説明

内部抵抗測定装置、電池残量測定装置、携帯端末および内部抵抗測定方法

【構成】 携帯電話機10はプロセッサ24を含み、プロセッサ24は、電源制御回路40を指示して、通常使用しない近距離無線通信回路36に二次電池42からの電力を供給する。電力を供給する前後における、二次電池42の電池電圧が電池電圧モニタ回路44で検出され、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、二次電池42の等価的な内部抵抗が算出される。ただし、近距離無線通信回路36に電力を供給する前後の負荷電流ないしその差分は予め算出されている。
【効果】 電池からの電力を増加させ、増加の前後における、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、内部抵抗を算出するので、温度変化や経年変化があっても、正しい内部抵抗を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内部抵抗測定装置、電池残量測定装置、携帯端末および内部抵抗測定方法に関し、特にたとえば、二次電池を使用する電子機器に適用される、内部抵抗測定装置、電池残量測定装置、携帯端末および内部抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内部抵抗測定装置の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1の電池内部抵抗測定装置では、充電器に、3つの蓄電池を直列に接続した回路を電流測定器を直列に介して並列に接続すると共に負荷を並列に接続する。そして、蓄電池個々の両端間に定電流交流電源から定電流交流を順次供給し、そのときの各蓄電池の電圧降下を電圧測定器で順次測定する。常時は充電器から各蓄電池に定電圧を印加すると共に負荷に電流を流している。この状態で定電流交流電源を1つの蓄電池に接続しそのときの蓄電池の電圧降下を電圧測定器で測定すると共に電流測定器で電流を測定する。そして、定電流交流電源からの定電流値から電流測定器で測定した電流値を引いて蓄電池に流れる電流を求め、これと電圧測定器で測定した降下電圧値とから蓄電池の内部抵抗を求める。
【特許文献1】特開2003−121516[G01R 31/36, H01M 10/48]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、背景技術の電池内部抵抗測定装置では、電流測定器および定電流交流電源を設ける必要があり、装置が大きくなってしまうとともに、高価になってしまう。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、内部抵抗測定装置、電池残量測定装置、携帯端末および内部抵抗測定方法を提供することである。
【0005】
また、この発明の他の目的は、正確に内部抵抗を測定できる、内部抵抗測定装置、電池残量測定装置、携帯端末および内部抵抗測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、電池と、電池の電圧を測定する測定部と、電池からの電力を変化させる変化部と、変化部による電力の変化前の電流値および電圧値と、変化部による電力の変化後の電流値および電圧値とに基づいて、電池の内部抵抗を算出する算出部を備える、内部抵抗測定装置である。
【0008】
第1の発明では、内部抵抗測定装置(100´)は、電池(42)と、測定部(44)と、変化部(24、40、46)と、算出部(24)とを備える。電池は、たとえば、二次電池である。測定部は、電池の電圧を測定する。変化部は、電池からの電力を変化させる。算出部は、変化部による電力の変化前の電流値および電圧値と、変化部による電力の変化後の電流値および電圧値とに基づいて、電池の内部抵抗を算出する。つまり、電圧値の変化を電流値の変化で割ることにより、電池の内部抵抗が算出される。
【0009】
第1の発明によれば、電池からの電力を変化された場合に、その変化の前後における、電圧値の変化と電流値の変化とに基づいて電池の内部抵抗を算出するので、温度変化や経年変化があっても、正しく内部抵抗を測定することができる。また、電池からの電力を変化させるだけなので、簡単に内部抵抗を測定することができる。さらに、別の測定装置を設ける必要が無く、装置がいたずらに大きくなってしまったり、高価になってしまったりすることがない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、変化部は、電池からの電力が供給されるシステム回路と、電池からの電力が供給される補正回路と、補正回路への電力の供給をオン/オフする切替部を含む。
【0011】
第2の発明では、変化部は、システム回路(102)と、補正回路(104)と、切替部(24、40、40a)を含む。システム回路には、電池からの電力が供給される。補正回路にもまた、電池からの電力が供給される。切替部は、補正回路への電力の供給をオン/オフする。これによって、電池からの電力が変化される。
【0012】
第2の発明によれば、切替部によって、電池からの電力が変化されるので、正確に内部抵抗を測定することができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明に従属し、変化部は、電池からの電力が供給されるシステム回路と、システム回路へのクロック信号を制御する制御部を含み、クロック信号の周波数を変化させることにより、電力を変化させる。
【0014】
第3の発明では、変化部は、システム回路(102)と、制御部(46)とを含む。システム回路には、電池からの電力が供給される。制御部は、システム回路へのクロック信号を制御する。したがって、クロック信号の周波数を変化させることにより、電力が変化される。
【0015】
第3の発明によれば、クロック信号の周波数を変化させるだけで、電池からの電力が変化されるので、第2の発明と同様に、簡単に内部抵抗を測定することができる。
【0016】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに記載の内部抵抗測定装置により測定された内部抵抗に基づいて、電池残量を計測する計測部を備える、電池残量測定装置である。
【0017】
第4の発明では、電池残量計測装置(100,100´)は、計測部(24)を備える。計測部は、上記のいずれかの内部抵抗測定装置により測定された内部抵抗に基づいて、電池残量を計測する。
【0018】
第4の発明によれば、正確に計測された内部抵抗に基づいて電池残量を測定するので、電池残量も正しく測定することができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明に記載の電池残量装置を備える、携帯端末である。
【0020】
第5の発明では、携帯端末(10)は、上記の電池残量装置を備える。したがって、たとえば、正しく測定された電池残量が、図柄または数値で、携帯端末のディスプレイに表示される。
【0021】
第5の発明によれば、正しい電池残量を使用者に報知することができる。
【0022】
第6の発明は、電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定方法であって、コンピュータは、(a)電池の電圧を測定し、(b)電池からの電力を変化させ、(c)ステップ(b)による電力の変化前の電流値および電圧値と、ステップ(b)による電力の変化後の電流値および電圧値とに基づいて、電池の内部抵抗を算出する、内部抵抗測定方法である。
【0023】
第6の発明においても、第1の発明と同様に、簡単かつ正確に内部抵抗を測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、電池からの電力を変化させる前後における、電池電圧の変化量と負荷電流の変化量とから電池の内部抵抗を算出するので、温度変化や経年変化があっても、正確に内部抵抗を測定することができる。また、電池からの電力を変化させるだけなので、簡単に内部抵抗を測定することができる。つまり、別の測定装置を付加する必要がないため、装置がいたずらに大きくなることおよびコストが高くなることを防止することができる。されに、電池の内部抵抗を正確に測定するので、電池残量も正確に測定することができる。
【0025】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1はこの発明の一実施例の携帯電話機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示す携帯電話機に用いられる二次電池のセル電圧と電池残量との対応関係を示すグラフである。
【図3】図3は図1に示す携帯電話機を用いた電池残量測定装置の一例を示す図解図である。
【図4】図4は図1に示す携帯電話機を用いた電池残量測定装置の他の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、この実施例の携帯電話機10は携帯端末の一種であり、CPUまたはコンピュータと呼ばれるプロセッサ24を含む。このプロセッサ24には、無線通信回路14、A/D変換器16、D/A変換器20、キー入力装置26、表示ドライバ28、フラッシュメモリ32、RAM34、近距離無線通信回路36、電源制御回路40、電池電圧モニタ回路44およびクロック制御回路46が接続される。また、無線通信回路14にはアンテナ12が接続され、A/D変換器16にはマイク18が接続され、D/A変換器20にはアンプ(図示せず)を介して、スピーカ22が接続される。また、表示ドライバ28にはディスプレイ30が接続され、電源制御回路40には二次電池42が接続され、クロック制御回路46には発振器48が接続される。
【0028】
プロセッサ24は、制御用のICであり、携帯電話機10の全体制御を司る。RAM34は、プロセッサ24の作業領域(描画領域を含む)ないしバッファ領域として用いられる。フラッシュメモリ32には、携帯電話機10の文字、画像、音声、音および映像のようなコンテンツのデータなどが記録される。
【0029】
A/D変換器16は、当該A/D変換器16に接続されたマイク18を通して入力される音声ないし音についてのアナログ音声信号を、デジタル音声信号に変換する。D/A変換器20は、デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(復号)して、アンプを介してスピーカ22に与える。したがって、アナログ音声信号に対応する音声ないし音がスピーカ22から出力される。
【0030】
キー入力装置26は、通話キーおよび終話キーなどを備えるとともに、「0」−「9」キー、「*」キーおよび「#」キーを含むダイヤルキーも備える。そして、使用者が操作したキーの情報(キーデータ)はプロセッサ24に入力される。
【0031】
なお、キー入力装置26に含まれる各キーが操作されると、フィードバック処理が実行され、スピーカ22とは異なるスピーカ(図示せず)からフィードバック音が出力される。そのため、使用者は、フィードバック音を聞くことで、キー入力操作に対する操作感を得ることができる。
【0032】
表示ドライバ28は、プロセッサ24の指示の下、当該表示ドライバ28に接続されたディスプレイ30の表示を制御する。なお、表示ドライバ28は表示する画像データを一時的に記憶するビデオメモリ(図示せず)を含む。
【0033】
近距離無線通信回路36は、Wi−Fiのような無線LANによる近距離の無線通信を行う回路である。通常、近距離無線通信の機能は不使用の状態にされており、使用者の操作に応じて起動(実行)される。つまり、通常、近距離無線通信回路36には電力が供給されておらず、近距離無線機能を実行するときに電力が供給される。
【0034】
なお、この実施例では、近距離無線通信回路36の例として、無線LANを挙げているが、Bluetooth(登録商標)でもよい。または、近距離無線通信回路36に代えて、赤外線の送信機および受信機を含む無線通信モジュールを設けて、赤外線による無線通信を行ってもよい。
【0035】
電源制御回路40は、電源管理用のICであり、リチウムイオン電池である二次電池42と接続される。この電源制御回路40には、複数のスイッチ(図面では「SW」と表記する)40a、40b、…が設けられ、二次電池42の電圧に基づく電源を各回路コンポーネントに選択的に供給する。簡単のため、この実施例では、スイッチ40aを介して近距離無線通信回路36に接続される電源線のみを示してあるが、他の回路コンポーネントについても同様である。
【0036】
たとえば、携帯電話機10の主電源がオンされた状態(電源オン状態)では、電源制御回路40は、携帯電話機10のすべての回路コンポーネントのうち、通常使用する回路コンポーネント(図1では、近距離無線通信回路36を除く回路コンポーネント)に電源を供給する。
【0037】
ただし、通常使用する回路コンポーネントは、使用者の操作によらないで、主電源がオンされたときに、二次電池42からの電力が供給される回路コンポーネントである。なお、詳細な説明は省略するが、省電力のために、ディスプレイ30のバックライトやディスプレイ30の表示は、それぞれ、異なる所定時間を経過した後にオフされるが、ディスプレイ30は通常使用する回路コンポーネントに含まれ、ディスプレイ30の表示はオンされているものとする。
【0038】
一方、携帯電話機10の主電源がオフされた状態(電源オフ状態)では、電源制御回路40は、プロセッサ24およびキー入力装置26以外の回路コンポーネントに電源を供給しない。電源制御回路40は、電源オフ状態で、キー入力装置26によって主電源をオンする操作が行われると、プロセッサ24によって起動される。また、電源制御回路40は、電源オン状態で、キー入力装置26によって主電源をオフする操作が行われると、プロセッサ24によって停止される。
【0039】
電池電圧モニタ回路44は、二次電池42から電源制御回路40に与えられる電圧(電池電圧)を検出し、検出した電池電圧の値に対応するデータ(数値データ)をプロセッサ24に与える。プロセッサ24は、電池電圧モニタ回路44から与えられる数値データが示す電池電圧に基づいて電池残量を求める。図2には、電池のセル電圧と電池残量との関係を示すグラフが示される。これは、図1に示す携帯電話機10に用いられる二次電池42(バッテリ)についての特性であり、実際に計測されたものである。図2からも明らかなように、セル電圧が低下するにつれて電池残量が少なくなる。たとえば、電池残量は、図柄または数値或いはそれらの両方をディスプレイ30に表示することにより、使用者に報知される。詳細な説明は省略するが、図2に示すようなセル電圧と電池残量との関係は、或る関数(数2参照)で定義され、セル電圧に応じて電池残量が算出される。
【0040】
また、プロセッサ24には、クロック制御回路46からのクロック信号CLKが与えられる。クロック制御回路46は、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いて、発振器48から与えられる所定の周波数のクロック信号を、プロセッサ24からの指示に従う周波数に変換して、周波数を変換したクロック信号CLKをプロセッサ24に与える。つまり、クロック制御回路46から与えられるクロック信号CLKの周波数が、プロセッサ24の動作周波数となる。
【0041】
また、無線通信回路14は、CDMA方式での無線通信を行うための回路である。たとえば、使用者がキー入力装置26を用いて音声発信を指示すると、無線通信回路14は、プロセッサ24の指示の下、音声発信処理を実行し、アンテナ12を介して音声発信信号を出力する。音声発信信号は、基地局および通信網(図示せず)を経て相手の電話機に送信される。そして、相手の電話機において着信処理が行われると、接続状態(通信可能状態)が確立され、プロセッサ24は通話処理を実行する。
【0042】
通常の通話処理について具体的に説明すると、相手の電話機から送られてきた変調音声信号(高周波信号)はアンテナ12によって受信される。受信された変調音声信号には、無線通信回路14によって復調処理および復号処理が施される。そして、これらの処理によって得られた受話音声信号は、D/A変換器20によってアナログ音声信号に変換された後、スピーカ22から出力される。一方、マイク18を通して取り込まれた送話音声信号は、A/D変換器16によってデジタル音声信号に変換された後、プロセッサ24に与えられる。デジタル音声信号に変換された送話音声信号には、プロセッサ24の指示の下、無線通信回路14によって符号化処理および変調処理が施され、アンテナ12を介して出力される。したがって、変調音声信号は、基地局および通信網を介して相手の電話機に送信される。
【0043】
また、相手の電話機からの発信信号がアンテナ12によって受信されると、無線通信回路14は、着呼(音声着信ともいう)をプロセッサ24に通知する。これに応じて、プロセッサ24は、表示ドライバ28を制御して、着信通知に記述された発信元情報(電話番号)をディスプレイ30に表示する。また、これとほぼ同時に、プロセッサ24は、スピーカ22とは異なるスピーカ(図示せず)から着信音(着信メロディ、着信音声と言うこともある)を出力させる。
【0044】
そして、使用者が、通話キーを用いて応答操作を行うと、無線通信回路14は、プロセッサ24の指示の下、音声着信処理を実行する。これにより、接続状態(通信可能状態)が確立され、プロセッサ24は上述した通常の通話処理を実行する。
【0045】
また、通話可能状態に移行した後に終話キーによって通話終了操作が行われると、プロセッサ24は、無線通信回路14を制御して、通話相手に通話終了信号を送信する。通話終了信号の送信後、プロセッサ24は、通話処理を終了する。また、先に通話相手から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ24は、通話処理を終了する。さらに、通話相手によらず、移動通信網から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ24は通話処理を終了する。
【0046】
なお、携帯電話機10は、ネットワーク(図示せず)に接続されるサーバとのデータ通信を確立することで、メール機能およびブラウザ機能を実行することができる。さらに、RAM34に記憶されているアドレス帳データを管理するアドレス帳機能も実行することができる。
【0047】
このような携帯電話機10では、上述したように、電池残量をディスプレイ30に表示するのが一般的である。図示は省略するが、電池を模した図柄がディスプレイ30に表示され、その内部のメモリ図柄の表示を段階的に変化させることにより、電池残量が示される。または、電池残量が数値(パーセント)でディスプレイ30に表示される。または、電池残量が図柄および数値の両方でディスプレイ30に表示される。
【0048】
図3には、図1に示す携帯電話機10の一部を用いた電池残量測定装置100の一例が示される。図3においては、図1に示す携帯電話機10と同じ回路コンポーネントについては同じ参照符号を付してある。また、図3においては、点線枠で示すように、二次電池42を、直流電源(セル電圧Vcell)および内部抵抗Rcellを用いた等価回路で示してある。
【0049】
図3に示すように、システム回路102と二次電池42とが接続され、その接続点に電池電圧モニタ回路44が接続される。また、二次電池42およびシステム回路102は接地される。システム回路102は、電源オン状態で、通常、二次電池42からの電力が供給(電源が付与)される回路コンポーネント(この実施例では、図1の14−34、46、48)を含む。図3(図4も同じ)では、簡単のため、システム回路102に含まれる回路コンポーネントとしてプロセッサ24のみを示してある。ただし、電池電圧モニタ回路44もまた、電源オン状態で、通常、二次電池42からの電力が供給される回路コンポーネントである。図1に示したように、電池電圧モニタ回路44はプロッセサ24に接続される。また、上述したように、近距離無線通信回路36には、通常、二次電池36からの電力は供給されないため、この近距離無線通信回路36はシステム回路102に含まれない。したがって、図3では、近距離無線通信回路36は省略してある。
【0050】
なお、後述するように、電源制御回路40は、電源オン状態で、通常、二次電池42からの電力が供給される回路コンポーネントであるが、図3の説明では不要であるため、省略してある。
【0051】
また、この実施例では、システム回路102に、ディスプレイ30を含むようにしてあるが、ディスプレイ30は、電源オン状態で、二次電池42からの電力が停止されることがあるため、システム回路102に含めないようにしてもよい。
【0052】
この図3に示す電池残量測定装置100では、電池電圧モニタ回路44で検出される二次電池42の出力電圧Vbat、二次電池42の内部抵抗Rcellおよびシステム回路102に流れる負荷電流Isysを用いて、セル電圧Vcellを算出し、図2に示した特性に基づいて電池残量Remainを求めることができる。つまり、セル電圧Vcellは、数1に従って算出される。また、電池残量Remainは、数2に従って算出される。ただし、負荷電流Isysおよび内部抵抗Rcellは、製品の出荷前に測定された値であり、その数値データがフラッシュメモリ32に記憶される。また、関数funcは、図2に示すグラフに基づいて導出される。ただし、図2に示した関係をテーブルデータとしてフラッシュメモリ32に記憶しておき、このテーブルデータを参照して、数1で算出されたセル電圧Vcellに対応する電池残量Remainを求めるようにしてもよい。
【0053】
[数1]
Vcell=Vbat+Rcell×Isys
[数2]
Remain=func(Vcell)
しかし、二次電池42の内部抵抗Rcellの値は、電池部品によって電池毎にばらつきがあり、また、温度変化や経年変化(劣化)によって変動する。したがって、正しい電池残量Remainが測定されない可能性がある。
【0054】
そこで、この実施例では、二次電池42からの電力を増加させることにより、その電力の変化前の出力電圧Vbat(以下、「出力電圧Vbat1」という)および負荷電流Isysと、その電力の変化後の出力電圧Vbat(以下、「出力電圧Vbat2」という)および負荷電流Isys´とを用いることにより、正しい内部抵抗Rcellを算出し、これに基づいて電池残量Remainを測定するようにしてある。
【0055】
具体的には、図4に示す電池残量測定装置100´が構成される。この電池残量測定装置100´は、内部抵抗測定装置としても機能する。以下、図4を用いて、内部抵抗の測定方法および電池残量の測定方法を説明するが、図3を用いて説明した内容と重複する内容については、説明を省略することにする。
【0056】
図4では、二次電池42とシステム回路102との接続点に、直列接続されたスイッチ40aおよび補正回路104が接続される。また、補正回路104は接地される。補正回路104は、電源オン状態で、通常、二次電池42からの電力が供給されない回路コンポーネントであり、たとえば、図1に示した近距離無線通信回路36に相当する。また、図1に示したように、スイッチ40aは、電源制御回路40に含まれる。なお、スイッチ40bなどの他のスイッチは省略してある。上述したように、電源制御回路40は、電源オン状態で、通常、二次電池42からの電力が供給される回路コンポーネントである。したがって、内部抵抗を測定する際には、プロセッサ24の指示に従って、電源制御回路40がスイッチ40aをオンまたはオフし、近距離無線通信回路36への電力(電源)を供給または停止する。つまり、電源制御回路40では、システム回路102に含まれるプロセッサ24からの切替信号がスイッチ40aに与えられる。
【0057】
なお、図4に示される実施例では、補正回路104として、図1に示される近距離無線通信回路36を選択したため、この近距離無線通信回路36に接続されるスイッチ40aを、プロセッサ24からの指示に従って制御している。しかし、補正回路104として、近距離無線通信回路36以外の他の回路コンポーネントを選択した場合には、この他の回路コンポーネントに接続される、電源制御回路40のスイッチを、プロセッサからの指示に従って制御し、補正回路104への電力の供給/停止が制御される。たとえば、補正回路104としては、近距離無線通信回路36以外にも、ディスプレイ30などを用いることができる。また、補正回路104は、1つの回路コンポーネントに限定される必要はなく、ディスプレイ30および近距離無線通信回路36など、2つ以上の回路コンポーネントを含んでもよい。
【0058】
スイッチ40aがオフの場合には、補正回路104に電力が供給されないため、上述の数1に従って、セル電圧Vcellが算出される。ただし、後述するスイッチ40aがオンの場合と区別するために、数3に示すように、電池電圧をVbat1で示す。
【0059】
[数3]
Vcell=Vbat1+Rcell×Isys
一方、スイッチ40aがオンの場合には、補正回路104に電力が供給されるため、数4に示すように、セル電圧Vcellが算出される。ただし、上述のスイッチ40aがオフの場合と区別するために、数4では電池電圧をVbat2で示す。当然のことではあるが、補正回路104に電力が供給されるため、Vbat1>Vbat2である。
【0060】
[数4]
Vcell=Vbat2+Rcell×Isys´
Isys´=Isys+Iadd
ただし、補正回路104の負荷電流Iaddもまた、予め測定された値であり、その数値データがフラッシュメモリ32に記憶されている。
【0061】
数3と数4の上側の式との辺々を引いて、内部抵抗Rcellについて整理すると、数5が得られる。
【0062】
[数5]
Rcell=(Vbat1−Vbat2)/Iadd
つまり、補正回路104に電力を供給する前後における、電池電圧の変化(差分)を、負荷電流の変化(差分)で割ることにより、内部抵抗Rcellが算出される。したがって、温度変化や経年変化があっても、二次電池42の内部抵抗Rcellを正しく測定することができる。
【0063】
このように数5で得られた内部抵抗Rcellの値を数1に代入することにより、セル電圧Vcellが算出される。さらに、算出されたセル電圧Vcellを数2に代入することにより、電池残量Remainが算出される。つまり、正しい内部抵抗Rcellを用いるので、正しい電池残量Remainを測定することができる。このような内部抵抗Rcell、セル電圧Vcellおよび電池残量Remainの算出は、プロセッサ24によって、電池電圧モニタ回路44からの数値データおよびフラッシュメモリ32に記憶された負荷電流の数値データを参照して実行される。
【0064】
詳細な説明は省略するが、内部抵抗Rcellの測定は、携帯電話機の主電源がオンされて所定時間が経過した後(過渡状態を過ぎた後)に実行したり、所定時間(たとえば、週十分間〜数時間)毎のように定期的に実行したりしてよい。内部抵抗Rcellが測定されると、その数値データがフラッシュメモリ32に記憶(上書き)される。つまり、内部抵抗Rcellの値が更新される。通常は、フラッシュメモリ32に記憶された内部抵抗Rcellの値を用いて、電池残量Remainがディスプレイ30に表示される。
【0065】
この実施例によれば、近距離無線通信回路のような通常使用しない補正回路に電力を供給することにより、電池からの電力を増加させる前後における、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、電池の内部抵抗を算出するので、温度変化や経年変化があっても、当該電池の内部抵抗を正しく測定することができる。したがって、電池のセル電圧を正しく求めることができ、それによって、正しい電池残量を測定することができる。また、補正回路に電力を供給するだけなので、簡単に内部抵抗を測定することができる。さらに、別の測定装置を設ける必要が無いため、装置がいたずらに大きくなってしまったり、高価になってしまったりすることがない。
【0066】
なお、この実施例では、補正回路に電力を供給することにより、電池からの電力を増加させるようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、システム回路に含まれるいずれかの回路コンポーネントの電源をオフすることにより、電池からの電力を低減させた場合に、電力を低減させる前後における、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、内部抵抗を求めることもできる。
【0067】
また、補正回路に電力を供給することに代えて、システム回路へのクロック信号の周波数を高めることにより、負荷電流を増加させて、電池電圧を低減させるようにしてもよい。たとえば、上述の実施例において、プロセッサの指示に従って、クロック制御回路からプロセッサに与えられるクロック信号の周波数を、通常の周波数の数倍(たとえば、2〜3倍)に増大させることにより、プロセッサの動作周波数を高める。プロセッサの動作周波数が高められると、負荷電流が増大され、したがって、電池電圧が低減される。したがって、クロック信号の周波数を高める前後における、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、内部抵抗を算出することができる。ただし、かかる場合には、通常時の動作周波数でプロセッサが動作している場合の負荷電流と、プロセッサの動作周波数が高められた場合の負荷電流を予め測定し、フラッシュメモリ32等に記憶しておく必要がある。
【0068】
なお、ここでは、クロック信号の周波数を高めるようにしてあるが、クロック信号の周波数を低下(たとえば、4/5倍、3/4倍)させることにより、動作周波数を低下させる前後における、電池電圧の変化を負荷電流の変化で割ることにより、内部抵抗を算出することもできる。このように、動作周波数を低下させると、負荷電流が低減されるため、電池電圧が増大される。また、プロセッサ以外の他の回路コンポーネントに与えられるクロック信号の周波数を変化させてもよい。
【0069】
また、この実施例では、通信方式として、CDMA方式を採用するようにしてあるが、これに限定される必要は無く、LTE(Long Term Evolution)方式、W−CDMA方式、GSM方式、TDMA方式、FDMA方式およびPHS方式などの他の方式が採用されてもよい。
【0070】
さらに、この実施例では、携帯電話機に用いられる二次電池の内部抵抗および電池残量を測定する場合について説明したが、これに限定される必要はない。たとえば、電池を使用するとともに電池からの電力を変化させることができる、ノートPC、PDA、ゲーム機などの他の電子機器(携帯端末)にも適用することが可能である。
【0071】
さらにまた、以上の説明で挙げた具体的数値や図示したグラフは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 …携帯電話機
14 …無線通信回路
18 …マイク
22 …スピーカ
24 …プロセッサ
26 …キー入力装置
30 …ディスプレイ
32 …フラッシュメモリ
34 …RAM
36 …近距離無線通信回路
40 …電源制御回路
42 …二次電池
44 …電池電圧モニタ回路
46 …クロック制御回路
48 …発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の電圧を測定する測定部と、
前記電池からの電力を変化させる変化部と、
前記変化部による電力の変化前の電流値および電圧値と、前記変化部による電力の変化後の電流値および電圧値とに基づいて、前記電池の内部抵抗を算出する算出部を備える、内部抵抗測定装置。
【請求項2】
前記変化部は、
前記電池からの電力が供給されるシステム回路と、
前記電池からの電力が供給される補正回路と、
前記補正回路への電力の供給をオン/オフする切替部を含む、請求項1記載の内部抵抗測定装置。
【請求項3】
前記変化部は、
前記電池からの電力が供給されるシステム回路と、
前記システム回路へのクロック信号を制御する制御部を含み、
前記クロック信号の周波数を変化させることにより、前記電力を変化させる、請求項1記載の内部抵抗測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の内部抵抗測定装置により測定された内部抵抗に基づいて、電池残量を計測する計測部を備える、電池残量測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の電池残量測定装置を備える、携帯端末。
【請求項6】
電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定方法であって、
コンピュータは、
(a)前記電池の電圧を測定し、
(b)前記電池からの電力を変化させ、
(c)前記ステップ(b)による電力の変化前の電流値および電圧値と、前記ステップ(b)による電力の変化後の電流値および電圧値とに基づいて、前記電池の内部抵抗を算出する、内部抵抗測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−112866(P2012−112866A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263393(P2010−263393)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】