説明

内燃機関の吸気装置

【課題】吸気ポートの内壁面への燃料の付着が防止され、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる内燃機関の吸気装置を提供する。
【解決手段】吸気ポート5に隣接して配置されたスロットルボディ12内に回転軸21を有して揺動自在に設けられたスロットルバルブ20と、スロットルボディ12から記吸気ポート5に向けて且つスロットルバルブ20よりも下流側にて燃料を噴霧するインジェクタ11とを備える内燃機関1の吸気装置10である。スロットルボディ12の内壁面とスロットルバルブ20の先端縁との隙間の大きさは、インジェクタ11の噴霧口11aの配置された側が小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの応答性を向上させるためには、例えばスロットルバルブと燃焼室との間の吸気通路の長さを短くすることが有効であることが知られている。スロットルバルブを燃焼室に接近させたエンジンの吸気装置としては、例えば特許文献1開示された構造においては、スロットルバルブとインジェクタと有する装置を、シリンダヘッドの吸気ポートに円環状のジョイントを介して取付けた構造である。そして、特許文献1に開示されているものは、インジェクタをスロットルボディの下流側端部に配置するような構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−239801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、吸気ポートに接近してインジェクタが配置された構造の場合、スロットルボディから流れてくる吸気流によってインジェクタの噴霧流が大きく影響される。
すなわち、インジェクタの噴霧口から噴霧された霧状の燃料は、スロットルボディの内壁面とスロットルバルブの先端縁との隙間から流れる吸気流によって、噴霧方向の横方向から大きな圧力を受けて噴霧流に偏りが発生する。この噴霧流の偏りの影響により吸気ポートの内壁面への燃料の付着を発生させる場合には、濃度分布が均一でない混合空気をシリンダ内に供給してしまう場合があり、内燃機関における燃料消費効率の低下や排気エミッションの点から課題となっていた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気ポートの内壁面への燃料の付着を防止し、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる内燃機関の吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、吸気ポートに隣接して配置されたスロットルボディ内に回転軸を有して揺動自在に設けられたスロットルバルブを備え、前記スロットルボディから前記吸気ポートに向け且つ前記スロットルバルブよりも下流側にて燃料を噴霧するインジェクタを備える内燃機関の吸気装置において、
前記スロットルボディの内壁面と前記スロットルバルブの先端縁との隙間の大きさは、前記回転軸にその長手方向中央で直交する断面において、前記インジェクタの噴霧口が配置された側が小さくなるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記インジェクタが前記スロットルボディの下側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2項に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記回転軸の軸方向から見て、前記噴霧口の配置された側の全閉セット角度と他方側の全閉セット角度が異なるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記回転軸の軸方向から見て、第1開閉壁と第2開閉壁の2つの平面を有し、該両開閉壁が所定の角度を有するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記第1開閉壁と前記第2開閉壁とが前記回転軸を挟んで反対側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記回転軸の方向から見て真直ぐな平面構造であり、該回転軸を挟んで一方側面の第1開閉壁と他方側の第2開閉壁とが異なった長さを有するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記インジェクタが配置された側の開閉壁が短くなるように前記回転軸がスロットルボディの中心線から偏倚して配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の構成に加えて、前記スロットルバルブは、前記回転軸がスロットルボディの中心線上に位置し、且つ前記インジェクタが配置された側の第1開閉壁が反対側の第2開閉壁よりも長くなるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、スロットルボディの内壁面とスロットルバルブの先端縁との隙間の大きさが、インジェクタの噴霧口が配置された側が小さくなるように構成されたことにより、噴霧口に接近した側の吸入空気流量を少なくすることができるので、噴霧直後の噴霧流に対する空気圧を小さくして該噴霧流の不測の偏りを防止することができる。したがって、吸入空気流による噴霧流への悪影響が回避され、吸気ポートの内壁面への燃料の付着等をなくすことができ、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、インジェクタがスロットルボディの下側に配置されている場合には、特に、噴霧流が重力の影響を受けて吸気ポートの下側壁面に付着しやすいが、インジェクタの噴霧口の配置された下側の流量が小さくなるように構成されているので、噴霧流の下方への偏りを効果的に回避でき、噴霧燃料の吸気ポート下側の内壁面への付着が防止されて、均一な濃度分布の混合空気をシリンダ内に供給できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、スロットルバルブが、回転軸の一方側の全閉セット角度と他方側の全閉セット角度とが異なるように構成されていることで、スロットルバルブが回転したときに、一方側と他方側の開口面積の大きさが相違するようにできる。したがって、噴霧口に接近した側の吸入空気流量を少なくすることが可能となり、インジェクタからの噴霧流の偏りを回避し、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、スロットルバルブは、第1開閉壁と第2開閉壁とが回転軸の方向から見て所定の角度を有するように構成されていることにより、回転軸を挟んだ両側の全閉セット角度を相違させることができるので、回転軸を挟んで第1開閉壁の側と第2開閉壁の側における開口面積の大きさを変えることができる。したがって、噴霧口に接近した側の吸入空気流量を少なくすることが可能となり、インジェクタからの噴霧流を偏りが無く効果的に広げて、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、スロットルバルブは、第1開閉壁と第2開閉壁とが回転軸を挟んで反対側に形成されていることで、請求項4の効果に加えて、第1開閉壁と第2開閉壁の屈曲点が回転軸に一致しているので、スロットルバルブ形状の設定がしやすく製造し易い。したがって、噴霧流の吸入空気流による悪影響の回避とともに製造性もよくすることが出来る。
【0019】
請求項6の発明によれば、スロットルバルブは、回転軸の方向から見て真直ぐな平面構造であり該バルブ自体が平坦な一面にて構成されるので、その製造性は極めてよく、また、回転軸を挟んで一方側面の第1開閉壁と他方側の第2開閉壁とが異なった長さを有するように構成されているので、回転軸を挟んで回転半径が例えば長い一端側と短い他端側とで開口面積の大きさを容易に変えることができる。したがって、噴霧口に接近した側と遠い側との吸入空気流量を変えることが可能で、インジェクタからの噴霧流の偏りを無くして燃料濃度分布が不均一になるような状況を回避できる。さらに、スロットルバルブは、その回転軸の位置設定によって、第1開閉壁側と第2開閉壁側の開口面積の大きさを容易に設定することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、スロットルバルブは、インジェクタが配置された側の第1開閉壁が短くなるように回転軸がスロットルボディの中心線からインジェクタ配置へ偏倚して配置されていることで、回転軸を挟んでと一端側と他端側との回転半径を変えることができ、バルブ開動における噴霧口に接近した側の隙間を小さくして吸入空気流量を少なくすることができる。したがって、噴霧口付近の噴霧流への圧力を弱くできるので、噴霧流への悪影響を回避して濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。また、スロットルバルブは平坦な一面構造であるので、その製造性は極めてよく、さらに、回転軸の位置設定によって該回転軸の上下端側における開口面積の設定が容易に出来る。
【0021】
請求項8の発明によれば、スロットルバルブは、回転軸がスロットルボディの中心線上に位置され、且つインジェクタが配置された側とは反対側の開閉壁が短くなるように構成されているので、スロットルバルブが回転し始める前の状態から、インジェクタが配置された側の空気流量を少なくできる。
したがって、インジェクタが配置された側の吸入空気流量を少なくしてインジェクタの噴霧流への圧力を弱く出来るので、噴霧流への悪影響を回避して濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
また、スロットルバルブは従来同様に平坦な一面にて構成され、単に一端側が短くなっているだけであるので、その製造性は極めて良い。また、スロットルバルブは、回転軸の位置も従来と全く同じ位置でよく、バルブ周辺構造も従来と何ら変更する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る内燃機関の吸気装置の第1実施形態の要部断面図である。
【図2】図1に示す吸気装置におけるスロットルバルブの閉じ状態を示す拡大断面図である。
【図3】図2に示す吸気装置におけるスロットルバルブの拡大斜視図である。
【図4】図1に示す吸気装置におけるスロットルバルブの開き状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る内燃機関の吸気装置の第2実施形態の要部断面図である。
【図6】図5に示す吸気装置におけるスロットルバルブの拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る内燃機関の吸気装置の第3実施形態の要部断面図である。
【図8】図7に示す吸気装置におけるスロットルバルブの拡大斜視図である。
【図9】本発明に係る内燃機関の吸気装置の第4実施形態の要部断面図である。
【図10】図9に示す吸気装置におけるスロットルバルブの拡大斜視図である。
【図11】図9に示す吸気装置におけるスロットルバルブの開き状態を示す拡大断面図である。
【図12】本発明に係る内燃機関の吸気装置の第5実施形態の要部断面図である。
【図13】図12に示す吸気装置におけるスロットルバルブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態は、図1に示すように、例えば自動二輪車に搭載されるV型の内燃機関1に適用したものである。
この内燃機関1は、ピストン2Pを備えるシリンダ2の上方側にシリンダヘッド3を備え、このシリンダヘッド3には、吸気ポート5からの吸気を制御する吸気バルブ8aや、排気ポート6からの排気を制御する排気バルブ8bが設けられている。
なお、この吸気バルブ8aおよび排気バルブ8bは、バルブ上端側に配置された一対のカムシャフト6a,6bに設けられたカム7a,7bの回転により適宜作動される。また、カムシャフト6a,6bおよびカム7a,7bの上方側はヘッドカバー4により適宜覆われている。
【0024】
本実施形態における吸気装置10は、吸気ポート5に隣接してスロットルボディ12が配置されている。そして、このスロットルボディ12には、インジェクタ11と、回転軸21を有して揺動自在に設けられたスロットルバルブ20とが設けられている。なお、スロットルボディ12には、図示しないエアークリーナ等を具備するクリーナボックスが吸気流上流側に適宜接続されている。
このインジェクタ11は、スロットルボディ12内における吸気流の最も下流側に配置されており、吸気ポート5に向け燃料を噴霧する。すなわち、インジェクタ11は、スロットルバルブ20よりも下流側に噴霧口11aが位置するように構成され、且つスロットルボディ12の中心線CLに対して適当な角度傾斜して吸気ポート下流側に向って燃料を噴霧するように構成されている。また、このインジェクタ11はスロットルボディ12の下側に配置されている。
【0025】
本実施形態においては、図3に示すように、スロットルバルブ20は略円盤状の構造ではあるが、回転軸21の下側の下半円部分である第1開閉壁22に対して上半円部分である第2開閉壁23が所定の角度α(90°より大きく180°より小さい角度)を有して傾斜している。そして、このスロットルバルブ20は、図2に示すように、回転軸21の軸方向から見て(回転軸の長手方向中央で直交する断面において)、この回転軸21の下方側の第1開閉壁22と内壁面12aとが作る全閉セット角度θ1(最もスロットルを絞った状態での角度)が90°であるのに対して、上方側の第2開閉壁23と内壁面12aとが作る全閉セット角度θ2が90°よりも小さくなるように構成されている。
【0026】
すなわち、第1開閉壁22は、所定の半径L1の半円形状であるのに対して、第2開閉壁23は、回転軸21の長手方向中央で直交する断面において第1開閉壁22の半径L1よりも長い長軸半径L2を有する楕円形状に構成されている。この長軸半径L2は、第2開閉壁23と第1開閉壁22との交差角度αが小さくなるほど、吸気流の上流側へ延びる構成となるのでその大きさは大きくなる。このように長軸半径L2が大きくなると、例えば、回転軸21が回転したとき、その先端縁20aの移動距離が大きくなる。これは、回転軸21の回転に伴って、第2開閉壁23が第1開閉壁22よりも大きく動くことを意味する。
【0027】
本実施形態における作用について図4を参照して説明する。
スロットルバルブ20が前掲のように構成されていると、バルブ全閉状態(図2に示す状態)においては、スロットルバルブ20の先端縁20aの全体がスロットルボディ12の内壁面12aに最も接近した状態である。この状態においては、スロットルボディ内を流れる吸気流は極めて少ない状態である。
しかし、エンジン回転数を上げるべくスロットルバルブ20を回転(矢印R方向の回転)させることにより、吸気流量が増える。すなわち、スロットルバルブ20の回転により、図4に示すように、スロットルボディ12の内壁面12aとスロットルバルブ20の先端縁20aとの隙間が大きくなり、吸気流量が次第に多くなっていく。
【0028】
このスロットルバルブ20の回転のとき、第2開閉壁23の先端縁20aと内壁面12aとの距離d2に比べて第1開閉壁22の先端縁20aと内壁面12aとの距離d1が小さくなる。これによって、図4における下側のバルブ開口面積が、上側のバルブ開口面積よりも小さくなる。
このように、インジェクタ11の噴霧口11aが配置された側のバルブ開口面積が小さいことにより、噴霧口11aに接近した側の吸入空気流量が反対側(図中上側)よりも少なくなる。したがって、噴霧口11aからの噴霧流11fに対し、噴霧口11aに接近した側における空気圧(Ar)を小さく抑えることができる。
【0029】
しがたって、インジェクタ11からの噴霧流11fは、その噴霧口11a近傍において下流側へ大きく押されずに偏り無く所望の広がりをもって噴霧される。このことにより、吸気流による噴霧流11fへの悪影響が回避され、吸気ポート5の下側内壁面への燃料の付着等の偏りがなく、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0030】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態については、図5および図6を参照しながら詳細に説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部分には図中同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
【0031】
本実施形態においては、スロットルバルブ30は略円盤状の構造ではあるが、図6に示すように、回転軸31の下側の下半円部分である第1開閉壁32に対して上半円部分である第2開閉壁33がそのほぼ中段部分に屈曲部34を境にして第2開閉壁基部33aと第2開閉壁先端部33bを有している。
そして、第2開閉壁33は、第1開閉壁32と同じ平面上に第2開閉壁基部33aが構成され、この第2開閉壁基部33aに対して交差角度αを有するように第2開閉壁先端部33bが設けられている。
【0032】
したがって、本実施形態のスロットルバルブ30は、図5に示すように、回転軸31の軸方向から見て、この回転軸31の下方側の第1開閉壁32における全閉セット角度θ1が90°であるのに対して、上方側の第2開閉壁先端部33bの全閉セット角度θ2が90°よりも小さくなるようになっている。
この構成の場合においても、第2開閉壁33は、第1開閉壁32の最大回転半径L1よりも大きい最大回転半径L2を有している。
【0033】
本実施形態における作用について説明する。
スロットルバルブ30が、図5に示すようなバルブ全閉状態においては、スロットルバルブ30の先端縁30aの全体がスロットルボディ12の内壁面12aに最も接近した状態であるが、スロットルバルブ30が回転(矢印R方向の回転)すると、前掲の第1実施形態同様に、スロットルボディ12の内壁面12aとスロットルバルブ30の先端縁30aとの隙間が回転に伴って大きくなる。
【0034】
そして、このスロットルバルブ30の回転のときの状態では、第2開閉壁33の先端縁30aと内壁面12aとの距離に比べて、第1開閉壁32の先端縁30aと内壁面12aとの距離が小さくなる。
したがって、第1実施形態と同様に、インジェクタ11の噴霧口11aが配置された側のバルブ開口面積が反対側よりも小さくなることにより、噴霧口11aに接近した側の吸入空気流量を反対側よりも少なくでき、インジェクタ11からの噴霧流11fに対する空気圧(Ar)を小さく抑えることができる。
このことにより、第1実施形態と同様に、吸気流による噴霧流11fへの圧力を制御することで、吸気ポート5の下側内壁面への燃料の付着等の偏りがなく、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0035】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態について、図7および図8を参照しながら詳細に説明する。なお、上記実施形態と同じ構成部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0036】
本実施形態においても、スロットルバルブ40は略円盤状の構造ではあるが、図7及び図8に示すように、回転軸41の下側の第1開閉壁42が平らな平面で構成されているのに対し、上半円部分の第2開閉壁43が回転軸方向(図7に示す方向)から見て吸気流上流側の面が凹むような湾曲構造を有している。
したがって、本実施形態のスロットルバルブ40は、図7に示すように、回転軸41の軸方向から見て、この回転軸41の下方側の第1開閉壁42における全閉セット角度θ1が90°であるのに対して、上方側の第2開閉壁43の実質的全閉セット角度θ2が90°よりも小さくなる。すなわち、第2開閉壁43は、第1開閉壁42の最大回転半径L1よりも大きい最大回転半径L2を有している。
【0037】
本実施形態における作用について説明する。
本実施形態におけるスロットルバルブ40は、図7に示す状態においては、バルブ全閉状態でスロットルバルブ40の先端縁40aの全体がスロットルボディ12の内壁面12aに最も接近した状態であるが、スロットルバルブ40が回転(矢印R方向の回転)することにより、前掲の各実施形態と同様に、スロットルボディ12の内壁面12aとスロットルバルブ40の先端縁40aとの隙間が大きくなる。
【0038】
そして、このスロットルバルブ40の回転のとき、第2開閉壁43の先端縁40aと内壁面12aとの距離に比べて、第1開閉壁42の先端縁40aと内壁面12aとの距離が小さくなる。したがって、前掲の各実施形態と同様に、インジェクタ11の噴霧口11aが配置された側のバルブ開口面積が小さい状態となることにより、噴霧口11aに接近した側の吸入空気流量を反対側よりも少なくすることができ、インジェクタ11からの噴霧流11fに対する空気圧(Ar)を小さく抑えることができる。
したがって、本実施形態においても、前掲の各実施形態と同様に、吸気流による噴霧流11fへの圧力を制御して、吸気ポート5の下側内壁面への燃料の付着等の偏りを無くして、濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
【0039】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態について、図9〜図11を参照しながら詳細に説明する。なお、上記実施形態と同じ構成部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施形態においても、スロットルバルブ50は円盤状の構造ではあるが、図9及び図10に示すように、回転軸51の位置が下側にずれた構造となっている。本実施形態にスロットルバルブ50は、下側の第1開閉壁52と上側の第2開閉壁53が一平面で構成されており、回転軸51が中心線CLから下側にずれた位置に取り付けられている。
【0041】
したがって、本実施形態のスロットルバルブ40は、図9に示すように、回転軸51の軸方向から見て、この回転軸51の下方側の第1開閉壁52の全閉セット角度θ1と、上方側の第2開閉壁53の全閉セット角度θ2とは共に90°である。
しかし、回転軸51が下方にずれた分だけ、回転軸51に対してその長手方向中央で直交する方向において、第2開閉壁53は、第1開閉壁52の長さL1よりも大きい長さL2を有している。
なお、第2開閉壁53の輪郭形状は、スロットルバルブ40がほぼ全開状態(中心線CLにほぼ平行な状態)まで回転できるように、適宜略長円形状に構成されている。
【0042】
本実施形態における作用について説明する。
本実施形態におけるスロットルバルブ50は、図9に示す状態においては、バルブ全閉状態でスロットルバルブ50の先端縁50aの全体がスロットルボディ12の内壁面12aに最も接近した状態にある。
しかしながら、図11に示すように、スロットルバルブ50が所定方向に回転(矢印R方向の回転)すると、前掲の各実施形態と同様に、スロットルボディ12の内壁面12aとスロットルバルブ50の先端縁50aとの隙間d1,d2は大きくなる。
そして、このスロットルバルブ50が回転したとき、第2開閉壁53の先端縁50aと内壁面12aとの距離d2に比べて、第1開閉壁52の先端縁50aと内壁面12aとの距離d1が小さい。このことにより、前掲の各実施形態と同様に、インジェクタ11の噴霧口11aの配置された側のバルブ開口面積が反対側よりも小さくなり、噴霧口11aに接近した側の吸入空気流量を反対側よりも少なくすることができ、この結果、インジェクタ11からの噴霧流11fに対する空気圧(Ar)を小さく抑えることができる。
【0043】
したがって、噴霧口11aに接近した側の隙間d1を小さくでき、該側の吸気流量を少なくして噴霧流11fへの空気圧力を弱くし、噴霧を均一にして濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。また、本実施形態におけるスロットルバルブ50は、平坦な一面にて構成されるので、その製造性は極めてよく、さらに、回転軸51の位置設定によって該回転軸の上下端での開口面積相違の設定が容易に出来る。
【0044】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態について、図12および図13を参照しながら詳細に説明する。なお、上記実施形態と同じ構成部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、スロットルバルブ60は前掲の実施形態同様に円盤状の構造ではある。そして、図12および図13に示すように、回転軸61の下側の第1開閉壁62と上側の第2開閉壁63とは第4実施形態と同様に一平面で構成されている。しかし、本実施形態においては、回転軸51が中心線CL上に位置して取り付けられている。また、本実施形態のスロットルバルブ60は、下側の第1開閉壁62の回転半径L1に比べて、上側の第2開閉壁63の回転半径L2が小さく構成されている。
【0046】
したがって、本実施形態のスロットルバルブ60は、図12に示すように、回転軸61の軸方向から見て、この回転軸61の下方側の第1開閉壁62の全閉セット角度θ1と、上方側の第2開閉壁63の全閉セット角度θ2とは共に90°であるが、第2開閉壁63が、第1開閉壁62の最大回転半径L1よりも小さく構成されている。
【0047】
本実施形態における作用について説明する。
本実施形態におけるスロットルバルブ60が図12に示す状態においては、バルブ全閉状態でスロットルバルブ60の先端縁60aの全体がスロットルボディ12の内壁面12aに最も接近した状態である。
しかし、図12に示すように、スロットルバルブ60が回転(矢印R方向の回転)する前から上方側の隙間d2は大きく開かれており、スロットルボディ12の内壁面12aとスロットルバルブ60の先端縁60aとの隙間は、上側が常に大きくなる。
【0048】
したがって、前掲の各実施形態と同様に、インジェクタ11の噴霧口11aが配置された側のバルブ開口面積が反対側より小さく、噴霧口11aに接近した側の吸気流量を反対側よりも少なくでき、インジェクタ11からの噴霧流11fに対する空気圧(Ar)を小さく抑えることができる。これにより、前掲の各実施形態と同様に、噴霧口11aの噴霧流11fへの圧力を弱く出来るので、噴霧を均一にして濃度分布が均一な混合空気をシリンダ内に供給することができる。
また、スロットルバルブ60は従来同様に平坦な一面にて構成され、単に一端側が短くなっているだけであるので、その製造性は極めてよく、また、回転軸61の位置も従来と全く同じ位置でよく、バルブ周辺構造も従来と何ら変更する必要が無い。
【0049】
以上、本発明を適用した第1〜第5実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、スロットルバルブの開閉壁の屈曲構造、湾曲構造、回転軸を中心線からずらした構造、開閉壁の回転半径を小さくした構造等を適宜選択的に組み合わせた構成であってもよい。
また、前掲の実施形態は、本発明を自動二輪車に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、他の車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 内燃機関
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
5 吸気ポート
6 排気ポート
10 吸気装置
11 インジェクタ
11a 噴霧口
12 スロットルボディ
20,30,40,50,60 スロットルバルブ
20a,30a,40a,50a,60a 先端縁
21,31,41,51,61 回転軸
22,32,42,52,62 第1開閉壁
23,33,43,53,63 第2開閉壁
CL スロットルボディの中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポート(5)に隣接して配置されたスロットルボディ(12)内に回転軸(21,31,41,51,61)を有して揺動自在に設けられたスロットルバルブ(20,30,40,50,60)を備え、前記スロットルボディ(12)から前記吸気ポート(5)に向け且つ前記スロットルバルブ(20,30,40,50,60)よりも下流側にて燃料を噴霧するインジェクタ(11)を備える内燃機関(1)の吸気装置(10)において、
前記スロットルボディ(12)の内壁面(12a)と前記スロットルバルブ(20,30,40,50,60)の先端縁(20a,30a,40a,50a,60a)との隙間の大きさは、前記回転軸(21,31,41,51,61)にその長手方向中央で直交する断面において、前記インジェクタ(11)の噴霧口(11a)が配置された側が小さくなるように構成されたことを特徴とする内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項2】
前記インジェクタ(11)が前記スロットルボディ(12)の下側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項3】
前記スロットルバルブ(20,30,40)は、前記回転軸(21,31,41)の軸方向から見て、該回転軸(21,31,41)の一方側の全閉セット角度(θ1)と他方側の全閉セット角度(θ2)が異なるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項4】
前記スロットルバルブ(20,30,40)は、前記回転軸(21,31,41)の軸方向から見て、第1開閉壁(22,32,42)と第2開閉壁(23,33,43)の2つの平面が90°より大きく180°より小さい角度(α)を有するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項5】
前記スロットルバルブ(20,30,40,50,60)は、第1開閉壁(22,32,42,52,62)と第2開閉壁(23,33,43,53,63)とが前記回転軸(21,31,41,51,61)を挟んで反対側に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項6】
前記スロットルバルブ(50,60)は、前記回転軸(51,61)の軸方向から見て真直ぐな平面構造であり、該回転軸(51,61)を挟んで一方側面の第1開閉壁(52,62)と他方側の第2開閉壁(53,63)とが前記回転軸(51,61)に対してその長手方向中央で直交する方向で異なった長さを有するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項7】
前記スロットルバルブ(50)は、前記インジェクタ(11)が配置された側の第1開閉壁(52)が短くなるように前記回転軸(51)が前記スロットルボディ(12)の中心線(CL)から偏倚して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。
【請求項8】
前記スロットルバルブ(60)は、前記回転軸(61)が前記スロットルボディ(12)の中心線(CL)上に位置し、且つ前記インジェクタ(11)が配置された側の第1開閉壁(62)が反対側の第2開閉壁(63)よりも長くなるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関(1)の吸気装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−122382(P2012−122382A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272844(P2010−272844)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】