説明

内線アナログ電話システム

【課題】 2線式アナログ内線の直流ループを形成することなしにオンフック中のアナログ電話機に電力を供給し、オンフック中のアナログ内線電話機と構内交換機との間で設定または保守に係るデータの送受信を可能とすることを目的とする。
【解決手段】 高電圧電源供給部107、及び高電圧送出制御部106と、データ送受信を行うPB受信部104、及びPB送信部105を備える構内交換機100と、高電圧検出部305、及び高電圧電源部306と、データの送受信を行うPB受信部302、及びPB送信部303を備える内線アナログ電話機300は、アナログ2線方式で接続され、前記内線アナログ電話機がオンフック状態において、前記構内交換機は発着信に関わる電圧以上の高電圧を送出することで内線アナログ電話機に電力供給を行い、データの送受信を行う内線アナログ電話システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内交換機と待機中の内線アナログ電話機との間で、設定または保守に係るデータを送受信可能な内線アナログ電話システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の構内交換機に接続される内線アナログ電話機は、通常、オフフックした時点で通話ループを形成し電力供給を受け、その供給電力により動作し、構内交換機からの設定または保守に係るデータを受信して自電話機に設定したり、自電話機の各種設定状況等を構内交換機に通知できる。
従って、オンフック中は電力供給がないので内線アナログ電話機は動作せず、前記各種データの送受信ができないという欠点があった。
【0003】
なお、オンフック中に送受信するデータとしては、例えば内線アナログ電話機の短縮ダイヤルのダイヤルデータである。
【0004】
前記欠点を解決する技術として、オンフック中にランプのみを光らせる技術がある(例えば特許文献1)。この技術は、外線や内線からのメッセージがある場合に、直流の高電圧を内線アナログ電話機に供給する。そして、内線アナログ電話機はツェナーダイオード等でその高電圧を検出し、そのツェナー電流でメッセージランプを点灯させる。
【0005】
しかしながら、この技術は電話機内部のメッセージランプを点灯させるまでであり、オンフック中のアナログ電話機に各種データを設定したりすることまでは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−164772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、2線式アナログ内線の直流ループを形成することなしにオンフック中のアナログ電話機に電力を供給し、オンフック中のアナログ内線電話機と構内交換機との間で設定または保守に係るデータの送受信を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、外線および2線式アナログ内線を収容する構内交換機と前記内線に繋がる内線アナログ電話機を含む内線電話システムであって、前記構内交換機は、前記内線アナログ電話機へ発着信に係る電圧以上の高電圧を供給する高電圧供給部と、前記高電圧を供給した状態で前記内線アナログ電話機とPB信号データを送信する交換機側データ送信部を備え、前記内線アナログ電話機は、前記発着信に係る電圧以上の高電圧を検出する高電圧検出部と、前記高電圧の電力から自電話機内の電気回路へ供給する動作電力を生成する高電圧入力電源部と、前記高電圧が供給された状態で前記構内交換機とPB信号データを受信する電話機側データ受信部を備え、前記構内交換機がオンフック中の前記内線アナログ電話機に所定の音声を送出する場合に、前記構内交換機は、前記高電圧供給部からの高電圧を当該内線アナログ電話機へ供給し、前記内線アナログ電話機の高電圧検出部が前記高電圧を検出したならば、前記内線アナログ電話機は前記高電圧入力電源部を起動し、前記構内交換機と前記内線アナログ電話機は、前記高電圧が重畳された前記2線式アナログ内線を介してPB信号データを送受信し前記所定の音声を送出することが可能であると判定したときは、前記構内交換機は、前記高電圧の供給を停止すると共に、前記内線アナログ電話機は通常の通話ループを形成し、前記所定の音声を送出することを特徴とする。
また、前記構内交換機は、前記高電圧供給部から高電圧を複数の内線アナログ電話機に同時に供給し、複数の前記内線アナログ電話機へ所定の音声を同時に送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、待機中(オンフック中)の内線アナログ電話機に対して、構内交換機から、ワンタッチダイヤル等の設定や保守に係るデータを個別または一斉に登録出来る利点がある。
また、構内交換機から、内線アナログ電話機内の各種データを読み取れる利点がある。なお、構内交換機が読み取るデータは設定や保守に係るデータだけでなく、例えば、内線アナログ電話機に搭載された温湿度計等の各種センサ情報であってもよい。
さらに、構内交換機から、待機中の内線アナログ電話機を強制起動して、起動した内線アナログ電話機のマイクにより周囲音声をモニタする遠隔音声モニタ機能や、スピーカから一斉通知音声や威嚇音声を再生する遠隔音声再生機能等を制御することも可能である。 ところで、内線アナログ電話機へ給電は、従来のアナログ2線方式のままであり、新規の配線を必要としないことは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内線アナログ電話システムの構成図
【図2】高電圧検出部と高電圧電源部の詳細図
【図3】内線アナログ電話機に対するデータ設定のシーケンス図
【図4】内線アナログ電話機からのデータ読出のシーケンス図
【図5】内線アナログ電話機との遠隔音声モニタのシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の内線アナログ電話システムに係る構内交換機100と内線アナログ電話機300のブロック構成図である。構内交換機100は外線、内線を収容する構内交換機であり、データ入出力装置200、及び2線式のアナログ内線電話機300を収容する。なお、図1では2線式アナログ内線電話機300が1台だが、これは図を省略しただけであり、当然、複数台を収容可能である。なお、図1には示していないが、内線電話機としては、デジタルインターフェースで繋がるボタン電話機を収容してもよい。 データ入出力装置200は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)であり、アナログ内線電話機300に設定すべき各種データを蓄積している。このデータ入出力装置200はデジタルインターフェースで繋がるボタン電話機(図示せず)であってもよい。
【0012】
デジタル内線対応部108はデータ入出力装置200を収容し、主制御部101とのデータ伝送を行う。アナログ内線対応部102は、アナログ内線電話機300を収容し、発着信、通話の制御を行う電話機能制御部103、及び高電圧印加時に使用するPB受信部104とPB送信部105、及び高電圧送出制御部106から成り、それぞれ主制御部とデータの送信、受信を行い、高電圧送出制御部106は高電圧電源供給部107から供給される電源を制御する。外線対応部109は外線を収容し、主制御部によって制御される。
【0013】
通常の電話機能のみを使用する場合、電話機機能制御部103により、L1−L2間には通話用電源(例えば48V)が供給されているが、高電圧印加時は、この通話用電源に高電圧を重畳させる。または高電圧印加時には通話用電源を停止し、高電圧のみを印加してもよい。
【0014】
内線アナログ電話機300の通常の電話機能の説明を行う。ハンドセット314を上げると、フックスイッチ307が閉じ、ループ形成部308でループ形成し、通話回路部310により通話路を形成し、ハンドセット314により通話を行う。また通話回路部310から直流成分のみを取り出し、電源部311から逆流防止ダイオード313を通過し、端末制御部301に電源供給を行う。端末制御部301は主に発信機能(ダイヤル機能)を制御する。着信時はフックスイッチ307は開いており、着信鳴動部309により着信信号を検出し、着信音を鳴動させる。
【0015】
次に内線アナログ電話機300に高電圧が印加された場合の動作を説明する。内線アナログ電話機300が待機中に、構内交換機100により高電圧がL1−L2間に印加されると、高電圧検出部305で高電圧を検出する。その高電圧を高電圧電源部306に供給し、使用電圧まで降下させ、PB受信部302、PB送信部303、メッセージランプ304に電源供給し、逆流防止ダイオード312を通過し、端末制御部301に電源を供給する。また同時に高電圧検出部305は高電圧を検出した情報を端末制御部301へ送信し、端末制御部301は起動し、PB受信部302、PB送信部303、メッセージランプ304、ループ形成部308、通話回路部310の制御を開始する。
【0016】
図2は図1の高電圧検出部305、及び高電圧電源部306の詳細ブロック図である。
L1−L2間に高電圧が印加されると、ダイオードブリッジ3051で極性一致させ、抵抗器3052を通過し、ツェナーダイオード3053にツェナー電流が流れる。そのツェナー電流を電流検出回路3054で検出し、スイッチ部3061を制御し、スイッチを導通させる。するとレギュレータ3062の入力に電圧が印加され、降下させた電圧が出力される。逆流防止ダイオード3063を通過し、大容量コンデンサ3064を充電し、各ブロックへ電源を供給し、主に図1の端末制御部301を起動させる。また大容量コンデンサの目的は、高電圧が停止されたとき、端末制御部が省電力モードに移行するまでの時間、電圧を保持可能な容量とする。
【0017】
図3は内線アナログ電話機に対するデータ設定のシーケンス図である。ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、データ設定要求を構内交換機100に送信する(S100)。構内交換機100はデータ受信後、内線アナログ電話機300に対し、高電圧印加開始する(S101)。高電圧を検出した内線アナログ電話機300は起動し(S102)、起動したという情報(ACK)を構内交換機100に対し、PB信号にて送信する(S103)。構内交換機100はデータ入出力装置200に対し、ACK信号を送信し(S104)、ユーザーに通知する。ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、設定データを構内交換機100に送信(S105)する。構内交換機100は内線アナログ電話機300に対し、PB信号にて設定データを送信する(S106)。設定データを受信した内線アナログ電話機300は、そのデータを設定する(S107)。内線アナログ電話機300は設定完了後、構内交換機100に対し、PB信号にてACK信号を送信し(S108)、構内交換機100は内線アナログ電話機300への高電圧印加停止し(S109)、データ入出力装置200に設定完了通知データを送信し(S110)、ユーザーに対し設定完了通知を行う。
【0018】
ここで、データ設定要求S100とは、例えば内線アナログ電話機のワンタッチダイヤルデータ、及び短縮ダイヤルデータであり、そのダイヤルデータを複数の内線アナログ電話機に対し一斉に設定する。また、電話機としての機能である受話音量、スピーカ音量、ダイヤル種別設定を複数台の内線アナログ電話機に対し一斉に設定することも可能である。
【0019】
そして、メッセージランプ機能においては、点灯タイミング(周期等)や点灯色を設定することが可能である。
【0020】
図4は、内線アナログ電話機からのデータ読出のシーケンス図である。ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、データ読出要求を構内交換機100に送信する(S200)。構内交換機100はデータ受信後、内線アナログ電話機300に対し、高電圧印加開始する(S201)。高電圧を検出した内線アナログ電話機300は起動し(S202)、起動したという情報(ACK)を構内交換機100に対し、PB信号にて送信する(S203)。構内交換機100はデータ入出力装置200に対し、ACK信号を送信し(S204)、ユーザーに通知する。ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、読出データ指定のデータを構内交換機100に送信する(S205)。構内交換機100は内線アナログ電話機300に対し、PB信号にて読出データ指定のデータを送信する(S206)。データを受信した内線アナログ電話機300は、構内交換機100に対し、PB信号にて指定されたデータを送信し(S207)、構内交換機100はデータ入出力装置200に対し、前記指定されたデータを送信し(S208)、ユーザーは指定したデータを取得することができる。データの取得が終了したら、ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、構内交換機100に対して終了のデータを送信し(S209)、構内交換機100は内線アナログ電話機300への高電圧印加を停止する(S210)。
【0021】
ここで、データ読出要求S200とは、例えばワンタッチダイヤル、及び短縮ダイヤルデータ、を読み出すことである。また内線アナログ電話機300に各種センサを搭載し(図示せず)、高電圧印加により各種センサを起動させ、センサ情報を読み出すことが可能である。例えば人感センサを代表するセキュリティ目的センサ、温湿度センサ、明かりセンサなどである。
【0022】
図5は、内線アナログ電話機との遠隔音声モニタのシーケンス図である。ユーザーはデータ入出力装置200を操作し、音声モニタ要求を構内交換機100に送信する(S300)。構内交換機100はデータ受信後、内線アナログ電話機300に対し、高電圧印加開始する(S301)。高電圧を検出した内線アナログ電話機300は起動し(S302)、起動したという情報(ACK)を構内交換機100に対し、PB信号にて送信(S303)する。構内交換機100は内線アナログ電話機300に対し、PB信号にて音声モニタ要求を送信する(S304)。データを受信した内線アナログ電話機300は、構内交換機100に対し、音声モニタ可能であること(ACK)をPB信号にて送信する(S305)。構内交換機100は高電圧印加停止し(S306)、通常の通話用電源に切り替える。内線アナログ電話機300は通話ループを形成し、音声モニタを開始する(S307)。モニタされた情報は構内交換機100を経由してデータ入出力装置200に伝達され、音声モニタ状態となる(S308)。ユーザーが音声モニタを終了したい場合は、データ入出力装置200を操作し、構内交換機100に対して、終了のデータを送信し(S309)、構内交換機100は内線アナログ電話機300に対し、PB信号にて終了データを送信する(S310)。内線アナログ電話機300は、通話ループを切断する(S311)。
【0023】
ここで音声モニタ開始への移行(S307)を図1を使用して説明する。音声モニタ開始状態に移行する場合、端末制御部301は、ループ形成部308及び、通話回路部310を制御し、通話ループを形成させて通話状態に移行する。また通ループ話切断時(S311)、端末制御部301は、ループ形成部308及び、通話回路部310を制御し、通話ループ切断させる。
【0024】
ここで、遠隔音声モニタ機能について説明を行うと、内線アナログ電話機300にマイクロホンを搭載し(図示せず)、通話ループ形成時にマイクロホンに電源供給を行うことで、電話機周辺の音声をデータ入出力装置でモニタする機能である。
【0025】
また図5と同一のシ−ケンスを用いて、データ入出力装置からの音声等を、内線アナログ電話機300に搭載されたスピーカ315から出力する遠隔音声再生を行うことも可能である。また、構内交換機100にあらかじめ搭載しておいた音楽、威嚇音、警報音、時報、モーニングコールなどの音声をスピーカ315から出力することも可能である。
【0026】
本発明で使用する高電圧の電圧値は、発信、着信、通話で使用する通話用電源電圧以上とすることで、待機状態に高電圧を印加したときに着信鳴動することがない。また高電圧は直流に限らず、交流でもよいが、着信鳴動しない電圧及び周波数とし、直流に平滑するためのコンデンサが図2のダイオードブリッジ3051の後段に必要であり、ダイオードブリッジ3051の前段には直流カット用コンデンサが必要である。
【0027】
また本発明における構内交換機は、内線アナログ電話機のみを収容するものではなく、ボタン電話機も収容可能である。図1に示すデータ入出力装置200はボタン電話機を含み、ボタン電話機からの操作も可能である。
【符号の説明】
【0028】
100・・・構内交換機
101・・・主制御部
102・・・アナログ電話対応部
103・・・電話機能制御部
104、302・・・PB受信部
105、303・・・PB送信部
106・・・高電圧送出制御部
107・・・高電圧電源供給部
108・・・デジタル内線対応部
200・・・データ入出力装置
300・・・内線アナログ電話機
301・・・端末制御部
304・・・メッセージランプ
305・・・高電圧検出部
306・・・高電圧電源部
307・・・フックスイッチ
308・・・ループ形成部
309・・・着信鳴動部
310・・・通話回路部
311・・・電源部
312、313・・・逆流防止ダイオード
314・・・ハンドセット
315・・・スピーカ
3051・・・ダイオードブリッジ
3052・・・抵抗器
3053・・・ツェナーダイオード
3054・・・電流検出回路
3061・・・スイッチ部
3062・・・レギュレータ
3063・・・逆流防止ダイオード
3064・・・大容量コンデンサ
VDD・・・端末制御部301への電源
L1、L2・・・アナログ2線方式通信ライン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外線および2線式アナログ内線を収容する構内交換機と前記内線に繋がる内線アナログ電話機を含む内線電話システムであって、
前記構内交換機は、前記内線アナログ電話機へ発着信に係る電圧以上の高電圧を供給する高電圧供給部と、前記高電圧を供給した状態で前記内線アナログ電話機とPB信号データを送信する交換機側データ送信部を備え、
前記内線アナログ電話機は、前記発着信に係る電圧以上の高電圧を検出する高電圧検出部と、前記高電圧の電力から自電話機内の電気回路へ供給する動作電力を生成する高電圧入力電源部と、前記高電圧が供給された状態で前記構内交換機とPB信号データを受信する電話機側データ受信部を備え、
前記構内交換機がオンフック中の前記内線アナログ電話機に所定の音声を送出する場合に、前記構内交換機は、前記高電圧供給部からの高電圧を当該内線アナログ電話機へ供給し、前記内線アナログ電話機の高電圧検出部が前記高電圧を検出したならば、前記内線アナログ電話機は前記高電圧入力電源部を起動し、前記構内交換機と前記内線アナログ電話機は、前記高電圧が重畳された前記2線式アナログ内線を介してPB信号データを送受信し前記所定の音声を送出することが可能であると判定したときは、前記構内交換機は、前記高電圧の供給を停止すると共に、
前記内線アナログ電話機は通常の通話ループを形成し、前記所定の音声を送出することを特徴とする内線アナログ電話システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内線アナログ電話システムにおいて、
前記構内交換機は、前記高電圧供給部から高電圧を複数の内線アナログ電話機に同時に供給し、複数の前記内線アナログ電話機へ所定の音声を同時に送出することを特徴とする内線アナログ電話システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55707(P2013−55707A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275194(P2012−275194)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2008−95949(P2008−95949)の分割
【原出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】