説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】金属系清浄剤やZnDTPを用いなくとも、長期間に渡って十分な清浄・分散性を有し(ロングドレイン性)、耐摩耗性にも優れた内燃機関用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油基油と、(A)下記式(1)および/または下記式(2)で示されるジスルフィド化合物と、(B)数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)数平均分子量500〜4000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素含有無灰系分散剤とを含有することを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
OOC−A−S−S−A−COOR (1)
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12 (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等に使用される内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球規模での環境規制はますます厳しくなり、自動車を取り巻く状況も、燃費規制、排出ガス規制等厳しくなる一方である。
特に、ディーゼルエンジンでは、パティキュレート・マター(PM;煤)およびNOxなどの排出ガス成分による環境汚染が問題となっており、その対策が重要な課題となっている。具体的な対策としては、自動車にディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)や排出ガス浄化触媒(酸化または還元触媒)などの排出ガス浄化装置を装着することが有効である。
一方、内燃機関用の潤滑油には、一般に金属系清浄剤が添加されている。そのため、排出ガス浄化装置としてDPFを装着した自動車のエンジンに、金属系清浄剤を添加した潤滑油を用いると、DPFに付着したPMは酸化、燃焼により取り除かれるものの、燃焼により生成した金属酸化物や、リン酸塩などによってDPFが目詰まりするという問題が生じている。それ故、金属系清浄剤の削減が望まれている。
【0003】
また、自動車の省燃費化を図るためには、自動車の軽量化、エンジンの改良等、自動車自体の改良と共にエンジンでの摩擦ロスを防ぐために潤滑油の低粘度化も有効である。しかしながら、この低粘度化はエンジン各部での摩耗の増大を引き起こす原因ともなっている。そこで、潤滑油の低粘度化に伴う摩擦損失の低減や摩耗防止の目的で各種の添加剤が添加されており、特に、ZnDTP(ZincDialkyldithiophosphateジアルキルジチオリン酸亜鉛)が有効であることが知られている。ZnDTPは、極圧性や耐摩耗性に優れ、内燃機関の潤滑油用として広く使用されている。
しかし、ZnDTPは優れた性能を示すものの、反面、それ自体が分解して酸性物質である硫酸やリン酸が生成し、潤滑油中の塩基成分と反応して塩基価低下を引き起こし、潤滑油自体の寿命を縮めている。さらに、ガソリン車などの排出ガス浄化触媒として3元触媒が使用されているが、この触媒は潤滑油中のリン分に被毒を受けることからリンを含む添加剤(例えばZnDTP)の削減が求められている。
【0004】
上述のような背景により、内燃機関用、特にディーゼルエンジン用として、金属系清浄剤やZnDTPを含まない潤滑油が必要とされている。
しかし、金属系清浄剤は、内燃機関用潤滑油の基本的性能であるロングドレイン性の観点より大幅な削減は困難であり、また、ZnDTPについても、エンジン動弁部分の耐摩耗性低下の観点より大幅な削減は困難であった。また、特定のジスルフィド化合物を耐摩耗剤として用いた潤滑油も提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−262964号公報
【特許文献2】特開2004−262965号公報
【特許文献3】特開2006−045336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで、完全に金属系清浄剤の添加を排除することは困難であった。すなわち、無灰系分散剤だけでは、必ずしもエンジン内の清浄・分散効果が十分ではなかった。また、特許文献1〜3に記載された潤滑油組成物においても、内燃機関用の潤滑油として使用する場合には、金属系清浄剤やZnDTPの使用を排除することは必ずしも容易ではなかった。
そこで本発明は、金属系清浄剤やZnDTPを用いなくとも、長期間に渡って十分な清浄・分散性を有し(ロングドレイン性)、耐摩耗性にも優れた内燃機関用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような内燃機関用潤滑油組成物を提供するものである。
[1]潤滑油基油と、(A)下記式(1)および/または下記式(2)で示されるジスルフィド化合物と、(B)数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)数平均分子量500〜4000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素含有無灰系分散剤とを含有することを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
OOC−A−S−S−A−COOR (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜30のヒドロカルビル基である。AおよびAは、それぞれ独立にCRまたはCR−CRで示される基であって、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基を示す。)
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12 (2)
(式中、R、R、R12およびR13は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜30のヒドロカルビル基、R〜R11およびR14〜R16はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜5のヒドロカルビル基を示す。)
【0008】
[2]上記[1]に記載の内燃機関用潤滑油組成物において、金属系清浄剤を実質的に含有しないことを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
[3]上記[1]または上記[2]に記載の内燃機関用潤滑油組成物において、前記(A)成分のジスルフィド化合物の含有量が組成物全量基準において、硫黄量換算で0.01〜0.5質量%であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物において、前記(B)成分がアルキルまたはアルケニルコハク酸イミド、脂肪酸アミド、アルキルまたはアルケニルベンジルアミンの少なくともいずれかであり、前記(B)成分由来の窒素分が組成物全量基準で50〜4000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物において、前記(C)成分がアルキルまたはアルケニルコハク酸イミド、脂肪酸アミド、アルキルまたはアルケニルベンジルアミンの少なくともいずれかをホウ素変性したものであり、前記(C)成分由来のホウ素分が組成物全量基準で50〜3000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の構造のジスルフィド化合物と、2種の無灰系分散剤とを併用することで、ロングドレイン性および耐摩耗性に優れた内燃機関用潤滑油組成物を提供することができる。すなわち、金属系清浄剤やZnDTPを配合しなくとも本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、実用上十分な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、潤滑油基油(以下、単に「基油」ともいう。)と、(A)ジスルフィド化合物と、(B)ホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)ホウ素含有無灰系分散剤とを含有することを特徴とする。
本組成物における基油については特に制限はなく、従来、内燃機関用潤滑油の基油として使用されている鉱油や合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の1つ以上の処理を行って精製した鉱油、あるいはワックスやGTL WAXを異性化することによって製造される鉱油等が挙げられる。
【0011】
また、合成油としては、例えば、ポリブテン、ポリオレフィン(α−オレフィン単独重合体やエチレン−α−オレフィン共重合体のような共重合体など)、各種のエステル(例えば、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステルなど)、各種のエーテル(例えば、ポリフェニルエーテルなど)、ポリグリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどが挙げられる。これらの合成油のうち、酸化安定性の向上の観点から特にポリオレフィンやポリオールエステルが好ましい。
本発明においては、基油として、上記した鉱油を1種だけ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記した合成油を1種だけ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、鉱油と合成油とを組み合わせて用いてもよい。
基油の粘度については特に制限はなく、潤滑油組成物の用途に応じて異なるが、100℃の動粘度が2〜30mm2/s、好ましくは3〜15mm2/s、より好ましくは4〜10mm2/sである。100℃における動粘度が2mm2/s以上であると蒸発損失が少なく、一方、30mm2/s以下であると、粘性抵抗による動力損失があまり大きくないので、燃費改善効果が得られる。
【0012】
また、基油としては、環分析による%CAが3以下で硫黄分の含有量が50質量ppm以下のものが好ましく用いられる。ここで、環分析による%CAとは、環分析(n−d−M)法にて算出した芳香族分の割合(百分率)を示す。また、硫黄分は、JISK2541に準拠して測定した値である。
%CAが、3以下で、硫黄分が50質量ppm以下の基油を用いると、良好な酸化安定性を有し、酸価の上昇やスラッジの生成を抑制し得ると共に、金属に対する腐食性の少ない潤滑油組成物を提供することができる。
より好ましい%CAは1以下、さらには、0.5以下であり、またより好ましい硫黄分は30質量ppm以下である。
さらに、基油の粘度指数は、70以上が好ましく、より好ましくは100以上、さらに好ましくは120以上である。この粘度指数が70以上の基油は、温度の変化による粘度変化が小さい。
【0013】
本組成物においては、良好なロングドレイン性および耐摩耗性を得るために、添加剤として(A)特定構造のジスルフィド化合物と、(B)ホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)ホウ素含有無灰系分散剤とが併用される。以下、これらの添加剤について説明する。
(A)成分:
(A)成分は、下記式(1)および/または下記式(2)で示されるジスルフィド化合物である。
OOC−A−S−S−A−COOR(1)
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−
−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12(2)
【0014】
前記した式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜30のヒドロカルビル基であり、好ましくは炭素数1〜20、さらには炭素数2〜18、特には炭素数3〜18のヒドロカルビル基が好ましい。この範囲の炭素数であると、蒸発性と極圧性および耐摩耗性のバランスに優れる。該ヒドロカルビル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい。このRおよびRは、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造上の理由から、同一であることが好ましい。
次に、AおよびAは、それぞれ独立にCRまたはCR−CRで示される基であって、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基を示す。ヒドロカルビル基としては炭素数が1〜12のもの、さらには炭素数1〜8のものが好ましい。この範囲の炭素数であると、蒸発性と極圧性および耐摩耗性のバランスに優れる。また、AおよびAはたがいに同一であってもよく、異なっていてもよいが、後述するような酸化的カップリング反応により製造する場合、単一の生成物を得るためには同一であることが好ましい。
【0015】
式(1)で示されるジスルフィド化合物は、例えば、以下に示す方法で製造することができる。具体的には、原料として、下記式(3)および/または式(4)で示されるメルカプトアルカンカルボン酸エステルを用い、酸化的カップリングを行う。
OOC−A−SH (3)
OOC−A−SH (4)
(式中、RおよびR、AおよびAは前記と同じである。)
このような製造方法によれば、トリスルフィド以上のポリスルフィド化合物の副生は、起こりにくい。なお、硫黄原子(S)が3つ以上連なるポリスルフィド化合物は、非鉄金属に対する腐食性を示すので、前記ジスルフィド化合物との合計量に基づき、30質量%以下となるように製造方法・製造条件を選択することが好ましい。この含有量が30質量%以下であると、混合物として潤滑油組成物に用いても非鉄金属に対する腐食性を十分に抑制することができる。Sが3以上のポリスルフィド化合物の含有量は、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0016】
前記したカップリング反応による具体的な生成物としては、以下のような化合物が挙げられる。
OOC−A−S−S−A−COOR
OOC−A−S−S−A−COOR
OOC−A−S−S−A−COOR
α−メルカプトカルボン酸エステルを酸化して対応するジスルフィドを製造する際に使用する酸化剤としては、メルカプタンからジスルフィドを製造するのに使用される酸化剤が使用できる。酸化剤としては酸素、過酸化水素、ハロゲン(ヨウ素、臭素)、次亜ハロゲン酸(塩)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド、ジイソプロピルスルホキシド)、酸化マンガン(IV)等が挙げられる。これらの酸化剤の中で酸素、過酸化水素、ジメチルスルホキシドが安価であり、ジスルフィドの製造が容易であることから好ましい。
【0017】
一方、前記式(2)において、R、R、R12およびR13は、それぞれ独立に炭素数1〜30のヒドロカルビル基であり、好ましくは炭素数1〜20、さらには炭素数2〜18、特には炭素数3〜18のヒドロカルビル基が好ましい。この範囲の炭素数であると、蒸発性と極圧性および耐摩耗性のバランスに優れる。該ヒドロカルビル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい。このR、R、R12およびR13は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよいが、単一の生成物を得るためには同一であることが好ましい。
次に、R〜R11およびR14〜R16はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のヒドロカルビル基である。原料の入手が容易なことから、水素原子が好ましい。
【0018】
前記した式(2)で示されるジスルフィド化合物は、例えば以下に示す2つの方法に従って製造することができる。すなわち、第一の製造方法としては、原料として、下記式(5)および/または下記式(6)で示されるメルカプトアルカンジカルボン酸ジエステルを用い、酸化的カップリングを行う方法である。
OOC−CR10−CR11(COOR)−SH (5)
12OOC−CR1415−CR16(COOR13)−SH (6)
(式中、R〜R16は前記と同じである。)
前記したカップリング反応による具体的な生成物としては、以下のような3種のジスルフィド化合物が挙げられる。
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−
−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−
−CR11(COOR)−CR10−COOR
12OOC−CR1415−CR16(COOR13)−S−S−
−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12
カップリング反応における酸化剤としては、前記式(1)のジスルフィド化合物の製造の場合と同様のものが用いられる。
【0019】
また、前記ジスルフィド化合物の第二の製造方法は、原料として、下記式(7)および/または下記式(8)で示されるメルカプトアルカンジカルボン酸を酸化カップリングし、ついで酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜30のヒドロカルビル基から成る1価のアルコールでエステル化する方法である。
HOOC−CR10−CR11(COOH)−SH (7)
HOOC−CR1415−CR16(COOH)−SH (8)
(式中、R〜R11およびR14〜R16は前記と同じである。)
前記したカップリング反応による具体的な生成物としては、以下のような3種のジスルフィド化合物が挙げられる。
HOOC−CR10−CR11(−COOH)−S−S−CR16(COOH)−CR1415−COOH
HOOC−CR10−CR11(−COOH)−S−S−CR11(COOH)−CR10−COOH
HOOC−CR1415−CR16(−COOH)−S−S−CR16(COOH)−CR1415−COOH
カップリング反応における酸化剤としては、前記の場合と同様のものが使用できる。
【0020】
酸化的カップリング反応に続いて、下記式(9)で示すアルコールによりエステル化を行う。
17−OH (9)
(式中、R17は前記R、R、R12、R13で説明した基と同じである。)
エステル化は酸触媒を使用して脱水縮合する通常の方法が使用できる。この方法により、以下のような3種のジスルフィド化合物が生成する。
17OOC−CR10−CR11(COOR17)−S−S−CR16(COOR17)−CR1415−COOR17
17OOC−CR10−CR11(COOR17)−S−S−CR11(COOR17)−CR10−COOR17
17OOC−CR1415−CR16(COOR17)−S−S−CR16(COOR17)−CR1415−COOR17
【0021】
前記式(1)で示されるジスルフィド化合物の具体例としては、ビス(メトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(エトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(n−プロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(イソプロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(n−ブトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(n−オクトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(n−ドデシルオキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(シクロプロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−ブチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−ヘキシル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−オクチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−ドデシル)ジスルフィド、2,2−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、α,α−ビス(α−メトキシカルボニルベンジル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−エトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−n−プロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−イソプロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−シクロプロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−ブチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−ヘキシル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、2,2−ビス(3−メトキシカルボニル−n−ペンチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−1−フェニルエチル)ジスルフィドなどを挙げることができる。
【0022】
前記式(2)で表されるジスルフィド化合物の具体例としては、ジチオリンゴ酸テトラメチル、ジチオリンゴ酸テトラエチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−プロピル、ジチオリンゴ酸テトラ−2−プロピル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ブチル、ジチオリンゴ酸テトラ−2−ブチル、ジチオリンゴ酸テトライソブチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−オクチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エチル)ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(3,5,5−トリメチル)ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−デシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ドデシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ヘキサデシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−オクタデシル、ジチオリンゴ酸テトラベンジル、ジチオリンゴ酸テトラ−α−(メチル)ベンジル、ジチオリンゴ酸テトラα,α−ジメチルベンジル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−メトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−ブトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−ブトキシ−ブトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−フェノキシ)エチルなどを挙げることができる。
【0023】
本組成物においては、この(A)成分のジスルフィド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この(A)成分の含有量は、耐摩耗性付与効果、排出ガスの浄化触媒に与える影響および経済性のバランスなどの観点から、組成物全量基準において、硫黄量換算で0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.01〜0.3質量%であることがより好ましい。
【0024】
(B)成分および(C)成分:
本組成物においては、前記(A)成分のジスルフィド化合物と共に、無灰系分散剤として(B)数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)数平均分子量500〜4000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素含有無灰系分散剤とを併用する。
(B)成分である数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素未含有無灰系分散剤としては、様々なものがあり、例えば、[1]アルキルまたはアルケニルコハク酸イミド、[2]アルキルまたはアルケニル脂肪酸アミド、[3]アルキルまたはアルケニルベンジルアミンなどを用いることができる。
前記[1]におけるアルケニルまたはアルキルコハク酸イミドの代表例としてはポリブテニル基またはポリイソブテニル基を有するコハク酸イミドが挙げられる。ここでいうポリブテニル基とは、1−ブテンとイソブテンの混合物あるいは高純度のイソブテンを重合させたものまたは、ポリイソブテニル基を水添した物として得られる。なお、コハク酸イミドとしては、いわゆるモノタイプのアルケニル若しくはアルキルコハク酸イミド、あるいは、いわゆるビスタイプのアルケニル若しくはアルキルコハク酸イミドのいずれでもよい。
【0025】
ポリブテニルコハク酸イミドの製造法は任意の従来の方法を採用することができる。例えば、数平均分子量500〜3000程度のポリブテンまたは塩素化ポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃程度で反応させて得られるポリブテニルコハク酸にポリアミンを反応させることで得ることができる。
ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
また、このアルケニルまたはアルキルコハク酸イミドには、これとアルキルフェノール、硫化アルキルフェノール等の芳香族化合物をマンニッヒ縮合させたアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノール誘導体も好ましく用いられる。このアルキルフェノールのアルキル基は通常炭素数3〜30のものが使用される。
【0026】
前記[2]における脂肪酸アミドは、脂肪酸とポリアミンとから得られ、脂肪酸としては、好ましくは炭素数8〜24の飽和または不飽和の直鎖若しくは分岐のカルボン酸が用いられる。また、ポリアミンについては[1]の場合と同じ物が用いられる。
さらに、前記[3]におけるアルケニルまたはアルキルベンジルアミンのアルケニルまたはアルキル基についても、上記[1]の場合と同じである。
このような、(B)成分としてのホウ素未含有無灰系分散剤は、数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有しているが、この側鎖の数平均分子量が500未満であると、基油への分散性が悪化してしまい好ましくない。一方、この側鎖の数平均分子量が3000を超えると、潤滑油組成物を調製するさいのハンドリング性が悪化するとともに、組成物の粘度が上がり過ぎて、省燃費性を損なうおそれがある。
また、(B)成分由来の窒素分は、50〜4000質量ppmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜3000質量ppmである。(B)成分由来の窒素分が50質量ppm以上であると、潤滑油組成物としたときの分散性が十分なものとなる。また、(B)成分由来の窒素分が4000質量ppm以下であると、組成物の酸化安定性が維持されるとともに、粘度特性も維持されて、省燃費性を実現し、さらに製造コストを抑えることもできるので好ましい。
【0027】
次に、(C)ホウ素含有無灰系分散剤としては、前記した[1]アルキルまたはアルケニルコハク酸イミドをホウ素化合物で処理したもの、前記した[2]脂肪酸アミドをホウ素化合物で処理したもの、前記した[3]アルキルまたはアルケニルベンジルアミンをホウ素化合物で処理したものなどを用いることができる。
例えば、ホウ素含有コハク酸イミドの製造方法については、従来の方法を採用することができる。具体的には、アルコール類、ヘキサン、キシレンなどの有機溶媒に前記ポリアミンとポリブテニルコハク酸(無水物)とホウ酸などのホウ素化合物を加え、適当な条件で加熱することで得ることができる。
なお、前記[1]〜[3]に用いられるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸無水物、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸エステル、ホウ酸アミド、酸化ホウ素などが挙げられる。中でも、ホウ酸が特に好ましい。また、上記ホウ素含有無灰系分散剤の中では、特に、アルケニルまたはアルキルコハク酸イミドをホウ素化合物で処理したホウ素含有コハク酸イミドが好ましい。
【0028】
このような、(C)成分としてのホウ素含有無灰系分散剤は、数平均分子量500〜4000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有しているが、この側鎖の数平均分子量が500未満であると、基油への分散性が悪化してしまい好ましくない。一方、この側鎖の数平均分子量が4000を超えると、分散剤の粘度が高くなり過ぎ、潤滑油組成物として省燃費性が悪化する。さらに、潤滑油組成物を調製するさいのハンドリング性も悪化する。
また、(C)成分由来のホウ素分は、50〜3000質量ppmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜2500質量ppmである。(C)成分由来のホウ素が50質量ppm以上であると、潤滑油組成物としたときの耐熱性が十分なものとなる。また、(C)成分由来のホウ素分が3000質量ppm以下であると、ホウ素部分の加水分解を抑えることができ、さらに製造コストを抑えることもできるので好ましい。
【0029】
本組成物においては、潤滑油基油に、(A)特定のジスルフィド化合物と、(B)特定のホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)特定のホウ素含有無灰系分散剤とを必須成分として配合することにより、耐摩耗性およびロングドレイン性に優れるという顕著な効果を奏する。このような本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、特に、ディーゼルエンジン用の潤滑油として好適に使用することができる。
【0030】
本組成物においては、さらに、酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤を好適に使用することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知のフェノール系酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4,6
−トリ−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール;2,6−ジ−tert−アミル−4−メチルフェノール;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好ましい例として挙げることができる。
【0031】
一方、アミン系酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知のアミン系酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このアミン系酸化防止剤としては、例えばジフェニルアミン系のもの、具体的にはジフェニルアミンやモノオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;4,4’−ジブチルジフェニルアミン;4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン;4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;4,4’−ジノニルジフェニルアミン;テトラブチルジフェニルアミン;テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン:テトラノニルジフェニルアミンなどの炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンなど、及びナフチルアミン系のもの、具体的にはα−ナフチルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン、さらにはブチルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン;オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどの炭素数3〜20のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミンなどが挙げられる。これらの中で、ナフチルアミン系よりジフェニルアミン系の方が、効果の点から好ましく、特に炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン、とりわけ4,4’−ジ(C3〜C20アルキル)ジフェニルアミンが好適である。
【0032】
本組成物においては、前記したフェノール系酸化防止剤を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記したアミン系酸化防止剤を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、フェノール系酸化防止剤1種以上とアミン系酸化防止剤1種以上とを組み合わせて用いることがより好ましい。
酸化防止剤の含有量は、効果及び経済性のバランスなどの点から、組成物全量に基づき、好ましくは0.05〜7質量%、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲で選定される。
【0033】
本組成物においては、他に各種の添加剤、例えば、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、金属腐食防止剤、消泡剤、界面活性剤などを適宜含有させることができる。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.5〜15質量%程度であり、好ましくは1〜10質量%である。
【0034】
流動点降下剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、例えば、質量平均分子量が5,000〜50,000程度のポリメタクリレートが好ましく用いられる。これらは、組成物全量基準で、0.1〜5質量%の割合で使用される。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.01〜1質量%程度であり、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.01〜1質量%程度であり、好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0035】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。消泡剤は、消泡効果及び経済性のバランスなどの点から、組成物全量に基づき、0.005〜0.1質量%程度含有させることが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
本組成物においては、リン含有量は0.1質量%以下であることが好ましい。リン含有量が0.1質量%以下であると、排出ガスを浄化する触媒の性能低下を抑えることができる。好ましいリン含有量は0.08質量%以下で、より好ましくは0.05質量%以下である。リン含有量は、例えば、JPI−5S−38−92に準拠して測定すればよい。
また、硫酸灰分は1質量%以下であることが好ましい。硫酸灰分が1質量%以下であると、前記と同様に、排出ガスを浄化する触媒の性能低下を抑えることができる。また、ディーゼルエンジンにおいては、灰分の蓄積によるDPFの目詰まりが抑制され、DPFの寿命が長くなる。より好ましい硫酸灰分は0.8質量%以下で、さらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、この硫酸灰分とは、試料を燃やして生じた炭化残留物に硫酸を加えて加熱し、恒量にした灰分をいい、潤滑油組成物中の金属系添加剤の大略の量を知るために用いられる。硫酸灰分量は、例えば、JIS K2272に準拠して測定すればよい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
〔実施例1、2、比較例1〜5〕
表1に示す配合組成を有する潤滑油組成物を調製し、ロングドレイン性および耐摩耗性を評価した。また、併せて、耐熱性についても確認した。なお、参考例として、JASO DL-1規格相当油となるように、添加剤として金属系清浄剤とZnDTPを配合した例も示した。
潤滑油組成物の調製に用いた各成分の詳細は、以下の通りである。
【0038】
(1)潤滑油基油A:ポリ−α−オレフィン、40℃動粘度:63mm2/s、100℃動粘度:9.8mm2/s、粘度指数:139
(2)潤滑油基油B:水素化精製鉱油(100N)、40℃動粘度:21.0mm2/s、100℃動粘度:4.5mm2/s、粘度指数:127
(3)潤滑油基油C:水素化精製鉱油(500N)、40℃動粘度:90.5mm2/s、100℃動粘度:10.89mm2/s、粘度指数:107
【0039】
(4)ジスルフィドA:ビス(n−オクトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、化合物中の硫黄含有量:15.8質量%
(5)ジスルフィドB:ビス(n−テトラキシカルボニルメチル)ジスルフィド、化合物中の硫黄含有量:20.78質量%
(6)無灰分散剤A:数平均分子量950のポリブテニル基を有するホウ素未含有アルケニルコハク酸イミド、化合物中の窒素含有量:2.1質量%
(7)無灰分散剤B:数平均分子量950のポリブテニル基を有するホウ素変性アルケニルコハク酸イミド、化合物中の窒素含有量:1.8質量%、化合物中のホウ素含有量:2.1質量%
【0040】
(8)金属系清浄剤A:過塩基性カルシウムサリシレート、塩基価(過塩素酸法):170mgKOH/g、化合物中のカルシウム含有量:6.1質量%
(9)ZnDTP:第2級アルキル型ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量:7.9質量%、リン含有量:7.2質量%、硫黄含有量:15.0質量%)と、第1級アルキル型ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量:8.9質量%、リン含有量:7.4質量%、硫黄含有量:15.0質量%)とを、リンの質量比で、1:4の割合で混合したもの
(10)酸化防止剤:モノブチルフェニルモノオクチルフェニルアミン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、および、オクタデシル3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートをそれぞれ質量比1:2:2の比率で混合したもの
(11)その他の添加剤:金属不活性化剤(アルキルベンゾトリアゾール)、シリコーン系消泡剤
【0041】
各潤滑油組成物のロングドレイン性、耐摩耗性および耐熱性については以下のようにして評価した。結果を表1に示す。
(ロングドレイン性)
初期塩基価およびISOT試験後の塩基価を比較することで評価した。
・塩基価:JIS K 2501に準拠(塩酸法)
・ISOT試験:JIS K 2514に準拠(165.5℃、96時間)
(耐摩耗性)
日産(KA24E)を使用して、動弁系摩耗試験(カムノーズ摩耗試験、JASO M328−95に準拠)により評価した。
(耐熱性)
280℃におけるホットチューブ試験(JPI−5S−55−99に準拠)により、0〜10点のカラースケールにて評価した。
【0042】
【表1】

【0043】
〔評価結果〕
表1の評価結果からわかるように、本発明の潤滑油組成物を用いた実施例1、2では、金属系清浄剤やZnDTPを含んでいないにもかかわらず、ロングドレイン性および耐摩耗性に優れている。また、耐熱性についても実用上何ら問題ないレベルにある。
これに対して、比較例1、2は参考例から金属系清浄剤およびZnDTPを除いた系である。また、無灰系分散剤として、ホウ素未含有分散剤とホウ素変性分散剤のいずれか一方のみで調製したものである。いずれも、塩基価を向上させることは可能であるものの、比較例1では耐熱性が十分ではなく、比較例2ではロングドレイン性が低下してしまう。
また、比較例3も、参考例から金属系清浄剤およびZnDTP清浄剤を除いた系であるが、無灰系分散剤として、ホウ素未含有分散剤とホウ素変性分散剤の両者を配合している。しかし、ロングドレイン性が十分ではない。
比較例4は、参考例から耐摩耗剤であるZnDTPを抜いた系であるが、ロングドレイン性は十分であるものの、耐摩耗性が大幅に悪化している。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、(A)下記式(1)および/または下記式(2)で示されるジスルフィド化合物と、(B)数平均分子量500〜3000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素未含有無灰系分散剤と、(C)数平均分子量500〜4000のアルキル基またはアルケニル基を側鎖に有するホウ素含有無灰系分散剤とを含有することを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
OOC−A−S−S−A−COOR (1)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜30のヒドロカルビル基である。AおよびAは、それぞれ独立にCRまたはCR−CRで示される基であって、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基を示す。)
OOC−CR10−CR11(COOR)−S−S−CR16(COOR13)−CR1415−COOR12 (2)
(式中、R、R、R12およびR13は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい炭素数1〜30のヒドロカルビル基、R〜R11およびR14〜R16はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜5のヒドロカルビル基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物において、
金属系清浄剤を実質的に含有しないことを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関用潤滑油組成物において、
前記(A)成分のジスルフィド化合物の含有量が組成物全量基準において、硫黄量換算で0.01〜0.5質量%であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物において、
前記(B)成分がアルキルまたはアルケニルコハク酸イミド、脂肪酸アミド、アルキルまたはアルケニルベンジルアミンの少なくともいずれかであり、
前記(B)成分由来の窒素分が組成物全量基準で50〜4000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物において、
前記(C)成分がアルキルまたはアルケニルコハク酸イミド、脂肪酸アミド、アルキルまたはアルケニルベンジルアミンの少なくともいずれかをホウ素変性したものであり、
前記(C)成分由来のホウ素分が組成物全量基準で50〜3000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2008−297353(P2008−297353A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142167(P2007−142167)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】