説明

内部状態計測装置、内部状態計測方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測できるようにする。
【解決手段】被計測物200に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送受信装置120と、被計測物200の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて被計測物200における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出部132と、共振周波数検出部132で検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出部133と、周波数間隔算出部133で算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出部134と、変動量算出部134で算出された変動量に基づいて被計測物200の内部状態を判定する内部状態判定部136を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて被計測物の内部状態を計測する内部状態計測装置及び内部状態計測方法、当該内部状態計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに、当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を用いて被計測物の内部状態を計測することが行われている。例えば、被計測物である高温の鋼板の内部に液層部(溶鋼部)があるか否かを外部から超音波を用いて計測する従来技術としては、下記の特許文献1、特許文献2及び非特許文献1のものがある。以下に、この特許文献1、特許文献2及び非特許文献1による計測方法を、図面を用いて説明する。
【0003】
図11は、従来技術における被計測物の内部状態の計測方法を示す模式図である。
具体的に、特許文献1及び特許文献2では、被計測物200である鋼板の表面に超音波送信装置から横波超音波を送信し、当該横波超音波を鋼板の裏面に配設された超音波送信装置で受信して、当該横波超音波の透過率から鋼板の内部に液層部200aがあるか否かを計測するようにしている。
【0004】
また、非特許文献1では、被計測物200である鋼板の表面に超音波送信装置から縦波超音波を送信し、当該縦波超音波を鋼板の裏面に配設された超音波送信装置で受信して、当該縦波超音波の透過時間から鋼板の内部に液層部200aがあるか否かを計測するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開昭52−130422号公報
【特許文献2】特開2005−177860号公報
【非特許文献1】日本鉄鋼協会第76・77回西山記念技術講座「鉄鋼における計測と制御の最近の進歩」、昭和56年、p.227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術における被計測物(鋼板)200の内部状態の計測方法では、当該被計測物の内部温度分布や当該被計測物200の厚みD等による誤差が大きく、精度良く計測を行うことが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内部状態計測装置は、超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測装置であって、前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信手段と、前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出手段と、前記共振周波数検出手段で検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出手段と、前記周波数間隔算出手段で算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出手段と、前記変動量算出手段で算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定手段とを有する。
【0009】
本発明の内部状態計測方法は、超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測方法であって、前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信ステップと、前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップと、前記共振周波数検出ステップで検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出ステップと、前記周波数間隔算出ステップで算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出ステップと、前記変動量算出ステップで算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定ステップとを有する。
【0010】
本発明のプログラムは、超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信ステップと、前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップと、前記共振周波数検出ステップで検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出ステップと、前記周波数間隔算出ステップで算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出ステップと、前記変動量算出ステップで算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定ステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0011】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、前記プログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して説明を行う。なお、以下の説明においては、被計測物として連続鋳造により製造される鋼板を適用し、また、計測対象の鋼板の内部状態として鋼板の内部に液層部(溶鋼部)があるか否かを計測する例について記述する。
【0014】
−本発明の骨子−
まず、具体的な実施形態を説明する前に、本発明の骨子について説明する。
本発明者は、被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測することを実現するために、まず、超音波の共振周波数に着目することにした。この超音波の共振周波数に関して、図1を用いて以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の概念を説明するための模式図である。
図1(a)に示すように、本発明では、まず、超音波送受信装置から、被計測物(鋼板)200における表面の所定位置(計測位置)に各周波数の超音波(具体的には、縦波超音波)を厚みDの方向に送信し、被計測物(鋼板)200の内部を伝播した各周波数の超音波を前記所定位置で超音波送受信装置により受信する。これにより、超音波の周波数と振幅との関係から複数の共振周波数(図1(b)に示すf1〜f4)を検出できる。
【0016】
そして、本発明者は、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがないサンプルと、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがあるサンプルを用いて、それぞれのサンプルについて、図1(a)に示す計測システムを用いて超音波の共振周波数の検出を行った。この検出結果を、図1(b)に示す。
【0017】
図1(b)に示す結果から、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがないサンプルでは、共振周波数(f1〜f4)における周波数間隔Δfがほぼ一定である結果が得られた。一方、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがあるサンプルでは、共振周波数(f1〜f4)における周波数間隔Δfが共振周波数によって大きくなったり小さくなったりする結果が得られた。具体的に、図1(b)では、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがあるサンプルにおいて、共振周波数f1とf2との周波数間隔が小さくなっており、共振周波数f3とf4との周波数間隔が大きくなっている。
【0018】
そこで、本発明者は、図1(b)に示す結果から、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量に着目し、この変動量を用いることで、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあるか否かを計測することを思料した。
【0019】
以下に、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがある場合に、共振周波数における周波数間隔Δfの変動が発生するメカニズムについて説明する。
【0020】
被計測物(鋼板)200に超音波を送信する際に、送信する周波数を制御して送信すると、厚みDの2倍が超音波の波長λの整数倍(この整数を「n」とする)の条件において共振状態となり、強い受信信号が得られる。この際、共振周波数fnは、下記の数式1で表される。
2D=nλ=nV/fn ・・・(数式1)
ここで、Vは、被計測物(鋼板)200の内部を伝播する超音波の音速である。
【0021】
また、それぞれの共振周波数の周波数間隔Δfは、下記の数式2で表される。
Δf=fn+1−fn=V/(2D) ・・・(数式2)
【0022】
この数式2から被計測物(鋼板)200の内部を伝播する超音波の音速Vが変化すると、共振周波数の周波数間隔Δfが変化(即ち、変動)することが分かる。この点、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがない場合には、被計測物(鋼板)200の内部が固層部のみで形成されているため、超音波の音速Vがほぼ一定となり、共振周波数における周波数間隔Δfも変動せずにほぼ一定となると考えられる。
【0023】
一方、被計測物(鋼板)200の内部に液層部200aがある場合には、被計測物(鋼板)200の内部が固層部と液層部200aで形成されており、固層部と液層部200aとでは超音波の音速Vが大きく異なるため、共振周波数における周波数間隔Δfが大きく変動すると考えられる。また、この場合、周波数間隔Δfが共振周波数によって大きくなったり小さくなったりする事象については、液層部200aの位置が、超音波の定在波における腹に位置するか節に位置するかによって生じると考えられる。
【0024】
次に、本発明者は、被計測物(鋼板)200の内部状態を計測する際のパラメータである共振周波数における周波数間隔Δfの変動量と、被計測物(鋼板)200の内部温度分布及び被計測物(鋼板)200の厚みDとの関係について調査した。
【0025】
図2は、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量と被計測物(鋼板)200の厚みDとの関係を示す特性図である。具体的に、図2は、横軸に周波数、縦軸に共振周波数の周波数間隔Δfを採り、被計測物(鋼板)200として固層部のみからなる鋼板の厚みDを250mm、270mm及び290mmとした際のシミュレーションによる特性が示されている。なお、図2に示す各板厚の鋼板における内部温度分布については、それぞれ、同じ条件(具体的には、鋼板の表面及び裏面の温度を900℃、鋼板内部の中央部の温度を1400℃)としている。
【0026】
図2において、各板厚の鋼板における共振周波数の周波数間隔Δfに注目すると、各板厚ともに、周波数が0.1MHz以上の周波数領域(所定の周波数領域)では、共振周波数の周波数間隔Δfに大幅な変動が見られなかった。この結果から、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を、被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとすることは、被計測物(鋼板)200の厚みDによる影響を受けずに、精度良く計測を行えることが分かる。
【0027】
図3は、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量と被計測物(鋼板)200の内部温度分布との関係を示す特性図である。具体的に、図3は、横軸に周波数、縦軸に共振周波数の周波数間隔Δfを採り、被計測物(鋼板)200として固層部のみからなる鋼板の内部温度分布を900℃〜1530℃、900℃〜1400℃及び900℃〜1200℃とした際のシミュレーションによる特性が示されている。ここで、内部温度分布が900℃〜1530℃の鋼板とは、鋼板の表面及び裏面の温度が900℃、鋼板内部の中央部の温度が1530℃のものを示している。なお、図3に示す各内部温度分布の鋼板における厚みDについては、それぞれ、同じ条件(具体的には、厚みDを250mm)としている。
【0028】
図3において、各内部温度分布の鋼板における共振周波数の周波数間隔Δfに注目すると、各内部温度分布ともに、周波数が0.1MHz以上の周波数領域(所定の周波数領域)では、共振周波数の周波数間隔Δfに大幅な変動が見られなかった。この結果から、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を、被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとすることは、被計測物(鋼板)200の内部温度分布による影響を受けずに、精度良く計測を行えることが分かる。
【0029】
以上説明したように、本発明では、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとすることにより、被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測することを実現するようにした。即ち、本発明の計測方法は、極めてロバスト性の優れた方法であるといえる。
【0030】
さらに、本発明では、共振周波数を用いて計測を行うため、図1(a)に示すように、被計測物(鋼板)200に対して一方の面(表面)に超音波送受信装置を設ければ計測を行うことができ、図11に示す従来技術のように、被計測物(鋼板)200に対して両方の面(表面及び裏面)にそれぞれ超音波送信装置及び超音波受信装置を設ける必要がない。このことは、装置のメンテナンス性の観点から有益である。また、本発明では、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとしているため、当該内部状態の計測に際して、例えば、被計測物(鋼板)200の厚みD等を事前に測定する必要もない。
【0031】
−本発明の骨子を踏まえた具体的な実施形態−
次に、上述した本発明の骨子を踏まえた具体的な実施形態について説明する。
【0032】
図4は、本発明の実施形態に係る内部状態計測装置の外観の一例を示す模式図である。
図4に示すように、内部状態計測装置100は、EMAT(電磁超音波)センサ110と、超音波送受信装置120と、情報処理装置130を有して構成されている。
【0033】
EMATセンサ110は、例えば、被計測物(鋼板)200に対して磁束を発生させる永久磁石等からなる磁束発生部(不図示)と、通電されるコイル(不図示)とを具備して構成されている。なお、EMATセンサ110の耐熱性を持たせるために、図4に示すように、冷却水循環装置140にホースで連結された水冷ホルダ141にEMATセンサ110を収納するようにしても良い。
【0034】
超音波送受信装置120は、例えば、EMATセンサ110のコイルに対して、所定の周波数領域における各周波数の交流電流を順次送信する。これにより、被計測物(鋼板)200の表面には、EMATセンサ110のコイルに流れる交流電流と逆向きの渦電流が発生し、当該渦電流と被計測物(鋼板)200内に発生した磁束により力が生じ、これが縦波の超音波振動となって被計測物200の内部を板厚方向に伝播する。
【0035】
また、超音波送受信装置120は、送信した交流電流の各周波数毎に、被計測物(鋼板)200の内部を板厚方向に伝播した超音波を、例えば、EMATセンサ110のコイル内に発生した誘導起電力として受信する。また、超音波送受信装置120は、プリアンプ121が設けられており、被計測物(鋼板)200の内部を板厚方向に伝播した超音波に基づく誘導起電力を増幅して受信できるようになっている。
【0036】
情報処理装置130は、超音波送受信装置120における超音波の送信動作及び受信動作を制御すると共に、超音波送受信装置120で受信した超音波に基づいて被計測物(鋼板)200の内部状態を計測する際の各種の処理を行う。また、情報処理装置130には、表示部131が設けられており、例えば、被計測物(鋼板)200の内部状態の計測結果を表示できるようになっている。
【0037】
図5は、本発明の実施形態に係る内部状態計測装置の内部構成の一例を示す模式図である。ここで、図5には、情報処理装置130における各機能動作を示す機能ブロックを示している。なお、図5では、冷却水循環装置140及び水冷ホルダ141は図示していない。
【0038】
図5に示すように、情報処理装置130は、表示部131と、共振周波数検出部132と、周波数間隔算出部133と、変動量算出部134と、閾値記憶部135と、内部状態判定部136を有して構成されている。
【0039】
図5に示す情報処理装置130において、表示部131は、被計測物(鋼板)200の内部状態の計測結果を表示したり、当該情報処理装置130における動作状況などを表示したりする。
【0040】
共振周波数検出部132は、被計測物(鋼板)200の内部を伝播し、超音波送受信装置120で受信した各周波数の超音波に基づいて、被計測物(鋼板)200における複数の共振周波数を検出する。
【0041】
周波数間隔算出部133は、共振周波数検出部132で検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔(Δf)をそれぞれ算出する。
【0042】
変動量算出部134は、周波数間隔算出部133で算出された周波数間隔(Δf)の変動量を算出する。具体的に、変動量算出部134は、共振周波数の周波数間隔(Δf)における変動量として、例えば、周波数間隔算出部133で算出された複数の周波数間隔(Δf)における所定数の変動量を算出して、当該所定数の変動量を平均化して平均変動量を算出する。
【0043】
閾値記憶部135には、被計測物(鋼板)200の内部状態を判定する際に用いる閾値が記憶されている。具体的に、本実施形態では、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあるか否かを判定する際に用いる閾値が記憶されている。この閾値記憶部135に記憶される閾値は、内部に液層部(溶鋼部)200aがある鋼板のサンプルと内部に液層部(溶鋼部)200aがない鋼板のサンプルとを用いて予め実験又はシミュレーションを行い、これらを分別する値が適用される。
【0044】
内部状態判定部136は、変動量算出部134で算出された変動量が閾値記憶部135に記憶されている閾値よりも大きいか否かに応じて、被計測物(鋼板)200の内部状態を判定する。この際、内部状態判定部136は、変動量算出部134により算出された平均変動量を用いて、被計測物(鋼板)200の内部状態、即ち、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあるか否かを判定する。
【0045】
そして、内部状態判定部136により判定された被計測物(鋼板)200の内部状態の結果は、情報処理装置130の制御により、表示部131に表示される。
【0046】
次に、内部状態計測装置100による具体的な内部状態計測方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る内部状態計測装置による内部状態計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図6に示すフローチャートの以下の説明においては、図5に示す内部状態計測装置100の内部構成図を参照しながら説明する。
【0047】
まず、図6のステップS101において、超音波送受信装置120は、情報処理装置130の制御により、EMATセンサ110を介して被計測物(鋼板)200の表面の所定位置(計測位置)に対して所定の周波数領域における各周波数の縦波の超音波を送信する。
【0048】
続いて、ステップS102において、超音波送受信装置120は、前記所定の周波数領域の各周波数毎に、被計測物(鋼板)200の内部を板厚方向に伝播した縦波の超音波を、例えば、EMATセンサ110のコイル内に発生した誘導起電力として受信する。
【0049】
続いて、ステップS103において、情報処理装置130の共振周波数検出部132は、超音波送受信装置120で受信した各周波数の超音波に基づいて、被計測物(鋼板)200における複数の共振周波数を検出する。具体的に、共振周波数検出部132は、超音波送受信装置120で受信した各周波数の超音波に基づいて、各周波数毎に当該受信した超音波における波形のエネルギー値を算出し、算出した各周波数毎のエネルギー値から被計測物(鋼板)200における複数の共振周波数を検出する。以下に、共振周波数検出部132における共振周波数の具体的な検出方法について説明する。
【0050】
図7は、本発明の実施形態を示し、周波数fmの受信超音波における波形のエネルギー値の算出方法を示す模式図である。
図7には、上から、被計測物(鋼板)200に対して送信された超音波の送信波形、当該送信波形と共に超音波の送信後に被計測物(鋼板)200から受信した超音波の受信波形、当該受信波形のエネルギー値を算出する期間を指示するゲート信号の各タイムチャートが示されている。ここで、受信波形に示されているSi及びSi+1は、データとして用いるサンプリングポイントを示しており、また、ゲート信号は、情報処理装置130から指示される。
【0051】
図7に示すゲート信号で指示された期間において、共振周波数検出部132は、図7に示されたエネルギー値Pmの数式に基づき、周波数fmの超音波における受信波形のエネルギー値を算出する。この際に算出される受信波形のエネルギー値は、図7に示す受信波形の斜線部の面積に相当する。そして、共振周波数検出部132は、この受信波形のエネルギー値の算出を、前記所定の周波数領域における各周波数毎に行う。
【0052】
図8は、本発明の実施形態を示し、共振周波数検出部132において各周波数毎に算出した受信波形のエネルギー値の一例を示す模式図である。ここで、図8は、前記所定の周波数領域を0.37MHz〜0.45MHzとし、また、被計測物(鋼板)200として、固層部のみからなり厚みDが250mmの鋼板を適用した場合の例を示している。また、図8は、図1(b)の縦軸における受信超音波の振幅として、受信超音波の受信波形のエネルギー値を適用した場合の例を示している。
【0053】
共振周波数検出部132は、図8に示す受信波形のエネルギー値における極大値(図8のP1〜P8)を抽出し、当該極大値における周波数を共振周波数として、被計測物(鋼板)200における複数の共振周波数(例えば、図8のf1、f2、f3、・・・、f8)を検出する。
【0054】
続いて、ステップS104において、情報処理装置130の周波数間隔算出部133は、共振周波数検出部132で検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔(例えば、図8のΔf1、Δf2、・・・、Δf7)をそれぞれ算出する。
【0055】
続いて、ステップS105において、情報処理装置130の変動量算出部134は、周波数間隔算出部133で算出された周波数間隔の変動量Hを算出する。具体的に、変動量算出部134は、共振周波数の周波数間隔の変動量Hとして、例えば、周波数間隔算出部133で算出された複数の周波数間隔における所定数の変動量を算出して、当該所定数の変動量を平均化して平均変動量を算出する。
【0056】
この平均変動量の算出について、図8を用いてより詳細に説明をする。
変動量算出部134は、まず、共振周波数f1とf2との周波数間隔Δf1、及び、共振周波数f2とf3との周波数間隔Δf2を用いて、第1の変動量H1を下記の数式3により算出する。
1=|Δf1−Δf2| ・・・(数式3)
【0057】
同様にして、変動量算出部134は、周波数間隔Δf2及び周波数間隔Δf3を用いて第2の変動量H2を算出し、周波数間隔Δf3及び周波数間隔Δf4を用いて第3の変動量H3を算出し、周波数間隔Δf4及び周波数間隔Δf5を用いて第4の変動量H4を算出し、周波数間隔Δf5及び周波数間隔Δf6を用いて第5の変動量H5を算出し、周波数間隔Δf6及び周波数間隔Δf7を用いて第6の変動量H6を算出する。このように、本例では、第1の変動量H1〜第6の変動量H6までの合計6個の変動量を算出する。
【0058】
そして、本例の場合、変動量算出部134は、共振周波数の周波数間隔の変動量Hとして、下記の数式4により、各変動量を平均化して平均変動量を算出する。
H=(H1+H2+H3+H4+H5+H6)/6 ・・・(数式4)
【0059】
なお、本例では、図8に基づいて第1の変動量H1〜第6の変動量H6までの合計6個の変動量を平均化して平均変動量を算出するようにしているが、これは例示であって、例えば、10個以上の変動量を平均化して平均変動量を算出するようにしてもよい。
【0060】
続いて、ステップS106において、情報処理装置130の内部状態判定部136は、変動量算出部134で算出された変動量(平均変動量)Hに基づいて、即ち、変動量算出部134で算出された変動量(平均変動量)Hが閾値記憶部135に記憶されている閾値よりも大きいか否かに応じて、被計測物(鋼板)200の内部状態を判定する。
【0061】
具体的に、本実施形態では、内部状態判定部136は、変動量算出部134で算出された変動量が閾値記憶部135に記憶されている閾値よりも大きい場合には、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあると判定する。逆に、内部状態判定部136は、変動量算出部134で算出された変動量が閾値記憶部135に記憶されている閾値よりも大きくない(即ち、以下である)場合には、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがないと判定する。
【0062】
続いて、ステップS107において、情報処理装置130は、内部状態判定部136で判定された被計測物(鋼板)200の内部状態の結果を、表示部131に表示する。具体的に、本実施形態では、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあるか否かの計測結果が表示部131に表示される。これにより、計測者は、表示部131に表示された計測結果を視認することで、被計測物(鋼板)200の内部状態を把握することができる。
【0063】
以上のステップS101〜ステップS107の処理を経ることにより、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を計測パラメータとする、被計測物(鋼板)200の内部状態の計測方法が実行される。
【0064】
次に、被計測物(鋼板)200として、内部に液層部200aがない固層部のみからなる鋼板のサンプルと、内部に液層部200aがある鋼板のサンプルとを用いたシミュレーションの結果について説明する。
【0065】
図9は、本発明の実施形態を示し、被計測物200として、内部に液層部200aがない固層部のみからなる鋼板のサンプルと、内部に液層部200aがある鋼板のサンプルとを用いたシミュレーションの結果を示す模式図である。
【0066】
この図9において、横軸は、超音波送受信装置120で受信した(或いは、超音波送受信装置120から送信された)超音波の所定の周波数領域(図9に示す例では、周波数0.1MHz〜0.7MHzの領域)における周波数を示している。また、この図9において、縦軸は、周波数間隔算出部133において算出される共振周波数の周波数間隔(Δf)を示している。また、図9中の○は、内部に液層部200aがない固層部のみからなる鋼板のサンプルにおける共振周波数の周波数間隔を示し、図9中の●は、内部に液層部200aがある鋼板のサンプルにおける共振周波数の周波数間隔を示している。また、図9に示すシミュレーションにおいては、鋼板の厚みDを250mmとし、また、内部に液層部200aがある鋼板のサンプルについては、当該液層部200aの厚みを30mmとして行った。
【0067】
ここで、図10を用いて、図9に示すシミュレーションにおける処理内容を詳細に説明する。
【0068】
図10は、図9に示すシミュレーションにおける処理内容を説明するための被計測物(鋼板)200の模式図である。
【0069】
図9に示すシミュレーションでは、まず、図10に示すように、被計測物200をM枚の層に分割して、M層複合板として考える。超音波送受信装置120からEMATセンサ110を介して送信された超音波が被計測物200の表面(z=0)及び裏面(z=zM)の間を多重反射している状態では、第m層における超音波振幅Umは上下に進行する2つの波の和として与えられると考えることができ、以下の数式5のように表せる。
【0070】
【数1】

【0071】
数式5において、kmは第m層における超音波の波数を示し、km=2πf/Vmで表せる。この際、Vmは第m層における超音波の速度を示す。また、αm(f)は第m層における超音波の減衰定数を示し、fはその周波数を示す。この際、超音波の速度Vmや超音波の減衰定数αm(f)等については、固層部と液層部200aとで異なる値が設定される。また、zは第1層の表面(被計測物200の表面)からの距離を示し、第m層と第m+1層との境界の位置はzmとなる。また、Am、Bmは複素定数を示し、j=√(−1)は虚数単位を示す。
【0072】
そして以下の[1]〜[3]に示す境界条件を規定する。
[1]第m層と第m+1層との境界(z=zm)において、両層における超音波の粒子速度と応力が等しい。
[2]被計測物200の表面(第1層の表面:z=0)に単位強さの超音波源があるとして、その表面における応力を1(Pa)とする。
[3]被計測物200の裏面(z=zM)は自由表面とし、そこでの応力を0とする。
【0073】
上述した[1]〜[3]の境界条件を数式5にあてはめると、以下の数式6〜数式8に示すような、A1、B1、AM、BMに関する連立1次方程式が得られ、それらを求めることができる。
【0074】
【数2】

【0075】
そして、他の全てのAm、Bmも、A1、B1、AM、BMと境界条件により求めることができる。被計測物200の表面(第1層の表面:z=0)における振幅は|A1+B1|である。よって、被計測物200の表面に対して所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信した際に、被計測物200の表面における各周波数毎の振幅を算出することができる。
【0076】
図9に示すシミュレーションでは、例えば、図10において、被計測物200の表面(z=0)に、超音波送受信装置120から超音波を送信するようにする。ここで、被計測物200の分割数Mは、各分割層における音速ができるだけなめらかに変化している状況に近づけるために、例えば、M=101のように大きくとることが望ましい。そして、上述した数式5〜数式8による演算処理を行うことにより、各被計測物において、当該各被計測物の内部を伝播した各周波数における超音波の振幅|A1+B1|の大きさを算出する。
【0077】
これにより、例えば、図1(b)に示すような横軸を超音波の周波数とし、縦軸を超音波の振幅とした特性を取得することができ、この特性から共振周波数の検出、及び、検出した共振周波数における周波数間隔の算出がなされて、図9のシミュレーション結果が得られる。
【0078】
ここで、再び、図9の説明に戻る。
上述したように、図9中の○及び●は、各サンプルにおける共振周波数の周波数間隔を示しているため、○と○とを結ぶ線分及び●と●とを結ぶ線分は、それぞれ、共振周波数における周波数間隔の変動量を表していることになる。
【0079】
この図9に示すシミュレーション結果から、内部に液層部200aがない固層部のみからなる鋼板のサンプルでは、図9中の○で示すように、共振周波数における周波数間隔の変動がほとんど発生せずに、ほぼ一定であることが分かる(周波数0.1MHz〜0.7MHzの範囲で変動幅が約0.05kHz)。
【0080】
一方、内部に液層部200aがある鋼板のサンプルでは、図9中の●で示すように、共振周波数における周波数間隔の変動が、内部に液層部200aがない固層部のみからなる鋼板のサンプルに比べて、著しく大きいことが分かる(周波数0.1MHz〜0.7MHzの範囲で変動幅が約1.5kHz)。
【0081】
本実施形態では、内部状態判定部136は、変動量算出部134で算出された平均変動量を用いて内部状態の判定を行う形態であるため、例えば、図9に示す例では、閾値を0.2kHz程度に設定すれば、内部に液層部(溶鋼部)200aがある鋼板と内部に液層部(溶鋼部)200aがない鋼板とを分別できると考えられる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の内部状態計測装置100では、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとするようにしたので、被計測物の内部温度分布や厚み等の影響を受けずに、被計測物の内部状態を精度良く計測することができる。さらに、共振周波数における周波数間隔Δfの変動量を被計測物(鋼板)200の内部状態の計測パラメータとするようにしたので、当該内部状態の計測に際して、例えば、被計測物(鋼板)200の厚みD等を事前に測定する必要がなく、当該計測に係る処理を簡素化することができる。
【0083】
また、本実施形態の内部状態計測装置100では、共振周波数を用いて計測を行うようにしたので、被計測物(鋼板)200に対して一方の面(表面)に超音波送受信装置を設ければ計測を行うことができ、例えば、図11に示す従来技術と比較して、装置のメンテナンス性の向上を図ることができる。また、本実施形態の内部状態計測装置100では、縦波の超音波を用いて計測を行うようにしたので、横波の超音波を用いた場合と比較して、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)200aがあっても当該超音波を進行させて被計測物(鋼板)200における適性な共振周波数の検出が行えると共に、発生効率を高めるために被計測物(鋼板)200を冷却する必要もない。
【0084】
なお、上述した本実施形態では、変動量算出部134で共振周波数の周波数間隔における変動量を算出する際に、所定数の変動量を算出して当該所定数の変動量を平均化して平均変動量を算出するようにしているが、例えば、算出した所定数の変動量のうち、上限値と下限値との変動幅を共振周波数の周波数間隔における変動量として用いる形態であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、被計測物(鋼板)200の内部状態として、被計測物(鋼板)200の内部に液層部(溶鋼部)があるか否かを計測する例について記述したが、本発明においてはこれに限定されるものではない。例えば、被計測物(鋼板)200の内部状態として、鋼板以外のアルミや銅など非鉄金属材の内部の液層部の有無を計測する形態も本発明に適用することができる。
【0086】
前述した本実施形態に係る内部状態計測装置100を構成する図5の各構成部、並びに当該内部状態計測装置100による内部状態計測方法を示す図6の各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0087】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体を用いることができる。また、この際の通信媒体としては、光ファイバ等の有線回線や無線回線などが挙げられる。
【0088】
また、本発明は、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより本実施形態に係る内部状態計測装置100の機能が実現される態様に限られない。そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して本実施形態に係る内部状態計測装置100の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て、或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて本実施形態に係る内部状態計測装置100の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【0089】
また、前述した本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の概念を説明するための模式図である。
【図2】共振周波数における周波数間隔の変動量と被計測物(鋼板)の厚みとの関係を示す特性図である。
【図3】共振周波数における周波数間隔の変動量と被計測物(鋼板)の内部温度分布との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施形態に係る内部状態計測装置の外観の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る内部状態計測装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る内部状態計測装置による内部状態計測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態を示し、周波数fmの受信超音波における波形のエネルギー値の算出方法を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、共振周波数検出部において各周波数毎に算出した受信波形のエネルギー値の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、被計測物として、内部に液層部がない固層部のみからなる鋼板のサンプルと、内部に液層部がある鋼板のサンプルとを用いたシミュレーションの結果を示す模式図である。
【図10】図9に示すシミュレーションにおける処理内容を説明するための被計測物(鋼板)の模式図である。
【図11】従来技術における被計測物の内部状態の計測方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0091】
100 内部状態計測装置
110 EMAT(電磁超音波)センサ
120 超音波送受信装置
121 プリアンプ
130 情報処理装置
131 表示部
132 共振周波数検出部
133 周波数間隔算出部
134 変動量算出部
135 閾値記憶部
136 内部状態判定部
140 冷却水循環装置
141 水冷ホルダ
200 被計測物(鋼板)
200a 液層部(溶鋼部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測装置であって、
前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信手段と、
前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出手段と、
前記共振周波数検出手段で検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出手段と、
前記周波数間隔算出手段で算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出手段と、
前記変動量算出手段で算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定手段と
を有することを特徴とする内部状態計測装置。
【請求項2】
閾値を記憶する閾値記憶手段を更に有し、
前記判定手段は、前記変動量算出手段で算出された変動量が前記閾値記憶手段に記憶されている閾値よりも大きいか否かに応じて、前記被計測物の内部状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の内部状態計測装置。
【請求項3】
前記変動量算出手段は、所定数の前記変動量を算出して、当該所定数の変動量を平均化して平均変動量を算出し、
前記判定手段は、前記平均変動量を用いて前記被計測物の内部状態を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内部状態計測装置。
【請求項4】
前記超音波送信手段は、前記被計測物の所定位置に対して前記各周波数の超音波を送信すると共に、前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波を前記所定位置で受信する超音波送受信手段を構成するものであり、
前記検出手段は、前記超音波送受信手段で受信した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内部状態計測装置。
【請求項5】
超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測方法であって、
前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信ステップと、
前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップと、
前記共振周波数検出ステップで検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出ステップと、
前記周波数間隔算出ステップで算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記変動量算出ステップで算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定ステップと
を有することを特徴とする内部状態計測方法。
【請求項6】
前記判定ステップでは、前記変動量算出ステップで算出された変動量が閾値よりも大きいか否かに応じて、前記被計測物の内部状態を判定することを特徴とする請求項5に記載の内部状態計測方法。
【請求項7】
前記変動量算出ステップでは、所定数の前記変動量を算出して、当該所定数の変動量を平均化して平均変動量を算出し、
前記判定ステップでは、前記平均変動量を用いて前記被計測物の内部状態を判定することを特徴とする請求項5又は6に記載の内部状態計測方法。
【請求項8】
前記超音波送信ステップでは、前記被計測物の所定位置に対して前記各周波数の超音波を送信するものであり、
前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波を前記所定位置で受信する超音波受信ステップを更に有し、
前記検出ステップでは、前記超音波受信ステップで受信した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の内部状態計測方法。
【請求項9】
超音波を送受信して被計測物の内部状態を計測する内部状態計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記被計測物に対して、所定の周波数領域における各周波数の超音波を送信する超音波送信ステップと、
前記被計測物の内部を伝播した前記各周波数の超音波に基づいて前記被計測物における複数の共振周波数を検出する共振周波数検出ステップと、
前記共振周波数検出ステップで検出された複数の共振周波数の隣接する2つの共振周波数における周波数間隔をそれぞれ算出する周波数間隔算出ステップと、
前記周波数間隔算出ステップで算出された周波数間隔の変動量を算出する変動量算出ステップと、
前記変動量算出ステップで算出された変動量に基づいて前記被計測物の内部状態を判定する判定ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−68914(P2009−68914A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235822(P2007−235822)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】