説明

内燃機関

【課題】製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制する。
【解決手段】下側のオイル通路224において、オイル通路224のうちシリンダボア223から受熱する範囲(下流側領域HA)では、オイル通路224のシリンダボア側の壁面(第1拡幅部225)と、その内部を流下するオイルとの間に空気層225aを形成するべく、オイル通路224の壁面形状が形成されている。具体的には、オイル通路22の壁面4には、オイル通路224のうちシリンダボア223から受熱する範囲である下流側領域HAにおいて、シリンダボア223側に拡幅されている第1拡幅部225が形成されている。また、オイル通路224の壁面には、第1拡幅部225の上端位置において、シリンダボア223側から内側に向けて(図5では右側に向けて)斜め下方に傾斜している第1傾斜部227が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドからシリンダブロックへ被潤滑部材を潤滑するオイルを流下させる内燃機関に関する。特に、車両等に搭載されるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドからシリンダブロックへ被潤滑部材を潤滑するオイルを流下させる内燃機関が知られている。また、シリンダヘッド又はシリンダブロックに形成されたオイル通路の壁面を流下するオイルの受熱による油温上昇、又は、焼き付きを防止する種々の装置等が提案されている。
【0003】
例えば、シリンダヘッドの排気ポート開口側面から排気ポートとオイルリターン通路の間に入り込む凹部を形成し、この凹部によって排気ポートとオイルリターン通路の間を断熱するシリンダヘッドの構造が開示されている(特許文献1参照)。このシリンダヘッドの構造によれば、オイルリターン通路を流下するオイルの、排気ポートの熱による油温上昇、オイル性状の劣化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−72041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシリンダヘッドの構造では、凹部を形成する必要があるため、製造コストが増大する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することが可能な内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関は、以下のように構成されている。
【0008】
すなわち、本発明に係る内燃機関は、シリンダヘッドからシリンダブロックへ被潤滑部材を潤滑するオイルを流下させる内燃機関であって、前記シリンダブロックが、ピストンが摺動可能に収納されたシリンダボアと、前記シリンダボアの外周に沿って冷却水が流通可能に構成されたウォータジャケットと、前記ウォータジャケットに近接して形成され、前記シリンダヘッドから流下したオイルを上下方向に流通可能に構成されたオイル通路と、を備え、前記オイル通路が、当該オイル通路は前記ウォータジャケット近傍の領域と比較して、それよりも下流側の領域では断面積が異なっており、前記ウォータジャケット近傍の領域では断面積が狭く、それよりも下流側の領域では断面積が大きい形状に形成されており、当該オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成するべく、当該オイル通路の壁面形状が形成されていることを特徴としている。
【0009】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記シリンダヘッドから流下したオイルを上下方向に流通可能に構成されたオイル通路が、前記ウォータジャケットに近接して形成され、当該オイル通路は前記ウォータジャケット近傍の領域と比較して、それよりも下流側の領域では断面積が異なっており、前記ウォータジャケット近傍の領域では断面積が狭く、それよりも下流側の領域では断面積が大きい形状に形成されており、当該オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成するべく、当該オイル通路の壁面形状が形成されているため、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができる。
【0010】
すなわち、例えば、前記オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面を前記シリンダボア側に後退させることによって、前記オイル通路を前記シリンダボア側に拡幅することができ、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成することができるため、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができるのである。
【0011】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイル通路の壁面が、当該オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記シリンダボア側に拡幅されている第1拡幅部を備えることが好ましい。
【0012】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記オイル通路の壁面が、前記シリンダボア側に拡幅されている第1拡幅部を備えるため、前記第1拡幅部において、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができる。
【0013】
すなわち、前記オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面を前記シリンダボア側に後退させることによって、前記オイル通路を前記シリンダボア側に拡幅することができるため、製造コストの増大を回避することができる。また、前記オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記オイル通路の壁面が前記シリンダボア側に拡幅されている第1拡幅部を備えるため、当該第1拡幅部の上端部より下側に、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成することができるため、オイルの受熱を抑制することができるのである。
【0014】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイル通路の壁面が、前記第1拡幅部の上端位置において、前記シリンダボア側から内側に向けて斜め下方に傾斜している第1傾斜部を更に備えることが好ましい。
【0015】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記オイル通路の壁面が、前記第1拡幅部の上端位置において、前記シリンダボア側から内側に向けて斜め下方に傾斜している傾斜部を備えるため、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を確実に形成することができる。
【0016】
すなわち、前記第1拡幅部の上端位置に形成された第1傾斜部は、前記オイル通路の壁面が前記シリンダボア側から内側に向けて斜め下方に傾斜して形成されているため、当該第1傾斜部において、オイルが前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面を伝って流れることを阻止することができるので、前記オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を確実に形成することができるのである。
【0017】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイル通路の壁面が、当該オイル通路のうち前記シリンダブロックの外壁面から受熱する範囲において、前記シリンダブロックの外壁面側に拡幅されている第2拡幅部を備えることが好ましい。
【0018】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記オイル通路の壁面が、当該オイル通路のうち前記シリンダブロックの外壁面から受熱する範囲において、前記シリンダブロックの外壁面側に拡幅されている第2拡幅部を備えるため、前記第2拡幅部において、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができる。
【0019】
例えば、前記オイル通路のうち前記シリンダブロックの外壁面から受熱する範囲において、前記オイル通路の前記シリンダブロックの外壁面側の壁面を前記シリンダブロックの外壁面側に後退させることによって、前記オイル通路の壁面を前記シリンダブロックの外壁面側に拡幅することができ、前記オイル通路の前記シリンダブロックの外壁面側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成することができるため、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができるのである。
【0020】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイル通路の壁面が、前記第2拡幅部の上端位置において、前記シリンダブロックの外壁面側から内側に向けて斜め下方に傾斜している第2傾斜部を更に備えることが好ましい。
【0021】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記第2拡幅部の上端位置において、前記オイル通路の壁面が、前記シリンダブロックの外壁面側から内側に向けて斜め下方に傾斜している第2傾斜部を備えるため、前記オイル通路の前記シリンダブロックの外壁面側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を確実に形成することができる。
【0022】
すなわち、前記第2拡幅部の上端位置に形成された第2傾斜部は、前記オイル通路の壁面が前記シリンダブロックの外壁面側から内側に向けて斜め下方に傾斜し形成されているため、当該第2傾斜部において、オイルが前記オイル通路の前記シリンダブロックの外壁面側の壁面を伝って流れることを阻止することができるので、前記オイル通路の前記シリンダブロックの外壁面側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を確実に形成することができるのである。
【0023】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイル通路が、当該オイル通路のうち前記下流側の領域の上端位置近傍における前記シリンダボア側の壁面に、下方内側又は内側に向けて突出して形成された凸部を更に備えることが好ましい。
【0024】
かかる構成を備える内燃機関によれば、当該オイル通路のうち前記下流側の領域の上端位置近傍における前記シリンダボア側の壁面に、下方内側又は内側に向けて突出して形成された凸部を備えるため、簡素な構成で、当該凸部の下方に空気層を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る内燃機関によれば、前記シリンダヘッドから流下したオイルを上下方向に流通可能に構成されたオイル通路が、前記ウォータジャケットに近接して形成され、当該オイル通路は前記ウォータジャケット近傍の領域と比較して、それよりも下流側の領域では断面積が異なっており、前記ウォータジャケット近傍の領域では断面積が狭く、それよりも下流側の領域では断面積が大きい形状に形成されており、当該オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成するべく、当該オイル通路の壁面形状が形成されているため、製造コストの増大を回避すると共に、オイルの受熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るエンジンにおけるオイルの循環系統の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示すエンジンのエンジンブロックの一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示すシリンダブロックに形成されたオイル通路の一例を示す平面図である。
【図4】図3に示すシリンダブロックのA−A断面図の一例を示す図である。
【図5】本発明に係るシリンダブロックのオイル通路の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る内燃機関の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
−オイル循環系統−
まず、図1を参照して、本発明に係るエンジンにおけるオイルの循環系統について説明する。図1は、本発明に係るエンジン1におけるオイルの循環系統の一例を示す構成図である。エンジン1は、ピストン11、クランクシャフト12、カムシャフト13等の種々の被潤滑機構が配設されるエンジンブロック2と、当該種々の被潤滑機構を潤滑するオイルをエンジン1内で循環させる潤滑系統3と、を備えている。ここで、エンジン1は、特許請求の範囲に記載の「内燃機関」に相当する。
【0029】
エンジンブロック2は、シリンダヘッド21及びシリンダブロック22(図2参照)を備え、ピストン11、クランクシャフト12、カムシャフト13等の種々の被潤滑部材が配設されている。エンジンブロック2の下端部には、これらの被潤滑部材に対して供給されるべきオイルを貯留する部材であるオイルパン30が配設されている。
【0030】
潤滑系統3は、オイルパン30の内側に貯留されているオイルを上記の種々の被潤滑部材へ供給可能とするべく、以下の通り構成されている。
【0031】
オイルパン30の内側には、オイルストレーナ31が配設されている。オイルストレーナ31は、オイル内の異物等を除去するものであって、オイルパン30に貯留されているオイルを吸い込むための吸込口31aを有し、ストレーナ流路33を介して、エンジンブロック2に設けられたオイルポンプ32に接続されている。
【0032】
オイルポンプ32は、オイルパン30に収納されたオイルを吸い上げて、オイルフィルタ34を介して、被潤滑部材に対して、潤滑油として供給するポンプであって、例えば、ロータリーポンプ等から構成されている。また、オイルポンプ32のロータは、クランクシャフト12の回転に伴って回転するべく、クランクシャフト12に係合されている。更に、オイルポンプ32は、エンジンブロック2の外部に設けられたオイルフィルタ34のオイル入口と、オイル輸送管35を介して接続されている。オイルフィルタ34のオイル出口は、上記の種々の被潤滑部材に向かうオイル流路として設けられたオイル供給管36と接続されている。
【0033】
エンジン1の運転が開始されると、クランクシャフト12の回転に伴ってオイルポンプ32が駆動される。そして、図1に矢印Vで示すように、オイルポンプ32は、オイルパン30に貯留されているオイルをオイルストレーナ31の吸込口31aから吸入し、吸入されたオイルを、オイル輸送管35、オイルフィルタ34、オイル供給管36を順次経由して、エンジンブロック2内の潤滑対象である被潤滑部材に供給する。このようにして被潤滑部材に供給されたオイルは、被潤滑部材にて潤滑油として機能すると共に、被潤滑部材の動作時に生じる摩擦熱等の熱を吸収した後、重力によって流下してオイルパン30に回収される。
【0034】
−エンジンブロック−
次に、図2及び図3を参照して、エンジンブロック2の構造について説明する。図2は、図1に示すエンジンのエンジンブロックの一例を示す斜視図である。図2に示すように、エンジンブロック2は、シリンダヘッド21と、シリンダブロック22とを備えている。また、シリンダヘッド21には、排気配管4及び三元触媒5が接続されている。排気配管4は、図3、図4に示すシリンダボア223の上端に形成される燃焼室で燃料が燃焼することによって発生する排気ガスを三元触媒5に向けて排出する配管である。三元触媒5は排気ガス中に含まれる有害成分を還元、酸化によって浄化する触媒である。図2に示すように、シリンダブロック22の外壁面は、排気配管4及び三元触媒5とは近接して(又は、当接して)配設されているため、排気配管4及び三元触媒5を通る高温の排気ガスから受熱することになる。
【0035】
図3は、図2に示すシリンダブロックに形成されたオイル通路の一例を示す平面図である。シリンダブロック22は、ウォータジャケット221、オイル通路222、及び、シリンダボア223を備えている。
【0036】
シリンダボア223は、略円筒状に形成され、ピストン11(図1参照)が摺動自在に収納されて、上端部に燃焼室が形成されるものである。なお、燃焼室は、ピストン11の頂面、シリンダボア223の内周面、及び、シリンダヘッド21の下側表面の一部によって構成される。
【0037】
ウォータジャケット221は、冷却水によってシリンダボア223の壁面を冷却するものであって、図3に示すように、シリンダボア223(223a〜223d)の外周に沿って形成されている。また、ウォータジャケット221には、図略の流入口及び流出口が形成されている。
【0038】
ウォータジャケット221の流入口は、図略のウォータポンプから冷却水が供給可能に構成されている。流入口から流入した冷却水は、シリンダボア223a、223b、223c、223dのそれぞれの外周に沿って順次矢印VWの向きに流れ、シリンダボア223dの外周に形成された流出口から排出される。流出口から排出された冷却水は、図略のラジエータに送出可能に構成され、当該ラジエータにおいて、冷却水によって回収された熱が大気に放出される。
【0039】
−オイル通路(第一実施形態)−
次に、図4、図5を参照して、エンジンブロック2に形成されたオイル通路222、224(以下、オイル通路222、224を、オイル通路220と総称する場合もある)について説明する。図4は、図3に示すシリンダブロック22のA−A断面図の一例を示す図である。図5は、本発明に係るシリンダブロック2のオイル通路220の一例を示す概念図である。図5(a)は、図4に示すオイル通路220の概念図であり、図5(b)は、他の実施形態(第二実施形態)にかかるオイル通路222、23(以下、オイル通路222、23を、オイル通路220Aと総称する場合もある)の概念図である。
【0040】
シリンダヘッド21(図2参照)の上方に配設された吸気バルブ及び排気バルブのカム、カムシャフト等の被潤滑部材に供給されて、当該被潤滑部材から流下したオイルは、シリンダヘッド21に形成された図略のオイル通路を介して、シリンダブロック22に形成されたオイル通路222まで流下される。
【0041】
オイル通路220は、シリンダヘッド21に形成された図略のオイル通路から流下されたオイルを、シリンダブロック22の下端部に配設されたオイルパン30まで流下させる通路であって、ここでは、略上下方向に形成された3本の略四角筒状の孔である。オイル通路220は、上側のオイル通路222と下側のオイル通路224とで構成されている。ここで、オイル通220は、特許請求の範囲に記載の「オイル通路」に相当する。
【0042】
上側のオイル通路222は、ウォータジャケット221に近接して配設され、シリンダヘッド21に形成された図略のオイル通路から流下したオイルを、ウォータジャケット221に挿通される冷却水と熱交換させることによって冷却させながら、下側のオイル通路224の上端まで流下させる。
【0043】
−シリンダボア223から受熱の回避構造−
下側のオイル通路224は、上側のオイル通路222から流下したオイルを、シリンダブロック22の下端部に配設されたオイルパン30まで流下させる通路である。また、オイル通路224のうち、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(以下、「下流側領域HA」ともいう。図5(a)参照)では、オイル通路224のシリンダボア223側の壁面(第1拡幅部225)と、その内部を流下するオイルとの間に空気層225aを形成するべく、オイル通路224の壁面形状が形成されている。
【0044】
すなわちオイル通路224は、ウォータジャケット221近傍の領域と比較して、それよりも下流側の領域(下流側領域HA)では断面積が異なっており、ウォータジャケット221近傍の領域では断面積が狭く、それよりも下流側の領域(下流側領域HA)では断面積が大きい形状に形成されている。
【0045】
なお、オイル通路224の「ウォータジャケット221近傍の領域」とは、シリンダボア223の軸線方向(Z軸方向)において、ウォータジャケット221の下端部と略同等の深さまでの領域を指す。また、「それよりも下流側の領域」(下流側領域HA)とは、シリンダボア223の軸線方向(Z軸方向)において、ウォータジャケット221の下端部よりも下方側の領域を指す。
【0046】
具体的には、オイル通路224の壁面は、オイル通路224のうちウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(下流側領域HA)において、シリンダボア223側に拡幅されている第1拡幅部225を備えている。また、オイル通路224の壁面は、第1拡幅部225の上端位置において、シリンダボア223側から内側に向けて(図4、図5では、右側に向けて)斜め下方に傾斜している第1傾斜部227を備えている。
【0047】
更に、具体的には、下流側領域HAにおいて、オイル通路224のシリンダボア223側の壁面がシリンダボア223側に後退することによって、オイル通路224がシリンダボア223側に拡幅され、第1拡幅部225が形成されている。また、第1拡幅部225の上端位置の壁面が、オイル通路222の下端位置におけるシリンダボア223側の壁面から内側に向けて(図4、図5では、右側に向けて)、斜め下方に傾斜して第1傾斜部227が形成されている。なお、図4、図5(a)に示す実施形態では、第1傾斜部227は、オイル通路224(第1拡幅部225)側の接続部、及び、オイル通路222側の接続部において隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いる。
【0048】
上述のように、下側のオイル通路224のうち、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(下流側領域HA)において、オイル通路224のシリンダボア223側の壁面をシリンダボア223側に後退させることによって、オイル通路224をシリンダボア223側に拡幅して、第1拡幅部225を形成することができるため、製造コストの増大を回避することができる。また、下側のオイル通路224のうちウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(下流側領域HA)において、オイル通路224の壁面がシリンダボア223側に拡幅されている第1拡幅部225を備えるため、第1拡幅部225の上端部より下側に、オイル通路224のシリンダボア223側の壁面(第1拡幅部225)と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層225aを形成することができるため、オイルの受熱を抑制することができる。
【0049】
また、第1拡幅部225の上端位置に形成された第1傾斜部227は、オイル通路224の壁面がシリンダボア223側から内側に向けて(図4、図5では、右側に向けて)斜め下方に傾斜して形成されているため、第1傾斜部227において、オイルがオイル通路224のシリンダボア223側の壁面(第1拡幅部225)を伝って流れることを阻止することができるので、オイル通路224のシリンダボア223側の壁面(第1拡幅部225)と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層225aを確実に形成することができる。
【0050】
第一実施形態では、第1傾斜部227が、オイル通路224(第1拡幅部225)側の接続部、及び、オイル通路222側の接続部において隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いる場合について説明するが、第1傾斜部227が、隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いない形態でもよい。特に、オイル通路222の内部を矢印VLに示すように流下するオイルが、第1傾斜部227を伝って第1拡幅部225側に流れないようにするために、第1傾斜部227のオイル通路222側の接続部は、隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いない形態(又は、半径の小さな丸め処理が施されている形態)が好ましい。
【0051】
また、第一実施形態では、第1拡幅部225の上端位置に第1傾斜部227が形成されている場合について説明するが、第1傾斜部227が形成されていない形態でもよい。例えば、第1拡幅部225の上端位置と、オイル通路222の下端位置とがZ軸方向(図4、図5の上下方向)に同じ位置に形成されており、両者がY軸と平行な(図4、図5の左右方向)の平面で連結されている形態でもよい。この場合には、第1拡幅部225の成形が容易になる。
【0052】
−シリンダブロック22の外壁面から受熱の回避構造−
また、オイル通路224のうち、排気配管4及び三元触媒5を挿通される高温の排気ガスによってシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲(以下、便宜上、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(下流側領域HA)と同様に、「下流側領域HA」ともいう。図5(a)参照)では、オイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面(第2拡幅部226)と、その内部を流下するオイルとの間に空気層226aを形成するべく、オイル通路224の壁面形状が形成されている。
【0053】
具体的には、オイル通路224の壁面は、オイル通路224のうちシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲である下流側領域HAにおいて、シリンダブロック22の外壁面側に拡幅されている第2拡幅部226を備えている。また、オイル通路224の壁面は、第2拡幅部226の上端位置において、シリンダブロック22の外壁面側から内側に向けて(図4、図5では、左側に向けて)斜め下方に傾斜している第2傾斜部228を備えている。
【0054】
更に、具体的には、下流側領域HAにおいて、オイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面が、シリンダブロック22の外壁面側に後退することによって、オイル通路224がシリンダブロック22の外壁面側に拡幅され、第2拡幅部226が形成されている。また、第2拡幅部226の上端位置の壁面が、オイル通路222の下端位置におけるシリンダブロック22の外壁面側の壁面から内側に向けて(図4、図5では、左側に向けて)、斜め下方に傾斜して第2傾斜部228が形成されている。なお、図4、図5(a)に示す実施形態では、第2傾斜部228は、オイル通路224(第2拡幅部226)側の接続部、及び、オイル通路222側の接続部において隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いる。
【0055】
上述のように、下側のオイル通路224のうち、シリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲(下流側領域HA)において、オイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面をシリンダブロック22の外壁面側に後退させることによって、オイル通路224をシリンダブロック22の外壁面側に拡幅して、第2拡幅部226を形成することができるため、製造コストの増大を回避することができる。また、下側のオイル通路224のうちシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲(下流側領域HA)において、オイル通路224の壁面がシリンダブロック22の外壁面側に拡幅されている第2拡幅部226を備えるため、第2拡幅部226の上端部より下側に、オイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面(第1拡幅部225)と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層226aを形成することができるため、オイルの受熱を抑制することができる。
【0056】
また、第2拡幅部226の上端位置に形成された第2傾斜部228は、オイル通路224の壁面がシリンダブロック22の外壁面側から内側に向けて(図4、図5では、左側に向けて)斜め下方に傾斜しているため、第2傾斜部228において、オイルがオイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面(第2拡幅部226)を伝って流れることを阻止することができるので、オイル通路224のシリンダブロック22の外壁面側の壁面(第2拡幅部226)と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層226aを確実に形成することができる。
【0057】
第一実施形態では、第2傾斜部228が、オイル通路224(第2拡幅部226)側の接続部、及び、オイル通路222側の接続部において隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いる場合について説明するが、第2傾斜部228が、隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いない形態でもよい。特に、オイル通路222の内部を矢印VLに示すように流下するオイルが、第2傾斜部228を伝って第2拡幅部226側に流れないようにするために、第2傾斜部228のオイル通路222側の接続部は、隅取りが行われて(丸め処理が施されて)いない形態(又は、半径の小さな丸め処理が施されている形態)が好ましい。
【0058】
また、第一実施形態では、第2拡幅部226の上端位置に第2傾斜部228が形成されている場合について説明するが、第2傾斜部228が形成されていない形態でもよい。例えば、第2拡幅部226の上端位置と、オイル通路222の下端位置とがZ軸方向(図4、図5の上下方向)に同じ位置に形成されており、両者がY軸と平行な(図4、図5の左右方向)の平面で連結されている形態でもよい。この場合には、第2拡幅部226の成形が容易になる。
【0059】
−オイル通路(第二実施形態)−
次に、図5(b)を参照して、第二実施形態に係るオイル通路220Aについて説明する。図5(b)は、第二実施形態にかかるオイル通路220Aの概念図である。
【0060】
オイル通路220Aは、シリンダヘッド21に形成された図略のオイル通路から流下されたオイルを、シリンダブロック22の下端部に配設されたオイルパン30まで流下させる通路であって、ここでは、略上下方向に形成された3本の略四角筒状の孔である。オイル通路220Aは、上側のオイル通路222と下側のオイル通路23で構成されている。ここで、オイル通路220Aは、特許請求の範囲に記載の「オイル通路」に相当する。
【0061】
上側のオイル通路222は、ウォータジャケット221に近接して配設され、シリンダヘッド21に形成された図略のオイル通路から流下したオイルを、ウォータジャケット221に挿通される冷却水と熱交換させることによって冷却させながら、下側のオイル通路224の上端まで流下させる。
【0062】
−シリンダボア223から受熱の回避構造−
オイル通路23のうちウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(以下、「下流側領域HA」ともいう。)では、オイル通路23のシリンダボア223側の壁面233と、その内部を流下するオイルとの間に空気層233aを形成するべく、オイル通路224の壁面形状が形成されている。
【0063】
具体的には、オイル通路23のうちウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域(下流側領域HA)の上端位置近傍のシリンダボア223側の壁面に、下方内側に向けて突出して形成された凸部231が形成されている。凸部231の基端部は、下流側領域HAの上端位置においてオイル通路23のシリンダボア223側の壁面233に接続されている。また、凸部231の先端部は、下方内側に向けて先窄まり形状(ここでは、側面視鋭角形状)に形成されている。
【0064】
このように、シリンダボア223側の壁面に、下方内側に向けて突出して形成された凸部231が形成されているため、凸部231の基端部の下側において、壁面233と、その内部を流下するオイルとの間に空気層233aが形成されるため、簡素な構成で、シリンダボア223からのオイルの受熱を抑制することができる。
【0065】
また、凸部231の先端部が、下方内側に向けて先窄まり形状(ここでは、側面視鋭角形状)に形成されているため、オイル通路23を流下するオイルが、オイル通路23のシリンダボア223側の壁面233を伝って流れることを阻止することができるので、オイル通路23のシリンダボア223側の壁面233と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層233aを確実に形成することができる。
【0066】
−シリンダブロック22の外壁面から受熱の回避構造−
また、オイル通路23のうち、排気配管4及び三元触媒5を挿通される高温の排気ガスによってシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲(以下、便宜上、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域と同様に、「下流側領域HA」ともいう。)では、オイル通路23のシリンダブロック22の外壁面側の壁面234と、その内部を流下するオイルとの間に空気層234aを形成するべく、オイル通路23の壁面形状が形成されている。
【0067】
具体的には、オイル通路23のうちシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲(下流側領域HA)の上端位置近傍のシリンダブロック22の外壁面側の壁面に、下方内側に向けて突出して形成された凸部232が形成されている。凸部232の基端部は、受熱領域HAの上端位置においてオイル通路23のシリンダブロック22の外壁面側の壁面234に接続されている。また、凸部232の先端部は、下方内側に向けて先窄まり形状(ここでは、側面視鋭角形状)に形成されている。
【0068】
このように、シリンダブロック22の外壁面側の壁面に、下方内側に向けて突出して形成された凸部232が形成されているため、凸部232の基端部の下側において、壁面234と、その内部を流下するオイルとの間に空気層234aが形成されるため、簡素な構成で、シリンダブロック22の外壁面からの、オイルの受熱を抑制することができる。
【0069】
また、凸部232の先端部が、下方内側に向けて先窄まり形状(ここでは、側面視鋭角形状)に形成されているため、オイル通路23を流下するオイルが、オイル通路23のシリンダブロック22の外壁面側の壁面234を伝って流れることを阻止することができるので、オイル通路23のシリンダブロック22の外壁面側の壁面224と、その内部を矢印VLに示すように流下するオイルとの間に空気層234aを確実に形成することができる。
【0070】
第二実施形態では、凸部231、232が、下方内側に向けて形成されている場合について説明したが、凸部231、232が、内側に向けて形成されている形態でもよい。この場合には、凸部231、232を容易に成形することができる。
【0071】
第二実施形態では、凸部231、232が、先窄まり形状(ここでは、側面視鋭角形状)に形成されている場合について説明したが、凸部231、232が、板状に形成されている形態でもよい。この場合には、凸部231、232を容易に成形することができる。
【0072】
−他の実施形態−
第一実施形態、及び、第二実施形態では、シリンダブロック22内に3本のオイル通路220(又は、オイル通路220A)が形成されている場合について説明するが、シリンダブロック22内に形成されるオイル通路の本数は、1本でも2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0073】
第一実施形態、及び、第二実施形態では、便宜上、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域とシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲とが一致している場合について説明したが、ウォータジャケット221近傍の領域よりも下流側の領域とシリンダブロック22の外壁面から受熱する範囲とが相違する形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、シリンダヘッドからシリンダブロックへ被潤滑部材を潤滑するオイルを流下させる内燃機関に利用することができる。特に、車両等に搭載されるエンジンに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 エンジン(内燃機関)
2 エンジンブロック
21 シリンダヘッド
22 シリンダブロック
220、220A オイル通路
221 ウォータジャケット
222 オイル通路(オイル通路220の一部、オイル通路220Aの一部)
223(223a、223b、223c、223d) シリンダボア
224 オイル通路(オイル通路220の一部)
225 第1拡幅部
225a 空気層
226 第2拡幅部
226a 空気層
227 第1傾斜部
228 第2傾斜部
23 オイル通路(オイル通路220Aの一部)
231、232 凸部
233、234 壁面
233a、234a 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドからシリンダブロックへ被潤滑部材を潤滑するオイルを流下させる内燃機関であって、
前記シリンダブロックは、
ピストンが摺動可能に収納されたシリンダボアと、
前記シリンダボアの外周に沿って冷却水が流通可能に構成されたウォータジャケットと、
前記ウォータジャケットに近接して形成され、前記シリンダヘッドから流下したオイルを上下方向に流通可能に構成されたオイル通路と、を備え、
前記オイル通路は、当該オイル通路は前記ウォータジャケット近傍の領域と比較して、それよりも下流側の領域では断面積が異なっており、前記ウォータジャケット近傍の領域では断面積が狭く、それよりも下流側の領域では断面積が大きい形状に形成されており、当該オイル通路の前記シリンダボア側の壁面と、その内部を流下するオイルとの間に空気層を形成するべく、当該オイル通路の壁面形状が形成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記オイル通路の壁面は、当該オイル通路のうち前記下流側の領域において、前記シリンダボア側に拡幅されている第1拡幅部を備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関において、
前記オイル通路の壁面は、前記第1拡幅部の上端位置において、前記シリンダボア側から内側に向けて斜め下方に傾斜している第1傾斜部を更に備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関において、
前記オイル通路の壁面は、当該オイル通路のうち前記シリンダブロックの外壁面から受熱する範囲において、前記シリンダブロックの外壁面側に拡幅されている第2拡幅部を備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関において、
前記オイル通路の壁面は、前記第2拡幅部の上端位置において、前記シリンダブロックの外壁面側から内側に向けて斜め下方に傾斜している第2傾斜部を更に備えることを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の内燃機関において、
前記オイル通路は、当該オイル通路のうち前記下流側の領域の上端位置近傍における前記シリンダボア側の壁面に、下方内側又は内側に向けて突出して形成された凸部を更に備えることを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104359(P2013−104359A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248904(P2011−248904)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】