説明

内燃機関を搭載した車両及びその制御方法

【課題】機械式の過給装置のように内燃機関側の駆動損失を発生することなく、車両を制動する際の制動エネルギーを利用して加圧された空気を補助空気貯蔵タンクに貯蔵することができ、また、車両の発進時において、この貯蔵した高圧の空気を用いることで、ターボチャージャのような時間遅れが発生することなく、発進トルクを大きくできて、車両の発進を迅速に行うことができる内燃機関を搭載した車両及びその制御方法を提供する。
【解決手段】エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方においては、クラッチ機構を接続にして車軸に設けたコンプレッサを稼働して補助空気タンクに空気を貯蔵し、車両の発進時においては、補助空気タンクから貯蔵された空気を吸気通路に導入して過給補助を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制動する際の制動エネルギーを利用して、車両を発進する際に発進トルクを大きくできて、車両の発進を迅速に行うことができる内燃機関を搭載した車両及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の内燃機関の技術の傾向(トレンド)としては、燃費向上を行う手法として、エンジンの小排気量化と高平均有効圧(高Pme)化が実施されている。しかし、内燃機関の小排気量化(ダウンサイジング)を遂行した場合、この内燃機関を搭載した車両の発進時及び低速域での運転時において、内燃機関の出力トルクが低く、乗り心地性(ドライビングフィーリング)が悪化するという問題がある。
【0003】
この対策として、高圧段ターボチャージャと低圧段ターボチャージャを用いた2ステージターボを採用した2段過給システムで、車両の低速運転領域では、小型ターボを用いて過給したり、スーパーチャージャを採用した過給システムで、内燃機関の動力を用いてメカニカルな過給による過給補助を行ったりしている。そして、これら過給補助により、内燃機関を小排気量化した場合に問題となる発進時トルクの不足を解消しようとしている。
【0004】
しかしながら、2段過給システムにおいても、積載量の多い状態におけるゼロ発進時の発進トルク不足は解消できず、またスーパーチャージャを採用した過給システムにおいては、スーパーチャージャの駆動損失が大きい等の問題がある。
【0005】
また、最近ではターボチャージャに電動機(モータ)を取り付け、発進時にターボチャージャを電動機運転することにより、このターボチャージャのコンプレッサで過給を行う方式も検討されているが、この電動機運転による電力消費は燃費の悪化を招くという問題がある。
【0006】
また、スーパーチャージャ等で過給した空気を一時的に補助空気タンクに貯蔵しておき、発進時にこの補助空気タンクから空気を過給する方法も検討されているが、空気の圧縮方法として、エンジンクランクの回転力を利用してスーパーチャージャを駆動するため、このエンジンにおける駆動損失が増大する等の問題がある。
【0007】
また、エンジンブレーキ作動時に制動エネルギーを回収してエアコンプレッサを作動させて、燃料消費量を低減するために、内燃機関の回転軸にエアコンプレッサを設け、エンジンブレーキ作動時におけるエアコンプレッサの出力で得られる圧縮空気をエアタンクに貯える自動車のエア機構が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−131826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、機械式の過給装置のように内燃機関側の駆動損失を発生することなく、車両を制動する際の制動エネルギーを利用して加圧された補助空気を補助空気貯蔵タンクに貯蔵することができ、また、車両の発進時において、この貯蔵した高圧の補助空気を用いることで、ターボチャージャのような時間遅れ(タイムラグ)が発生することなく、発進トルクを大きくできて、車両の発進を迅速に行うことができる内燃機関を搭載した車両及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関を搭載した車両は、内燃機関を搭載した車両において、該車両の車軸にクラッチ機構を介して接続されたコンプレッサと、該コンプレッサで加圧された空気を貯蔵する補助空気タンクと、前記コンプレッサと前記補助空気タンクとを接続する補助空気貯蔵用配管を備えると共に、前記補助空気タンクから貯蔵された空気を内燃機関の吸気通路に導入するための補助空気導入用配管と、前記補助空気タンクから前記吸気通路に導入する空気の圧力を調整する補助空気圧調整弁と、前記吸気通路に導入する空気を外気と前記貯蔵された空気のいずれか一方に切り換える流路切換機構と、前記クラッチ機構と前記流路切換機構を制御する制御装置を備えて構成され、前記制御装置が、エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方において、前記クラッチ機構を接続にして前記コンプレッサを稼働して空気を前記補助空気タンクに貯蔵し、車両の発進時においては、前記補助空気タンクから貯蔵した空気を前記吸気通路に導入する制御を行うように構成される。
【0011】
つまり、車両の車軸に取り付けられたコンプレッサを利用して空気を圧縮し、この空気を高圧のまま補助空気タンクに貯蔵して、車両のゼロ発進時で低速トルクが必要な状態の時に、内燃機関の吸気通路に過給補助(過給アシスト)として空気を強制的に供給するように構成される。
【0012】
この構成によれば、機械式の過給装置のようにエンジン側の駆動損失を発生することなく、車両を制動する際の制動エネルギーを利用して加圧された補助空気を補助空気貯蔵タンクに貯蔵することができる。また、車両の発進時において、この貯蔵した高圧の補助空気を用いることで、ターボチャージャのような時間遅れが発生することなく、発進トルクを大きくでき、車両の発進を迅速に行うことができるようになる。
【0013】
上記の内燃機関を搭載した車両において、車両の積車状態を検知する荷重計を各車軸に設けると共に、前記制御装置が、前記荷重計で検出した積車状態によって車両の発進時に必要な過給圧を算出し、該算出された過給圧になるように、前記補助空気圧調整弁を調整する制御を行うように構成すると、この構成により、積車状態に対して最適となる過給圧で貯蔵された空気をエンジンに供給できるので最適な発進トルクを発生することができるようになる。
【0014】
そして、上記の目的を達成するための内燃機関を搭載した車両の制御方法は、車両の車軸にクラッチ機構を介して接続されたコンプレッサと、該コンプレッサで加圧された空気を貯蔵する補助空気タンクと、前記コンプレッサと前記補助空気タンクとを接続する補助空気貯蔵用配管を備えると共に、前記補助空気タンクから貯蔵された空気を内燃機関の吸気通路に導入するための補助空気導入用配管と、前記補助空気タンクから前記吸気通路に導入する空気の圧力を調整する補助空気圧調整弁と、前記吸気通路に導入する空気を外気と前記貯蔵された補助空気のいずれか一方に切り換える流路切換機構と、前記クラッチ機構と前記流路切換機構を制御する制御装置を備えて構成された内燃機関を搭載した車両の制御方法において、エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方において、前記クラッチ機構を接続にして前記コンプレッサを稼働して前記補助空気タンクに空気を貯蔵し、車両の発進時においては、前記補助空気タンクから貯蔵された空気を前記吸気通路に導入することを特徴とする方法である。
【0015】
この方法によれば、車両を制動する際において、制動エネルギーを利用して加圧された空気を補助空気貯蔵タンクに貯蔵することができ、また、車両の発進時において、この貯蔵した高圧の空気を用いることで、発進トルクを大きくでき、車両の発進を迅速に行うことができるようになる。
【0016】
上記の内燃機関を搭載した車両の制御方法において、各車軸に設けた本車両の積車状態を検知する荷重計で検出した積車状態によって車両の発進時の必要な過給圧を算出し、該算出された過給圧になるように、前記補助空気圧調整弁を調整すると、積車状態に対して最適となる過給圧で補助空気をエンジンに供給できるので最適な発進トルクを発生することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る内燃機関を搭載した車両及びその制御方法によれば、車軸にクラッチ機構を介して接続されたコンプレッサを利用して吸入空気を加圧し、一時的に補助空気タンクに貯蔵するが、この吸入空気(補助空気)を貯蔵するための加圧は、エンジンブレーキ使用時、又は、制動ブレーキ使用時となるため、基本的に制動エネルギーを利用して吸入空気を補助空気タンクに加圧して貯蔵することができる。従って、機械式の過給装置とは異なり、エンジン側における駆動損失の増大の問題は生じない。
【0018】
また、過給する空気を予め補助空気タンクに貯蔵しておき、車両の発進時に流路切換機構の操作で過給補助を行うため、ターボチャージャのような過給時の時間遅れが無くなり、発進トルクの増大も可能となるため、車両のゼロ発進を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関を搭載した車両の構成を示した図である。
【図2】補助空気の貯蔵の制御フローの一例を示した図である。
【図3】補助過給の制御フローの一例を示した図である。
【図4】必要発進トルクと車両重量の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関を搭載した車両とその制御方法について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る実施の形態の内燃機関(以下エンジンという)を搭載した車両1においては、エンジン本体2に吸気マニホールド2aと排気マニホールド2bが設けられ、この吸気マニホールド2aには、吸気AとEGRガスが流れる吸気通路3が接続されている。また、排気マニホールド2bには排気ガスGが流れる排気通路4が接続されている。
【0022】
吸気通路3には、上流側から、エアクリーナ5、吸気空気量センサ(図示しない)、吸気絞り弁(図示しない)、ターボチャージャ6のコンプレッサ6a、インタークーラ7等が設けられている。また、排気通路4には、上流側から、ターボチャージャ6のタービン6b、酸化触媒装置等で構成される前段排気ガス浄化装置8a、NOx吸蔵還元型触媒や触媒付きDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)等で形成される排気ガス浄化装置8b、消音装置(図示しない)等が設けられている。
【0023】
なお、EGR弁とEGRクーラを備えたEGR通路が排気マニホールド2b又は排気通路4と吸気マニホールド2a又は吸気通路3とを接続して設けられ、排気ガスGの一部を排気側から吸気側に再循環するが、図面を簡略化するために、図1では記載していない。
【0024】
また、エンジンの出力を車輪(タイヤ)9に伝達するために、エンジン本体2の出力軸に変速機(トランスミッション)10を設け、この変速機10にプロペラシャフト11を接続し、このプロペラシャフト11に、ディファレンシャルギア(デフ)12を介して車軸13が設けられている。
【0025】
また、燃料タンク14と車両1の運転状態に応じて、内燃機関2を制御するためのECU(エンジンコントロールユニット)&VCU(ビークルコントロールユニット)と呼ばれる制御装置15が設けられている。この制御装置15には、アクセル16とブレーキ17からの信号が入力される。
【0026】
そして、本発明においては、更に、クラッチ機構付きコンプレッサ20が車輪9を支持する車軸13に設けられる。また、このコンプレッサ20で加圧された吸入空気Bを貯蔵する補助空気タンク21と、コンプレッサ20と補助空気タンク21とを接続する補助空気貯蔵用配管22が設けられる。この補助空気タンク21には、タンク内の補助空気Cの圧力が必要以上に上昇するのを防止するために、リリーフバルブ23が設けられ、また、補助空気貯蔵用配管22には、補助空気タンク21内の加圧された空気Cがコンプレッサ20側に逆流しないように逆止弁24が設けられる。
【0027】
また、補助空気タンク21から補助空気Cを内燃機関2の吸気通路3に導入するための補助空気導入用配管25が設けられ、この補助空気導入用配管25には、補助空気タンク21から吸気通路3に導入する補助空気Cの圧力を調整する補助空気圧調整弁26が設けられる。
【0028】
また、吸気通路3に導入する空気を外気(吸気)Aと補助空気Cとに切り換えるために流路切換機構27、28が設けられる。この流路切換機構は、吸気通路3に設けられ、吸気量を調整する吸気調整弁27と、補助空気導入用配管25に設けられ、補助空気量を調整する補助空気調整弁28とで構成される。
【0029】
更に、吸気マニホールド2aに吸気圧(ブースト)センサ31を、排気マニホールド2bに排気圧(排圧)センサ32を、補助空気タンク21にタンク圧センサ33を設け、これらの出力信号を制御装置15に入力するように配線する。
【0030】
また、車両1の積車状態を検知する荷重計(ロードセル)34を各車軸13に計4箇所に設けると共に、この荷重計34の出力信号を制御装置15に入力するように構成する。つまり、車両1の各車軸13に車両1の積車状態を認識するための荷重計34を設置し、現状での車両1の積載状態を制御装置15に認識させる。これにより、制御装置15が、この荷重計34で検出した積車状態によって車両1の発進時の必要な過給圧(ブースト圧)を算出し、この算出された過給圧になるように、補助空気圧調整弁26を調整する制御を行うように構成される。
【0031】
更に、制御装置15で、クラッチ機構付きコンプレッサ20のクラッチ機構20aと流路切換機構27、28を制御するように構成する。この構成により、高圧の補助空気Cの供給元として、車軸13に設置されたクラッチ機構付きコンプレッサ20が設置されることになり、また、このクラッチ機構付きコンプレッサ20が、車両1に搭載された制御装置(ECU&VCU)15からの信号により、クラッチ機構20aの切り換えを行い、クラッチ機構付きコンプレッサ20の稼動状態を制限できるようになる。
【0032】
次に、上記の内燃機関を搭載した車両1における制御方法について、図2の制御フローと図3の制御フローを参照しながら説明する。これらの制御フローは、エンジンの運転がスタートすると共に、上級の制御フローから呼ばれてスタートし、エンジンの運転の終了に伴う割り込みにより、上級フローに戻り、上級フローと共に終了するものとして示してある。
【0033】
最初に、補助空気Cの貯蔵に関して、図2の制御フローを参照しながら説明する。この図2の制御フローがスタートすると、ステップS11で、補助空気タンク21が満タンであるか否かを判定する。このステップS11の判定で、タンク圧が予め設定した設定圧力以上になっていれば(YES)、補助空気タンク21は満タンであるとして、補助空気Cの貯蔵は不要と判断して、予め設定された時間(補助空気の貯蔵か否かを判定するインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。また、このステップS11の判定で、タンク圧が予め設定した設定圧力以上になっていなければ(NO)、補助空気タンク21は満タンではないとして、補助空気Cの貯蔵が必要であるとして、ステップS12に行く。
【0034】
ステップS12では、補助空気Cを貯蔵するときであるか否かを判定する。つまり、車速センサで車両速度が予め設定した速度(例えば、30km/h)以上で、且つ、アクセル16の開度がゼロのエンジンブレーキ時であれば、補助空気Cを貯蔵するときであり、また、ブレーキ17が踏まれている制動時(ブレーキランプの点灯時)であれば、補助空気Cを貯蔵するときである。
【0035】
ステップS12の判定で、エンジンブレーキ作動時とブレーキ作動時のいずれでもない場合(NO)には、予め設定された時間(補助空気の貯蔵か否かを判定するインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS12に戻る。ステップS12の判定で、エンジンブレーキ作動時か、ブレーキ作動時かのいずれか場合(YES)には、ステップS13に行き、クラッチ機構付きコンプレッサ20のクラッチ機構20aを接続し、クラッチ機構付きコンプレッサ20を車軸13の回転制動力で駆動して、吸入空気Bを補助空気Cとして補助空気タンク21に貯蔵する。この貯蔵は予め設定された時間(補助空気の貯蔵終了を判定するインターバルに関係する時間)の間行われる。その後、ステップS14に行く。
【0036】
このステップS14では、補助空気Cの貯蔵終了か否かを、補助空気タンク21に設けたタンク圧センサ33で検出したタンク圧が予め設定した設定圧力(規定圧力)以上になったか否かで判定する。このステップS14の判定で、タンク圧が予め設定した設定圧力以上になっていなければ(NO)、補助空気Cの貯蔵は終了していないとして、更に吸入空気Bを加圧して補助空気タンク21に供給するために、ステップS12に戻る。なお、補助空気タンク21の内部の補助空気Cが必要以上の圧力になった場合は、爆発防止のために補助空気タンク21に設置してあるリリーフバルブ23が開放し補助空気Cを大気中に放出し、補助空気タンク21が安全になるように内部の圧力を調整する。
【0037】
また、ステップS14の判定で、タンク圧が予め設定した設定圧力以上になっていれば(YES)、補助空気タンク21は満タンになったと判断して、ステップS15に行く。このステップS15では、クラッチ機構付きコンプレッサ20のクラッチ機構20aを開放して断絶し、クラッチ機構付きコンプレッサ20を車軸13の回転とは切り離し、クラッチ機構付きコンプレッサ20の稼動を止めて、吸入空気Bの補助空気タンク21への供給を終了する。なお、クラッチ機構付きコンプレッサ20を停止した場合には、逆止弁24により、補助空気タンク21から貯蔵された補助空気Cが逆流することを防止される。
【0038】
その後、ステップS11に戻る。なお、エンジンの停止などの場合には、割り込みが生じてリターンに入って上級の制御フローに戻り、上級の制御フローの終了と共に、この図2の制御フローも終了する。
【0039】
次に、図3を参照しながら、車両1の発進加速状態における過給補助(過給アシスト)について説明する。エンジンの運転が開始されると、図3の制御フローが上位の制御フローから呼ばれてスタートし、ステップS21で、車両1の車軸13に設置した荷重計34からの検出信号により、車両1の積車状態を判定する。ステップS22で、この判定を基に車両発進時に必要な必要発進トルクと必要過給圧(ブースト圧)を算出し、ステップS23で、吸気通路3に供給する補助空気Cの圧力が必要過給圧になるように補助空気圧調整弁26を調整する。この必要過給圧に関係する必要発進トルクと車両重量の関係を図4に示す。
【0040】
次に、ステップS24で、過給補助の開始か、否かを、つまり、車両1が発進状態にあるか否かを、車速センサやアクセル16の踏み込み量(アクセルON)などから判定する。車両1が発進状態にあり、過給補助が必要である(YES)と判定されると、ステップS25で、補助空気調整弁26を開弁し、吸気調整弁27を閉弁する。これにより、補助空気タンク21に加圧して貯蔵してある補助空気Cを吸気通路3に供給し、過給補助を行う。また、ステップS24で、過給補助の開始でない(NO)の場合には、ステップS21に戻る。
【0041】
ステップS25の過給補助を所定の時間(ステップS26の過給補助の終了の判定のインターバルに関係する時間)の間行った後、ステップS26に行き、過給補助の終了か否かを判定する。この判定は、補助空気タンク21の内部の圧力が低くなったことをタンク圧センサ33又は吸気圧センサ31で検出したり、ターボチャージャ6のタービン6bの入口圧が十分に高くなり、ターボチャージャ6による過給が十分に可能な状態になったことを排気圧センサ32で検出したりした場合には、過給補助の終了と判定し、その他の場合には過給補助の継続と判定する。
【0042】
ステップS26で、過給補助の終了(YES)と判定された時には、ステップS27に行き、補助空気調整弁26を閉弁し、吸気調整弁27を開弁し、過給補助を終了する。つまり、補助空気調整弁26と吸気調整弁27を切り替えて、エンジン本体2の排気系に取り付けられたタービン6bを駆動して、コンプレッサ6aで過給を行う。また、過給補助の終了でない(NO)と判定された時には、ステップS25に戻り、過給補助を継続する。
【0043】
ステップS27の過給補助の終了操作が終了すると、ステップS21に戻り、ステップS21〜ステップS23で、補助空気圧調整弁28を制御しながら、次の過給補助の開始を待つ。また、エンジンの停止などにより、割り込みが生じてリターンに入り、上級の制御フローに戻り、上級の制御フローの終了と共に、この図3の制御フローも終了する。
【0044】
上記の制御方法においては、エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方において、クラッチ機構付きコンプレッサ20のクラッチ機構20aを接続にしてコンプレッサ20を稼働して補助空気タンク21に吸入空気Bを補助空気Cとして貯蔵し、車両1の発進時においては、補助空気タンク21から補助空気Cを吸気通路3に導入する制御を行う。
【0045】
これにより、車軸13等に取り付けられたクラッチ機構付きコンプレッサ20を利用して吸入空気を圧縮し、この吸入空気Bを補助空気Cとして高圧のまま補助空気タンク21に貯蔵して、車両のゼロ発進時等で低速トルクが必要な状態の時に、内燃機関の吸気通路3に過給補助でこの補助空気Cを強制的に供給することができる。
【0046】
そして、その後、車両1がエンジンブレーキ使用状態、若しくは制動ブレーキ使用状態になった時に、補助空気タンク21内に車軸13に接続したクラッチ機構付きコンプレッサ20により吸入空気Bを加圧して供給する。これを繰り返す。
【0047】
上記の構成によれば、補助空気タンク21に吸入空気Bを補助空気Cとして貯蔵するための加圧は、車軸13に取り付けられたクラッチ機構20aを持つクラッチ機構付きコンプレッサ20を使用して、エンジンブレーキ使用時、または制動ブレーキ使用時となるため、基本的に制動エネルギーを利用して吸入空気Bを補助空気タンク21に加圧して貯蔵することができる。これにより、機械式の過給装置(スーパーチャージャ)とは異なり、エンジン側において駆動損失が増大しない。
【0048】
また、過給する補助空気Cを予め補助空気タンク21に貯蔵しておき、アクセル16のオンの信号による調整弁26、27の切換え操作等で補助空気Cの過給を行うため、ターボチャージャのように過給時時間遅れ(タイムラグ)が発生せず、発進トルクも増加できるので、車両1のゼロ発進を迅速に行うことができる。
【0049】
更に、荷重計34を車軸13に設置し、車両1の重量の状態を監視することにより、最適となる発進トルクを検知し、必要なだけの補助空気Cをエンジン側に供給することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の内燃機関を搭載した車両及びその制御方法よれば、車軸に取り付けられたコンプレッサを使用して、制動エネルギーを利用して補助空気を補助空気タンクに加圧して貯蔵するので、機械式の過給装置のようなエンジン側における駆動損失が増大せず、また、この補助空気を用いて車両発進時に過給補助を行うので、ターボチャージャのような過給時の時間遅れが無くなり、ゼロ発進を迅速に行うことができるようになるので、トラックやバス等の内燃機関を搭載した車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 エンジン本体
3 吸気通路
6 ターボチャージャ
6a コンプレッサ
6b タービン
9 車輪(タイヤ)
13 車軸
15 制御装置
16 アクセル
17 ブレーキ
20 クラッチ機構付きのコンプレッサ
21 補助空気タンク
22 補助空気貯蔵用配管
23 リリーフバルブ
24 逆止弁
25 補助空気導入用配管
26 補助空気圧調整弁
27 吸気調整弁(流路切換機構)
28 補助空気調整弁(流路切換機構)
31 吸気圧(ブースト)センサ
32 排気圧(排圧)センサ
33 タンク圧センサ
34 荷重計(ロードセル)
A 吸気
B 吸入空気
C 補助空気
G 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を搭載した車両において、
該車両の車軸にクラッチ機構を介して接続されたコンプレッサと、該コンプレッサで加圧された空気を貯蔵する補助空気タンクと、前記コンプレッサと前記補助空気タンクとを接続する補助空気貯蔵用配管を備えると共に、
前記補助空気タンクから貯蔵された空気を内燃機関の吸気通路に導入するための補助空気導入用配管と、前記補助空気タンクから前記吸気通路に導入する空気の圧力を調整する補助空気圧調整弁と、前記吸気通路に導入する空気を外気と前記貯蔵された空気のいずれか一方に切り換える流路切換機構と、前記クラッチ機構と前記流路切換機構を制御する制御装置を備えて構成され、
前記制御装置が、エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方において、前記クラッチ機構を接続にして前記コンプレッサを稼働して空気を前記補助空気タンクに貯蔵し、車両の発進時においては、前記補助空気タンクから貯蔵した空気を前記吸気通路に導入する制御を行うことを特徴とする内燃機関を搭載した車両。
【請求項2】
車両の積車状態を検知する荷重計を各車軸に設けると共に、前記制御装置が、前記荷重計で検出した積車状態によって車両の発進時に必要な過給圧を算出し、該算出された過給圧になるように、前記補助空気圧調整弁を調整する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関を搭載した車両。
【請求項3】
車両の車軸にクラッチ機構を介して接続されたコンプレッサと、該コンプレッサで加圧された空気を貯蔵する補助空気タンクと、前記コンプレッサと前記補助空気タンクとを接続する補助空気貯蔵用配管を備えると共に、前記補助空気タンクから貯蔵された空気を内燃機関の吸気通路に導入するための補助空気導入用配管と、前記補助空気タンクから前記吸気通路に導入する空気の圧力を調整する補助空気圧調整弁と、前記吸気通路に導入する空気を外気と前記貯蔵された補助空気のいずれか一方に切り換える流路切換機構と、前記クラッチ機構と前記流路切換機構を制御する制御装置を備えて構成された内燃機関を搭載した車両の制御方法において、
エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方において、前記クラッチ機構を接続にして前記コンプレッサを稼働して前記補助空気タンクに空気を貯蔵し、車両の発進時においては、前記補助空気タンクから貯蔵された空気を前記吸気通路に導入することを特徴とする内燃機関を搭載した車両の制御方法。
【請求項4】
各車軸に設けた本車両の積車状態を検知する荷重計で検出した積車状態によって車両の発進時の必要な過給圧を算出し、該算出された過給圧になるように、前記補助空気圧調整弁を調整することを特徴とする請求項3記載の内燃機関を搭載した車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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