説明

内装材

【課題】内装布帛の設定された雄型体と雌型体の間のキャビティに加熱溶融した合成樹脂を射出して内装基材を内装布帛と一体成形する過程において、内装布帛裏面に裏打ちされた発泡シートの発泡構造が加熱溶融した合成樹脂に破壊されないようにする。
【解決手段】厚み1.0〜7.0mm、嵩密度0.015〜0.050g/cm3 のポリエーテル系ポリウレタン発泡層12と厚み10〜30μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡層13の二層構造発泡シートを媒介層として内装布帛裏面に裏打ちし、非発泡ポリエーテル系ポリウレタンの軟化温度よりも融点が15℃以上低いポリオレフィン系樹脂を通気度10〜150cm3 /cm2 /secの内装布帛20の設定された雄型体と雌型体の間のキャビティに射出し、内装基材を内装布帛と一体成形する。内装布帛には単繊維繊度10dtex以下のポリエステル系繊維を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車や列車、航空機等の交通機関の居住空間を囲む天井、壁面、扉面、棚面等の周面を装飾するために使用される内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通機関の居住空間を囲む周面、特に自動車の天井や壁面や扉面には起伏がある。
車両内装材は、その居住空間の周面の起伏に合わせて立体的に形成される内装基材の表面を、織物、編物、不織布、表面が繊維質の人工皮革、表面が合成樹脂質の合成皮革等の内装布帛で被覆して立体的に形成される。
【0003】
その内装材を立体的に形成する方法として、(1) 立体的に形成された内装基材の起伏に合わせて内装布帛を内装基材の表面に貼り合わせる貼合方法(例えば、特許文献1,2参照)、(2) 内装基材と内装布帛を立体的に形成して重ね合わせ接着一体化する重合方法(例えば、特許文献3,4参照)、(3) 平板な内装基材と内装布帛を重ね合わせて立体的にプレス成形する圧搾方法(例えば、特許文献5,6,7,8,9参照)、(4) 内装布帛の設定された雄型体と雌型体の間のキャビティに加熱溶融した合成樹脂を射出して内装基材を内装布帛と立体的に一体成形する射出成形方法(例えば、特許文献10,11参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−052312号公報
【特許文献2】特開昭53−012962号公報(特公昭57−02104)
【特許文献3】特開昭52−134670号公報(特公昭53−08738)
【特許文献4】特開昭54−032601号公報(特公昭60−30784)
【特許文献5】特開昭63−222851号公報(特公平06−11534)
【特許文献6】特開昭56−095644号公報
【特許文献7】特開平09−267701号公報(特許第3364737号)
【特許文献8】特開平10−071644号公報
【特許文献9】特開平10−071645号公報
【特許文献10】特開2002−178359号公報
【特許文献11】特開平08−224821号公報(特許第2869372号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2の開示する貼合方法では、内装布帛に皺が発生し易くなるので深絞り成形された内装基材を使用することは出来ない。
上記特許文献3,4の開示する重合方法では、成形工程が内装基材の成形と内装布帛の成形との2工程になる。
又、特許文献3,4の開示する重合方法によっては、深絞り成形された内装基材と内装布帛の間に均一な厚みの接着層を形成することは出来ず、深絞り成形された内装材を得ることは難しい。
上記特許文献5,6,7,8,9の開示する圧搾方法では、内装基材と内装布帛の間が擦れて剥離強度にバラツキが生じ、又、内装布帛に皺が発生し易い。
特許文献5,6,7,8,9の開示する圧搾方法では、内装基材と内装布帛から受ける圧搾抵抗も大きく、深絞り成形は困難になる。
これらの方法に対して、上記特許文献10,11の開示する射出成形方法は、深絞り成形に適している。
【0006】
しかし、特許文献10,11の開示する射出成形方法によると、実際には雄型体と雌型体の間で内装布帛を圧搾成形して型体キャビティに設定してから合成樹脂を射出成形するので、実質的に工程が2工程になる。
又、特許文献10,11の開示する射出成形方法においては、キャビティに射出される熱溶融合成樹脂が内装布帛の表面に滲み出し易くなる。
従って、特許文献10,11の開示する射出成形方法は、目付けの少ない薄手の内装布帛には適用し難い。
【0007】
特許文献10,11の開示する射出成形方法において、内装布帛の表面への熱溶融合成樹脂の滲み出しを回避するために内装布帛の裏面に発泡体を貼り合わせておくとしても、その発泡体が熱溶融合成樹脂に押し潰されて薄く偏肉化され、発泡体の厚みが変化する(例えば、上記特許文献11段落0004参照)。
従って、特許文献10,11の開示する射出成形方法によっては、表面が平滑で耐久性に優れた内装材は得難い。
【0008】
そこで、本発明者等は、射出成形方法における技術的課題を解消し、目付けの少ない薄手の内装布帛を使用するときでも熱溶融合成樹脂の滲み出しがなく、表面が平滑でクッション感に優れた内装材を得るために鋭意研究した。
その結果、本発明者等は、低融点のポリオレフィン系樹脂を射出成形する場合、フィルムの光沢が変化する軟化温度がポリオレフィン系樹脂の融点よりも幾分なりとも高い非発泡のポリエーテル系ポリウレタン樹脂シートを内装布帛の裏面に貼り合わせておく場合、ポリオレフィン系樹脂が熱溶融していても、そのポリオレフィン系樹脂の内装布帛の表面への滲み出しが、軟化温度の高い非発泡のポリエーテル系ポリウレタン樹脂シートに抑えられ、表面が平滑で耐久性に優れた内装材を得ることが出来る、との知見を得た。
【0009】
また、本発明者等は、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂内装布帛の裏面に貼り合わせておく発泡シートの発泡倍率を或る一定以内に抑えたところ、その発泡シートの中に介在する空気が発泡セル壁間の融着を妨げる異物の如く作用し、発泡シートが熱溶融合成樹脂に押し潰され難くなり、クッション性に優れた内装材を得ることが出来る、との知見を得た。
【0010】
更に、本発明者等は、特に、内装布帛の裏面に貼り合わせる発泡体シートの外面に軟化温度の高い非発泡のポリエーテル系ポリウレタン樹脂シートを貼り合わせておくと、軟化温度の低い発泡シートが熱溶融合成樹脂に押し潰され難くなる、との知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る内装材10の第1の特徴は、次の要素(1)〜(5)を具備する点にある。
(1) 内装布帛表面層11と合成樹脂基材層15を、厚み1.0〜7.0mm、嵩密度0.015〜0.050g/cm3 のポリエーテル系ポリウレタンを主材とする発泡層12と、厚み10〜30μmのポリエーテル系ポリウレタンを主材とする非発泡層13との二層構造の媒介層14を介して積層して立体的に一体成形されている。
(2) その合成樹脂基材層15は、ポリオレフィン系樹脂を主材として構成される。
(3) 内装布帛表面層11の内装布帛20を構成している70質量%以上の繊維は、単繊維繊度10dtex以下のポリエステル系繊維である。
(4) その内装布帛20のJIS−L−1096に規定される通気度は、10〜150cm3 /cm2 /secに設定される。
(5) 媒介層14の非発泡層13を構成しているポリエーテル系ポリウレタンの軟化温度が、200℃以上に設定され、且つ、合成樹脂基材層15を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点よりも15℃以上高く設定されている。
【0012】
本発明に係る内装材の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、内装布帛20を構成している70質量%以上の繊維は、単繊維繊度が5dtex以下のポリエステル系繊維である点にある。
【0013】
本発明に係る内装材の第3の特徴は、上記第1または第2の特徴に加えて、媒介層14の発泡層12が内装布帛側(20)に積層され、非発泡層13が合成樹脂基材層側(15)に積層されている点にある。
【0014】
本発明に係る内装材の第4の特徴は、上記第3の特徴に加えて、発泡層12の主材であるポリエーテル系ポリウレタンの嵩密度が0.015〜0.035g/cm3 である点にある。
【発明の効果】
【0015】
通常、射出成形されるポリオレフィン系樹脂15の融点は145〜185℃である。
一方、内装布帛20の裏面に貼り合わされている媒介層14の非発泡層13を構成しているポリエーテル系ポリウレタンのフィルムの光沢が変化する軟化温度が、200℃以上であり、ポリオレフィン系樹脂15の融点よりも15℃以上高い。
その結果、媒介層14の発泡層12を構成しているポリエーテル系ポリウレタンの軟化温度がポリオレフィン系樹脂15の融点よりも低くても、熱溶融状態にあるポリオレフィン系樹脂15の余熱が軟化温度の高い非発泡層13のポリエーテル系ポリウレタンによって遮断される。
従って、軟化温度の低いポリエーテル系ポリウレタン発泡層12が熱溶融状態にはなり難くなる。
【0016】
内装布帛20は、融点がポリオレフィン系樹脂15の融点よりも高い220℃以上のポリプロピレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維によって構成されている。
その内装布帛20の70質量%以上を占めるポリエステル系繊維が、単繊維繊度が10dtex以下の細手の繊維であるため、内装布帛20の内部の繊維間隙間は細かくなる。
そして、内装布帛20のJIS−L−1096(8.26.1 A法)に規定される通気度は、10〜150cm3 /cm2 /secに設定されている。
このため、ポリエーテル系ポリウレタンは、それが熱溶融状態になっても、そのポリエステル系繊維になる細かい繊維間隙間に阻まれて内装布帛20を透過することが出来ず、内装布帛20の表面に滲み出ることがなくなる。
その結果、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡構造が維持される。
【0017】
又、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の合成樹脂基材層側(15)には、非通気性のポリエーテル系ポリウレタン非発泡層13が積層されている。
そのため、熱溶融状態になったポリオレフィン系樹脂15は、その軟化温度の高い非発泡層13に妨げられて、軟化温度の低いポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡セル内に浸入し難くなる。
【0018】
そして、仮に、軟化温度の低いポリエーテル系ポリウレタン発泡層12が、雄型体22と雌型体21の間のキャビティ23内で熱溶融状態になって押し出されるポリオレフィン系樹脂15に触れて熱溶融状態になり、その軟化温度の低いポリエーテル系ポリウレタンの発泡セルが押し潰されるとしても、ポリエーテル系ポリウレタンの比重を1.15として算定しても、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の嵩密度が発泡倍率33〜77倍に相当する0.015〜0.035g/cm3 であり、そのポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の容積(嵩)の殆どが空気で占められていることから、発泡セル壁間が融着してポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の厚みが減少したままにはなり難くなる。
【0019】
そして、雄型体22と雌型体21の間のキャビティ23に押し出されるポリオレフィン系樹脂15の容積に応じて、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡セルが一時的に押し潰されるとしても、そのキャビティ23から取り出されてフリーになった解放状態では、発泡セルが原形を回復し、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡構造が維持され、クッション感が保たれる。
【0020】
かくして、本発明によると、内装布帛20の裏面に貼り合わされたポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡構造が維持され、クッション性があって触感のよい内装材10が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内装材の成形加工過程における内装布帛と内装材と雄型体と雌型体の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の外面を覆う内装布帛20の目付けは、150〜500g/m2 に設定される。
内装布帛20のJIS−L−1096に規定される通気度が10〜150cm3 /cm2 /secに設定される理由は、媒介層14を内装布帛20に貼り合わせる貼合工程において、内装布帛20に対する媒介層14の接着成分によるアンカリング効果を得るためには、内装布帛20に10cm3 /cm2 /sec以上であり150cm3 /cm2 /sec以下となる通気度が求められることによる。
即ち、通気度が10cm3 /cm2 /sec未満の内装布帛20には、媒介層14の接着成分が浸透し難く、十分なアンカリング効果は期待されず、又、通気度が150cm3
/cm2 /secを超える内装布帛20では、内装布帛20の繊維間隙間が粗くなり、内装布帛20の繊維に対する媒介層14の接着成分の絡み付きが弱くなり、十分なアンカリング効果は期待されない。
【0023】
官能的には、内装材10のポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の発泡構造について、内装材10の表面のクッション性と触感によって評価される。
【0024】
物理的には、本発明は、次の(1)と(2)に該当する場合に効果「あり」と判定される。
(1) 成形加工後の内装材10を50〜80℃の高温状態に24時間放置後の顕微鏡断面写真による媒介層14の厚みと成形加工前の媒介層14の厚みとの差を成形加工前の媒介層14の厚みで除して算定される媒介層14の厚みの減少率が85%以下である。
(2) 成形加工後の内装材10の表面にポリエーテル系ポリウレタン発泡層12やポリオレフィン系樹脂15の溶融物が滲み出て固着し、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の厚みが局部的に薄くなり、内装材10の表面が局部的に窪んだ溶融物の滲出痕跡が認められない。
【0025】
本発明は、次の(1)と(2)に該当する場合にも効果「あり」と判定と判定することが出来る。
(1) 内装材10の高温状態に放置されない成形加工後の状態において、内装材10の表面のJIS−K−6253−6(デュロメーター硬さ試験のタイプA)に規定されるデュロメーター硬さが90以下である。
(2) 内装材10の高温状態に放置されない成形加工後の状態において、カトウテック株式会社製KES−FB計測システム機種KES−FB3の圧縮試験において測定される圧縮仕事量(WC値)(単位;gf・cm/cm2 )が0.240gf・cm/cm2 以上である。
尚、計測される圧縮仕事量のWC値が大きいほど、内装材の表面が圧縮し易く、クッション感に富むことを意味する。
【0026】
内装布帛20の目付けが同じでも、内装布帛20を構成している繊維の単繊維繊度が細かければ、内装布帛内部の繊維間隙間が細かくなる。
内装布帛内部の繊維間隙間が細かくなれば、内装布帛20の通気度も小さくなり、成形加工時の熱溶融した合成樹脂(15)が内装布帛20への滲み込み難くなる。
合成樹脂(15)が内装布帛20に滲み込み難くなれば、ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の厚みが減少し難くなる。
ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12の厚みが減少し難くなれば、ポリエーテル系ポリウレタンの発泡構造が維持される。
この点を考慮し、内装布帛20を構成する70質量%以上のポリエステル繊維の単繊維繊度を5dtex以下にすることが望まれる。
【0027】
本発明において、単繊維繊度10dtex以下のポリエステル繊維の内装布帛20に対する適用量は、70質量%以上に設定される。
その70質量%以上となるポリエステル繊維の適用量は、内装布帛20の表面光沢、凹凸感、立体感等の美感を整えるために、内装布帛20の30質量%未満となるポリエステル繊維以外の他の繊維、或いは、内装布帛20の30質量%未満となる単繊維繊度が10dtexを超えるポリエステル繊維その他の繊維の適用が許容されることを意味している。
【0028】
ポリエーテル系ポリウレタン発泡層12とポリエーテル系ポリウレタン非発泡層13が裏打ちされた内装布帛20は、雄型体22と雌型体21の間に張設され、雄型体22と雌型体21の間で押圧される。
その押圧された状態において、型体22からポリオレフィン系樹脂(15)がキャビティ23に射出される。
そこで、内装布帛表面層11とポリエーテル系ポリウレタン媒介層14と合成樹脂基材層15が一体になった内装材10が立体的に成形される。
その際、媒介層14と合成樹脂基材層15との接着強度を高めるために、ポリオレフィン系樹脂成分を含む樹脂組成物を媒介層14に塗布することも出来る。
【0029】
内装材10が立体的に成形される過程において、内装布帛20は、雄型体22と雌型体21の凹凸形状と凹凸深さに応じて伸縮する。
その部分的伸縮によって内装布帛20に小皺等の異常変形が生じないようにするためには、内装布帛の伸び率、内装布帛のセット率、内装布帛の剛軟度、および、内装布帛の引張強さを次の通り設定することが望まれる。
(1) 内装布帛20の伸び率をタテ・ヨコ共に20〜45%に設定する。
(2) 内装布帛20のセット率をタテ・ヨコ共に1.5〜5.5%に設定する。
(3) JIS−L−1096(8.21.1 A法)に規定される内装布帛20の剛軟度をタテ・ヨコ共に50〜60mmに設定する。
(4) JIS−L−1096(8.14.1 A法)に規定される内装布帛20の引張強さをタテ・ヨコ共に140〜210N/cmに設定する。
【0030】
そのように設定された内装布帛20では、裏面が伸縮性に富むポリエーテル系ポリウレタン媒介層14に被覆されているので、内装布帛20が局部的に伸長されても、内装布帛20の繊維間隙間から合成樹脂基材層15の溶融着物が滲み出ることがない。
従って、内装材10の触感風合いは、合成樹脂基材層15の溶融着物によって損なわれることはない。
【0031】
雄型体22と雌型体21の間に張設される内装布帛20とポリエーテル系ポリウレタン発泡層12とポリエーテル系ポリウレタン非発泡層13との積層物の伸び率は、タテ・ヨコ共に15〜40%に設定される。
又、発泡層12と非発泡層13との積層物のセット率は、タテ・ヨコ共に1.0〜5.0%に設定される。
発泡層12と非発泡層13との積層物のJIS−L−1096(8.14.1 A法)に規定される引張強さは、タテ・ヨコ共に140〜210N/cmに設定される。
【0032】
内装布帛20には、織物、編物、および、織物や編物を基材とする起毛布帛や人工皮革が使用される。
本発明において、内装布帛の伸び率とセット率、および、内装布帛とポリエーテル系ポリウレタン発泡層とポリエーテル系ポリウレタン非発泡層との積層物の伸び率とセット率は、次の手順で計測する。
(ステップ 1) 内装布帛から織編幅方向80mmと織編成方向300mmのタテ試験片5枚と、織編幅方向300mmと織編成方向80mmのヨコ試験片5枚が採取される。
(ステップ 2) 各試験片の長さ方向(300mm)の中心から、その長さ方向に前後50mmそれぞれ離れた位置に標点が記入される。
(ステップ 3) 各試験片の長さ方向(300mm)の両端に幅80mmの治具が取り付けられる。
(ステップ 4) 治具の重量を含む10kgfの荷重を掛けて、各試験片が縦長に吊り下げられる。
(ステップ 5) 10分間経過後の試験片の上下の標点間の距離yが測定される。
(ステップ 6) 測定前の標点間の標準距離xと測定距離yの差(δ=y−x)を標準距離xで除した値に100を掛けることによって、伸び率α(=100×δ/x)が算定される。
(ステップ 7) 伸び率計測後、荷重を取り除いて試験片は、平らな板の上に広げて載置される。
(ステップ 8) 10分間経過後の試験片の上下の標点間の距離zが測定される。
(ステップ 9) 測定前の標点間の標準距離xと測定距離zの差(φ=z−x)を標準距離xで除した値に100を掛けることによって、セット率β(=100×φ/x)が算定される。
【0033】
合成樹脂基材層15の厚みは1〜5mmあればよい。
ポリオレフィン系樹脂(15)には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)等が用いられる。
ポリオレフィン系樹脂には、粘着性付与樹脂として、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂等を配合することが出来、又、軟化温度調整剤として、非晶性ポリプロピレン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、アスファルト、鉱油、動植物油、パラフィンオイル、ポリブテン等を配合することが出来る。
【0034】
媒介層には、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートとの反応生成物であるポリエーテル系ポリウレタンが用いられる。
ポリエーテルポリオールには、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のジオールやトリオールが用いられる。ジイソシアネートには、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、チシレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が用いられる。
【実施例】
【0035】
ウェール密度が40ウェール/25.4mm、コース密度が80コース/25.4mm、総質量(目付け)が408g/m2 、JIS−L−1096(8.26.1 A法)に規定される通気度が21cm3 /cm2 /sec、タテ伸び率が27.0%×ヨコ伸び率が37.0%、タテセット率が3.0%×ヨコセット率が4.8%、JIS−L−1096(8.21.1 A法)に規定されるタテ剛軟度が58mm×ヨコ剛軟度が56mm、JIS−L−1096(8.14.1 A法)に規定されるタテ引張強さが190N/cm×ヨコ引張強さが186N/cmのダブルスェードジャージ横編布帛が編成される。
編成されたダブルスェードジャージ横編布帛は、実施例と比較例の内装布帛として使用される。
表糸には、単繊維繊度0.6dtex、総繊度84dtexのポリエステル繊維マルチフィラメント捲縮加工糸が使用される。
中糸には、単繊維繊度4.6dtex、総繊度110dtexのポリエステル繊維マルチフィラメント捲縮加工糸が使用される。
裏糸には、単繊維繊度3.5dtex、総繊度167dtexのポリエステル繊維マルチフィラメント捲縮加工糸が使用される。
【0036】
[実施例1]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.022g/cm3 、厚み4mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度260℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0037】
[実施例2]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.022g/cm3 、厚み2mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度260℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0038】
[実施例3]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.040g/cm3 、厚み4mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度260℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0039】
[比較例1]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.040g/cm3 、厚み4mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度160℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0040】
[比較例2]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.022g/cm3 、厚み4mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度160℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0041】
[比較例3]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.022g/cm3 、厚み2mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの裏面が接炎溶融される。
その溶融した発泡シートの裏面に、軟化温度160℃の非発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る厚み15μmのポリエーテル系ポリウレタン非発泡シートが貼り合わされて、媒介シートが調製される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0042】
[比較例4]
軟化温度140℃の発泡ポリエーテル系ポリウレタンに成る嵩密度0.040g/cm3 、厚み4mmのポリエーテル系ポリウレタン発泡シートが、媒介シートとして適用される。
媒介シートの表面のポリエーテル系ポリウレタン発泡シートの表面が接炎溶融される。
溶融した発泡シートの表面に内装布帛の裏面が貼り合わされる。
媒介シートを貼り合わせた内装布帛は、雄型体と雌型体の間に張設され、押圧付形される。
その雄型体と雌型体の間のキャビティに融点170℃のエチレン・プロピレン・ブロックコポリマーが射出される。
このようにして、内装布帛が合成樹脂基材層に支持された内装材が成形される。
【0043】
[評価]
本発明実施例1〜3と比較例1〜4の内装材の品質は、次の[表1]に示す通りである。
比較例1〜4の内装材では、高温状態に長時間放置後に溶融物の滲出痕跡としての局部的窪みが内装材表面に看取され、媒介層14の厚みが局部的に大きく減少しており、実用不適と評価された。
本発明実施例1〜3の内装材では、高温状態に長時間放置後に溶融物の滲出痕跡としての局部的窪みが内装材表面に看取されず、媒介層14の厚みの減少率が85%未満であり、本発明による「効果あり」と評価された。
又、本発明実施例1〜3の内装材は、高温状態に長時間放置されない成形加工直後の状態においても、タイプAデュロメーター硬さが90以下であり、KES−FB3の圧縮試験において測定される圧縮仕事量が0.240gf・cm/cm2 以上であり、比較例1〜4の内装材に比して表面が平滑でクッション感に優れている。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る内装材は、椅子張り地、自動車シート地等の車両内装品に使用される布帛、自動車や列車、航空機等の交通機関の居住空間を囲む天井、壁面、扉面、棚面等の周面を装飾するために使用されるほか、建物内部の居住空間を囲む天井材、壁面材、扉面材、家具や調度品の表面装飾材として利用することも出来る。
【符号の説明】
【0046】
10:内装材
11:内装布帛表面層
12:発泡層
13:非発泡層
14:媒介層
15:合成樹脂基材層
20:内装布帛
21:雌型体
22:雄型体
23:キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 内装布帛表面層(11)と合成樹脂基材層(15)を、厚み1.0〜7.0mm、嵩密度0.015〜0.050g/cm3 のポリエーテル系ポリウレタンを主材とする発泡層(12)と、厚み10〜30μmのポリエーテル系ポリウレタンを主材とする非発泡層(13)との二層構造の媒介層(14)を介して積層して立体的に一体成形された内装材において、
(2) 合成樹脂基材層(15)がポリオレフィン系樹脂を主材として構成され、
(3) 内装布帛表面層(11)の内装布帛(20)を構成している70質量%以上の繊維が、単繊維繊度10dtex以下のポリエステル系繊維によって構成され、
(4) その内装布帛(20)のJIS−L−1096に規定される通気度が10〜150cm3 /cm2 /secであり、
(5) 媒介層(14)の非発泡層(13)を構成しているポリエーテル系ポリウレタンの軟化温度が、200℃以上であり、合成樹脂基材層(15)を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点よりも15℃以上高い内装材。
【請求項2】
内装布帛(20)を構成している70質量%以上の繊維は、単繊維繊度が5dtex以下のポリエステル系繊維である前掲請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
媒介層(14)の発泡層(12)が内装布帛側(20)に積層され、非発泡層(13)が合成樹脂基材層側(15)に積層されている前掲請求項1または2に記載の内装材。
【請求項4】
発泡層(12)の主材であるポリエーテル系ポリウレタンの嵩密度が0.015〜0.035g/cm3 である前掲請求項3に記載の内装材。


【図1】
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【公開番号】特開2012−183775(P2012−183775A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49637(P2011−49637)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(510045438)TBカワシマ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】