説明

内燃機関

【課題】車両内に別途構造物を設けることなく、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧する。
【解決手段】内燃機関1は、過給機13を備える。過給機13のタービン13tの回転を促進するために使用されるガスを畜圧する畜圧タンクを備える。過給機13を含む車両に備えられ、且つ畜圧タンクとは別の用途で使用される構造物の内部空間が、畜圧タンクとして使用される。構造物は、エンジン本体30とトランスミッション60との間に配置されたクラッチ部40のクラッチハウジングである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関における過給機の応答性を良くするために使用するガスの畜圧スペースに関する。
【背景技術】
【0002】
加速要求時などに過給機の応答性を良くするために、畜圧タンクに畜圧されたガスをタービンの回転促進に使用する内燃機関が提案されている。
【0003】
特許文献1は、フューエルカット時などにエンジン本体から排出されるガスを畜圧タンクに畜圧し、加速要求時などに畜圧したガスを放出してタービンの回転を促進する過給機付き内燃機関を開示する。
【特許文献1】特開2008−2276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、専用の畜圧タンクを車両に別途搭載する必要があるが、車両には畜圧タンクを搭載するスペースを確保するのが難しい。
【0005】
したがって本発明の目的は、車両内に別途構造物を設けることなく、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関は、過給機と、過給機のタービンの回転を促進するために使用されるガスを畜圧する畜圧タンクとを備え、過給機を含む車両に備えられ、且つ畜圧タンクとは別の用途で使用される構造物の内部空間が、畜圧タンクとして使用される。
【0007】
これにより、車両内に別途構造物を設けることなく、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧する畜圧タンクを搭載することが可能になる。畜圧タンクとして使用する構造物としては、クラッチハウジング、燃料タンク、及びスペアタイヤの空気室などが考えられる。
【0008】
好ましくは、構造物は、エンジン本体とトランスミッションとの間に配置されたクラッチハウジングである。
【0009】
クラッチディスクなどクラッチに関連する部材を収納するクラッチハウジングの内部空間には、畜圧したガスを貯蔵するスペースが存在するため、かかるスペースを畜圧タンクとして有効活用することが可能になる。
【0010】
さらに好ましくは、クラッチハウジングは、加圧時に畜圧タンクに畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材を有する。
【0011】
これにより、吸着材を設けない場合に比べて、クラッチハウジングに畜圧出来るガスの量を増やすことが可能になる。
【0012】
さらに好ましくは、走行時に取り込まれた空気をクラッチハウジングに当てるエアダクトをさらに備える。
【0013】
吸着材は温度が低い状態で吸着作用が高まる性質を有する。このため、内燃機関を含む車両の走行時に取り込まれた空気をクラッチハウジングに当てるエアダクトを設けて、走行風によりクラッチハウジングを冷却することにより、吸着材の吸着作用を高め、畜圧出来るガスの量をさらに増やすことが可能になる。
【0014】
また、好ましくは、クラッチハウジングは、密閉された畜圧室を有し、畜圧室が畜圧タンクとして使用される。
【0015】
これにより、ガスケットなどでクラッチハウジングとエンジン本体やトランスミッションとの間などを畜圧ガスの漏れ防止用に密閉する必要が無くなり、シールの簡素化が可能になる。畜圧室は、圧力によって形状が大きく変動しない固定ケースでもよいし、圧力によって形状が伸縮自在に変化する袋状のものであってもよい。但し、いずれの場合にも、クラッチディスクなどクラッチハウジングに設けられた動きのある部材との物理的な干渉が起きない位置に配置する必要がある。
【0016】
また、好ましくは、構造物は、燃料タンクである。
【0017】
燃料タンクの内部空間には、畜圧したガスを貯蔵するスペースが存在するため、かかるスペースを畜圧タンクとして有効活用することが可能になる。但し、燃料タンクに貯蔵された燃料の量に応じて、畜圧したガスを貯蔵するスペースは変動する。
【0018】
さらに好ましくは、燃料タンクは、内部に密閉され且つ収縮自在な畜圧室を有し、畜圧室が畜圧タンクとして使用される。
【0019】
これにより、燃料タンクの内部空間が、ガスを畜圧するスペースと、燃料を貯蔵するスペースとが畜圧室で区切られるため、畜圧ガスと燃料とが混ざり合いを防止することが可能になる。
【0020】
さらに好ましくは、畜圧室は、加圧時に畜圧室に畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材を有する。
【0021】
これにより、吸着材を設けない場合に比べて、畜圧室に畜圧出来るガスの量を増やすことが可能になる。
【0022】
また、好ましくは、燃料を給油するために使用される給油口が開けられる前に、燃料タンクに畜圧されたガスは、放出される。
【0023】
これにより、給油時に、燃料タンクに畜圧されたガスの圧力を下げることで、給油を行いやすい状態にすることが可能になる。
【0024】
また、好ましくは、燃料タンクに畜圧されたガスの圧力に応じて、燃料タンクから燃料を汲み上げるポンプの駆動量が調整される。
【0025】
燃料タンクに畜圧されたガスの圧力は、燃料を圧送する力の一部として使用することが出来る。このため、畜圧されたガスの圧力に応じて、燃料を汲み上げるポンプの駆動量を軽減することが可能になる。
【0026】
また、好ましくは、構造物は、スペアタイヤであり、スペアタイヤの空気室が畜圧タンクとして使用される。
【0027】
スペアタイヤの空気室の内部空間には、畜圧したガスを貯蔵するスペースが存在するため、かかるスペースを畜圧タンクとして有効活用することが可能になる。
【0028】
さらに好ましくは、内燃機関を含む車両の走行に使用されるタイヤの空気圧に基づいて、畜圧タンクに畜圧されたガスの放出が制限される。
【0029】
車両の走行に使用されるタイヤがパンクなどでスペアタイヤとの交換が必要になった場合には、スペアタイヤの空気室に畜圧されたガスの放出を禁止し、スペアタイヤを走行に使用するタイヤとして使用可能な状態を維持する。また、パンク時には、過給機の応答性を良くすることが、却ってタイヤや車両を傷める可能性があるため、畜圧されたガスの放出を禁止して、かかる問題の発生を抑える。
【0030】
また、好ましくは、スペアタイヤは中子式のランフラットタイヤであり、スペアタイヤの中子と、ホイールとの間に、加圧時に畜圧タンクに畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材が設けられる。
【0031】
これにより、吸着材を設けない場合に比べて、スペアタイヤの空気室に畜圧出来るガスの量を増やすことが可能になる。また、スペアタイヤの空気室を畜圧タンクとして使用する場合、空気室に畜圧されたガスがタービンの回転促進に使用された直後など、十分に空気室に畜圧されたガスが貯蔵されていない状態が起こり得る。このようにスペアタイヤの空気室に十分にガスが畜圧されていない状況下で、走行に使用しているタイヤがパンクし、スペアタイヤを走行用のタイヤとして使用する必要性に迫られた場合であっても、スペアタイヤが吸着材を保持する中子を使ったランフラットタイヤとして機能するため、パンクしたタイヤに代えて走行に使用することができる。
【0032】
また、好ましくは、スペアタイヤを下面と側面で支える収納ケースと、スペアタイヤの上面をカバーする収納フタは、スペアタイヤの外形に沿った形状を有する。
【0033】
これにより、収納ケースや、収納フタの形状が、スペアタイヤの外形に沿っていない形態に比べて、スペアタイヤがガスの畜圧により膨張する余地を少なくすることで、膨張を抑制し、耐圧性を高めることが可能になる。
【0034】
また、好ましくは、スペアタイヤに畜圧されるガスの通路と、スペアタイヤの空気室との接続部分には、結合時に開弁し着脱時に閉弁する継手が用いられる。
【0035】
このため、スペアタイヤを畜圧されたガスの通路から脱着した場合には、畜圧ガス穴にある継手が閉弁し、スペアタイヤからの空気漏れを防ぐことが可能になる。従って、脱着後、スペアタイヤを直ちに走行に使用することも可能になる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように本発明によれば、車両内に別途構造物を設けることなく、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の第1実施形態について、図を用いて説明する。内燃機関1は、制御部5、過給機13、ディーゼルエンジン本体30、クラッチ部40、トランスミッション60、燃料タンク65、コンプレッサ入口側吸気通路71、コンプレッサ出口側吸気通路72、吸気マニホールド73、排気マニホールド74、タービン入口側排気通路75、及びタービン出口側排気通路76を備える。
【0038】
制御部5は、CPU、制御プログラムを格納したROM、及び各種データを格納するRAM等を有し、各種センサからの信号が入力され、また、畜圧ガスバルブ38等に制御信号を出力して内燃機関1を含む車両の各部を制御する。
【0039】
内燃機関1の運転中、ディーゼルエンジン本体30の各シリンダーの燃焼室には、コンプレッサ入口側吸気通路71、コンプレッサ出口側吸気通路72、及び吸気マニホールド73を介して、空気が吸入される。燃料タンク65から高圧サプライポンプ33によって汲み上げられ、コモンレール34を介してインジェクタ31aから燃焼室に噴射された燃料は、吸入された空気と共に混合気を形成する。混合気の燃焼による爆発力に応じたピストンの往復運動により、クランクシャフト42が回転する(図2参照)。
【0040】
クランクシャフト42の回転力は、クラッチ部40のクラッチハウジング41の内部空間に設けられたフライホイール43、クラッチディスク44、及びリリースフォーク46を介して、トランスミッション60のミッションインプットシャフト45に伝達される。第1実施形態では、クラッチハウジング41は、クラッチに関連する部品の収納の他、燃焼室から排出されたガスの畜圧タンクとしても使用される。
【0041】
燃焼により発生した排気ガスは、排気マニホールド74、タービン入口側排気通路75、及びタービン出口側排気通路76を介して排出される。但し、排気ガスの一部は、EGR通路77を介して吸気側に帰還する。また、フューエルカット時において燃焼室から排出されるガス(空気)の一部は、畜圧ガス通路37を介して畜圧タンクとして使用されるクラッチハウジング41の内部空間に畜圧される。
【0042】
過給機13は、タービン13t、及びコンプレッサ13cを有する。タービン13tの入口側は、排気マニホールド74に連通するタービン入口側排気通路75と接続される。タービン13tの出口側は、排気ガス浄化プリ触媒81、DPF(Diesel ParticulateFilter)82、及び排気ガス浄化メイン触媒83に連通するタービン出口側排気通路76と接続される。排気燃料添加インジェクタ31bから排気マニホールド74に噴射される燃料は、排気ガス浄化プリ触媒81におけるNOの還元や、DPF82で捕集されたPMを燃焼させるために使用される。
【0043】
コンプレッサ13cの入口側は、コンプレッサ入口側吸気通路71と接続される。コンプレッサ入口側吸気通路71には、エアクリーナ11、エアクリーナを流れた空気量を検出するエアフローメータ(不図示)が設けられる。コンプレッサ13cの出口側は、吸気マニホールド73に連通するコンプレッサ出口側吸気通路72と接続される。コンプレッサ出口側吸気通路72には、インタークーラ23、及びスロットルバルブ25が設けられる。
【0044】
排気マニホールド74と、コンプレッサ出口側吸気通路72のスロットルバルブ25と吸気マニホールド73との間と連通し、ディーゼルエンジン本体30から排出された排気ガスの一部を吸気側に帰還するEGR通路77が設けられる。EGR通路77には、帰還排気ガスの量を調整するEGRバルブ78が設けられる。
【0045】
排気マニホールド74には、排気遮断バルブ36が設けられる。また、排気マニホールド74とクラッチハウジング41の畜圧ガス穴52とを連通する畜圧ガス通路37が設けられる。排気遮断バルブ36は、フューエルカット時で且つクラッチハウジング41に畜圧されたガスの圧力が低い場合に、燃料室から排出されるガスの一部が畜圧ガス通路37を介してクラッチハウジング41に畜圧されるように開度を小さくし、その他の場合には開度を大きくする。畜圧ガス通路37には畜圧ガスバルブ38、及び圧力センサ39が設けられる。畜圧ガスバルブ38は、燃焼室から排出されるガスをクラッチハウジング41に畜圧する場合、及びクラッチハウジング41に畜圧されたガスを放出する場合に、開度を大きくし、その他の場合に開度を小さくする。圧力センサ39は、畜圧したガスの圧力を検出する。
【0046】
クラッチハウジング41へのガスの畜圧は、圧力センサ39によって検出されるクラッチハウジング41に畜圧されたガスの圧力に応じて行われる。すなわち、クラッチハウジング41に畜圧されたガスの圧力が高い場合には、フューエルカットが行われる時であっても、排気遮断バルブ36や畜圧ガスバルブ38は閉弁状態にされ、クラッチハウジング41へのガスの畜圧は行われない。
【0047】
クラッチハウジング41に畜圧されたガスは、加速要求時などに放出される。放出されたガスは、畜圧ガス通路37、排気マニホールド74、及びタービン入口側排気通路75を介して、タービン13tに到達し、タービン13tの回転を促進する。タービン13tの回転は、通常、ディーゼルエンジン本体30の燃焼室から排出される排気ガスによって行われるが、排気流量が少ない場合には、排気ガスの排出エネルギーだけではタービン13tを早期に高速回転状態にすることが出来ない。このため、第1実施形態では、クラッチハウジング41に畜圧されたガスの放出エネルギーをタービン13tの回転エネルギーに変えることで、排気ガスの排出エネルギーの不足分を補い、過給機13の応答性を良くする。
【0048】
クラッチハウジング41を畜圧タンクとして使用するため、クラッチハウジング41の側面の、畜圧ガス通路37と連通する部分には畜圧ガス穴52が設けられる。また、クラッチハウジング41のディーゼルエンジン本体30やトランスミッションとの接続部分47には、畜圧されたガスの漏れを防ぐガスケットが設けられる。また、かかる接続部分47であって、クランクシャフト42、ミッションインプットシャフト45の軸周り部分48には、クラッチハウジング41を畜圧タンクとして使用しない形態に比べて、耐圧性を高めたオイルシールが施される。シール幅やシール面圧を調整することにより、オイルシールの耐圧性を高めることが出来る。また、クラッチハウジング41の内部から外部へ突出するリリースフォーク46とクラッチハウジング41との間には、畜圧されたガスの漏れを防ぐゴムブーツ49が設けられる。
【0049】
クラッチディスク44などクラッチに関連する部材を収納するクラッチハウジング41の内部空間には、畜圧されたガスを貯蔵するスペースが存在する。かかるスペースについて、畜圧されたガスの漏れを防ぐシールを施すことにより、クラッチハウジング41を畜圧タンクとして有効活用することが可能になる。クラッチハウジング41は、マニュアルトランスミッション車には通常備えられているものであ。このため、第1実施形態では、畜圧タンクを搭載するために車両内に別途構造物を設けることなく、車両に通常備えられた構造物(クラッチハウジング)の内部空間を使って、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧するスペース(畜圧タンク)を確保することが可能になる。
【0050】
なお、クラッチハウジング41の内部空間に畜圧出来るガスの量を増やすため、クラッチハウジング41の畜圧されたガスが貯蔵される空間に、加圧時にガスを吸着し減圧時に吸着したガスを放出する活性炭などの吸着材50、及び吸着材50を保持し且つ吸着材50の飛散を防止し且つ通気性を有する吸着材ケース51を設けるのが望ましい。また、吸着材50は温度が低い状態で吸着作用が高まる性質を有するため、内燃機関1を含む車両の走行時に取り込まれた空気をクラッチハウジング41の側面に当てるエアダクト55を設けて、走行風によりクラッチハウジング41を冷却するのが望ましい。
【0051】
また、クラッチハウジング41の内部空間に、畜圧ガス通路37と接続される部分以外が密閉された畜圧室53を設け、畜圧室53に畜圧されたガスを貯蔵する形態であってもよい(図3参照)。この場合、ガスケットなどでクラッチハウジング41を畜圧ガスの漏れ防止用に密閉する必要は無く、シールの簡素化が可能になる。畜圧室53は、圧力によって形状が大きく変動しない固定ケースでもよいし、圧力によって形状が伸縮自在に変化する袋状のものであってもよい。但し、いずれの場合にも、クラッチディスク44などクラッチハウジング41に設けられた動きのある部材との物理的な干渉が起きない位置に配置する必要がある。
【0052】
次に、図4を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、クラッチハウジング41を畜圧タンクとして使用する形態を説明したが、第2実施形態では、燃料タンク65を畜圧タンクとして使用する。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
第2実施形態では、燃料タンク65に畜圧ガス通路37が連結され、燃料タンク65の畜圧ガス通路37と連通する部分には畜圧ガス穴52が設けられる。燃料タンク65へのガスの畜圧は、圧力センサ39によって検出される燃料タンク65に畜圧されたガスの圧力に応じて行われる。すなわち、燃料タンク65に畜圧されたガスの圧力が高い場合には、フューエルカットが行われる時であっても、排気遮断バルブ36や畜圧ガスバルブ38は閉弁状態にされ、燃料タンク65へのガスの畜圧は行われない。例えば、燃料タンク65に貯蔵された燃料が多い場合には、少量のガスを畜圧することで燃料タンク65に畜圧されたガスの圧力が高くなるため、畜圧出来るガスの量は少なくなる。
【0054】
また、燃料タンク65に燃料を供給するためのフューエルリッド(不図示)を開ける指示に対応して、燃料タンク65に畜圧されたガスが放出される。具体的には、運転者などがフューエルリッドオープナーを使ってフューエルリッドを開ける指示(フューエルリッドのロック状態を解除する指示)を検出するロック解除センサ66が設けられ、かかる指示を検出した場合には、制御部5は、畜圧ガスバルブ38を開弁する。これにより、手動で給油口のキャップが開けられるまでに、燃料タンク65に畜圧されたガスが放出され、燃料タンク65に畜圧されたガスの圧力が下がり、燃料タンク65への給油が行いやすい状態にされる。但し、ロック解除センサ66に代えて、内燃機関1の運転を停止する指示やドアロックを解除する指示に応じて、畜圧されたガスを放出する形態であってもよい。
【0055】
これにより、燃料タンク65を畜圧タンクとして活用することが可能になる。従って、第2実施形態では、畜圧タンクを搭載するために車両内に別途構造物を設けることなく、車両に通常備えられた構造物(燃料タンク)の内部空間を使って、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧するスペース(畜圧タンク)を確保することが可能になる。
【0056】
なお、第2実施形態では、燃料タンク65に畜圧されたガスの圧力を、燃料を圧送する力の一部として使用することが出来る。この場合、畜圧されたガスの圧力に応じて、高圧サプライポンプ33の駆動量を軽減することが可能になる。
【0057】
また、燃料タンク65の内部空間に、畜圧ガス通路37と接続される部分以外が密閉された畜圧室53を設け、畜圧室53に畜圧されたガスを貯蔵する形態であってもよい(図5参照)。畜圧室53は、圧力によって形状が伸縮自在に変化する袋状のものが使用される。この場合、燃料タンク65の内部空間が、畜圧されたガスを貯蔵するスペースと、燃料を貯蔵するスペースとが畜圧室53で区切られるため、畜圧ガスと燃料との混ざり合いを防止することが可能になる。
【0058】
また、畜圧室53を設けた場合には、燃料タンク65に畜圧出来るガスの量を増やすため、畜圧室53の畜圧されたガスが貯蔵される空間に、加圧時にガスを吸着し減圧時に吸着したガスを放出する活性炭などの吸着材50、及び吸着材50を保持し且つ吸着材50の飛散を防止し且つ通気性を有する吸着材ケース51を設けることが可能になる。
【0059】
次に、図6を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、クラッチハウジング41が畜圧タンクとして使用され、第2実施形態では、燃料タンク65が畜圧タンクとして使用される形態を説明したが、第3実施形態では、スペアタイヤ90のタイヤ91とホイール92のリムとの間に形成された空気室が畜圧タンクとして使用される。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0060】
第3実施形態では、スペアタイヤ90の空気室に畜圧ガス通路37が連結され、スペアタイヤ90の畜圧ガス通路37と連通する部分には畜圧ガス穴52が設けられる。畜圧ガス穴52における畜圧ガス通路37とスペアタイヤ90の空気室との接続部分には、ワンタッチで着脱可能であり、且つ着脱時にスペアタイヤ90からの空気漏れが殆ど生じない特徴を備えた密閉式の継手(不図示)が用いられる。この継手によって、畜圧ガス通路37とスペアタイヤ90とは、結合時には開弁し着脱時には閉弁する状態で、雌雄結合される。このため、スペアタイヤ90を畜圧ガス通路37から脱着した場合には、畜圧ガス穴52にある継手が閉弁し、スペアタイヤ90からの空気漏れを防ぐことが可能になる。従って、脱着後、スペアタイヤ90を直ちに走行に使用することも可能になる。スペアタイヤ90の空気室へのガスの畜圧は、圧力センサ39によって検出されるスペアタイヤ90の空気室に畜圧されたガスの圧力に応じて行われる。すなわち、スペアタイヤ90の空気室に畜圧されたガスの圧力が高い場合には、フューエルカットが行われる時であっても、排気遮断バルブ36や畜圧ガスバルブ38は閉弁状態にされ、スペアタイヤ90の空気室へのガスの畜圧は行われない。
【0061】
これにより、スペアタイヤ90の空気室を畜圧タンクとして活用することが可能になる。従って、第3実施形態では、畜圧タンクを搭載するために車両内に別途構造物を設けることなく、車両に通常備えられた構造物(スペアタイヤの空気室)の内部空間を使って、過給機のタービンの回転を促進するために使用するガスを畜圧するスペース(畜圧タンク)を確保することが可能になる。
【0062】
また、第3実施形態では、走行に使用されているタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ93が設けられ、随時空気圧に関する情報が、制御部5に送信される。制御部5は、空気圧に基づいて、走行に使用されているタイヤの少なくとも1つの空気圧が低下しパンクした状態にあると判断すると、スペアタイヤ90に畜圧されたガスの放出を禁止する。但し、畜圧は禁止しない。走行に使用されているタイヤのパンク時には、過給機13の応答性を良くすることが、却ってタイヤや車両を傷める可能性があるためである。また、スペアタイヤ90がパンクしたタイヤに代えて走行に使用されるため、スペアタイヤ90の空気圧を出来るだけ多く確保するためである。
【0063】
また、スペアタイヤ90の空気室に畜圧出来るガスの量を増やすため、スペアタイヤ90の空気室の畜圧されたガスが貯蔵される空間に、加圧時にガスを吸着し減圧時に吸着したガスを放出する活性炭などの吸着材50、及び吸着材50を保持し且つ吸着材50の飛散を防止し且つ通気性を有する吸着材ケース51を設けるのが望ましい。特に吸着材ケース51が、ホイール92のリムに装着され、中子の形状、及び強度を有する場合には、スペアタイヤ90をランフラットタイヤとして機能することが可能になる。この場合、スペアタイヤ90の空気室に十分にガスが畜圧されていない状態でも、パンクしたタイヤに代えて走行に使用することが可能になる。
【0064】
また、スペアタイヤ90を下面、及び側面で支える収納ケース95、ネジ97を使って上面をカバーする収納フタ96の形状を、スペアタイヤ90の外形に沿ったものにするのが望ましい。収納ケース95や、収納フタ96の形状が、スペアタイヤ90の外形に沿っていない形態に比べて、スペアタイヤ90がガスの畜圧により膨張する余地を少なくすることで、膨張を抑制し、耐圧性を高めることが可能になる。
【0065】
なお、第1〜第3実施形態において、クラッチハウジング41などの畜圧タンクに畜圧されるガスは、フューエルカット時にディーゼルエンジン本体30から排出された空気であることが望ましいが、畜圧されたガスでタービン13tの回転を促進する観点からは、畜圧タンクに畜圧されるガスは、通常運転時にディーゼルエンジン本体30から排出された排気ガスであってもよい。
【0066】
また、過給機付き内燃機関としてディーゼルエンジンを使ったものを使って説明したが、ガソリンエンジンなど他の過給機付き内燃機関であってもよい。
【0067】
また、第2実施形態では、燃料タンク65に貯蔵された燃料が多い場合には、畜圧出来るガスの量が制限される。また、第3実施形態では、スペアタイヤ90をパンクしたタイヤの代わりに走行に使用する場合は、ガスを畜圧することが出来ない。このため、第2、第3実施形態では、常時ガスを畜圧出来る畜圧タンクを別途備えておくのが望ましい。
【0068】
第1〜第3実施形態のいずれにおいても、畜圧出来るガスの量は多ければ多いほどよい。畜圧出来るガスの量が多ければ、加速要求時だけでなく、中低負荷運転時などにも畜圧したガスの放出により、タービン13tの回転を促進して、過給圧を上げることが可能になる。過給圧が上がると、PMの排出量が抑えられるほか、EGR率を上げてNOの排出量を抑えることも可能になる。
【0069】
また、クラッチハウジング41などの畜圧タンクに畜圧されるガスは、ディーゼルエンジン本体30から排出されたガスである形態を説明したが、別途ポンプなどを使って取り入れられた空気を畜圧タンクに畜圧する形態であってもよい。
【0070】
また、畜圧タンクとして使用されるものは、クラッチハウジング41、燃料タンク65、及びスペアタイヤ90に限られるものではなく、車両に備えられた他の構造物の内部空間であってもよい。例えば、サイドシル、フロントピラー、及びセンターピラーの内部空間が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態における内燃機関の構成図である。
【図2】畜圧室を設けない場合のクラッチハウジングの内部構造を示す模式図である。
【図3】畜圧室を設けた場合のクラッチハウジングの内部構造を示す模式図である。
【図4】燃料タンクに畜圧室を設けない場合の第2実施形態における内燃機関の構成図である。
【図5】燃料タンクに畜圧室を設けた場合の第2実施形態における内燃機関の構成図である。
【図6】第3実施形態における内燃機関の構成図である。
【図7】スペアタイヤのタイヤの断面構成図である。
【図8】スペアタイヤを収納ケースに収納した状態における断面構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 内燃機関
5 制御部
13 過給機
13c コンプレッサ
13t タービン
30 ディーゼルエンジン本体
31a インジェクタ
31b 排気燃料添加インジェクタ
33 高圧サプライポンプ
34 コモンレール
36 排気遮断バルブ
37 畜圧ガス通路
38 畜圧ガスバルブ
39 圧力センサ
40 クラッチ部
41 クラッチハウジング(畜圧タンク)
42 エンジンクランクシャフト
46 リリースフォーク
47 クラッチハウジングのディーゼルエンジン本体やトランスミッションとの接続部分
48 クランクシャフト、ミッションインプットシャフトの軸周り部分
49 ゴムブーツ
50 吸着材
51 吸着材ケース
52 畜圧ガス穴
53 畜圧室
55 エアダクト
60 トランスミッション
65 燃料タンク(畜圧タンク)
66 給油口ロック解除センサ
71 コンプレッサ入口側吸気通路
72 コンプレッサ出口側吸気通路
75 タービン入口側排気通路
76 タービン出口側排気通路
90 スペアタイヤ(畜圧タンク)
91 タイヤ
92 ホイール
93 空気圧センサ
95 収納ケース
96 収納フタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機と、
前記過給機のタービンの回転を促進するために使用されるガスを畜圧する畜圧タンクとを備え、
前記過給機を含む車両に備えられ、且つ前記畜圧タンクとは別の用途で使用される構造物の内部空間が、前記畜圧タンクとして使用されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記構造物は、エンジン本体とトランスミッションとの間に配置されたクラッチハウジングであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記クラッチハウジングは、加圧時に前記畜圧タンクに畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材を有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
走行時に取り込まれた空気を前記クラッチハウジングに当てるエアダクトをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記クラッチハウジングは、密閉された畜圧室を有し、前記畜圧室が前記畜圧タンクとして使用されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記構造物は、燃料タンクであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記燃料タンクは、内部に密閉され且つ収縮自在な畜圧室を有し、前記畜圧室が前記畜圧タンクとして使用されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記畜圧室は、加圧時に前記畜圧室に畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材を有することを特徴とする請求項7に記載の内燃機関。
【請求項9】
燃料を給油するために使用される給油口が開けられる前に、前記燃料タンクに畜圧されたガスは、放出されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記燃料タンクに畜圧されたガスの圧力に応じて、前記燃料タンクから燃料を汲み上げるポンプの駆動量が調整されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
【請求項11】
前記構造物は、スペアタイヤであり、前記スペアタイヤの空気室が前記畜圧タンクとして使用されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項12】
前記内燃機関を含む車両の走行に使用されるタイヤの空気圧に基づいて、前記畜圧タンクに畜圧されたガスの放出が制限されることを特徴とする請求項11に記載の内燃機関。
【請求項13】
前記スペアタイヤは中子式のランフラットタイヤであり、
前記スペアタイヤの中子と、ホイールとの間に、加圧時に前記畜圧タンクに畜圧されたガスを吸着し、減圧時に吸着したガスを放出する吸着材が設けられることを特徴とする請求項11に記載の内燃機関。
【請求項14】
前記スペアタイヤを下面と側面で支える収納ケースと、前記スペアタイヤの上面をカバーする収納フタは、前記スペアタイヤの外形に沿った形状を有することを特徴とする請求項11に記載の内燃機関。
【請求項15】
前記スペアタイヤに畜圧されるガスの通路と、前記スペアタイヤの空気室との接続部分には、結合時に開弁し着脱時に閉弁する継手が用いられることを特徴とする請求項11に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−270469(P2009−270469A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120816(P2008−120816)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】