説明

内装部品

【課題】エアバッグシステムの袋体の膨張展開時に破断予定部となる溝が破断してもエアバッグシステムの袋体に損傷が発生することを抑制できる内装部品を提供する。
【解決手段】トリム本体11の裏面に長手方向に沿って破断予定部に溝9が形成され、この溝9を挟むように、溝9に交差する幅方向に沿って交差リブ14を形成した。溝9に臨む交差リブの端部が、エアバッグシステムの袋体30に先当たりして、溝9が破断されることにより生じる亀裂部27に袋体30が接触することを防止した。従って、袋体30が損傷することを防止して、エアバッグシステムの袋体30を確実に膨張展開させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の内装部品に関し、さらに詳しくは、エアバッグを収納して、エアバッグの展開時に破断されることにより、室内へのエアバッグシステムの袋体の展開を許容する例えばピラートリムなどの内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、乗員の保護を図るためにステアリングホイールやインストルメントパネルなどにエアバッグシステムの袋体を内蔵する構成が採用されている。さらに最近では、車両の側方からの衝突に対しても乗員を保護できるように、車両のピラーやルーフ側部に車両の前後方向に亘ってエアバッグシステムの袋体が展開するカーテンエアバッグシステムを備えた車両も実用化されている。
【0003】
このようなエアバッグシステムの袋体を収納しておく内装部品としては、例えば、図9(a)に示すようなピラートリム100がある。このピラートリム100は、略桶形状の本体部分101と、この本体部分101の上部の裏面側へ突出するように設けられた図示しない取付部とを備える。このようなピラートリム100は、取付部を図示しない車体側のピラーに支持することで車体側へ取り付けられる。
【0004】
図10(a)に示すように、例えば、カーテンエアバッグシステムの場合、袋体102は、ピラートリム100の本体部分101と図示しないピラーとの間の空間、及び図示しないルーフサイドトリムの裏側に亘って収納されている。図9(b)及び図10(b)に示すように、この袋体102が膨張展開した場合は、ピラートリム100の略上半部とルーフサイドトリムが、展開する袋体102に裏面側から強制的に押圧されて変形し、袋体102の車室内側への展開を許容するように設計されている。
【0005】
さらに詳しくは、上記特許文献1に開示された内装部品では、図9(a)及び図10に示すように、ピラートリム100の本体部分101の一部分101Aが変形し易いように本体部分101の裏面側に破断予定部となる溝(薄肉部)101Bが形成されている。
【0006】
この他の従来の技術としては、ピラートリムの本体部分がブリッジ状脚部に対して変形し易いようにブリッジ状脚部の一部の立ち上がり壁部が本体部分から分離したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−237512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のピラートリム100では、エアバッグシステムが作動した場合、図9(b)及び図10(b)に示すように、袋体102が膨張展開して、ピラートリム100の本体部分101が溝101Bに沿って一部分101Aが破断されて、尖った亀裂部101Cが膨張展開する袋体102に刺さって損傷させてしまう可能性が有り、ともすると、袋体102の内圧を所望のエアー圧まで高められなくなる可能性がある。
【0009】
また、特許文献1に開示されたピラートリムでは、ブリッジ状脚部の一部の立ち上がり壁部が本体部分101から分離した構造であるため、ブリッジ状脚部の取り付け強度が低く、ピラートリムをピラーに固定する際にブリッジ状脚部の根本が白化し製品不良となってしまう課題がある。
【0010】
本発明は上述の問題点に着目して創案されたものであって、その目的とするところは、ピラーへの固定の際、ピラートリム表面の不良が発生することなく通常状態では剛性を有して車室内側へ固定されエアバッグシステムの袋体の膨張展開時に破断予定部となる溝が破断してもエアバッグシステムの袋体に損傷が発生することを抑制できる内装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、車両の室内側に表面が露出するように車体側部材に沿って配置され、車体側部材との間に収納される、エアバッグシステムの袋体を覆う板状の内装部品本体を備える内装部品であって、内装部材本体の裏面に、袋体が展開した際に破断するように予定された破断予定位置に沿って溝が形成され、溝の長手方向と交差する方向に沿って溝の両側に交差リブが立設されていることを要旨とする。
【0012】
このように溝の両側に交差リブが立設されていることにより、エアバッグシステムの袋体が展開した場合に、交差リブに袋体が先当たりして、内装部品本体の溝に亀裂が生じてもこの亀裂に袋体が当接することを防止できる。従って、尖った亀裂部が袋体を損傷させることを防止でき、展開した袋体が圧力不足となることをより確実に防ぐことができる。
【0013】
ここで、交差リブにおける溝に臨む端部に、展開するエアバッグシステムの袋体に曲面で当接するアール面を設けた構成とすることが好ましい。
【0014】
このようにアール面を交差リブの端部に設けることにより、エアバッグシステムの袋体に損傷が生じることをさらに防止できる。
【0015】
また、本発明は、溝の近傍にこの溝の長手方向に沿って延在された平行リブが立設されている構成としてもよい。
【0016】
このように平行リブを溝に沿って延在させることにより、溝の長手方向に亘って、エアバッグシステムの袋体が溝が破断して形成された亀裂に接触することを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エアバッグシステムの袋体の膨張展開時に破断予定部となる溝が破断してもエアバッグシステムの袋体に損傷が発生することを抑制できる内装部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムを装着した部分を車室内から見た状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムの表面側から見た平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムを裏面側から見た平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムを裏面側から見た要部斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムにおけるエアバッグシステムの袋体が収納された部分を示す要部断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムにおいてエアバッグシステムの袋体が展開したときのリブ及び溝の状態を示す要部断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムの変形例を示す要部斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るフロントピラートリムの他の変形例を示す要部斜視図である。
【図9】(a)は従来のピラートリムを表面側から見た状態を示す斜視図、(b)はエアバッグシステムの袋体が展開に伴い部分的に破断した状態を示す要部斜視図である。
【図10】(a)は従来のピラートリムにおけるエアバッグシステムの袋体が収納された部分を示す要部断面図、(b)はエアバッグシステムの袋体が展開に伴い部分的に破断した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る内装部品の詳細を図1〜図6を用いて説明する。本実施の形態は、内装部品としてのフロントピラートリム10に本発明を適用したものである。図1はフロントピラートリム10を装着した部分を車室内から見た状態を示す斜視図、図2はフロントピラートリム10の表面側から見た平面図、図3はフロントピラートリム10を裏面側から見た平面図、図4はフロントピラートリム10の取付部12近傍を裏面側から見た要部斜視図、図5は溝近傍の要部断面図、図6はトリム本体が破断した状態を示す断面図である。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法の比率等は現実のものとは異なる部分が含まれている。
【0020】
(フロントピラートリムの構成)
図1に示すように、フロントピラートリム10は、車両の室内側に表面が露出するようにフロントピラー(Aピラー)1に沿って配置される。
【0021】
フロントピラートリム10は、フロントピラー1との間に収納される、エアバッグシステムの袋体30を覆う板状の内装部品本体としてのトリム本体11と、トリム本体11の上部裏面に一体的に突設され、フロントピラー1に係合して支持される取付部12とを備える。
【0022】
図1〜図4に示すように、トリム本体11は、板状で且つ略樋状に湾曲した構造を有するものであり、例えばポリプロピレン(PP)などの合成樹脂を射出成型してなる。このトリム本体11の湾曲外側面(表面)は、車両の車室内側に露出するように配置される。図1に示すように、トリム本体11の湾曲内側面(裏面)は、フロントピラー1に対向するように配置される。
【0023】
図2及び図3に示すように、トリム本体11の下端には、複数の取付用係止片13がトリム本体11に一体的に下方に向けて突設されている。これら取付用係止片13は、インストルメントパネルの上面周辺に設けられた図示しない開口部に挿入されるようになっている。なお、フロントピラートリム10は、これら取付用係止片13をインストルメントパネルの上面周辺の図示しない開口に挿入した後、上記取付部12をフロントピラー1に取り付けることにより装着されるようになっている。
【0024】
図3〜図5に示すように、トリム本体11の裏面側には、収納されたエアバッグシステムの袋体30が膨張展開した際に破断するように予定された破断予定位置に沿って溝9が形成されている。
【0025】
トリム本体11の裏面には、長手方向に沿った複数の位置にそれぞれ、長手方向に交差する幅方向Wに沿って交差リブ14が形成されている。上記溝9に交差する交差リブ14は、溝9で分断されている。本実施の形態では、溝9に臨む交差リブ14の端部上面には、半円状に突出するアール面(曲面)を備えた突出部14Aを形成している。また、本実施の形態では、トリム本体11の上端における溝9を挟む位置に、側面形状が半円をなす突出部8を突設している。なお、本実施の形態では、交差リブ14の溝9に臨む端部に突出部14Aを形成したが、突出部14Aを形成しない構成としてもよい。この場合、交差リブ14の端部の角部は、エアバッグシステムの袋体30を損傷させないようにアール面に加工することが好ましい。
【0026】
また、トリム本体11の裏面側の幅方向Wの中間部には、長手方向に沿って1列の補強リブ15が形成されている。
【0027】
図3〜図5に示すように、取付部12は、ブリッジ状脚部16と、ブリッジ脚部16の突端に設けられた係合部としての係合突部17とを備える。なお、ブリッジ脚状部16を取付部12に採用することで、トリム本体11の表面側に成型時のヒケが生じることを防止できる。
【0028】
係合突部17は、先端部に膨大頭部17Aが形成されている。この膨大頭部17Aは、図示しないフロントピラーのインナーパネルに開設された取付孔に弾性変形を伴って圧入されてフロントピラートリム10をフロントピラー側へ装着、固定するようになっている。
【0029】
なお、本実施の形態では、係合突部17を含む取付部12がトリム本体11と同一材料で一体的に成型されたものであるが、この係合突部17に代えて別途、ネジ部材、クリップなどの取付具を設ける構成としてもよい。
【0030】
(エアバッグシステム作動時のフロントピラートリムの作用)
上述した構成を有するフロントピラートリム10は、フロントピラー1に装着された状態でエアバッグシステムの袋体30が膨張展開した際に、図6に示すように、トリム本体11における袋体30が配置された領域に設定された破断予定部に形成された溝9で折れ曲がって破断されるようになっている。破断予定部は、袋体30の膨張展開によりトリム本体11が部分的に車室内側に変形して押し出される部分と、トリム本体11における、変形されずにフロントピラー1に沿った状態で残る部分との境界となる部分であり、溝9が形成された部分を含む。
【0031】
図6に示すように、袋体30が膨張展開した際には、溝9を境にしてトリム本体11が破断される。このような破断が生じた場合に、交差リブ14の端部に形成された突出部14Aの上面は、溝9が破断して形成される尖った亀裂部27に袋体30が及ばないように袋体30に先当たりする。これにより、袋体30は尖った亀裂部27に触れて損傷してしまうことを回避することが可能となる。なお、トリム本体11の上端に溝9を挟むように形成された突出部8も突出部14Aと同様の作用を奏する。
【0032】
(実施の形態の効果)
上述のように袋体30に損傷が発生することを抑制できるため、瞬時に膨張展開した袋体30は、適正な圧力で膨らみ、乗員の安全を図ることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、取付部12を構成するブリッジ状脚部16は、上述した従来の技術のように一部の立ち上がり壁がトリム本体11と分離したものではないため、通常状態においてもトリム本体11がフロントピラー1に対して不安定に取り付けられることがなく、固定時においてトリム本体の表面が白化し製品不良となることがなく、さらにトリム本体11がフロントピラー1に対してガタツキが発生することを防止できる。
【0034】
(変形例)
図7及び図8は、それぞれ上記実施の形態の変形例を示す。図7に示す変形例は、溝9の両側にこの溝9に沿って延在させた平行リブ7をそれぞれ形成したものである。この平行リブ7は、交差リブ14における溝9に臨む端部よりも、溝9から僅かに離れた位置に形成されている。このような平行リブ7を形成することにより、袋体30が膨張展開した際に、溝9の長手方向全域に亘って袋体30が溝9の亀裂部27に接触することを防止できる。
【0035】
また、図8に示す変形例は、図7に示す変形例で形成した平行リブ7を溝9により近づけた構成であり、トリム本体11の上端側に位置する交差リブ14を除いて、交差リブ14の端部が平行リブ7よりも溝9側へ突出しない構成である。この変形例においても袋体30が膨張展開した際に、溝9の長手方向全域に亘って袋体30が溝9の亀裂に接触することを防止できる。
【0036】
図7及び図8に示した変形例では、平行リブ7を備えるため、交差リブ14と平行リブ7の倒れを互いに補強し合う作用がある。従って、袋体30が膨張展開した際に、これら交差リブ14及び平行リブ7が袋体30に先当たりしてもこれらリブが倒れることがなく、溝9に発生した亀裂に袋体30が接触することを確実に防止することが可能となる。
【0037】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、本発明の内装部品をフロントピラートリム10に適用して説明したが、エアバッグシステムの袋体が展開して取付部の基部で破断が生じるような内装部品であれば、これに限定されるものではない。本発明の内装部品としては、センタピラートリム、リアピラートリム、ルーフサイドトリム等の各種の内装部品に適用できることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、自動車をはじめとする各種乗り物に適用できるエアバッグシステムの袋体を覆う内装部品の製造分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…フロントピラー(車体側部材)
7…平行リブ
9…溝
10…フロントピラートリム(内装部品)
11…トリム本体
12…取付部
14…交差リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内側に表面が露出するように車体側部材に沿って配置され、前記車体側部材との間に収納される、エアバッグシステムの袋体を覆う板状の内装部品本体を備える内装部品であって、
前記内装部材本体の裏面に、前記袋体が展開した際に破断するように予定された破断予定位置に沿って溝が形成され、
前記溝の長手方向と交差する方向に沿って該溝の両側に交差リブが立設されていることを特徴とする内装部品。
【請求項2】
前記交差リブの前記溝に臨む端部に、展開する前記袋体に曲面で当接するアール面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内装部品。
【請求項3】
前記溝の近傍に該溝の長手方向に沿って延在された平行リブが立設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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