものであり、
前記変更手段は、前記自動停止制御を通じた前記内燃機関の運転停止の実行を制限するべく前記実行条件を変更するものである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記変更手段は、前記内燃機関の運転停止の実行を制限するべくその実行を禁止するものである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記オイル圧力制御は、前記圧力調節装置の作動状態を前記第1作動態様および前記第2作動態様のいずれか一方に切り替える制御である
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
当該装置は、前記オイル圧力を検出する圧力センサを更に備えてなり、
前記判定手段は、前記圧力調節装置の作動状態が前記第2作動態様に制御されているときにおいて前記圧力センサにより検出されるオイル圧力が、前記第1作動態様であるときのオイル圧力以上であり且つ前記第2作動態様であるときのオイル圧力未満である判定圧力より低いことをもって前記異常の発生有りと判定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記圧力調節装置は、前記オイル供給経路内のオイル圧力の上昇に伴い開弁して同オイル供給経路内のオイルの一部を前記オイルパンに戻すリリーフ弁と、同リリーフ弁が開弁する圧力を前記第1作動態様の選択時には低圧に設定する一方で前記第2作動態様の選択時には高圧に設定する切替弁と、を有してなる
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は、駆動源として車両に搭載される前記内燃機関の運転を同車両の運転中において一時的に停止させる自動停止制御を実行するものであり、
前記自動停止制御は、前記内燃機関の運転を自動停止条件の成立をもって自動停止するとともに再始動条件の成立をもって再開する制御である
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−82749(P2012−82749A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229719(P2010−229719)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】