説明

内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ及びアクチュエータオイル噴射制御装置

【課題】内燃機関のシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して洗浄や潤滑のためのオイル噴射を可能とする構成の実現。
【解決手段】内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ2のハウジング8は内部に供給されているオイルをハウジング8外部に設けられた位置センサ32へ噴射するオイル噴射孔34を設けている。このため特別に油路を形成することなく位置センサ32に対して洗浄用のオイル噴射が可能となる。オイル噴射のためのオイル昇圧はLow端学習処理時にサンシャフト18の駆動によりリング状ストッパ18eを当接面8e側へ所定速度で軸方向移動させることで発生できる。このためシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された位置センサ32に対して洗浄のためのオイル噴射が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からオイルが供給されるハウジング内部に出力シャフト駆動機構を配置し、この出力シャフト駆動機構により軸方向に駆動される出力シャフトの一端をハウジング外部に突出させ、この一端に接続された可変動弁機構用制御軸を駆動する内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに関する。更にこの内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータを利用したアクチュエータオイル噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気バルブ作用角やリフト量を連続的に可変とする可変動弁機構が知られ、このようなバルブ作用角やバルブリフト量を調節する制御軸を駆動するためのアクチュエータが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特に特許文献1では、高精度な制御を可能とするために、アクチュエータにより駆動される制御軸が指示通りの軸方向位置に移動しているか否かを、ホール素子などの位置センサからの出力により判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−197766号公報(第7〜8頁、図1〜3)
【特許文献2】特開2010−121654号公報(第8〜10頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし制御軸の位置を検出している位置センサは、アクチュエータの内部に配置されるものではなく、内燃機関のシリンダヘッド(カムキャリアなどの付属部材を含む)上に取り付けられている。このため異物が付着することにより、検出精度を低下させるおそれがある。
【0006】
異物の影響を除去するためには、繰り返し位置センサをオイル噴射により洗浄することが考えられる。しかしシリンダヘッドには既に各種の潤滑や洗浄のための油路が形成されており、更に位置センサにオイル噴射するような油路をシリンダヘッドに形成することは困難である。
【0007】
このようなことは位置センサに限らず、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対しても洗浄や潤滑のために新たにオイル噴射用の油路を形成することは困難である。
本発明は、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して洗浄や潤滑のためのオイル噴射を可能とする構成の実現を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータは、外部からオイルが供給されるハウジング内部に出力シャフト駆動機構を配置し、この出力シャフト駆動機構により軸方向に駆動される出力シャフトの一端をハウジング外部に突出させ、この一端に接続された可変動弁機構用制御軸を駆動する内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータであって、ハウジング内部から外部に通じるオイル排出用孔は、ハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射するオイル噴射孔を兼用していることを特徴とする。
【0009】
内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータは、外部から潤滑のためにオイルがハウジング内部に供給されている。このオイルをハウジング外部に排出するためのオイル排出用孔を、ハウジング外部に設けられた他の機構へオイルを噴射するオイル噴射孔として兼用している。
【0010】
このことによりシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して洗浄や潤滑のためのオイル噴射が可能となる。
請求項2に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項1に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイルの噴射は、ハウジング内部で、前記出力シャフトが軸方向に駆動された場合に生じるオイル昇圧によりなされることを特徴とする。
【0011】
内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータのハウジング内部では出力シャフトが軸方向に駆動される。このことによりハウジング外部にて出力シャフトに接続された可変動弁機構用制御軸が駆動されることになる。
【0012】
このように出力シャフトはハウジング内部に供給されたオイル中で軸方向に移動することから、その移動によってハウジング内部のオイルに作用して、ハウジング内部にて全体的あるいは部分的にオイル昇圧を生じさせることができる。
【0013】
このオイル昇圧を利用してオイル排出用孔からオイルを噴射させることが可能となる。
請求項3に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項2に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフトにはハウジング内部にて外周にリング状ストッパが設けられ、このリング状ストッパが、前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面の近傍に存在する状態で前記出力シャフトが前記オイル排出用孔側に駆動された場合に前記オイル昇圧が生じることを特徴とする。
【0014】
特に出力シャフトに上述したリング状ストッパが設けられている場合には、そのリング状ストッパが、オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面の近傍に存在すると、この位置で出力シャフトがオイル排出用孔側に駆動されることにより、オイル排出用孔の位置でオイル昇圧できる。このオイル昇圧によりオイル排出用孔からオイル噴射できる。
【0015】
請求項4に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項3に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイル排出用孔は、前記ハウジング内壁面のうちで前記リング状ストッパが当接する領域に形成されていることを特徴とする。
【0016】
このようにオイル排出用孔に対してリング状ストッパが当接するような構成である場合には、特に昇圧したオイルがオイル排出用孔に集中しやすいので、有効に昇圧したオイルを利用してオイル排出用孔からオイルを噴射させることができる。
【0017】
請求項5に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項3又は4に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記リング状ストッパが前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面の近傍に存在する場合に、軸方向に移動する前記リング状ストッパの外周縁部に対して摺動可能に接触することにより、前記オイル排出用孔を含む前記ハウジング内壁面と前記リング状ストッパとの間の空間を密閉状態にするシリンダ周壁面が、ハウジング内部に形成されていることを特徴とする。
【0018】
特に上述したシリンダ周壁面がシリンダ内部に形成されている場合には、ハウジング内壁面の近傍ではリング状ストッパがオイルに圧力をかけても密閉状態であるために圧力が逃げない。このことから、特にオイル昇圧の程度を高くすることができる。したがって出力シャフトの移動速度を高くしなくてもオイル排出用孔からのオイル噴射も十分に強いものにできる。
【0019】
請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項2に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイルの噴射は、ハウジング内部で、前記出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合に生じるオイル昇圧によりなされることを特徴とする。
【0020】
出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合には、ハウジング内部の容積が小さくなることから、自ずとハウジング内部のオイルは昇圧することになる。このオイル昇圧により、オイル排出用孔からオイルを噴射させることができる。
【0021】
請求項7に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフトにはハウジング外部にて前記可変動弁機構用制御軸に接続するための制御軸接続部が設けられ、この制御軸接続部には、前記オイル排出用孔からのオイル噴射方向を、ハウジング外部に設けられた他の機構へ誘導する誘導部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
尚、出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合には、上述した制御軸接続部はハウジングに外部から近づき、このことによりオイル排出用孔を覆うようになる。
したがって制御軸接続部に、上述した誘導部を設けることで、確実に、オイル排出用孔から噴射されるオイルを、ハウジング外部に設けられた他の機構に対して供給することができる。
【0023】
請求項8に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項7に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記制御軸接続部は、前記出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合に前記オイル排出用孔にハウジング外部から重なると共に、前記誘導部は、前記オイル排出用孔に前記制御軸接続部が重なった状態で、前記オイル排出用孔に対して入口が位置すると共に出口がハウジング外部に設けられた他の機構へ向けられる誘導孔として形成されていることを特徴とする。
【0024】
特にオイル排出用孔に制御軸接続部が重なるような場合には、上述したごとくに誘導孔を形成することで、この誘導孔を介して確実に他の機構に対してオイルを供給することができる。
【0025】
請求項9に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイル排出用孔は、ハウジング内部の径よりもハウジング外部の径が小さくされていることを特徴とする。
【0026】
このようにオイル排出用孔は、ハウジングの外側の径を小さくすることで、より強くオイルを噴射でき、各種構成に対する洗浄や潤滑の効果を高めることができる。
請求項10に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記他の機構は、前記可変動弁機構用制御軸の軸方向位置を検出する軸方向位置センサであることを特徴とする。
【0027】
ハウジング外部に設けられた他の機構が、可変動弁機構用制御軸の軸方向位置を検出する軸方向位置センサである場合には、特別にシリンダヘッドに油路を設けなくてもその洗浄が可能となり、高精度な位置検出が維持できる。
【0028】
請求項11に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータでは、請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフト駆動機構は、ナットの内部空間に、複数のプラネタリシャフトを介して前記出力シャフトとしてのサンシャフトを配置して、前記ナット、前記プラネタリシャフト及び前記サンシャフトの間にネジの噛み合い機構を形成し、このネジの噛み合い機構における差動により、前記ナットの回転を前記出力シャフトの軸方向移動に変換して前記可変動弁機構用制御軸を駆動する遊星差動ネジ型回転直動変換機構であることを特徴とする。
【0029】
出力シャフト駆動機構としては、上述した遊星差動ネジ型回転直動変換機構を挙げることができる。このような構成では、サンシャフトが出力シャフトに相当し、軸方向に駆動されるので、前述したごとくの作用及び効果を生じさせることができる。
【0030】
請求項12に記載のアクチュエータオイル噴射制御装置は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、所定タイミングで、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動することで、オイル昇圧を生じさせて前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0031】
このように請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータを用いて、噴射制御手段が、所定タイミングで出力シャフトを駆動することでハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する。このことで、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して、洗浄や潤滑のためのオイル噴射ができる。
【0032】
請求項13に記載のアクチュエータオイル噴射制御装置は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、前記リング状ストッパを前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面に当接することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0033】
このように請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータを用いて、噴射制御手段が、出力シャフトの軸方向位置を学習するタイミングで、出力シャフトを駆動してハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する。このことで、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して、洗浄や潤滑のためのオイル噴射ができる。
【0034】
請求項14に記載のアクチュエータオイル噴射制御装置は、請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、前記出力シャフトをハウジング内部方向の限界位置まで駆動することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0035】
このように請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータを用いて、噴射制御手段が出力シャフトの軸方向位置を学習するタイミングで出力シャフトを駆動してハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する。このことで、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して、洗浄や潤滑のためのオイル噴射ができる。
【0036】
請求項15に記載のアクチュエータオイル噴射制御装置は、請求項7又は8に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、前記制御軸接続部を前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング外壁面に当接することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔から前記誘導部を介してハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0037】
このように請求項7又は8に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータを用いて、噴射制御手段が出力シャフトの軸方向位置を学習するタイミングで出力シャフトを駆動することで誘導部を介してハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する。このことでシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された各種構成に対して、洗浄や潤滑のためのオイル噴射ができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1のアクチュエータの断面構成と配置状態の説明図。
【図2】実施の形態1のアクチュエータの先端側周辺の構成説明図。
【図3】実施の形態1のECUが実行するLow端学習処理のフローチャート。
【図4】実施の形態2のアクチュエータの先端側周辺の構成説明図。
【図5】実施の形態2のECUが実行するHigh端学習処理のフローチャート。
【図6】(a),(b)実施の形態3のアクチュエータの先端側周辺の構成と動作の説明図。
【図7】(a),(b)実施の形態4のアクチュエータの先端側周辺の構成と動作の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は、上述した発明が適用された内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ(以下「アクチュエータ」と称する)2の断面構成及びその配置状態を表している。このアクチュエータ2は、車載用の内燃機関に適用されているものであり、カムキャリアなどの付属部材を含むシリンダヘッドの外面に取り付けられている。ここではカムキャリア4に取り付けられているものとして説明する。
【0040】
アクチュエータ2は、シリンダヘッド上に設けられている可変動弁機構を駆動するために、可変動弁機構用制御軸(以下「制御軸」と称する)6をその軸方向に駆動するものである。
【0041】
アクチュエータ2は、ハウジング8と、このハウジング8の背面側を閉塞するように配置された制御部10とを主要な外郭構成としている。
ハウジング8には、内部にベアリング12が取り付けられ、このベアリング12を介して、ハウジング8内の中心位置には、遊星差動ネジ型回転直動変換機構14が配置されている。遊星差動ネジ型回転直動変換機構14は、円筒状のナット16、ナット16の中心には位置されたサンシャフト18、及びナット16とサンシャフト18との間に配置された複数のプラネタリシャフト20を備えている。ナット16とプラネタリシャフト20とはギヤ16a,16b,20a,20bとネジ16c,20cとでそれぞれ噛み合い、同様にプラネタリシャフト20とサンシャフト18との間についてもギヤ20a,20b,18a,18bとネジ20c,18cとでそれぞれ噛み合っている。
【0042】
ナット16の後部側にはロータ22が固定されており、更にこのロータ22の後端には回転センサ24用のマグネット環状配列体24aが取り付けられている。そして制御部10側には、マグネット環状配列体24aに対して軸方向に対向させてホール素子24bが配置されており、マグネット環状配列体24aと共に回転センサ24を構成している。
【0043】
ハウジング8内には、遊星差動ネジ型回転直動変換機構14側のロータ22の外周に対向させてステータ26が配置されている。ロータ22とステータ26とにより電動モータが構成され、制御部10によりステータ26が電磁駆動されることでロータ22に回転駆動力が生じる。このことによりベアリング12により回転可能に支持されているナット16は自身の軸回りに回転する。このナット16の回転により、ナット16とサンシャフト18との間に存在するプラネタリシャフト20は、自転しつつサンシャフト18の周りを公転する。
【0044】
サンシャフト18は自身のスプライン18dとハウジング8の先端開口部に形成されているスプライン8aとにより軸周りの回転が阻止されている。このためプラネタリシャフト20の自転と公転とにより生じるネジ20c,18c間の差動により、サンシャフト18は軸方向移動を行うことになる。
【0045】
このサンシャフト18の軸方向移動に連動して、サンシャフト18の先端部に、制御軸接続部28を介して連結されている可変動弁機構の制御軸6が、内燃機関のシリンダヘッド上にて軸方向に移動する。この移動により内燃機関の可変動弁機構が機能して、内燃機関の動弁系、ここでは各気筒に設けられた吸気バルブのバルブ作用角(あるいはバルブリフト量)が連続的に調節される。
【0046】
ナット16の外周面とハウジング8の内周面との間には、ベアリング12よりも前方(図示左側)にオイルシール29が配置されている。オイルシール29よりも前方側へは、油路8bを介して内燃機関のシリンダヘッド側からオイルが供給されている。このオイル供給により遊星差動ネジ型回転直動変換機構14内の潤滑がなされる。
【0047】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構14を潤滑したオイルは、後述するオイル噴射孔34やハウジング8の他の個所に設けられた排出孔から排出される。
この内燃機関を搭載している車両には内燃機関制御用の電子制御ユニット(以下ECUと称する)30が設けられている。このECU30は、内燃機関の運転状態やドライバーの操作状態を表す各種入力信号に基づいて、吸気バルブに対して要求されるバルブ作用角を算出し、これに対応するナット16の目標回転量を算出する。そしてECU30は、この目標回転量を指示する制御信号を、アクチュエータ2の制御部10に出力する。
【0048】
制御部10ではECU30から指令される目標回転量を実現するため、ステータ26への通電制御によりナット16を回転させる。このことにより内燃機関に要求される吸気バルブのバルブ作用角が実現される。
【0049】
制御部10からはECU30に対して回転センサ24にて検出された回転信号に基づいて演算したナット16の回転状態を表す信号(回転量信号)が出力される。ECU30はこの回転量信号により吸気バルブにおける実際のバルブ作用角やナット16の回転位相位置を把握する。
【0050】
制御軸接続部28の近傍において、制御軸6の軸方向位置を検出する位置センサ32がシリンダヘッド側に固定された状態で設置されている。この位置センサ32は、制御軸6に固定されたターゲット32aの位置を磁気により非接触で検出して制御軸位置信号をECU30に出力する。
【0051】
更に、ECU30に対してはその他の各種制御のために、各種入力信号及び各種出力信号の入出力がなされている。
ここでECU30は、アクチュエータ2により調節される吸気バルブにおける基準作用角の学習を実行している。すなわちアクチュエータ2により実際に制御軸6を軸方向に移動させて吸気バルブのバルブ作用角を変化させる。そして位置センサ32からの制御軸位置信号出力(ターゲット32aが特定の位置に来たときのエッジ出力)を検出し、このエッジ出力が発生したときのバルブ作用角に基づいて、基準作用角の学習値を求めている。
【0052】
ECU30では、このようにして得られた基準作用角の学習値を用いてバルブ作用角制御やその異常判定を行う。このことにより、各種の公差に起因する個体毎のばらつきを吸収することができることから、高精度なバルブ作用角制御や異常判定を行うことができる。
【0053】
図2にアクチュエータ2の先端側周辺の構成を示す。サンシャフト18に形成されているスプライン18dが貫通しているハウジング8の先端部8cには、ハウジング8のオイル潤滑空間8dと前方外部とを連絡するオイル噴射孔34が形成されている。
【0054】
オイル噴射孔34は、オイル潤滑空間8d側(ハウジング8内)では、当接面8eに開口34aを形成している。この当接面8eは、サンシャフト18に設けられたリング状ストッパ18eが軸方向前方Fに移動した際の限界位置を設定しているハウジング内壁面である。
【0055】
オイル噴射孔34の先端側、すなわちハウジング8の外側の開口34bはオイル潤滑空間8d側の開口34aよりも径が小さくされている。そしてオイル噴射孔34の方向は位置センサ32の検出部が存在するその下端部32bと検出対象のターゲット32aとに向けられている。このオイル噴射孔34は、通常時は油路8bからオイル潤滑空間8d内に供給されるオイルをシリンダヘッド上に排出するオイル排出用孔として機能している。
【0056】
アクチュエータ2を駆動することによりサンシャフト18を軸方向前方Fへ移動させると、最終的にリング状ストッパ18eはハウジング8内部の当接面8eに当接して、サンシャフト18は軸方向前方Fでの限界位置に到達する。このときサンシャフト18の回りに形成されているリング状ストッパ18eと当接面8eとの間のオイルは完全に排出される。したがって、図2に実線の矢線にて示したごとく、当接面8e近傍の破線の位置から当接面8eへ向けてリング状ストッパ18eを或る程度以上の速度で移動させると、リング状ストッパ18eと当接面8eとの間のオイルは昇圧し、オイル噴射孔34を介してハウジング8外部へ噴出する。特にオイル噴射孔34は先端側の開口34bが絞られていることから、高速なオイル噴射となり、オイルは位置センサ32の下端部32bとターゲット32aに強く吹き付けられる。
〈作用〉次に本実施の形態の作用について、ECU30が実行するLow端学習処理(図3)のフローチャートに基づいて説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される処理である。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0057】
本処理が開始されると、まず、Low端学習タイミングか否かが判定される(S102)。ここでLow端とは、サンシャフト18の軸方向位置のうちで、そのリング状ストッパ18eがハウジング8の当接面8eに当接した軸方向位置、すなわち最も吸気バルブの作用角が小さくなる軸方向限界位置を意味している。そしてLow端学習タイミングとは、内燃機関の燃料カット時などで、内燃機関運転に影響を与えない状態にて吸気バルブの作用角を最小にできるタイミングである。
【0058】
ここでLow端学習タイミングではない場合には(S102でNO)、このまま本処理を出る。以後、Low端学習タイミングではない状態が継続する限り、ステップS102でNOと判定される状態が継続する。
【0059】
燃料カット制御などが実行されることにより、Low端学習タイミングとなると(S102でYES)、次に今回のLow端学習タイミングでは学習が未完了か否かが判定される(S104)。未完了であるとすると(S104でYES)、次にナット16を回転させることによりサンシャフト18を、図1,2に示す軸方向前方F(Low端側)へ移動させる(S106)。この軸方向移動は予め設定した所定速度でサンシャフト18が軸方向移動するようにナット16の回転速度が制御される。すなわち、サンシャフト18の軸方向移動により、リング状ストッパ18eと当接面8eとの間のオイルが昇圧するが、このオイル昇圧により、オイル噴射孔34から位置センサ32の下端部32bやターゲット32aに対して十分にオイルが噴射されるように、前記所定速度が設定されている。
【0060】
次にサンシャフト18がLow端に到達したか否かが判定される(S108)。このLow端到達は、リング状ストッパ18eが当接面8eに当接して、それ以上、軸方向前方F側へ移動できなくなったことを検出するものであり、例えばステータ26に通電するモータ電流が当接により急激に上昇する現象により判定できる。
【0061】
Low端に到達していなければ(S108でNO)、このまま本処理を出る。以後、Low端に到達するまでは、ステップS108にてNOと判定される。このことによりサンシャフト18をLow端へ移動する処理、すなわちリング状ストッパ18eを当接面8eに所定速度で近づける処理(S106)が継続する。このためリング状ストッパ18eと当接面8eとの間のオイル潤滑空間8dではオイルの高圧状態が継続して、オイル噴射孔34から位置センサ32の下端部32bやターゲット32aへのオイル噴射が継続する。
【0062】
そしてステータ26に通電するモータ電流が急激に上昇することによりリング状ストッパ18eが当接面8eに当接したことが判明すると、Low端到達であることから(S108でYES)、Low端へのサンシャフト18の軸方向移動を停止する(S110)。そして回転センサ24により検出されている回転量をLow端学習値として記憶する(S112)。こうして本処理を出る。このことによりオイル噴射孔34からのオイル噴射は停止する。
【0063】
このようにLow端学習が完了したことで、次の処理周期では、Low端学習タイミングであると判定されても(S102でYES)、今回のLow端学習タイミングでは学習未完了ではなくなったことから(S104でNO)、このまま本処理を出る。したがって次の新たな学習タイミングが発生するまでは、図3の処理では実質的な処理は行われない。
〈請求項との関係〉上述した構成において、遊星差動ネジ型回転直動変換機構14が出力シャフト駆動機構に相当する。アクチュエータ2とECU30とがアクチュエータオイル噴射制御装置に相当し、ECU30が実行するLow端学習処理(図3)のステップS106が噴射制御手段としての処理に相当する。
〈効果〉(1)アクチュエータ2には、外部からハウジング8内部に潤滑のために供給されているオイルを、ハウジング8外部に排出するためのオイル排出用孔が設けられているが、このオイル排出用孔の1つを、ハウジング8外部に設けられた他の機構、ここでは位置センサ32へオイルを噴射するオイル噴射孔34としている。
【0064】
このことによりシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成、ここでは位置センサ32に対して、付着した鉄粉などを洗浄するためのオイル噴射が可能となる。
【0065】
すなわちサンシャフト18にはリング状ストッパ18eが設けられて、そのリング状ストッパ18eが、オイル噴射孔34が設けられている側の当接面8eの近傍で、サンシャフト18の駆動により当接面8e側に軸方向移動させる。このことにより、オイル噴射孔34の位置でオイルを昇圧でき、このオイル昇圧を利用してオイル噴射孔34からオイルを噴射させることができる。
【0066】
こうして位置センサ32による制御軸6の高精度な位置検出が維持できる。
(2)オイル噴射孔34は、ハウジング8の内側よりも外側の径を小さくしている。このことで、より強くオイルを噴射でき、位置センサ32に対する洗浄効果を高めることができる。
【0067】
(3)このようなオイル昇圧は、ECU30によりLow端学習処理(図3)の中で、リング状ストッパ18eを当接面8eに当接させる際に、サンシャフト18を所定速度で移動させる処理(S106)を実行することにより実現される。
【0068】
したがってシリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された位置センサ32に対して、洗浄のためのオイル噴射が可能となる。
【0069】
(4)オイル噴射孔34からのオイル噴射時には、当接面8e近傍のオイル潤滑空間8dで高圧オイルの流れが生じるため、ハウジング8内に付着した異物も剥がされて、オイル噴射孔34や他のオイル排出用孔から外部に排出することができる。
【0070】
[実施の形態2]
〈構成〉図4に示すごとく、本実施の形態のアクチュエータ102では、サンシャフト118に設けられているリング状ストッパ118eはオイル昇圧に利用しないので径方向のサイズは小さい。
【0071】
そして前述したLow端学習処理(図3)の代わりに図5に示すHigh端学習処理がECUにより実行される。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉本実施の形態の作用についてHigh端学習処理(図5)のフローチャートに基づいて説明する。本処理は時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0072】
本処理が開始されると、まず、High端学習タイミングか否かが判定される(S202)。ここでHigh端とは、サンシャフト118の軸方向位置のうちで、その先端に配置されて制御軸106に接続している制御軸接続部128がハウジング108の先端部108cの外壁面(請求項のハウジング外壁面に相当)に当接した軸方向位置、すなわち最も吸気バルブの作用角が大きくなる軸方向の限界位置を意味している。そしてHigh端学習タイミングとは、内燃機関の始動時などでドライバーが最大限にアクセルペダルを踏み込んだ状態であって内燃機関運転に影響を与えない状態にて吸気バルブの作用角を最大にできるタイミングである。
【0073】
ここでHigh端学習タイミングではない場合には(S202でNO)、このまま本処理を出る。以後、High端学習タイミングではない状態が継続する限り、ステップS202でNOと判定される状態が継続する。
【0074】
ドライバーが最大限にアクセルペダルを踏み込むなどの操作が実行されることにより、High端学習タイミングとなると(S202でYES)、次に今回のHigh端学習タイミングでは学習が未完了か否かが判定される(S204)。未完了であるとすると(S204でYES)、次にナット116を回転させることによりサンシャフト118を、図4に示す軸方向後方B(High端側)へ移動させる(S206)。この軸方向移動は予め設定した所定速度でサンシャフト118が軸方向移動するようにナット116の回転速度が制御される。
【0075】
すなわち、軸方向後方Bへサンシャフト118が移動する状態は、ハウジング108内の容積、特にナット116内の一定容積中におけるサンシャフト118の占める容積が大きくなることを意味する。ナット116内にはオイルが満たされているため、ナット116内でのサンシャフト118の容積割合が急激に増加すると、内部のオイルが高圧化して、オイル噴射孔134からオイルの噴射がなされることになる。したがってサンシャフト118の所定速度としては、オイル噴射孔134から位置センサ132の下端部132bやターゲット132aに十分にオイル噴射がなされるように設定する。
【0076】
次にサンシャフト118がHigh端に到達したか否かが判定される(S208)。このHigh端到達は、制御軸接続部128がハウジング108の先端部108cに当接して、それ以上、軸方向後方B側へ移動できなくなったことを検出するものであり、前述したごとくステータに通電するモータ電流が当接により急激に上昇する現象により判定できる。
【0077】
High端に到達していなければ(S208でNO)、このまま本処理を出る。以後、High端に到達するまでは、ステップS208にてNOと判定されることによりサンシャフト118をHigh端へ移動する処理、すなわちサンシャフト118を所定速度でハウジング108内に引き込む処理(S206)が継続する。このことによりオイル潤滑空間108dのオイルの高圧状態が継続して、オイル噴射孔134から位置センサ132の下端部132bやターゲット132aへのオイル噴射が継続する。
【0078】
そしてステータに通電するモータ電流が急激に上昇することにより制御軸接続部128がハウジング108の先端部108cに当接したことが判明すると、High端到達であることから(S208でYES)、High端へのサンシャフト118の軸方向移動を停止する(S210)。そして回転センサにより検出されている回転量をHigh端学習値として記憶する(S212)。こうして本処理を出る。このことによりオイル噴射孔134からのオイル噴射は停止する。
【0079】
このようにHigh端学習が完了したことで、次の処理周期では、High端学習タイミングであると判定されても(S202でYES)、今回のHigh端学習タイミングでは学習未完了ではなくなったことから(S204でNO)、このまま本処理を出る。したがって次の新たな学習タイミングが発生するまでは、図5の処理では実質的な処理は行われない。
〈請求項との関係〉上述した構成において、遊星差動ネジ型回転直動変換機構114が出力シャフト駆動機構に相当する。アクチュエータ102とECUとがアクチュエータオイル噴射制御装置に相当し、ECUが実行するHigh端学習処理(図5)のステップS206が噴射制御手段としての処理に相当する。
〈効果〉(1)オイル噴射孔134の構成については前記実施の形態1と同様であり、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、シリンダヘッド上に形成された各種構成、ここでは位置センサ132に対して洗浄のためのオイル噴射が可能となる。
【0080】
ただし、本実施の形態ではサンシャフト118がハウジング108の内部方向へ駆動された場合にハウジング108内部、特にナット116内部の容積が小さくなることに伴う、オイル昇圧によりオイル噴射孔134からオイルを噴射させている。
【0081】
したがってリング状ストッパ118eの径方向のサイズを大きくしなくても、噴射に必要なオイル昇圧が可能となる。
こうして位置センサ132による制御軸106の高精度な位置検出が維持できる。
【0082】
(2)オイル昇圧は、ECUによりHigh端学習処理(図5)の中で、サンシャフト118をハウジング108内に引き込む際に、サンシャフト118を所定速度で移動させる処理(S206)を実行することにより実現される。
【0083】
このことで、シリンダヘッドに特別に油路を形成することなく、かつ特別に噴射タイミングを設けなくても学習タイミングを利用して、シリンダヘッド上に形成された位置センサ132に対して、洗浄のためのオイル噴射が可能となる。
【0084】
(3)前記実施の形態1にて説明した(2)、(4)の効果を生じる。
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態では、High端学習時にオイル噴射することについては前記実施の形態2と同じであり、ECUにより前述したHigh端学習処理(図5)と同じ処理が実行される。
【0085】
ただし図6に示すごとく制御軸接続部228として大型のものが用いられており、このため制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cに近づくと、オイル噴射孔234に重なる。このためHigh端学習タイミングに、オイル潤滑空間208d内のオイルを昇圧しても、オイル噴射孔234からは直接、位置センサ232側へオイル噴射できない。
【0086】
このため制御軸接続部228にはオイル噴射孔234の位置に対応させて噴射オイルの誘導部が、貫通孔228aとして形成されている。
〈作用〉図5に示したHigh端学習時に、ナット216の回転によりサンシャフト218がハウジング208内部に所定速度で引き込まれると、オイル潤滑空間208dの容積が減少してオイルが昇圧し、図6の(a)に示すごとくオイル噴射孔234からオイル噴射がなされる。
【0087】
このとき、オイル噴射孔234から噴射されるオイルは、貫通孔228aに入って誘導されることで、制御軸接続部228を間にして反対側に存在する位置センサ232の下端部232b及びターゲット232aへ向かう。このことにより的確に位置センサ232の下端部232b及びターゲット232aに噴射オイルが吹き当たる。
【0088】
そしてこの状態は、図6の(b)に示すごとく制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cに当接して容積変化がなくなるまで継続する。制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cに当接した状態では貫通孔228aの入口は、オイル噴射孔234の出口に位置し、最後までオイル噴射を位置センサ232の下端部232b及びターゲット232aに誘導している。
〈請求項との関係〉上述した構成において、遊星差動ネジ型回転直動変換機構214が出力シャフト駆動機構に相当する。アクチュエータ202とECUとがアクチュエータオイル噴射制御装置に相当し、ECUが実行するHigh端学習処理(図5)のステップS206が噴射制御手段としての処理に相当する。
〈効果〉(1)制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cを覆うようなサイズである場合にも、制御軸接続部228に貫通孔228aを形成することで、オイル噴射方向を誘導して、位置センサ232の下端部232b及びターゲット232aに確実に噴射オイルを吹き当てることができる。このことにより前記実施の形態2の効果を生じさせることができる。
【0089】
(2)尚、図6に示したごとくハウジング208の先端部208cには、オイル噴射孔234以外に、もう一つオイル排出用孔235が設けられている。オイル噴射孔234からオイル噴射がなされているときに、このオイル排出用孔235からもオイルが排出される。しかし、特に図6の(b)に示すごとく、制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cに接触する直前では、制御軸接続部228によりオイル排出用孔235からのオイル排出を阻止するようになる。このことから制御軸接続部228がハウジング208の先端部208cに近づくほどオイル噴射孔234からのオイル噴射を強めることができる。
【0090】
[実施の形態4]
〈構成〉本実施の形態のアクチュエータ302では、図7に示すごとくハウジング308の内周面において先端部308c側に、リング状ストッパ318eの円筒形の外周縁部318fに摺動する径に縮径された摺動内周面308fが形成されている。
【0091】
オイル噴射孔334は当接面308eに開口し、外部の位置センサ332の下端部332b及びターゲット332aに向けて形成されている。更にこれとは別個にオイル排出用孔335が、摺動内周面308fよりも大径側の内周面に開口してオイル潤滑空間308dのオイルを排出可能としている。他の構成は前記実施の形態1と同一である。
〈作用〉図7の(a)に示すごとく、サンシャフト318が、内燃機関運転時に吸気バルブのバルブ作用角を調節する範囲においては、リング状ストッパ318eは摺動内周面308fからは軸方向に離れている。しかし前記図3にて説明したLow端学習処理時にはリング状ストッパ318eが当接面308eに当接する直前で、図7の(b)に示すごとくリング状ストッパ318eの外周縁部318fは、摺動内周面308fに全周で摺動するようになる。
【0092】
すなわち摺動内周面308fがシリンダ周壁面としての役割を果たすことにより、Low端学習処理時にリング状ストッパ318eが摺動内周面308fと当接面308eとに囲まれたオイル潤滑空間308dを密閉し、この密閉状態で更にリング状ストッパ318eは当接面308eへ向かって移動することになる。
【0093】
このため密閉されたオイル潤滑空間308d内のオイルは昇圧して、唯一の出口であるオイル噴射孔334からオイルが、位置センサ332の下端部332b及びターゲット332aに向けて噴射される。
〈請求項との関係〉上述した構成において、遊星差動ネジ型回転直動変換機構314が出力シャフト駆動機構に相当する。アクチュエータ302とECUとがアクチュエータオイル噴射制御装置に相当し、ECUが実行するLow端学習処理(図3)のステップS106が噴射制御手段としての処理に相当する。
〈効果〉(1)前記実施の形態1の(1),(3),(4)の効果を生じると共に、オイル潤滑空間308dの一部を密閉した状態で、オイルを加圧してオイル噴射孔334から噴射させているため、サンシャフト318の移動によるオイル昇圧効率が高まる。このため、サンシャフト318の移動速度を高めなくても、十分に位置センサ332の下端部332b及びターゲット332aに向けて噴射することができる。
【0094】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態1〜3において、オイル噴射孔はハウジングの内側よりも外側の径を小さくしていたが、十分にオイル昇圧が可能であったり、外部のオイル噴射対象が近くに存在したりする場合には、前記実施の形態4のごとくハウジング内側と外側との径が同一のものとしても良い。
【0095】
逆に前記実施の形態4についてもハウジングの内側よりも外側の径を小さくすることにより、更に強いオイル噴射を可能としても良い。
・前記各実施の形態でのオイル噴射は、センサを洗浄するためであったが、ハウジング外部に設けられた他の機構としては、センサ以外に各種の駆動部材が挙げることができ、この場合には潤滑油として供給しても良く、洗浄用と潤滑用とを兼ねて供給しても良い。
【0096】
・前記各実施の形態ではオイル噴射のためのサンシャフトの軸方向移動は、Low端学習処理時あるいはHigh端学習処理時を利用して実行していたが、このような学習処理時以外であっても、内燃機関運転に影響を生じない範囲で、オイル噴射のためのサンシャフトの軸方向移動を行っても良い。
【符号の説明】
【0097】
2…アクチュエータ、4…カムキャリア、6…制御軸、8…ハウジング、8a…スプライン、8b…油路、8c…先端部、8d…オイル潤滑空間、8e…当接面、10…制御部、12…ベアリング、14…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、16…ナット、16a,16b…ギヤ、16c…ネジ、18…サンシャフト、18a,18b…ギヤ、18c…ネジ、18d…スプライン、18e…リング状ストッパ、20…プラネタリシャフト、20a,20b…ギヤ、20c…ネジ、22…ロータ、24…回転センサ、24a…マグネット環状配列体、24b…ホール素子、26…ステータ、28…制御軸接続部、29…オイルシール、30…ECU、32…位置センサ、32a…ターゲット、32b…下端部、34…オイル噴射孔、34a,34b…開口、102…アクチュエータ、106…制御軸、108…ハウジング、108c…先端部、108d…オイル潤滑空間、114…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、116…ナット、118…サンシャフト、118e…リング状ストッパ、128…制御軸接続部、132…位置センサ、132a…ターゲット、132b…下端部、134…オイル噴射孔、202…アクチュエータ、208…ハウジング、208c…先端部、208d…オイル潤滑空間、214…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、216…ナット、218…サンシャフト、228…制御軸接続部、228a…貫通孔、232…位置センサ、232a…ターゲット、232b…下端部、234…オイル噴射孔、235…オイル排出用孔、302…アクチュエータ、308…ハウジング、308c…先端部、308d…オイル潤滑空間、308e…当接面、308f…摺動内周面、314…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、318…サンシャフト、318e…リング状ストッパ、318f…外周縁部、332…位置センサ、332a…ターゲット、332b…下端部、334…オイル噴射孔、335…オイル排出用孔、B…軸方向後方、F…軸方向前方。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からオイルが供給されるハウジング内部に出力シャフト駆動機構を配置し、この出力シャフト駆動機構により軸方向に駆動される出力シャフトの一端をハウジング外部に突出させ、この一端に接続された可変動弁機構用制御軸を駆動する内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータであって、
ハウジング内部から外部に通じるオイル排出用孔は、ハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射するオイル噴射孔を兼用していることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイルの噴射は、ハウジング内部で、前記出力シャフトが軸方向に駆動された場合に生じるオイル昇圧によりなされることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフトにはハウジング内部にて外周にリング状ストッパが設けられ、このリング状ストッパが、前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面の近傍に存在する状態で前記出力シャフトが前記オイル排出用孔側に駆動された場合に前記オイル昇圧が生じることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイル排出用孔は、前記ハウジング内壁面のうちで前記リング状ストッパが当接する領域に形成されていることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記リング状ストッパが前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面の近傍に存在する場合に、軸方向に移動する前記リング状ストッパの外周縁部に対して摺動可能に接触することにより、前記オイル排出用孔を含む前記ハウジング内壁面と前記リング状ストッパとの間の空間を密閉状態にするシリンダ周壁面が、ハウジング内部に形成されていることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項6】
請求項2に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイルの噴射は、ハウジング内部で、前記出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合に生じるオイル昇圧によりなされることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフトにはハウジング外部にて前記可変動弁機構用制御軸に接続するための制御軸接続部が設けられ、この制御軸接続部には、前記オイル排出用孔からのオイル噴射方向を、ハウジング外部に設けられた他の機構へ誘導する誘導部が設けられていることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記制御軸接続部は、前記出力シャフトがハウジング内部方向へ駆動された場合に前記オイル排出用孔にハウジング外部から重なると共に、
前記誘導部は、前記オイル排出用孔に前記制御軸接続部が重なった状態で、前記オイル排出用孔に対して入口が位置すると共に出口がハウジング外部に設けられた他の機構へ向けられる誘導孔として形成されていることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記オイル排出用孔は、ハウジング内部の径よりもハウジング外部の径が小さくされていることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記他の機構は、前記可変動弁機構用制御軸の軸方向位置を検出する軸方向位置センサであることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータにおいて、前記出力シャフト駆動機構は、ナットの内部空間に、複数のプラネタリシャフトを介して前記出力シャフトとしてのサンシャフトを配置して、前記ナット、前記プラネタリシャフト及び前記サンシャフトの間にネジの噛み合い機構を形成し、このネジの噛み合い機構における差動により、前記ナットの回転を前記出力シャフトの軸方向移動に変換して前記可変動弁機構用制御軸を駆動する遊星差動ネジ型回転直動変換機構であることを特徴とする内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、
所定タイミングで、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動することで、オイル昇圧を生じさせて前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータオイル噴射制御装置。
【請求項13】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、
前記リング状ストッパを前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング内壁面に当接することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータオイル噴射制御装置。
【請求項14】
請求項6に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、
前記出力シャフトをハウジング内部方向の限界位置まで駆動することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔からハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータオイル噴射制御装置。
【請求項15】
請求項7又は8に記載の内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータと、
前記制御軸接続部を前記オイル排出用孔が設けられている側のハウジング外壁面に当接することで前記出力シャフトの軸方向位置を学習する際に、前記内燃機関可変動弁機構駆動用アクチュエータに備えられた前記出力シャフト駆動機構により前記出力シャフトを駆動して前記オイル昇圧を生じさせることにより、前記オイル排出用孔から前記誘導部を介してハウジング外部に設けられた他の機構へハウジング内部のオイルを噴射する噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とするアクチュエータオイル噴射制御装置。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225301(P2012−225301A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95077(P2011−95077)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】