説明

内燃機関用蓄圧システム

【課題】蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制可能な内燃機関用蓄圧システムを提供する。
【解決手段】加圧されたガスを溜めることが可能、かつそのガスを内燃機関1に設けられたターボ過給機7のタービン7bに供給可能な蓄圧タンク21と、蓄圧タンク21内に接続されたガス通路22を開閉可能な流量制御弁23とを備えた内燃機関用蓄圧システム20において、蓄圧タンク21内の温度が所定の判定温度T1以下、又は蓄圧タンク内21の圧力が所定の判定圧力P1以上の少なくともいずれか一方の条件が満たされた場合に蓄圧タンク21内の圧力が低下するように流量制御弁23を開弁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧されたガスを溜めることが可能であり、かつそのガスを所定の供給先に供給可能な蓄圧タンクを備えた内燃機関用蓄圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機を備えた内燃機関に設けられるエネルギ回収装置において、排気通路と接続された蓄圧タンクに圧力が高められた排気を溜めてその蓄圧タンクに圧力エネルギを蓄え、過給圧を上昇させたり過給機の応答性を向上させる場合に蓄圧タンクに蓄えた圧力エネルギを過給機のタービンに供給するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−315194号公報
【特許文献2】特開2006−105026号公報
【特許文献3】特開2007−77906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知のように排気や空気などには水分が含まれている。そのため、特許文献1の装置のようにこのような水分を含むガスを加圧して溜めるとそのガスに含まれていた水分が凝縮、すなわち液化して凝縮水となり蓄圧タンク内に残るおそれがある。この凝縮水は、蓄圧タンク内の温度が低いほど、また蓄圧タンク内の圧力が高いほど発生し易い。そして、このように凝縮水が蓄圧タンク内に残留するとその分ガスを溜めるための容積が減少するので、蓄圧タンク内に溜めることが可能なガス量が減少し、蓄圧タンクに蓄えることが可能なエネルギ量が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制可能な内燃機関用蓄圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関用蓄圧システムは、加圧されたガスを溜めることが可能、かつそのガスを内燃機関に設定された所定の供給先に供給可能な蓄圧タンクと、前記蓄圧タンク内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備えた内燃機関用蓄圧システムにおいて、前記蓄圧タンク内の温度が所定の判定温度以下、又は前記蓄圧タンク内の圧力が所定の判定圧力以上の少なくともいずれか一方の条件が満たされた場合に前記蓄圧タンク内の圧力が低下するように前記圧力調整手段を制御する制御手段を備えている(請求項1)。
【0007】
周知のようにガス中の水蒸気は、温度が低いほど、また圧力が高いほど凝縮し易くなる。そして、単位体積当たりのガス中に存在することが可能な水蒸気の量、すなわち飽和水蒸気量は、ガスの温度が同じであればガスの圧力が低いほど多くなる。そのため、ガスの圧力を低下させることにより、ガス中の水蒸気が凝縮することを抑制できる。本発明の内燃機関用蓄圧システムによれば、蓄圧タンク内の温度が判定温度以下、又は蓄圧タンク内の圧力が判定圧力以上の場合、蓄圧タンク内の圧力を低下させるので、蓄圧タンク内にてガス中の水蒸気が凝縮することを抑制できる。そのため、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【0008】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記制御手段は、前記内燃機関が停止した場合に前記蓄圧タンク内の圧力が低下するように前記圧力調整手段を制御してもよい(請求項2)。内燃機関の停止時は内燃機関からの熱の放出が無くなるため、その周囲の温度が低下し、これにより蓄圧タンクの温度も低下する予測できる。そこで、このように場合には蓄圧タンク内の圧力を低下させる。これにより、蓄圧タンク内にてガス中の水蒸気が凝縮することを抑制できるので、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【0009】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記蓄圧タンクに接続され、前記蓄圧タンクから前記所定の供給先にガスを供給するためのガス供給経路の一部となるガス通路と、前記ガス通路を全開する全開位置と前記供給通路を全閉する全閉位置との間で開度を調整可能な流量制御弁と、をさらに備え、前記圧力調整手段は、前記流量制御弁であり、前記制御手段は、前記流量制御弁を開弁させることにより前記蓄圧タンク内の圧力を低下させてもよい(請求項3)。このように流量制御弁を開けて蓄圧タンク内のガスを排出させることにより、蓄圧タンク内の圧力を低下させることができる。
【0010】
この形態において、前記制御手段は、前記蓄圧タンク内の圧力が前記所定の判定圧力より小さい値が設定される閉弁圧力以下になった場合、前記流量制御弁を前記全閉位置に切り替えてもよい(請求項4)。このように蓄圧タンク内の圧力が閉弁圧力以下になった場合は流量制御弁を全閉させることにより、外部から蓄圧タンク内に水分を多く含むガスが流入することを防止できる。
【0011】
蓄圧タンク内の圧力が閉弁圧力以下になった場合に流量制御弁を全閉位置に切り替える本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記蓄圧タンク内の温度に基づいて前記閉弁圧力を設定する閉弁圧力設定手段をさらに備えていてもよい(請求項5)。また、この形態において、前記閉弁圧力設定手段は、前記蓄圧タンク内の温度が低いほど前記閉弁圧力を低くしてもよい(請求項6)。このように閉弁圧力を蓄圧タンク内の温度に応じて適宜に設定することにより、蓄圧タンク内の圧力を無駄に低下させることなく蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【0012】
蓄圧タンクからガス供給経路を介して所定の供給先にガスを供給する本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧タンクには、前記ガス供給経路を介して加圧されたガスが溜められ、前記制御手段は、前記蓄圧タンク内の温度が所定の下限温度以下の場合、前記蓄圧タンク内へのガスの導入が禁止されるように前記流量制御弁を前記全閉位置に保持してもよい(請求項7)。この場合、ガス中の水分が凝縮し易い状態の蓄圧タンク内に水分を含んだガスが導入されることを防止できるので、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することをさらに抑制できる。
【0013】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態においては、前記蓄圧タンクを加熱する加熱手段をさらに備えていてもよい(請求項8)。この場合、加熱手段によって蓄圧タンクを加熱し、これにより蓄圧タンク内の温度を上昇させることができる。そのため、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することをさらに抑制できる。
【0014】
本発明の内燃機関用蓄圧システムの一形態において、前記蓄圧タンク内には、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な吸着材が設けられていてもよい(請求項9)。このような吸着材には凝縮水も吸着される。そして、凝縮水が吸着されるとその分吸着材に吸着されるガスの量が減少する。本発明を適用することにより、凝縮水の発生を抑制できるので、吸着材に凝縮水が吸着されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明の内燃機関用蓄圧システムによれば、蓄圧タンク内の温度が判定温度以下、又は蓄圧タンク内の圧力が判定圧力以上の場合、蓄圧タンク内の圧力を低下させるので、蓄圧タンク内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関を示している。図1の内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるディーゼルエンジンであり、複数(図1では4つ)のシリンダ2を有する機関本体3と、各シリンダ2にそれぞれ接続される吸気通路4及び排気通路5とを備えている。吸気通路4には、吸気を濾過するエアクリーナ6と、ターボ過給機7のコンプレッサ7aと、吸気を冷却するためのインタークーラ8とが設けられている。排気通路5には、ターボ過給機7のタービン7bと、排気を浄化するための触媒コンバータ9と、排気通路5を全閉する全閉位置と排気通路5を全開する全開位置とに切り替え可能な排気遮断弁10とが設けられている。
【0017】
排気通路5と吸気通路4とは、EGR通路11にて接続されている。図1に示したようにEGR通路11は、排気通路5の一部を形成する排気マニホールド5aと吸気通路4の一部を形成する吸気マニホールド4aとを接続している。EGR通路11には、排気通路5から排気通路4に導かれる排気(以下、EGRガスと称することがある。)を冷却するためのEGRクーラ12及びEGRガスの流量を調整するためのEGR弁13が設けられている。各シリンダ2には、シリンダ2内に燃料を噴射するためのインジェクタ14がそれぞれ設けられている。各インジェクタ14は、インジェクタ14に供給される高圧の燃料が蓄えられるコモンレール15に接続されている。
【0018】
図1に示したようにエンジン1は、ターボ過給機7の動作をアシストするための蓄圧システム20を備えている。蓄圧システム20は、蓄圧タンク21を備えている。蓄圧タンク21は、加圧されたガスを溜めることが可能な圧力容器として構成されている。蓄圧タンク21には、ガスとして空気又は排気の少なくともいずれか一方が貯留される。蓄圧タンク21の内部には、吸着材21aが収容されている。吸着材21aは、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な物質であればよく、例えば活性炭が用いられる。この他、吸着材21aとしては例えばゼオライト、アルミナ、カーボンモレキュラーシーブなどが用いられる。なお、吸着材21aは、単一の物質に限定されず、これらの物質が混合されたものでもよい。蓄圧タンク21内には、ガスとともに吸着材21aが外部に排出されることを防止する不図示の仕切り板が設けられている。
【0019】
蓄圧タンク21は、ガス通路22にてEGR通路11と接続されている。ガス通路22には、圧力調整手段としての流量制御弁23が設けられている。流量制御弁23は、蓄圧タンク21の内部とEGR通路11とが接続されるようにガス通路22を全開する接続位置(以下、全開位置と称することがある。)と蓄圧タンク21の内部とEGR通路11との接続が遮断されるようにガス通路22を全閉する遮断位置(以下、全閉位置と称することがある。)との間で開度を調整可能であり、ガス通路22を流れるガスの流量を制御することができる。蓄圧タンク21には、その内部の温度(以下、タンク内温度と称することがある。)に対応する信号を出力する温度センサ24と、蓄圧タンク21の内部の圧力(以下、タンク圧と称することがある。)に対応する信号を出力する圧力センサ25とが設けられている。
【0020】
流量制御弁23の動作は、エンジンコントロールユニット(ECU)30にて制御される。ECU30は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータとして構成され、エンジン1に設けられた各種センサからの出力信号に基づいて排気遮断弁10、EGR弁13、及びインジェクタ14などの動作をそれぞれ制御し、これによりエンジン1の運転状態を制御する周知のコンピュータユニットである。ECU30は、例えばエンジン1の回転数が予め設定した所定の燃料カット回転数以上であり、かつアクセル開度が0%すなわちアクセルペダルが踏まれていない場合、各シリンダ2への燃料供給が停止されるように各インジェクタ15の動作を制御する。以下、この制御を燃料カット制御と称することがある。また、ECU30は、エンジン1の運転状態に応じて適正な量のEGRガスが吸気通路4に導入されるようにEGR弁13の開度を調整する。この他、ECU30はエンジン1の運転状態に応じて排気遮断弁10の開度を調整する。このような制御を行う際に参照するセンサとしてECU30には、例えばエンジン1のクランク軸の回転速度(回転数)に対応する信号を出力するクランク角センサ31及びアクセル開度に対応する信号を出力するアクセル開度センサ32等が接続される。また、ECU30には、温度センサ24及び圧力センサ25も接続される。なお、これらの他にもECU30には種々のセンサが接続されているがそれらの図示は省略した。
【0021】
ECU30は、燃料カット制御が実行されているときに蓄圧タンク21内に加圧されたガスを溜め、ターボ過給機7の動作をアシストする必要がある場合にそのガスがタービン7bに供給されるように蓄圧システム20を制御する。具体的に説明すると、蓄圧タンク21内に加圧されたガスを溜める場合、まずECU30は排気遮断弁10及びEGR弁13をそれぞれ全閉にする。次に、ECU30は流量制御弁23を全開位置に切り替える。これにより、蓄圧タンク21内にEGR通路11及びガス通路22を介して排気通路5のガスを充填することができる。なお、燃料カット制御の実行中、シリンダ2から排気通路5には空気が排出されるので、蓄圧タンク21には主に空気が充填される。その後、ECU30は、タンク圧が予め設定した充填圧力Pfに達すると流量制御弁23を全閉位置に切り替える。これにより蓄圧タンク21内に充填圧力Pfまで加圧されたガスを溜めることができる。充填圧力Pfには、ターボ7の動作をアシストすることが可能な圧力が設定される。なお、流量制御弁23が全閉位置に切り替えられた後、排気遮断弁10及びEGR弁13の制御はエンジン1の運転状態に応じてこれらの弁の開度が制御される通常制御に切り替えられる。
【0022】
ターボ過給機7の動作をアシストする必要がある場合、ECU30はまずEGR弁13を全閉にする。次に、ECU30は流量制御弁23を全開位置に切り替える。これにより、蓄圧タンク21内のガスをガス通路22、EGR通路11、及び排気マニホールド5aを介してタービン7bに供給することができる。そのため、ターボ過給機7の動作をこのガスでアシストすることができる。その後、ECU30は、タンク圧が予め設定した供給終了圧力に達すると流量制御弁23を全閉位置に切り替える。また、ECU30は、EGR弁14の制御をエンジン1の運転状態に応じて開度を制御する通常制御に切り替える。なお、このように蓄圧タンク21内のガスをタービン7bに供給するため、タービン7bが本発明の所定の供給先に相当する。また、ガス通路22、EGR通路11、及び排気マニホールド5aが本発明のガス供給経路に相当する。
【0023】
周知のように空気や排気には水分が含まれている。そして、この水分はガスの温度が低いほど、またガスの圧力が高いほど凝縮し易くなる。蓄圧タンク21内で水分が凝縮すると蓄圧タンク21内に凝縮水が残留し、蓄圧タンク21内に充填可能なガスの量が減少する。そこで、ECU30は、蓄圧タンク21内において水分が凝縮することを抑制すべく図2に示したタンク圧制御ルーチンをエンジン1の運転状態に拘わりなく所定の周期で繰り返し実行する。
【0024】
図2の制御ルーチンにおいてECU30は、まずステップS11で車両の走行状態及びエンジン1の運転状態を取得する。エンジン1の運転状態としては、例えばエンジン1の回転数、アクセル開度、タンク内温度、及びタンク圧等が取得される。続くステップS12においてECU30は、タンク内温度が所定の判定温度T1以下か否か判断する。判定温度T1には、加圧された空気や排気に含まれる水分が凝縮し易くなる温度、例えば40°Cが設定される。なお、この温度はガスの圧力に応じて変化するので、蓄圧タンク21内に溜めるべきガスの圧力に応じて適宜変更してよい。
【0025】
タンク内温度が判定温度T1より高いと判断した場合はステップS13に進み、ECU30はタンク圧が所定の判定圧力P1以上か否か判断する。所定の判定圧力P1には、空気や排気に含まれる水分が凝縮し易くなる圧力、例えば絶対圧で500kPaが設定される。なお、この圧力には充填圧力Pfより高い値が設定される。そのため、判定圧力P1は、充填圧力Pfに応じて適宜変更してよい。タンク圧が判定圧力P1未満と判断した場合はステップS14に進み、ECU30はエンジン1が停止しているか否か判断する。エンジン1が停止しているか否かは、例えばエンジン1の回転数に基づいて判断し、例えば回転数が0の場合にエンジン1が停止していると判断する。エンジン1が運転中と判断した場合はステップS15に進み、ECU30はタンク内温度が所定の下限温度TL以下か否か判断する。下限温度TLには、空気や排気に含まれる水分が凝縮しやすい温度であり、かつ判定温度T1以下の温度が設定され、例えば20°Cが設定される。
【0026】
タンク内温度が下限温度TL以下と判断した場合はステップS16に進み、ECU30は蓄圧タンク21に加圧された空気や排気を溜めることを禁止する蓄圧禁止フラグをオンに切り替える。この蓄圧禁止フラグは、ECU30のRAMに記憶され、このタンク圧制御ルーチンと並行に実行されている蓄圧タンク21に加圧された空気や排気を溜めるためのルーチンにて参照される。そして、蓄圧禁止フラグがオンの場合は、蓄圧タンク21への空気や排気の充填が禁止される。一方、タンク内温度が下限温度TLより高いと判断した場合はステップS17に進み、ECU30は蓄圧禁止フラグをオフに切り替える。ステップS16又はS17で蓄圧禁止フラグをセットした後はステップS18に進み、ECU30は流量制御弁23を全閉にする。既に流量制御弁23が全閉であった場合は、その状態を維持する。なお、この制御ルーチンと並行に実行されてターボ過給機7の動作をアシストすべく流量制御弁23の動作を制御するルーチンにおいて流量制御弁23が開弁中、すなわちターボ過給機7の動作をアシスト中の場合は、そのルーチンによる開弁制御が優先される。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0027】
一方、タンク内温度が判定温度T1以下と判断した場合、タンク圧が所定の判定圧力P1以上と判断した場合、又はエンジン1が停止していると判断した場合はステップS19に進み、ECU30はタンク圧が所定の閉弁圧力P2以下か否か判断する。閉弁圧力P2は、流量制御弁23を閉弁する時期を設定するための圧力であり、例えば大気圧が設定される。タンク圧が閉弁圧力P2より高いと判断した場合はステップS18の処理を実行した後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、タンク圧が閉弁圧力P2以下と判断した場合はステップS20に進み、ECU30は流量制御弁23を全開にする。なお、既に流量制御弁23が全開であった場合は、その状態を維持する。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0028】
上述したようにタンク内温度が低いほど、またタンク圧が高いほど空気や排気に含まれる水分が凝縮し易くなる。また、エンジン1が停止している場合はエンジン1から熱が発生しないので、その周囲の温度が低下する。これにより蓄圧タンク21の温度も低下し始めるので、蓄圧タンク21内で凝縮水が発生し易くなる。図2の制御ルーチンでは、タンク内温度が判定温度T1以下、タンク圧が判定圧力P1以上、又はエンジン1が停止している場合は、タンク圧が閉弁圧力P2、すなわち大気圧まで下げられる。図3は、圧力が異なるガスにおけるガスの温度とガス1m当たりに存在できる水蒸気の量、すなわち飽和水蒸気量との関係の一例を示している。図3に示したように同じ温度においても圧力を下げることにより飽和水蒸気量を増加させることができる。具体的に説明すると、温度Taのときにガスの圧力を圧力Pr1から圧力Pr2に下げることにより、飽和水蒸気量を水蒸気量A分増加させることができる。すなわち、より多くの水蒸気をガス中に存在させることができる。そのため、図2の制御ルーチンを実行してタンク圧を閉弁圧力P2まで低下させることにより、蓄圧タンク21内において凝縮水が発生することを抑制できる。このように図2の制御ルーチンを実行してタンク内温度が判定温度T1以下、又はタンク圧が判定圧力P1以上の場合にタンク圧を低下させることにより、ECU30が本発明の制御手段として機能する。
【0029】
また、図2の制御ルーチンでは、タンク内温度が下限温度TL以下の場合には蓄圧タンク21への空気や排気の充填を禁止するので、蓄圧タンク21内において凝縮水が発生することをさらに抑制できる。
【0030】
図4は、タンク圧制御ルーチンの変形例を示している。なお、図4において図2と同一の処理には同一の参照符号を付して説明を省略する。図4の制御ルーチンにおいてECU30は、ステップS12まで図2の制御ルーチンと同様に処理を進める。ステップS12でタンク内温度が判定温度T1より高いと判断した場合はステップS13に進み、以降は図2と同様に処理を進める。一方、ステップS12でタンク内温度が判定温度T1以下と判断した場合はステップS21に進み、ECU30はタンク内温度が所定の再減圧温度T2以下か否か判断する。再減圧温度T2には、判定温度T1より低い温度、例えば20°Cが設定される。タンク内温度が再減圧温度T2以下と判断した場合はステップS19に進み、以降は図2と同様に処理を進める。
【0031】
一方、タンク内温度が再減圧温度T2より高いと判断した場合はステップS22に進み、ECU30はタンク圧が中間圧力P3以下か否か判断する。中間圧力P3は、閉弁圧力P2より高く、かつ充填圧力Pfより低い値、例えば絶対圧で300kPaが設定される。タンク圧が中間圧力P3より高いと判断した場合はステップS20に進み、ECU30は流量制御弁23を全開にする。その後、今回の制御ルーチンを終了する。一方、タンク圧が中間圧力P3以下と判断した場合はステップS18に進み、ECU30は流量制御弁23を全閉にする。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0032】
図4の制御ルーチンにおいては、タンク内温度が判定温度T1より高い場合は流量制御弁23が全閉に維持されるので、タンク圧が充填圧力Pfに維持される。タンク内温度が判定温度T1以下かつ再減圧温度T2より高い場合は、タンク圧が中間圧力P3以下に調整される。そして、タンク内温度が再減圧温度T2以下になるとタンク圧が閉弁圧力P2に調整される。このようにタンク内温度に応じてタンク圧を徐々に低下させることにより、タンク圧の無駄な低下を防止しつつ蓄圧タンク21内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【0033】
図5は、タンク圧制御ルーチンの他の変形例を示している。この変形例では、図2に示した制御ルーチンと比較してステップS11とステップS12との間にステップS31の処理を追加した点が異なる。それ以外は、図2の制御ルーチンと同じであるため、図5において図2と同一の処理には同一の参照符号を付して説明を省略する。この変形例で追加したステップS31では、タンク内温度に基づいて閉弁圧力P2が設定される。この際、閉弁圧力P2は、タンク内温度が低いほど低くなるように設定される。具体的には、例えば図6に示したマップに基づいて閉弁圧力P2を設定すればよい。図6は、タンク内温度と閉弁圧力P2との関係の一例を示している。なお、この図において温度T1、T2は、上述した図4の制御ルーチンにて示した判定温度T1、再減圧温度T2である。そのため、温度T1には例えば40°Cが設定され、温度T2には例えば20°Cが設定される。また、圧力Pfは上述した充填圧力Pfである。圧力Pcは、タンク内温度が温度T1以下、かつ温度T2より高い場合に調整する圧力である。図6に示したように圧力Pcには、充填圧力Pfより低く、かつ大気圧より高い圧力が設定される。すなわち、上述した図4の制御ルーチンの中間圧力P3に相当する。そのため、この圧力Pcには、例えば絶対圧で300kPaが設定される。閉弁圧力P2は、例えばこの図に示した関係を予め実験などにより求めてECU30のROMにマップとして記憶させておき、このマップを参照して設定すればよい。なお、このステップS31を実行することにより、ECU30が本発明の閉弁圧力設定手段として機能する。
【0034】
図5に示した変形例では、タンク内温度が温度T1より高い場合は閉弁圧力P2として充填圧力Pfが設定されるので、タンク圧が充填圧力Pfに維持される。タンク内温度が温度T1以下かつ温度T2より高い場合は閉弁圧力P2として圧力Pcが設定されるので、タンク圧がこの圧力Pc以下に調整される。そして、タンク内温度が温度T2以下の場合は閉弁圧力P2として大気圧が設定されるので、タンク圧が大気圧以下に調整される。このようにタンク内温度に応じてタンク圧を徐々に低下させることにより、この変形例においてもタンク圧の無駄な低下を防止しつつ蓄圧タンク21内において凝縮水が発生することを抑制できる。
【0035】
なお、図5に示した変形例では、閉弁圧力P2をタンク内温度に応じて3段階に変更したが、さらに細かく4段階以上に変更してもよい。また、タンク内温度が温度T2に以下になった場合はタンク内温度が低いほど閉弁圧力P2が低くなるようにタンク内温度に応じて閉弁圧力P2をリニアに変更してもよい。
【0036】
図7は、本発明の蓄圧システムに設けられる蓄圧タンク21の変形例を示している。この蓄圧タンク21では、その外側を覆うようにエンジン1の冷却水を流通させる保温室40が設けられる。保温室40は、入口通路41及び出口通路42にてエンジン1の冷却水循環経路と接続されている。そして、この保温室40には、エンジン1の冷却水循環経路からエンジン1を冷却し、かつラジエータに戻される前の冷却水が導入される。出口通路42には、出口通路42を流れる冷却水の温度に応じて冷却水の流量を調整するためのサーモスタット43が設けられている。このサーモスタット43は、保温室40の冷却水の温度が所定の温度範囲、例えば40〜50°Cに制御されるように流量を調整する。
【0037】
この変形例では、保温室40に高温の冷却水を流すことにより、この冷却水で蓄圧タンク21の温度の低下を抑制できる。これにより、タンク内温度が低下することを抑制できるので、蓄圧タンク21内において凝縮水が発生することをさらに抑制できる。なお、このように蓄圧タンク21を保温することにより、保温室40が本発明の加熱手段として機能する。
【0038】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明の蓄圧システムはディーゼルエンジンに限らず、ガソリンその他の燃料を利用する各種の内燃機関に適用してよい。蓄圧タンクに主に貯留されるガスは空気に限定されず、排気を貯留してもよい。また、蓄圧タンクに貯留されているガスの供給先はターボ過給機のタービンに限定されない。蓄圧タンクのガスは、内燃機関に設けられて加圧されたガスを使用する種々の機器に供給してよい。
【0039】
蓄圧タンクの圧力を調整する手段は流量制御弁に限定されない。例えば、ガス通路とは別に蓄圧タンクに内部のガスを外部に放出するための放出口を設け、この放出口の開閉を弁で制御することにより蓄圧タンクの圧力を調整してもよい。その他、蓄圧タンクの内部の温度の低下に応じて蓄圧タンク内のガスを外部に放出することが可能な種々の機構を用いてよい。
【0040】
蓄圧タンクを加熱する加熱手段は、上述した形態で示したものに限定されない。例えば、上述した形態では保温室に高温の冷却水を流して蓄圧タンクを加熱したが、このように蓄圧タンクの外側に設けた保温室にエンジンの排気を流して蓄圧タンクを加熱してもよい。また、蓄圧タンクの外面に電気ヒータなど温度を調整可能なヒータを設け、このヒータで蓄圧タンクを加熱してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一形態に係る蓄圧システムが組み込まれた内燃機関を示す図。
【図2】ECUが実行するタンク圧制御ルーチンを示すフローチャート。
【図3】圧力が異なるガスにおけるガスの温度とガス1m当たりに存在できる水蒸気の量との関係の一例を示す図。
【図4】タンク圧制御ルーチンの変形例を示すフローチャート。
【図5】タンク圧制御ルーチンの他の変形例を示すフローチャート。
【図6】タンク内温度と閉弁圧力との関係の一例を示す図。
【図7】本発明の蓄圧システムに設けられる蓄圧タンクの変形例を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 内燃機関
7b タービン(所定の供給先)
20 蓄圧システム
21 蓄圧タンク
21a 吸着材
22 ガス通路
23 流量制御弁(圧力調整手段)
30 エンジンコントロールユニット(制御手段、開弁圧力設定手段)
40 保温室(加熱手段)
T1 判定温度
TL 下限温度
P1 判定圧力
P2 閉弁圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されたガスを溜めることが可能、かつそのガスを内燃機関に設定された所定の供給先に供給可能な蓄圧タンクと、前記蓄圧タンク内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備えた内燃機関用蓄圧システムにおいて、
前記蓄圧タンク内の温度が所定の判定温度以下、又は前記蓄圧タンク内の圧力が所定の判定圧力以上の少なくともいずれか一方の条件が満たされた場合に前記蓄圧タンク内の圧力が低下するように前記圧力調整手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とする内燃機関用蓄圧システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関が停止した場合に前記蓄圧タンク内の圧力が低下するように前記圧力調整手段を制御する請求項1に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項3】
前記蓄圧タンクに接続され、前記蓄圧タンクから前記所定の供給先にガスを供給するためのガス供給経路の一部となるガス通路と、前記ガス通路を全開する全開位置と前記供給通路を全閉する全閉位置との間で開度を調整可能な流量制御弁と、をさらに備え、
前記圧力調整手段は、前記流量制御弁であり、
前記制御手段は、前記流量制御弁を開弁させることにより前記蓄圧タンク内の圧力を低下させる請求項1又は2に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記蓄圧タンク内の圧力が前記所定の判定圧力より小さい値が設定される閉弁圧力以下になった場合、前記流量制御弁を前記全閉位置に切り替える請求項3に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項5】
前記蓄圧タンク内の温度に基づいて前記閉弁圧力を設定する閉弁圧力設定手段をさらに備えている請求項4に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項6】
前記閉弁圧力設定手段は、前記蓄圧タンク内の温度が低いほど前記閉弁圧力を低くする請求項5に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項7】
前記蓄圧タンクには、前記ガス供給経路を介して加圧されたガスが溜められ、
前記制御手段は、前記蓄圧タンク内の温度が所定の下限温度以下の場合、前記蓄圧タンク内へのガスの導入が禁止されるように前記流量制御弁を前記全閉位置に保持する請求項3〜6のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項8】
前記蓄圧タンクを加熱する加熱手段をさらに備えている請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。
【請求項9】
前記蓄圧タンク内には、ガスを吸着可能かつ吸着したガスを放出可能な吸着材が設けられている請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関用蓄圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−138801(P2010−138801A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315822(P2008−315822)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】