説明

内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関

【課題】内燃機関の燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命を、燃料フィルタの下流側に設けた1個の圧力センサの検出圧力により、正確に判定することができる内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関を提供する。
【解決手段】燃料タンク12から燃料噴射ノズル18に燃料を供給する燃料配管11に設けた燃料フィルタ14の目詰まり寿命の判定で、エンジン回転数Neが予め設定した第1エンジン回転数Ne以下の場合は、目詰まり寿命の判定を行わず、予め設定した前記第1エンジン回転数Neよりも大きい場合は、前記目詰まり寿命判定閾値Pcをエンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpに基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命を下流側に配置した圧力センサの検出圧力により判定する内燃機関のフィルタの目詰まり寿命判定方法及びそれを用いる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関においては、燃料タンクから噴射ポンプに流れる燃料をろ過して、燃料内に混入している不純物を除去するために、図1に示すように、燃料通路11の途中に燃料フィルタ14を設けている。従来技術においては、この燃料フィルタは、使われ方や目詰まり状態に関わらず、走行距離や使用年数の経過を判断基準にして定期的に交換を行っていることが多い。そのため、市場の大部分の燃料フィルタは、目詰まり寿命に到達する前に交換されている。
【0003】
この内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命の判定に関係して、燃料ポンプの上流側の燃料フィルタにおいて、上流側と下流側に燃料圧センサを設け、燃料フィルタの前後の圧力差が上限閾値より大きいときと下限閾値より小さいときに許容できない目詰まりが生じているとして、警報装置を作動させ、アイドル運転に移る内燃機関の燃料供給制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、燃料フィルタ下流でかつ燃料ポンプの上流側の燃料経路の燃料圧力を検出し、所定の運転条件下で正常負圧範囲よりも低負圧又は高負圧であると警告して、フィルタエレメントの組み付け忘れや目の粗い非純正品のフィルタエレメントの組み付け又は目詰まりを検知する燃料フィルタ異常検知装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−68763号公報
【特許文献2】特開2006−63856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明者らは、燃料フィルタの目詰まり寿命に関する実験により、燃料フィルタの出口における圧力特性は、図2に示すような傾向にあることと、次のような、エンジンの運転領域が特定の領域にあるときには、燃料フィルタの下流側のフィルタ出口圧力Poは、エンジン回転数Neとポンプ吐出量Vpにより変化するという知見を得た。
【0006】
つまり、図2に示すように、燃料ポンプの目詰まり寿命判定に関係するエンジンの運転領域は、フィルタ出口圧力Poとエンジン回転数Neの関係から、大きく分けて三つの第1〜第3の判定領域R1,R2,R3に分けられる。そして、エンジン回転数Neが低い第1の判定領域R1では燃料フィルタが目詰まりしてもフィルタ出口圧力Poは変わらない。そのため、この第1の判定領域R1ではフィルタ出口圧力Poによる目詰まり寿命判定は困難となる。
【0007】
また、第1の判定領域R1よりもエンジン回転数Neが高い第2の判定領域R2では、フィルタ出口圧力Poは、燃料ポンプの吐出量Vpとエンジン回転数Neの影響を受けて特性が変化する。この第2の判定領域R2では、燃料フィルタが目詰まりした時には、燃料ポンプが無吐出(点線)であれば、エンジン回転数Neが高いほどフィルタ出口圧力Poが低下し、燃料ポンプが全吐出(実線)であれば、フィルタ出口圧力Poは低下しない。つまり、燃料ポンプの吐出量Vpによりフィルタ出口圧力Poが大きく変動する。更に、第2の判定領域R2よりもエンジン回転数Neが高い第3の判定領域R3では、燃料ポンプの吐出量によるフィルタ出口圧力Poの変化は小さく、燃料フィルタの目詰まりの進行に従って、フィルタ出口圧力Poは低下する。
【0008】
また、第2の判定領域R2よりもエンジン回転数Neが高い第3の判定領域R3では、フィルタ出口圧力Poは、燃料ポンプの吐出量Vpによる変動が少なく、エンジン回転数Neの影響を受けて特性が変化する。
【0009】
なお、ここでは、エンジン回転数は燃料を燃料噴射圧力以上に高める燃料昇圧ポンプ(高圧ポンプ)の回転数に関係し、通常のエンジンの制御に用いられているので、燃料昇圧ポンプの回転数の代わりにエンジン回転数を用いている。
【0010】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命を、燃料フィルタの下流側に設けた1個の圧力センサの検出圧力により、正確に判定することができる内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法は、燃料タンクから燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタの下流側に配置された圧力センサの検出圧力が、予め設定された目詰まり寿命判定閾値以下になった時に、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したと判定する制御装置を備えた内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法において、エンジン回転数が予め設定した第1エンジン回転数以下の場合は、目詰まり寿命の判定を行わず、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きい場合は、前記目詰まり寿命判定閾値をエンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行うことを特徴とする方法である。
【0012】
この方法によれば、燃料フィルタの前後の差圧によらず、燃料フィルタの下流側の1個の圧力センサで行うので、目詰まり寿命判定のためのシステムを単純化することができる。また、エンジンの回転数により、目詰まり寿命の判定基準である目詰まり寿命判定閾値を算出するので、目詰まり寿命の判定のアルゴリズムが比較的単純なものになると共に、正確に目詰まり寿命を判定できるようになる。
【0013】
上記の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法において、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きく、予め設定した第2エンジン回転数以下の場合は、エンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出した前記目詰まり寿命判定閾値を総給油燃料の増加に従って大きくする補正を行う。
【0014】
この方法によれば、燃料昇圧ポンプの吐出量が大きく変動するようなエンジンの運転状態であっても総給油燃料の増加に伴って目詰まり寿命判定閾値を大きくしていくので、正確に目詰まり寿命であるか否かの判定を行うことができるようになる。
【0015】
上記の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法において、前記目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したとの判定を行った後に、前記圧力センサの検出圧力が、前記目詰まり寿命判定閾値よりも大きい予め設定したフィルタ交換判定閾値以上になった場合に、前記総給油燃料の値をリセットするように構成する。
【0016】
この構成によれば、燃料フィルタが目詰まり寿命に到達しているとの判定を行った後でも、燃料フィルタが交換されて、フィルタ出口圧力が復帰したことを確認してから、自動的に積算燃料量の値をリセットすることになるので、リセット作業が不要になるとともに、リセット忘れによる目詰まり寿命の誤判定を防止できる。
【0017】
上記の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法において、前記エンジン回転数の代わりに、燃料供給ポンプ回転数を用いるように構成する。この構成によれば、燃料噴射ノズルにおける燃料噴射量、即ち、燃料フィルタを通過する燃料量に密接な関係を持つ燃料供給ポンプの回転数を、このエンジン回転数の代わりに用いるので、より目詰まり寿命判定の精度を向上することができる。なお、エンジン回転数を用いる場合は、通常のエンジン運転制御でエンジン回転数が用いられているので、新たに燃料供給ポンプの回転数を検出したり、制御に組み入れたりする必要がない。
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、燃料タンクから燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタの下流側に配置された圧力センサの検出圧力が、予め設定された目詰まり寿命判定閾値以下になった時に、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したと判定する制御装置を備えた内燃機関において、前記制御装置が、エンジン回転数が予め設定した第1エンジン回転数以下の場合は、目詰まり寿命の判定を行わず、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きい場合は、前記目詰まり寿命判定閾値をエンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行うように構成される。
【0019】
また、上記の内燃機関において、前記制御装置が、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きく、予め設定した第2エンジン回転数以下の場合は、エンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出した前記目詰まり寿命判定閾値を総給油燃料の増加に従って大きくする補正を行うように構成される。
【0020】
また、上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したとの判定を行った後に、前記圧力センサの検出圧力が、前記目詰まり寿命判定閾値よりも大きい予め設定したフィルタ交換判定閾値以上になった場合に、前記総給油燃料の値をリセットするように構成される。
【0021】
また、上記の内燃機関において、前記エンジン回転数の代わりに、燃料供給ポンプ回転数を用いるように構成する。
【0022】
これらの内燃機関によれば、上記の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法を実施することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関によれば、内燃機関の燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命の判定において、エンジン回転数により、目詰まり寿命判定閾値の算出方法を変化させ、予め設定した範囲では、目詰まり寿命判定閾値を、エンジン回転数だけでなく、燃料昇圧ポンプの吐出量も用いて算出しているので、燃料フィルタの下流側に設けた1個の圧力センサの検出圧力でも、燃料フィルタの目詰まり寿命を正確に判定することができる。従って、燃料フィルタの目詰まり状態を正確に判定して、警告灯等で使用者に告知することにより、燃料フィルタが寿命になるまで使用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の実施の形態の内燃機関の燃料ライン及び燃料フィルタの目詰まり寿命判定システム10の構成を示す。
【0025】
図1に示すように、内燃機関の燃料ラインは、燃料配管11で、燃料タンク12と燃料噴射ノズル(インジェクタ)18とを連結するラインであり、燃料配管11に、燃料タンク12側から順に、燃料供給ポンプ(フィードポンプ)13、燃料フィルタ14、圧力センサ15、燃料昇圧ポンプ(高圧ポンプ)16、コモンレール17が配置されている。
【0026】
圧力センサ15で検出された圧力信号は内燃機関の運転を制御するECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる制御装置20に入力される。この制御装置20に組み込まれた目詰まり寿命判定手段により、この圧力信号から得られる検出圧力Pfがフィルタ目詰まり寿命判定閾値Pc1と比較され、燃料フィルタ14の目詰まり寿命の判定が行われる。この判定で燃料フィルタ14が目詰まり寿命に到達しているとの判定が下された場合には、警告用信号を出力しメータパネル21で警告灯21aを点滅させる等して、燃料フィルタ14が目詰まり寿命となったことを使用者(ドライバー)に警告する。なお、制御装置20は噴射指示信号を出力して、シリンダ内に設けられた燃料噴射ノズル18における燃料噴射を制御する。
【0027】
次に、制御装置20に組み込まれた目詰まり寿命判定手段の目詰まり寿命判定方法について、図2〜図4を参照しながら説明する。
【0028】
図2〜図4では、エンジン回転数Ne(横軸)をベースに、フィルタ出口圧力Po(縦軸)を示し、このフィルタ出口圧力Poが燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpと目詰まりの影響を受けて変化することを、4つの線で示している。Po1で示す細い点線は、無吐出時でかつ新品時を示し、Po2で示す細い実線は、全吐出でかつ新品時を示す。また、Po3で示す太い点線は、無吐出時でかつ目詰まり寿命時を示し、Po4で示す細い実線は、全吐出でかつ目詰まり寿命時を示す。
【0029】
なお、この図2〜図4では、第1の判定領域R1と第3の判定領域R3において、実際にはPo1とPo2.Po3とPo4とが略重なるが、分かり易くするため、その差を大きく拡大して模式的に示してある。また、第2の判定領域R2におけるPo3とPo4についても同様である。
【0030】
この目詰まり寿命判定方法では、図2及び図3に示すように、エンジン回転数Neにより、内燃機関の運転領域を目詰まり寿命判定用の第1〜第3の判定領域R1,R2,R3に分ける。エンジン回転数Neが予め設定した第1エンジン回転数Ne1以下の場合は、第1の判定領域R1とする。また、エンジン回転数Neが予め設定した第1エンジン回転数Ne1よりも大きく、予め設定した第2エンジン回転数Ne2以下の場合は、第2の判定領域R2とする。更に、エンジン回転数Neが第2エンジン回転数Neよりも大きい場合には、第3の判定領域R3とする。
【0031】
次に、目詰まり寿命判定を行おうとしている時の内燃機関の運転領域が、エンジン回転数Neにより、第1の判定領域R1にあると判定されたときには、燃料フィルタ14が目詰まりしても検出圧力Pfは変わらず、目詰まり寿命判定をすることができないので、目詰まり寿命の判定を行わずに、内燃機関の運転領域が第2の判定領域R2又は第3の判定領域R3に入るのを待つ。
【0032】
また、内燃機関の運転領域が、エンジン回転数Neにより、第2の判定領域R2にあると判定されたときには、目詰まり寿命判定閾値Pc1をエンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプの吐出量Vpに基づいて算出し、この目詰まり寿命判定閾値Pc1を総給油燃料(総燃料噴射量:積算燃料流量)Qsに従って補正して、目詰まり寿命の判定を行う。この目詰まり寿命の判定では、圧力センサ15で検出された検出圧力Pfが、目詰まり寿命判定閾値Pc1以下(Pf≦Pc1)の場合に目詰まり寿命であると判定し、その他(Pf>Pc1)の場合は目詰まり寿命ではないと判定する。
【0033】
この判定を行う理由について説明する。この第2の判定領域2では、図2に示すように、フィルタ出口圧力Poは、ポンプ吐出量Vp、エンジン回転数Neによって変化の仕方が異なる。燃料フィルタ14が目詰まり寿命の場合では、燃料昇圧ポンプ16が無吐出、即ち、ポンプ吐出量Vpがゼロのときには(点線)、エンジン回転数Neが高回転であるほどフィルタ出口圧力Poが低下し、燃料昇圧ポンプ16が全吐出、即ち、ポンプ吐出量Vpが全量であるときには(実線)、フィルタ出口圧力Poは低下しない。つまり、燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpによってフィルタ出口圧力Poの低下量が大きく変動する。
【0034】
従って、図3に示すように、フィルタ目詰まり寿命時のフィルタ出口圧力(図2の太線)Po3、Po4と燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpを考慮して、目詰まり寿命判定閾値Pc1を算出し、それ以下に検出圧力Pfが低下した場合、燃料フィルタ14は目詰まり寿命に達したと判定する。
【0035】
但し、この第2の判定領域R2では、燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpによりフィルタ出口圧力Poが大きく変化するため、燃料ポンプ14の吐出量Vpが大きく変動する運転時等では、燃料フィルタ14が新品の時(太線)であっても、吐出量Vpによってフィルタ出口圧力Poが低下するため、目詰まり寿命に達したと判定されてしまう可能性があるので、これを回避するため、図3に示すように、燃料フィルタ14を通過した燃料量(燃料噴射量)Qを積算した総給油燃料Qsに従って、目詰まり寿命判定閾値Pc1の値を大きくする補正を行う。
【0036】
つまり、燃料フィルタ14に捕捉される物には、エンジン内で発生した異物も存在するが、大部分は給油燃料に含まれるものであるので、燃料フィルタ14を新品に交換した後に、供給される燃料量、言い換えれば、燃料フィルタ14がろ過する燃料の総量(積算燃料流量、総燃料噴射量)である総給油燃料Qsが増えるほど目詰まりが進行すると考えられる。従って、総給油燃料Qsが増加するほど目詰まり寿命に到達していると判定し易くなるように、総給油燃料Qsの増加につれて目詰まり寿命判定閾値Pc1の値が大きくなるように、目詰まり寿命判定閾値Pc1を補正する。
【0037】
次に、内燃機関の運転領域が、エンジン回転数Neにより、第3の判定領域R3にあると判定されたときには、目詰まり寿命判定閾値Pc1をエンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpに基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行う。この目詰まり寿命の判定では、圧力センサ15で検出された検出圧力Pfが、目詰まり寿命判定閾値Pc以下(Pf≦Pc1)の場合に目詰まり寿命であると判定し、その他(Pf>Pc1)の場合は、目詰まり寿命ではないと判定する。
【0038】
この第3の判定領域R3では、燃料フィルタ14が目詰まりするとフィルタ出口圧力Poが低下する。この第3の判定領域R3では、燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpによるフィルタ出口圧力Poの影響が少なく、吐出量Vpの変化によるフィルタ出口圧力Poの変化は小さい。そのため、燃料フィルタ14の目詰まり寿命時のフィルタ出口圧力(図2の細線)Po3、Po4に合わせ、目詰まり寿命判定閾値Pc1を設定し(太線)、これに基づいて算出する。
【0039】
これらの目詰まり寿命判定で、燃料フィルタ14の状態が目詰まり寿命であると判定された場合には、図1に示すように、制御装置20からメータパネル21に警告用の信号を出力し、警告灯21aを点滅させる等して、使用者に対して、燃料フィルタ14が目詰まり寿命に到達しており、交換が必要であるとの警告を行う。
【0040】
そして、使用者等により燃料フィルタ14の交換が行われた場合には、第2の判定領域R2の目詰まり寿命判定閾値Pc1の補正で使用されている総給油燃料Qsをリセットする必要がある。そのため、交換後には、フィルタ出口圧力Poが新品時の圧力Po1〜Po2に復帰するので、燃料フィルタ14の交換後のフィルタ目詰まり寿命判定後に、検出圧力Pfのチェックを行う。
【0041】
この場合には、図4に示すような新品時の圧力Po1〜Po2に合わせて、エンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpに対してフィルタ交換判定閾値Pc2を予め設定しておく。この設定データから、そのエンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプ16の吐出量Vpに基づいてフィルタ交換判定閾値Pc2を算出して、検出圧力Pfがこの算出されたフィルタ交換判定閾値Pc2以上に上昇している(Pf≧Pc2)場合には、フィルタ交換されたと判定し、総給油燃料Qsをゼロにしてリセットする。その他(Pf<Pc2)の場合には、リセットしない。
【0042】
このフィルタ交換判定閾値Pc2の設定は、エンジン回転数Neにより、2つの第1〜第2の判定領域R1a、R2aに分けて行う。
【0043】
これらの一連の判定のプロセスを図5にロジック回路で示す。S1では、目詰まり寿命判定の精度を向上させるため、燃料フィルタ14を通過した燃料流量である総給油燃料Qsを燃料噴射量Qの積算で算出する。
【0044】
S2では、エンジン回転数Neと燃料ポンプ14の吐出量Vpによって、フィルタ出口圧力Poが変化するため、エンジン回転数Ne等から、予め設定したデータマップ等を参照して、目詰まり寿命判定閾値Pc1を算出する。なお、このS2では、エンジンの運転領域が第2の判定領域R2にある場合には、エンジン回転数Neと燃料昇圧ポンプの吐出量Vpに基づいて算出した目詰まり寿命判定閾値Pc1の値を、S1で算出した総給油燃料Qsが増加するに従って徐々に上げていく補正を行う。
【0045】
S3では、検出圧力Pfが目詰まり寿命判定閾値Pc1以下に下がった場合に(YES:Pf≦Pc1)、燃料フィルタ14が目詰まり寿命まで達したと判定し、S4及びS5に行く。S4では、この目詰まり寿命であるとの判定を受けて、メータパネル21に警告灯21aを点灯させる信号を出力する。使用者はこの警告を受けて燃料フィルタ14を交換する。また、S3で、検出圧力Pfが目詰まり寿命判定閾値Pc1より大きい場合には(NO:Pf>Pc1)、燃料フィルタ14が目詰まり寿命まで達していないと判定し、S2に行く。
【0046】
S5では、フィルタ交換後は総給油燃料Qsをリセットする必要があるため、フィルタ交換判定閾値Pc2を算出する。この後、S6に行き、検出圧力Pfがフィルタ交換判定閾値Pc2以上に上がった場合に(YES:Pf≧Pc2)、フィルタが交換されたと判定し、S7で総給油燃料Qsのリセットを自動で行う。その後、S2に戻る。また、検出圧力Pfがフィルタ交換判定閾値Pc2よりも小さい場合には(NO:Pf<Pc2)、フィルタが交換されていないと判定し、そのままS2に戻る。なお、この場合には、S4の警告灯21aを点灯させる信号がフィルタ交換がなされるまで、繰り返し出力されることになる。
【0047】
なお、上記の説明では、エンジン回転数Neを使用して、エンジンの運転領域を区分したり、このエンジン回転数Neに基づいて、目詰まり寿命判定閾値Pc1とフィルタ交換判定閾値Pc2を算出したりしているが、フィルタ出口圧力に密接な関係を持つ燃料供給ポンプ(フィードポンプ)13の回転数を、このエンジン回転数Neの代わりに用いることもできる。
【0048】
上記の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法及びこれを用いる内燃機関によれば、内燃機関の燃料配管11に設けた燃料フィルタ14の目詰まり寿命の判定において、エンジン回転数Neにより、目詰まり寿命判定閾値Pc1の算出方法を変化させているので、燃料フィルタ14の下流側に設けた1個の圧力センサ15の検出圧力Pfでも、燃料フィルタ14の目詰まり寿命を正確に判定することができる。従って、燃料フィルタ14の目詰まり状態を正確に判定して、警告灯21a等で使用者に告知することにより、燃料フィルタ14を寿命が来るまで使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関の燃料ラインの構成を示す図である。
【図2】エンジン回転数とフィルタ出口圧力との関係を示す図である。
【図3】フィルタ出口圧力特性とフィルタ目詰まり寿命判定閾値との関係を示す図である。
【図4】フィルタ出口圧力特性とフィルタ交換判定閾値との関係を示す図である。
【図5】目詰まり寿命判定方法のロジック回路を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 燃料ライン
11 燃料配管
12 燃料タンク
13 燃料供給ポンプ(フィードポンプ)
14 燃料フィルタ
15 圧力センサ
16 燃料昇圧ポンプ
17 コモンレール
18 燃料噴射ノズル(インジェクタ)
20 制御装置(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタの下流側に配置された圧力センサの検出圧力が、予め設定された目詰まり寿命判定閾値以下になった時に、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したと判定する制御装置を備えた内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法において、
エンジン回転数が予め設定した第1エンジン回転数以下の場合は、目詰まり寿命の判定を行わず、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きい場合は、前記目詰まり寿命判定閾値をエンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行うことを特徴とする内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法。
【請求項2】
エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きく、予め設定した第2エンジン回転数以下の場合は、エンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出した前記目詰まり寿命判定閾値を総給油燃料の増加に従って大きくする補正を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法。
【請求項3】
前記目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したとの判定を行った後に、前記圧力センサの検出圧力が、前記目詰まり寿命判定閾値よりも大きい予め設定したフィルタ交換判定閾値以上になった場合に、前記総給油燃料の値をリセットすることを特徴とする請求項1、又は2に記載の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法。
【請求項4】
前記エンジン回転数の代わりに、燃料供給ポンプ回転数を用いることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の内燃機関の燃料フィルタの目詰まり寿命判定方法。
【請求項5】
燃料タンクから燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料配管に設けた燃料フィルタの目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタの下流側に配置された圧力センサの検出圧力が、予め設定された目詰まり寿命判定閾値以下になった時に、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したと判定する制御装置を備えた内燃機関において、
前記制御装置が、エンジン回転数が予め設定した第1エンジン回転数以下の場合は、目詰まり寿命の判定を行わず、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きい場合は、前記目詰まり寿命判定閾値をエンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出して、目詰まり寿命の判定を行うことを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
前記制御装置が、エンジン回転数が予め設定した前記第1エンジン回転数よりも大きく、予め設定した第2エンジン回転数以下の場合は、エンジン回転数と燃料昇圧ポンプの吐出量に基づいて算出した前記目詰まり寿命判定閾値を総給油燃料の増加に従って大きくする補正を行うことを特徴とする請求項5記載の内燃機関。
【請求項7】
前記制御装置が、前記目詰まり寿命の判定で、前記燃料フィルタが目詰まり寿命に到達したとの判定を行った後に、前記圧力センサの検出圧力が、前記目詰まり寿命判定閾値よりも大きい予め設定したフィルタ交換判定閾値以上になった場合に、前記総給油燃料の値をリセットすることを特徴とする請求項5、又は6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記制御装置が、前記エンジン回転数の代わりに、燃料供給ポンプ回転数を用いることを特徴とする請求項5,6又は7に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106682(P2010−106682A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276783(P2008−276783)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】