説明

内部加工された透明な物体における表面近くのレーザマーキング

本発明は、透明な物体で表面の下に位置するマーキングを生成する方法に関する。本発明によると、表面の下の500μm以下にあるマーキングは、基材よりも高い破壊閾値をもつ、基材表面に塗布された層システムが塗布されることによって実現される。層システムが、読取り波長について反射減少性の層システムとして構成されると、読取り時のコントラストが高まる。層システムが、書込み波長について鏡として構成されると、強度を下げて反射で書込みをすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な物体で表面の下に位置するマーキングを生成する方法に関する。本発明は、特に、層システムを備える透明な物体をマーキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の従来技術
本発明の目的については、ガラスという用語はごく一般的に透明な物体を表すものと見なす。この関連で、ある物体が光の波長に対して透明であると見なされるのは、放射の浸透深さが波長の少なくとも1/10である場合である。
【0003】
レーザビームによるガラスの内部加工は周知である。たとえばレーザマガジン(Laser Magazin)1/95の16頁以下には、ガラスの内部加工を実現するために、Nd:YAGレーザのレーザビームが利用される方法が記載されている。この場合、適切なビームフォーミングによって、ガラス表面での放射強度が破壊閾値を大きく下回ることが保証される。ガラス部品の内部で初めて、破壊閾値を上回る強度が集束によって生じる。相互作用が、外側から肉眼で見ることのできる亀裂形成をともなう局所的な溶融を引き起こす。処理にはλ=1.064μmの波長でNd:YAGレーザ放射が使用されている。このような放射は、>1GW/cm2の非常に高い強度の場合、ガラス中での非線形の光学効果に基づいて自己集束が生じ、最終的に、ガラスの溶融領域として顕在化する異常吸収が生じる。同論文には、溶融領域の最小面積に関して石英ガラスの場合に最善の結果が得られており、その場合に約100μmが実現されると記載されている。ただしこの結果は、同論文によると、ガラス外面が高い表面品質を有している基材で得られたものにすぎない。レーザマガジンには、最小の不純物ならびに表面粗さが表面にあるだけで、破壊の強度閾値の著しい低下につながり、それに伴って、望ましくない相互作用を表面で引き起こすことが記載されている。市販の石英ガラスについては結果にあまり再現性がなく、加工ゾーンの面積がいっそう広くなったとされている。ガラス材料SF6では、ガラス表面ですでにビーム吸収が起こることが観察されている。
【0004】
レーザマガジンでは、加工ゾーンの面積については検討されているものの、その加工ゾーンをどれだけのガラス深さに定着させることができたのかは記載されていない。記録からは、厚みのある基材(>1mm)が用いられたことがわかる。文章中には、20mmという石英ガラスの材料厚みが記載されている。特に、面積の広い自己集束痕跡の発生、ならびに本来の加工ゾーンの後の破壊ゾーン(図3参照)は、1mmを大きく超える破壊領域を示唆している。したがって、厚さが1mmを下回るガラスのマーキングは考慮の対象にならない。
【0005】
欧州特許出願公開第0543899号明細書からも、ガラス体でマーキングを生成する方法が知られており、この場合、Nd:YAGレーザの放射が1.064μmで使用されている。
【0006】
この公知の方法における欠点は、その場合にもレーザ放射の本来の集束領域を超えたガラスの変化が起こることである。これは、このようなガラスの局所的な溶融によって説明できる気泡状の変化が突発的に、ほとんど爆発的に生じることと関連している。その結果として、これらのマーキング点が並ぶことによって生成されるマーキングが、ガラス体の表面からある程度の最低間隔を有していなければならない必要性が生じる。欧州特許出願公開第0543899号明細書に記載の方法では、ガラス体におけるマーキングの表面からの最低間隔はおよそ1mmであり、その結果、ガラス体は破損の危険を回避するために
合計で少なくとも3mmの厚みを有していなくてはならない。しかし実際には、厚み自体が1mmしかないガラス板をマーキングする必要がしばしばある。
【0007】
欧州特許出願公開第1051365号明細書には、厚みが1mmしかないガラス板を表面の下でマーキングすることが可能な方法が記載されている。このマーキングは、マーキングが表面に向かって増殖することなく行うことができる。このことは、マーキングされるべき基材がすでに吸収性になる波長が、マーキングのために選択されることによって実現される。透過率はプラトーレベルの60%から95%の間にあるのが好ましいとされている。プラトーレベルと呼ばれるのは、吸収が最小になる波長領域の透過率のことである。このことは、比較的低い強度を適用することができ、それによって、表面の溶融や表面粗さが生じた場合にそれが何の役割も演じなくなる程度まで、ガラス材料そのものの破壊閾値が引き下げられるという利点を有している。さらにプラトーの限度が、その純度に関わりなく、かなり良好に再現できるように規定されているので、標準的なガラスの場合にも再現可能な結果を得ることができる。
【0008】
しかしこの解決法で問題になるのは、異なるガラスは異なるプラトーレベルを有しているので、そのつどの基材材料に合わせて波長を適合化しなければならないことである。たとえば石英ガラスをマーキングしなくてはならない場合、この方法は経済的に見合わなくなる。石英ガラス自体は、紫外領域でまだ非常に高い透過性を示すからである。非石英ガラスの場合、欧州特許出願公開第1051365号明細書では紫外光が使用されるという事実により、さらに別の不都合な側面が根拠づけられる。ガラス体への紫外光の有限の浸透深さ(吸収に起因する)は、加工深さを限定する。したがって、基材を貫通させて表面のすぐ下でマーキングをしようとする場合、欧州特許出願公開第1051365号明細書に示されている方法はこれに適していない。
【0009】
しかも、この構成のために必要となる光学系やレーザは通常高価である。この方法はきわめて早期から不経済になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
技術的な課題設定
そこで本発明の課題は、ガラスの透過性曲線のプラトー領域にある波長をもつレーザビームを用いて、どうすればガラスを表面近くで内部加工することができ、その際に表面を改変させないかという可能性を示すことにある。本発明による解決法は、特別に純粋な種類のガラスを用いることがなく、また、ガラス表面の表面品質に対する特別な要求事項がないのが望ましい。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、マーキングの読取りに関するものである。ガラスの表面のすぐ下に位置しているマーキングは、しばしば、マーキングされていない個所に比べたとき、マーキングされた個所のコントラストが比較的低いという特徴がある。読取り装置はしばしばこのようなマーキングを認識しなかったり、誤って認識したりする。したがって、読取りエラーの回数を減らすための簡単な方策が見出されるならば、経済的に利点となるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
解決方法
本発明による解決法は、加工されるべきガラスの表面を、少なくとも1つの層を含んでいる誘電性の薄膜層システムで被覆することにある。
【0013】
薄膜層システムは通常、それが被覆するガラス表面で応力を生成することが当業者に知
られている。たとえば真空コーティング法によって塗布される層は、その下に位置する基材に対して力が作用する応力を有している。したがって当業者であれば、本来ならば表面の下に配置されるべきマーキングが基材とコーティングの境界面にまで進行し、さらには表面にまで進行してしまうという危険性が、コーティングされた基材ではコーティングがない場合より少なくとも部分的にいっそう高まると予想するはずである。
【0014】
このようなコーティングは、典型的な場合、最大で数μmの全体厚みを含んでいるということに留意しなくてはならない。通常、このようなコーティングは5μmよりも薄い全体厚みに限定されている。コーティングは高価なので、3μm以下のコーティングを使用するのが好ましい。
【0015】
しかしながら発明者らが確認したところでは、表面のコーティングはプロセスを再現可能なものにするとともに、マーキングが表面の下の非常に近くに配置されている場合でも、表面へ向かう破断が起こらないようにするのに貢献する。このような予期せぬ効果の考えられるひとつの説明は、表面品質の不足がコーティングによって中和されるということであろう。たとえば層システムのもっとも外側の層がガラス表面に比べて高い破壊閾値を有していれば、場合により生じる汚れや起伏が、マーキングされるべきガラス基材の破壊閾値よりも下へ破壊閾値を押し下げる効果を有さないことになる。したがって、コーティングされた基材の外側表面で、破壊が目に見えることがない。ただし、このような保護効果の由来はまだ確実には解明されていない。しかし本発明の方策は、ガラス基材が第1の層とともに形成する境界面から加工領域が500μm以下しか離れておらず、場合によっては250μm以下しか離れていない、内部加工されたコーティング基材を初めて成立させるものであり、しかも、このことは加工領域が表面に達することなく行われる。
【0016】
それにより、1mmよりも小さい厚みを有しているガラス基材を、効率的かつ経済的に表面の下でマーキングすることが初めてできる。
【0017】
しかも、多層システムでコーティングされた薄いガラス板を表面のすぐ下でガラス基材にマーキングするという可能性は、マーキングの種類によって破片、粒子、溶融、あるいは破断などが表面に生じないという利点をもたらす。特に、いわゆる「低欠陥」コンポーネントでは表面に欠陥がないことが、コーティングされた基材の以後のプロセシングにとって重要な役割を果たす。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、マーキングの読取りに関わるものである。マーキング深さを表面の下数百μmに限定することが可能になったことにより、読取り光学系が大幅に簡素化される。読取りをするのに、基材の奥深くに位置する平面を結像しなくてもよくなり、表面のすぐ下を結像することを可能にする光学系を使用するだけで足りる。基材側でも、光を基材の奥深くまで浸透さでなくてよくなるという利点がある。したがって本発明の方法により、比較的低い透過率(たとえばk>0.01および特にk>0.08およびさらにはk>0.1。このときkは複素屈折率の虚部である)を有する材料からなる基材をマーキングすることが可能である。
【0019】
ただし実験が示すところでは、このように表面のすぐ下にマーキングされた基材は、マーキングがたとえば基材の>300μmに位置している基材の場合よりも、明らかに劣る信号コントラストにつながる。しかし発明者らが見出したように、反射防止膜を形成する薄層システムで基材の表面をコーティングすれば、大幅なコントラスト上昇を実現することができる。コーティングされていない表面では、読取りに利用されるべき光の一部が、表面を形成する境界面で直接反射されて本来の信号に重ね合わされ、それによって障害になるものと推測される。マーキングが基材に深く刻印されている場合、従来の読取り光学系は表面から反射される信号を無視することができる。しかし本件ではマーキングが表面
の近くに位置しているので、信号をそれほど簡単に表面反射から分離することができなくなる。反射防止膜によって表面の反射が低減される。それにより、読取り信号のコントラストが大幅に上昇する。したがって本発明は、表面で直接反射される読取り光を低減するための手段を含んでいる、表面の下にマーキングされた基材も包含している。
【0020】
すなわち、本発明の対象は表面の下で透明な基材をマーキングする方法であり、前記方法は、
−基材を準備するステップと、
−表面の下で集束する可視光によって基材をマーキングするステップとを含んでおり、
可視光によるマーキングの前に少なくとも1つの誘電性層を含む層システムで基材がコーティングされ、マーキングのために使用されるべき光で照射したときの層材料の破壊閾値は基材材料の破壊閾値よりも上回っている。
【0021】
表面の損傷を生じさせることなく、基材に接する層システムの境界面からマーキングが500μm以下しか離れていない、有利には350μm以下しか離れていないことを実現できる。
【0022】
マーキングの読取りに適した波長について反射防止層として作用するように層システムが構成されていると、読取りのために好ましい。
【0023】
このような方法では、マーキングが2つの異なる深さで書き込まれ、その深さの差が横ピクセル密度のオーダーになっていれば、投影された横ピクセル密度の増大を追加的に実現することができる。
【0024】
マーキングに使用される光についての鏡として層システムを構成し、基材を通り抜けて作用をうける層システムでの反射によってマーキングが行われると、重なり合う領域でいっそう高い強度が実現される。
【0025】
それと同時に、読取りに適した波長については少なくとも部分的に透過性であるように、層システムを構成することもできる。
【0026】
表面の下のマーキングと、少なくとも1つの誘電性層を含む誘電性の層システムとを備える基材が得られ、この基材のマーキングは、誘電性の層システムが基材とともに形成する境界面からわずか500μmのところに位置しており、境界面へと向かって継続していくことがない。
【0027】
層システムの材料が、マーキングに適した少なくとも1つの可視領域の波長について、基材材料よりも高い破壊閾値を有していると好ましい。
【0028】
層システムが、マーキングを読み取るのに適した少なくとも1つの波長について反射減少層として構成されていると、読取りのために好ましい。
【0029】
上に説明したマーキングと、マーキングに適した波長について鏡面層として構成された層システムとを備える基材も、本発明の一部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、実施形態を参照しながら本発明について詳しく記述し、詳細に説明する。
第1の実施形態では、Borofloat(登録商標)ガラスを4層の反射防止膜で被覆する。Borofloat(登録商標)ガラスは1,52の屈折率を有している。PVD(物理基相成長)法を用いて次のような層システムを塗布した:
【0031】
【表1】

【0032】
次いで、周波数2倍化Nd:YAGレーザを用いて、基材の内部加工を行った。すなわち、マーキングに使用されたレーザ波長は空気中で532nmであった。
【0033】
可視光すなわち420nmから780nmの波長領域の光の使用は、従来技術で選択される波長に比べて、次のような著しい利点がある:
1064nmすなわち周波数2倍化されていないND:YAGレーザの光を採用すると、損傷メカニズム(ピクセル)に主要な寄与をするのはガラス表面ないし内面の熱溶融であり、このような溶融によって「注入通路」が生じる。熱による効果は、ピクセルが明らかに大きくなるという結果につながる。閾値を上回る強度を生成するために、532nmの場合と比べて多くのエネルギーを使わなくてはならず、これを十分に迅速に誘電体から運び出すことができないからである。(吸収は集束ビームの浸透深さを制限する)
紫外領域では、主要な損傷効果はレーザアブレーションであり、すなわち原子の衝突電離である。この分野のいくつかの産業用ガラスの比較的高い吸収率(最大で20%)により、この方法は、深いマーキングとさまざまな種類のガラスとを使用するために限定的に適しているにすぎない。(吸収は集束ビームの浸透深さを制限する)
532nmの場合、熱溶融とレーザアブレーションとの組み合わせがピクセル生成効果として効力を発揮する。したがって任意の小ささのピクセルを、レンズの焦点合わせに依存して、はるかに大きい深さ領域で(ガラス表面の近くで(1064nmの場合には制限される)、かつガラス内部の深くで(紫外領域では吸収により制限される))生成することができる。ピクセルサイズは実質的にビームのエネルギーと焦点合わせとに依存しており、材料特性(透過性の光学特性が前提となる)には依存しない。
【0034】
さらに、レーザビームが目に見えるので、レーザビームを調節するのがはるかに容易である。この調節は、調節を行う人物の目を守るために、低い強度で行うことができる。
【0035】
このようなシステムを用いてピクセル書体で文字を書き込んだ。個々のピクセルは100μmの相互距離を有していた。測定されたピクセルの垂直方向の長さは80〜100μmである。測定されたピクセルの水平方向の長さは約20〜50μmである。
表面との間隔は300μmであった。表面へと向かう破断は確認されなかった。
【0036】
この方法では、強度を低くしてもAR(反射防止層)によって同一の結果(ピクセルサイズ)が得られることが判明した。この効果は、コーティング/空気ないしガラス/コーティングの境界面でのレーザ光の反射が減ったことに依拠するものと推測される。
【0037】
第2の実験では、水平方向のピクセル密度を高め、その際に個々のピクセルを橋渡しする亀裂が発生しないようにすることがテーマとなる。実験が明らかにしたところでは、2つのピクセルの距離を単純に短縮すると、そのような橋渡しをする亀裂につながる。この
とき、ピクセルを橋渡しするこのような亀裂が増殖し、最終的に表面にまで到達するという危険が非常に大きくなる。
【0038】
ピクセル密度を損傷なく高めるという問題は、発明者らにより、平坦な構造(数字および英数字の記号)しか必要なかったにもかかわらずピクセルの第2の平面を書込み、第2の平面のピクセルの水平方向中心が、第1の平面のそれぞれのピクセルの中間スペースに配置されることによって解決された。これら両方の平面は150μmの間隔を有しているにすぎない。それによって観察者にはピクセル密度が高まったという印象が生じ、コントラスト比が明らかに高くなる。
【0039】
第3の実施形態では、基材の裏面から表面のすぐ下へ書き込むことにする。基材は本例ではn=1,52の屈折率を有している。レーザの偏光についてはp偏光を選択し、入射角として57°を選択し、これはブルースター角にほぼ相当している。それにより、レーザビームが入射するときに、ガラス基材の裏面によってごくわずかしか反射されないことが保証される。そして、ガラス中で光はスネルの法則に従って38°の角度で伝搬する。
【0040】
基材の前面は、38°の光のうち実質的に緑色の光を、ただし少なくともマーキングに使用される波長に相当する波長の光を、少なくとも部分的に反射する多層システムを備えているものとする。書込みに使われるすべての光が反射されるのが好ましい。本例では、532nmの波長をもつ、Nd:YAGレーザの周波数2倍化された放射が用いる。
【0041】
そして書込みプロセスの間に、ガラス基材のコーティングされた側の表面のすぐ下で反射に基づいて重なり合い領域が生じ、この重なり合い領域で入射する光と反射された光とが重なり合い、干渉パターンが形成される。単一のビームでは強度が破壊閾値を明らかに下回っているが重なり合い領域には強度が破壊閾値を上回る個所があるようにレーザエネルギーが調整されれば、重なり合い領域に限定されたマーキングが行われる。この効果は、重なり合い領域では4倍の強度をもついわゆる干渉縞が形成されることによってサポートされる。
【0042】
先に挙げた多層システムは、可能な場合には、読取りのために使われる光について反射防止膜として作用するように選択されるのが好ましい。本例では青色LEDによって0°で読み取るものとする。
【0043】
図1にはこの状況が模式的に図示されている。示されているのは前面3と裏面5を有する基材1である。前面3は誘電性の層システム7でコーティングされている。裏面5を通って入射する書込みビームLinは、基材1にある前面3の層システム7で反射され、裏面5によって反射された書込みビームLrefとして基材1から出ていく。入射する書込みビームLinと反射された書込みビームLrefとが重なり合う重なり合い領域9では、書込みビームとして利用されるレーザ放射のコヒーレンスに基づき、特徴的な干渉縞をもつ干渉パターンが形成され、そこで強度の高い膨らみ部分が生じる。マーキングのピクセルは、基材1に点線で図示されている。
【0044】
読取りをするために、青色LED11の光が第1のレンズ13によって視準され、ビームスプリッタ15を介して、読み取られるべきマーキングされた基材1へ向けられる。層システム7は、青色光の0°の作用下ではARコーティングとして作用する。したがって光はマーキングまで達し、部分的にこれに当たってビームスプリッタ15へと散乱する。一例として、ピクセルに当たって散乱された光が、模式的に破線の矢印で図示されている。後方散乱された光はビームスプリッタ15を部分的に透過する。このようにして、第2のレンズ17によりマーキング平面が検知器19で結像される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態を模式的に示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の下で透明な基材をマーキングする方法において、前記方法は、
基材を準備するステップと、
表面の下で集束する可視光によって基材をマーキングするステップとを含んでいる、そのような方法において、
可視光によるマーキングの前に少なくとも1つの誘電性層を含む層システムで基材がコーティングされ、マーキングのために使用されるべき光で照射したときの層材料の破壊閾値は基材材料の破壊閾値よりも上回っていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記マーキングは前記基材に接する前記層システムの境界面から500μm以下しか離れておらず、好ましくは350μm以下しか離れていないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層システムは前記マーキングの読取りに適した波長について反射防止層として作用するように構成されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
投影された横ピクセル濃度を高めるために前記マーキングが2つの異なる深さで書き込まれ、該深さの差は横ピクセル濃度のオーダーであることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記層システムは前記マーキングに使用される光について鏡として構成され、前記基材を通り抜けて作用を受ける層システムでの反射によってマーキングが行われることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記層システムは読取りに適した波長について少なくとも部分的に透過性に構成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
表面の下のマーキングと、少なくとも1つの誘電性層を含む誘電性の層システムとを備える透明な基材において、前記基材の前記マーキングは前記誘電性の層システムが前記基材とともに形成する境界面からわずか500μmのところに位置しており、前記境界面に向かって継続していないことを特徴とする基材。
【請求項8】
前記層システムの材料は前記マーキングに適した少なくとも1つの可視領域の波長について基材材料よりも高い破壊閾値を有していることを特徴とする、請求項7に記載の基材。
【請求項9】
前記層システムは前記マーキングの読取りに適した少なくとも1つの波長について反射減少層として構成されていることを特徴とする、請求項7および8のいずれか1項に記載の基材。
【請求項10】
前記層システムは前記マーキングに適した波長について鏡面層として構成されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項に記載の基材。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504560(P2009−504560A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526410(P2008−526410)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007851
【国際公開番号】WO2007/019991
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(596013501)オー・ツェー・エリコン・バルザース・アクチェンゲゼルシャフト (55)
【氏名又は名称原語表記】OC Oerlikon Balzers AG
【Fターム(参考)】