説明

内燃機関の燃料供給装置

【課題】ポート噴射用インジェクタと筒内噴射用インジェクタとを備えた内燃機関の高温始動性を向上させることができる燃料供給装置の提供。
【解決手段】内燃機関1の燃料供給装置10は、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射用インジェクタ4pと、燃焼室2内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタ4cとに対し、燃料ポンプ12によって燃料タンク11から燃料を供給可能なものであり、ポート噴射用インジェクタ4pが接続されたポート噴射用デリバリ管14pと、筒内噴射用インジェクタ4cが接続された筒内噴射用デリバリ管14cと、燃料ポンプ12により圧送される燃料を加熱可能な燃料加熱手段16とを備える。両デリバリ管14p、14cが燃料ポンプ12に並列に接続されており、燃料加熱手段16は、両デリバリ管14p、14cの何れか一方に対して供給される燃料のみを加熱するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射用インジェクタと、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタとに対し、燃料ポンプによって燃料タンクから燃料を供給可能な内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の燃焼室に対して高圧の燃料を供給するリターンレス式の燃料供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この燃料供給装置では、内燃機関の始動時に蓄圧配管(燃料デリバリ管)内の燃料が高圧ポンプの加圧室に導入され、そこで加圧される。これにより、内燃機関の始動時には、蓄圧配管内にあった燃料が高圧ポンプによって加圧されることから、蓄圧配管内の燃料の一部が気化していたとしても、内燃機関の始動性を阻害する気化した燃料を消失させることが可能となる。
【0003】
また、従来から、燃料系統における燃料の気化を抑制するために内燃機関の停止後に燃料の温度が所定値以下になるまで冷却ファンにより燃料を冷却する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。更に、燃料系統における燃料の気化を抑制するための技術としては、内燃機関の停止時にエンジン冷却水を蓄熱器に導き、当該蓄熱器においてエンジン冷却水の熱を奪うものも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−130288号公報
【特許文献2】特開昭63−88261号公報
【特許文献3】特開平6−17648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように一部気化している燃料を加圧したり、冷却したりしても、気化した燃料を充分に消失させることは困難である。そして、例えば燃料デリバリ管の内部等で燃料の一部が気化しているような状態では、充分な燃料噴射圧を確保し得なくなるので、内燃機関を良好に始動させ得なくなるおそれがある。このため、従来の燃料供給装置を含む内燃機関は、いわゆる高温始動性の面でなお改善の余地を有しており、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射用インジェクタと、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタとを備える内燃機関についても、同様の課題が存在している。
【0006】
そこで、本発明は、ポート噴射用インジェクタと筒内噴射用インジェクタとを備えた内燃機関の高温始動性を向上させることができる燃料供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による内燃機関の燃料供給装置は、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射用インジェクタと、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタとに対し、燃料ポンプによって燃料タンクから燃料を供給可能な内燃機関の燃料供給装置において、ポート噴射用インジェクタが接続されたポート噴射用デリバリ管と、筒内噴射用インジェクタが接続された筒内噴射用デリバリ管と、燃料ポンプにより圧送される燃料を加熱可能な燃料加熱手段とを備え、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管とが燃料ポンプに並列に接続されており、燃料加熱手段は、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管との何れか一方に対して供給される燃料のみを加熱するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
この燃料供給装置では、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管とが燃料ポンプに並列に接続されており、燃料加熱手段によって、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管との何れか一方に対して供給される燃料のみが加熱される。これにより、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管とのうち、燃料加熱手段によって加熱されない燃料が供給されるデリバリ管の内部では、燃料が過剰に昇温してしまうことはなく、当該デリバリ管内での燃料の気化は抑制される。従って、所定箇所における燃料の温度が所定値を超えているような場合であっても、燃料加熱手段によって加熱されない燃料が供給されるデリバリ管に接続されたインジェクタから燃料が噴射されるようにすれば、充分な燃料噴射圧を確保して、ポート噴射用インジェクタと筒内噴射用インジェクタとを備えた内燃機関の高温始動性を向上させることができる。
【0009】
すなわち、本発明による内燃機関の燃料供給装置は、所定箇所における燃料の温度を取得するための温度検出手段と、内燃機関の始動時に温度検出手段を用いて取得した燃料の温度が所定値を超えている場合、ポート噴射用デリバリ管と筒内噴射用デリバリ管とのうち、燃料加熱手段によって加熱されない燃料が供給されるデリバリ管に接続されたインジェクタから燃料が噴射されるようにする制御手段とを更に備えると好ましい。
【0010】
そして、燃料加熱手段は、内燃機関の希薄燃焼運転の実行時に使用されるインジェクタが接続されているデリバリ管に供給される燃料を加熱するものであると好ましい。
【0011】
このような構成を採用すれば、内燃機関の希薄燃焼運転に際して、インジェクタから噴射される燃料をより一層微粒化させて安定した燃焼を確保することが可能となる。また、かかる構成において、内燃機関の始動時に使用されるインジェクタへの燃料は加熱されないことから、充分な燃料噴射圧を確保して内燃機関の高温始動性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポート噴射用インジェクタと筒内噴射用インジェクタとを備えた内燃機関の高温始動性を向上させることができる燃料供給装置の実現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関を示す概略構成図である。同図に示される内燃機関1は、直列4気筒エンジンとして構成されており、車両の走行駆動源として用いられると好適なものである。この内燃機関1は、シリンダブロックに形成された複数の燃焼室2を有し、各燃焼室2の内部で燃料(本実施形態では、ガソリン燃料)を燃焼させてピストン3を往復移動させることにより動力を発生する。
【0015】
内燃機関1は、図1に示されるように、それぞれ対応する吸気ポートに臨むようにシリンダヘッドに配設された複数のポート噴射用インジェクタ4pと、それぞれ対応する燃焼室2の内部に臨むようにシリンダヘッドに配設された複数の筒内噴射用インジェクタ4cと、複数の点火プラグ(図示省略)とを有する。本実施形態において、各ポート噴射用インジェクタ4pは、所定条件下で各燃焼室2における燃料および空気の空燃比を理論空燃比よりも大きく(リーンに)する希薄燃焼運転を実行する際に用いられ、各筒内噴射用インジェクタ4cは、所定条件下で各燃焼室2における燃料および空気の空燃比を概ね理論空燃比に保つストイキ燃焼運転を実行する際に用いられる。
【0016】
そして、内燃機関1の各ピストン3は、いわゆる深皿頂面型に構成されており、その上面には、凹部3aが形成されている。この内燃機関1では、ストイキ燃焼運転の実行時に、各燃焼室2内に空気を吸入させた状態で、各筒内噴射用インジェクタ4cから各燃焼室2内のピストン3の凹部3aに向けて燃料が直接噴射される。これにより、内燃機関1では、図示されない点火プラグの近傍に燃料と空気との混合気の層が周囲の空気層と分離された状態で形成(成層化)される。この結果、内燃機関1では、安定した成層燃焼を実行することが可能となる。
【0017】
また、内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが燃焼室2ごとに配設されている。これらの吸気弁および排気弁は、例えば可変バルブタイミング機能を有する図示されない動弁機構によって開閉させられる。そして、各燃焼室2の吸気ポートは、それぞれ吸気管(吸気マニホールド)5に接続されており、吸気管5には、例えばドライブバイワイヤ式のスロットルバルブ6が設置されている。一方、各燃焼室2の排気ポートは、排気管(排気マニホールド)7にそれぞれ接続されている。排気管7には、内燃機関1の希薄燃焼運転に伴って排気ガス中のNOx(窒素酸化物)が増加することを踏まえて、三元触媒を含む前段触媒装置8に加えて、NOx吸蔵還元触媒を含む後段触媒装置9が接続されている。各燃焼室2からの排気ガス中のNOxは、後段触媒装置9のNOx吸蔵還元触媒によって吸蔵され、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxは、所定のタイミングで実行される還元処理によって還元される。
【0018】
上述のような内燃機関1に含まれる燃料供給装置10は、上述のポート噴射用インジェクタ4pおよび筒内噴射用インジェクタ4cに加えて、燃料タンク11、燃料ポンプ12、ポート噴射用デリバリ管14pおよび筒内噴射用デリバリ管14cを含む。上述の各ポート噴射用インジェクタ4pは、ポート噴射用デリバリ管14pに接続されており、上述の各筒内噴射用インジェクタ4cは、筒内噴射用デリバリ管14cに接続されている。
【0019】
燃料タンク11には、液相状態のガソリン燃料が貯留される。燃料ポンプ12は、燃料タンク11の内部に配置されており、燃料タンク11内の燃料を吸い込んで所定圧力で吐出する。燃料ポンプ12の吐出口には、燃料供給管L1の一端が接続されており、この燃料供給管L1の他端は、ポート噴射用デリバリ管14pの一端に接続されている。また、ポート噴射用デリバリ管14pの他端(燃料供給管L1が接続された端部とは反対側の端部)には、燃料を昇圧させるための昇圧手段としての高圧ポンプ15を中途に有する連通管L2を介して、筒内噴射用デリバリ管14cが直列に接続されている。
【0020】
これにより、燃料ポンプ12を作動させると共に各ポート噴射用インジェクタ4pを適宜開弁させることにより、燃料タンク11内の液相状態のガソリン燃料をポート噴射用デリバリ管14pへと圧送して、各ポート噴射用インジェクタ4pから燃料を噴射させることが可能となる。また、燃料ポンプ12および高圧ポンプ15の双方を作動させると共に各筒内噴射用インジェクタ4cを適宜開弁させることにより、燃料タンク11内の液相状態のガソリン燃料を、ポート噴射用デリバリ管14pを介して筒内噴射用デリバリ管14cへと圧送し、各筒内噴射用インジェクタ4cから燃料を噴射させることが可能となる。
【0021】
また、図1に示されるように、燃料供給管L1の中途には、燃料ポンプ12とポート噴射用デリバリ管14pとの間に位置するように燃料加熱ユニット16が設置されている。燃料加熱ユニット16は、例えば内燃機関1の排気熱といった廃熱を熱源とする熱交換器であり、燃料ポンプ12により燃料タンク11から吸い出されて燃料供給管L1を介してポート噴射用デリバリ管14pへと圧送される燃料を加熱可能なものである。このように、燃料タンク11からポート噴射用デリバリ管14pへと供給される燃料を加熱することにより、希薄燃焼運転時に使用される各ポート噴射用インジェクタ4pから噴射される燃料をより一層微粒化させることが可能となり、いわゆるリーン限界をより延ばすことが可能となる。
【0022】
そして、上述の燃料供給装置10は、内燃機関1の制御手段として機能する電子制御ユニット(以下「ECU」という)20によって制御される。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含み、ECU20の入出力ポートには、水温センサ21を始めとする各種センサ類が接続されている。また、図1に示されるように、各ポート噴射用インジェクタ4pおよび各筒内噴射用インジェクタ4c、燃料供給装置10の燃料ポンプ12および高圧ポンプ15等は、ECU20の入出力ポートに接続されており、これらは、ECU20によって制御される。
【0023】
さて、上述の内燃機関1では、特に燃料加熱ユニット16を用いて燃料供給管L1内の燃料を加熱した場合に、機関温度(シリンダヘッドやシリンダブロックの温度)が高まり、機関停止時等に特に各ポート噴射用インジェクタ4pの内部やポート噴射用デリバリ管14p等において燃料が気化しやすくなる。そして、このように機関温度(燃料温度)が高い状態で内燃機関1を再始動させようとした場合、ポート噴射用デリバリ管14p等の内部で気化した燃料の存在によって充分な燃料噴射圧が確保し得なくなり、内燃機関1を良好に始動させ得なくなるおそれがある。
【0024】
このため、本実施形態の内燃機関1において、ECU20は、イグニッションスイッチがオンされると、水温センサ21からの信号に基づいて例えば各ポート噴射用インジェクタ4p内またはポート噴射用デリバリ管14p内の燃料の温度Tを取得し、取得した温度Tが予め定められた閾値Tを上回っているか否か判定する。そして、ECU20は、燃料温度Tが予め定められた閾値Tを上回っていると判断した場合、燃料ポンプ12と共に高圧ポンプ15を作動させ、更に、各ポート噴射用インジェクタ4pからの燃料噴射を停止させた状態で、筒内噴射用インジェクタ4cから各燃焼室2内に燃料が噴射されるようにする。
【0025】
このように、燃料ポンプ12と高圧ポンプ15とを作動させた状態で各筒内噴射用インジェクタ4cから燃焼室2内に燃料が噴射されるようにすれば、ポート噴射用デリバリ管14p等の内部に存在している燃料は、昇圧手段としての高圧ポンプ15によって昇圧させられた上で筒内噴射用デリバリ管14cに送られ、各筒内噴射用インジェクタ4cから燃焼室2内に噴射されることになる。従って、燃料供給装置10によれば、燃料温度Tが閾値Tを超えている高温状態のもとで内燃機関1を始動(再始動)させる際に、ポート噴射用デリバリ管14pの内部で燃料が仮に気化していたとしても、高圧ポンプ15を作動させると共に各筒内噴射用インジェクタ4cから燃焼室2内に燃料を噴射させることにより、内燃機関1の始動性を阻害する気化した燃料を昇圧・液化させて充分な燃料噴射圧を確保できるので、燃料加熱ユニット16が用いられている場合であっても、内燃機関1の高温始動性を向上させることが可能となる。
【0026】
〔第2実施形態〕
以下、図2を参照しながら、第2実施形態について説明する。なお、上述の第1実施形態に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
【0027】
図2に示される燃料供給装置10Aが適用される内燃機関1Aも、複数のポート噴射用インジェクタ4pと、複数の筒内噴射用インジェクタ4cとを有する。そして、本実施形態においても、各ポート噴射用インジェクタ4pは、所定条件下で各燃焼室2における燃料および空気の空燃比を理論空燃比よりも大きく(リーンに)する希薄燃焼運転を実行する際に用いられ、各筒内噴射用インジェクタ4cは、所定条件下で各燃焼室2における燃料および空気の空燃比を概ね理論空燃比に保つストイキ燃焼運転を実行する際に用いられる。
【0028】
そして、燃料供給装置10Aでは、燃料ポンプ12に接続されたポート噴射用デリバリ管14pに高圧ポンプ15を介して筒内噴射用デリバリ管14cが直列に接続される代わりに、ポート噴射用デリバリ管14pと筒内噴射用デリバリ管14cとが燃料ポンプ12に並列に接続されている。すなわち、燃料ポンプ12の吐出口に接続された燃料供給管L1は、その中途に設けられた分岐部BPにて2方向に分岐されており、燃料供給管L1の一方の枝管L1pにポート噴射用デリバリ管14pが接続され、燃料供給管L1の他方の枝管L1cに筒内噴射用デリバリ管14cが接続されている。
【0029】
また、燃料供給管L1の一方の枝管L1pには、分岐部BPとポート噴射用デリバリ管14pとの間に位置するように燃料加熱ユニット16が設置されている。従って、本実施形態では、燃料タンク11からポート噴射用デリバリ管14pに供給される燃料のみが燃料加熱ユニット16によって加熱されることになる。更に、燃料供給管L1の他方の枝管L1cの中途には、各筒内噴射用インジェクタ4cへの燃料を昇圧させるための高圧ポンプ15が組み込まれている。
【0030】
さて、このように構成される燃料供給装置10Aでは、燃料加熱ユニット16によってポート噴射用デリバリ管14pに対して供給される燃料のみが加熱される。従って、燃料加熱ユニット16によって加熱されない燃料が供給される筒内噴射用デリバリ管14cの内部では、燃料が過剰に昇温してしまうことはなく、当該筒内噴射用デリバリ管14cの内部での燃料の気化は抑制されることになる。
【0031】
このような点に鑑みて、本実施形態の内燃機関1Aにおいて、ECU20は、イグニッションスイッチがオンされると、水温センサ21からの信号に基づいて例えば各ポート噴射用インジェクタ4p内またはポート噴射用デリバリ管14p内の燃料の温度Tを取得し、取得した温度Tが予め定められた閾値Tを上回っているか否か判定する。ここで、燃料温度Tが閾値Tを超えている場合、ポート噴射用デリバリ管14pの内部では燃料が気化していることもあり得る。このため、ECU20は、燃料温度Tが予め定められた閾値Tを上回っていると判断した場合、燃料ポンプ12と共に高圧ポンプ15を作動させ、更に、各ポート噴射用インジェクタ4pからの燃料噴射を停止させた状態で、筒内噴射用インジェクタ4cから各燃焼室2内に燃料が噴射されるようにする。
【0032】
このように、上述の燃料温度Tが閾値Tを超えている高温状態のもとで内燃機関1を始動(再始動)させる際に、燃料加熱ユニット16によって加熱されない比較的低温の燃料が供給される筒内噴射用デリバリ管14cに接続された各筒内噴射用インジェクタ4cから燃焼室2に燃料が噴射されるようにすれば、燃料供給管L1の枝管L1cや筒内噴射用デリバリ管14cの内部には気化した燃料が殆ど存在していないことから、燃料加熱ユニット16が用いられている場合であっても、充分な燃料噴射圧を確保して、内燃機関1の高温始動性を向上させることが可能となる。
【0033】
また、筒内噴射用デリバリ管14cには、高圧ポンプ15によって昇圧させられた燃料が供給されることから、筒内噴射用デリバリ管14cの内部における燃料の気化は、極めて確実に抑制されることになる。そして、本実施形態のように、内燃機関1の希薄燃焼運転の実行時に使用されるポート噴射用インジェクタ4pが接続されているポート噴射用デリバリ管14pに供給される燃料のみを燃料加熱ユニット16により加熱することにより、内燃機関1の希薄燃焼運転に際して、各ポート噴射用インジェクタ4pから噴射される燃料をより一層微粒化させて安定した燃焼を確保すると共に、内燃機関1の再始動時に使用される各筒内噴射用インジェクタ4cへの燃料の昇温をできるだけ抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】第2実施形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A 内燃機関
2 燃焼室
3 ピストン
4c 筒内噴射用インジェクタ
4p ポート噴射用インジェクタ
5 吸気管
6 スロットルバルブ
7 排気管
8 前段触媒装置
9 後段触媒装置
10,10A 燃料供給装置
11 燃料タンク
12 燃料ポンプ
14c 筒内噴射用デリバリ管
14p ポート噴射用デリバリ管
15 高圧ポンプ
16 燃料加熱ユニット
20 ECU
21 水温センサ
BP 分岐部
L1 燃料供給管
L1c,L1p 枝管
L2 連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射用インジェクタと、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタとに対し、燃料ポンプによって燃料タンクから燃料を供給可能な内燃機関の燃料供給装置において、
前記ポート噴射用インジェクタが接続されたポート噴射用デリバリ管と、
前記筒内噴射用インジェクタが接続された筒内噴射用デリバリ管と、
前記燃料ポンプにより圧送される燃料を加熱可能な燃料加熱手段とを備え、
前記ポート噴射用デリバリ管と前記筒内噴射用デリバリ管とが前記燃料ポンプに並列に接続されており、前記燃料加熱手段は、前記ポート噴射用デリバリ管と前記筒内噴射用デリバリ管との何れか一方に対して供給される燃料のみを加熱するように配置されていることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
所定箇所における燃料の温度を取得するための温度検出手段と、
前記内燃機関の始動時に前記温度検出手段を用いて取得した燃料の温度が所定値を超えている場合、前記ポート噴射用デリバリ管と前記筒内噴射用デリバリ管とのうち、前記燃料加熱手段によって加熱されない燃料が供給されるデリバリ管に接続されたインジェクタから燃料が噴射されるようにする制御手段とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
前記燃料加熱手段は、前記内燃機関の希薄燃焼運転の実行時に使用されるインジェクタが接続されているデリバリ管に供給される燃料を加熱することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138688(P2008−138688A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16936(P2008−16936)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【分割の表示】特願2004−113436(P2004−113436)の分割
【原出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】