説明

内燃機関の排気制御装置

【課題】 自動車等の車両に対する搭載性の向上と重量の軽減化とコストの低減化とを実現することを課題とする。
【解決手段】 流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを連動可能となるように駆動するバルブ駆動装置は、アクチュエータの動力(モータトルク)により回転駆動されるカムプレート4に、その回転に同期して流量調整バルブ1を回転駆動する第1駆動部と、カムプレート4の回転に対応して流量調整バルブ1と異なる動作パターンでウェイストゲートバルブ2を回転駆動する第2駆動部とを設けている。この第2駆動部に、流量調整バルブ1と異なるウェイストゲートバルブ2の動作パターンに対応した形状のカム溝63を設けたことにより、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを互いに独立して開閉動作させるカムプレート4を回転駆動するアクチュエータ3が1個で済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気制御装置に関するもので、特にターボ過給機を備え、内燃機関の過給圧を制御する過給圧制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、内燃機関(エンジン)の吸入空気(吸気)を過給するターボ過給機(ターボチャージャ)を備え、エンジンの過給圧を制御する過給圧制御装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のターボチャージャは、図7に示したように、エンジン101のエキゾーストマニホールド102に接続するタービンハウジング103と、このタービンハウジング103の中央部に設置されるタービンホイール104とを備えている。また、タービンハウジング103には、排気が導入される入口部からホイール収容室まで延びるタービンスクロール105、およびホイール収容室から出口部まで延びる出口管106等が設けられている。
【0003】
タービンスクロール105の内部は、仕切り壁110によって2つの第1、第2流路111、112に分割されている。また、第2流路112の入口部には、切替バルブ113が設けられている。そして、低速時には、切替バルブ113によって第2流路112の入口部を閉鎖して排気を第1流路111のみに流し、高速時には切替バルブ113を開いて排気を第1、第2流路111、112の双方に流すように構成されている。
また、第1流路111には、タービンホイール104をバイパスして排気を出口部に導くウェイストゲート流路115が開口している。このウェイストゲート流路115をウェイストゲートバルブ116によって開閉することで、過給圧が予め設定した最高過給圧を超えないように制御される。
【0004】
また、ターボチャージャのタービンホイールよりも上流側のタービン入口排気圧を所定値以下に制御する排気圧制御装置が公知である(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載のターボチャージャは、図8に示したように、タービンハウジング103のホイール収容室内にタービンホイール104が収容されている。タービンホイール104の周囲には、渦巻き状のタービンスクロール105が形成されている。エンジンからタービンハウジング103の入口部に導入された排気は、タービンスクロール105を通過してタービンホイール104に導かれる。
そして、タービンスクロール105は、隔壁120によって第1流路121と第2流路122とに分岐している。そして、第1流路121と第2流路122とに分岐する分岐部123には、第2流路122を流れる排気の流量を調整する流路面積制御バルブ124が設けられている。
第2流路122には、排気をタービンホイール104より迂回させるウェイストゲート流路125が接続されている。第2流路122とウェイストゲート流路125との接続部には、ウェイストゲート流路125を流れる排気の流量を調整するウェイストゲートバルブ126が設けられている。
【0005】
また、可変容量ターボチャージャのタービンのロータ入口に設けた可変ノズルの開度制御と、エンジンの排気通路に対してタービンをバイパスするように設けたバイパス通路に設置されたウェイストゲートバルブの開度制御によって、エンジンの過給圧(コンプレッサ出口圧)制御を行う過給圧制御装置が公知である(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3に記載の過給圧制御装置は、図9に示したように、ウェイストゲートバルブと可変ノズルとを備え、単一のアクチュエータ107のアクチュエータロッド131に可変ノズル開閉駆動用ロッド132とウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133とを連結した装置からなる。
【0006】
図9(a)は、エンジンの低速回転領域におけるアクチュエータロッド131と可変ノズル開閉駆動用ロッド132およびウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133との連結構造を示す。
図9(b)は、エンジンの中速回転領域におけるアクチュエータロッド131と可変ノズル開閉駆動用ロッド132およびウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133との連結構造を示す。
図9(c)は、エンジンの高速回転領域におけるアクチュエータロッド131と可変ノズル開閉駆動用ロッド132およびウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133との連結構造を示す。
【0007】
また、排気を第1ノズル部に導く第1流路と排気を第2ノズル部に導く第2流路とを有するツインノズル式のターボチャージャを備えた過給圧制御装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特許文献4に記載のターボチャージャのタービンハウジング103には、図10に示したように、隔壁140によって第1ノズル部に導く第1流路141と第2ノズル部に導く第2流路142とに仕切られている。このタービンハウジング103には、第1流路141と第2流路142とを流れる排気の流量を調整する流量調整バルブ143が設けられている。また、タービンハウジング103には、排気圧が過大とならないように、バイパス流路145とウェイストゲートバルブ146とが設けられている。
【0008】
電気制御装置147に制御される電動アクチュエータ108は、ロッド149を介して流量調整バルブ143を駆動するように構成されている。
また、流量調整バルブ143は、電動アクチュエータ108によって第1の位置から第2の位置に駆動されると、第1流路141と第2流路142とを連通する貫通孔を開くように構成されている。
また、流量調整バルブ143は、電動アクチュエータ108によって第2の位置から第3の位置に駆動されると、ウェイストゲートバルブ146を付勢力に抗して押動してバイパス流路145を開くように構成されている。
【0009】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載の過給圧制御装置においては、切替バルブ113、ウェイストゲートバルブ116を設置しているので、切替バルブ113を駆動するアクチュエータと、ウェイストゲートバルブ116を駆動するアクチュエータとが必要になる。すなわち、アクチュエータが2つ必要となるので、エンジンの排気流路の構造が複雑化すると共に、コストを上昇させるという問題が生じている。
また、特許文献2に記載の排気圧制御装置においては、流路面積制御バルブ124、ウェイストゲートバルブ126を設置しているので、流路面積制御バルブ124を駆動するアクチュエータと、ウェイストゲートバルブ126を駆動するアクチュエータとが必要になる。すなわち、アクチュエータが2つ必要となるので、エンジンの排気流路の構造が複雑化すると共に、コストを上昇させるという問題が生じている。
【0010】
また、特許文献3に記載の過給圧制御装置においては、アクチュエータロッド131と可変ノズル開閉駆動用ロッド132およびウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133との間にクリアランスによる非作動区間を有している。これにより、可変ノズルやバルブの開度が安定しないため、流量の制御精度が低下したり、非作動区間からの作動時に衝突打音が発生したりする可能性がある。また、可変ノズル開閉駆動用ロッド132およびウェイストゲートバルブ開閉駆動用リンク133を、アクチュエータロッド131に押し付ける方向に付勢する付勢力が必要となる。この結果として、アクチュエータ107の作動力が増えるという問題が生じている。
また、特許文献4に記載の過給圧制御装置においては、流量調整バルブ143とウェイストゲートバルブ146との間にガタが存在するため、当接する場合に衝突により打音が発生したり、流量の制御精度が低下したりする可能性がある。また、ウェイストゲートバルブ146を流量調整バルブ143に押し付ける方向に付勢する付勢力が必要となるので、電動アクチュエータ108の作動力が増えるという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭62−162349号公報
【特許文献2】特開2008−196332号公報
【特許文献3】特開平10−089081号公報
【特許文献4】特開2009−024584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、搭載性の向上と重量の軽減化とコストの低減化とを実現することのできる内燃機関の排気制御装置を提供することにある。さらに、アクチュエータの作動力を軽減することのできる内燃機関の排気制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、ターボ過給機は、内部にホイール収容室が形成されたタービンハウジングを有している。このタービンハウジングのホイール収容室には、内燃機関の排気により回転駆動されるタービンホイールが収容されている。
また、タービンハウジングには、内燃機関の排気をホイール収容室に導入する排気導入流路を、タービンホイールの回転軸方向に2分割して設けられる2つの第1、第2流路と、内燃機関の排気をホイール収容室から迂回(バイパス)させるバイパス流路とが形成されている。
【0014】
また、タービンハウジングには、排気導入流路(2つの第1、第2流路)およびバイパス流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整する2つの第1、第2バルブと、これらの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させるカム部材を有する連動機構と、カム部材を介して、前記2つの第1、第2バルブを駆動するアクチュエータとが設置されている。そして、2つの第1、第2バルブは、タービンハウジングに回転自在に支持されている。
また、2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させるカム部材に、タービンハウジングに回転自在に支持される回転軸、カム部材の回転に同期して第1バルブを回転駆動する第1駆動部、およびカム部材の回転に対応して第1バルブと異なる動作パターンで第2バルブを回転駆動する第2駆動部を設けている。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、カム部材に、タービンハウジングに回転自在に支持される回転軸、および2つの第1、第2バルブをそれぞれ駆動する2つの第1、第2駆動部を設けている。そして、第1駆動部に連結された第1バルブは、カム部材の回転に同期して回転駆動されるように構成されている。また、第2駆動部に連結された第2バルブは、カム部材の回転に対応して第1バルブと異なる動作パターンで回転駆動されるように構成されている。
これによって、アクチュエータが1個で済むので、搭載性の向上と重量の軽減化とコストの低減化とを実現することができる。
【0016】
そして、カム部材の第1駆動部と第1バルブとの間のガタ付きを抑えることができるので、第1バルブの作動時に打音が発生することなく、2つの第1、第2流路またはバイパス流路を流れる排気の流量の制御精度を向上することができる。また、カム部材の第2駆動部と第2バルブとの間のガタ付きを極力抑えることができるので、第2バルブの作動時に打音が発生することなく、2つの第1、第2流路またはバイパス流路を流れる排気の流量の制御精度を向上することができる。
また、2つの第1、第2バルブをカム部材に押し付ける方向に付勢する付勢力が不要となるので、アクチュエータの作動力を軽減することができる。つまり少ない作動力で、2つの第1、第2バルブをゆっくりと動かすことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、カム部材の第1駆動部は、カム部材の回転軸を中心にして第1バルブとカム部材とが一体回転可能となるように、第1バルブを直接的に連結する直結部を構成されている。この場合、アクチュエータを動作させると、2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、カム部材の第2駆動部は、第1バルブと異なる、第2バルブの動作パターンに対応した形状のカムプロフィールを備えている。この場合、アクチュエータを動作させると、2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、カムプロフィールは、第2バルブを閉弁する閉弁区間および第2バルブを開弁する開弁区間を有している。
ここで、閉弁区間とは、カム部材の回転角度が最小値から中間値まで変化する間、第1バルブの開閉状態に関わらず、第2バルブを閉弁することで、2つの第1、第2バルブが連動しない非連動区間のことである。また、開弁区間とは、カム部材の回転角度が中間値から最大値まで変化する間、2つの第1、第2バルブの開度制御(排気の流量を連続的または段階的に変更する流量制御)を行う連動区間のことである。この場合、アクチュエータを動作させると、2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、第1バルブは、主に2つの第1、第2流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整する第1流量調整バルブとして使用される。この場合、アクチュエータを動作させることにより、第1バルブの開度制御を実施することで、主に2つの第1、第2流路を流れる排気の流量を連続的または段階的に変更することができる。 請求項6に記載の発明によれば、第2バルブは、主にバイパス流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整する第2流量調整バルブ(排気バイパスバルブ、ウェイストゲートバルブ)として使用される。この場合、アクチュエータを動作させることにより、第2バルブの開度制御を実施することで、主にバイパス流路を流れる排気の流量を連続的または段階的に変更することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、タービンハウジングは、ホイール収容室よりも(内燃機関の)排気の流れ方向の上流側に位置する入口部(タービンハウジングの排気流方向の上流端で開口する入口ポート)、ホイール収容室よりも(内燃機関の)排気の流れ方向の下流側に位置する出口部(タービンハウジングの排気流方向の下流端で開口する出口ポート)、第1流路から第2流路を分岐させる第1分岐部、および第2流路からバイパス流路を分岐させる第2分岐部を有している。
請求項8に記載の発明によれば、第1流路とは、入口部から流入した内燃機関の排気をホイール収容室に導く第1排気導入流路のことである。
また、第2流路とは、第1分岐部から流入した内燃機関の排気をホイール収容室に導く第2排気導入流路のことである。
また、バイパス流路とは、第2分岐部から流入した内燃機関の排気をホイール収容室を迂回させて出口部に導くウェイストゲート流路のことである。
そして、第1分岐部には、第1バルブにより開閉される第1弁孔が設けられている。また、第2分岐部には、第2バルブにより開閉される第2弁孔が設けられている。
【0021】
ここで、2つの第1、第2バルブによって2つの第1、第2分岐部(第1、第2弁孔)を共に閉鎖した場合、第1流路のみを通ってホイール収容室に内燃機関の排気が導入される。
また、第1バルブによって第1分岐部(第1弁孔)を開放し、第2バルブによって第2分岐部(第2弁孔)を閉鎖した場合、2つの第1、第2流路の双方を通ってホイール収容室に内燃機関の排気が導入される。
また、2つの第1、第2バルブによって2つの第1、第2分岐部(第1、第2弁孔)を共に開放した場合、内燃機関の排気が2つの第1、第2流路の双方を通ってホイール収容室に導入され、且つバイパス流路を通ってホイール収容室を迂回する。
以上のように、第1、第2バルブの開閉動作を制御することで、2つの第1、第2流路およびバイパス流路を流れる排気の流量を調整できるので、内燃機関の過給圧を制御することができる。また、タービンホイールの過回転を防止でき、過給圧が過大とならないようになる。つまり過剰に過給圧が上昇することはない。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、アクチュエータおよび連動機構は、ターボ過給機のタービンハウジングの外部に露出している。この場合には、タービンハウジングの外部を通過する外気(冷却風)によってアクチュエータおよび連動機構が冷却されるので、アクチュエータおよび連動機構の耐熱性を低く設定することができる。これにより、アクチュエータおよび連動機構の材質として、耐熱性の低い安価な材料を使用することができるので、コストの低減化を図ることができる。
ここで、アクチュエータに、カム部材に直接的に連結し、カム部材をその回転軸を中心にして回転方向に往復移動するように駆動するロッドを設けても良い。また、アクチュエータを、動力源であるモータ、このモータの回転を減速する減速機構、この減速機構の回転運動をロッドの直線運動に変換する変換機構等によって構成しても良い。また、アクチュエータを、動力源であるモータ、このモータの回転運動をロッドの直線運動に変換する変換機構等によって構成しても良い。
請求項10に記載の発明によれば、内燃機関の運転状況に基づいて、アクチュエータを制御する制御ユニットを備えている。
【0023】
請求項11に記載の発明によれば、内燃機関の低速運転時には、2つの第1、第2バルブを共に閉弁する第1駆動モードに設定される。このとき、第1流路のみを通ってホイール収容室に内燃機関の排気が導入される。
また、内燃機関の中速運転時には、第1バルブを開弁し、第2バルブを閉弁する第2駆動モードに設定される。このとき、2つの第1、第2流路の双方を通ってホイール収容室に内燃機関の排気が導入される。なお、内燃機関の運転状況に対応して第1バルブの開度制御を実施しても良い。
また、内燃機関の高速運転時には、2つの第1、第2バルブを共に開弁する第3駆動モードに設定される。このとき、内燃機関の排気が2つの第1、第2流路の双方を通ってホイール収容室に導入され、且つバイパス流路を通ってホイール収容室を迂回する。なお、内燃機関の運転状況に対応して2つの第1、第2バルブの開度制御を実施しても良い。
【0024】
これによって、2つの第1、第2流路を流れる排気の流量およびバイパス流路を流れる排気の流量を調整できるので、内燃機関の過給圧を制御することができる。
また、内燃機関の高速運転時におけるターボ過給機の排気圧を低減することができる。これにより、タービンホイールの過回転を防止できるので、過給圧が過大とならないようになる。つまり過剰に過給圧が上昇することはない。
したがって、内燃機関の低速運転から高速運転に至るまでの広い運転領域に渡ってターボ過給機の効率を向上することができ、且つ内燃機関の広い運転領域に渡って過給圧を最適化できるので、燃費を向上させることができる。
【0025】
請求項12に記載の発明によれば、制御ユニットが、カム部材の回転角度を検出する回転角度検出手段を備えている。この回転角度検出手段によって検出される実カム角度が、制御目標値と一致するように、アクチュエータをフィードバック制御することにより、制御目標値(例えば目標カム角度)に対するカム部材の回転角度の応答性(収束性)を向上することができる。
請求項13に記載の発明によれば、制御ユニットが、過給圧を検出する過給圧検出手段を備えている。この過給圧検出手段によって検出される実過給圧が制御目標値と一致するように、アクチュエータをフィードバック制御することにより、制御目標値(例えば目標過給圧)に対する内燃機関の過給圧の応答性(収束性)を向上することができる。
【0026】
ここで、回転角度検出手段で検出される実カム角度(カム部材の回転角度)に基づいて2つの第1、第2バルブの実バルブ開度を推定できる。そして、2つの第1、第2バルブの実バルブ開度の推定値に基づいて内燃機関の過給圧を推定できる。この過給圧の推定値を目標過給圧として実過給圧がこの目標過給圧と一致するようにフィードバック制御することにより、製品バラツキ等による制御誤差を抑制できるので、より高精度な2つの第1、第2バルブの開度制御を実施することができる。したがって、内燃機関の運転状況に対応した最適なバルブ挙動を実現できるので、内燃機関の運転状況に対応した最適な過給圧を得ることができ、且つ燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】内燃機関の過給圧制御装置を示した断面図である(実施例1)。
【図2】図1のA−A断面図である(実施例1)。
【図3】(a)はターボチャージャの要部を示した断面図で、(b)はバルブ連動機構を示した平面図である(実施例1)。
【図4】(a)はターボチャージャの要部を示した断面図で、(b)はバルブ連動機構を示した平面図である(実施例1)。
【図5】(a)はターボチャージャの要部を示した断面図で、(b)はバルブ連動機構を示した平面図である(実施例1)。
【図6】(a)はカム回転角度(カム角度)に対するバルブ開度を示した特性図で、(b)はエンジン回転速度(エンジン回転数)に対するバルブ開度を示した特性図である(実施例1)。
【図7】過給圧制御装置を示した断面図である(従来の技術)。
【図8】排気圧制御装置を示した断面図である(従来の技術)。
【図9】(a)〜(c)はロッドとリンクとの連結構造を示した説明図である(従来の技術)。
【図10】過給圧制御装置を示した断面図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、自動車等の車両に対する搭載性の向上と重量の軽減化とコストの低減化とを実現し、且つアクチュエータの作動力を軽減するという目的を、2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させるカム部材に、このカム部材の回転に同期して第1バルブを回転駆動する第1駆動部(直結部)、およびカム部材の回転に対応して第1バルブと異なる動作パターンで第2バルブを回転駆動する第2駆動部(カムプロフィール)を設けたことで実現した。
【実施例1】
【0029】
[実施例1の構成]
図1ないし図6は本発明の実施例1を示したもので、図1および図2は内燃機関の過給圧制御装置を示した図である。
【0030】
本実施例の内燃機関の制御装置(エンジン制御システム)は、内燃機関(エンジン)の過給圧を制御する過給圧制御装置(内燃機関の過給圧制御装置)と、この過給圧制御装置を制御するエンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)とを備え、エンジンの各気筒毎の燃焼室より排出される排気ガス(排気)を制御する内燃機関の排気制御装置として使用されるものである。
過給圧制御装置は、図1ないし図5に示したように、エンジンの各気筒毎の燃焼室に供給される吸入空気(吸気)を過給するターボ過給機(ターボチャージャ)と、このターボチャージャの排気導入流路(2つの第1、第2流路11、12)を開閉する流量調整バルブ1と、ターボチャージャのウェイストゲート流路(バイパス流路13)を開閉するウェイストゲートバルブ2と、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを回転駆動するアクチュエータ3を有するバルブ駆動装置とを備えている。
【0031】
ここで、バルブ駆動装置は、流量調整バルブ1、ウェイストゲートバルブ2を連動可能となるように連結するバルブ連動機構と、動力源である電動モータを含んで構成されるアクチュエータ3とを備えている。
バルブ連動機構は、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを互いに独立して開閉動作させるカムプレート4、およびこのカムプレート4とウェイストゲートバルブ2とを連結するリンク機構等によって構成されている。このリンク機構は、カムプレート4に連結すると共に、ストローク方向に往復移動するリンクレバー5、このリンクレバー5をその往復移動方向(リンクレバー5のストローク方向、軸線方向)に摺動自在に支持するレバー軸受(ジャーナル軸受)6、およびこのリンクレバー5とウェイストゲートバルブ2とを連結するリンクアーム7等を有している。
アクチュエータ3は、軸線方向に往復移動してカムプレート4を回転駆動するロッド、電力の供給を受けて駆動力(モータトルク)を発生する電動モータ、この電動モータの回転を減速する減速機構、およびこの減速機構の回転運動をロッドの往復直線運動に変換する変換機構等によって構成されている。
なお、バルブ駆動装置の開度制御の詳細は後述する。
【0032】
ECUには、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)、タイマー等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。このECUは、エアフロメータ、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、バルブ開度センサ(カム回転角度センサ)、過給圧センサおよび車速センサ等の各種センサのセンサ出力信号が、A/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
マイクロコンピュータは、クランク角度センサ、バルブ開度センサ、過給圧センサ等より出力される電気信号に基づいて、エンジンの運転状況(エンジン情報)を計測(算出)し、この算出したエンジン情報を各種エンジン制御(例えば流量調整バルブ1、ウェイストゲートバルブ2の開度制御等)に使用する。
なお、ECUによる流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開度制御の詳細は後述する。
【0033】
エンジンは、複数の気筒(シリンダ)を有する多気筒ガソリンエンジンが採用されている。このエンジンは、自動車等の車両のエンジンルーム内にターボチャージャと共に設置されている。但し、ガソリンエンジンに限定するものでない。
エンジンは、複数の気筒が気筒配列方向に直列に配置されたシリンダブロックと、複数の吸気ポートおよび複数の排気ポートを有するシリンダヘッドとを備えている。
シリンダブロックの内部には、気筒配列方向に複数の燃焼室が形成されている。また、シリンダブロックの各気筒の内部に形成されるシリンダボア内には、連接棒を介して、クランクシャフトに連結されたピストンがその摺動方向に摺動自在に支持されている。
シリンダヘッドの各気筒毎の吸気ポートには、吸気が流れる吸気管が接続されている。この吸気管の途中には、ターボチャージャのコンプレッサ、インタークーラ、スロットルバルブおよびインテークマニホールド等が設置されている。
また、シリンダヘッドの各気筒毎の排気ポートには、排気ガス(排気)が流れる排気管が接続されている。この排気管の途中には、エキゾーストマニホールドおよびターボチャージャのタービン等が設置されている。
また、シリンダヘッドには、先端部が各気筒毎の燃焼室内に露出するようにスパークプラグが取り付けられている。そして、シリンダヘッドには、各気筒毎の吸気ポート内または燃焼室内に最適なタイミングで燃料を噴射するインジェクタが取り付けられている。
エンジンの各気筒毎の吸気ポートは、吸気バルブによって開閉される。また、エンジンの各気筒毎の排気ポートは、排気バルブによって開閉される。
【0034】
ターボチャージャは、コンプレッサとタービンとを備え、吸気をコンプレッサで圧縮し、圧縮された空気をエンジンの各気筒毎の燃焼室に送り込むターボ過給機である。
タービンは、タービンホイール14およびタービンハウジング15を備えている。
コンプレッサは、コンプレッサホイール16およびコンプレッサハウジング17を備えている。
ターボチャージャは、タービンホイール14が排気により回転駆動されると、コンプレッサホイール16も回転し、このコンプレッサホイール16が吸気を圧縮する。
コンプレッサホイール16は、円周方向に複数のコンプレッサブレード(翼)を有している。このコンプレッサホイール16は、タービンシャフト18を介して、タービンホイール14に直接的に連結して回転駆動(直結駆動)される。
コンプレッサハウジング17は、コンプレッサホイール16の周囲を取り囲むように設置されている。
コンプレッサハウジング17には、内部に流路を分割する仕切り壁(隔壁)が設けられていない渦巻き状のコンプレッサスクロール19が形成されている。このコンプレッサスクロール19の中央部には、コンプレッサホイール16を回転自在に収容するホイール収容室20が形成されている。
【0035】
タービンは、ツインスクロール型のタービンであって、エンジンの排気により回転駆動されるタービンホイール14と、このタービンホイール14の周囲を取り囲むタービンハウジング15とを備えている。
タービンホイール14は、円周方向に複数のタービンブレード(翼)を有している。このタービンホイール14は、タービンシャフト18を介して、コンプレッサホイール16と直接的に連結して回転駆動(直結駆動)する。
タービンハウジング15には、内部に流路を分割する仕切り壁(隔壁)が設けられた渦巻き状のタービンスクロール21が形成されている。このタービンスクロール21の中央部には、タービンホイール14を回転自在に収容するホイール収容室22が形成されている。
【0036】
タービンスクロール21の内部には、エンジンの排気を、ホイール収容室22に導入する排気導入流路が形成されている。そして、タービンスクロール21の内部には、排気導入流路を、タービンホイール14の回転軸方向に2分割して設けられる2つの第1、第2流路11、12が形成されている。
また、タービンスクロール21は、ホイール収容室22よりも排気の流れ方向(排気流方向)の上流側に位置する入口ポート(入口部)23を有している。
ホイール収容室22の入口部は、2つの第1、第2ノズルを介して、2つの第1、第2流路11、12にそれぞれ連通している。また、ホイール収容室22の出口部は、1つの排気導出流路24に連通している。
また、タービンハウジング15は、ホイール収容室22よりも排気流方向の下流側に位置する出口ポート(出口部)25を有している。
入口ポート23は、ホイール収容室22の接線方向で開口した排気取入口であり、エンジンのエキゾーストマニホールドに接続されている。
出口ポート25は、ホイール収容室22の中心部を通り、タービンホイール14の回転軸方向の一方側で開口した排気排出口であり、排気浄化装置、マフラーへと排気を導く排気管に接続されている。
【0037】
ここで、本実施例のタービンハウジング15は、タービンシャフト18を回転自在に軸支する2つの軸受26、27を保持する軸受ハウジング28を介して、コンプレッサハウジング17に連結されている。このタービンハウジング15の内部には、エンジンの排気を、ホイール収容室22から出口ポート25に導く排気導出流路24、およびエンジンの排気を、ホイール収容室22を迂回(バイパス)させて排気導出流路24、出口ポート25に導くバイパス流路13が形成されている。
また、タービンハウジング15には、第1流路11と第2流路12とを区画する第1隔壁(仕切り壁)31、および2つの第1、第2流路11、12とバイパス流路13とを区画する第2隔壁(仕切り壁)32が設けられている。
また、タービンスクロール21には、第1流路11から第2流路12を分岐させる第1分岐部、および2つの第1、第2流路11、12、特に第2流路12からバイパス流路13を分岐させる第2分岐部が設けられている。
【0038】
ここで、本実施例の第1分岐部は、流量調整バルブ1により開閉される第1弁孔、およびこの第1弁孔の周囲を取り囲むように流量調整バルブ1のシート部が着座する円環状の第1弁座(第1バルブシート)を有している。この第1バルブシートは、第1隔壁31の第2流路側壁面から流量調整バルブ1側に突出している。
なお、第1弁孔は、第1流路11と第2流路12とを連通するように第1隔壁31を貫通すると共に、流量調整バルブ1により開口面積が変更される第1連通孔33となっている。
また、本実施例の第2分岐部は、ウェイストゲートバルブ2により開閉される第2弁孔、およびこの第2弁孔の周囲を取り囲むようにウェイストゲートバルブ2のシート部が着座する円環状の第2弁座(第2バルブシート)を有している。この第2バルブシートは、第2隔壁32のバイパス流路側壁面からウェイストゲートバルブ2側に突出している。
なお、第2弁孔は、2つの第1、第2流路11、12、特に第2流路12とバイパス流路13とを連通するように第2隔壁32を貫通すると共に、ウェイストゲートバルブ2により開口面積が変更される第2連通孔34となっている。
【0039】
2つの第1、第2流路11、12は、共にタービンホイール14へ排気を導き、その排気の力でタービンホイール14を回転させるための排気導入流路である。
2つの第1、第2流路11、12は、第1隔壁31で仕切られている。
第1流路11は、渦巻き状の第1スクロール部を形成し、また、第2流路12は、渦巻き状の第2スクロール部を形成している。
第1流路11は、エンジンの各気筒毎の燃焼室、排気ポートにエキゾーストマニホールドおよび入口ポート23を介して連通し、且つ入口ポート23から流入した排気をホイール収容室22に導く第1排気導入流路である。
第2流路12は、第1流路11に第1連通孔33を介して連通し、且つ第1連通孔(第1分岐部)33から流入した排気をホイール収容室22に導く第2排気導入流路である。
【0040】
バイパス流路13は、第2連通孔34を介して連通し、第2流路12から流入した排気をホイール収容室22を迂回させて排気導出流路24、出口ポート25に導くウェイストゲート流路である。
なお、バイパス流路13を、エンジンの各気筒毎の燃焼室に入口ポート23を介して連通し、且つ入口ポート23から流入した排気をホイール収容室22を迂回させるウェイストゲート流路としても良い。
ここで、排気の流量が大きくなった場合に、全ての排気をタービンホイール14を経由して排出していると排気抵抗となる場合がある。その場合にはウェイストゲートバルブ2を全開(バイパス流路13を開放)して排気を放出する。
【0041】
流量調整バルブ1は、2つの第1、第2流路11、12を流れる排気の流量を開閉動作により調整する第1流量調整弁の弁体であって、第1隔壁31の第1バルブシートに対して着座、離脱して第1連通孔33を閉鎖、開放すると共に、第1連通孔33の開口面積を連続的に変更して2つの第1、第2流路11、12を流れる排気の流量を制御している。 流量調整バルブ1は、図6(a)に示したように、カムプレート4の回転角度が最小値(例えば0°)から最大値(例えば90°)まで変化する間、そのバルブ開度が全閉開度(例えば0°)から全開開度(例えば90°)まで連続的に変化する。
流量調整バルブ1は、図6(b)に示したように、エンジンが全負荷運転時の低速運転時に全閉状態となる。また、流量調整バルブ1は、エンジンの中速運転時に開弁して、エンジン回転速度に対応してバルブ開度が全閉開度から中間開度まで開度制御される。また、流量調整バルブ1は、エンジンの高速運転時に開弁して、エンジン回転速度に対応してバルブ開度が中間開度から全開開度まで開度制御される。
【0042】
流量調整バルブ1は、バルブアーム8の出力部に支持固定されている。この流量調整バルブ1は、第1連通孔33を開閉する円板状の閉鎖部、およびこの閉鎖部の端面より突出した突出部41を有している。
突出部41の外周には、円環状の周方向溝42が形成されている。この周方向溝42には、突出部41の外周にバルブアーム8を嵌め合わせた際に、流量調整バルブ1からのバルブアーム8の抜け止めを行うワッシャまたはCリング等のバルブアーム抜け止め手段43が装着されている。
バルブアーム8は、一端側にカムプレート4に連結する入力部を有し、且つ他端側に流量調整バルブ1に連結する出力部を有している。バルブアーム8の入力部には、カムプレート4の第1駆動部に固定されたヒンジピン44が一体的に形成(または固定)されている。また、バルブアーム8の出力部には、流量調整バルブ1の突出部41が嵌合する嵌合孔45が形成されている。また、バルブアーム8は、図示しないベアリングを介して、タービンハウジング15に回転自在に支持されている。
【0043】
ウェイストゲートバルブ2は、バイパス流路13を流れる排気の流量を開閉動作により調整する第2流量調整弁の弁体であって、第2隔壁32の第2連通孔34の開口周縁部に対して着座、離脱して第2連通孔34を閉鎖、開放すると共に、第2連通孔34の開口面積を連続的に変更してバイパス流路13を流れる排気の流量を制御している。
ウェイストゲートバルブ2は、図6(a)に示したように、カムプレート4の回転角度が最小値(例えば0°)から中間値(例えば45°)まで変化する間、全閉状態に維持される。また、ウェイストゲートバルブ2は、カムプレート4の回転角度が中間値(例えば45°)から最大値(例えば90°)まで変化する間、そのバルブ開度が全閉開度(例えば0°)から全開開度(例えば45°)まで連続的に変化する。
ウェイストゲートバルブ2は、図6(b)に示したように、エンジンの低速、中速運転時に全閉状態となる。また、ウェイストゲートバルブ2は、エンジンの高速運転時に開弁して、エンジン回転速度に対応してバルブ開度が全閉開度から全開開度まで開度制御される。
【0044】
ウェイストゲートバルブ2は、バルブアーム9の出力部に支持固定されている。このウェイストゲートバルブ2は、第2連通孔34を開閉する円板状の閉鎖部、およびこの閉鎖部の端面より突出した突出部51を有している。
また、ウェイストゲートバルブ2の突出部51の外周には、円環状の周方向溝52が形成されている。この周方向溝52には、突出部51の外周にバルブアーム9を嵌め合わせた際に、ウェイストゲートバルブ2からのバルブアーム9の抜け止めを行うワッシャまたはCリング等のバルブアーム抜け止め手段53が装着されている。
バルブアーム9の入力部には、リンクアーム7に固定されたヒンジピン54が一体的に形成(または固定)されている。また、バルブアーム9の出力部には、ウェイストゲートバルブ2の突出部51が嵌合する嵌合孔55が形成されている。また、バルブアーム9は、ベアリング56を介して、タービンハウジング15に回転自在に支持されている。
【0045】
次に、本実施例のバルブ駆動装置の詳細を図1ないし図5に基づいて簡単に説明する。 バルブ駆動装置は、ロッドをその軸線方向に往復移動させてカムプレート4を回転駆動するアクチュエータ3と、このアクチュエータ3のロッドの往復移動方向(ストローク方向)への移動量(ロッドのストローク量)に応じて駆動されるバルブ連動機構とを備えている。
アクチュエータ3は、カムプレート4を介して、流量調整バルブ1、ウェイストゲートバルブ2を駆動する電動アクチュエータであって、ロッドの他に、電動モータ、減速機構および変換機構を備え、流量調整バルブ1、ウェイストゲートバルブ2の開閉制御を行う。このアクチュエータ3のロッドは、そのストローク方向に真っ直ぐに延びている。このロッドは、一端部が変換機構の出力部に連結し、他端部がカムプレート4の入力部に連結している。
電動モータは、ECUによって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
【0046】
バルブ連動機構は、カムプレート4、リンクレバー5、レバー軸受6およびリンクアーム7を備え、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを連動可能となるように連結すると共に、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを独立して開閉動作させる。
カムプレート4は、金属材料または樹脂材料によって所定の形状に形成されており、タービンハウジング15の外部に露出して配置されている。このカムプレート4は、入力部および2つの第1、第2駆動部を有し、タービンハウジング15の外壁面に沿うように設置されている。
カムプレート4の入力部には、アクチュエータ3のロッドの先端部(カム装着部)に固定されたヒンジピン(図示せず)が回転自在に嵌合する嵌合孔61が形成されている。
【0047】
また、カムプレート4は、流量調整バルブ1のバルブアーム8のヒンジピン(回転中心軸)44と同一軸心上に回転軸(カムプレート4の回転中心)を有している。
また、カムプレート4の第1駆動部は、カムプレート4の回転に同期して流量調整バルブ1を回転駆動する第1出力部である。この第1駆動部は、カムプレート4の回転軸を中心にして流量調整バルブ1とカムプレート4とが一体回転可能となるように、流量調整バルブ1のバルブアーム8に固定されたヒンジピン44を直接的に連結(直結)する直結部を有している。この第1駆動部(直結部)には、流量調整バルブ1のバルブアーム8のヒンジピン44が嵌合する嵌合孔62が形成されている。
【0048】
また、カムプレート4の第2駆動部は、カムプレート4の回転に対応して流量調整バルブ1と異なる動作パターンでウェイストゲートバルブ2を回転駆動する第2出力部である。この第2駆動部は、ウェイストゲートバルブ2の動作パターンに対応した形状のガイド部(カム溝)63を有している。
第2駆動部には、カム溝63の溝形成方向の一端側を閉塞する円弧状の閉鎖部64、およびカム溝63の溝形成方向の他端側を閉塞する円弧状の閉鎖部65が設けられている。そして、閉鎖部64、65間の溝壁面には、流量調整バルブ1と異なるウェイストゲートバルブ2の動作パターンに対応した形状のカムプロフィールが設けられている。このカムプロフィールは、図3ないし図6に示したように、閉弁区間(ベース円区間B)および開弁区間を有している。
ここで、閉弁区間(ベース円区間B)とは、カムプレート4の回転角度が、最小値(例えば0°)から中間値(例えば45°)まで変化する間、流量調整バルブ1の開閉状態に関わらず、ウェイストゲートバルブ2を閉弁することで、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とが連動しない非連動区間のことである。
また、開弁区間とは、カムプレート4の回転角度が、中間値(例えば45°)から最大値(例えば90°)まで変化する間、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開度制御(排気の流量を連続的または段階的に変更する流量制御)を行う連動区間のことである。
【0049】
リンク機構のリンクレバー5は、金属材料または樹脂材料によって所定の形状に形成されており、タービンハウジング15の外部に露出して配置されている。このリンクレバー5は、入力部および出力部を有し、タービンハウジング15の外壁面に沿うように設置されている。また、リンクレバー5は、レバー軸受6により摺動自在にガイドされている。 リンクレバー5の入力部には、ピボットピン71が嵌合する嵌合孔72が形成されている。このピボットピン71の外周には、図示しないカムフォロワが回転自在に支持されている。このカムフォロワは、カムプレート4のカム溝63内に移動自在に挿入されている。また、リンクレバー5の出力部には、ヒンジピン73が嵌合する嵌合孔74が形成されている。
レバー軸受6は、金属材料または樹脂材料によって所定の形状に形成されており、タービンハウジング15の外部に露出して配置されている。このレバー軸受6は、入力部および出力部を有し、タービンハウジング15の外壁面に沿うように設置されている。そして、レバー軸受6の内部には、リンクレバー5の軸線方向に貫通する貫通孔(摺動孔)が形成されている。また、レバー軸受6の内周面(リンクレバー5と摺動する摺動面)は、レバー軸受6の軸受中心付近で最もリンクレバー5の中心線側に突出する凸曲面となっている。これにより、リンクレバー5の往復移動方向の動きが許容される。
リンク機構のリンクアーム7は、金属材料または樹脂材料によって所定の形状に形成されており、タービンハウジング15の外部に露出して配置されている。このリンクレバー5は、入力部および出力部を有し、タービンハウジング15の外壁面に沿うように設置されている。
リンクアーム7の入力部には、ヒンジピン73が移動自在に挿入される長穴形状の嵌合孔75が形成されている。この嵌合孔75は、ヒンジピン73の長穴方向への移動を許容する長円形状または楕円形状の長穴である。これにより、リンクレバー5の往復移動方向の動きが、ガタがない状態でリンクアーム7に伝達され、回転方向の動きに変換できる。また、リンクアーム7の出力部には、ウェイストゲートバルブ2のバルブアーム9に固定されたヒンジピン54が嵌合する嵌合孔76が形成されている。
【0050】
次に、本実施例のECUによる流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開度制御を図1ないし図6に基づいて説明する。
ECUには、上述したように、エアフロメータ、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、カム回転角度センサ、過給圧センサおよび車速センサ等が接続されている。
クランク角度センサは、エンジンのクランクシャフトの回転角度を検出する回転角度検出手段である。このクランク角度センサは、エンジンのクランクシャフトの回転角度を電気信号に変換するピックアップコイルよりなり、例えば30°CA(クランク角度)毎にNEパルス信号が出力される。
また、ECUは、クランク角度センサより出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度(エンジン回転数:NE)を検出するための回転速度検出手段として機能する。
【0051】
アクセル開度センサは、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するエンジン負荷検出手段である。
スロットル開度センサは、アクセル開度センサより出力される電気信号(アクセル開度信号)に基づいて変更されるスロットルバルブのバルブ開度であるスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段(エンジン負荷検出手段)である。なお、エンジンによっては、スロットルバルブおよびスロットル開度センサが搭載されていない場合もある。
カム回転角度センサは、流量調整バルブ1(ウェイストゲートバルブ2)のバルブ開度に相当するカムプレート4の回転角度(実カム角度)を検出するバルブ開度検出手段である。このカム回転角度センサは、カムプレート4に固定された磁石(マグネット)より放出される磁束を検出する非接触式の磁気検出素子を有するホールICを主体として構成されている。このホールICより出力される電気信号は、ホール素子の感磁面を鎖交する磁束密度に対応した電圧信号(アナグロ信号)である。
過給圧センサは、エンジンの過給圧(吸気圧)を検出する過給圧検出手段である。
【0052】
ECUは、エンジンの運転状況に基づいてバルブ駆動モードを決定するように構成されている。ここで、マイクロコンピュータのメモリは、エンジン回転数NEと流量調整バルブ1のバルブ開度V1およびウェイストゲートバルブ2のバルブ開度V2との対応関係を所定の形式(演算式またはマップデータ(特性線)等の形式:図6(b)参照)で表したバルブ駆動モード設定用テーブルを記憶保持するテーブル記憶手段としての機能を有している。なお、図6(b)中のモード1とは、エンジンの低速運転時に相当するバルブ駆動モードである第1駆動モードのことである。また、図6(b)中のモード2とは、エンジンの中速運転時に相当するバルブ駆動モードである第2駆動モードのことである。また、図6(b)中のモード3とは、エンジンの高速運転時に相当するバルブ駆動モードである第3駆動モードのことである。また、バルブ開度の遷移点(切り替え点)のエンジン回転数は、任意に変更できる。
【0053】
ここで、アクセル開度またはスロットル開度またはエンジン回転数に対応した制御目標値(目標カム角度)を演算(算出)し、カム回転角度センサによって検出されるカムプレート4の回転角度(実カム角度)と目標カム角度とが一致するように、実カム角度と目標カム角度との偏差に基づいて、電動モータへの供給電力をフィードバック制御するように構成しても良い。この場合には、制御目標値(例えば目標カム角度)に対するカムプレート4の回転角度(実カム角度)の応答性(収束性)を向上することができる。
また、ECUは、目標カム角度に対応した制御目標値(目標過給圧)を演算(算出)し、過給圧センサによって検出される実過給圧と目標過給圧とが一致するように、実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて、電動モータへの供給電力をフィードバック制御するように構成しても良い。なお、アクセル開度(スロットル開度)、エンジン回転数(車速)から目標過給圧を演算しても良い。この場合には、制御目標値(例えば目標過給圧)に対する内燃機関の過給圧の応答性(収束性)を向上することができる。
【0054】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のターボチャージャの動作を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0055】
エンジンの全負荷の低速運転時、つまりエンジン回転数が1500rpm未満の低速回転領域の場合には、図6(b)に示したように、バルブ駆動モードがモード1に設定される。
モード1の場合には、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを共に閉弁状態に維持するため、図6(a)に示したように、カムプレート4の回転角度が最小値(例えば0°)となるように、アクチュエータ3の電動モータへの電力供給を制御する。
これによって、カムプレート4の回転角度が最小値に止まるため、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とが共に全閉状態を継続する。これにより、ターボチャージャのタービンハウジング15の第2流路12およびバイパス流路13は閉鎖される。
【0056】
この結果、エンジンより排出された排気の全量は、タービンハウジング15の入口ポート23から第1流路11に流入し、第1ノズルからホイール収容室22に導入される。これにより、タービンホイール14を回転駆動した後に、タービンハウジング15の排気導出流路24を通って出口ポート25から排出される。
一方、吸気管内に吸い込まれた吸気は、タービンホイール14の回転により駆動されるコンプレッサホイール16によって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。そして、圧力が上昇した吸気は、エンジンに吸い込まれる。
したがって、少ない排気流量でも十分な高速な流れが得られるので、エンジンの低速運転時における過給圧を高めることができる。
【0057】
エンジンの中速運転時、つまりエンジン回転数が1500rpm以上で、且つ2500rpm未満の中速回転領域の場合には、図6(b)に示したように、バルブ駆動モードがモード2に設定される。
モード2の場合には、エンジン回転数(目標カム角度)または目標過給圧の変化に対応して流量調整バルブ1の開閉制御を実施すると共に、ウェイストゲートバルブ2の閉弁状態を維持するため、図6(a)に示したように、カムプレート4の回転角度が最小値(例えば0°)から中間値(例えば45°)までの範囲内の所定値となるように、アクチュエータ3の電動モータへの電力供給を制御する。
これによって、カムプレート4の回転角度が、最小値から中間値までの範囲内の所定値(所定角度)に変更されるため、流量調整バルブ1がエンジン回転数に対応した開度分だけ開き、ウェイストゲートバルブ2が全閉状態を継続する。これにより、2つの第1、第2流路11、12は開放され、バイパス流路13は閉鎖される。
【0058】
この結果、エンジンより排出された排気の一部は、タービンハウジング15の入口ポート23から第1流路11に流入し、第1ノズルからホイール収容室22に導入される。また、排気の残部は、第1流路11から第1連通孔33を通って第2流路12に流入し、第2ノズルからホイール収容室22に導入される。これにより、2つの第1、第2流路11、12の双方を通ってホイール収容室22に導入された排気は、タービンホイール14を回転駆動した後に、タービンハウジング15の排気導出流路24を通って出口ポート25から排出される。
一方、吸気管内に吸い込まれた吸気は、タービンホイール14の回転により駆動されるコンプレッサホイール16によって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。そして、圧力が上昇した吸気は、エンジンに吸い込まれる。
したがって、排気流量が増大し、エンジンの中速運転時における過給圧を高めることができる。
さらに、エンジン回転数(目標カム角度)または目標過給圧に応じて流量調整バルブ1の開度制御を行う、つまりエンジン回転数または目標過給圧が増加するに従って流量調整バルブ1のバルブ開度を徐々に増大させることにより、2つの第1、第2流路11、12を通る排気の流量を可変制御することができるので、エンジンの過給圧をエンジンの運転状況に応じて最適化することができる。
【0059】
エンジンの高速運転時、つまりエンジン回転数が2500rpm以上の高速回転領域の場合には、図6(b)に示したように、バルブ駆動モードがモード3に設定される。
モード3の場合には、エンジン回転数(目標カム角度)または目標過給圧の変化に対応して流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開閉制御を実施するため、図6(a)に示したように、カムプレート4の回転角度が中間値(例えば45°)から最大値(例えば90°)までの範囲内の所定値となるように、アクチュエータ3の電動モータへの電力供給を制御する。
これによって、カムプレート4の回転角度が、中間値から最大値までの範囲内の所定値(所定角度)に変更されるため、流量調整バルブ1がエンジン回転数に対応した開度分だけ開き、ウェイストゲートバルブ2がエンジン回転数に対応した開度分だけ開く。これにより、2つの第1、第2流路11、12およびバイパス流路13は全て開放される。
【0060】
この結果、エンジンより排出された排気の一部は、タービンハウジング15の入口ポート23から2つの第1、第2流路11の双方を通って2つの第1、第2ノズルからホイール収容室22に導入される。これにより、2つの第1、第2流路11、12の双方を通ってホイール収容室22に導入された排気は、タービンホイール14を回転駆動した後に、タービンハウジング15の排気導出流路24を通って出口ポート25から排出される。
一方、吸気管内に吸い込まれた吸気は、タービンホイール14の回転により駆動されるコンプレッサホイール16によって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。そして、圧力が上昇した吸気は、エンジンに吸い込まれる。
また、排気の残部は、第2流路12から第2連通孔34(=バイパス流路13)に流入した排気を、ホイール収容室22から迂回させて出口部に排出させる。これにより、過給圧が予め設定した最高過給圧を超えないように制御される。
さらに、エンジン回転数(目標カム角度)または目標過給圧に応じて流量調整バルブ1の開度制御を行う、つまりエンジン回転数または目標過給圧が増加するに従って流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とのバルブ開度を徐々に増大させることにより、2つの第1、第2流路11、12およびバイパス流路13を通る排気の流量を可変制御することができるので、エンジンの過給圧をエンジンの運転状況に応じて最適化することができる。
【0061】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の過給圧制御装置においては、エンジンの運転状況に対応してバルブ駆動モードが変更される。
エンジンの低速運転時には、バルブ駆動モードが、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを共に閉弁するモード1に設定される。このとき、第1流路11のみを通ってホイール収容室22に排気が導入される。
また、エンジンの中速運転時には、バルブ駆動モードが、流量調整バルブ1を開弁して流量調整バルブ1の開度制御を行い、ウェイストゲートバルブ2を閉弁する駆動モード2に設定される。このとき、2つの第1、第2流路11、12の双方を通ってホイール収容室22に排気が導入される。
また、エンジンの高速運転時には、バルブ駆動モードが、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを共に開弁して流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開度制御を行うモード3に設定される。このとき、2つの第1、第2流路11、12の双方を通ってホイール収容室22に排気が導入され、且つバイパス流路13を通ってホイール収容室22を排気が迂回する。
【0062】
これによって、エンジンの運転状況(エンジン回転数、目標カム角度、目標過給圧等)に対応して流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開閉動作を制御することで、2つの第1、第2流路11、12を流れる排気の流量およびバイパス流路13を流れる排気の流量を調整できるので、エンジンの過給圧を制御することができる。
また、エンジンの高速運転時におけるターボチャージャの排気圧を低減することができる。これにより、タービンホイール14の過回転を防止できるので、過給圧が過大とならないようになる。つまり過剰に過給圧が上昇することはない。
したがって、エンジンの低速運転から高速運転に至るまでの広い運転領域に渡ってターボチャージャの効率を向上することができ、且つエンジンの広い運転領域に渡って過給圧を最適化できるので、燃費を向上させることができる。
【0063】
また、本実施例のターボチャージャに搭載されるバルブ駆動装置は、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを連動可能となるように、しかも流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを互いに独立して開閉動作させるように構成されている。
そして、バルブ駆動装置は、上述したように、アクチュエータ3、カムプレート4、カムフォロワ、リンクレバー5、リンクアーム7等を備え、アクチュエータ3の出力部(ロッド)に流量調整バルブ1のバルブアーム8とウェイストゲートバルブ2のバルブアーム9とを連動可能となるように連結している。
そして、カムプレート4の回転軸は、流量調整バルブ1のバルブアーム8のヒンジピン44と同一軸心上に配置されている。また、アクチュエータ3の動力(モータトルク)により、回転軸を中心にして回転方向に駆動されるカムプレート4は、そのカムプレート4の回転に同期して流量調整バルブ1を回転駆動する第1駆動部、およびカムプレート4の回転に対応して流量調整バルブ1と異なる動作パターンでウェイストゲートバルブ2を回転駆動する第2駆動部を有している。
【0064】
そして、カムプレート4の第2駆動部は、流量調整バルブ1と異なるウェイストゲートバルブ2の動作パターンに対応した形状のカム溝(カムプロフィール)63を有している。なお、カムプロフィールは、流量調整バルブ1の開度制御中であってもウェイストゲートバルブ2の全閉状態を維持する閉弁区間(ベース円区間B)、および流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを共にエンジンの運転状況に対応して開度制御を行う開弁区間を有している。
これによって、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを互いに独立して開閉動作させるアクチュエータを、1つのアクチュエータ3で構成した場合であっても、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とを互いに独立して開閉動作させることができる。
以上のように、本実施例の過給圧制御装置においては、アクチュエータ3が1個で済むので、自動車等の車両のエンジンルームに対する搭載性の向上と重量の軽減化とコストの低減化とを実現することができる。
【0065】
また、カムプレート4の第1駆動部に、流量調整バルブ1のバルブアーム8のヒンジピン44を嵌合固定するための嵌合孔62を設けている。これにより、カムプレート4の第1駆動部と流量調整バルブ1との間のガタ付きを抑えることができるので、流量調整バルブ1の作動時に打音が発生することなく、2つの第1、第2流路11、12を流れる排気の流量の制御精度を向上することができる。
また、カムプレート4の第2駆動部に、リンクレバー5のピボットピン71に支持されるカムフォロワが摺動自在に移動可能なカム溝63を設けている。また、リンクレバー5には、このリンクレバー5を摺動自在にガイドするレバー軸受6を設けている。さらに、リンクアーム7の入力部に、リンクレバー5の出力部を回転自在に取り付けるヒンジピン73が嵌合する長穴形状の嵌合孔75が形成されている。さらに、リンクアーム7の出力部に、ウェイストゲートバルブ2のバルブアーム9に固定されたヒンジピン54が嵌合固定されている。これにより、カムプレート4の第2駆動部とウェイストゲートバルブ2との間のガタ付きを極力抑えることができるので、ウェイストゲートバルブ2の作動時に打音が発生することなく、バイパス流路13を流れる排気の流量の制御精度を向上することができる。
【0066】
また、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とをカムプレート4に押し付ける方向に付勢する付勢力が不要となるので、バルブ駆動装置(特にアクチュエータ3)の作動力を軽減することができる。つまり少ない作動力で、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2とをゆっくりと動かすことができる。
ここで、本実施例のターボチャージャにおいては、アクチュエータ3、カムプレート4、リンクレバー5、リンクアーム7および各連結部品が、タービンハウジング15の外部に露出するように配置されている。この場合には、タービンハウジング15の外部を通過する外気(冷却風)によってアクチュエータ3、カムプレート4、リンクレバー5、レバー軸受6、リンクアーム7および各連結部品が冷却されるので、アクチュエータ3、カムプレート4、リンクレバー5、レバー軸受6、リンクアーム7および各連結部品の耐熱性を低く設定することができる。これにより、アクチュエータ3、カムプレート4、リンクレバー5、レバー軸受6、リンクアーム7および各連結部品の材質として、耐熱性の低い安価な金属材料(または樹脂材料)を使用することができるので、コストの低減化を図ることができる。
【0067】
ここで、カム角度センサで検出される実カム角度(カムプレート4の回転角度)に基づいて流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との実バルブ開度を推定できる。そして、流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との実バルブ開度の推定値に基づいて2つの第1、第2流路11、12およびバイパス流路13を流れる排気の流量を推定できる。そして、2つの第1、第2流路11、12およびバイパス流路13を流れる排気の流量の推定値に基づいてタービンホイール14の回転速度を推定できる。そして、タービンホイール14の回転速度の推定値に基づいてエンジンの過給圧を推定できる。
この過給圧の推定値を目標過給圧とし、この目標過給圧と過給圧センサで検出される実過給圧とが一致するように、実過給圧と目標過給圧との偏差に基づいて電動モータへの供給電力をフィードバック制御するようにしても良い。この場合には、製品バラツキ等による制御誤差を抑制できるので、より高精度な流量調整バルブ1とウェイストゲートバルブ2との開度制御を実施することができる。したがって、エンジンの運転状況に対応した最適なバルブ挙動を実現できるので、エンジンの運転状況に対応した最適な過給圧および排気圧を得ることができ、且つ燃費を向上させることができる。
なお、製品バラツキとしては、ターボチャージャの機差バラツキ、電動モータの機差バラツキ、バルブ連動機構の製品バラツキ、カム角度センサの測定誤差(センサ出力バラツキ)、各推定値の推定誤差などが挙げられる。
【0068】
[変形例]
本実施例では、アクチュエータとして、回転軸を中心にして回転するカムプレート4を駆動するロッドを、電動モータの駆動力を利用して軸線方向(ストローク方向)に往復移動させることでウェイストゲートバルブ2を駆動する電動アクチュエータを用いているが、アクチュエータとして、回転軸を中心にして回転するカム部材を駆動する駆動部材(ロッド)を、電磁力または流体圧力を利用して軸線方向(ストローク方向)に往復移動させることでバルブを駆動する電磁アクチュエータまたは流体圧アクチュエータを用いても良い。また、アクチュエータから回転駆動力を出力するようにしてカム部材を回転駆動しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、ガソリンエンジンだけでなく、ディーゼルエンジンを用いても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 流量調整バルブ(第1バルブ)
2 ウェイストゲートバルブ(第2バルブ)
3 アクチュエータ(バルブ駆動手段)
4 カムプレート(バルブ連動機構、カム部材)
5 リンクレバー(バルブ連動機構、リンク機構)
7 リンクアーム(バルブ連動機構、リンク機構)
11 排気導入流路の第1流路
12 排気導入流路の第2流路
13 バイパス流路
14 ターボチャージャのタービンホイール
15 ターボチャージャのタービンハウジング
21 タービンハウジングのタービンスクロール
22 タービンハウジングのホイール収容室
23 タービンハウジングの入口ポート(入口部)
25 タービンハウジングの出口ポート(出口部)
31 タービンハウジングの第1隔壁
32 タービンハウジングの第2隔壁
33 第1連通孔(第1分岐部)
34 第2連通孔(第2分岐部)
63 カムプレートのカム溝(カムプロフィール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気により回転駆動されるタービンホイール、および内部にホイール収容室が形成されたタービンハウジングを有し、前記ホイール収容室に前記タービンホイールを収容したターボ過給機を備えた内燃機関の排気制御装置において、
前記タービンハウジングは、
前記内燃機関の排気を、前記ホイール収容室に導入する排気導入流路を、前記タービンホイールの回転軸方向に2分割して設けられる2つの第1、第2流路と、
前記内燃機関の排気を、前記ホイール収容室から迂回させるバイパス流路と、
前記タービンハウジングに回転自在に支持されて、前記2つの第1、第2流路および前記バイパス流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整する2つの第1、第2バルブと、
前記2つの第1、第2バルブを互いに独立して開閉動作させるカム部材を有し、前記2つの第1、第2バルブを連動可能となるように連結する連動機構と、
前記カム部材を介して、前記2つの第1、第2バルブを駆動するアクチュエータと
を備え、
前記カム部材は、前記タービンハウジングに回転自在に支持される回転軸、前記カム部材の回転に同期して前記第1バルブを回転駆動する第1駆動部、および前記カム部材の回転に対応して前記第1バルブと異なる動作パターンで前記第2バルブを回転駆動する第2駆動部を有していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記第1駆動部は、前記カム部材の回転軸を中心にして前記第1バルブと前記カム部材とが一体回転可能となるように、前記第1バルブを直接的に連結していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記第2駆動部は、前記第2バルブの動作パターンに対応した形状のカムプロフィールを有していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記カムプロフィールは、前記カム部材の回転角度が最小値から中間値まで変化する間、前記第2バルブを閉弁する閉弁区間、および前記カム部材の回転角度が中間値から最大値まで変化する間、前記第2バルブを開弁する開弁区間を有していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記第1バルブは、主に前記2つの第1、第2流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記第2バルブは、主に前記バイパス流路を流れる排気の流量を開閉動作により調整することを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記タービンハウジングは、前記ホイール収容室よりも排気の流れ方向の上流側に位置する入口部、前記ホイール収容室よりも排気の流れ方向の下流側に位置する出口部、前記第1流路から前記第2流路を分岐させる第1分岐部、および前記第2流路から前記バイパス流路を分岐させる第2分岐部を有していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記第1流路は、前記入口部から流入した排気を前記ホイール収容室に導く第1排気導入流路であって、
前記第2流路は、前記第1分岐部から流入した排気を前記ホイール収容室に導く第2排気導入流路であって、
前記バイパス流路は、前記第2分岐部から流入した排気を前記ホイール収容室を迂回させて前記出口部に導くウェイストゲート流路であって、
前記第1分岐部は、前記第1バルブにより開閉される第1弁孔を有し、
前記第2分岐部は、前記第2バルブにより開閉される第2弁孔を有していることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記アクチュエータおよび前記連動機構は、前記タービンハウジングの外部に露出して配置されていることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記内燃機関の運転状況に基づいて、前記アクチュエータを制御する制御ユニットを備えたことを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記内燃機関の低速運転時、前記2つの第1、第2バルブを共に閉弁する第1駆動モードに設定し、
前記内燃機関の中速運転時、前記第1バルブを開弁し、前記第2バルブを閉弁する第2駆動モードに設定し、
前記内燃機関の高速運転時、前記2つの第1、第2バルブを共に開弁する第3駆動モードに設定するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記カム部材の回転角度を検出する回転角度検出手段を有し、
前記回転角度検出手段によって検出される実カム角度が、制御目標値と一致するように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記内燃機関の過給圧を検出する過給圧検出手段を有し、
前記過給圧検出手段によって検出される実過給圧が制御目標値と一致するように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57546(P2012−57546A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201779(P2010−201779)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】