説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】従来よりも低温下で効率良くPMを燃焼させることができる浄化触媒を備えた排気浄化装置を提供すること。
【解決手段】エンジンの排気通路に設けられ、当該エンジンの排気中に含まれるPMを捕捉するとともに、捕捉したPMを浄化するための浄化触媒を有するDPF1を備えたエンジンの排気浄化装置において、前記浄化触媒は、当該浄化触媒の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90が2μm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。詳しくは、内燃機関から排出される排気中の粒子状物質を捕捉するとともに、捕捉した粒子状物質を浄化するための浄化触媒を有するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに搭載される内燃機関、特に圧縮着火式内燃機関においては、排出される排気中に多量の粒子状物質が含まれる。この粒子状物質は人体に有害であり、またエミッション規制対象物質である。このため、粒子状物質を除去するためのフィルタが、上記内燃機関の排気通路に設けられているのが一般的である。
【0003】
上記フィルタとしては、DPF(Diesel Particulate Filter)に、捕捉した粒子状物質を浄化するための浄化触媒を担持させたもの(Catalyzed Soot Filter、CSFともいう)などが用いられている。このようなフィルタでは、粒子状物質が捕捉されて堆積すると、フィルタの上流側と下流側との間で差圧が生じ、出力の低下や燃費の悪化を招く。従って、粒子状物質がある程度堆積した段階で、堆積した粒子状物質を燃焼除去する再生処理を実行する必要があるため、粒子状物質を効率良く燃焼除去できる浄化触媒の開発が進められている。
【0004】
例えば、担体と、該担体上に形成された触媒層と、を少なくとも備え、触媒層中に空隙を有する浄化触媒が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に開示された浄化触媒によれば、触媒層中に空隙を形成することにより、排気の拡散性が良好となり、粒子状物質の燃焼を促進させることができるとされている。
【0005】
また、フィルタ担体の表面にアンダーコート層を介して触媒層を設けるとともに、触媒層の平均空孔径を0.1μm以上0.2μm未満とし、アンダーコート層の平均空孔径を触媒層の平均空孔径よりも小さく設定した浄化触媒が開示されている(特許文献2参照)。この特許文献2に開示された浄化触媒によれば、多孔質の触媒層をフィルタ担体の表面に設けた場合に生じていた触媒層の剥離を抑制でき、粒子状物質の浄化率を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−21818号公報
【特許文献2】特開2008−178766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、粒子状物質の燃焼除去には、550℃〜650℃の高温が必要であるとされており、上記従来技術のような浄化触媒を用いた場合であっても、粒子状物質を低温で効率良く燃焼できていないのが現状である。このような高温下での再生処理は、燃費の悪化、フィルタの溶損、触媒の劣化などを引き起こす。従って、フィルタに捕捉されて堆積した粒子状物質を、従来よりも低温下で効率良く燃焼させることができる浄化触媒を備えた排気浄化装置の開発が望まれている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも低温下で効率良く粒子状物質を燃焼させることができる浄化触媒を備えた排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、内燃機関の排気通路に設けられ、当該内燃機関の排気中の粒子状物質を捕捉するとともに、捕捉した粒子状物質を浄化するための浄化触媒を有するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒は、当該浄化触媒の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90が2μm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明では、浄化触媒の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90が2μm以下であることにより、フィルタ表面を緻密な浄化触媒からなる層で被覆できる。また、浄化触媒と粒子状物質の接触面積を増大でき、浄化触媒と粒子状物質との接触性を向上させることができるため、粒子状物質の燃焼性能を向上させることができる。
また、本発明によれば、従来よりも低温下で効率良く粒子状物質を燃焼させてフィルタを再生することができ、フィルタの再生処理に伴う燃費ロスや触媒の劣化を抑制できる。また、通常走行時においても粒子状物質を連続燃焼させ得るため、再生頻度を低減でき、燃費の悪化を低減できる。さらには、低温下でフィルタを再生できるため、排気系レイアウトの自由度が高く、例えば車両床下にフィルタを配置することもできる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒は、3μm〜10μmの空隙を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明では、3μm〜10μmの空隙を設けて浄化触媒をフィルタに担持させることにより、浄化触媒をフィルタ表面に均一に担持させることができる。このため、浄化触媒と粒子状物質との接触性をより向上させることができ、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができる。また、3μm〜10μmの空隙の存在によって排気の拡散性が良好となるため、この点からも粒子状物質の燃焼性能の向上に寄与できる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記フィルタの表面における前記浄化触媒の被覆率が30%以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、フィルタの表面における浄化触媒の被覆率が30%以上であるため、浄化触媒と粒子状物質との良好な接触状態を確保できる。このため、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができ、上記発明の効果をより高めることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から3いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒は、水銀ポロシメータにより測定された孔径分布において、4μm〜8μmのピークを有することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、4μm〜8μmの空隙のピークを設けて浄化触媒をフィルタに担持させることにより、浄化触媒の担持量を増加することなく、フィルタの表面全体を浄化触媒で被覆することができる。このため、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができ、上記発明の効果をより高めることができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒がAgを含むことを特徴とする。
【0018】
上述したように、上記発明によれば、浄化触媒と粒子状物質の接触性を向上させることができるため、浄化触媒が本来に有する優れた燃焼性能を十分に発揮させることができる。ここで、Agを含むAg系触媒は、最も低温で粒子状物質を燃焼できる材料であるとされている。例えば、Ag系触媒において、粒子状物質との良好な接触性が確保できれば、粒子状物質を200℃以下で着火させることができ、400℃で燃焼させることができるとされている。
この点、本発明では、Agを含む浄化触媒を用いることにより、Ag系触媒が本来有する優れた燃焼性能を十分に発揮できるため、低温下においても効率良く粒子状物質を燃焼除去できる。また、約600℃の高温域での再生処理においては、瞬時に粒子状物質を燃焼除去することができ、通常走行の加速時など温度が約350℃に達した場合にも、特別な制御無しに粒子状物質の一部を燃焼させることができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記Agの結晶子径が42nm未満であることを特徴とする。
【0020】
後述するように、Ag系触媒の表面には、酸素脱離開始温度が最も低く、粒子状物質との反応性に最も優れたAgOが存在する。ところが、浄化触媒中に含まれるAgの結晶子径が大きい場合には、粒子状物質との接触性が低下してしまうとともに、表面に存在するAgO量が減少して酸素供給の律速となる結果、粒子状物質の燃焼反応の進行が阻害される。この点、本発明では、Agの結晶子径が42nm以下で小さいため、上記不具合を回避でき、粒子状物質を低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記Agは、酸素放出能を有する複合酸化物に担持されており、前記複合酸化物は、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素、及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を構成元素として含むことにより、構成元素の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明では、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素、及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を構成元素として含む複合酸化物を用いることにより、構成元素の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことができる。また、このような酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持させることにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温下で発揮させることができる。このため、粒子状物質をより低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒は、前記Agとともに前記複合酸化物に担持された、Ru、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
請求項8記載の発明では、Ru、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、Agとともに複合酸化物に共担時させることにより、貴金属による酸素供給能の増加、及び貴金属によるブロッキング効果により、Agの微粒子化が可能となる。このため、酸素放出能を有する複合酸化物の酸素放出能を大幅に向上させることができ、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができる。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項1から8いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒が還元法により調製されたことを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明では、還元法により浄化触媒を調製することにより、微細で均一なAgイオンを高濃度で得ることができ、Agの凝集を効果的に抑制できる。このため、触媒粒子の微細化が可能となり、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができる。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記浄化触媒が、還元剤として、トリエチルアミン、エチレングリコール、又はエタノールを用いて調製されたことを特徴とする。
【0028】
請求項10記載の発明では、アミン還元法の還元剤としてトリエチルアミンを用い、あるいはアルコール還元法の還元剤としてエチレングリコール又はエタノールを用いることにより、Agイオンの還元化を効果的に進行させることができるとともに、Agを微細化できる。このため、触媒粒子の微細化が可能となり、粒子状物質の燃焼性能をより向上させることができる。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項1から10いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記フィルタが、排気中のNOからNOを生成するNO生成触媒をさらに有することを特徴とする。
【0030】
酸素放出能を有する複合酸化物は、NO吸着能が高いことが知られている。この点、本発明では、NO生成触媒を共存させることにより、生成したNOが酸素放出能を有する複合酸化物の表面に吸着し、表面のNO濃度が高く保たれる。このため、浄化触媒による酸素と粒子状物質の反応に加えて、AgによるNOと粒子状物質の反応が促進され、粒子状物質を低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0031】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記NO生成触媒が、Pt、Pd、及びRhからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を含むことを特徴とする。
【0032】
請求項12記載の発明では、Pt、Pd、及びRhからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を含むNO生成触媒を用いることにより、効果的にNOを生成できるため、請求項11記載の発明の効果がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態で用いるDPF1を排気の流入側から見た図である。
【図2】本発明の一実施形態で用いるDPF1を排気の流れ方向に平行な面で切断したときの断面図である。
【図3】図2における隔壁5の部分拡大図である。
【図4】酸素脱離開始温度とPM燃焼ピーク温度の関係を示す図である。
【図5】PdAg/CeZrOのXRD(X線回折)スペクトル図である。
【図6】PdAg/CeZrOのXPS(X線光電子分光)スペクトル図である。
【図7】Ag系触媒のPM燃焼メカニズムを説明するための図である。
【図8】PdAg/CeZrOのTG−DTAチャート図である。
【図9】PdAg/CeZrOについて強制再生を実施したときの時間とPM残存率との関係を示す図である。
【図10】ディッピング法によりPdAg/CeZrOを担持させたCSF(比較例2のCSF)表面のSEM像である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】強制再生を実施したときの時間とPM残存率との関係の一例を示す図である。
【図13】実施例1のCSF表面のSEM像である。
【図14】実施例1のCSF細孔内のSEM像である。
【図15】実施例2及び比較例2の水銀ポロシメータ測定結果を示す図である。
【図16】実施例2のCSF表面のSEM像である。
【図17】実施例3のCSF表面のSEM像である。
【図18】図17の部分拡大図である。
【図19】D90と酸素脱離開始温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関(以下、「エンジン」という)の排気通路に設けられている。エンジンは、各気筒の燃焼室内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。また、本実施形態の排気浄化装置は、当該エンジンの排気中の粒子状物質(Particulate Matter、以下、「PM」という)を捕捉するとともに、捕捉したPMを浄化するための浄化触媒を有するフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、「DPF」という)を備える。
【0036】
本実施形態で用いるDPFは、三次元網目構造を有し、PM捕集機能を有する発泡金属や発泡セラミックス、又は金属やセラミックス繊維を重ね合わせた不織布、ウォールフロータイプのフィルタなど、如何なる形態でも使用可能である。これらのうち、ウォールフロータイプのハニカム構造のフィルタが、捕集効率、及びPMと浄化触媒との接触性の観点から好ましく用いられる。
【0037】
図1は、本実施形態で好ましく用いられるDPF1を、排気の流入側から見た図である。また、図2は、DPF1を、排気の流れ方向に平行な面で切断したときの断面図である。図1及び2に示されるように、DPF1は、互いに平行に延びる多数の排気流入路2と排気流出路3とを備えている。下流端が目封止材4により閉塞された排気流入路2と、上流端が目封止材4により閉塞された排気流出路3と、が交互に設けられおり、排気流入路2と排気流出路3とは、薄肉の隔壁5を介して隔てられている。
【0038】
DPF1は、炭化珪素やコージェライトなどの多孔質材料から形成され、排気流入路2内に流入した排気は、図2の矢印で示したように、周囲の隔壁5を通過して、隣接する排気流出路3内に流入する。
図3は、図2における隔壁5の部分拡大図である。図3に示されるように、隔壁5は、排気流入路2と排気流出路3とを連通する微細な細孔6を有し、この細孔6を排気が流通する。また、排気流入路2、排気流出路3、及び細孔6から構成される排気流路の壁面には、浄化触媒層7が設けられている。
浄化触媒層7は、後述する浄化触媒により構成されており、DPF1により捕捉されて排気中のPMを浄化する機能を有する。
【0039】
次に、本実施形態で用いる浄化触媒について詳細に説明する。
本実施形態で用いる浄化触媒は、Agを含むことが好ましい。以下、その理由について詳しく説明する。
【0040】
Agを含むAg系触媒は、現状、PMの燃焼に最も有効な触媒であると考えられている。上述したように、PMとの接触性が良好(以下、「タイトコンタクト」という)であれば、200℃以下からPMを着火させることができ、400℃でPMの燃焼を完了させることができる。しかしながら、エンジンの排気通路に配置されたDPF上でのPMと浄化触媒の接触性は低く(以下、「ルーズコンタクト」という)、浄化触媒が本来有する優れたPM燃焼性能を発揮できていないのが現状である。
【0041】
また、PMの燃焼に対して最も有効な化合物として、AgOが挙げられる。このAgOは、酸素脱離エネルギーが最も小さく、PMとの反応性に優れているためである。図4は、O−TPD法(Temperature Programmed Desorption:昇温脱離法)により得られた、AgOの酸素脱離開始温度とPM燃焼ピーク温度との関係を示す図である。図4に示すように、AgOの酸素脱離開始温度は最も低く、酸素脱離エネルギーが最も小さいことが分かる。
しかしながら、AgOは、400℃程度で分解してAgメタルとなるため、触媒としての繰り返し耐久性に乏しい。このため、AgOを用いる場合には、AgOの安定性の確保が不可欠であると言える。
【0042】
一方、酸素放出能が高い材料として、複合酸化物などの酸素貯蔵(Oxygen Storage Component、以下、「OSC」という)材が知られている。ところが、CeOやCeZrOなどのOSC材は、図4に示すように酸素脱離開始温度が高く、PM燃焼に対してそれほど有効ではないことが分かる。
【0043】
そこで、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒は、上記のような特性を有するAgOとOSC材とを組み合わせたものである。即ち、両者を組み合わせることにより、AgOの安定性が確保できるとともに、酸素脱離開始温度の低温化が可能となっている。
具体的には、本実施形態では、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持させた浄化触媒を用いることが好ましい。例えば、CeOに、Agを含浸させることにより得られるAg/CeOが好ましく用いられる。また、CeZrOに、Ag及びPdを含浸させることにより得られるPdAg/CeZrOなども好ましく用いられ、これにより酸素脱離開始温度の大幅な低温化が可能となる(図4参照)。
なお、これら浄化触媒の表面付近のAgは、酸化雰囲気下ではAgOとして存在し、上述の機能を発揮する。この点については、後段で詳述する。
【0044】
次に、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒のPM燃焼メカニズムについて説明する。
図5は、PdAg/CeZrOのXRD(X線回折)スペクトル図である。図5において、Agと表示されたピークは、Agメタル由来のピークを表している。この図5から明らかであるように、PdAg/CeZrO中に含まれるAgは、主にAgメタルとして存在することが分かる。
図6は、PdAg/CeZrOを酸化雰囲気下に置いたときと、還元雰囲気下に置いたときのXPS(X線光電子分光)スペクトル図である。図6から明らかであるように、酸化雰囲気下では、浄化触媒の表面のAgはAgOとして存在し、還元雰囲気下では、Agメタルとして存在していることが分かる。これは、PM燃焼に対して活性が低いAg/α−Alでは、酸化雰囲気下においても表面のAgがAgメタルとして存在していることからも、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒特有の構成であると言える。
【0045】
以上を踏まえ、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒、即ち、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持させた浄化触媒のPM燃焼メカニズムを、図7を参照しながら説明する。
図7は、Ag/CeZrOの表面状態を模式的に示した図である。図7に示すように、酸素供給材としてのCeZrOから、表面付近のAgメタル(図7においてAgと表示されている粒子を意味する)に酸素が供給されると、Agメタルは活性種であるAgO(図7においてAgと表示されている粒子とOと表示されている粒子を意味する)に変換される。そして、このAgOは、PMと反応することによりAgメタルに戻るものの、直ちにCeZrOからの酸素がAgメタルに供給される結果、常に表面付近のAgは、AgOの状態で存在すると考えられる。
従って、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒、即ち、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持させた浄化触媒によれば、表面付近に存在する活性種AgOの作用によって、低温下で効率良くPMを燃焼除去できると考えられる。
【0046】
ここで、上記Agの結晶子径は、42nm未満であることが好ましい。Agの結晶子径が42nm以上である場合には、PMとの接触性が低下してしまうとともに、表面に存在するAgO量が減少して酸素供給の律速となる結果、PMの燃焼反応の進行が阻害されるからである。
なお、Agの結晶子径は、例えばX線回折装置により測定可能である。
【0047】
ところで、酸素放出能を有する複合酸化物としては、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、イルメナイト型、及びフルオライト型からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの中でも、酸素放出能の観点から、フルオライト型の複合酸化物が好ましく用いられる。
また、複合酸化物は、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素、及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を構成元素として含むことにより、構成元素の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うものが好ましい。
また、複合酸化物が酸素放出能を有するために、多原子価を持つ元素が少なくとも1種含まれていることが好ましい。具体的には、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Nb、Ta、Mo、W、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Yb、Pt、Pd、Rh、Ir、Ruなどの遷移金属元素が少なくとも1種含まれていることが好ましい。酸素放出は、複合酸化物を構成する元素の価数の変化に応じて、電荷のバランスを保つために複合酸化物の格子中の酸素が脱離する現象である。このため、Agとの組合せによる酸素放出能の観点から、上記遷移金属元素のうち、Ce、Zr、Pr、La、及びYが特に好ましい。
【0048】
また、本実施形態で用いる浄化触媒は、Ru、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、Agとともに上記複合酸化物に共担持するものであることが好ましい。
上記貴金属の担持量は、浄化触媒に対して0.1質量%〜3質量%と微量であることが好ましい。より好ましくは0.5質量%〜2質量%である。0.5質量%より少ない場合は、酸素放出能が低下し、2質量%より多い場合は、貴金属と複合酸化物の相互作用が強くなる結果、Agの担持効果が損なわれてしまう。
【0049】
本実施形態で用いる浄化触媒の調製方法は特に限定されないが、還元法により調製されたものであることが好ましい。還元法は、粒径制御されたAgイオン粒子を、DPF1上に高濃度で均一に担持させるために、湿式でAgコロイドとして合成する手法である。還元法では、金属イオン、還元剤、保護剤を使用し、金属イオンを0価に還元して、金属ナノ粒子を生成させる。保護剤は、粒子の成長を抑制し、金属粒子コアの周囲に保護基として結合して安定化するもので、チオール、ホスフィン、4級アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが用いられる。また、還元剤としては、クエン酸、ヒドラジン、アミン、SBH、アルコール、アミノ酸などが用いられる。
また、本実施形態では、アミン還元法又はアルコール還元法がより好ましく用いられる。アミン還元法を用いる場合には、還元剤として、トリエチルアミンが好ましく用いられる。また、アルコール還元法を用いる場合には、還元剤として、エチレングリコールやエタノールが好ましく用いられる。
なお、浄化触媒を構成する複合酸化物の調製方法も特に限定されず、硝酸塩分解法、有機酸錯体重合法など従来公知の調製方法を用いることができる。
【0050】
また、本実施形態で用いる浄化触媒では、複合酸化物にAgや貴金属を担持させる方法については特に限定されないが、一般的なディッピング法の他、発泡法が好ましく用いられる。
ディッピング法では、例えば、浄化触媒を構成する材料を所定量含むスラリーを湿式粉砕などにより作製し、作製したスラリー中にDPFを浸漬させた後、DPFを引き上げて所定の温度条件で焼成を行うことにより、DPFに浄化触媒を担持させることができる。
また、発泡法では、上記ディッピング法で作製したスラリー中に、クエン酸などの有機酸を添加することにより、焼成時に触媒粒子を発泡させ、分散させることができる。このため、発泡法によれば、触媒粒子を全体に分散させることができるため、DPF表面に触媒を均一に担持させることができる。
【0051】
次に、浄化触媒とPMとの接触性がPM燃焼特性に及ぼす影響について説明するとともに、浄化触媒の好ましい粒子径、被覆率、空隙の大きさについて説明する。
【0052】
図8は、PdAg/CeZrOのTG−DTAチャート図であり、このTG−DTAチャート図は、PdAg/CeZrOのPM燃焼特性を示している。具体的には、昇温条件を、乾燥空気200ml/分の雰囲気下で20℃/分とし、浄化触媒に対するPM量を5質量%として、乳鉢と乳棒を用いてタイトコンタクト化させたときのPM燃焼特性を示している。また、図8において、TGは、タイトコンタクト化した浄化触媒とPMとを昇温したときの重量減少曲線を表しており、DTGは、TGの一次微分曲線である。
図8に示すように、重量減少の開始が200℃付近であり、重量減少の終了が400℃付近であることから、200℃からPMが着火し、400℃でPMの燃焼が終了することが分かる。このように、接触性が良好なときのPM燃焼特性を、浄化触媒のポテンシャルと定義すると、PdAg/CeZrOは、200℃〜400℃でPMを燃焼可能なポテンシャルを有すると言える。
【0053】
図9は、PdAg/CeZrOについて強制再生試験を実施したときの時間とPM残存率との関係を示す図である。具体的には、500℃定常試験を実施して得られた図である。本試験では、先ず、15ccのテストパネルにPdAg/CeZrOをコートする。浄化触媒がコートされたテストパネルをディーゼルエンジンの排気流通下にセットし、上流側には酸化触媒PtPd/Alを配置させる。次いで、ディーゼルエンジンの運転を実施し、PMの捕集量が4g/LになるようにPMを捕集させる。その後、N中で昇温させ、500℃に達したところで700ppmのNO、5%のO、及びNバランスガスからなるモデルガスを線速度SV=100000h−1で導入する。このような手順により、強制再生試験を実施したときのPM残存率を調べた結果が図9である。
図9は、500℃定常時のPM燃焼速度を表しており、燃焼終了時間が短いほどPM燃焼速度は速くなることを意味する。浄化触媒PdAg/CeZrOのポテンシャルとしては、上述したように400℃以下でPMを燃焼できるため、500℃であれば瞬時にPMの燃焼が終了してもよいはずである。ところが、図9に示すように、90%のPMの燃焼が完了するまでの時間(以下、「T90」という)は、およそ20分と長時間を要することが分かる。これは、実際にディーゼルエンジンの排気流通下に配置した場合には、PMと浄化触媒との接触性が良好でないことが原因であると考えられ、これにより浄化触媒のポテンシャルが十分に発揮できていないと考えられる。
【0054】
以下、浄化触媒とPMとの接触性について、マクロレベル、ミクロレベル、及びナノレベルで調査を行った結果を踏まえて説明する。
【0055】
先ずは、マクロレベルでの調査として、浄化触媒表面における触媒粒子の分布状態の調査である。図10は、ディッピング法によりPdAg/CeZrOを担持させたDPF表面(後述する比較例2に相当。即ち、PM燃焼性能は劣る。)のSEM像である。この結果から、ディッピング法の場合には、その条件によっては、触媒粒子が偏っていたり、細孔が埋まっていたり埋まっていなかったりと不均一であることが分かる。PMの堆積は、初期はDPFの細孔内で起こり、堆積量が多くなるとDPF表層全面に堆積していくため、PMが堆積する部分によっては触媒が存在しない場合が生じる。従って、DPFの表面に浄化触媒を均一に担持させることが重要であると言える。
【0056】
次いで、ミクロレベルでの調査として、浄化触媒の粒子径の調査である。図11は、図10の部分拡大図である。図11に示すように、ディッピング法では、その条件によっては触媒粒子の粒子径が大きいことが分かる。具体的には、HORIBA製粒度分布装置「LA920」を用いて測定したところ、平均粒子径(D50:メジアン径)は約5μm、触媒粒子の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90は約10μmであり、大きな触媒粒子である。従って、浄化触媒の粒子径を微細化して接触面積を増大させ、PMとの接触性を向上させることが重要であると言える。
【0057】
さらに、ナノレベルでも、活性種Agの接点数が、PMとの接触性向上の観点から重要であると考えられる。即ち、活性種Agの微細化を行うことにより、活性種Agの接点数を増加させることが重要であると言える。
【0058】
以上、詳しく述べたように、浄化触媒とPMとの接触性は、PM燃焼特性に重大な影響を及ぼすことから、本実施形態で用いる浄化触媒は、PMとの良好な接触性を確保すべく、以下のような構成を備える。
具体的には、本実施形態で用いる浄化触媒は、上記D90が2μm以下であることを特徴とする。D90が2μm以下であることにより、浄化触媒とPMとの接触性を向上させることができる。なお、D90は、粒度分布測定装置により測定可能であり、例えば、HORIBA製粒度分布測定装置「LA−920」により測定可能である。
また、本実施形態で用いる浄化触媒は、3μm〜10μmの空隙を有することが好ましい。この範囲の大きさの空隙を有することにより、浄化触媒をDPF表面に均一に担持させることができ、浄化触媒とPMとの接触性をより向上させることができる。さらには、水銀ポロシメータにより測定された孔径分布において、4μm〜8μmのピークを有することがより好ましい。なお、空隙の大きさは、水銀ポロシメータにより測定可能であり、例えば、島津製作所製水銀ポロシメータ「ポアサイザ9320」を用いて測定可能である。
また、DPF表面における浄化触媒の被覆率が30%以上であることが好ましい。被覆率が30%以上であれば、浄化触媒とPMとの良好な接触状態を確保できる。より好ましい被覆率は、70%以上である。なお、被覆率は、SEM観察により得られたSEM画像において、コントラストを強調させて白色部分(浄化触媒に相当)と黒色部分(DPFに相当)に分けた後、白色部分と黒色部分の面積を算出し、算出した面積値から求めることができる。
【0059】
なお、浄化触媒とPMとの接触性の向上については、以下の指標を用いて評価することが好ましい。
図12は、強制再生を実施したときの時間とPM残存率との関係の一例を示す図である。図12に示すように、500℃強制再生試験を実施した場合、初期はある程度の量のPMが瞬時に燃え、その後燃焼が穏やかになる。これは、初期においては、浄化触媒とPMとが良好に接触している部分については瞬時に燃焼するためである。そして、PMが燃焼した部分にはPMが存在しなくなる結果、浄化触媒とPMとの間に隙間が形成され、PMの燃焼反応の進行が遅くなる。このことから、試験開始〜30秒の間でのPM燃焼を初期燃焼と定義し、試験開始後30秒経過後の穏やかなPM燃焼をルーズコンタクト燃焼と定義する。また、浄化触媒とPMとの接触比率を、下記の数式(1)により算出し、この接触比率の増加により、接触性の向上を確認することができる。
[数1]

接触比率=初期燃焼量/全体PM量 ・・・(1)

【0060】
以上、本実施形態で好ましく用いられる浄化触媒について詳しく説明したが、本実施形態のDPF1は、上記の浄化触媒に加えて、排気中のNOからNOを生成するNO生成触媒をさらに有することが好ましい。
NO生成触媒としては特に限定はされないが、Pt、Pd、及びRhからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を含むことが好ましい。
また、DPF1に上記触媒を担持させる際には、先ず下層として浄化触媒を担持させた後、上層としてNO生成触媒を担持させることが好ましい。
【0061】
上記の構成を備える本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、浄化触媒の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90が2μm以下であることにより、DPF1の表面を緻密な浄化触媒からなる層で被覆できる。また、浄化触媒とPMの接触面積を増大でき、浄化触媒とPMとの接触性を向上させることができるため、PMの燃焼性能を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、従来よりも低温下で効率良くPMを燃焼させてDPF1を再生することができ、DPF1の再生処理に伴う燃費ロスや浄化触媒の劣化を抑制できる。また、通常走行時においてもPMを連続燃焼させ得るため、再生頻度を低減でき、燃費の悪化を低減できる。さらには、低温下でDPF1を再生できるため、排気系レイアウトの自由度が高く、例えば車両床下にDPF1を配置することもできる。
【0062】
また、本実施形態によれば、3μm〜10μmの空隙を設けて浄化触媒をDPF1に担持させることにより、浄化触媒をDPF1の表面に均一に担持させることができる。このため、浄化触媒とPMとの接触性をより向上させることができ、PMの燃焼性能をより向上させることができる。また、3μm〜10μmの空隙の存在によって排気の拡散性が良好となるため、この点からもPMの燃焼性能の向上に寄与できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、DPF1の表面における浄化触媒の被覆率が30%以上であるため、浄化触媒とPMとの良好な接触状態を確保できる。このため、PMの燃焼性能をより向上させることができ、上記の効果をより高めることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、4μm〜8μmの空隙のピークを設けて浄化触媒をDPF1に担持させることにより、浄化触媒の担持量を増加することなく、DPF1の表面全体を浄化触媒で被覆することができる。このため、PMの燃焼性能をより向上させることができ、上記の効果をより高めることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、Agを含む浄化触媒を用いることにより、Ag系触媒が本来有する優れた燃焼性能を十分に発揮できるため、低温下においても効率良くPMを燃焼除去できる。また、約600℃の高温域での再生処理においては、瞬時にPMを燃焼除去することができ、通常走行の加速時など温度が約350℃に達した場合にも、特別な制御無しにPMの一部を燃焼させることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素、及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を構成元素として含む複合酸化物を用いることにより、構成元素の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことができる。また、このような酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持させることにより、複合酸化物の酸素放出能をより低温下で発揮させることができる。このため、PMをより低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、Agの結晶子径が42nm以下で小さいため、表面に存在するAgO量が減少して酸素供給の律速となってPMの燃焼反応の進行が阻害されることがない。このため、PMを低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、Ru、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、Agとともに複合酸化物に共担時させることにより、貴金属による酸素供給能の増加、及び貴金属によるブロッキング効果により、Agの微粒子化が可能となる。このため、酸素放出能を有する複合酸化物の酸素放出能を大幅に向上させることができ、PMの燃焼性能をより向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、還元法により浄化触媒を調製することにより、微細で均一なAgイオンを高濃度で得ることができ、Agの凝集を効果的に抑制できる。このため、触媒粒子の微細化が可能となり、PMの燃焼性能をより向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、アミン還元法の還元剤としてトリエチルアミンを用い、あるいはアルコール還元法の還元剤としてエチレングリコール又はエタノールを用いることにより、Agイオンの還元化を効果的に進行させることができるとともに、Agを微細化できる。このため、触媒粒子の微細化が可能となり、PMの燃焼性能をより向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、NO生成触媒を共存させることにより、生成したNOが酸素放出能を有する複合酸化物の表面に吸着し、表面のNO濃度が高く保たれる。このため、浄化触媒による酸素とPMの反応に加えて、AgによるNOとPMの反応が促進され、PMを低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、Pt、Pd、及びRhからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を含むNO生成触媒を用いることにより、効果的にNOを生成できるため、AgによるNOとPMの反応がより促進され、PMを低温下で効率良く燃焼させることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
【実施例】
【0074】
次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
<実施例1>
[1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO、D90=2μm以下]
市販の特級試薬である、硝酸銀、硝酸パラジウム、CeZrO(阿南化成製、Ce/Zr=2/8)、及びHOを、所定の組成となるように秤量して混合した。次いで、これをエバポレータにて減圧乾固し、200℃×2時間乾燥させた後、700℃×2時間の大気焼成を行うことにより、触媒粉末Aを得た。
上記で得た触媒粉末A、市販のSiOゾル、及びHOを、所定の組成となるように秤量して混合した。そこに、φ2mmのZrボールを、容器に対して50%の量混入し、ボールミルにて3日間、湿式粉砕を行うことにより、スラリーAを得た。
得られたスラリーAを、SiC製DPFにディッピング担持させた後、700℃×2時間の焼成を行うことにより得られたCSFを、実施例1とした。触媒の担持量は、60g/Lとした。
【0076】
<実施例2>
[1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO、D90=2μm以下、発泡法]
φ10mmのZrボールを、容器に対して10%の量混入し、ボールミルにて12時間、湿式粉砕した後、クエン酸を触媒量に対して4倍量添加した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより得られたCSFを、実施例2とした。触媒の担持量は、60g/Lとした。
【0077】
<実施例3>
[1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO、D90=2μm以下、発泡法]
スラリーAに、クエン酸を触媒量に対して4倍量添加した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより得られたCSFを、実施例3とした。触媒の担持量は、60g/Lとした。
【0078】
<実施例4>
[下層:1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO、D90=2μm以下、発泡法]
[上層:14質量%PtPd/Al
市販の特級試薬であるジニトロジアミン白金硝酸溶液、硝酸パラジウム、Al(住友金属化学製)、及びHOを、所定の組成となるように秤量して混合した。次いで、これを、エバポレータにて減圧乾固し、200℃×2時間乾燥させた後、700℃×2時間の大気焼成を行うことにより、NO生成触媒である触媒粉末Bを得た。
上記で得た触媒粉末B、市販のSiOゾル、及びHOを所定の組成となるように秤量して混合した。そこに、φ10mmのZrボールを容器に対して10%の量混入し、ボールミルにて12時間、湿式粉砕を行うことにより、スラリーBを得た。
実施例3で作製したCSFに、スラリーBをディッピング担持させた後、700℃×2時間の焼成を行うことにより得られたCSFを、実施例4とした。触媒の担持量は、上層60g/L、下層10g/Lとした。
【0079】
<実施例5>
[下層:1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO、D90=2μm以下、発泡法、アミン還元法]
[上層:14質量%PtPd/Al
市販の特級試薬である硝酸銀、ジニトロジアミンパラジウム、トリエチルアミン、ミリスチン酸を、所定の組成となるように秤量して混合溶液を作製した。この混合溶液に、CeZrO(阿南化成製、Ce/Zr=2/8)を所定の組成となるように添加し、80℃×2時間混合した。次いで、メタノールにて洗浄ろ過を行い、60℃×12時間乾燥後、700℃×2時間の大気焼成を行うことにより、触媒粉末Cを得た。
上記で得た触媒粉末Cにより下層を形成する以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより得られたCSFを、実施例5とした。触媒の担持量は、上層60g/L、下層10g/Lとした。
【0080】
<比較例1>
[14質量%PtPd/Al
スラリーBを、SiC製DPFにディッピング担持させ、700℃×2時間の焼成を行うことにより得られたCSFを、比較例1とした。触媒の担持量は、35g/Lとした。
【0081】
<比較例2>
[1質量%Pd30質量%Ag/CeZrO
クエン酸を添加しない以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより得られたCSFを、比較例2とした。触媒の担持量は、60g/Lとした。
【0082】
<参考例1>
触媒粉末A、市販のSiOゾル、及びHOを、所定の組成となるように秤量し、さらにφ10mmのZrボールを容器に対して10%の量混入し、ボールミルにて12時間湿式粉砕を行うことにより、スラリーCを得た。
スラリーCを200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例1とした。
【0083】
<参考例2>
スラリーCを、φ0.1mmZrビーズを用いたビーズミル装置Aにより2時間湿式粉砕した後、200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例2とした。
【0084】
<参考例3>
スラリーCを、φ0.1mmZrビーズを用いたビーズミル装置B(ビーズミル装置Aよりも7〜8倍の粉砕エネルギを持つと考えられている)により45分間湿式粉砕した後、200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例3とした。
【0085】
<参考例4>
スラリーCを、φ0.1mmZrビーズを用いたビーズミル装置Bにより45分間湿式粉砕した後、さらに湿式の高圧せん断装置にて50MPa/3Passしたものを200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例4とした。
【0086】
<参考例5>
スラリーAの湿式粉砕時間を12時間とし、200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例5とした。
【0087】
<参考例6>
スラリーAを200℃で攪拌しながら蒸発乾固させた粉末を、参考例6とした。
【0088】
<参考例7>
触媒粉末Aを、参考例7とした。
【0089】
<参考例8>
触媒粉末Cを、参考例8とした。
【0090】
<参考例9>
市販の特級試薬である硝酸銀、ジニトロジアミンパラジウム、エチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)を、所定の組成となるように秤量して混合溶液を作製した。この混合溶液に、CeZrO(阿南化成製、Ce/Zr=2/8)を所定の組成となるように添加し、150℃×2時間、混合した。次いで、洗浄ろ過を行い、60℃×12時間乾燥後、700℃×2時間の大気焼成を行うことにより得られた触媒粉末を、参考例9とした。
【0091】
<参考例10>
市販の特級試薬である硝酸銀、硝酸パラジウム、エタノール、ポリビニルピロリドン(PVP)を。所定の組成となるように秤量して混合溶液を作製した。この混合溶液に、CeZrO(阿南化成製、Ce/Zr=2/8)を所定の組成となるように添加し、150℃×2時間の加熱、還流を行った。次いで、真空乾燥を行い、700℃×2時間の大気焼成を行うことにより得られた触媒粉末を、参考例10とした。
【0092】
<評価>
実施例1〜5、及び比較例1〜2について、500℃強制再生試験を実施した結果、得られたT90を表1に示す。強制再生試験では、先ず、15ccのテストパネルに各浄化触媒をコートした。浄化触媒がコートされたテストパネルをディーゼルエンジンの排気流通下にセットし、上流側には酸化触媒PtPd/Alを配置させた。次いで、ディーゼルエンジンの運転を実施し、PMの捕集量が4g/LになるようにPMを捕集させた。その後、N中で昇温させ、500℃に達したところで700ppmのNO、5%のO、及びNバランスガスからなるモデルガスを線速度SV=100000h−1で導入した。このような手順により、強制再生試験を実施したときのPM残存率を調べた。
なお、各触媒のD90、接触比率についても併せて記載するが、これらについては後述する。
【0093】
【表1】

【0094】
[比較例1〜2]
比較例1は、現在、量産されている貴金属系触媒で構成されたCSFである。この比較例1で用いた浄化触媒は、COやHCの浄化目的で使用されるものであるが、実際にはある程度の高温下であれば多少のPMを燃焼させることができる。貴金属系のPM燃焼メカニズムは、NOから生成されたNOとPMとの反応であるため、非接触でも燃焼が進むのが特徴である。しかしながら、表1から明らかであるように、比較例1のT90は、約30分であり、燃焼速度はかなり遅い。また、接触比率は、9%と非常に低い。
これに対し、比較例2で用いたAg系触媒は、比較例1と同様にディッピング法により担持されたものである。また、触媒調製方法も、量産と同様の方法を用いたものであるが、比較例2のT90は、約20分であり、比較例1の貴金属系触媒より燃焼速度が速くなっている。PMの捕集状態、触媒の担持方法などは比較例1と同様であることから、Ag系触媒を用いることで、PMと浄化触媒とが接触している部位の燃焼速度が速くなり、全体の燃焼速度が速くなったものと考えられた。これこそがAg系触媒の特徴であり、接触性が低い状態でも貴金属系触媒よりは十分に速い速度でPMを燃焼させることができる。しかしながら、比較例2のAg系触媒では、接触比率が低いために、触媒のポテンシャルを十分に発揮できてはいない。
【0095】
[実施例1、比較例2]
実施例1と比較例2の浄化触媒について、D50、D90、及び比表面積を測定した結果を表2に示す。測定には、HORIBA製粒度分布測定装置「LA−920」を用いた。
【0096】
【表2】

【0097】
実施例1は、比較例2の触媒粒子を、湿式粉砕にて微細化した場合に相当するが、比較例2の触媒粒子に対して、D90が9.7μmから0.6μmと大幅に微細化できていることが確認された。また、比較例2に比して実施例1の比表面積が、40m/gから50m/gに増大していることも確認された。
ここで、実施例1と比較例2のCSFについて、SEM観察を実施し、表面状態の比較検討も併せて行った。比較例2のSEM像は、既に図11に示した通りである。この図11から明らかであるように、比較例2のCSF表面に大きな触媒粒子が確認できる。これに対して、図13が実施例1のCSF表面のSEM像であり、図14が実施例1のDPF細孔内のSEM像である。図13のCSF表面のSEM像から、実施例1では、触媒粒子が小さいうえ、DPFの表面が露出している部分があることが判った。また、図14のDPF細孔内のSEM像から、実施例1では、DPF細孔内に触媒粒子が多く担持されていることが判った。これらの結果から、実施例1では、触媒粒子が小さすぎるために、その多くがDPF細孔内に担持されているものと考えられた。
また、実施例1と比較例2のT90については、表1に示した通りであり、両者の燃焼速度はほぼ同等であるものの、接触比率については、実施例1の方が比較例2に比して良好であることが判った。即ち、DPF細孔内など微細な触媒粒子が数多く存在する部分では、微細化効果によって触媒とPMとの接触比率が向上するものと考えられた。ただし、ルーズコンタクト燃焼領域では、良好な接触性が保たれず、燃焼速度が悪化することから、微細な触媒粒子をDPF表面に均一に担持させる必要があると考えられた。
【0098】
[実施例2、比較例2]
実施例2は、比較例2の触媒材料を変えずに、ディッピング法ではなく発泡法を用いて触媒を担持させたCSFである。図15は、実施例2と比較例2のCSF表面に存在する空隙の大きさを、島津製作所製水銀ポロシメータ「ポアサイザ9320」を用いて測定した結果を示す図である。図15に示すように、実施例2のCSF表面には、比較例2には見られない3μm〜10μmの空隙が存在することが判った。これは、有機酸の発泡効果によるものと考えられた。また、比較例2のCSF表面には、0.6μm〜0.8μm程度の空隙のピークが存在するのに対して、実施例2のCSF表面では、空隙のピークが4μm〜8μmにシフトしていることが判った。
また、実施例2のCSFについて、SEM観察を実施し、表面状態の評価も併せて行った。図16は、実施例2のCSF表面のSEM像である。図16から明らかであるように、発泡法により触媒が分散して、全体的に均一に触媒が担持されていることが確認された。このように、全体的に均一に触媒が担持された実施例2のCSFでは、表1に示すように、接触比率が28%と比較例2に比して高く、T90も16分に短時間化されており、比較例2に比してPM燃焼性能が向上していることが確認された。
【0099】
[実施例3]
上述したように、実施例1と実施例2それぞれの接触比率は、比較例2に比して優れていることが判ったが、実施例3は、これら実施例1と実施例2の組合せ、即ち発泡法と触媒の微細化とを組み合わせたものである。この実施例3のCSFについて、SEM観察を実施し、表面状態の評価を行った。図17は、実施例3のCSF表面のSEM像である。また、図18は、図17の部分拡大図である。図17に示すように、実施例3のCSFでは、DPF細孔を塞ぐことなく、DPFの表面全体が触媒により均一に被覆されていることが判った。また、図18の部分拡大図から、微細な触媒粒子が密集して担持されていることが判った。
このように、発泡法と触媒の微細化との組合せにより、微細な触媒粒子をDPFの表面全体に均一に担持できる実施例3のCSFでは、表1に示すように接触比率が36%であり、実施例1や実施例2に比して接触性が向上していることが判った。また、接触性の向上により、T90が14分に時間化され、PMがより効率良く燃焼できていることが確認された。
【0100】
[実施例4]
実施例4は、実施例3にNO生成触媒をさらに含有させたものであり、発泡法及び触媒の微細化による接触性の向上に、NO生成触媒を組み合わせたものである。表1に示したように、実施例4のCSFの接触比率は52%であり、実施例3に比して接触性がさらに向上していることが判った。接触比率が52%であるということは、再生開始後30秒の間に、堆積したPMの52%が燃焼除去されることを意味しており、PMが非常に効率良く燃焼除去されていることが判る。また、T90がさらに12分に短時間化されていることも確認された。
【0101】
[実施例5]
実施例5は、実施例4のAg系触媒の調製方法をアミン還元法に変更したものである。このアミン還元法を用いて調製した実施例5と、含浸法を用いて調製した比較例2について、Ag結晶子径の測定を実施した。結果を表3に示す。なお、Ag結晶子径の測定には、リガク製X線回折装置「XRD−RINT III」を用いた。
【0102】
【表3】

【0103】
表3に示すように、比較例2のAg結晶子径は42nmであったのに対して、実施例5のAg結晶子径は34nmであり、比較例2に比して活性種Agが微細化されていることが判った。
また、表1に示したように、実施例5の接触比率は56%で非常に良好な接触性が得られたのは、活性種Agの微細化によりPMの接触性が向上したためであると考えられた。また、接触性が良好であるため、T90はさらに11.2分に短時間化されており、PMが非常に効率良く燃焼できていることが確認された。
【0104】
[参考例1〜6]
参考例1〜6について、D90と酸素脱離開始温度の測定を行った結果を表4に示す。また、これらの測定結果を元に、D90と酸素脱離開始温度との関係を図19に示した。なお、D90の測定には、HORIBA製粒度分布測定装置「LA−920」を用い、酸素脱離開始温度の測定には昇温脱離装置(O−TPD)を用いた。
【0105】
【表4】

【0106】
図19において、D90は、小さいほど接触性が向上することを意味し、酸素脱離開始温度は、低温であるほどPM燃焼性能が優れていることを意味する。
表4に示すように、参考例2の酸素脱離開始温度は、参考例1に比して高温化していた。これは、湿式粉砕時のエネルギが強力であるために、活性種Agの剥離や触媒粒子表面への物理的打撃による活性の低下によるものと考えられた。従って、中程度の微細化は好ましくないことが判った。
また、参考例3及び参考例4の酸素脱離開始温度は、参考例1とほぼ同等であった。これは、参考例3及び参考例4は、参考例2をさらに微細化したものに相当するところ、上述の参考例2と同様の現象が生じるものの、さらなる微細化でD90を0.6μm以下にした場合にあっては、触媒表面積の増大によってPM燃焼性能が向上したためであると考えられた。
また、参考例5及び参考例6の酸素脱離開始温度は、参考例1に比して低温化していた。これは、参考例5及び参考例6では、微細化エネルギが弱いため微細化の程度は小さく、参考例3や参考例4に比して触媒粒子の大きさは大きいものの、Ag剥離や表面活性の低下が起こらない結果、触媒表面積の増大によってPM燃焼性能が向上したためであると考えられた。
以上の結果から、D90が2μm以下であれば、接触性を向上させつつ、優れたPM燃焼性能が得られることが確認された。
【0107】
[実施例3〜4、比較例2]
実施例3〜4と比較例2のCSFについて、DPF表面における浄化触媒の被覆率の測定を実施した。結果を表5に示す。なお、DPF表面における浄化触媒の被覆率は、SEM観察により得られたSEM画像において、コントラストを強調させて白色部分(浄化触媒に相当)と黒色部分(DPFに相当)に分けた後、白色部分と黒色部分の面積を算出し、算出した面積値から求めた。
【0108】
【表5】

【0109】
表5に示すように、ディッピング法により浄化触媒を担持させた比較例2では、被覆率は29%と低かった。これに対して、実施例3及び実施例4では、発泡法と触媒の微細化との組合せにより、被覆率はそれぞれ73%及び86%と大幅に向上していた。これらの結果と上記表1の結果とから、被覆率が高いほど接触比率が高く、PM燃焼性能が高いことが判った。従って、DPF表面における浄化触媒の被覆率が30%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましいことが確認された。
【0110】
[参考例7〜10]
浄化触媒の調製方法として、含浸法を用いた参考例7、アミン還元法を用いた参考例8、アルコール還元法を用いた参考例9及び参考例10について、Ag結晶子径とPM燃焼ピーク温度の測定を実施した。結果を表6に示す。なお、Ag結晶子径の測定には、リガク製X線回折装置「XRD−RINT III」を用いた。また、PM燃焼ピーク温度の測定にはTG−DTA測定装置を用いた。
【0111】
【表6】

【0112】
表6に示すように、参考例8〜10はいずれも、参考例7に比してAg結晶子径が小さく、それに伴ってPM燃焼ピーク温度も低温化していた。これは、活性種Agの結晶子径が小さいことにより、PMと触媒との接触性が向上し、PM燃焼性能が向上するためであると考えられた。
この結果から、Ag結晶子径は42nmより小さいことが好ましいことが確認された。また、浄化触媒の調製方法としては、含浸法よりも還元法が好ましいことが確認された。さらには、還元法で用いる還元剤としては、トリエチルアミンやエチレングリコール、エタノールを好ましく用いることができることが確認された。
【符号の説明】
【0113】
1…DPF
2…排気流入路
3…排気流出路
4…目封止材
5…隔壁
6…細孔
7…浄化触媒層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、当該内燃機関の排気中の粒子状物質を捕捉するとともに、捕捉した粒子状物質を浄化するための浄化触媒を有するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置において、
前記浄化触媒は、当該浄化触媒の粒度分布における小粒径側からの累積分布が90%となるときの粒子径D90が2μm以下であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記浄化触媒は、3μm〜10μmの空隙を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタの表面における前記浄化触媒の被覆率が、30%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記浄化触媒は、水銀ポロシメータにより測定された孔径分布において、4μm〜8μmのピークを有することを特徴とする請求項1から3いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記浄化触媒は、Agを含むことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記Agは、結晶子径が42nm未満であることを特徴とする請求項5記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記Agは、酸素放出能を有する複合酸化物に担持されており、
前記複合酸化物は、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素、及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を構成元素として含むことにより、構成元素の価数を変化させて酸素の吸収及び放出を行うことを特徴とする請求項5又は6記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記浄化触媒は、前記Agとともに前記複合酸化物に担持された、Ru、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記浄化触媒は、還元法により調製されたことを特徴とする請求項1から8いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記浄化触媒は、還元剤として、トリエチルアミン、エチレングリコール、又はエタノールを用いて調製されたことを特徴とする請求項9記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
前記フィルタは、排気中のNOからNOを生成するNO生成触媒をさらに有することを特徴とする請求項1から10いずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
前記NO生成触媒は、Pt、Pd、及びRhからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を含むことを特徴とする請求項11記載の内燃機関の排気浄化装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図19】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−264359(P2010−264359A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116421(P2009−116421)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】