説明

内燃機関のEGR装置

【課題】EGRクーラを大型化することなく、凝縮水による腐食を抑えることのできる内燃機関のEGR装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の排気装置4と吸気装置3とを連結するEGR管70,72,74,76を備える内燃機関1のEGR装置7において、セラミック製の冷却手段を有する第1のEGRクーラ71と、金属製の冷却手段を有する第2のEGRクーラ73と、冷却水Wの水温が所定温度より低い場合に、第1のEGRクーラ71に優先的に排出ガスGを導入する排出ガス導入手段77,80と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関のEGR(Exhaust Gas Recirculation排出ガス再循環)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関の排気浄化性能に対する要求の高度化に伴って、NOx低減に効果的な排出ガス再循環を行うEGR装置を搭載した内燃機関が普及してきている。近年では、EGR装置の効果として、NOx低減に加え、ポンピングロスの低下による燃費向上が着目されている。
【0003】
EGR装置としては、従来から普及しているHPL(High Pressure Loop)−EGR装置と、近年普及しているLPL(Low Pressure Loop)−EGR装置とが挙げられる。HPL−EGR装置は、燃焼室から排出された直後の高温の排出ガスの一部を、燃焼室に供給される直前の吸気装置に還流させるものとなっている。LPL−EGR装置は、後処理触媒を通過した後の比較的低温の排出ガスの一部を、ターボ過給機のコンプレッサより上流側の吸気装置に還流させるものとなっている。
【0004】
ここで、EGR装置から高温の排出ガスが多量に排出されて吸気に混合されると、吸気充填効率が低下して内燃機関の出力が下がってしまうおそれがある。このため、再循環される排出ガスの温度を下げるEGRクーラが多用されている。
【0005】
EGRクーラは、一般に、ケース内にステンレス製の冷却管を設けて構成される。そして、冷却管の内部に排気再循環される排出ガスを流通させるとともに、冷却管の外部に冷却水を流通させる。そして、冷却管の壁部を介在して排出ガスと冷却水との間で熱交換が行われ、これにより吸気側に再循環される排出ガスが冷却されるようになっている。
【0006】
排出ガスは、水蒸気(HO)および炭酸ガス(CO)を多く含み、その他に亜硫酸ガス(SO)や窒素酸化物(NO)などを含んでいる。冷却管において高温の排出ガスが冷却されることにより、排出ガス中の水蒸気が凝縮されて凝縮水となり冷却管の内壁部に付着することがある。
【0007】
内壁部に付着した凝縮水に亜硫酸ガスが溶解すると、硫酸(HSO)や無水硫酸(SO)が生成される。あるいは、内壁部に付着した凝縮水に窒素酸化物が溶解すると、硝酸(NHO)が生成される。
【0008】
また、内燃機関の燃料の1つであるガソリンには原則として塩素(Cl)は含まれないものの、国や地域によってはガソリンに塩素が含まれている場合がある。また、エンジンオイルや大気には塩素が含まれる。このため、ガソリンやエンジンオイルや大気の塩素は内燃機関の燃焼室では化学変化を起こさずに排出ガス中に残留し、これにより排出ガス中に塩素が含まれていることがある。そして、EGRクーラにおいて排出ガス中の塩素が凝縮水に溶解した場合は、塩酸(HCl)が生成される。
【0009】
これら硫酸、硝酸および塩酸のような強酸性の凝縮水が冷却管の内壁部に付着することにより、冷却管の内壁部が腐食されるおそれがある。
【0010】
凝縮水による冷却管の腐食を防止するために、凝縮水排出機能を有するLPL−EGR装置を搭載した内燃機関が開発されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図7に示すように、この内燃機関200は、エンジン本体201と、吸気装置202と、排気装置203と、ターボ過給機204と、EGR装置205とを備えている。
【0011】
エンジン本体201は、複数のシリンダ210と、ウォータジャケット(図示せず)とを有している。吸気装置202は、吸気管220と、エアクリーナ221と、インタークーラ222と、スロットルバルブ223と、吸気マニホールド224とを含んで構成されている。吸気装置202は、吸入空気(実線矢印で示す)を外部からシリンダ210に取り込むようになっている。
【0012】
排気装置203は、排気マニホールド230と、排気管231と、触媒コンバータ232と、排気絞り弁233とを含んで構成されている。排気装置203は、排出ガス(破線矢印で示す)をシリンダ210から外部に排出するようになっている。ターボ過給機204は、吸入空気コンプレッサ240および排気タービン241を含んで構成されている。
【0013】
EGR装置205は、上流管250と、EGRクーラ251と、中間管252と、EGRバルブ253と、下流管254と、連通管255とを含んで構成されている。上流管250は、排気装置203の触媒コンバータ232と排気絞り弁233との間に連結されている。また、下流管254は、吸気装置202のエアクリーナ221と吸入空気コンプレッサ240との間に連結されている。連通管255は、中間管252と、排気絞り弁233の下流側の排気管231との間に連結されている。
【0014】
EGRクーラ251は、ステンレス製の冷却管の内部に排出ガスを流通させるとともに、冷却管の外部に冷却水を流通させる。これにより、冷却管の壁部を介して排出ガスを冷却水により冷却するようになっている。
【0015】
このEGR装置205では、所定のタイミングで、EGRバルブ253および排気絞り弁233を閉塞する。これにより、排気管231からの排出ガスは、上流管250からEGRクーラ251および中間管252に流入する。そして、排出ガスは連通管255から排気管231に排出される。この排出ガスの排出に伴い、中間管252に貯留していた凝縮水が排気管231に排出されるようになる。よって、凝縮水によるEGRクーラ251や中間管252などの腐食を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−2351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述のような従来のEGR装置205にあっては、EGRクーラ251の冷却管はステンレスのみから構成されるとともに、凝縮水を排出する構成を有してはいるものの凝縮水の発生を抑える構成を有していない。このため、特に暖機運転時などの冷間時には、EGRクーラ251において凝縮水が発生してしまう場合がある。凝縮水が発生した場合は、凝縮水が蒸発したり、あるいは連通管255を経て排出されるまでは、凝縮水がEGRクーラ251の冷却管や中間管252などに流通してしまうという問題がある。
【0018】
これを解決するために、近年開発されているセラミック製の熱交換部材をEGRクーラの冷却管として利用することも考えられる。この場合、セラミックは強酸に対して高い耐食性を有することから、例えば暖機運転時にEGRクーラにおいて凝縮水が発生しても、EGRクーラの冷却管は腐食しにくくなる。
【0019】
しかしながら、セラミックは耐食性は高いものの、靱性が低いためにステンレスに比べて加工性が低い。このため、セラミック製の冷却管は、ステンレス製の冷却管に比べて冷却管の構造を複雑にするのは困難になってしまう。例えば、ステンレス製の冷却管では、蛇行した形状にしたりフィンを設けて複雑な形状にすることは比較的容易であるのに対して、セラミック製の冷却管では、例えばハニカム形状などの比較的単純な構造にしなければならないという制約がある。
【0020】
これにより、セラミック製の冷却管を備えたEGRクーラは、ステンレス製の冷却管を備えたEGRクーラに比べて排出ガスや冷却水に乱流が発生しにくく、排出ガスの冷却効率が下がってしまう。よって、セラミック製の冷却管を備えたEGRクーラによりステンレス製の冷却管を備えたEGRクーラと同等の冷却性能を得るためには、セラミック製の冷却管を備えたEGRクーラをステンレス製の冷却管を備えたEGRクーラよりも大型化しなければならない。
【0021】
また、上述したEGRクーラはLPL−EGR装置において用いるEGRクーラについて説明したが、HPL−EGR装置において用いるEGRクーラについても同様に、凝縮水発生に関する問題があり得る。
【0022】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、EGRクーラを大型化することなく、凝縮水による腐食を抑えることのできる内燃機関のEGR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る内燃機関のEGR装置は、上記目的達成のため、(1)内燃機関の排気装置と吸気装置とを連結するEGR管を備え、前記排気装置を流通する排出ガスの一部を前記EGR管に流通させることにより前記吸気装置に帰還させる内燃機関のEGR装置において、前記EGR管に設けられるとともに、前記EGR管を流通する前記排出ガスと冷却水との熱交換により前記排出ガスを冷却するセラミック製の冷却手段を有する第1のEGRクーラと、前記EGR管に設けられるとともに、前記EGR管を流通する前記排出ガスと冷却水との熱交換により前記排出ガスを冷却する金属製の冷却手段を有する第2のEGRクーラと、前記冷却水の水温が所定温度より低い場合に、前記第1のEGRクーラに優先的に前記排出ガスを導入する排出ガス導入手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この構成により、冷却水の水温が所定温度より低く第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラを流通する排出ガスに凝縮水が発生し得る場合に、排出ガス導入手段により第1のEGRクーラに優先的に前記排出ガスが導入される。第1のEGRクーラの冷却手段はセラミック製であるので、第1のEGRクーラの冷却手段において強酸性の凝縮水が発生した場合でも第1のEGRクーラの冷却手段の腐食を抑制することができる。
【0025】
また、冷却水の水温が所定温度より低い場合は、第2のEGRクーラの排出ガスの流量が第1のEGRクーラの排出ガスの流量に比べて少なくなるので、第2のEGRクーラの冷却手段での凝縮水の発生量を低減することができる。これにより、第2のEGRクーラの金属製の冷却手段の腐食を最小限に抑えることができる。
【0026】
上記(1)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(2)前記排出ガス導入手段は、前記第1のEGRクーラを上流側にするとともに前記第2のEGRクーラを下流側にする直列の配置であることが好ましい。
【0027】
この構成により、第1のEGRクーラは第2のEGRクーラの上流側に配置されているので、少なくとも冷却水の水温が所定温度より低い場合に、排出ガスは第2のEGRクーラよりも第1のEGRクーラに優先的に導入されるようになる。
【0028】
これにより、第2のEGRクーラは第1のEGRクーラの下流側に配置されているので、EGR装置に流入された排出ガスは最初に第1のEGRクーラにより冷却される。排出ガスは第1のEGRクーラで冷却されることにより、第1のEGRクーラにおいて凝縮水が発生する場合がある。この場合、第1のEGRクーラから排出された排出ガスの含有水分が低減するので、その排出ガスが第2のEGRクーラに流入されたときに第2のEGRクーラで凝縮水が発生することを抑制できる。また、EGR装置から排出される排出ガスの含有水分が低減することにより、吸気装置において排出ガスが吸入空気に混合した際に、凝縮水の発生を抑えることができる。
【0029】
また、EGRバルブを閉塞した場合、排気脈動により排出ガスが排気装置からEGR管に流入することがあるが、第1のEGRクーラが第2のEGRクーラの上流側に配置されているので、排出ガスは第1のEGRクーラに優先的に流入する。これにより、第2のEGRクーラでの凝縮水の発生を抑えることができる。
【0030】
上記(1)または(2)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(3)前記所定温度は、前記第2のEGRクーラの前記冷却手段を前記排出ガスが流通する際に前記冷却水と熱交換して冷却されることにより、前記排出ガスに凝縮水が発生し得る温度であることが好ましい。
【0031】
この構成により、冷却水の水温が所定温度より低い場合は、第2のEGRクーラの排出ガスの流量が第1のEGRクーラの排出ガスの流量に比べて少なくなるので、第2のEGRクーラの冷却手段での凝縮水の発生量を低減することができる。これにより、第2のEGRクーラの金属製の冷却手段の腐食を最小限に抑えることができる。
【0032】
上記(1)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(4)前記排出ガス導入手段は、前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラの使用状態を、前記第1のEGRクーラのみを使用する暖機モードと、少なくとも前記第2のEGRクーラを使用する通常モードとに切り換え可能であるとともに、前記第2のEGRクーラに流入される前記排出ガスの温度および流量ならびに前記第2のEGRクーラに流入される前記冷却水の温度および流量が、前記第2のEGRクーラの前記冷却手段を流通する前記排出ガスに凝縮水を発生させ得る値であることを条件に、前記使用状態を前記暖機モードに切り換える切換手段であることが好ましい。ここで、第1のEGRクーラの「使用」とは、第1のEGRクーラに排出ガスおよび冷却水を供給して、排出ガスおよび冷却水の間で熱交換することを意味する。また、第2のEGRクーラについても同様である。
【0033】
内燃機関の暖機運転時では、第2のEGRクーラに流入される排出ガスの温度および流量ならびに第2のEGRクーラに流入される冷却水の温度および流量が凝縮水を発生させ得る値になる場合がある。この場合、本発明の構成によれば、切換手段が第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラの使用状態を暖機モードに切り換える。暖機モードでは、第1のEGRクーラが使用されるのに対して、第2のEGRクーラは使用されないようになる。
【0034】
これにより、暖機モードでは、第2のEGRクーラは使用されないので、第2のEGRクーラの冷却手段を流通する排出ガスに凝縮水が発生することを抑制でき、第2のEGRクーラの冷却手段の凝縮水による腐食を抑えることができる。また、暖機モードでは第1のEGRクーラが使用されるので、第1のEGRクーラの冷却手段を流通する冷却水が排出ガスにより加熱される。よって、暖機運転時のようにエンジン本体が低温の時でも、エンジン本体を流通する冷却水により加熱することができるようになる。
【0035】
一方、暖機運転後の通常の運転時には、第2のEGRクーラに流入される排出ガスの温度および流量ならびに第2のEGRクーラに流入される冷却水の温度および流量が凝縮水を発生させない値になる。この場合、切換手段が第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラの使用状態を通常モードに切り換える。通常モードでは、少なくとも第2のEGRクーラが使用されるようになる。
【0036】
第2のEGRクーラの冷却手段は金属製であるので、第1のEGRクーラの冷却手段のようにセラミック製である場合に比べて、高い加工性を有する。このため、複雑な形状の冷却手段を安価に作製することができるようになる。これにより、冷却手段の形状を複雑にすることによって、排出ガスと冷却手段との接触面積、あるいは冷却水と冷却手段との接触面積を増やしたり、排出ガスや冷却水に乱流を発生させることができる。その結果、第2のEGRクーラの熱交換率を第1のEGRクーラよりも高くすることができる。
【0037】
そして、第2のEGRクーラを使用することにより、第1のEGRクーラのみを使用する場合に比べて、EGR装置による排出ガスの冷却効率を高めることができるようになる。よって、通常の運転時に大量の排出ガスをEGR装置に流通させても、排出ガスを十分に冷却することができるようになる。
【0038】
また、従来のステンレス製の冷却手段を備えたEGRクーラでは、EGRクーラでの凝縮水発生を防止するため、暖機運転時には冷却水温が例えば50℃程度になるまで冷却水の流通を止める制御を行っていた。このため、暖機運転時には排出ガスが冷却されないため、排出ガス再循環によるNOx低減効果を得ることが困難であった。これに対し、本発明の構成により、暖機運転時であっても第1のEGRクーラに排出ガスおよび冷却水を流通させることができるので、排出ガスを冷却して暖機運転時においてもNOx低減効果を得ることができるようになる。
【0039】
さらに、暖機モードであっても第1のEGRクーラに排出ガスおよび冷却水を流通させることができるので、暖機運転時にEGRクーラから排出される排出ガスの温度を下げることができる。これにより、EGRクーラの下流に例えばアルミニウム製の部材があっても、当該部材を熱劣化させることを抑制できる。
【0040】
上記(4)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(5)前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは、前記第1のEGRクーラを上流側にするとともに前記第2のEGRクーラを下流側にして直列に接続され、前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合の前記第2のEGRクーラへの前記冷却水の供給量を、前記使用状態が前記通常モードである場合の前記第2のEGRクーラへの前記冷却水の供給量よりも減量する流量調整弁であることが好ましい。
【0041】
この構成により、暖機モードでは、切換手段の作動により第2のEGRクーラへの冷却水の供給量が通常モードに比べて減量される。このため、第2のEGRクーラの冷却手段には排出ガスが流通するものの、冷却水による冷却効果は低くなるので、第2のEGRクーラにおける凝縮水の発生を抑制することができる。
【0042】
また、第2のEGRクーラは第1のEGRクーラの下流側に配置されているので、EGR装置に流入された排出ガスは最初に第1のEGRクーラにより冷却される。排出ガスは第1のEGRクーラで冷却されることにより、第1のEGRクーラにおいて凝縮水が発生する場合がある。この場合、第1のEGRクーラから排出された排出ガスの含有水分が低減するので、その排出ガスが第2のEGRクーラに流入されたときに第2のEGRクーラで凝縮水が発生することを抑制できる。また、EGR装置から排出される排出ガスの含有水分が低減することにより、吸気装置において排出ガスが吸入空気に混合した際に、凝縮水の発生を抑えることができる。
【0043】
また、排出ガスの冷却は、暖機モードでは主として第1のEGRクーラにより行われるが、通常モードでは第1のEGRクーラと第2のEGRクーラとの2段で行われる。このため、通常モードでは、従来のステンレス製の冷却手段を備えたEGRクーラに比べて、排出ガスに対する冷却性能を同等に維持することができる。
【0044】
さらに、EGRバルブを閉塞した場合、排気脈動により排出ガスが排気装置からEGR管に流入することがあるが、第1のEGRクーラが第2のEGRクーラの上流側に配置されているので、排出ガスは第1のEGRクーラのみに流入する。これにより、第2のEGRクーラでの凝縮水の発生を抑えることができる。
【0045】
上記(4)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(6)前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは直列に接続されるとともに、前記第2のEGRクーラは前記第1のEGRクーラの下流側に配置され、尚且つ前記第2のEGRクーラの上流側と下流側とを連結して前記排出ガスを流通可能なバイパス管を備え、前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合に前記第1のEGRクーラから排出された前記排出ガスを前記バイパス管のみに流通させる切換弁であることが好ましい。
【0046】
この構成により、暖機運転時には、切換手段の作動により排出ガスが第2のEGRクーラに供給されない。このため、第2のEGRクーラの冷却手段での凝縮水の発生を抑制することができる。
【0047】
上記(4)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(7)前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは並列に接続されるとともに、前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合に前記排気装置から供給された前記排出ガスを前記第1のEGRクーラのみに流通させる切換弁であることが好ましい。
【0048】
この構成により、暖機運転時には、切換手段の作動により排出ガスが第2のEGRクーラに供給されない。このため、第2のEGRクーラの冷却手段での凝縮水の発生を抑制することができる。
【0049】
上記(4)から(7)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(8)前記使用状態が前記暖機モードあるいは前記通常モードのいずれの場合も前記第1のEGRクーラに前記冷却水を流通させる第1の冷却水循環手段と、前記使用状態が前記通常モードの場合に前記第2のEGRクーラに前記冷却水を流通させるとともに、前記使用状態が暖機モードの場合に前記通常モードの場合よりも少ない量の前記冷却水を流通させるか、または前記冷却水の流通を停止する第2の冷却水循環手段と、を備えることが好ましい。
【0050】
この構成により、従来は冷却水が循環されなかった暖機運転時でも第1のEGRクーラに冷却水が供給されるので、第1のEGRクーラの冷却手段を流通する冷却水が排出ガスにより加熱される。よって、暖機運転時のようにエンジン本体が低温の時でも、エンジン本体を流通する冷却水により加熱することができるようになる。しかも、暖機運転時においてもNOx低減効果を得ることができるようになる。
【0051】
上記(8)に記載の内燃機関のEGR装置においては、(9)前記内燃機関はシリンダヘッドとシリンダブロックとを備え、前記シリンダヘッドは前記冷却水が流通するシリンダヘッドウォータジャケットを備え、前記シリンダブロックは前記冷却水が流通するシリンダブロックウォータジャケットを備え、前記第1の冷却水循環手段は、前記シリンダブロックウォータジャケットから前記第1のEGRクーラに前記冷却水を供給するとともに、前記第1のEGRクーラから前記シリンダヘッドウォータジャケットに前記冷却水を供給することが好ましい。
【0052】
この構成により、暖機運転時において、第1のEGRクーラ以外に冷却水が供給されていない状況であっても、排出ガスで加熱された冷却水の熱により、シリンダヘッドから内燃機関を暖機することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、EGRクーラを大型化することなく、凝縮水による腐食を抑えることのできる内燃機関のEGR装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置が搭載された内燃機関を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置に使用される第1のEGRクーラを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置に使用される第2のEGRクーラを示す図であり、(a)は全体の斜視図、(b)は伝熱管の分解組立図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置に使用される第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラへの冷却水の供給系の他の例を示す概略図であり、(a)は第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラに別個の供給系を設けた場合、(b)は第2のEGRクーラにバイパスを設け、第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラに冷却水を常時供給する供給系を設けた場合である。
【図6】本発明の実施の形態に係る内燃機関のEGR装置に使用される第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラを並列に接続した例を示す概略図であり、(a)は第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラに別個の供給系を設けた場合、(b)は第1のEGRクーラおよび第2のEGRクーラに冷却水を常時供給する供給系を設けた場合である。
【図7】従来の内燃機関のEGR装置が搭載された内燃機関を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、内燃機関のEGR装置を、内燃機関としての直列4気筒のディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)に適用した場合について説明している。
【0056】
(第1の実施の形態)
まず、構成について説明する。
【0057】
図1に示すように、本実施の形態のエンジン1は、エンジン本体2と、吸気装置3と、排気装置4と、ターボ過給機5と、HPL−EGR装置6と、EGR装置としてのLPL−EGR装置7と、ECU(Electronic Control Unit)8とを含んで構成されている。
【0058】
エンジン本体2は、シリンダヘッド20と、シリンダブロック21とを含んで構成されている。シリンダヘッド20およびシリンダブロック21は、複数のシリンダ22と、ウォータジャケット23とを備えている。ウォータジャケット23は、各シリンダ22の周囲に設けられ、内部に冷却水Wを流通させることによりエンジン本体2を冷却するようになっている。
【0059】
吸気装置3は、吸気口管30と、エアクリーナ31と、吸気管32と、エアロフローメータ33と、インタークーラ34と、スロットルバルブ35と、吸気マニホールド36とを含んで構成されている。エアクリーナ31は、吸気装置3の上流部でフィルタにより吸入空気を清浄化するようになっている。エアロフローメータ33は、吸入空気の吸入流量を検出するようになっている。
【0060】
インタークーラ34は、ターボ過給機5より下流側の吸気管32に設けられている。インタークーラ34は、ターボ過給機5での圧縮および過給により昇温した吸入空気を冷却するようになっている。スロットルバルブ35は、吸気管32の下流部に設けられるとともに、電子制御式で各シリンダに供給される吸入空気の吸入流量を調節するようになっている。吸気マニホールド36は、吸気管32と各シリンダ22とを接続している。
【0061】
吸入空気は、吸気口管30から、エアクリーナ31→ターボ供給機5→インタークーラ34→吸気マニホールド36という順で流通されて、各シリンダ22に流入されるようになっている。また、吸気マニホールド36と各シリンダ22との接続により、エンジン本体2と吸気装置3とが接続されている。
【0062】
排気装置4は、排気マニホールド40と、排気管41と、排気後処理器42と、排気絞り弁43と、テールパイプ44と、排気温度センサ45とを含んで構成されている。
【0063】
排気マニホールド40は、各シリンダ22から排出された排出ガスGを流通させる。この排気マニホールド40と各シリンダ22との接続により、エンジン本体2と排気装置4とが接続されている。排気後処理器42は、ターボ過給機5より下流側の排気管41に設けられるとともに、酸化触媒コンバータ(CCo)42aおよびディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)42bを備えている。排気温度センサ45は、排気後処理器42の下流側に設けられていて、排気後処理器42から排出された排気ガスGの温度を検出するようになっている。
【0064】
排気絞り弁43は、排気後処理器42の下流側の排気管41に設けられている。排気絞り弁43は、LPL−EGR装置7の背圧を制御するようになっている。テールパイプ44の下流側端部は大気に開放されている。このため、排気絞り弁43を通過した排出ガスGは、テールパイプ44を経て大気に放出されるようになっている。
【0065】
ターボ過給機5は、吸入空気コンプレッサ50および排気タービン51を有している。吸入空気コンプレッサ50は吸気管32に設けられている。排気タービン51は排気管41に設けられている。吸入空気コンプレッサ50および排気タービン51は、1本の回転軸52で結合されるとともに、一体回転するようになっている。
【0066】
排気管41で排出ガスGが流通することにより、排気タービン51が回転される。排気タービン51の回転により、吸入空気コンプレッサ50が回転される。さらに、吸入空気コンプレッサ50の回転により吸入空気が圧縮され、シリンダ22に正圧の空気が供給されるようになっている。
【0067】
HPL−EGR装置6は、EGRパイプ60と、HPL−EGRバルブ61とを備えている。EGRパイプ60は、排気装置4の排気マニホールド40と、吸気管32のスロットルバルブ35より下流側の部分とを連結して、エンジン本体2をバイパスしている。すなわち、HPL−EGR装置6は、排気装置4の排出ガスGの一部を吸気装置3に還流させる排気再循環装置として機能するようになっている。
【0068】
HPL−EGRバルブ61は、EGRパイプ60の途中に設けられている。HPL−EGRバルブ61は、ステッピングモータ61aと、バルブ本体61bとを備えている。バルブ本体61bは、ステッピングモータ61aの駆動により開閉するようになっている。ステッピングモータ61aの回転のステップ数に応じてHPL−EGRバルブ61の開度が調整され、排気マニホールド40から吸気管32への排出ガスGの流量が調整されるようになっている。HPL−EGRバルブ61における排出ガスGの流量の調整は、機関回転速度と機関負荷率に基づいたマップによって決定される。
【0069】
LPL−EGR装置7は、上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76と、開閉弁77と、冷却水供給管96と、水温センサ97とを含んで構成されている。上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76とは、順に連結されている。
【0070】
上流管70は、排気管41の排気後処理器42と排気絞り弁43との間に連結されている。また、下流管76は、吸気管32のエアクリーナ31と吸入空気コンプレッサ50との間に連結されている。すなわち、LPL−EGR装置7は、HPL−EGR装置6と同様に、排気装置4の排出ガスGの一部を吸気装置3に還流させる排気再循環装置として機能するようになっている。
【0071】
図2に示すように、第1のEGRクーラ71は、ケース90と、冷却水流入管91と、冷却水流出管92と、冷却手段としての冷却管93と、排出ガス流入管94と、排出ガス流出管95とを備えている。第1のEGRクーラ71の冷却水Wとして、エンジン1の冷却水Wが使用されている。また、第1のEGRクーラ71の大きさは、従来の単一のEGRクーラの約半分程度の大きさとしている。
【0072】
ケース90の内部では、冷却管93の周囲を冷却水Wが流通するようになっている。冷却管93は、炭化ケイ素を主成分とする多孔質のセラミックから成り、例えば押し出し成形によって作製される。冷却管93は、略円筒状であり、薄肉のハニカム構造を有している。冷却管93は、ハニカム部分に排出ガスGを流通させるようになっている。
【0073】
冷却管93では、内部を流通する排出ガスGが、外部を流通する冷却水Wとの間で熱交換されて冷却される。また、第1のEGRクーラ71の冷却管93を流通する排出ガスGが露点温度より冷却されることにより、冷却管93の内部で凝縮水が発生する場合がある。
【0074】
ここで、第1のEGRクーラ71は、排出ガス流出管95を排出ガス流入管94より上方に位置するように傾斜して設けられている。傾斜角は車種によって適宜設定される。このように、第1のEGRクーラ71は排出ガス流出管95を排出ガス流入管94より上方に位置するように傾斜して設けられているので、冷却管93の内部で凝縮水が発生した場合に、凝縮水は排出ガス流入管94の方向に流れるようになっている。
【0075】
排出ガス流入管94は、炭化ケイ素を主成分とするセラミック製の管からなる。排出ガス流入管94は、ケース90の排出ガスGの流通方向の上流側の端部に取り付けられるとともに、冷却管93に連結されている。排出ガス流入管94の上流側の端部は、上流管70に連結されている。排出ガス流入管94の上流側の端部は、排出ガス流入管94の下流側の端部よりも細くなるように形成されている。これにより、冷却管93から排出ガス流入管94に流れてきた凝縮水は、上流管70に流れることなく、排出ガス流入管94の下部に貯留するようになっている。
【0076】
排出ガス流出管95は、炭化ケイ素を主成分とするセラミック製の管からなる。排出ガス流出管95は、ケース90の排出ガスGの流通方向の下流側の端部に取り付けられるとともに、冷却管93に連結されている。排出ガス流出管95の下流側の端部は、クーラ間管72に連結されている。
【0077】
冷却水流入管91は、ケース90の排出ガス流入管94側の下部に設けられている。冷却水流入管91は、ケース90に冷却水Wを流入させるようになっている。冷却水流入管91の上流側端部は、冷却水供給管96およびエンジン本体2のウォータジャケット23を介して冷却水Wの供給ポンプ(図示せず)に連結されている(図1を参照)。また、水温センサ97は、冷却水Wの温度を検出するようになっている。
【0078】
冷却水流出管92は、ケース90の排出ガス流出管95側の上部に設けられている。冷却水流出管92は、ケース90から冷却水Wを流出させるようになっている。冷却水流出管92の下流側端部は、例えばラジエータ(図示せず)に連結されている。
【0079】
図3に示すように、第2のEGRクーラ73は、ケース100と、冷却水流入管101と、冷却水流出管102と、冷却手段としての伝熱管103と、排出ガス流入管104と、排出ガス流出管105とを備えている。第2のEGRクーラ73の冷却水Wとして、エンジン1の冷却水Wが使用されている。また、第2のEGRクーラ73の大きさは、従来の単一のEGRクーラの約半分程度の大きさとしている。
【0080】
ケース100の内部では、伝熱管103の周囲を冷却水Wが流通するようになっている。伝熱管103は、いずれもステンレス製の底部103aと、蓋部103bと、フィン103cとを備えている。底部103aと蓋部103bとは組み合わされて、扁平形状の管を構成している。
【0081】
フィン103cは、底部103aおよび蓋部103bの内部に収容されている。フィン103cは、薄板からなり、連続した略チャネル形状に折り曲げ加工してなるとともに、排出ガスGの流通方向に沿って蛇行した形状に形成されている。これにより、伝熱管103の内部を流通する排出ガスGは、乱流になるようになっている。
【0082】
伝熱管103は、ケース100の内部に複数個、例えば5個設けられるとともに、互いに隙間を有して層状に配置されている。このため、伝熱管103の外周面を流通する冷却水Wは、各伝熱管103同士の間や各伝熱管103とケース100の内壁との間を流通するので、適宜攪拌されるようになっている。これにより、排出ガスGと冷却水Wとの間での熱交換が効率良く行われるようになっている。
【0083】
また、第2のEGRクーラ73に流入される排出ガスGの温度および流量ならびに第2のEGRクーラ73に流入される冷却水Wの温度および流量によっては、第2のEGRクーラ73の伝熱管103を流通する排出ガスGが露点温度より冷却される場合がある。排出ガスGが露点温度より冷却されると、伝熱管103の内部に凝縮水が発生する場合がある。
【0084】
第2のEGRクーラ73は、排出ガス流出管105を排出ガス流入管104より上方に位置するように傾斜して設けられている。傾斜角は車種によって適宜設定される。このように、第1のEGRクーラ71は排出ガス流出管105を排出ガス流入管104より上方に位置するように傾斜して設けられているので、伝熱管103の内部で発生した凝縮水は、排出ガス流入管104の方向に流れるようになっている。これにより、伝熱管103の内部で凝縮水が発生した場合でも、凝縮水がLPL−EGRバルブ75に流入することを抑制できるようになっている。
【0085】
排出ガス流入管104は、ステンレス製で、ケース100の排出ガスGの流通方向の上流側の端部に取り付けられるとともに、伝熱管103に連結されている。排出ガス流入管104の上流側端部は、クーラ間管72に連結されている。排出ガス流入管104の上流側端部は、排出ガス流入管104の下流側端部よりも細くなるように形成されている。これにより、伝熱管103から排出ガス流入管104に流れてきた凝縮水は、クーラ間管72に流れることなく、排出ガス流入管104の下部に貯留するようになっている。
【0086】
排出ガス流出管105は、ステンレス製で、ケース100の排出ガスGの流通方向の下流側の端部に取り付けられるとともに、伝熱管103に連結されている。排出ガス流出管105の下流側端部は、中間管74に連結されている。
【0087】
冷却水流入管101は、ケース100の排出ガス流入管104側の側部に設けられている。冷却水流入管101は、ケース100に冷却水Wを流入させるようになっている。冷却水流入管101の上流側端部は、開閉弁77を介して冷却水供給管96に連結され、さらにエンジン本体2のウォータジャケット23を介して冷却水Wの供給ポンプに連結されている(図1を参照)。
【0088】
冷却水流出管102は、ケース100の排出ガス流出管105側で、尚且つ排出ガス流入管104の反対側の側部に設けられている。冷却水流出管102は、ケース100から冷却水Wを流出させるようになっている。冷却水流出管102の下流側端部は、例えばラジエータ(図示せず)に連結されている。
【0089】
図1に示すように、LPL−EGRバルブ75は、ステッピングモータ75aと、バルブ本体75bとを備えている。バルブ本体75bは、ステッピングモータ75aの駆動により開閉するようになっている。ステッピングモータ75aの回転のステップ数に応じてLPL−EGRバルブ75の開度が調整され、排気管41から吸気管32への排出ガスの流量が調整されるようになっている。LPL−EGRバルブ75における排出ガスの流量の調整は、機関回転速度と機関負荷率に基づいたマップによって決定される。
【0090】
ECU8は、判断部80を備えている。また、ECU8は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるバックアップメモリと、A/D変換器やバッファなどを有する入力インターフェース回路と、駆動回路などを有する出力インターフェース回路とを含んで構成されている。
【0091】
ECU8の入力インターフェース回路には、エアフローメータ33や排気温度センサ45などが接続されている。これらエアフローメータ33や排気温度センサ45などからのセンサ情報は、ECU8に取り込まれるようになっている。
【0092】
ECU8の出力インターフェース回路には、スロットルバルブ35と、HPL−EGRバルブ61と、LPL−EGRバルブ75と、排気絞り弁43の各電磁駆動部などが接続されている。ECU8が、エンジンの運転制御、例えばスロットルバルブ35の開度制御、HPL−EGRバルブ61やLPL−EGRバルブ75の開度(EGR率)制御、排気絞り弁43の開度制御などを実行するようになっている。
【0093】
また、ECU8のROMには、判断部80において、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が、伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であるか否かを判断するための演算処理プログラムが格納されている。
【0094】
本実施の形態では、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であるか否かは、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wが露点温度未満の値であるか否かにより判断するようにしている。ここでは、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度は、水温センサ97により測定された冷却水Wの温度としている。
【0095】
そして、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wが露点温度以下の値である場合は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であると判断するようになっている。また、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wが露点温度を超える値である場合は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値ではないと判断するようになっている。
【0096】
また、ECU8のROMには、判断部80において、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態を、暖機モードと通常モードとに切り換えるための演算処理プログラムが格納されている。
【0097】
ここでの暖機モードとは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のうちで第1のEGRクーラ71のみを使用するモードとしている。すなわち、暖機モードは、開閉弁77を閉じて第2のEGRクーラ73に冷却水Wを供給しないことにより、第1のEGRクーラ71のみを稼働させる状態となっている。
【0098】
また、通常モードとは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のうちで少なくとも第2のEGRクーラ73を使用するモードとしている。すなわち、通常モードは、開閉弁77を開いて第2のEGRクーラ73に冷却水Wを供給することにより、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の両方を稼働させる状態となっている。
【0099】
さらに、ECU8のROMには、判断部80において、第2のEGRクーラ73に流入される排出ガスGの温度および流量ならびに第2のEGRクーラ73に流入される冷却水Wの温度および流量が、第2のEGRクーラ73の伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させる値であることを条件に、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態を暖機モードに切り換えるための演算処理プログラムが格納されている。
【0100】
ここで、本実施の形態における開閉弁77および判断部80は、本発明の内燃機関のEGR装置における切換手段(図1中、一点鎖線で示す)を構成している。また、本実施の形態における第1のEGRクーラ71を上流側にするとともに第2のEGRクーラ73を下流側にする直列の配置と、切換手段とは、本発明の内燃機関のEGR装置における排出ガス導入手段を構成している。
【0101】
次に、動作について説明する。
【0102】
ここでは、本実施の形態における内燃機関のEGR装置の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。このフローチャートは、ECU8のCPUによって、RAMを作業領域として実行されるLPL−EGR装置7の作動プログラムの実行内容を表す。
【0103】
まず、ECU8が、エンジン1が始動しているか否かを検出する(ステップS1)。ECU8がエンジン1の始動を検出しなかったときは(ステップS1;NO)、再度エンジン1の始動が検出される(ステップS1)。
【0104】
ECU83がエンジン1の始動を検出したときは(ステップS1;YES)、ECU8が冷却水Wの供給ポンプを作動させ、第1のEGRクーラ71に冷却水Wの供給を開始する(ステップS2)。
【0105】
そして、ECU8の判断部80は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が、伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であるか否かを判断する。この判断のために、本実施の形態では、判断部80は、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度、すなわち水温センサ97により測定された冷却水Wの水温が露点温度以下の値であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0106】
例えば、暖機運転時のように、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度が露点温度以下の値であるときは(ステップS3;YES)、判断部80は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であると判断する。このとき、判断部80は、開閉弁77を閉塞して、第2のEGRクーラ73に冷却水Wを供給しないようにする(ステップS4)。これにより、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態は、第1のEGRクーラ71のみが使用される暖機モードになる。
【0107】
一方、暖機運転後の通常の運転時のように、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度が露点温度を超える値であるときは(ステップS3;NO)、判断部80は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値ではないと判断する。このとき、判断部80は、開閉弁77を開放して、第2のEGRクーラ73に冷却水Wを供給するようにする(ステップS5)。これにより、第2のEGRクーラ73にも冷却水Wの供給が開始される(ステップS6)。よって、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態は、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73が使用される通常モードになる。
【0108】
判断部80が開閉弁77を閉塞したとき(ステップS4)、あるいは第2のEGRクーラ73にも冷却水Wの供給が開始されたときは(ステップS6)、ECU8はEGRバルブ75が開放されているか否かを判断する(ステップS7)。EGRバルブ75が開放されていると判断されたときは(ステップS7;YES)、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に排出ガスGが供給される(ステップS8)。これにより、LPL−EGR装置7により排出ガスGが冷却される(ステップS9)。
【0109】
暖機モードのときは、排出ガスGは第1のEGRクーラ71の冷却管93に流入され、第1のEGRクーラ71により冷却される。このとき、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度が露点温度以下の値であるので、第1のEGRクーラ71に供給される冷却水Wも露点温度以下となっている。このため、冷却管93において凝縮水が発生する場合がある。冷却管93において凝縮水が発生した場合、凝縮水は排出ガス流入管94の方向に流れて貯留する。貯留した凝縮水は、通常運転時に高温の排出ガスGが第1のEGRクーラ71を流通する際に加熱されて蒸発する。
【0110】
第1のEGRクーラ71から流出された排出ガスGは、第2のEGRクーラ73に流入する。このとき、開閉弁77は閉塞しているので、第2のEGRクーラ73には冷却水Wは供給されない。このため、第2のEGRクーラ73では排出ガスGは冷却水Wにより冷却されることはないので、第2のEGRクーラ73での凝縮水の発生が抑制される。また、第1のEGRクーラ71において凝縮水が発生した場合は、第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスG中の水分が十分に低減しているので、これによっても第2のEGRクーラ73での凝縮水の発生が抑制される。
【0111】
通常モードのときは、排出ガスGは第1のEGRクーラ71の冷却管93に流入され、第1のEGRクーラ71により冷却される。第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスGは、第2のEGRクーラ73に流入する。このとき、開閉弁77は開放しているので、第2のEGRクーラ73に冷却水Wが供給されている。このため、排出ガスGは第2のEGRクーラ73の伝熱管103に流入されて冷却される。
【0112】
このとき、第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度が露点温度を超える値であるので、第2のEGRクーラ73において排出ガスGが露点温度より冷却されることはない。このため、第2のEGRクーラ73での凝縮水の発生が抑制される。
【0113】
そして、LPL−EGR装置7により排出ガスGの冷却が完了するか、あるいはECU8によりEGRバルブ75が開放していないと判断されたときは(ステップS7;NO)、ECU8はエンジン1が停止したか否かを判断する(ステップS10)。エンジン1が停止したと判断されない場合は(ステップS10;NO)、再度、判断部80が第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wの温度が露点温度以下の値であるか否かを判断する(ステップS3)。エンジン1が停止したと判断された場合は(ステップS10;YES)、処理を終了する。
【0114】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、エンジン1の暖機運転時では、第2のEGRクーラ73に流入される排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が凝縮水を発生させ得る値になる場合がある。この場合、判断部80が第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態を暖機モードに切り換える。暖機モードでは、第2のEGRクーラ73は使用されないので、第2のEGRクーラ73の伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水が発生することを抑制でき、第2のEGRクーラ73の伝熱管103の凝縮水による腐食を抑えることができる。
【0115】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、暖機モードでは第1のEGRクーラ71が使用されるので、第1のEGRクーラ71の冷却管93を流通する冷却水Wが排出ガスGにより加熱される。よって、暖機運転時のようにエンジン本体2が低温の時でも、エンジン本体2を冷却水Wにより加熱することができるようになる。
【0116】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、暖機運転時であっても第1のEGRクーラ71に排出ガスGおよび冷却水Wを流通させることができる。このため、暖機運転時に第1のEGRクーラ71から排出される排出ガスGの温度を下げることができる。よって、暖機運転時においてもNOx低減効果を得ることができるようになる。
また、例えばアルミニウム製のLPL−EGRバルブ75や吸気管32とのインレットなどを熱劣化させることを抑制できる。
【0117】
一方、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、暖機運転後の通常の運転時には、第2のEGRクーラ73に流入される排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が凝縮水を発生させない値になる。この場合、判断部80が第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の使用状態を通常モードに切り換える。通常モードでは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の両方が使用されるようになる。
【0118】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、第2のEGRクーラ73の伝熱管103はステンレス製であるので、第1のEGRクーラ71の冷却管93のようにセラミック製である場合に比べて、高い加工性を有する。このため、伝熱管103のフィン103cは、連続した略チャネル形状に折り曲げ加工されるとともに、排出ガスGの流通方向に沿って蛇行した形状のような複雑な形状となっている。このようにフィン103cの形状を複雑にすることによって、排出ガスGと伝熱管103との接触面積を増やすとともに、排出ガスGに乱流を発生させることができる。その結果、第2のEGRクーラ73の熱交換率を第1のEGRクーラ71よりも高くすることができる。
【0119】
そして、通常モードにおいて第2のEGRクーラ73を使用することにより、暖機モードで第1のEGRクーラ71のみを使用する場合に比べて、LPL−EGR装置7による排出ガスGの冷却効率を高めることができるようになる。よって、通常の運転時に大量の排出ガスGをLPL−EGR装置7に流通させても、排出ガスGを十分に冷却することができる。
【0120】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、LPL−EGR装置7は、暖機モードにおいて第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給を停止する開閉弁77を備えている。このため、第2のEGRクーラ73の伝熱管103には排出ガスGは流通するものの、冷却水Wにより冷却されることはないので、第2のEGRクーラ73における凝縮水の発生を抑制することができる。
【0121】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、第2のEGRクーラ73は第1のEGRクーラ71の下流側に配置されているので、LPL−EGR装置7に流入された排出ガスGは最初に第1のEGRクーラ71により冷却される。排出ガスGは第1のEGRクーラ71で冷却されることにより、第1のEGRクーラ71において凝縮水が発生する場合がある。
【0122】
この場合、第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスGの含有水分が低減するので、その排出ガスGが第2のEGRクーラ73に流入されたときに第2のEGRクーラ73で凝縮水が発生することを抑制できる。また、LPL−EGR装置7から排出される排出ガスGの含有水分が低減することにより、吸気管32において排出ガスGが吸入空気に混合した際に、凝縮水の発生を抑えることができる。
【0123】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、例えば、LPL−EGRバルブ75を閉塞した場合、排気脈動により排出ガスGが排気管41から上流管70に流入することがある。第1のEGRクーラ71が第2のEGRクーラ73の上流側に配置されているので、排出ガスGは第1のEGRクーラ71のみに流入する。これにより、第2のEGRクーラ73での凝縮水の発生を抑えることができる。
【0124】
また、本実施の形態に係る内燃機関のEGR装置7によれば、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73は直列に配置されている。しかも、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の大きさは、それぞれ従来の単一のEGRクーラの約半分程度の大きさにされている。このため、従来のように単一のEGRクーラを備えている場合に比べて、大型化を抑制することができる。さらに、LPL−EGR装置7の構成部品は、従来のEGR装置に比べてEGRクーラが2個になった以外はクーラ間管72および開閉弁77が増加しただけであるので、構成の複雑化や大型化を抑えることができる。
【0125】
しかも、排出ガスGの冷却は、暖機モードでは第1のEGRクーラ71のみにより行われるが、通常モードでは第1のEGRクーラ71と第2のEGRクーラ73との2段で行われる。このため、通常モードでは、従来のステンレス製の単一のEGRクーラに比べて、排出ガスGに対する冷却能を同等に維持することができる。
【0126】
上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、判断部80は第2のEGRクーラ73に供給される冷却水Wが露点温度以下の値であるか否かを判断している。これにより、判断部80は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であるか否かを判断するようにしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、他の手法によって、判断部80は、第2のEGRクーラ73における排出ガスGおよび冷却水Wの温度および流量が伝熱管103を流通する排出ガスGに凝縮水を発生させ得る値であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0127】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、切換手段は判断部80および開閉弁77からなるとともに、判断部80の指示により開閉弁77が作動するようにしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、例えばECU8以外に設けられたシーケンス回路において図4中ステップS3と同様に冷却水Wの水温が判断されて、その結果に基づいて開閉弁77が作動するようにしてもよい。この場合は、ECU8に内蔵される判断部80は不要になる。
【0128】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に1本の冷却水供給管96から冷却水Wを分岐して供給するようにしている。すなわち、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給源は同じものとされている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に別々の冷却水供給管、すなわち別々の供給源から冷却水Wを供給するようにしてもよい。この場合、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給制御を別々に行うことができる。例えば、第1のEGRクーラ71に冷却水Wを供給しながらも、第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給の開始や停止を制御することができる。
【0129】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第2のEGRクーラ73の伝熱管103をステンレス製にしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、第2のEGRクーラ73の伝熱管103を例えばチタンやアルミニウム、あるいはこれらの合金などの他の金属製にしてもよい。
【0130】
さらに、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第1のEGRクーラ71において凝縮水は排出ガス流入管94に貯留するようにしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、凝縮水が冷却管93から流通する範囲に凝縮水を貯留する凝縮水貯留部を設けるとともに、凝縮水貯留部に凝縮水を貯留するようにしてもよい。
【0131】
あるいは、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第1のEGRクーラ71に貯留した凝集水は高温の排出ガスGにより蒸発することで処理するようにしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、第1のEGRクーラ71に貯留した凝集水を回収して排気装置4に排出する凝縮水処理部を設けるとともに、凝縮水処理部により凝縮水を処理するようにしてもよい。
【0132】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、切換手段として開閉弁77を用いている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、切換手段として流量を調整可能な流量調整弁を用いるようにしてもよい。
【0133】
これにより、使用状態が暖機モードである場合の第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給量を、使用状態が通常モードである場合の第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給量よりも減量するようにできる。このため、第2のEGRクーラ73の伝熱管103には排出ガスGが流通するものの、冷却水Wによる冷却効果は低くなるので、第2のEGRクーラ73における凝縮水の発生を抑制することができる。また、第2のEGRクーラ73に冷却水Wを全く流通させない場合に比べ、排出ガスGの冷却効率を向上することができる。
【0134】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、排出ガス導入手段は、開閉弁77と、第1のEGRクーラ71を上流側にするとともに第2のEGRクーラ73を下流側にする直列の配置としている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、切換手段を省略して、排出ガス導入手段を第1のEGRクーラ71を上流側にするとともに第2のEGRクーラ73を下流側にする直列の配置のみとしてもよい。
【0135】
この場合、第1のEGRクーラ71は第2のEGRクーラ73の上流側に配置されているので、少なくとも冷却水Wの水温が所定温度より低い場合に、排出ガスGは第2のEGRクーラ73よりも第1のEGRクーラ71に優先的に導入されるようになる。ここでの所定温度としては、例えば、第2のEGRクーラ73の伝熱管103を排出ガスGが流通する際に冷却水Wと熱交換して冷却されることにより、排出ガスGに凝縮水が発生し得る温度とすることができる。
【0136】
第2のEGRクーラ73は第1のEGRクーラ71の下流側に配置されているので、排出ガスGは最初に第1のEGRクーラ71により冷却される。排出ガスGは第1のEGRクーラ71で冷却されることにより、第1のEGRクーラ71において凝縮水が発生する場合がある。この場合、第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスGの含有水分が低減するので、その排出ガスGが第2のEGRクーラ73に流入されたときに第2のEGRクーラ73で凝縮水が発生することを抑制できる。
【0137】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様の全体構成を有している。本実施の形態に係るエンジン1においては、第1の実施の形態の第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給系の構成のみが異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0138】
図5(a)に示すように、本実施の形態のLPL−EGR装置7は、上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76と、開閉弁77と、第1の冷却水循環手段110と、第2の冷却水循環手段111とを含んで構成されている。上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76とは、順に連結されている。
【0139】
また、エンジン本体2は、シリンダヘッド20と、シリンダブロック21とを有している。エンジン本体2のウォータジャケット23は、シリンダヘッド20に形成されたシリンダヘッドウォータジャケット23aと、シリンダブロック21に形成されたシリンダブロックウォータジャケット23bとを含んで構成されている。
【0140】
第1の冷却水循環手段110は、第1の冷却水循環上流管110aと第1の冷却水循環下流管110bとを備えている。第1の冷却水循環上流管110aは、第1のEGRクーラ71の冷却水流入管91と、シリンダブロックウォータジャケット23bとを連結している。第1の冷却水循環下流管110bは、第1のEGRクーラ71の冷却水流出管92と、シリンダヘッドウォータジャケット23aとを連結している。このため、冷却水Wの供給ポンプが作動しているときは、暖機モードおよび通常モードのいずれの場合でも第1のEGRクーラ71には冷却水Wが供給されるようになっている。
【0141】
第2の冷却水循環手段111は、第2の冷却水循環上流管111aと第2の冷却水循環下流管111bとを備えている。第2の冷却水循環上流管111aは、第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101と、シリンダヘッドウォータジャケット23aとを、開閉弁77を介して連結している。第2の冷却水循環下流管111bは、第2のEGRクーラ73の冷却水流出管102と、シリンダブロックウォータジャケット23bとを連結している。
【0142】
暖機モードでは、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが供給される。また、暖機モードでは、開閉弁77が閉塞されるので、第2のEGRクーラ73には冷却水Wが供給されない。一方、通常モードでは、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが供給される。また、通常モードでは、開閉弁77が開放されるので、第2のEGRクーラ73にも冷却水Wが供給される。
【0143】
本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、暖機モードにおいて、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが流通されるとともに、第1のEGRクーラ71で加熱された冷却水Wがエンジン本体2のシリンダヘッド20に供給される。このため、暖機運転時において、第1のEGRクーラ71以外に冷却水Wが供給されていない状況であっても、排出ガスGで加熱された冷却水Wの熱により、シリンダヘッド20からエンジン本体2を暖機することができる。
【0144】
上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第2の冷却水循環手段111は、第2のEGRクーラ73に冷却水Wを供給するものとしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、第2の冷却水循環手段111は第1のEGRクーラ71以外の被冷却部材であるようにしてもよい。ここでは、開閉弁77は、暖機運転時に第1のEGRクーラ71以外の被冷却部材の冷却水Wの流通を停止するためのバルブとして機能する。この場合、既存の被冷却部材に冷却水Wを供給する冷却水循環手段を第2の冷却水循環手段111として流用することができるので、部品コストの上昇を抑えることができる。
【0145】
また、上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101とシリンダヘッドウォータジャケット23aとは、開閉弁77を介して連結している。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101とシリンダヘッドウォータジャケット23aとは、流量を調整可能な流量調整弁により連結するようにしてもよい。
【0146】
これにより、使用状態が暖機モードである場合の第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給量を、使用状態が通常モードである場合の第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給量よりも減量するようにできる。このため、第2のEGRクーラ73の伝熱管103には排出ガスGが流通するものの、冷却水Wによる冷却効果は低くなるので、第2のEGRクーラ73における凝縮水の発生を抑制することができる。また、第2のEGRクーラ73に冷却水Wを全く流通させない場合に比べ、排出ガスGの冷却効率を向上することができる。
【0147】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様の全体構成を有している。本実施の形態に係るエンジン1においては、第1の実施の形態の第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の接続、ならびに冷却水Wの供給系の構成のみが異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0148】
図5(b)に示すように、本実施の形態のLPL−EGR装置7は、上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、バイパス管78と、切換手段としての切換弁79と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76とを含んで構成されている。上流管70と、第1のEGRクーラ71と、クーラ間管72と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76とは、順に連結されている。また、クーラ間管72と中間管74とは、バイパス管78により連結されている。すなわち、バイパス管78は、第2のEGRクーラ73の上流側および下流側をバイパスするようになっている。
【0149】
ここで、第2のEGRクーラ73は、バイパス管78および第1のEGRクーラ71よりも上方に位置するように配置されている。これにより、第1のEGRクーラ71で凝縮水が発生した場合であっても、凝縮水が第2のEGRクーラ73に流入することを防止できるようになっている。
【0150】
切換弁79は、クーラ間管72のバイパス管78との分岐部分に設けられている。切換弁79は、第1のEGRクーラ71から流出した排出ガスGに対して、第2のEGRクーラ73へ流入する流量とバイパス78へ流入する流量との割合を調整するようになっている。これにより、切換弁79は、例えば、第1のEGRクーラ71から流出した排出ガスGの全量を第2のEGRクーラ73へ流入させるとともに、バイパス78には全く流さないようにすることができる。あるいは、切換弁79は、第1のEGRクーラ71から流出した排出ガスGの全量をバイパス78へ流入させるとともに、第2のEGRクーラ73には全く流さないようにすることもできる。さらには、切換弁79は、第1のEGRクーラ71から流出した排出ガスGを、第2のEGRクーラ73およびバイパス78のそれぞれに適宜な割合で流入させるようにすることもできる。
【0151】
第1のEGRクーラ71の冷却水流入管91の上流側端部は、冷却水供給管96およびエンジン本体2のウォータジャケット23を介して冷却水Wの供給ポンプに連結されている。第1のEGRクーラ71の冷却水流出管92の下流側端部は、例えばラジエータに連結されている。第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101の上流側端部は、冷却水供給管96およびエンジン本体2のウォータジャケット23を介して冷却水Wの供給ポンプに連結されている。第2のEGRクーラ73の冷却水流出管102の下流側端部は、例えばラジエータに連結されている。
【0152】
暖機モードでは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に冷却水Wが供給される。また、暖機モードでは、切換弁79は、第2のEGRクーラ73に排出ガスGが流入しないように切り換わる。これにより、第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスGは、全てバイパス管78を経由して第2のEGRクーラ73を流通することなくLPL−EGRバルブ75に流入される。
【0153】
通常モードでも、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に冷却水Wが供給される。また、通常モードでは、切換弁79は、第2のEGRクーラ73に排出ガスGの全量が流入するように切り換わる。これにより、第1のEGRクーラ71から排出された排出ガスGは、全て第2のEGRクーラ73に流入される。また、LPL−EGR装置7を通過した排出ガスGが適温になるようにするために、切換弁79を操作することにより、第2のEGRクーラ73およびバイパス78のそれぞれを流通する排出ガスGの流量を適宜調整することが好ましい。
【0154】
本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、暖機モードにおいて、切換弁79が第2のEGRクーラ73に排出ガスGが流入しないように切り換わるので、第1の実施の形態と同様に第2のEGRクーラ73において凝縮水が発生することを防止できる。
【0155】
また、本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、通常モードにおいて、切換弁79が第2のEGRクーラ73に排出ガスGの全量が流入するように切り換わるので、第1のEGRクーラ71と第2のEGRクーラ73との接続は直列となる。このため、第1の実施の形態と同様に、第1のEGRクーラ71において凝縮水が発生した場合、排出ガスGの含有水分が低減するので、第2のEGRクーラ73で凝縮水が発生することを抑制できる。
【0156】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様の全体構成を有している。本実施の形態に係るエンジン1においては、第1の実施の形態の第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の接続、ならびに冷却水Wの供給系の構成のみが異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0157】
図6(a)に示すように、本実施の形態のLPL−EGR装置7は、上流管70と、第1のEGRクーラ71と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、切換弁79と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76と、開閉弁77と、第1の冷却水循環手段110と、第2の冷却水循環手段111とを含んで構成されている。第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73は、上流管70と中間管74との間に並列に接続されている。
【0158】
上流管70の上流側は、排気管41の排気後処理器42と排気絞り弁43との間に連結されている。上流管70の下流側は二股に分岐して、それぞれ第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に連結されている。中間管74の上流側は二股に分岐して、それぞれ第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に連結されている。中間管74の下流側は、LPL−EGRバルブ75に連結されている。
【0159】
第1のEGRクーラ71は第2のEGRクーラ73の下方に配置されている。これにより、第1のEGRクーラ71で凝縮水が発生した場合であっても、凝縮水が第2のEGRクーラ73に流入することを防止できるようになっている。
【0160】
切換弁79は、上流管70の分岐部分に設けられている。切換弁79は、排気管41からの排出ガスGに対して、第1のEGRクーラ71へ流入する流量と第2のEGRクーラ73へ流入する流量との割合を調整するようになっている。これにより、切換弁79は、例えば、排気管41からの排出ガスGの全量を第1のEGRクーラ71へ流入させるとともに、第2のEGRクーラ73には全く流さないようにすることができる。あるいは、切換弁79は、排気管41からの排出ガスGの全量を第2のEGRクーラ73へ流入させるとともに、第1のEGRクーラ71には全く流さないようにすることもできる。さらには、切換弁79は、排気管41からの排出ガスGを第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のそれぞれに適宜な割合で流入させるようにすることもできる。
【0161】
また、エンジン本体2は、シリンダヘッド20と、シリンダブロック21とを有している。エンジン本体2のウォータジャケット23は、シリンダヘッド20に形成されたシリンダヘッドウォータジャケット23aと、シリンダブロック21に形成されたシリンダブロックウォータジャケット23bとを含んで構成されている。
【0162】
第1の冷却水循環手段110は、第1の冷却水循環上流管110aと第1の冷却水循環下流管110bとを備えている。第1の冷却水循環上流管110aは、第1のEGRクーラ71の冷却水流入管91と、シリンダブロックウォータジャケット23bとを連結している。第1の冷却水循環下流管110bは、第1のEGRクーラ71の冷却水流出管92と、シリンダヘッドウォータジャケット23aとを連結している。このため、冷却水Wの供給ポンプが作動しているときは、暖機モードおよび通常モードのいずれの場合でも第1のEGRクーラ71には冷却水Wが供給されるようになっている。
【0163】
第2の冷却水循環手段111は、第2の冷却水循環上流管111aと第2の冷却水循環下流管111bとを備えている。第2の冷却水循環上流管111aは、第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101と、シリンダヘッドウォータジャケット23aとを、開閉弁77を介して連結している。第2の冷却水循環下流管111bは、第2のEGRクーラ73の冷却水流出管102と、シリンダブロックウォータジャケット23bとを連結している。
【0164】
暖機モードでは、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが供給される。また、暖機モードでは、開閉弁77が閉塞されるので、第2のEGRクーラ73には冷却水Wが供給されない。さらに、暖機モードでは、切換弁79は、流出ガスGが第1のEGRクーラ71のみを流通するように切り換わる。これにより、排気管41からの排出ガスGは、全て第1のEGRクーラ71のみを流通する。
【0165】
一方、通常モードでは、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが供給される。また、通常モードでは、開閉弁77が開放されるので、第2のEGRクーラ73にも冷却水Wが供給される。さらに、通常モードでは、切換弁79は、流出ガスGが第2のEGRクーラ73のみを流通するように切り換わる。これにより、排気管41からの排出ガスGは、全て第2のEGRクーラ73のみを流通する。
【0166】
また、LPL−EGR装置7を通過した排出ガスGが適温になるようにするために、切換弁79を操作することにより、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のそれぞれを流通する排出ガスGの流量を適宜調整することが好ましい。
【0167】
本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、暖機モードにおいて、切換弁79が第2のEGRクーラ73に排出ガスGが流入しないように切り換わるので、第1の実施の形態と同様に第2のEGRクーラ73において凝縮水が発生することを防止できる。
【0168】
また、本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73を並列に接続して配置しているので、直列に配置する場合に比べて全長を短くして、LPL−EGR装置7を小型化することができる。
【0169】
さらに、本実施の形態の内燃機関のEGR装置7によれば、暖機モードにおいて、第1のEGRクーラ71に冷却水Wが流通されるとともに、第1のEGRクーラ71で加熱された冷却水Wがエンジン本体2のシリンダヘッド20に供給される。このため、暖機運転時において、第1のEGRクーラ71以外に冷却水Wが供給されていない状況であっても、排出ガスGで加熱された冷却水Wの熱により、シリンダヘッド20からエンジン本体2を暖機することができる。
【0170】
上述した本実施の形態の内燃機関のEGR装置7においては、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73の排出ガスGの流量の割合を調整するための切換弁79を備えている。しかしながら、本発明に係る内燃機関のEGR装置においては、これに限られず、切換弁79を備えていなくてもよい。この場合も、暖機モードでは開閉弁77が閉塞されるので、第2のEGRクーラ73には冷却水Wが供給されない。このため、暖機運転時に、第2のEGRクーラ73において凝縮水が発生することを抑制することができる。
【0171】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、上述の第4の実施の形態と略同様の全体構成を有している。本実施の形態に係るエンジン1においては、第4の実施の形態の第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73への冷却水Wの供給系の構成のみが異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1に示した第1の実施の形態および図6(a)に示した第4の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0172】
図6(b)に示すように、本実施の形態のLPL−EGR装置7は、上流管70と、第1のEGRクーラ71と、第2のEGRクーラ73と、中間管74と、切換弁79と、LPL−EGRバルブ75と、下流管76とを含んで構成されている。第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73は、上流管70と中間管74との間に並列に接続されている。
【0173】
第1のEGRクーラ71の冷却水流入管91の上流側端部は、冷却水供給管96およびエンジン本体2のウォータジャケットを介して冷却水Wの供給ポンプに連結されている。第1のEGRクーラ71の冷却水流出管92の下流側端部は、例えばラジエータに連結されている。第2のEGRクーラ73の冷却水流入管101の上流側端部は、冷却水供給管96およびエンジン本体2のウォータジャケットを介して冷却水Wの供給ポンプに連結されている。第2のEGRクーラ73の冷却水流出管102の下流側端部は、例えばラジエータに連結されている。
【0174】
暖機モードでは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に冷却水Wが供給される。また、暖機モードでは、切換弁79は、流出ガスGが第1のEGRクーラ71のみを流通するように切り換わる。これにより、排気管41からの排出ガスGは、全て第1のEGRクーラ71のみを流通する。
【0175】
通常モードでも、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73に冷却水Wが供給される。また、通常モードでは、切換弁79は、流出ガスGが第2のEGRクーラ73のみを流通するように切り換わる。これにより、排気管41からの排出ガスGは、全て第2のEGRクーラ73のみを流通する。あるいは、通常モードでは、切換弁79は、流出ガスGが第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のそれぞれに適宜な割合で流通するように切り換わるようにしてもよい。これにより、排気管41からの排出ガスGは、第1のEGRクーラ71および第2のEGRクーラ73のそれぞれに適宜な割合で流通する。
【0176】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関のEGR装置は、EGRクーラにおいて凝縮水の発生を抑制するとともに、EGRクーラにおいて凝縮水が発生した場合は凝縮水による腐食が生じないようにする場合に好適な内燃機関のEGR装置に有用である。
【符号の説明】
【0177】
1 エンジン(内燃機関)
2 エンジン本体
3 吸気装置
4 排気装置
7 LPL−EGR装置(EGR装置)
20 シリンダヘッド
21 シリンダブロック
23 ウォータジャケット
23a シリンダヘッドウォータジャケット
23b シリンダブロックウォータジャケット
70 上流管(EGR管)
71 第1のEGRクーラ
72 クーラ間管(EGR管)
73 第2のEGRクーラ
74 中間管(EGR管)
76 下流管(EGR管)
77 開閉弁(切換手段、排出ガス導入手段)
79 切換弁(切換手段、排出ガス導入手段)
80 判断部(切換手段、排出ガス導入手段)
93 冷却管(冷却手段)
103 伝熱管(冷却手段)
110 第1の冷却水循環手段
111 第2の冷却水循環手段
G 排出ガス
W 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気装置と吸気装置とを連結するEGR管を備え、前記排気装置を流通する排出ガスの一部を前記EGR管に流通させることにより前記吸気装置に帰還させる内燃機関のEGR装置において、
前記EGR管に設けられるとともに、前記EGR管を流通する前記排出ガスと冷却水との熱交換により前記排出ガスを冷却するセラミック製の冷却手段を有する第1のEGRクーラと、
前記EGR管に設けられるとともに、前記EGR管を流通する前記排出ガスと冷却水との熱交換により前記排出ガスを冷却する金属製の冷却手段を有する第2のEGRクーラと、
前記冷却水の水温が所定温度より低い場合に、前記第1のEGRクーラに優先的に前記排出ガスを導入する排出ガス導入手段と、を備えることを特徴とする内燃機関のEGR装置。
【請求項2】
前記排出ガス導入手段は、前記第1のEGRクーラを上流側にするとともに前記第2のEGRクーラを下流側にする直列の配置であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項3】
前記所定温度は、前記第2のEGRクーラの前記冷却手段を前記排出ガスが流通する際に前記冷却水と熱交換して冷却されることにより、前記排出ガスに凝縮水が発生し得る温度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項4】
前記排出ガス導入手段は、前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラの使用状態を、前記第1のEGRクーラのみを使用する暖機モードと、少なくとも前記第2のEGRクーラを使用する通常モードとに切り換え可能であるとともに、前記第2のEGRクーラに流入される前記排出ガスの温度および流量ならびに前記第2のEGRクーラに流入される前記冷却水の温度および流量が、前記第2のEGRクーラの前記冷却手段を流通する前記排出ガスに凝縮水を発生させ得る値であることを条件に、前記使用状態を前記暖機モードに切り換える切換手段であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項5】
前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは、前記第1のEGRクーラを上流側にするとともに前記第2のEGRクーラを下流側にして直列に接続され、
前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合の前記第2のEGRクーラへの前記冷却水の供給量を、前記使用状態が前記通常モードである場合の前記第2のEGRクーラへの前記冷却水の供給量よりも減量する流量調整弁であることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項6】
前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは直列に接続されるとともに、前記第2のEGRクーラは前記第1のEGRクーラの下流側に配置され、尚且つ前記第2のEGRクーラの上流側と下流側とを連結して前記排出ガスを流通可能なバイパス管を備え、
前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合に前記第1のEGRクーラから排出された前記排出ガスを前記バイパス管のみに流通させる切換弁であることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項7】
前記第1のEGRクーラおよび前記第2のEGRクーラは並列に接続されるとともに、
前記切換手段は、前記使用状態が前記暖機モードである場合に前記排気装置から供給された前記排出ガスを前記第1のEGRクーラのみに流通させる切換弁であることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項8】
前記使用状態が前記暖機モードあるいは前記通常モードのいずれの場合も前記第1のEGRクーラに前記冷却水を流通させる第1の冷却水循環手段と、
前記使用状態が前記通常モードの場合に前記第2のEGRクーラに前記冷却水を流通させるとともに、前記使用状態が暖機モードの場合に前記通常モードの場合よりも少ない量の前記冷却水を流通させるか、または前記冷却水の流通を停止する第2の冷却水循環手段と、を備えることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関のEGR装置。
【請求項9】
前記内燃機関はシリンダヘッドとシリンダブロックとを備え、前記シリンダヘッドは前記冷却水が流通するシリンダヘッドウォータジャケットを備え、前記シリンダブロックは前記冷却水が流通するシリンダブロックウォータジャケットを備え、
前記第1の冷却水循環手段は、前記シリンダブロックウォータジャケットから前記第1のEGRクーラに前記冷却水を供給するとともに、前記第1のEGRクーラから前記シリンダヘッドウォータジャケットに前記冷却水を供給することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関のEGR装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−36338(P2013−36338A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170310(P2011−170310)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】