説明

内燃機関用空気ポンプ構造

【課題】ポンプおよび内燃機関を大型化することなく、吐出口での圧力増加を抑制して空気吐出量および吸入量を十分確保してポンプ効率の向上を図ることができる内燃機関用空気ポンプ構造を供する。
【解決手段】内燃機関のクランク軸の回転に連動してポンプピストン43がポンプシリンダ41a内を往復動することにより、ポンプシリンダ41a内に吸入制御弁61を介して空気が吸入され、ポンプシリンダ41a内の空気が吐出制御弁65により所定圧力で吐出され、圧縮空気通路80を介して圧縮空気が内燃機関の所要箇所に供給される空気ポンプ構造において、吐出制御弁65の下流側に吐出制御弁65からの吐出直後の圧縮空気が導かれる圧力緩和室76が設けられた内燃機関用空気ポンプ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関において用いられている空気ポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気と燃料との混合気を燃焼室に供給する混合気噴射弁を備える内燃機関の場合は、空気ポンプで圧縮された空気を空気通路により混合気噴射弁まで導き燃料と混合されて燃焼室に供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−301113号公報
【0004】
同特許文献1には、直噴式内燃機関が開示されており、シリンダヘッドカバーとシリンダヘッドを貫通して、それぞれ燃料噴射弁と混合気噴射弁が設けられ、圧縮空気によって混合気を燃焼室に直接噴射するようになっているので、圧縮空気は所定の圧力で所要のタイミングで混合気噴射弁に導かれる必要がある。
この混合気噴射弁に圧縮空気を供給する空気ポンプは、クランク軸の回転に連動するピストンがシリンダ内を往復動する空気ポンプであり、シリンダブロックに設けられている。
【0005】
シリンダの圧縮室にはリード弁を介して空気吸入管が接続されるとともに、圧縮室の圧力増大に応じて開弁する吐出制御弁を介して圧縮空気通路が連通する。
圧縮空気通路は、シリンダブロックにある空気ポンプの吐出制御弁からシリンダヘッドにある混合気噴射弁まで連通している。
【0006】
したがって、空気ポンプのピストンが下死点に移動するとき、リード弁が開き空気吸入管から空気が圧縮室に吸入され、ピストンが上死点に移動するとき、圧縮された空気が所定圧力に達したところで、吐出制御弁が開いて圧縮空気通路に導かれて圧縮空気が混合気噴射弁に供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機関回転数が常に変化して運転される車載内燃機関に用いられる空気ポンプは、最高出力に見合う吐出量の確保と常用使用域での効率アップが要求されますが、大部分がシリンダブロックおよびシリンダヘッドの側壁に穿設される圧縮空気通路は、その内径を大きくすることができず、弁より下流側の容積が小さく吐出制御弁が開いても吐出される圧縮空気が吐出口で詰まる(チョーキングされる)傾向にあって吐出量が規制されることがある。
【0008】
特に排気量が大きくなり、機関回転数が高くなる程、吐出口での圧力が高くなってチョーキング傾向が強くなり吐出量が益々規制されることになる。
また、そのために空気吸入時に圧縮室の圧力が速やかに低下しないため、新気吸入量が減ってポンプ効率が低下する。
そこで、圧縮空気通路の内径を拡大して対処しようとすると、空気通路スペースを確保するため内燃機関が大型化する。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ポンプおよび内燃機関を大型化することなく、吐出口での圧力増加を抑制して空気吐出量および吸入量を十分確保してポンプ効率の向上を図ることができる内燃機関用空気ポンプ構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、内燃機関のクランク軸の回転に連動してポンプピストンがポンプシリンダ内を往復動することにより、ポンプシリンダ内に吸入制御弁を介して空気が吸入され、ポンプシリンダ内の空気が吐出制御弁により所定圧力で吐出され、圧縮空気通路を介して圧縮空気が内燃機関の所要箇所に供給される空気ポンプ構造において、前記吐出制御弁の下流側に前記吐出制御弁からの吐出直後の圧縮空気が導かれる圧力緩和室が設けられた内燃機関用空気ポンプ構造とした。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関用空気ポンプ構造において、前記吸入制御弁と前記吐出制御弁は、その両弁体がともに前記クランク軸の軸方向に動作して空気の吸入・吐出が行われることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関用空気ポンプ構造において、前記圧力緩和室は、前記吐出制御弁より上方に膨出して形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の内燃機関用空気ポンプ構造において、吐出制御弁が動作する弁室の周囲の最下部に吐出口を有して吐出通路が下方に延びることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれかの項記載の内燃機関用空気ポンプ構造において、前記空気ポンプは、内燃機関の燃焼室内に燃料を圧縮空気とともに噴射する燃料噴射弁用のポンプであって、内燃機関の動きに応じた周期的な噴射のための圧縮空気を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の内燃機関用空気ポンプ構造によれば、吐出制御弁の下流側に開弁による吐出直後の圧縮空気が導かれる圧力緩和室が設けられるので、圧力緩和室に吐出直後の圧縮空気が導かれて吐出口での圧力の増加が抑制され、機関回転数が高くなってもチョーキングを起こすことなく十分な吐出量が確保され、また新気吸入時の圧縮室の圧力低下も速やかで新気吸入量も十分確保され、ポンプ効率の向上を図ることができる。
圧縮空気通路の内径を拡大してポンプおよび内燃機関の大型化を回避できる。
【0016】
請求項2記載の内燃機関用空気ポンプ構造によれば、吸入制御弁と吐出制御弁は、その両弁体がともにクランク軸の軸方向に動作して空気の吸入・吐出が行われるので、内燃機関のクランク軸を回転させるピストンの往復動に伴う振動に対して吸入制御弁と吐出制御弁の両弁体の動きが直交して機関振動の影響を受けず、よって吸入制御弁と吐出制御弁は常に安定して動作し、吸入・吐出性能を維持することができる。
【0017】
請求項3記載の内燃機関用空気ポンプ構造によれば、圧力緩和室が、吐出制御弁より上方に膨出して形成されるので、圧縮空気が圧力緩和室内で膨張する際に生じる結露を流下させて圧力緩和室内に滞留させることを防止することができる。
【0018】
請求項4記載の内燃機関用空気ポンプ構造によれば、吐出制御弁が動作する弁室の周囲の最下部に吐出口を有して吐出通路が下方に延びるので、吐出制御弁から吐出された空気は弁室の最下部の吐出口から下方に流れて内燃機関の所要箇所に向うため、結露し難く、また機関停止時においても弁室に結露が留まり吐出制御弁の動作に影響を与えるようなことは防止することができる。
【0019】
請求項5記載の内燃機関用空気ポンプ構造によれば、内燃機関の動きに応じた周期的な噴射のための圧縮空気を供給する燃料噴射弁用のポンプに適用することで、圧力緩和室により吐出圧力の変化を小さくできる本ポンプ構造により、燃料の噴射および噴霧が安定して機関出力を精度良く制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図6に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関1は、2つのシリンダブロック4F,4Rを互いにV字状をなすように傾けてクランクケース3上に設けた2気筒のV型内燃機関であり、その全体の部分断面とした概略右側面図を図1に示す。
【0021】
該V型内燃機関1は、自動二輪車にクランク軸2を左右方向に指向させて横置きに搭載され、2つのシリンダブロック4F,4Rは互いに前後に傾いている。
前後のシリンダブロック4F,4Rには、それぞれシリンダヘッド5F,5Rおよびシリンダヘッドカバー6F,6Rが順次上から重ねられて一体に締結されている。
【0022】
各シリンダブロック4F,4Rのボア内をピストン7f,7rが摺動し、ピストン7f,7rとクランク軸2がコンロッド8f,8rで連接されている。
ピストン7f,7rの頂面と対向するシリンダヘッド5F,5Rの天井面との間に燃焼室9f,9rが形成されており、各燃焼室9f,9rからはVバンク内に向けて吸気ポート10f,10rが延出し、Vバンクの外側に向けて排気ポート11f,11rが延出している。
【0023】
吸気ポート10f,10rには吸気管12f,12rが連結され、吸気管12f,12rの上流側は集合しており、集合部には排気導入路13が延びており、排気ガスを燃焼室9f,9rに還流する排気還流装置EGRの制御弁14が設けられている。
排気ポート11f,11rには排気管15f,15rが連結される。
【0024】
吸気ポート10f,10rの燃焼室9f,9rに開いた開口を吸気バルブ16f,16rが開閉し、排気ポート11f,11rの燃焼室9f,9rに開いた開口を排気バルブ17f,17rが開閉する。
この吸気バルブ16f,16rおよび排気バルブ17f,17rを駆動する動弁機構18f,18rがシリンダヘッドカバー6F,6R内に設けられている。
【0025】
そして、シリンダヘッドカバー6F,6Rとシリンダヘッド5F,5Rを、シリンダブロック4F,4Rの中心軸に同軸に貫通して、それぞれ燃料噴射弁21f,21rと混合気噴射弁22f,22rが直列に嵌合しており、混合気噴射弁22f,22rの先端は燃焼室9f,9rに突出している。
【0026】
前方に小さく傾いた前シリンダブロック4Fには空気ポンプ40が前方に突設されている。
また、図2を参照して、前シリンダブロック4Fの左側には動弁機構18fの駆動伝達系を収容するチェーン室25cがチェーンカバー25に覆われて形成されている。
前シリンダブロック4Fの左側壁とチェーンカバー25との間にカム軸26が、クランク軸2と平行に軸受27,27に軸支されて回転自在に架設されており、カム軸26には吸気カムロブ28、排気カムロブ29およびチェーンスプロケット30が一体に嵌合している。
【0027】
チェーンスプロケット30には、クランク軸2との間にチェーン31が架渡されてクランク軸2の回転が半分の回転速度でカム軸26に伝達され、吸気カムロブ28および排気カムロブ29の回転がそれぞれ動弁機構18fの図示されないロッドおよびロッカアーム32,33を介して吸気バルブ16fと排気バルブ17fを駆動する。
【0028】
前シリンダブロック4Fとチェーンカバー25の前側合わせ面に空気ポンプ40のポンプケース41が合わされてボルトにより螺合固着される。
ポンプケース41にはポンプシリンダ41aが形成されていて、ポンプシリンダ41a内をポンプピストン43が左右方向に往復動する。
【0029】
このポンプシリンダ41aと前シリンダブロック4Fとの間に左右方向に指向した斜板回転軸50が軸受52,53を介して回転自在に前シリンダブロック4Fとポンプケース41とに挟持されている。
ポンプシリンダ41aの中心軸と斜板回転軸50は、左右方向に指向して、クランク軸2と平行である。
【0030】
前記チェーンスプロケット30のボス部の左方に延出した部分にポンプ駆動ギヤ35が嵌着されており、斜板回転軸50の左端に嵌着されたポンプ従動ギヤ36とポンプ駆動ギヤ35が噛合してカム軸26の回転が斜板回転軸50に伝達される。
ポンプ従動ギヤ36はポンプ駆動ギヤ35の半分の歯数を有するので、斜板回転軸50はカム軸26の2倍の回転速度で、クランク軸2と同じ回転速度となる。
【0031】
ポンプケース41の右半部にポンプシリンダ41aが形成されて、その右側開口端にポンプヘッド42が被せられ、ポンプシリンダ41a内を摺動するポンプピストン43とポンプヘッド42との間に圧縮室44が形成される。
【0032】
ポンプピストン43の背後(左側)には、作動部材45がボルト47により固着されており、作動部材45のポンプピストン43の中心軸上に設けられた保持部45aが左右の半球形の滑動部材であるシュー46,46を回動自在に保持しており、この左右のシュー46,46により前記斜板回転軸50の斜板51の周縁部が摺動可能に挟まれる。
【0033】
したがって、斜板回転軸50が斜板51とともに回転すると、ポンプピストン43の中心軸上における斜板51の周縁部の左右方向の変位が、シュー46,46を介して作動部材45をポンプピストン43とともに左右方向に往復動させる。
【0034】
なお、作動部材45の前面には左右方向に指向した溝条45bが形成されていて、ポンプケース41の前壁に貫通して螺着されたボルト48の先端が溝条45bに挿入されて作動部材45およびポンプピストン43の回り止めをなしている。
【0035】
図4ないし図6を参照して、ポンプヘッド42には、そのポンプピストン43に対向する面に吸入ポート60の上下2つの開口60a,60bと吐出ポート63が開口しており、吸入ポート60の2つの開口部には吸入制御弁であるリード弁61,61がピストン対向面に沿って設けられ、吐出ポート63の開口部には吐出制御弁65が設けられる(図2参照)。
【0036】
ポンプヘッド42の吸入ポート60の2つの開口60a,60bは、ピストン対向面に垂直に穿孔された後、上方に屈曲して共通孔となって上方に開口し、同開口に吸入接続管62が嵌入され、図示されないエアクリーナケースから延出する吸入パイプが同吸入接続管62に連結され、圧縮室44の膨張時にリード弁61が開いて新気が吸入パイプを介して吸入ポート60,60から空気ポンプ40の圧縮室44に吸入されるようになっている。
【0037】
ポンプヘッド42の吐出ポート63は、吸入ポート60より大径でピストン対向面に垂直に穿孔され、ポンプヘッド42をそのまま右方に貫通している。
この吐出ポート63の圧縮室44側開口縁部63aは幾らか縮径され、同開口縁部63aを左端として吐出ポート63の左半部が吐出制御弁63の収容される弁室63bを構成し、右半部内周面には雌ねじ63cが刻設されている。
【0038】
吐出ポート63の弁室63bの内周面の最下部に吐出口64aが開口して吐出口64aから下方に吐出通路64が穿孔されている。
なお、吐出通路64は下方に貫通して開口しているが、この開口は盲栓67で閉塞され、吐出通路64の下部は前シリンダブロック4Fとの合わせ面側に屈曲して、この屈曲通路64bが前シリンダブロック4Fの後記する圧縮空気通路80に連通する。
【0039】
吐出制御弁65は弁室63bの内径より小さいが圧縮室44側開口縁部63aの内径より大きい径の円板状をなし、弁室63b内にあってスプリング66により付勢されて開口縁部63aに押圧されて圧縮室44への開口を閉塞することができる。
【0040】
圧縮室44の圧縮縮小時に圧縮空気が所定圧力を超えるとスプリング66に抗して吐出制御弁65を右方に移動して開き、圧縮室44と吐出口64aとを連通して圧縮空気を吐出通路64に導くことができる。
【0041】
このポンプヘッド42の吐出ポート63の右方開口端に、圧力緩和装置75が特別なボルト70により取り付けられる。
ボルト70は、六角頭部70aにフランジ70bが付いており、ボルト本体70cは先端に開口するボルト中空部71を形成する円筒状をなし、円筒状のボルト本体70cの途中に対向する一対の円孔70d,70dが穿設され、ボルト本体70cの先端部外周面には、ポンプヘッド42の吐出ポート63の右方開口端の雌ねじ63cに螺合される雄ねじ70eが刻設されている。
【0042】
圧力緩和装置75は、内部に圧力緩和室76を形成する有底円筒部75aとその下方のボルト70により締結される基部75bとから構成され、基部75bは内部が圧力緩和室76に連続する空洞が形成され、図1に示すように側面視で下方が先細になって底を閉じている。
この基部75bにボルト孔75c,75cが左右方向に穿孔して形成されている。
【0043】
したがって、ポンプヘッド42の吐出ポート63の右方開口端に、ワッシャ72を介在させて圧力緩和装置75の基部75bの一方のボルト孔75c端面を当て、他方のボルト孔75c端面にワッシャ73を当て、ボルト70をワッシャ73、ボルト孔75c,75c、ワッシャ72に貫通させて吐出ポート63の右方開口端の雌ねじ63cに螺合し、有底円筒部75aを略上方に向けた状態で緊締して圧力緩和装置75を取り付ける(図3参照)。
【0044】
このとき、吐出ポート63の弁室63bには、予め吐出制御弁65とスプリング66を挿入しておき、ボルト70の螺合でボルト70の先端面がスプリング66の背後を支持してスプリング66を縮設し吐出制御弁65を圧縮室44側開口縁部63aに付勢して開口を閉じるようにする。
【0045】
圧力緩和装置75をポンプヘッド42に取り付けたボルト70の一対の円孔70d,70dは、圧力緩和装置75の基部75bの内部空洞に開口して圧力緩和室76と連通している。
したがって、吐出ポート63は、ボルト中空部71を介して圧力緩和室76と連通状態にある。
【0046】
圧縮室44の圧縮縮小時に吐出制御弁65がスプリング66に抗して開くと、圧縮空気は吐出ポート63に吐出し、吐出口64aから吐出通路64に流出する一方で、吐出制御弁65の周囲からボルト中空部71を通り、円孔70d,70dから圧力緩和装置75の圧力緩和室76に導かれるので、吐出口64aでの圧力が緩和される。
【0047】
ポンプヘッド42の吐出通路64は、図1を参照して、前記屈曲通路64bから前シリンダブロック4Fに形成された圧縮空気通路80に連通し、圧縮空気通路80はクランクケース3に形成された圧縮空気通路81に合わせ面で接続されて連通し、同圧縮空気通路81はクランクケース3の右側壁を迂回してV字状をなす2つのシリンダブロック4F,4RのVバンク間の谷部に至り、前側圧縮空気通路81fと後側圧縮空気通路81rとに分岐している。
【0048】
そして、前側圧縮空気通路81fは、前シリンダブロック4FのVバンク間側に形成された圧縮空気通路82に連通し、同圧縮空気通路82は前シリンダヘッド5Fに形成された圧縮空気通路(図1には図示されないが、破線で通路を示している)に連通し、同圧縮空気通路は前記混合気噴射弁22fの空気導入部に連通している。
【0049】
同様に、後側圧縮空気通路81rは、後シリンダブロック4RのVバンク間側に形成された圧縮空気通路83に連通し、同圧縮空気通路83は後シリンダヘッド5Rに形成された圧縮空気通路(図1に破線で通路を示している)に連通し、同圧縮空気通路は前記混合気噴射弁22rの空気導入部に連通している。
【0050】
このように、前シリンダブロック4Fに取付けられピストン7fと同じ周期で駆動される空気ポンプ40により圧縮された空気は、共通の吐出通路64、圧縮空気通路80,81を通り、前後に分岐した圧縮空気通路82,83を通って前シリンダヘッド5Fに取り付けられた混合気噴射弁22fと後シリンダヘッド5Rに取り付けられた混合気噴射弁22rの前後双方のシリンダの混合気噴射弁22f,22rに交互に供給される。
【0051】
本空気ポンプ40には、圧力緩和装置75が特別のボルト70により取り付けられて、吐出制御弁65の下流側吐出ポート63がボルト中空部71を介して圧力緩和装置75の圧力緩和室76に連通しているので、吐出制御弁65の開弁による吐出直後の圧縮空気が圧力緩和室76に導かれて膨張し吐出口64aでの圧力の増加が抑制される。
【0052】
したがって、内燃機関の排気量が大きくても、また機関回転数が高くなってもチョーキングを起こすことなく十分な吐出量が確保される。
このように圧縮室44の圧縮縮小時の圧縮室44からの空気の吐出が円滑になされることで、圧縮室44が膨張に移り新気を吸入するときに、圧力低下も速やかに行われて新気吸入量も十分確保される。
【0053】
以上のように空気の吐出量と吸入量がともに十分確保され、ポンプ効率が大いに向上する。
圧縮空気通路の内径を拡大する必要がないので、空気ポンプ40および内燃機関1の大型化を回避できる。
【0054】
空気ポンプ40のリード弁61と吐出制御弁65は、その両弁体がともにクランク軸2の軸方向に動作して空気の吸入・吐出が行われるので、内燃機関1のクランク軸2を回転させるピストン7f,7rの往復動に伴う振動に対してリード弁61と吐出制御弁65の両弁体の動きが直交して機関振動の影響を受けにくい構造であり、よってリード弁61と吐出制御弁65は常に安定して動作し、吸入・吐出性能を維持することができる。
【0055】
圧力緩和装置75の圧力緩和室76は、吐出制御弁65より上方に膨出して形成されているので、圧縮空気が圧力緩和室76内で膨張する際に生じる結露を流下させて圧力緩和室76内に滞留させることを防止することができる。
【0056】
なお、圧力緩和装置75の圧力緩和室76の下方に圧力緩和装置75の基部75bの空洞があるが、僅かな容積であり、ここに多少結露が溜まったとしても内燃機関1の運転時には圧縮空気の吐出口64aへの吐出流に従って流出される。
【0057】
また、吐出ポート63の弁室63bの内周面の最下部に吐出口64aが開口して吐出口64aから下方に吐出通路64が穿孔されているので、吐出制御弁65の開弁により吐出された空気は周囲の最下部の吐出口64aから下方に向って吐出通路64を流れて混合気噴射弁22f,22rに向かうため、弁室63bに結露は生じ難く、機関停止時においても弁室63bに結露が留まり吐出制御弁65の動作に影響を与えるようなことはない。
【0058】
内燃機関1の燃焼室9f,9r内に燃料を圧縮空気とともに噴射する混合気噴射弁22f,22rに、内燃機関1の動きに応じた周期的な噴射のための圧縮空気を供給するのに、本空気ポンプ40が用いられているので、圧力緩和室76により吐出圧力の変化を小さくできる本ポンプ構造により、燃料の噴射および噴霧が安定して機関出力を精度良く制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態に係るV型内燃機関の部分断面とした概略右側面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】ポンプヘッドの右側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
【0060】
2…クランク軸、
40…空気ポンプ、41…ポンプケース、41a…ポンプシリンダ、42…ポンプヘッド、43…ポンプピストン、44…圧縮室、45…作動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸の回転に連動してポンプピストンがポンプシリンダ内を往復動することにより、ポンプシリンダ内に吸入制御弁を介して空気が吸入され、ポンプシリンダ内の空気が吐出制御弁により所定圧力で吐出され、圧縮空気通路を介して圧縮空気が内燃機関の所要箇所に供給される空気ポンプ構造において、
前記吐出制御弁の下流側に前記吐出制御弁からの吐出直後の圧縮空気が導かれる圧力緩和室が設けられたことを特徴とする内燃機関用空気ポンプ構造。
【請求項2】
前記吸入制御弁と前記吐出制御弁は、その両弁体がともに前記クランク軸の軸方向に動作して空気の吸入・吐出が行われることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用空気ポンプ構造。
【請求項3】
前記圧力緩和室は、前記吐出制御弁より上方に膨出して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関用空気ポンプ構造。
【請求項4】
吐出制御弁が動作する弁室の周囲の最下部に吐出口を有して吐出通路が下方に延びることを特徴とする請求項2または請求項3記載の内燃機関用空気ポンプ構造。
【請求項5】
前記空気ポンプは、内燃機関の燃焼室内に燃料を圧縮空気とともに噴射する燃料噴射弁用のポンプであって、内燃機関の動きに応じた周期的な噴射のための圧縮空気を供給することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項記載の内燃機関用空気ポンプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−205172(P2007−205172A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21777(P2006−21777)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】