内燃機関の軸受構造
【課題】内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する場合に、低温時に潤滑油の昇温を効率よく行う。
【解決手段】低温時に潤滑油を昇温させる場合は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側で熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給する。これによって、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができる。
【解決手段】低温時に潤滑油を昇温させる場合は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側で熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給する。これによって、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の軸受構造に関し、特に、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する軸受構造の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1では、エンジンのシリンダブロック及びベアリングキャップに取り付けられたラジアルすべり軸受の外周面に対向してPTCヒータを設け、PTCヒータの、ラジアルすべり軸受の外周面と対向する側とは反対側(外周側)に遮熱材を設けている。エンジンの冷間始動時には、PTCヒータによりラジアルすべり軸受を加熱することで、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油を加熱している。これによって、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油の粘度の低下を図り、クランクシャフトが回転するときの粘性摩擦損失の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127375号公報
【特許文献2】特開2009−144623号公報
【特許文献3】特開平6−74237号公報
【特許文献4】特開平6−74230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ラジアルすべり軸受の外周の全周に渡ってPTCヒータを設け、PTCヒータによりラジアルすべり軸受を全周に渡って加熱している。その際には、PTCヒータの外周側に遮熱材を設けているが、実際には、熱を完全に遮断することは困難であるため、PTCヒータの熱が、内周側のラジアルすべり軸受だけでなく、外周側のシリンダブロック及びベアリングキャップにも伝わる。PTCヒータの熱が熱容量の大きいシリンダブロックに拡散すると、PTCヒータから供給される熱量のうち、シリンダブロックの昇温に消費される熱量の割合が大きくなり、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油の昇温に利用される熱量の割合が小さくなる。したがって、特許文献1では、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油を加熱するために、PTCヒータから大きな熱量を供給する必要があり、潤滑油の昇温を効率よく行うことが困難である。
【0005】
本発明は、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する場合に、低温時に潤滑油の昇温を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の軸受構造は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明に係る内燃機関の軸受構造は、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造であって、軸受保持部におけるラジアルすべり軸受の外周側で熱を供給する熱供給手段を有し、軸受保持部は、軸受保持部本体と、軸受保持部本体に締結され、軸受保持部本体よりも熱容量の小さいキャップとを含み、ラジアルすべり軸受は、軸受保持部本体に保持された第1の半割り軸受と、キャップに保持された第2の半割り軸受とを含み、熱供給手段は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側で熱を供給し、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側では熱を供給しないことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、潤滑油の粘度が高い低温時に、熱供給手段から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体に拡散するのを抑えることができ、熱供給手段から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0009】
本発明の一態様では、熱供給手段は、熱媒体流路を流れる加熱媒体の熱を供給する手段であり、熱媒体流路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていないことが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、熱供給手段は、加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路を流れることで冷却手段としても機能することが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、熱供給手段としてヒータを有し、ヒータは、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に設けられ、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には設けられていないことが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、熱供給手段は、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間から潤滑油が供給される熱交換油路を流れる潤滑油の熱を供給する手段であり、熱交換油路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていないことが好適である。
【0013】
本発明の一態様では、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分よりも狭いことが好適である。
【0014】
本発明の一態様では、キャップが断熱層を介して軸受保持部本体に締結されていることが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、第1の半割り軸受の外周側に断熱層が設けられていることが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、熱供給手段の外周側に断熱層が設けられていることが好適である。
【0017】
本発明の一態様では、キャップは、軸受保持部本体にボルトにより締結され、ボルトの頭部とキャップとの間に断熱材リングが設けられていることが好適である。
【0018】
本発明の一態様では、回転軸の外周面に断熱層が設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する場合に、低温時に潤滑油の昇温を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図14】ラジアルすべり軸受の外周側でヒータから熱を均等に供給する構成例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0022】
図1,2は、本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。図1は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図2は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示す。本実施形態に係る内燃機関の軸受構造では、内燃機関の回転軸であるクランクシャフトのクランクジャーナル18が潤滑油を介してラジアルすべり軸受(ジャーナルすべり軸受とも称される)30で支持され、ラジアルすべり軸受30が軸受保持部13で保持される。なお、図1,2を含む各図において、ラジアルすべり軸受30の厚さや、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間等のサイズについては、説明の便宜上、実際のサイズよりも大きく図示している。
【0023】
軸受保持部13は、内燃機関のシリンダブロックの一部分により構成される軸受保持部本体20と、軸受保持部本体20に締結されるキャップ21とを含んで構成される。軸受保持部13(軸受保持部本体20及びキャップ21)には、鉄やアルミニウム等の金属材料が用いられる。軸受保持部本体20の体積はキャップ21の体積よりも大きく、軸受保持部本体20の熱容量はキャップ21の熱容量よりも大きい。軸受保持部本体20には、略半円筒形状の凹曲面である軸受装着面13Aが形成されており、キャップ21には、略半円筒形状の凹曲面である軸受装着面13Bが形成されている。締結部材であるボルト15により軸受保持部本体20にキャップ21を締結することで、クランクジャーナル18が挿通される貫通孔が軸受装着面13A,13B間に形成される。より具体的には、ボルト15の軸部15Bの直径より僅かに大きい直径のボルト貫通穴16がキャップ21に形成され、ボルト貫通穴16を貫通したボルト15のおねじ15Aを軸受保持部本体20に形成されためねじ20Aとねじ係合させてボルト15の頭部15Cをキャップ21に当接させることで、キャップ21が軸受保持部本体20に締結される。そして、半割り構造のラジアルすべり軸受30が軸受装着面13A,13Bに装着されることで軸受保持部13に保持される。
【0024】
ラジアルすべり軸受30は、回転軸の周方向に関して2分割された略半円筒形状の半割り軸受メタル31A,31Bを含んで構成される。一方の半割り軸受メタル31Aは軸受保持部本体20の軸受装着面13Aに装着されて保持されることで軸受装着面13Aと対向し、他方の半割り軸受メタル31Bはキャップ21の軸受装着面13Bに装着されて保持されることで軸受装着面13Bと対向し、2つの半割り軸受メタル31A,31Bの周方向に関する両端部同士を合わせることで、ラジアルすべり軸受30が構成される。各半割り軸受メタル31A,31Bは、裏金と、裏金の内周側に形成されたライニング層としての軸受合金層とを含んで構成される。裏金の種類としては、例えば鋼等が挙げられ、軸受合金層の種類としては、例えば銅−鉛合金やアルミニウム合金等が挙げられる。半割り構造のラジアルすべり軸受30は、クランクジャーナル18を潤滑油を介して回転自在に支持することで、クランクジャーナル18の径方向に沿った荷重を潤滑油を介して受ける。ここでの潤滑油は、油膜を形成することにより、回転軸と軸受が焼き付くことなく機関を運転すること、回転軸と軸受との摩擦損失や磨耗を低減することを主な役割とするが、冷却、洗浄、防錆等の役割も果たしている。図1では、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間に潤滑油を供給するための構成を省略しているが、周知の構成で実現可能である。
【0025】
本実施形態では、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側の位置で熱を供給するための熱供給手段として熱媒体流路32が形成されており、蓄熱装置34に蓄熱された加熱媒体が熱媒体流路32に供給されることで、熱媒体流路32を流れる加熱媒体の熱が供給される。ここでの加熱媒体としては、例えば内燃機関のオイルや排気等を用いることが可能である。蓄熱装置34と熱媒体流路32の入口32aとの間には、加熱媒体供給制御弁35が設けられており、蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給状態を加熱媒体供給制御弁35により制御することが可能である。加熱媒体供給制御弁35を開けることで蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給が許容され、加熱媒体供給制御弁35を閉じることで蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給が遮断される。熱媒体流路32の出口32bから流出した加熱媒体は、蓄熱装置34に戻される。図2では、蓄熱装置34から熱媒体流路32の入口32aに加熱媒体を供給するための具体的構成、及び熱媒体流路32の出口32bから蓄熱装置34へ加熱媒体を戻すための具体的構成を簡略化しているが、周知の構成で実現可能である。
【0026】
さらに、本実施形態では、熱媒体流路32は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に形成されており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には形成されていない。つまり、熱媒体流路32を流れる加熱媒体は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで選択的に熱を供給し、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱を供給しない。図1,2に示す例では、熱媒体流路32の入口32aがキャップ21の回転軸方向一端面に形成され、熱媒体流路32の出口32bがキャップ21の回転軸方向他端面に形成され、熱媒体流路32が入口32a(回転軸方向一端面)から出口32b(回転軸方向他端面)にかけて軸受周方向に蛇行して形成されている。ただし、熱媒体流路32の形状は、他の形状であってもよい。また、図1,2に示す例では、熱媒体流路32が半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して大部分の領域に渡って形成されているが、熱媒体流路32を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して一部の領域に局所的に形成することも可能である。また、熱媒体流路32を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して複数の領域に分けて形成することも可能である。
【0027】
さらに、本実施形態では、半割り軸受メタル31Aの外周側、より具体的には、軸受保持部本体20と半割り軸受メタル31Aとの間に断熱層52が設けられている。さらに、熱媒体流路32の外周側、より具体的には、キャップ21の外周面に断熱層53が設けられている。さらに、キャップ21が断熱層54を介して軸受保持部本体20に締結されており、断熱層54が軸受保持部本体20とキャップ21との間に挟まれている。さらに、ボルト15の頭部15Cとキャップ21との間に断熱材リング56が設けられており、ボルト15の頭部15Cが断熱材リング56を介してキャップ21に押圧される。断熱層52,53,54及び断熱材リング56の材料としては、例えばジルコニアやアルミナ等のセラミックスを用いることが可能であり、あるいは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂を用いることも可能である。
【0028】
内燃機関の始動時等、低温時においては、潤滑油の粘度が高いため、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失が大きくなる。粘性摩擦損失を小さくするためには、潤滑油の温度を速やかに上昇させて潤滑油の粘度を速やかに低くすることが望ましい。これに対して本実施形態では、内燃機関を始動する場合等、低温時に潤滑油を昇温させて粘度を低くする暖機動作を行う場合は、加熱媒体供給制御弁35を開けることで、蓄熱装置34に蓄熱された加熱媒体を、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側に形成された熱媒体流路32に供給する。その際には、内燃機関のクランキング前に蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を予め開始することも可能であるし、内燃機関のクランキング時に蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を開始することも可能である。熱媒体流路32を流れる加熱媒体の熱がキャップ21及び半割り軸受メタル31Bに供給されることで、キャップ21及び半割り軸受メタル31Bが加熱されて昇温する。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を外周側から加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができるので、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を低減することができる。内燃機関の暖機完了後は、加熱媒体供給制御弁35を閉じることで、蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を停止し、例えば内燃機関の排気や潤滑油等の熱を利用して、蓄熱装置34に熱が蓄えられることで、蓄熱装置34の加熱媒体に熱が供給される。
【0029】
このように、本実施形態では、暖機動作を行う場合は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで熱媒体流路32の加熱媒体から熱を選択的に供給する。これによって、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができ、熱量あたりの潤滑油の昇温効率を向上させることができる。したがって、蓄熱装置34から熱媒体流路32に供給される加熱媒体の熱を有効利用して、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。その結果、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を速やかに低減することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、熱容量の小さいキャップ21から熱容量の大きい軸受保持部本体20への熱拡散を断熱層54により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。さらに、キャップ21からボルト15を介して軸受保持部本体20へ熱が拡散するのを断熱材リング56により抑えることによっても、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間の潤滑油から軸受保持部本体20への熱拡散を断熱層52により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、熱媒体流路32の加熱媒体からキャップ21外部へ熱が放出されるのを断熱層53により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、本実施形態では、クランクジャーナル18の外周面に断熱層を設けることも可能であり、これによって、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱が熱容量(体積)の大きいクランクシャフトへ拡散するのを断熱層により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、蓄熱装置34に代えて熱交換器を設けることも可能である。その場合は、内燃機関の運転時に、熱交換器内で例えば内燃機関の排気と加熱媒体との熱交換を行うことで、加熱媒体に熱を供給することが可能である。
【0032】
また、本実施形態では、加熱媒体に代えて冷却媒体を熱媒体流路32に供給することも可能である。その場合は、熱媒体流路32の入口32a側に冷却媒体供給制御弁を設け、冷却媒体供給制御弁を開けることで熱媒体流路32への冷却媒体の供給を許容し、冷却媒体供給制御弁を閉じることで熱媒体流路32への冷却媒体の供給を遮断し、熱媒体流路32への冷却媒体の供給状態を制御することが可能である。ここでの冷却媒体としては、例えば内燃機関の冷却水や、冷却水と熱交換を行ったオイル等を用いることが可能である。内燃機関の暖機後等、潤滑油の粘度が低い高温時には、加熱媒体供給制御弁35を閉じ、冷却媒体供給制御弁を開けることで、加熱媒体に代えて冷却媒体を熱媒体流路32に供給する。加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路32を流れることで、熱媒体流路32が冷却手段として機能し、熱媒体流路32を流れる冷却媒体によりキャップ21及び半割り軸受メタル31Bの冷却が行われ、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の冷却が行われる。これによって、内燃機関の暖機後等、高温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の温度を低減することができ、高温度化による油膜の油切れ、焼き付きを防止することができる。
【0033】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の構成例を図3,4に示す。図3は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図4は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示す。図3,4に示す構成例では、熱供給手段として熱媒体流路32に代えてヒータ62が設けられている。ここでのヒータ62も、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に設けられており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には設けられていない。図3,4に示す例では、ヒータ62の一端部がキャップ21の回転軸方向一端面に配置され、ヒータ62の他端部がキャップ21の回転軸方向他端面に配置され、ヒータ62が一端部から他端部にかけて軸受周方向に蛇行して形成されている。ただし、ヒータ62の形状は、他の形状であってもよい。また、図3,4に示す例では、ヒータ62が半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して大部分の領域に渡って設けられているが、ヒータ62を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して一部の領域に局所的に設けることも可能である。また、ヒータ62を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して複数の領域に分けて設けることも可能である。
【0034】
図3,4に示す構成例でも、内燃機関を始動する場合等、低温時に潤滑油を昇温させて粘度を低くする暖機動作を行う場合は、ヒータ62に通電して加熱することで、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側ではヒータ62から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけでヒータ62から熱を選択的に供給する。これによって、ヒータ62から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、ヒータ62から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0035】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の構成例を図5〜8に示す。図5は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図6,8は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示し、図7は図6のA部の拡大図を示す。図5〜8に示す構成例では、キャップ21及び半割り軸受メタル31Bに、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間と連通し、潤滑油をラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給するための潤滑油供給路41が形成されている。潤滑油供給路41には、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油が供給される。
【0036】
図6,7に示すように、ラジアルすべり軸受30(半割り軸受メタル31A,31B)の内周面は、回転軸方向(クランクシャフト軸線方向)に関して、両端部が他の部分より径方向内側(クランクジャーナル18側)へ張り出している。これによって、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分より狭くなる。さらに、クランクシャフト(クランクジャーナル18)においては、ラジアルすべり軸受30の内周側に位置する部分の直径が、この部分より回転軸方向両側に位置する部分の直径よりも小さく、段付き形状となっている。さらに、ラジアルすべり軸受30には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間と連通し、潤滑油をラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間から流出させるための潤滑油流出口43が形成されている。図5〜8に示す例では、半割り軸受メタル31A,31B同士の合わせ面(軸受周方向両端面)間に例えば切り欠きや窪み等によりクリアランスを形成することで潤滑油流出口43が形成されており(ただし回転軸方向両端部については潤滑油が外部へ漏れ出ないようにクリアランスを形成しないか狭くする)、潤滑油供給路41に対して軸受周方向に関する位置をずらして(図5〜8に示す例では90°)潤滑油流出口43が配置されている。ただし、潤滑油流出口43を半割り軸受メタル31Bに形成することも可能である。
【0037】
キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周囲には、潤滑油流出口43と連通する複数の熱交換油路42が形成されており、各熱交換油路42を通る潤滑油がキャップ21と熱交換する。さらに、キャップ21には、各熱交換油路42と連通する潤滑油排出路44が形成されており、潤滑油排出路44を通る潤滑油が潤滑油供給路41を通る潤滑油と熱交換するように、潤滑油排出路44が潤滑油供給路41に近接して配置されている。複数の熱交換油路42の一端部が回転軸方向に互いに間隔をおいた状態で潤滑油流出口43と連通し、各熱交換油路42の他端部が潤滑油排出路44と連通する。なお、図5〜8において、潤滑油供給路41、熱交換油路42、潤滑油流出口43、及び潤滑油排出路44の幅等のサイズについては、説明の便宜上、実際のサイズよりも大きく図示している。また、他の構成については、図1,2に示す構成例と同様である。
【0038】
オイルポンプ40から潤滑油供給路41に供給された潤滑油は、図5の矢印に示すように、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間に流入する。潤滑油は、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間を軸受周方向(クランクジャーナル18の回転方向)に流れ、潤滑油流出口43から流出する。その際には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分より狭いことで、潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。さらに、クランクシャフト(クランクジャーナル18)を前述の段付き形状にすることによっても、潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。
【0039】
潤滑油流出口43から流出した潤滑油は、図5,8の矢印に示すように、各熱交換油路42を流れることで、キャップ21と熱交換する。各熱交換油路42から流出した潤滑油は、潤滑油排出路44を流れることで、潤滑油供給路41を流れる潤滑油と熱交換する。潤滑油排出路44からキャップ21外部へ流出した潤滑油は、オイルポンプ40の入口40a側へ戻る。図5では、オイルポンプ40の出口40bから潤滑油供給路41に潤滑油を供給するための具体的構成、及び潤滑油排出路44からオイルポンプ40の入口40aへ潤滑油を戻すための具体的構成を簡略化しているが、周知の構成で実現可能である。
【0040】
クランクジャーナル18がラジアルすべり軸受30に対して回転する際には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給された潤滑油がせん断力(摺動摩擦)により発熱し、潤滑油の温度が低く粘度が高いほど、せん断力による発熱量が増加する。図5〜8に示す構成例では、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動摩擦により発熱した潤滑油が、潤滑油流出口43を介して各熱交換油路42に供給される。その際には、前述したように、摺動摩擦により発熱した潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。各熱交換油路42を通る発熱した潤滑油は、キャップ21(半割り軸受メタル31Bの外周囲)と熱交換を行うことで、キャップ21を加熱する。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を外周側から加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができるので、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を低減することができる。その際には、キャップ21内部に形成する熱交換油路42の数や長さを増加させて、熱交換油路42を通る潤滑油と軸受保持部13との接触面積を増加させることで、熱交換油路42を通る発熱した潤滑油からキャップ21への供給熱量を増加させることができる。さらに、潤滑油排出路44を通る発熱した潤滑油が、潤滑油供給路41を通る潤滑油と熱交換することで、潤滑油供給路41を通る潤滑油を加熱する。これによっても、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができる。
【0041】
このように、図5〜8に示す構成例では、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動摩擦により発熱した潤滑油をキャップ21内部の熱交換油路42へ供給し、キャップ21内部での、熱交換油路42を通る発熱した潤滑油とキャップ21との熱交換を利用して、熱交換油路42を通る潤滑油の熱をキャップ21に供給して暖機する。これによって、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱がそのまま軸受保持部13外部へ放出されるのを抑えつつ、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱を有効利用して、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を速やかに昇温させて粘度を低くすることができる。その際には、摺動摩擦により発熱した潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられることによっても、摺動摩擦により発生した熱が軸受保持部13外部へ逃げるのが抑えられる。さらに、潤滑油排出路44を通る発熱した潤滑油と潤滑油供給路41を通る潤滑油との熱交換を利用することによっても、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を効率よく昇温させることができる。
【0042】
さらに、図5〜8に示す構成例でも、熱交換油路42が、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に形成されており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には形成されていない。そのため、内燃機関の始動直後等、低温時においては、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱交換油路42内の発熱した潤滑油から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで熱交換油路42内の発熱した潤滑油から熱を選択的に供給する。これによって、熱交換油路42内の発熱した潤滑油から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱交換油路42内の発熱した潤滑油から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0043】
さらに、図5〜8に示す構成例では、オイルポンプ40の出口40b側にオイル予熱装置を設けることも可能であり、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、オイル予熱装置を作動させることで、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油をオイル予熱装置で予熱(加熱)してから潤滑油供給路41へ供給することも可能である。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油をさらに速やかに昇温させて粘度を低くすることができる。
【0044】
また、図5〜8に示す構成例では、オイルポンプ40の出口40b側にオイル冷却装置を設けることも可能であり、内燃機関の暖機後等、潤滑油の粘度が低い高温時に、オイル冷却装置を作動させることで、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油をオイル冷却装置で冷却してから潤滑油供給路41へ供給することも可能である。これによって、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の冷却を行うことができる。
【0045】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を図9〜13に示す。図9は、クランクジャーナル18が回転するときの摩擦トルクの時間変化を示し、図10は、クランクジャーナル18が回転するときの積算摩擦仕事(0〜600秒)を示し、図11は、クランクジャーナル18が回転するときのピーク摩擦トルクを示す。図9〜11において、「全体加熱」は、図14に示すように、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側の両方でヒータ62から熱を均等に供給する仕様を表す(ヒータ62の配設位置については図14参照)。また、「実施形態」は、図15に示すように、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側ではヒータ62から熱を供給せずに、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけでヒータ62から熱を選択的に供給する仕様を表す(ヒータ62の配設位置については図15参照)。「実施形態」の仕様では、図15に示すように、PEEK樹脂による断熱層52,54を設けている。また、「非加熱」は、ヒータ62から熱を供給しない仕様を表す。図12は、「全体加熱」の仕様における温度(温度測定位置a〜gについては図14参照)及び摩擦トルクの時間変化を示し、図13は、「実施形態」の仕様における温度(温度測定位置a〜hについては図15参照)及び摩擦トルクの時間変化を示す。「全体加熱」及び「実施形態」の仕様では、内燃機関の始動開始前(回転開始前)に124W×120秒の熱量をヒータ62から供給して加熱している。図9〜13に示すように、「実施形態」の仕様では、「全体加熱」の仕様と比較して、ヒータ62の供給熱量が同等となる条件で摩擦トルク及び積算摩擦仕事を低減できていることがわかる。
【0046】
以上の説明では、本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造として、クランクシャフトのクランクジャーナル18の軸受構造を例に挙げて説明した。ただし、本発明に係る内燃機関の軸受構造は、クランクシャフトのクランクジャーナル18の軸受構造以外に、例えば内燃機関のカムシャフトの軸受構造等、その他の内燃機関の回転軸の軸受構造にも適用することが可能である。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
13 軸受保持部、13A,13B 軸受装着面、15 ボルト、18 クランクジャーナル、20 軸受保持部本体、21 キャップ、30 ラジアルすべり軸受、31A,31B 半割り軸受メタル、32 熱媒体流路、34 蓄熱装置、35 加熱媒体供給制御弁、40 オイルポンプ、41 潤滑油供給路、42 熱交換油路、43 潤滑油流出口、44 潤滑油排出路、52,53,54 断熱層、56 断熱材リング、62 ヒータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の軸受構造に関し、特に、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する軸受構造の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1では、エンジンのシリンダブロック及びベアリングキャップに取り付けられたラジアルすべり軸受の外周面に対向してPTCヒータを設け、PTCヒータの、ラジアルすべり軸受の外周面と対向する側とは反対側(外周側)に遮熱材を設けている。エンジンの冷間始動時には、PTCヒータによりラジアルすべり軸受を加熱することで、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油を加熱している。これによって、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油の粘度の低下を図り、クランクシャフトが回転するときの粘性摩擦損失の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127375号公報
【特許文献2】特開2009−144623号公報
【特許文献3】特開平6−74237号公報
【特許文献4】特開平6−74230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ラジアルすべり軸受の外周の全周に渡ってPTCヒータを設け、PTCヒータによりラジアルすべり軸受を全周に渡って加熱している。その際には、PTCヒータの外周側に遮熱材を設けているが、実際には、熱を完全に遮断することは困難であるため、PTCヒータの熱が、内周側のラジアルすべり軸受だけでなく、外周側のシリンダブロック及びベアリングキャップにも伝わる。PTCヒータの熱が熱容量の大きいシリンダブロックに拡散すると、PTCヒータから供給される熱量のうち、シリンダブロックの昇温に消費される熱量の割合が大きくなり、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油の昇温に利用される熱量の割合が小さくなる。したがって、特許文献1では、ラジアルすべり軸受とクランクシャフト間に充填された潤滑油を加熱するために、PTCヒータから大きな熱量を供給する必要があり、潤滑油の昇温を効率よく行うことが困難である。
【0005】
本発明は、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する場合に、低温時に潤滑油の昇温を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の軸受構造は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明に係る内燃機関の軸受構造は、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造であって、軸受保持部におけるラジアルすべり軸受の外周側で熱を供給する熱供給手段を有し、軸受保持部は、軸受保持部本体と、軸受保持部本体に締結され、軸受保持部本体よりも熱容量の小さいキャップとを含み、ラジアルすべり軸受は、軸受保持部本体に保持された第1の半割り軸受と、キャップに保持された第2の半割り軸受とを含み、熱供給手段は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側で熱を供給し、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側では熱を供給しないことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、潤滑油の粘度が高い低温時に、熱供給手段から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体に拡散するのを抑えることができ、熱供給手段から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0009】
本発明の一態様では、熱供給手段は、熱媒体流路を流れる加熱媒体の熱を供給する手段であり、熱媒体流路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていないことが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、熱供給手段は、加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路を流れることで冷却手段としても機能することが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、熱供給手段としてヒータを有し、ヒータは、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に設けられ、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には設けられていないことが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、熱供給手段は、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間から潤滑油が供給される熱交換油路を流れる潤滑油の熱を供給する手段であり、熱交換油路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていないことが好適である。
【0013】
本発明の一態様では、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分よりも狭いことが好適である。
【0014】
本発明の一態様では、キャップが断熱層を介して軸受保持部本体に締結されていることが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、第1の半割り軸受の外周側に断熱層が設けられていることが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、熱供給手段の外周側に断熱層が設けられていることが好適である。
【0017】
本発明の一態様では、キャップは、軸受保持部本体にボルトにより締結され、ボルトの頭部とキャップとの間に断熱材リングが設けられていることが好適である。
【0018】
本発明の一態様では、回転軸の外周面に断熱層が設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持する場合に、低温時に潤滑油の昇温を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を示す図である。
【図14】ラジアルすべり軸受の外周側でヒータから熱を均等に供給する構成例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0022】
図1,2は、本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造の概略構成を示す図である。図1は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図2は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示す。本実施形態に係る内燃機関の軸受構造では、内燃機関の回転軸であるクランクシャフトのクランクジャーナル18が潤滑油を介してラジアルすべり軸受(ジャーナルすべり軸受とも称される)30で支持され、ラジアルすべり軸受30が軸受保持部13で保持される。なお、図1,2を含む各図において、ラジアルすべり軸受30の厚さや、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間等のサイズについては、説明の便宜上、実際のサイズよりも大きく図示している。
【0023】
軸受保持部13は、内燃機関のシリンダブロックの一部分により構成される軸受保持部本体20と、軸受保持部本体20に締結されるキャップ21とを含んで構成される。軸受保持部13(軸受保持部本体20及びキャップ21)には、鉄やアルミニウム等の金属材料が用いられる。軸受保持部本体20の体積はキャップ21の体積よりも大きく、軸受保持部本体20の熱容量はキャップ21の熱容量よりも大きい。軸受保持部本体20には、略半円筒形状の凹曲面である軸受装着面13Aが形成されており、キャップ21には、略半円筒形状の凹曲面である軸受装着面13Bが形成されている。締結部材であるボルト15により軸受保持部本体20にキャップ21を締結することで、クランクジャーナル18が挿通される貫通孔が軸受装着面13A,13B間に形成される。より具体的には、ボルト15の軸部15Bの直径より僅かに大きい直径のボルト貫通穴16がキャップ21に形成され、ボルト貫通穴16を貫通したボルト15のおねじ15Aを軸受保持部本体20に形成されためねじ20Aとねじ係合させてボルト15の頭部15Cをキャップ21に当接させることで、キャップ21が軸受保持部本体20に締結される。そして、半割り構造のラジアルすべり軸受30が軸受装着面13A,13Bに装着されることで軸受保持部13に保持される。
【0024】
ラジアルすべり軸受30は、回転軸の周方向に関して2分割された略半円筒形状の半割り軸受メタル31A,31Bを含んで構成される。一方の半割り軸受メタル31Aは軸受保持部本体20の軸受装着面13Aに装着されて保持されることで軸受装着面13Aと対向し、他方の半割り軸受メタル31Bはキャップ21の軸受装着面13Bに装着されて保持されることで軸受装着面13Bと対向し、2つの半割り軸受メタル31A,31Bの周方向に関する両端部同士を合わせることで、ラジアルすべり軸受30が構成される。各半割り軸受メタル31A,31Bは、裏金と、裏金の内周側に形成されたライニング層としての軸受合金層とを含んで構成される。裏金の種類としては、例えば鋼等が挙げられ、軸受合金層の種類としては、例えば銅−鉛合金やアルミニウム合金等が挙げられる。半割り構造のラジアルすべり軸受30は、クランクジャーナル18を潤滑油を介して回転自在に支持することで、クランクジャーナル18の径方向に沿った荷重を潤滑油を介して受ける。ここでの潤滑油は、油膜を形成することにより、回転軸と軸受が焼き付くことなく機関を運転すること、回転軸と軸受との摩擦損失や磨耗を低減することを主な役割とするが、冷却、洗浄、防錆等の役割も果たしている。図1では、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間に潤滑油を供給するための構成を省略しているが、周知の構成で実現可能である。
【0025】
本実施形態では、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側の位置で熱を供給するための熱供給手段として熱媒体流路32が形成されており、蓄熱装置34に蓄熱された加熱媒体が熱媒体流路32に供給されることで、熱媒体流路32を流れる加熱媒体の熱が供給される。ここでの加熱媒体としては、例えば内燃機関のオイルや排気等を用いることが可能である。蓄熱装置34と熱媒体流路32の入口32aとの間には、加熱媒体供給制御弁35が設けられており、蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給状態を加熱媒体供給制御弁35により制御することが可能である。加熱媒体供給制御弁35を開けることで蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給が許容され、加熱媒体供給制御弁35を閉じることで蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給が遮断される。熱媒体流路32の出口32bから流出した加熱媒体は、蓄熱装置34に戻される。図2では、蓄熱装置34から熱媒体流路32の入口32aに加熱媒体を供給するための具体的構成、及び熱媒体流路32の出口32bから蓄熱装置34へ加熱媒体を戻すための具体的構成を簡略化しているが、周知の構成で実現可能である。
【0026】
さらに、本実施形態では、熱媒体流路32は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に形成されており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には形成されていない。つまり、熱媒体流路32を流れる加熱媒体は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで選択的に熱を供給し、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱を供給しない。図1,2に示す例では、熱媒体流路32の入口32aがキャップ21の回転軸方向一端面に形成され、熱媒体流路32の出口32bがキャップ21の回転軸方向他端面に形成され、熱媒体流路32が入口32a(回転軸方向一端面)から出口32b(回転軸方向他端面)にかけて軸受周方向に蛇行して形成されている。ただし、熱媒体流路32の形状は、他の形状であってもよい。また、図1,2に示す例では、熱媒体流路32が半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して大部分の領域に渡って形成されているが、熱媒体流路32を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して一部の領域に局所的に形成することも可能である。また、熱媒体流路32を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して複数の領域に分けて形成することも可能である。
【0027】
さらに、本実施形態では、半割り軸受メタル31Aの外周側、より具体的には、軸受保持部本体20と半割り軸受メタル31Aとの間に断熱層52が設けられている。さらに、熱媒体流路32の外周側、より具体的には、キャップ21の外周面に断熱層53が設けられている。さらに、キャップ21が断熱層54を介して軸受保持部本体20に締結されており、断熱層54が軸受保持部本体20とキャップ21との間に挟まれている。さらに、ボルト15の頭部15Cとキャップ21との間に断熱材リング56が設けられており、ボルト15の頭部15Cが断熱材リング56を介してキャップ21に押圧される。断熱層52,53,54及び断熱材リング56の材料としては、例えばジルコニアやアルミナ等のセラミックスを用いることが可能であり、あるいは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂を用いることも可能である。
【0028】
内燃機関の始動時等、低温時においては、潤滑油の粘度が高いため、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失が大きくなる。粘性摩擦損失を小さくするためには、潤滑油の温度を速やかに上昇させて潤滑油の粘度を速やかに低くすることが望ましい。これに対して本実施形態では、内燃機関を始動する場合等、低温時に潤滑油を昇温させて粘度を低くする暖機動作を行う場合は、加熱媒体供給制御弁35を開けることで、蓄熱装置34に蓄熱された加熱媒体を、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側に形成された熱媒体流路32に供給する。その際には、内燃機関のクランキング前に蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を予め開始することも可能であるし、内燃機関のクランキング時に蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を開始することも可能である。熱媒体流路32を流れる加熱媒体の熱がキャップ21及び半割り軸受メタル31Bに供給されることで、キャップ21及び半割り軸受メタル31Bが加熱されて昇温する。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を外周側から加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができるので、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を低減することができる。内燃機関の暖機完了後は、加熱媒体供給制御弁35を閉じることで、蓄熱装置34から熱媒体流路32への加熱媒体の供給を停止し、例えば内燃機関の排気や潤滑油等の熱を利用して、蓄熱装置34に熱が蓄えられることで、蓄熱装置34の加熱媒体に熱が供給される。
【0029】
このように、本実施形態では、暖機動作を行う場合は、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱媒体流路32の加熱媒体から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで熱媒体流路32の加熱媒体から熱を選択的に供給する。これによって、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱媒体流路32の加熱媒体から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができ、熱量あたりの潤滑油の昇温効率を向上させることができる。したがって、蓄熱装置34から熱媒体流路32に供給される加熱媒体の熱を有効利用して、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。その結果、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を速やかに低減することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、熱容量の小さいキャップ21から熱容量の大きい軸受保持部本体20への熱拡散を断熱層54により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。さらに、キャップ21からボルト15を介して軸受保持部本体20へ熱が拡散するのを断熱材リング56により抑えることによっても、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間の潤滑油から軸受保持部本体20への熱拡散を断熱層52により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、熱媒体流路32の加熱媒体からキャップ21外部へ熱が放出されるのを断熱層53により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。また、本実施形態では、クランクジャーナル18の外周面に断熱層を設けることも可能であり、これによって、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱が熱容量(体積)の大きいクランクシャフトへ拡散するのを断熱層により抑えることができ、潤滑油及びキャップ21の昇温効率をさらに向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、蓄熱装置34に代えて熱交換器を設けることも可能である。その場合は、内燃機関の運転時に、熱交換器内で例えば内燃機関の排気と加熱媒体との熱交換を行うことで、加熱媒体に熱を供給することが可能である。
【0032】
また、本実施形態では、加熱媒体に代えて冷却媒体を熱媒体流路32に供給することも可能である。その場合は、熱媒体流路32の入口32a側に冷却媒体供給制御弁を設け、冷却媒体供給制御弁を開けることで熱媒体流路32への冷却媒体の供給を許容し、冷却媒体供給制御弁を閉じることで熱媒体流路32への冷却媒体の供給を遮断し、熱媒体流路32への冷却媒体の供給状態を制御することが可能である。ここでの冷却媒体としては、例えば内燃機関の冷却水や、冷却水と熱交換を行ったオイル等を用いることが可能である。内燃機関の暖機後等、潤滑油の粘度が低い高温時には、加熱媒体供給制御弁35を閉じ、冷却媒体供給制御弁を開けることで、加熱媒体に代えて冷却媒体を熱媒体流路32に供給する。加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路32を流れることで、熱媒体流路32が冷却手段として機能し、熱媒体流路32を流れる冷却媒体によりキャップ21及び半割り軸受メタル31Bの冷却が行われ、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の冷却が行われる。これによって、内燃機関の暖機後等、高温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の温度を低減することができ、高温度化による油膜の油切れ、焼き付きを防止することができる。
【0033】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の構成例を図3,4に示す。図3は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図4は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示す。図3,4に示す構成例では、熱供給手段として熱媒体流路32に代えてヒータ62が設けられている。ここでのヒータ62も、軸受保持部13におけるラジアルすべり軸受30の外周側(軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側)のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に設けられており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には設けられていない。図3,4に示す例では、ヒータ62の一端部がキャップ21の回転軸方向一端面に配置され、ヒータ62の他端部がキャップ21の回転軸方向他端面に配置され、ヒータ62が一端部から他端部にかけて軸受周方向に蛇行して形成されている。ただし、ヒータ62の形状は、他の形状であってもよい。また、図3,4に示す例では、ヒータ62が半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して大部分の領域に渡って設けられているが、ヒータ62を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して一部の領域に局所的に設けることも可能である。また、ヒータ62を半割り軸受メタル31Bの外周囲に関して複数の領域に分けて設けることも可能である。
【0034】
図3,4に示す構成例でも、内燃機関を始動する場合等、低温時に潤滑油を昇温させて粘度を低くする暖機動作を行う場合は、ヒータ62に通電して加熱することで、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側ではヒータ62から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけでヒータ62から熱を選択的に供給する。これによって、ヒータ62から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、ヒータ62から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0035】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造の他の構成例を図5〜8に示す。図5は軸受構造の回転軸方向から見た断面図を示し、図6,8は軸受構造の回転軸方向に垂直な方向から見た内部構成図を示し、図7は図6のA部の拡大図を示す。図5〜8に示す構成例では、キャップ21及び半割り軸受メタル31Bに、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間と連通し、潤滑油をラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給するための潤滑油供給路41が形成されている。潤滑油供給路41には、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油が供給される。
【0036】
図6,7に示すように、ラジアルすべり軸受30(半割り軸受メタル31A,31B)の内周面は、回転軸方向(クランクシャフト軸線方向)に関して、両端部が他の部分より径方向内側(クランクジャーナル18側)へ張り出している。これによって、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分より狭くなる。さらに、クランクシャフト(クランクジャーナル18)においては、ラジアルすべり軸受30の内周側に位置する部分の直径が、この部分より回転軸方向両側に位置する部分の直径よりも小さく、段付き形状となっている。さらに、ラジアルすべり軸受30には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間と連通し、潤滑油をラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間から流出させるための潤滑油流出口43が形成されている。図5〜8に示す例では、半割り軸受メタル31A,31B同士の合わせ面(軸受周方向両端面)間に例えば切り欠きや窪み等によりクリアランスを形成することで潤滑油流出口43が形成されており(ただし回転軸方向両端部については潤滑油が外部へ漏れ出ないようにクリアランスを形成しないか狭くする)、潤滑油供給路41に対して軸受周方向に関する位置をずらして(図5〜8に示す例では90°)潤滑油流出口43が配置されている。ただし、潤滑油流出口43を半割り軸受メタル31Bに形成することも可能である。
【0037】
キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周囲には、潤滑油流出口43と連通する複数の熱交換油路42が形成されており、各熱交換油路42を通る潤滑油がキャップ21と熱交換する。さらに、キャップ21には、各熱交換油路42と連通する潤滑油排出路44が形成されており、潤滑油排出路44を通る潤滑油が潤滑油供給路41を通る潤滑油と熱交換するように、潤滑油排出路44が潤滑油供給路41に近接して配置されている。複数の熱交換油路42の一端部が回転軸方向に互いに間隔をおいた状態で潤滑油流出口43と連通し、各熱交換油路42の他端部が潤滑油排出路44と連通する。なお、図5〜8において、潤滑油供給路41、熱交換油路42、潤滑油流出口43、及び潤滑油排出路44の幅等のサイズについては、説明の便宜上、実際のサイズよりも大きく図示している。また、他の構成については、図1,2に示す構成例と同様である。
【0038】
オイルポンプ40から潤滑油供給路41に供給された潤滑油は、図5の矢印に示すように、ラジアルすべり軸受30の内周面とクランクジャーナル18の外周面間の隙間に流入する。潤滑油は、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間を軸受周方向(クランクジャーナル18の回転方向)に流れ、潤滑油流出口43から流出する。その際には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分より狭いことで、潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。さらに、クランクシャフト(クランクジャーナル18)を前述の段付き形状にすることによっても、潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。
【0039】
潤滑油流出口43から流出した潤滑油は、図5,8の矢印に示すように、各熱交換油路42を流れることで、キャップ21と熱交換する。各熱交換油路42から流出した潤滑油は、潤滑油排出路44を流れることで、潤滑油供給路41を流れる潤滑油と熱交換する。潤滑油排出路44からキャップ21外部へ流出した潤滑油は、オイルポンプ40の入口40a側へ戻る。図5では、オイルポンプ40の出口40bから潤滑油供給路41に潤滑油を供給するための具体的構成、及び潤滑油排出路44からオイルポンプ40の入口40aへ潤滑油を戻すための具体的構成を簡略化しているが、周知の構成で実現可能である。
【0040】
クランクジャーナル18がラジアルすべり軸受30に対して回転する際には、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給された潤滑油がせん断力(摺動摩擦)により発熱し、潤滑油の温度が低く粘度が高いほど、せん断力による発熱量が増加する。図5〜8に示す構成例では、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動摩擦により発熱した潤滑油が、潤滑油流出口43を介して各熱交換油路42に供給される。その際には、前述したように、摺動摩擦により発熱した潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられる。各熱交換油路42を通る発熱した潤滑油は、キャップ21(半割り軸受メタル31Bの外周囲)と熱交換を行うことで、キャップ21を加熱する。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を外周側から加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができるので、クランクジャーナル18が回転するときの粘性摩擦損失を低減することができる。その際には、キャップ21内部に形成する熱交換油路42の数や長さを増加させて、熱交換油路42を通る潤滑油と軸受保持部13との接触面積を増加させることで、熱交換油路42を通る発熱した潤滑油からキャップ21への供給熱量を増加させることができる。さらに、潤滑油排出路44を通る発熱した潤滑油が、潤滑油供給路41を通る潤滑油と熱交換することで、潤滑油供給路41を通る潤滑油を加熱する。これによっても、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を加熱することができ、潤滑油の粘度を低くすることができる。
【0041】
このように、図5〜8に示す構成例では、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動摩擦により発熱した潤滑油をキャップ21内部の熱交換油路42へ供給し、キャップ21内部での、熱交換油路42を通る発熱した潤滑油とキャップ21との熱交換を利用して、熱交換油路42を通る潤滑油の熱をキャップ21に供給して暖機する。これによって、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱がそのまま軸受保持部13外部へ放出されるのを抑えつつ、摺動摩擦により発生した潤滑油の熱を有効利用して、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を速やかに昇温させて粘度を低くすることができる。その際には、摺動摩擦により発熱した潤滑油が軸受保持部13の回転軸方向両端面から流出するのが抑えられることによっても、摺動摩擦により発生した熱が軸受保持部13外部へ逃げるのが抑えられる。さらに、潤滑油排出路44を通る発熱した潤滑油と潤滑油供給路41を通る潤滑油との熱交換を利用することによっても、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油を効率よく昇温させることができる。
【0042】
さらに、図5〜8に示す構成例でも、熱交換油路42が、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側にだけに部分的に形成されており、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側には形成されていない。そのため、内燃機関の始動直後等、低温時においては、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、熱容量の大きい軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側では熱交換油路42内の発熱した潤滑油から熱を供給せずに、熱容量の小さいキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけで熱交換油路42内の発熱した潤滑油から熱を選択的に供給する。これによって、熱交換油路42内の発熱した潤滑油から供給された熱が熱容量の大きい軸受保持部本体20に拡散するのを抑えることができ、熱交換油路42内の発熱した潤滑油から供給された熱量のうち、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油の昇温に利用される熱量の割合を大きくすることができるので、潤滑油を効率よく昇温させて粘度を低くすることができる。
【0043】
さらに、図5〜8に示す構成例では、オイルポンプ40の出口40b側にオイル予熱装置を設けることも可能であり、内燃機関の始動直後等、潤滑油の粘度が高い低温時に、オイル予熱装置を作動させることで、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油をオイル予熱装置で予熱(加熱)してから潤滑油供給路41へ供給することも可能である。これによって、ラジアルすべり軸受30とクランクジャーナル18間の隙間に供給される潤滑油をさらに速やかに昇温させて粘度を低くすることができる。
【0044】
また、図5〜8に示す構成例では、オイルポンプ40の出口40b側にオイル冷却装置を設けることも可能であり、内燃機関の暖機後等、潤滑油の粘度が低い高温時に、オイル冷却装置を作動させることで、オイルポンプ40の出口40bから吐出した潤滑油をオイル冷却装置で冷却してから潤滑油供給路41へ供給することも可能である。これによって、クランクジャーナル18とラジアルすべり軸受30の摺動部の冷却を行うことができる。
【0045】
本実施形態に係る内燃機関の軸受構造において、摩擦損失低減効果を確認した実験結果を図9〜13に示す。図9は、クランクジャーナル18が回転するときの摩擦トルクの時間変化を示し、図10は、クランクジャーナル18が回転するときの積算摩擦仕事(0〜600秒)を示し、図11は、クランクジャーナル18が回転するときのピーク摩擦トルクを示す。図9〜11において、「全体加熱」は、図14に示すように、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側の両方でヒータ62から熱を均等に供給する仕様を表す(ヒータ62の配設位置については図14参照)。また、「実施形態」は、図15に示すように、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側及びキャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側のうち、軸受保持部本体20における半割り軸受メタル31Aの外周側ではヒータ62から熱を供給せずに、キャップ21における半割り軸受メタル31Bの外周側だけでヒータ62から熱を選択的に供給する仕様を表す(ヒータ62の配設位置については図15参照)。「実施形態」の仕様では、図15に示すように、PEEK樹脂による断熱層52,54を設けている。また、「非加熱」は、ヒータ62から熱を供給しない仕様を表す。図12は、「全体加熱」の仕様における温度(温度測定位置a〜gについては図14参照)及び摩擦トルクの時間変化を示し、図13は、「実施形態」の仕様における温度(温度測定位置a〜hについては図15参照)及び摩擦トルクの時間変化を示す。「全体加熱」及び「実施形態」の仕様では、内燃機関の始動開始前(回転開始前)に124W×120秒の熱量をヒータ62から供給して加熱している。図9〜13に示すように、「実施形態」の仕様では、「全体加熱」の仕様と比較して、ヒータ62の供給熱量が同等となる条件で摩擦トルク及び積算摩擦仕事を低減できていることがわかる。
【0046】
以上の説明では、本発明の実施形態に係る内燃機関の軸受構造として、クランクシャフトのクランクジャーナル18の軸受構造を例に挙げて説明した。ただし、本発明に係る内燃機関の軸受構造は、クランクシャフトのクランクジャーナル18の軸受構造以外に、例えば内燃機関のカムシャフトの軸受構造等、その他の内燃機関の回転軸の軸受構造にも適用することが可能である。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
13 軸受保持部、13A,13B 軸受装着面、15 ボルト、18 クランクジャーナル、20 軸受保持部本体、21 キャップ、30 ラジアルすべり軸受、31A,31B 半割り軸受メタル、32 熱媒体流路、34 蓄熱装置、35 加熱媒体供給制御弁、40 オイルポンプ、41 潤滑油供給路、42 熱交換油路、43 潤滑油流出口、44 潤滑油排出路、52,53,54 断熱層、56 断熱材リング、62 ヒータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造であって、
軸受保持部におけるラジアルすべり軸受の外周側で熱を供給する熱供給手段を有し、
軸受保持部は、軸受保持部本体と、軸受保持部本体に締結され、軸受保持部本体よりも熱容量の小さいキャップとを含み、
ラジアルすべり軸受は、軸受保持部本体に保持された第1の半割り軸受と、キャップに保持された第2の半割り軸受とを含み、
熱供給手段は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側で熱を供給し、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側では熱を供給しない、内燃機関の軸受構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、熱媒体流路を流れる加熱媒体の熱を供給する手段であり、
熱媒体流路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路を流れることで冷却手段としても機能する、内燃機関の軸受構造。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段としてヒータを有し、
ヒータは、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に設けられ、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には設けられていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間から潤滑油が供給される熱交換油路を流れる潤滑油の熱を供給する手段であり、
熱交換油路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の軸受構造であって、
ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分よりも狭い、内燃機関の軸受構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
キャップが断熱層を介して軸受保持部本体に締結されている、内燃機関の軸受構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
第1の半割り軸受の外周側に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段の外周側に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
キャップは、軸受保持部本体にボルトにより締結され、
ボルトの頭部とキャップとの間に断熱材リングが設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
回転軸の外周面に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項1】
内燃機関の回転軸を潤滑油を介してラジアルすべり軸受で支持し、ラジアルすべり軸受を軸受保持部で保持する内燃機関の軸受構造であって、
軸受保持部におけるラジアルすべり軸受の外周側で熱を供給する熱供給手段を有し、
軸受保持部は、軸受保持部本体と、軸受保持部本体に締結され、軸受保持部本体よりも熱容量の小さいキャップとを含み、
ラジアルすべり軸受は、軸受保持部本体に保持された第1の半割り軸受と、キャップに保持された第2の半割り軸受とを含み、
熱供給手段は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側で熱を供給し、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側では熱を供給しない、内燃機関の軸受構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、熱媒体流路を流れる加熱媒体の熱を供給する手段であり、
熱媒体流路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、加熱媒体に代えて冷却媒体が熱媒体流路を流れることで冷却手段としても機能する、内燃機関の軸受構造。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段としてヒータを有し、
ヒータは、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に設けられ、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には設けられていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段は、ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間から潤滑油が供給される熱交換油路を流れる潤滑油の熱を供給する手段であり、
熱交換油路は、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側及びキャップにおける第2の半割り軸受の外周側のうち、キャップにおける第2の半割り軸受の外周側に形成され、軸受保持部本体における第1の半割り軸受の外周側には形成されていない、内燃機関の軸受構造。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の軸受構造であって、
ラジアルすべり軸受と回転軸間の隙間は、回転軸方向に関して両端部が他の部分よりも狭い、内燃機関の軸受構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
キャップが断熱層を介して軸受保持部本体に締結されている、内燃機関の軸受構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
第1の半割り軸受の外周側に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
熱供給手段の外周側に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
キャップは、軸受保持部本体にボルトにより締結され、
ボルトの頭部とキャップとの間に断熱材リングが設けられている、内燃機関の軸受構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載の内燃機関の軸受構造であって、
回転軸の外周面に断熱層が設けられている、内燃機関の軸受構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−197923(P2012−197923A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64144(P2011−64144)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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