説明

内視鏡装置

【課題】第1の狭帯域光の発光波長が変動したとしても、第1の狭帯域光の照射光量を変えたとしても、蛍光体の蛍光特性が経時変化したとしても、撮像画像のホワイトバランスの変わらない内視鏡装置を提供する。
【解決手段】励起波長を持つ第1の狭帯域光を照射する第1の光源42、第2の光源44、及び励起波長を検出し記憶する波長検出手段37、39、47と、励起されて蛍光光を発光し、蛍光特性が照射光量及び励起波長の変動に応じて変化し、実使用時間により経時変化する蛍光体20、使用時間記憶部61及び経時変化テーブル63を持ち、蛍光特性を記憶する蛍光特性記憶部29、並びに撮像を行い撮像画像信号を出力する撮像部26と、経時蛍光特性を算出して、撮像画像信号のホワイトバランスが基準値となるように、第1の光源42の照射光量による蛍光体20の経時蛍光特性の変化に基づいて、第2の光源44の照射光量を制御する制御部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源等の励起光源から発せられる狭帯域波長の励起光と、励起光で励起されて蛍光体から発せられる蛍光光とを混合して白色照明光とする光源装置を備える内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置に用いられる光源装置として、例えば、発光ダイオードや半導体レーザダイオードを光源とした白色光源装置が開発されている。白色光源装置は、光源から発せられる励起光(例えば、青色レーザ光)で蛍光体を励起させて、緑色、黄色、赤色などの蛍光を生じさせ、励起光と蛍光光を混合することで白色光(疑似白色光)を作り出している。
【0003】
内視鏡装置において、体腔内を照明する照明部の光源には、従来、キセノンランプやメタルハライドランプが用いられているが、内視鏡の更なる小型化、高輝度化、そしてコストダウンを推進するために、光源に発光ダイオードや半導体レーザダイオードなどの励起光源を用いた白色光源装置を採用する働きが活発になっている。
また、発光ダイオードや半導体レーザダイオードを用いた白色光源装置は、キセノンランプやメタルハライドランプに比べて発熱量が低く抑えられ、発熱による内視鏡の変化が抑えられるというメリットがある。
【0004】
特許文献1では、前述のとおり励起光源を用いた白色光源装置において、励起光源における励起光の発振波長が白色光源装置間でばらつくと、蛍光体の発光光量が変化し、結果として最終的に出力される白色光の光量や色度が変化してしまうという問題がある。これに対して、特許文献1では、励起光源を駆動する駆動電流をパルスとして入力し、パルス数、パルス幅、パルス振幅及びデューティ比の少なくとも1つを変化させることで、発光光量を一定とし、白色光源装置間での白色光の色味を安定化させ、撮像画像のホワイトバランスを安定化させている。また、光量とは発光強度はもちろん、発光スペクトルも含む概念である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−56248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
白色光源装置に用いられる蛍光体は、励起光源からの発振波長及び発光強度の少なくとも1つが変化すると、蛍光特性が変化し、結果として最終的に出力される白色光の発光スペクトルが変化し、撮像画像のホワイトバランスが変化してしまうという問題がある。ここで、蛍光特性とは蛍光光の発光強度及び発光光量を含む蛍光体の特性をいう。
特に、撮像画像のホワイトバランスが、励起光量を最大とした場合を基準として設定されている場合には、励起光量を低下させることで、青味の足りない、診断に適さない光が照射されてしまう。また、励起光量とは、励起光の発光強度を含む概念であり、励起光とは、蛍光体を蛍光発光させる光をいう。
【0007】
特許文献1に記載の方法は、白色光の積算光量及び色度を基準に常に適切な光量及び色度の照明光を得ることができ、励起光の発振波長(発光波長)の異なる白色光源装置間において、励起光の発振波長のばらつきによる白色光の積算光量及び色度を補正し、色味を安定化することで画像の見え方のばらつきを補正するために有効な方法である。しかし、特許文献1の方法では、例えば、パルス振幅を大きく変化させた場合に色度が大きく変化し、その色度の変化をパルス数及びパルス幅の変化によって修正することが困難である場合が多い(特許文献1、図12等参照)。
つまり、励起光量を変えた途端に、その蛍光光の発光強度や発光光量が変化し、被写体へ照射される白色光の色度が変化し、撮像画像のホワイトバランスも変化してしまうため、被写体の距離や反射率に応じて励起光量を大きく変える必要がある内視鏡装置においては、うまく作用するとはいえない。
【0008】
そして、前述の励起光量の変化に対する白色光の変化は、励起光の発光波長ごとに異なるため、市場において、白色光源装置と内視鏡との組み合わせを変えた場合に、その影響が特に顕著に現れる。
【0009】
また、前述の蛍光体は、使用され、時間が経過することによって、その蛍光特性、特に発光強度が変化することが知られており、内視鏡製造時に測定された蛍光特性と、市場において使用されている内視鏡の蛍光特性とが異なっている場合がある。
このように蛍光特性が変化した蛍光体を備える内視鏡は、製造時に想定し得る励起光量によって撮像を行うと、前述と同様に白色光の発光スペクトルが変化しており、撮像画像のホワイトバランスが変化してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、第1の光源から発せられる第1の狭帯域光と、第1の狭帯域光で励起されて蛍光体から発せられる第1の蛍光光とを混合して照明光とする光源装置を備える内視鏡装置であって、たとえ、光源装置と内視鏡との組み合わせを変えたことで第1の狭帯域光の発光波長が変動したとしても、また、第1の狭帯域光の照射光量を変えたとしても、そして、蛍光体の蛍光特性が経時変化したとしても、撮像画像のホワイトバランスの変わらない内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、狭帯域化された第1の波長を持つ第1の狭帯域光を照射する第1の光源、前記第1の光源とは異なる、狭帯域化された第2の波長を持つ第2の狭帯域光を照射する第2の光源、及び前記第1の光源からの前記第1の狭帯域光の前記第1の波長を検出し記憶する波長検出手段を有し、前記第1の波長は、前記第1の光源の第1の中心発光波長に対して所定の変動範囲内に入るものである光源装置と、前記第1の狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、励起光として機能する前記第1の狭帯域光によって励起されて、励起波長である前記第1の波長と異なる波長帯域の第1の蛍光光を発光し、前記第1の狭帯域光の照射光量及び前記第1の中心発光波長に対する前記励起波長の変動に応じて蛍光特性が変化し、また、その使用時間によって蛍光特性が経時変化する蛍光体、前記蛍光体の実使用時間を記憶する使用時間記憶部及び前記蛍光体の蛍光特性の経時変化を記録した経時変化テーブルを持ち、前記励起光の照射光量及び前記励起波長の変動に対して変化する前記蛍光体の第1の蛍光特性を記憶する蛍光特性記憶部、並びに、前記蛍光体を透過した前記励起光及び前記蛍光体で発光した前記第1の蛍光光を混合した光、又は前記励起光及び前記第1の蛍光光、並びに前記第2の狭帯域光が混合された光が照明光として照射された被写体からの、前記照明光の戻り光により撮像を行い、前記撮像画像信号を出力する撮像部、を有する内視鏡と、前記光源装置の前記波長検出手段から前記励起波長を読み出し、前記内視鏡の蛍光特性記憶部から、読み出された前記励起波長を持つ前記励起光の照射光量及び前記励起波長の変動に対する前記蛍光体の前記第1の蛍光特性を読み出し、また、前記使用時間記憶部から前記蛍光体の前記実使用時間を、前記経時変化テーブルから蛍光体の経時変化の情報をそれぞれ読み出して、前記実使用時間に対応する前記蛍光体の経時変化を算出し、算出された前記経時変化と読み出された前記第1蛍光特性とから第1の経時蛍光特性を算出し、算出された前記第1の経時蛍光特性から、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するように、前記第1の光源からの前記励起光の照射光量に対して付加される前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の照射光量を算出し、算出された前記第2の狭帯域光の照射光量となるように前記第2の光源を制御する制御部を有するプロセッサ装置と、を備えることを特徴とする内視鏡装置を提供する。
【0012】
また、前記光源装置の前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の前記第2の波長は、前記第2の光源の第2の中心発光波長に対して所定の変動範囲内に入るものであり、前記波長検出手段は、さらに、前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の前記第2の波長を検出し記憶するものであり、前記蛍光体は、さらに、前記第2の狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、前記第2の狭帯域光によって励起されて、前記第2の波長と異なる波長帯域の第2の蛍光光を発光し、前記第2の中心発光波長に対する前記第2の波長の変動に応じて蛍光特性が変化するものであり、前記蛍光特性記憶部は、さらに、前記第2の狭帯域光の前記第2の波長の変動に対して変化する前記蛍光体の第2の蛍光特性を記憶するものであり、前記内視鏡は、前記照明光として、前記励起光及び前記第1の蛍光光、並びに前記第2の狭帯域光及び前記第2の蛍光光が混合された光を用いるものであり、前記プロセッサ装置の前記制御部は、前記光源装置の前記光源情報記憶部から、さらに前記第2の波長を読み出し、前記内視鏡の蛍光特性記憶部から、さらに、読み出された前記第2の波長の変動に対する前記蛍光体の前記第2の蛍光特性を読み出し、前記算出された経時変化と前記読み出された第2蛍光特性から第2の経時蛍光特性を算出し、算出された前記蛍光体の前記第1及び第2の経時蛍光特性から、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するように、前記第1の光源からの前記第1の狭帯域光の照射光量に対して付加される前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の照射光量を算出し、算出された前記第2の狭帯域光の照射光量に前記第2の光源を制御するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記蛍光特性は、前記蛍光光の発光光量を含むことが好ましい。
【0014】
さらに、前記プロセッサ装置は、前記第1の光源の照射光量と、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するために必要な前記第2の光源の照射光量との対応関係が記録された補正テーブルを記憶する補正情報記憶部を備え、前記光源装置、前記内視鏡、及び前記プロセッサ装置が市場において互いに接続され内視鏡装置が構成された際に、前記制御部は、前記光源装置の前記波長検出手段で検出され記憶された前記第1の波長及び前記第2の波長と、前記内視鏡の前記蛍光特性記憶部に記憶された前記蛍光体の前記第1の蛍光特性及び前記第2の蛍光特性とを取得し、また、前記使用時間記憶部に記憶された前記蛍光体の実使用時間と、前記経時変化テーブルに記録された経時変化の情報とをそれぞれ取得して、前記第1の経時蛍光特性と前記第2の経時蛍光特性とをそれぞれ算出し、前記補正テーブルを作成して、前記補正情報記憶部に記憶し、前記補正テーブルと、前記第1の光源の照射光量とから前記第2の光源の必要な照射光量を求め、前記必要な照射光量に基づいて、前記第2の光源の照射光量を制御することが好ましい。
【0015】
また、前記基準のホワイトバランスは、前記第2の光源からの照射を停止し、前記第1の光源の照射光量を最大とした場合の前記撮像画像信号のホワイトバランスであることが好ましい。
【0016】
また、前記第2の狭帯域光の波長帯域は、前記第1の狭帯域光の波長帯域よりも短波長側にあることが好ましく、前記第1の光源は、第1の波長が445±10nmの範囲にある青色レーザ光源であり、前記第2の光源は、第2の波長が405±10nmの範囲にある青紫色レーザ光源であることが好ましい。
【0017】
また、前記第2の狭帯域光の波長帯域は、前記第1の狭帯域光の波長帯域よりも長波長側にあることが好ましい。
【0018】
また、前記ホワイトバランスとして、前記撮像画像信号の緑色光成分と青色光成分との比であるG/B比を用いることが好ましい。
【0019】
また、前記照明光は、所定波長帯域の赤色光成分、緑色光成分及び青色光成分をそれぞれ含む疑似白色光であることが好ましい。
【0020】
また、前記波長検出手段は、前記第1の狭帯域光の波長帯域に対応して光の透過率が波長に比例して変化する第1のフィルタ特性を備える第1のスロープ型ダイクロイックフィルタと、前記第2の狭帯域光の波長帯域に対応して光の透過率が波長に比例して変化する第2のフィルタ特性を備える第2のスロープ型ダイクロイックフィルタと、前記第1の狭帯域光及び第2の狭帯域光をそのまま透過させる透過部と、を有し、前記第1及び第2の狭帯域光の光路上にそれぞれを切り替えて設置可能な回転フィルタと、前記回転フィルタの下流に設置され、照射された前記第1及び第2の狭帯域光の光量を検出する光量検出部と、前記第1のフィルタ特性を記録した第1のテーブルと、前記第2のフィルタ特性を記録した第2のテーブルと、波長記憶部とを有し、前記光量検出部で検出された前記第1の狭帯域光の前記第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ透過後の光量と前記透過部透過後の光量とから前記第1の狭帯域光の前記第1のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率を算出し、算出された前記透過率と前記第1のテーブルとから、前記第1の狭帯域光の第1の波長を算出し、前記光量検出部で検出された前記第2の狭帯域光の前記第2のスロープ型ダイクロイックフィルタ透過後の光量と前記透過部透過後の光量とから前記第2の狭帯域光の前記第2のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率を算出し、算出された前記透過率と前記第2のテーブルとから、前記第2の狭帯域光の第2の波長を算出して、算出した前記第1の波長及び前記第2の波長を前記波長記憶部に記憶する波長算出部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の内視鏡装置によれば、光源における励起光の発光波長が変わったとしても、また、蛍光体の励起光量を変化させたとしても、そして、蛍光体の蛍光特性が変化したとしても、色味の変わらない、ホワイトバランスが保たれた撮像画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る内視鏡装置の構成を示す外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る内視鏡装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】(A)は、本発明の実施形態に係る内視鏡装置の青紫色レーザ光源からの青紫色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体により波長変換された第2の蛍光光の発光スペクトルの波長プロファイルを示すグラフであり、(B)は、本発明の青色レーザ光源からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体により波長変換された第1の蛍光光の発光スペクトルの波長プロファイルを示すグラフである。
【図4】図2に示す内視鏡装置の2種類のスロープ型ダイクロイックフィルタを有する回転フィルタの一実施例を示す模式図である。
【図5】図4に示す回転フィルタを構成する第1のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率と入射光である第1狭帯域光の発光波長の関係(第1のフィルタ特性)を示すグラフである。
【図6】図4に示す回転フィルタを構成する第2のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率と入射光である第2狭帯域光の発光波長の関係(第2のフィルタ特性)を示すグラフである。
【図7】図6に示すスロープ型ダイクロイックフィルタの実際のフィルタ特性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、励起光量(青色レーザ光の照射光量)に対する追加レーザ光量(青紫色レーザ光の照射光量)を補正する補正テーブルの情報を算出する手順を定めたフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、撮像画像(信号)のホワイトバランスを算出することにより、蛍光体の蛍光特性を計測する場合の説明図である。
【図10】(A)は、本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、励起光量と、蛍光体からの第1の蛍光光とを含む照明光のG/B比(G光成分/B光成分)との関係とを示すグラフであり、(B)は、励起波長の変動及び励起光量と、蛍光体からの第1の蛍光光とを含む照明光のG/B比(G光成分/B光成分)との関係とを示すグラフであり、(C)は、追加レーザ波長の変動及び追加レーザ光量と、蛍光体からの第2の蛍光光を含む照明光のG/B比との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、経時による蛍光特性(発光強度)の変化(経時変化テーブル)を示すグラフである。
【図12】(A)〜(C)は、本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、経時による蛍光特性の変化を反映させた場合の、図10(A)〜(C)のグラフであり、(D)は、励起光量と、撮像画像(信号)を基準のホワイトバランスに維持するために必要な追加レーザ光量との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の内視鏡装置における蛍光特性の経時変化の算出を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る内視鏡装置について、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の内視鏡装置の一例としての外観図であり、図2は、本発明の内視鏡装置の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の概念的なブロック図である。
図1、図2に示すように、本発明の実施形態に係る内視鏡装置10は、内視鏡11と、光源装置12と、プロセッサ装置13とを有する。プロセッサ装置13には、画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17とが接続されている。内視鏡11は、内視鏡挿入部19の先端から照明光を照射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子26(図2参照)を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。
また、照明光とは、狭帯域光と、白色光とを問わず、内視鏡11から被写体に向けて照射される光をいう。
【0025】
また、内視鏡11は、被写体内に挿入される可撓性の内視鏡挿入部19と、内視鏡挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23と、内視鏡11を光源装置12及びプロセッサ装置13に着脱自在に接続するコネクタ部25A、25Bを備える。なお、図示はしないが、操作部23及び内視鏡挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
【0026】
内視鏡挿入部19は、可撓性を持つ軟性部31と、湾曲部33と、先端部(以降、内視鏡先端とも呼称する)35とから構成される。内視鏡先端35には、図2に示すように、被観察領域へ照明光を照射する照射口21と、被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子26が配置されている。照射口21の奥には、光源装置12からの励起光を受けて蛍光発光する蛍光体20が、光ファイバ18の先端に配置され、撮像素子26の受光面には対物レンズユニット24が配置される。
【0027】
また、図2に示すように、内視鏡11は、撮像素子26からの撮像画像の画像信号の信号処理系として、アナログ信号である撮像画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行うためのCDS・AGC回路27と、CDS・AGC回路27でサンプリングと利得制御が行われたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換器(A/Dコンバータ)28と、前述の蛍光体20の蛍光特性を記憶した蛍光特性記憶部29とを有する。蛍光特性記憶部29は、使用時間記憶部61と経時変化テーブル63とを備える。使用時間記憶部61は、使用の際に、プロセッサ装置13から、蛍光体20に光源装置12から光が照射されていた時間の情報を得て、内視鏡11の実使用時間を記憶するメモリであり、経時変化テーブル63は、蛍光体20の蛍光特性の経時変化を記憶するテーブルである。
内視鏡11とプロセッサ装置13とが接続されると、蛍光特性記憶部29は、内視鏡11ごとに固有の蛍光体20の蛍光特性の情報、実使用時間の情報、及び経時変化テーブルの情報をプロセッサ装置13へ出力する。また、A/D変換器28でA/D変換されたデジタル画像信号は、コネクタ部25Bを介してプロセッサ装置13の画像処理部52に入力される。
【0028】
湾曲部33は、軟性部31と先端部35との間に設けられ、操作部23に配置されたアングルノブ22の回転動作により湾曲自在にされている。この湾曲部33は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端35の照射口21、及び撮像素子26の観察方向を、所望の観察部位に向けることができる。また、図示は省略するが、内視鏡挿入部19の照射口21にはカバーガラスやレンズが配置される。
【0029】
光源装置12は、内視鏡先端35の照射口21に供給する照明光を発生し、プロセッサ装置13は、撮像素子26からの画像信号を画像処理する画像処理部52を備える。光源装置12は、コネクタ部25Aを介して、プロセッサ装置13はコネクタ部25Bを介して、それぞれ内視鏡11と接続される。また、コネクタ部25A側には、回転フィルタ37(図2参照)と光量検出部39(図2参照)とを備える。
【0030】
また、プロセッサ装置13には前述の表示部15と入力部17とが接続されている。プロセッサ装置13は、入力部17や操作部23からの指示に基づいて、内視鏡11から伝送されてくる撮像信号を画像処理し、表示部15へ表示用画像を生成して供給する。
【0031】
図2に示すように、光源装置12は、発光源として第1の光源である青色レーザ光源(LD1)42と、第2の光源である青紫色レーザ光源(LD2)44とを備える。具体的には、青色レーザ光源42は、第1の狭帯域光として中心発光波長λ(445nm)の青色レーザ光を照射するレーザダイオードであり、励起光源として内視鏡先端35に設置された後述する蛍光体20を蛍光発光させる励起光として作用する。青色レーザ光は、蛍光発光された第1の蛍光光と混合されて白色(疑似白色)の照射光として被写体へ照射される。
【0032】
また、青紫色レーザ光源44は、第2の狭帯域光として中心発光波長λ(405nm)の青紫色レーザ光を照射するレーザダイオードであり、追加レーザ光源として前記照名光のB光成分(青色光成分)の不足を補う追加レーザ光として、照明光による被写体からの戻り光により撮像される撮像画像が基準のホワイトバランスを所定の範囲に維持するために照射される。
また、青紫色レーザ光源44からの第2の狭帯域光もまた、その一部が、内視鏡先端35に設置された後述する蛍光体20を蛍光発光させる励起光として作用して、第2の蛍光光を発生させるが、その発光光量は、前述の第1の蛍光光に比べて1/20程度である。第2の蛍光光もまた、照明光の一部として被写体に照射される。
【0033】
実際の青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44は、個々の光源装置12において、それらの理想とする中心発光波長λ及びλから若干ずれていることが多い。よって、青色レーザ光源42から照射される第1の狭帯域光の実際の波長を第1の波長とし、青紫色レーザ光源44から照射される第2の狭帯域光の実際の波長を第2の波長とする。
また、第1の波長及び第2の波長のそれぞれの中心発光波長からのずれを変動とし、想定され得るずれの最大幅を所定の変動範囲として±Δλで表す。よって、前述の中心発光波長λ及びλを用いると、第1の波長は、λ±Δλの範囲にあり、第2の波長は、λ±Δλの範囲にある。
【0034】
青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44としては、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
【0035】
また、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44からの発光は、光源制御部40により個別に制御されており、青色レーザ光源42の照射光量と、青紫色レーザ光源44の照射光量との光量比率は変更自在になっている。
【0036】
これら青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44から照射される青色レーザ光及び青紫色レーザ光は、集光レンズ(図示省略)によりそれぞれ光ファイバ18に入力され、合波器46により合波され、コネクタ部25Aに伝送される。なお、これに限らず、合波器46を用いずに、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44からのレーザ光を直接コネクタ部25Aに送出する構成であってもよい。
【0037】
コネクタ部25Aに供給された第1の狭帯域光、及び第2の狭帯域光が合波された合波光は、光ファイバ18を経由して、内視鏡11の内視鏡先端35まで伝送される。
【0038】
光源装置12の青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44は、製造時においても、それらの理想とする中心発光波長λ及びλから若干ばらついており、また、時間が経つにつれ、さらにそれら発光波長がずれていくことが想定されている。
【0039】
光源装置12は、青色レーザ光源42の発光波長である第1の波長及び青紫色レーザ光源44の発光波長である第2の波長を検出するために、2種類のスロープ型ダイクロイックフィルタを有する回転フィルタ37、光量検出部39、及び波長算出部47からなる波長検出手段を備える。
【0040】
回転フィルタ37は、図4に示すように、中心発光波長λの狭帯域光の透過を想定した第1のフィルタ特性を備える第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ(以下、第1のフィルタという)37A、中心波長λの狭帯域光の透過を想定した第2のフィルタ特性を備える第2のスロープ型ダイクロイックフィルタ(以下、第2のフィルタという)37B、及び透過部37Tの3種類に分かれ、光源制御部40からの指示により回転手段49によって回転され、3種類のフィルタを切り替えて使用される。
【0041】
また、光量検出部39は、青色レーザ光源42から照射された第1の狭帯域光の光量であって、回転フィルタ37の透過部37Tを透過した場合の光量と、第1のフィルタ37Aを透過した場合の光量とをそれぞれ検出し、波長算出部47へそれぞれ出力する。
また、青紫色レーザ光源44の場合も同様に、第2の狭帯域光の光量であって、回転フィルタ37の透過部37Tを透過した場合の光量と、第2のフィルタ37Bを透過した場合の光量とをそれぞれ検出し、波長算出部47へそれぞれ出力する。
【0042】
波長算出部47は、第1のフィルタ特性を記録した第1のテーブル65A及び第2のフィルタ特性を記録した第2のテーブル65Bを備え、回転フィルタ37の透過部37Tを透過した場合を透過率100%として、第1のフィルタ37A及び第2のフィルタ37B透過後の光量から透過率を求め、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44のそれぞれの発光波長を算出する。波長算出部47で算出された青色レーザ光源42の第1の波長及び青紫色レーザ光源44の第2の波長の情報は、波長記憶部67で記憶され、必要に応じてプロセッサ装置13の制御部50へ出力される。また、必要に応じて制御部50の補正情報記憶部54に記憶されてもよい。
【0043】
第1のフィルタ37Aは、透過する第1の狭帯域光の発光波長に従って透過率が変化するフィルタである。第1のフィルタ特性を示す図5のグラフのとおり、第1のフィルタ37Aは、おおよそ発光波長435nmから光を透過し始め、発光波長455nm以降で全ての光を透過する。
よって、第1の狭帯域光において、照射光量を一定とし、光量検出部39において、第1のフィルタ37Aを透過した場合に検出される光量と、透過部37Tを透過した場合(第1のフィルタ37Aを用いない場合)に検出される光量とから、波長算出部47において、照射された第1の狭帯域光の透過率を算出することで、第1のフィルタ37Aを透過した第1の波長を算出することができる。
【0044】
第2のフィルタ37Bもまた、透過する第2の狭帯域光の発光波長に従って透過率が変化するフィルタである。第2のフィルタ特性を示す図6のグラフのとおり、第2のフィルタ37Bは、おおよそ発光波長395nmから光を透過し始め、発光波長415nm以降で全ての光を透過する。
また、前述の第1の狭帯域光の場合と同様にして、第2の狭帯域光の透過率を算出することで、第2のフィルタ37Bを透過した第2の波長を算出することができる。
【0045】
図5及び図6のグラフに示す前記第1及び第2のスロープ型ダイクロイックフィルタの特性は理想的なものであり、実際の特性は、図7に示すようなグラフとなる。
【0046】
図7は、図5に示す435〜455nmの波長帯域の光に対応した第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ37Aの実際の特性を示すグラフであり、図7よりこの第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ37Aが、445nm付近において略線形の特性を示すことが分かる。
【0047】
また、これらスロープ型ダイクロイックフィルタのフィルタ特性が線形特性から外れた領域についても、スロープ型ダイクロイックフィルタの初期特性を事前に計測し、初期特性データを記憶し、波長を計測する際に、計測結果を前述の初期特性データに基づいて補正して使用すれば、その透過率特性からその狭帯域光の発光波長を求めることができる。
【0048】
通常の内視鏡観察である通常観察モードにおいては、波長検出手段は用いられないが、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44の発光波長(中心発光波長λ及びλからの変動±Δλ)を検出するキャリブレーションモードでは、これら波長検出手段が用いられる。キャリブレーションモードにおける光源装置12の波長検出については簡単に後述する。
通常観察モードとキャリブレーションモードとは、図示しない光源装置12の入力手段によって切り替えられる。
【0049】
以下、簡単にキャリブレーションモードの説明を行う。
キャリブレーションモードにより、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44の発光波長λ±Δλ及びλ±Δλを検出することは、光源装置12単独でできる。
【0050】
まず、第1の狭帯域光の発光波長を求める場合について説明する。図示しない光源装置12の入力部により、光源装置12がキャリブレーションモードに設定されると、光源制御部40からの指示により、回転フィルタ37が回転手段49によって回転され、第1のフィルタ37Aが、光量検出部39の前に設置される。
【0051】
次に、光源制御部40からの指示により、第1の狭帯域光が照射され、第1のフィルタ37Aを透過して光量検出部39により検出される。前述の光量検出部39では、第1のフィルタ37Aを透過した第1の狭帯域光の光量が検出される。
【0052】
次に、光源制御部40からの指示により、回転フィルタ37が回転手段49によって回転され、透過部37Tが、光量検出部39の前に設置される。
前述と同様に、光量検出部39では、透過部37Tを透過した第1の狭帯域光の光量が検出される。
【0053】
第1のフィルタ37Aを透過した場合の第1の狭帯域光の光量と、透過部37Tを透過した場合の第1の狭帯域光の光量とが、それぞれ、波長算出部47へ出力され、第1の狭帯域光の第1のフィルタ37Aの透過率が算出される。そして、波長算出部47では、前述の透過率と第1のテーブル65Aとから第1の狭帯域光の発光波長である第1の波長が算出され、波長記憶部67で記憶される。
【0054】
なお、第2の狭帯域光の発光波長を求める場合についても、同様に第2のフィルタ37Bが設置され、波長算出部47において算出された透過率と第2のテーブル65Bとから第2の狭帯域光の発光波長である第2の波長が算出され、同様に、波長記憶部67で記憶される。
以上が、キャリブレーションモードによって、光源装置12の波長検出手段により青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44の発光波長を検出する場合の動作である。
【0055】
図2に示すように、内視鏡先端35の光ファイバ18の光照射端の対向する位置には、蛍光体20が配置されている。この蛍光体20は、波長変換部材として機能する。すなわち、光ファイバ18から供給される青色レーザ光源42からの青色レーザ光は、蛍光体20を励起して蛍光光を発光させる。また、一部の青色レーザ光は、そのまま蛍光体20を透過する。一方、青紫色レーザ光源44からの青紫色レーザ光は、前述のとおり、蛍光体20をほとんど励起させることなく透過する。
【0056】
光ファイバ18は、マルチモードファイバであり、一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なケーブルを使用できる。
【0057】
蛍光体20は、波長変換部材として機能し、前述のとおり、励起光として作用する狭帯域光を受けて蛍光光を発光する。蛍光体20は、主に青色レーザ光のエネルギの一部を吸収して緑色〜黄色に蛍光発光する複数種の蛍光体を含んで構成される。蛍光体20の具体例としては、例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等を含む蛍光体等が利用できる。従って、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の第1の蛍光光と、蛍光体20により吸収されず透過した青色レーザ光とが合波された結果として、白色(疑似白色)の照明光が内視鏡先端35の照射口21から照射される。本実施形態のように、青色レーザ光源を励起光源として用いれば、高い発光効率で高い発光光量の白色光が得られ、更に、白色光の発光光量を容易に調整できる。
【0058】
上記の蛍光体20は、レーザ光の可干渉性により生じるスペックルに起因して、撮像の障害となるノイズの重畳や、動画像表示を行う際のちらつきの発生を防止できる。また、蛍光体20は、蛍光体を構成する蛍光物質と、充填剤となる固定・固化用樹脂との屈折率差を考慮して、蛍光物質そのものと充填剤に対する粒径を、赤外域の光に対して吸収が小さく、かつ散乱が大きい材料で構成することが好ましい。これにより、赤色や赤外域の光
に対して光強度を落とすことなく散乱効果が高められ、凹レンズ等の光路変更手段が不要となり、光学的損失が小さくなる。
【0059】
図3は、本実施形態における、青紫色レーザ光源44からの青紫色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体20により波長変換された第2の蛍光光の発光スペクトルである波長プロファイル(A)と、青色レーザ光源42からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体20により波長変換された第1の蛍光光の発光スペクトルである波長プロファイル(B)とを示すグラフである。
【0060】
青色レーザ光は、中心発光波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体20からの第1の蛍光光は、概ね450nm〜700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる。この第1の蛍光光と青色レーザ光とによるプロファイルBによって、前述した白色光(疑似白色光)が形成される。
また、青紫色レーザ光は、中心発光波長405nmの輝線で表され、青紫色レーザ光による蛍光体20からの第2の蛍光光も、前述のとおり発光光量は第1の蛍光光の1/20程度であるが、第1の蛍光光と略同等の波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる。また、この第2の蛍光光と青紫色レーザ光とによるプロファイルAは、前述のとおり第2の蛍光光の発光光量が少ないため、単独では略青紫色の光として照射される。
【0061】
プロファイルA及びプロファイルBからなる照明光は、被写体によって反射され、戻り光として撮像素子26おいて撮像画像信号として検出される。
図3に示すように、プロファイルA及びプロファイルBは、青紫色レーザ光及び青色レーザ光を主成分とするB光成分、第1の蛍光光及び第2の蛍光光の起伏中央部分を主成分とするG光成分、並びに前述の起伏の長波長側部分を主成分とするR光成分などに大きく分けられ、撮像画像信号として検出される。
【0062】
そして、前述のとおり、撮像画像のホワイトバランスは、撮像素子26の検出するこれらのR光成分、G光成分、及びB光成分の信号強度の比率である。よって、撮像画像において基準のホワイトバランスを維持するためには、撮像画像におけるR光成分、G光成分、及びB光成分の信号強度の比率を所定の範囲に維持する必要がある。
【0063】
また、蛍光体20において、励起光量に対する蛍光光の発光光量は、必ずしも一定ではなく、励起光量に応じて、蛍光体20の蛍光特性が変化することがわかってきた。
ここで、励起光量とは、励起光の光量であり、励起光とは、第1の狭帯域光はもちろん、追加レーザ光として追加される第2の狭帯域光も含む概念であるが、本明細書においては、これ以降、第1の狭帯域光及びその光量を励起光及び励起光量とし、第2の狭帯域光及びその光量を追加レーザ光及び追加レーザ光量として、区別して記載する。
【0064】
また、前述のとおり、励起光量によって撮像画像のホワイトバランスが変わるため、追加レーザ光を照射して撮像画像を基準のホワイトバランスに維持するためには、励起光量及び追加レーザ光量に対するホワイトバランスの変化の情報が必要となる。
よって、内視鏡11において、励起光量及び追加レーザ光量に対して、白色板を撮像した際の撮像画像におけるホワイトバランスの変化をグラフとして算出し、それらグラフの情報を蛍光体20の蛍光特性として記憶して、励起光量に対する追加レーザ光量の調整に利用する。
ここで、蛍光体20の蛍光特性としては、発振波長ごとに大きく分けて、励起光に対する第1の蛍光特性と追加レーザ光に対する第2の蛍光特性とが考えられる。
【0065】
なお、励起光量及び追加レーザ光量に対して、第1の蛍光光及び第2の蛍光光の波長プロファイルの形状はそれほど変化せず、蛍光体20を励起する励起光及び追加レーザ光のB光成分に対して、主に第1の蛍光光及び第2の蛍光光であるR光成分とG光成分とは略一定の割合で変化するため、前述のホワイトバランスとして、G光成分とB光成分との信号強度の比率であるG/B比を用いることが可能である。
よって、本発明においては、励起光量及び追加レーザ光量に対するG/B比の変化をそれぞれグラフとして算出し、それらグラフの情報を第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性として記憶する。
【0066】
また、前述のとおり励起光源及び追加レーザ光源の発光波長は、光源ごとに多少ばらついており、所定の変動範囲を持つ。よって、前述のとおり、励起光量及び追加レーザ光量に対する蛍光体20の蛍光特性の変化を励起光量及び追加レーザ光量に対するG/B比の変化のグラフの情報として記憶するだけでは、この光源ごとの発光波長のばらつきに対応することができない。
【0067】
そこで、前述のとおり、撮像画像において基準のホワイトバランスを維持するためには、内視鏡において、更に、励起光の中心発光波長λと変動範囲±Δλ及び追加レーザ光の中心発光波長λと変動範囲±Δλを考慮して、これらの変動範囲を含む発振波長ごとに、励起光量及び追加レーザ光量の変化に対するG/B比の変化をグラフとして算出し、更に、これらの波長変動の影響についても第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性として記憶しておく。これにより、励起光の第1の波長及び追加レーザ光の第2の波長がそれらの中心発光波長λ及びλから最大±Δλ変動したとしても、対応することができる。
【0068】
なお、変動範囲内にある全ての発光波長に対するG/B比の変化をグラフとして求めておくことは難しいが、最大変動±Δλの場合を求めておき、その間を補間演算することで変動範囲内の発光波長に対するG/B比の変化のグラフを算出することができる。
【0069】
また、本明細書でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、R光、G光、B光等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含むものとする。
【0070】
この内視鏡装置10では、プロファイルAとプロファイルBとの光量を光源制御部40により相対的に増減制御することで、プロファイルA及びBの混合比率に応じて特性の異なる照明光を得ることができる。
なお、前述のとおり、2つのレーザ光を合波しない場合には、内視鏡11は、内視鏡先端35に、図示しないが、照射口を2つ持ち、一方の照射口は先端部に蛍光体20を備え、青色レーザ光と蛍光光とからなる疑似白色光を、もう一方の照射口は先端部に蛍光体を備えず、そのまま青紫色レーザ光を照射する構成であってもよい。
【0071】
なお、内視鏡11の蛍光体20は、使用時間によってその蛍光特性が経時変化することが知られている。よって、前述の第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性は、使用時間による変化を加味した上で算出されるべきである。
【0072】
内視鏡11の蛍光特性記憶部29は、前述のとおり、励起光の照射時間を記憶する使用時間記憶部61と、蛍光体20の蛍光特性の使用時間に対する変化を記憶した経時変化テーブル63とを備える。経時変化テーブル63は、図11に示すとおり、蛍光体20の実使用時間(励起光の照射時間)と、発光強度の変化とを記憶したテーブルである。
【0073】
再び図2に戻り説明する。前述のように、励起光、蛍光体20からの第1の蛍光光、追加レーザ光、及び蛍光体20からの第2の蛍光光からなる照明光は、内視鏡11の先端部35から被検体の被観察領域に向けて照射される。そして、照明光が照射された被観察領域の様子を対物レンズユニット24により撮像素子26の受光面上に結像させて撮像する。
【0074】
撮像後に撮像素子26から出力される撮像画像信号は、CDS・AGC回路27によってサンプリングと利得制御が行われた後、A/D変換器28に伝送されてデジタル信号に変換され、コネクタ部25Bを介してプロセッサ装置13に入力される。
【0075】
プロセッサ装置13は、光源制御部40を通じて光源装置12を制御する制御部50と、前述の制御部50に接続される、画像処理部52と、補正情報記憶部54とを有する。前述のとおり、光源装置12とプロセッサ装置13とが接続されると、光源装置12の青色レーザ光源42の発光波長である第1の波長及び青紫色レーザ光源44の発光波長である第2の波長の情報がプロセッサ装置13の制御部50へ出力される。
【0076】
そして、内視鏡11がプロセッサ装置13に接続されると、制御部50は、前述の青色レーザ光源42の第1の波長及び青紫色レーザ光源44の第2の波長の情報を元に、内視鏡11の蛍光特性記憶部29が備える第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性を取得する。
その際に、制御部50は、第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性の取得と同時に、蛍光特性記憶部29の使用時間記憶部61から、内視鏡11の実使用時間の情報と、経時変化テーブル63の経時変化の情報を取得する。
【0077】
制御部50では、前述の使用時間記憶部61に記憶された実使用時間の情報と、経時変化テーブル63の経時変化の情報とから、実使用時間に対する蛍光体20の蛍光特性の経時変化、つまりは発光強度の変化を算出し、算出した発光強度の変化を、前述の第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性に反映させることで、経時変化を考慮した第1の経時蛍光特性及び第2の経時蛍光特性を算出する。第1の経時蛍光特性及び第2の経時蛍光特性の詳細については後述する。
【0078】
さらに、制御部50は、青色レーザ光源42からの励起光量が変化しても撮像画像が基準のホワイトバランスを維持するように、画像処理部52における撮像画像情報又はCDS・AGC回路27からの撮像画像信号よりホワイトバランスの調整に必要な青紫色レーザ光原44からの追加レーザ光量を算出する。励起光量の変化に対する追加レーザ光量の算出の詳細については後述する。
算出された励起光量と追加レーザ光量との関係は、予め補正テーブル56として補正情報記憶部54で記憶され、光源制御部40を通して青紫色レーザ光源44の制御に用いられる。
【0079】
また、光源制御部40は、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44における駆動電流を制御することで、それらの照射光量を制御する。そのため、補正情報記憶部54には、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44に対する駆動電流とその照射光量との関係も情報として予め記憶されている。そして、制御部50は、これら照射光量に必要な駆動電流の情報を算出し、それら駆動電流の情報を光源制御部40へ出力し、光源制御部40が、それぞれの光源に流れる駆動電流を制御することで、それらの照射光量を制御している。
【0080】
A/D変換器28から出力された撮像画像信号は、前述の画像処理部52に入力される。画像処理部52では、入力されたデジタル画像信号を画像データに変換して適切な画像処理を行い、所望の出力用画像情報を生成する。生成された出力用画像情報は、入力装置17及び操作部23等の指示により、制御部50を通じて表示部15へ出力される。
以上が、本発明の実施形態に係る内視鏡装置の構成である。
【0081】
次に、本発明の内視鏡装置10において、青色レーザ光源42からの励起光量と、撮像画像信号のホワイトバランスを基準の値に保つための青紫色レーザ光源44からの追加レーザ光量との関係示す補正テーブル56を作成し、補正情報記憶部54へ記憶する動作を図4のフローチャートに基づいて説明する。
また、これ以降、原則としてはホワイトバランスをG/B比として実施形態の説明を行う。
【0082】
まず、始めに、内視鏡11が基準光源装置とプロセッサ装置13とに接続される(S10)。次に、図9に示すように、内視鏡先端35を白色板に対向する形で設置し、青色レーザ光源42より、励起光を照射する(S12)。そして、基準光源装置を操作して、青色レーザ光源42の発光波長を中心発光波長λ(例えば、445nm)に調整する(S14)。前述のとおり、基準光源装置は、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44の発光波長を所定量、任意にずらすことが可能な光源装置である。
【0083】
青色レーザ光源42の発光波長をλに調整した後、その出力(駆動電流値)を最大として、励起光及び蛍光光の混合した照明光を白色板に対して照射し、その戻り光を撮像素子26により撮像する。撮像素子26は、撮像画像信号(撮像画像情報)を出力する(S16)。
【0084】
撮像素子26により撮像された撮像画像信号は、CDS・AGC回路27によって相関二重サンプリングされて撮像素子26におけるリセット雑音やアンプ雑音が除去され、A/D変換器28によって、アナログ撮像画像信号をデジタル撮像画像信号として変換され、画像処理部52へ出力される。
そして、画像処理部52では、例えば、その撮像画像信号をR光成分、G光成分、及びB光成分の3つの成分に分離し、また、出力部15において表示する表示用画像信号を生成する。制御部50は、画像処理部52において分離されたR光成分、G光成分、及びB光成分それぞれの信号値の比率を算出し、撮像素子26における基準のホワイトバランスとして算出する。また、前述のとおり、基準のホワイトバランスは、基準のG/B比でもよく、本発明の実施形態においては、ホワイトバランスとしてG/B比を用いている。また、撮像画像のG/B比は、CDS・AGC回路27において算出されてもよい(S18)。
そして、青色レーザ光源42の発光波長が中心発光波長λの際に算出される前述のG/B比を撮像素子26における基準のG/B比として、内視鏡11の蛍光特性記憶部29へ記憶する。(S20)。
【0085】
次に、光源制御部40を操作して、励起光量を徐々に低下させる。励起光量が低下すると、蛍光体20において励起光量に対する発光光量の比率は一定ではないため、撮像画像のホワイトバランスが変化する。前述のとおり、実際には、励起光量を低下させると、蛍光体20を透過する励起光の割合が減少し、B光成分の光量が不足する。
具体的には、青色レーザ光源42を駆動する駆動電流値に対して、画像処理部52で算出される撮像画像信号のホワイトバランスの変化、ここではG/B比の変化を制御部50においてグラフとして算出し、前述と同様に内視鏡11の蛍光特性記憶部29で記憶する。前述のとおり、B光成分に対するG光成分及びR光成分の比率は変わらないため、ここではホワイトバランスとしてG/B比を用いている。
よって、蛍光特性記憶部29には、その内視鏡11固有の蛍光体20の特性として、励起光量の減少に従って、G/B比が大きくなる様子を示す図10(A)のグラフの情報が記憶される(S22)。
【0086】
次に、基準光源装置により、青色レーザ光源42からの励起光の発光波長を中心発光波長λから短波長側にΔλ(例えば、10nm)だけずらすように調整する。ここでいう波長の変動Δλは、前述のとおり、光源装置12の青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44の所定の変動範囲内において想定され得る最大のずれ幅である(S24)。
青色レーザ光源42からの励起光の発光波長をλ−Δλとして、前述のステップS16、S18、S22を繰り返す。これによって、図10(B)に示す発光波長がλ−Δλの場合の青色レーザ光源42の励起光量の減少に従ってG/B比が変化するグラフが算出され、その情報が蛍光特性記憶部29に記憶される(S26)。
【0087】
次に、基準光源装置により、青色レーザ光源42からの励起光の発光波長を中心発光波長λから長波長側にΔλ(例えば、10nm)だけずらすように調整する(S28)。
青色レーザ光源42からの励起光の発光波長をλ+Δλとして、前述と同様にステップS16、S18、S22を繰り返す。これによって、図10(B)に示す発光波長がλ+Δλの場合の青色レーザ光源42の励起光量の減少に従ってG/B比が変化するグラフが算出され、その情報が蛍光特性記憶部29に記憶される(S30)。
【0088】
また、追加レーザ光源として動作する青紫色レーザ光源44についても、前述と同様の処理を行う。
基準光源装置を操作して、青紫色レーザ光源44の発光波長を中心発光波長λ(例えば、405nm)に調整して、ステップS20を除き、ステップS16〜S28までを繰り返す(S32)。
このステップS32により、青色レーザ光源42の場合と同様、図10(C)に示すように、青紫色レーザ光源44の発光波長を中心発光波長λとした場合、λ−Δλとした場合、λ+Δλとした場合のそれぞれについて、青紫色レーザ光源44からの追加レーザ光量の減少に従ってG/B比が変化するグラフが算出され、その情報が蛍光特性記憶部29に記憶される。
【0089】
蛍光特性記憶部29は、図4のステップS10〜S32により、基準のG/B比の情報と、内視鏡11固有の蛍光体20の第1の蛍光特性としての青色レーザ光源42に対する図10(B)の情報と、第2の蛍光特性としての青紫色レーザ光源44に対する図10(C)の情報とを記憶したこととなる。
【0090】
また、蛍光特性記憶部29は、内視鏡11の実使用時間、すなわち、蛍光体20に励起光が照射されていた時間を記憶する使用時間記憶部61と、蛍光体20の蛍光特性の経時変化について記憶した経時変化テーブル63とを備える。
経時変化テーブル63は、図11に示すとおり、横軸に使用時間を、縦軸に蛍光特性比として、当初の蛍光体20の発光強度に対する経時の蛍光体20の発光強度の比を縦軸に、採ったものである。従って、使用時間が経過するにつれて蛍光特性比(発光強度比)が、1.0から徐々に低下する。また、蛍光特性の経時変化は、図11のグラフからも明らかなように、ある使用時間まではゆっくりと進み、ある使用時間を過ぎると急速に進むことが分かる。なお、具体的には、G光の帯域の発光強度から発光強度比を求めている。
【0091】
蛍光特性記憶部29にその内視鏡固有の蛍光体20の第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性を記憶した内視鏡11は、市場に出て、青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44それぞれの発光波長が若干ばらついた光源装置12と接続される(S34)。光源装置12の青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44それぞれの発光波長のばらつきは、その光源装置固有のものであり、個々の光源装置によって異なる。
【0092】
内視鏡11、光源装置12、及びプロセッサ装置13が互いに接続されると、プロセッサ装置13の制御部50は、光源装置12の青色レーザ光源42及び青紫色レーザ光源44のそれぞれの発光波長の情報を波長算出部47の波長記憶部67より取得し、内視鏡11の蛍光特性記憶部29より、基準のG/B比の情報と、それら発光波長の情報に対応する第1の蛍光特性及び第2の蛍光特性とを取得し、また、使用時間記憶部61より、蛍光体20の実使用時間の情報を、経時変化テーブル63より、蛍光体20の経時変化の情報をそれぞれ取得する。
【0093】
そして、制御部50は、前述の蛍光体20の実使用時間の情報と、蛍光体20の経時変化の情報とから、蛍光体20の経時変化を算出し、経時変化を考慮した第1の経時蛍光特性及び第2の経時蛍光特性を算出する。
【0094】
図12(A)に示すグラフは、青色レーザ光源42の発光波長が中心発光波長である場合の第1の蛍光特性のグラフである。点線が経時変化前の第1の蛍光特性であり、実線が経時変化を反映させた第1の経時蛍光特性である。点線は、図10(A)に示す蛍光特性と同じグラフである。図12(A)のグラフより、使用時間が経過するにつれて蛍光特性が徐々に水平に寝てくる様子が分かる。
【0095】
制御部50は、具体的には、図10(B)のグラフに示す第1の蛍光特性に対して経時変化の情報を反映させて、図12(B)のグラフに示す第1の経時蛍光特性を算出し、図10(C)のグラフに示す第2の蛍光特性に対して経時変化の情報を反映させて、図12(C)のグラフに示す第2の経時蛍光特性を算出する(S36)。図12(B)及び図12(C)のグラフは、図10(B)及び図10(C)のグラフに比べて、傾きが徐々に水平に寝てきている。つまり、使用時間が経過するにつれて蛍光体20が蛍光光を徐々に発光しなくなるのがわかる。
【0096】
そして、算出された第1の経時蛍光特性である図12(B)の励起光量とG/B比との関係と、算出された第2の経時蛍光特性である図12(C)の追加レーザ光量とG/B比との関係から、励起光量と、励起光量の低下に伴って変化したG/B比を補うために必要な追加レーザ光量を、図12(D)の実線のグラフが示す補正テーブル56として算出し、補正情報記憶部54に記憶する(S36)。なお、図12(D)の点線は蛍光体20の経時変化を反映させる前の補正テーブル56のグラフである。
【0097】
よって、本発明の実施形態に係る内視鏡装置10においては、内視鏡11が市場においてどのような光源装置12と接続されようとも、青色レーザ光源42の照射光量と、前述の補正テーブル56とから、青紫色レーザ光源44の照射光量を決定し、決定した照射光量に基づいて青紫色レーザ光源44から追加レーザ光を追加して照射することで、G/B比が維持され、基準のホワイトバランスが維持された撮像画像を撮像することができる。
【0098】
次に、本発明の実施形態に係る内視鏡装置において、被写体を撮像する際の動作について簡単に説明する。
【0099】
まず、始めに、被検体内に内視鏡挿入部19が挿入され、青色レーザ光源42から励起光が照射され、内視鏡先端35の蛍光体20を励起し、被写体に向けて白色光を照射される。例えば、操作者によって、内視鏡先端35と被写体との距離が調整され、距離に応じて励起光量が調整されると、制御部50は、励起光量と、補正情報記憶部54に記憶された前述の補正テーブル56とから、追加レーザ光量を算出し、青紫色レーザ光源44から、所定量の追加レーザ光を照射する。算出された追加レーザ光量を照射することで、内視鏡装置10は、撮像画像のG/B比が基準の値に保たれた撮像画像を取得することができる。
【0100】
なお、本発明の実施形態においては、前述の白色光を用いた通常観察の他に、特殊光観察を行うことができる。具体的には、第2の光源である青紫色レーザ光源44からの追加レーザ光の照射光量を前述の通常観察時よりも所定量増加させることで、撮像画像を暗くすることなく被写体表面に存在する表層血管を強調した、表層血管強調画像を取得することができる。
【0101】
また、本発明の実施形態においては、第2の光源からの光である追加レーザ光の波長帯域が、第1の光源からの光である励起光の波長帯域よりも短波長側にある場合について説明したが、追加レーザ光の波長帯域が、励起光の波長帯域よりも長波長側にあってもよい。この場合には、例えば、追加レーザ光自体がG光成分の光であれば、照明光において、撮像画像の明るさ(輝度値)や演色性に影響の大きいG光成分の光量が増加するため、撮像画像の明るさや演色性を向上させることができる。
【0102】
また、本発明の実施形態においては、追加レーザ光を照射する代わりに、制御部50が、CDS・AGC回路27を直接制御し、そのホワイトバランスゲインを調整してもよい。
青色レーザ光源42からの励起光量と、撮像画像の基準のG/B比を維持するために撮像画像信号におけるB光成分(B光画像信号)に乗じられるゲイン(Bゲイン)との関係示す補正テーブルを作成し、補正テーブルに基づいて、撮像素子26により出力される撮像画像信号に前述のBゲインを乗じることで、G/B比が維持され、基準のホワイトバランスが維持された撮像画像を撮像することができる。
【0103】
以上が本発明の実施形態に係る内視鏡装置である。
【0104】
また、前述の実施形態においては、内視鏡11が、蛍光特性記憶部29に経時変化テーブル63を備え、使用時間記憶部61に記憶された内視鏡11の実使用時間に応じて蛍光体20の蛍光特性を補正しているが、実使用時間及び経時変化テーブル63によらず、市場において蛍光体20の経時変化を直接測定してもよい。
【0105】
具体的には、まず、市場において、光源装置12と内視鏡11とを接続し、また、プロセッサ装置13をそれぞれに接続して、図8に示す、前述の実施形態のステップS12〜ステップS22に基づいて現在の内視鏡装置10の経時蛍光特性(励起光量の変化に対するG/B比の変化(図13の(1)参照))を計測する。
【0106】
次に、前述の実施形態の場合と同様に、光源装置12において、キャリブレーションモードを用いて光源装置12の波長の変動量を検出し、制御部50は、その波長の変動量に基づいて、蛍光特性記憶部29に記憶された、蛍光体20が経時変化していない場合の蛍光特性(励起光量の変化に対するG/B比の変化(図13の(2)参照))を算出する。
【0107】
次に、制御部50では、現在の内視鏡装置10の経時蛍光特性(図13の(1)参照)と、蛍光体20が経時変化していない場合の蛍光特性(図13の(2)参照)とを取得して、それらの差分から蛍光体20の蛍光特性の経時変化を算出する。図13の(1)のグラフと(2)のグラフとの差分こそが蛍光体20の蛍光特性の経時変化である。
【0108】
以上のように算出された蛍光特性の経時変化の情報は、内視鏡11の蛍光特性記憶部29に記憶されて、励起光源の場合はもちろん、前述の実施形態の場合と同様、追加レーザ光源からの追加レーザ光量に対するG/B比の算出にも用いられる。
また、算出された蛍光特性の経時変化の情報と経時変化テーブル63とから使用時間記憶部61に記憶された内視鏡11の実使用時間の修正を行ってもよい。
【0109】
なお、図13においても、蛍光特性の経時変化は、G/B比で説明されているが、前述の実施形態と同様、実際には、R光成分、G光成分及びB光成分の全てに影響する。よって、撮像画像信号のRGB成分のゲインを調整して補正を行う場合は、前述と同様、R光成分、G光成分及びB光成分のそれぞれに対して重み付けを変える必要がある。
【0110】
以上、本発明の内視鏡装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0111】
10 内視鏡装置
11 内視鏡
12 光源装置
13 プロセッサ装置
15 表示部
17 入力部
18 光ファイバ
19 内視鏡挿入部
20 蛍光体
21 照射口
22 アングルノブ
23 操作部
24 対物レンズユニット
25A、25B コネクタ部
26 撮像素子
27 CDS・AGC回路
28 A/D変換器
29 蛍光特性記憶部
31 軟性部
33 湾曲部
35 先端部(内視鏡先端)
37 回転フィルタ
37A 第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ(第1のフィルタ)
37B 第2のスロープ型ダイクロイックフィルタ(第2のフィルタ)
37T 透過部
39 光量検出部
40 光源制御部
42 青色レーザ光源(励起光源)
44 青紫色レーザ光源(追加レーザ光源)
46 合波器
47 波長算出部
49 回転手段
50 制御部
52 画像処理部
54 補正情報記憶部
56 補正テーブル
61 使用時間記憶部
63 経時変化テーブル
65A 第1のテーブル
65B 第2のテーブル
67 波長記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭帯域化された第1の波長を持つ第1の狭帯域光を照射する第1の光源、
前記第1の光源とは異なる、狭帯域化された第2の波長を持つ第2の狭帯域光を照射する第2の光源、及び
前記第1の光源からの前記第1の狭帯域光の前記第1の波長を検出し記憶する波長検出手段を有し、
前記第1の波長は、前記第1の光源の第1の中心発光波長に対して所定の変動範囲内に入るものである光源装置と、
前記第1の狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、励起光として機能する前記第1の狭帯域光によって励起されて、励起波長である前記第1の波長と異なる波長帯域の第1の蛍光光を発光し、前記第1の狭帯域光の照射光量及び前記第1の中心発光波長に対する前記励起波長の変動に応じて蛍光特性が変化し、また、その使用時間によって蛍光特性が経時変化する蛍光体、
前記蛍光体の実使用時間を記憶する使用時間記憶部及び前記蛍光体の蛍光特性の経時変化を記録した経時変化テーブルを持ち、前記励起光の照射光量及び前記励起波長の変動に対して変化する前記蛍光体の第1の蛍光特性を記憶する蛍光特性記憶部、並びに、
前記蛍光体を透過した前記励起光及び前記蛍光体で発光した前記第1の蛍光光を混合した光、又は前記励起光及び前記第1の蛍光光、並びに前記第2の狭帯域光が混合された光が照明光として照射された被写体からの、前記照明光の戻り光により撮像を行い、前記撮像画像信号を出力する撮像部、を有する内視鏡と、
前記光源装置の前記波長検出手段から前記励起波長を読み出し、前記内視鏡の蛍光特性記憶部から、読み出された前記励起波長を持つ前記励起光の照射光量及び前記励起波長の変動に対する前記蛍光体の前記第1の蛍光特性を読み出し、また、前記使用時間記憶部から前記蛍光体の前記実使用時間を、前記経時変化テーブルから蛍光体の経時変化の情報をそれぞれ読み出して、前記実使用時間に対応する前記蛍光体の経時変化を算出し、算出された前記経時変化と読み出された前記第1蛍光特性とから第1の経時蛍光特性を算出し、算出された前記第1の経時蛍光特性から、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するように、前記第1の光源からの前記励起光の照射光量に対して付加される前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の照射光量を算出し、算出された前記第2の狭帯域光の照射光量となるように前記第2の光源を制御する制御部を有するプロセッサ装置と、
を備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記光源装置の前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の前記第2の波長は、前記第2の光源の第2の中心発光波長に対して所定の変動範囲内に入るものであり、
前記波長検出手段は、さらに、前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の前記第2の波長を検出し記憶するものであり、
前記蛍光体は、さらに、前記第2の狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、前記第2の狭帯域光によって励起されて、前記第2の波長と異なる波長帯域の第2の蛍光光を発光し、前記第2の中心発光波長に対する前記第2の波長の変動に応じて蛍光特性が変化するものであり、
前記蛍光特性記憶部は、さらに、前記第2の狭帯域光の前記第2の波長の変動に対して変化する前記蛍光体の第2の蛍光特性を記憶するものであり、
前記内視鏡は、前記照明光として、前記励起光及び前記第1の蛍光光、並びに前記第2の狭帯域光及び前記第2の蛍光光が混合された光を用いるものであり、
前記プロセッサ装置の前記制御部は、前記光源装置の前記光源情報記憶部から、さらに前記第2の波長を読み出し、前記内視鏡の蛍光特性記憶部から、さらに、読み出された前記第2の波長の変動に対する前記蛍光体の前記第2の蛍光特性を読み出し、前記算出された経時変化と前記読み出された第2蛍光特性から第2の経時蛍光特性を算出し、算出された前記蛍光体の前記第1及び第2の経時蛍光特性から、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するように、前記第1の光源からの前記第1の狭帯域光の照射光量に対して付加される前記第2の光源からの前記第2の狭帯域光の照射光量を算出し、算出された前記第2の狭帯域光の照射光量に前記第2の光源を制御するものである請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記蛍光特性は、前記蛍光光の発光光量を含む請求項1または2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
さらに、前記プロセッサ装置は、前記第1の光源の照射光量と、前記撮像画像信号が基準のホワイトバランスを維持するために必要な前記第2の光源の照射光量との対応関係が記録された補正テーブルを記憶する補正情報記憶部を備え、
前記光源装置、前記内視鏡、及び前記プロセッサ装置が市場において互いに接続され内視鏡装置が構成された際に、
前記制御部は、
前記光源装置の前記波長検出手段で検出され記憶された前記第1の波長及び前記第2の波長と、前記内視鏡の前記蛍光特性記憶部に記憶された前記蛍光体の前記第1の蛍光特性及び前記第2の蛍光特性とを取得し、また、前記使用時間記憶部に記憶された前記蛍光体の実使用時間と、前記経時変化テーブルに記録された経時変化の情報とをそれぞれ取得して、前記第1の経時蛍光特性と前記第2の経時蛍光特性とをそれぞれ算出し、前記補正テーブルを作成して、前記補正情報記憶部に記憶し、
前記補正テーブルと、前記第1の光源の照射光量とから前記第2の光源の必要な照射光量を求め、前記必要な照射光量に基づいて、前記第2の光源の照射光量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記基準のホワイトバランスは、前記第2の光源からの照射を停止し、前記第1の光源の照射光量を最大とした場合の前記撮像画像信号のホワイトバランスである請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記第2の狭帯域光の波長帯域は、前記第1の狭帯域光の波長帯域よりも短波長側にある請求項1〜5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記第1の光源は、第1の波長が445±10nmの範囲にある青色レーザ光源であり、前記第2の光源は、第2の波長が405±10nmの範囲にある青紫色レーザ光源である請求項6に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記第2の狭帯域光の波長帯域は、前記第1の狭帯域光の波長帯域よりも長波長側にある請求項1〜5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記ホワイトバランスとして、前記撮像画像信号の緑色光成分と青色光成分との比であるG/B比を用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記照明光は、所定波長帯域の赤色光成分、緑色光成分及び青色光成分をそれぞれ含む疑似白色光である請求項1〜9のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記波長検出手段は、
前記第1の狭帯域光の波長帯域に対応して光の透過率が波長に比例して変化する第1のフィルタ特性を備える第1のスロープ型ダイクロイックフィルタと、前記第2の狭帯域光の波長帯域に対応して光の透過率が波長に比例して変化する第2のフィルタ特性を備える第2のスロープ型ダイクロイックフィルタと、前記第1の狭帯域光及び第2の狭帯域光をそのまま透過させる透過部と、を有し、前記第1及び第2の狭帯域光の光路上にそれぞれを切り替えて設置可能な回転フィルタと、
前記回転フィルタの下流に設置され、照射された前記第1及び第2の狭帯域光の光量を検出する光量検出部と、
前記第1のフィルタ特性を記録した第1のテーブルと、前記第2のフィルタ特性を記録した第2のテーブルと、波長記憶部とを有し、前記光量検出部で検出された前記第1の狭帯域光の前記第1のスロープ型ダイクロイックフィルタ透過後の光量と前記透過部透過後の光量とから前記第1の狭帯域光の前記第1のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率を算出し、算出された前記透過率と前記第1のテーブルとから、前記第1の狭帯域光の第1の波長を算出し、前記光量検出部で検出された前記第2の狭帯域光の前記第2のスロープ型ダイクロイックフィルタ透過後の光量と前記透過部透過後の光量とから前記第2の狭帯域光の前記第2のスロープ型ダイクロイックフィルタの透過率を算出し、算出された前記透過率と前記第2のテーブルとから、前記第2の狭帯域光の第2の波長を算出して、算出した前記第1の波長及び前記第2の波長を前記波長記憶部に記憶する波長算出部と、を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−170488(P2012−170488A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32250(P2011−32250)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】