円すいころ軸受
【課題】潤滑油の排出効果を高めて軸受内部に滞留する潤滑油量を減少させて、攪拌トルクを低減することができる円すいころ軸受を提供する。
【解決手段】円すいころ4を所定の間隔で保持する樹脂製の保持器5は、小径環状部6と、大径環状部7と、小径環状部6と大径環状部7とを連結して周方向に略等間隔で配置される複数の柱部8とを備える。柱部8の内周面8aの一部を構成する凸部内径部32の内周面32aには、小径側における柱部内周面の回転軸Oに対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸Oに対する傾きより大きい円弧部40が形成されている。
【解決手段】円すいころ4を所定の間隔で保持する樹脂製の保持器5は、小径環状部6と、大径環状部7と、小径環状部6と大径環状部7とを連結して周方向に略等間隔で配置される複数の柱部8とを備える。柱部8の内周面8aの一部を構成する凸部内径部32の内周面32aには、小径側における柱部内周面の回転軸Oに対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸Oに対する傾きより大きい円弧部40が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油潤滑で使用される円すいころ軸受に関し、より詳細には、自動車用トランスミッション又は自動車用でデファレンシャルギヤに使用される円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
円すいころ軸受は、大きなラジアル荷重およびアキシャル荷重を支持して高速回転での使用が可能であり、且つコンパクトであるため、トランスミッション、デファレンシャルギヤなど、自動車の減速装置部分などに多用されている。このような円すいころ軸受では、軸受の回転に伴うポンプ作用によって、潤滑油が内輪の小鍔部と保持器の小径環状部側端部との間から流入し、内輪の大鍔部と保持器の大径環状部側端部との間から流出するように構成されている。
【0003】
一方、円すいころ軸受の回転トルクは、円すいころと内輪との摩擦抵抗や、軸受内部に滞留する潤滑油の攪拌抵抗が主な要因となって発生し、特に、高速回転領域で使用される円すいころ軸受においては、潤滑油の攪拌抵抗が大きな要因となっている。自動車の減速装置部分などで用いられる場合、潤滑油の供給量が多く、そのため潤滑油の攪拌抵抗が大きくなりやすいという問題がある。
【0004】
図12に示すように、特許文献1に記載の円すいころ軸受100では、プレス成形された金属製保持器101の内径端面101aと、内輪102の小径側端部102aの外周面102bの隙間を小さくしてラビリンスシールを形成し、流入する潤滑油量の低減を図ることにより、攪拌トルクを低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−69421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の円すいころ軸受100は、軸受への潤滑油流入量の低減を図ることにより攪拌トルクの低減を図っているが、高速回転時にはころ103の回転によりエアーカーテンが発生し、潤滑油の軸受内への進入を妨げるため内輪102の小鍔部外周面102cと保持器101のかしめ部101bとの隙間Aに潤滑油が滞留しやすく、その結果、円すいころ軸受100の攪拌トルクが上昇しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑油の排出効果を高めて軸受内部に滞留する潤滑油量を減少させて、攪拌トルクを低減することができる円すいころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間を周方向に転動可能な複数の円すいころと、前記複数の円すいころを所定の間隔で保持する樹脂製保持器とを備え、油潤滑で使用される円すいころ軸受であって、
保持器柱部は、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きより大きく、軸受内部の潤滑油の排出を促進する円弧部を備えることを特徴とする円すいころ軸受。
(2) 前記円弧部の外径側端部は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする(1)に記載の円すいころ軸受。
(3) 前記保持器の小径環状部は、内周面が前記内輪の小鍔部の外周面に対向してラビリンスシールを構成し、
前記柱部の最内径部は前記小鍔部の外周面よりも内径側に位置していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の円すいころ軸受。
(4) 前記柱部内周面が略直線状に形成され前記柱部内周面の傾きが柱部外周面の傾きと同一に形成された平行部を備え、
前記平行部は、前記円弧部の外径側端部から連続して形成されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の円すいころ軸受。
(5) 前記保持器柱部は前記保持器の小径環状部と大径環状部を連接し、
前記大径環状部の内周面は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の円すいころ軸受。
【発明の効果】
【0009】
本発明の円すいころ軸受によれば、保持器柱部が、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きを大径側における保持器内周面の回転軸に対する傾きより大きい円弧部を備えたことにより、潤滑油が大径側に流れやすくなる。これにより、潤滑油の排出効果が高まり軸受内部に滞留する潤滑油量が減少し、攪拌トルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態である円すいころ軸受の軸方向断面図である。
【図2】図1に示す保持器の全体斜視図である。
【図3】図1に示す保持器の要部斜視図である。
【図4】図1のA−A線矢視図であり、第1実施形態である円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図5】図1に示す保持器における潤滑油の流れ方向を説明する要部断面図である。
【図6】第2実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図7】第3実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図8】第4実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図9】第5実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図10】図1のA−A線矢視図であり、第6実施形態の円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図11】第7実施形態の円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図12】従来の円すいころ軸受の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る円すいころ軸受の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
まず、図1〜図5を参照して、本発明に係る円すいころ軸受の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の円すいころ軸受1は、外周面に内輪軌道面2aが形成された内輪2と、内周面に外輪軌道面3aが形成された外輪3と、内輪軌道面2aと外輪軌道面3a間を周方向に転動可能な複数の円すいころ4と、複数の円すいころ4を所定の間隔で転動可能に保持する保持器5とを備えている。
【0013】
内輪2は、内輪軌道面2aと、その小径側端部に半径方向外方に突出して形成された小鍔部2bと、大径側端部に半径方向外方に突出して形成された大鍔部2cとを備え、内輪軌道面2aは、内輪2の外周面が小鍔部2bから大鍔部2cに向うに従って、外径が次第に大きくなるように形成されている。
【0014】
外輪3は、外輪軌道面2bが外輪3の内周面に小径側から大径側に向けて内径が次第に大きくなるように形成されている。
【0015】
保持器5は、例えば図2に示すように、小径環状部6と、大径環状部7と、小径環状部6と大径環状部7とを連結して周方向に略等間隔で配置される複数の柱部8とを備え、これら小径環状部6、大径環状部7、および隣接する柱部8とで円すいころ4を保持するポケット9を構成する。
【0016】
保持器5の小径環状部6は、その内周面が内輪2の小鍔部2bと略平行に近接して対向配置され、小径環状部6の内周面6aと小鍔部2bの外周面とによってラビリンスシール部11が形成されている。
【0017】
保持器5の柱部8は、例えば図3、図4に示すように、小径環状部6と大径環状部7とを連接する柱部本体20と、柱部本体20から径方向内側に向けて突出して形成される凸部30を有する。柱部本体20は、円周方向両側面に径方向内方に向けて僅かに幅狭となる側面20bを有し、柱部本体20の内周面からはさらに径方向内方に向けて幅狭となる凸部外径部31と、凸部外径部31から一様の幅で内輪2の小鍔部2bより内径側であって内輪軌道面2a近傍まで延びる凸部内径部32が形成されている。この凸部外径部31と凸部内径部32とから凸部30が構成されている。
なお、保持器5は、凸部外径部31の側面31bがころ案内面となって円すいころ4に当接することにより周方向の位置決めがなされ、回転時には円すいころ4により案内される。
【0018】
柱部8の内周面8a、すなわち凸部内径部32の内周面32aとこの内周面32aから連なる凸部外径部31と柱部本体20の内周面31a、20aは、例えば図5に示すように、円弧状に形成された円弧部40を備えている。
【0019】
円弧部40は、内径側の回転軸Oに対する傾きが外径側の回転軸Oに対する傾きより大きく形成されている。すなわち、凸部内径部32の内周面32aの回転軸Oに対する傾きが、柱部本体20の内周面20aの回転軸Oに対する傾きより大きく形成されている。
【0020】
したがって、隣接する円すいころ4と柱部8の内周面8aと内輪軌道面2aとの径方向距離により定義される断面積は図1に示すように、小径環状部6側の断面積A1より外径環状部7側の断面積A2の方が大きくなっている。
【0021】
保持器5の大径環状部7は、その内周面7aが円すいころのピッチ円直径Pより外径側に位置するように形成され、内輪2の大鍔部2cと大径環状部7の内周面7aとの間には潤滑油排出用の開口が確保されている。
【0022】
保持器5は、樹脂からなり、樹脂材料としては、ポリアミド46やポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェレンサルサイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)などが例示される。また、上記樹脂に、例えば、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状充填材を10〜50wt%程度適宜添加することによって、保持器5の剛性および寸法精度を向上させることができる。なお、保持器は金属により形成してもよいが、合成樹脂により形成することで保持器自体の慣性質量を十分に小さくでき、その分だけ、軸受の軽量化や回転速度の高速化を図ることができる。
【0023】
上記のように構成された円すいころ軸受1では、軸受の回転に伴うポンプ作用によって、潤滑油が内輪2の小鍔部2bと保持器5の小径環状部6の内周面6aとの隙間からラビリンスシール部11を介して軸受内部に流入し、円すいころ軸受1の回転による遠心力により大径環状部7側の開口から流出する。
【0024】
本実施形態の円すいころ軸受1によれば、柱部8の内周面8aに、小径側における回転軸Oに対する傾きが大径側における回転軸Oに対する傾きより大きい円弧状の円弧部40が形成されているので、内輪2の内輪軌道面2aと保持器5の柱部8の内周面8aにより形成される隙間面積が小径環状部側で小さく、大径環状部側で大きくなり、ポンプ効果の影響が強くなる。これにより、軸受内部の潤滑油の排出が促進され、攪拌トルクを低減することができる。
【0025】
更に、図5の矢印で示すように、柱部8の内周面8aは、小径環状部6側から大径環状部7に向って次第に拡径するので、円すいころ軸受1内に滞留する潤滑油は、円すいころ軸受1の回転に伴って生じる遠心力によって内周面8aに案内されて矢印方向の潤滑油の流れが生じ、円すいころ軸受1からの排出が促進される。
【0026】
さらに、保持器5の大径環状部7の内周面7aは円すいころのピッチ円直径Pより外径側に位置するように形成されているので、内輪2の大鍔部2cと大径環状部7の内周面7aとの間には大きな開口面積が確保されている。したがって、潤滑油が軸受空間から外部に流出するための隙間(開口)の面積を大きくとることができ、潤滑油の排出性が向上する。
【0027】
また、本実施形態における円すいころ軸受1においては、小径環状部6の内周面6aと小鍔部2bの外周面とによってラビリンスシール部11が形成されているので、このラビリンスシール部11の隙間を調整することにより円すいころ軸受1内に流入する潤滑油量を調整でき、攪拌トルクを低減することができる。
【0028】
さらに、保持器5の柱部8に設けられた凸部30の体積分だけ円すいころ軸受1の内部空間の体積は狭くなる。これによって軸受1の内部空間の潤滑油量も少なくすることができ攪拌トルクを低減することができる。なお本実施形態において、図1に示すように凸部30の最内径部33は内輪2の小鍔部2bより内径側に位置しているが必ずしも小鍔部2bよりも内径側である必要はなく、ピッチ円直径P上又はピッチ円直径Pより内径側であればよい。
【0029】
<第2実施形態>
第2実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0030】
第2実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Aは、図6に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から、内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0031】
これにより第2実施形態の保持器5Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
<第3実施形態>
第3実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0033】
第3実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Bは、図7に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から、テーパ部60とする。
【0034】
テーパ部60は、その内周面も略直線状に形成され、その内周面の回転軸Oに対する傾きがその外周面の回転軸Oに対する傾きより大きく形成され、柱部本体20の径方向長さ(厚さ)が小径環状部6側から外径環状部7側に向かって小さくなっている。
【0035】
これにより第3実施形態の保持器5Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
<第4実施形態>
第4実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0037】
第4実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Cは、図8に示すように、第1実施形態における保持器5において、凸部外径部31の内周面31aを円弧部40から内周面の傾きが外周面の傾きより大きく形成されたテーパ部60とし、柱部本体20の内周面20aをテーパ部60から内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0038】
これにより第4実施形態の保持器5Cにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第4実施形態の保持器5Cにおいて、柱部本体20の内周面20aを円弧部40又はテーパ部60としても同様の効果を得ることができる。
<第5実施形態>
第5実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0039】
第5実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Dは、図9に示すように、第1実施形態における保持器5において、凸部内径部32の内周面32aを円弧部40から内周面の傾きが外周面の傾きより大きく形成されたテーパ部60とし、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0040】
これにより第5実施形態の保持器5Dにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第5実施形態の保持器5Dにおいて、柱部本体20の内周面20aを円弧部40又はテーパ部60としても同様の効果を得ることができる。
【0041】
<第6実施形態>
第6実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0042】
第6実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Eは、図10に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部8の円周方向両側面8b、すなわち柱部8を構成する柱部本体20、凸部外径部31及び凸部内径部32の円周方向両側面20b、31b、32bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とする。なお、柱部内周面の形状は第1実施形態と同一である。
【0043】
ここで円すいころ4のピッチ円直径Pの位置における柱部8の周方向側面8bと円すいころ4の周方向の隙間(ポケット隙間)は0.05〜0.4mmであることが望ましい。ポケット隙間が0.05mm以下では円すいころ4が柱部8により拘束される可能性があり、0.4mm以上では回転中に保持器5の振れ回りが大きくなって振動が増大し、トルクが増大する原因となる可能性がある。
【0044】
本実施形態の円すいころ軸受1によれば、第1実施形態の円すいころ軸受の効果に加え、円すいころ軸受1の内部空間の体積がさらに減少し、軸受内部の潤滑油の潤滑油量を減らすことができ、攪拌トルクをさらに低減させることができる。また、ポケット9を構成する柱部8の円周方向両側面8bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とすることで、保持器5と円すいころ4の接触可能な面積が増えるため、円すいころ4にスキューが発生して傾くとすぐに柱部8の側面8bと接触してスキューが矯正され、円すいころのスキューを抑制することができる。したがって、スキューに起因して発生するトルクの変動をも抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態は、第1実施形態に限らず、第2〜第6実施形態の円すいころ軸受にも適用することができる。
【0046】
<第7実施形態>
第7実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第6実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0047】
第7実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Fは、図11に示すように、第6実施形態における保持器5Eにおいて、柱部8の円周方向両側面8bのうち柱部8を構成する柱部本体20及び凸部外径部31の円周方向両側面20b、31bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とし、凸部内径部32の円周方向両側面32bを一様の幅を有するように構成する。
【0048】
これにより、第6実施形態の円すいころ軸受1と同様の効果を得ることができる。さらに、第6実施形態の円すいころ軸受1と比較して、円すいころ4の組込み性が向上する。
【0049】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、本実施形態において保持器として大径環状部7を備えた保持器を例示したが、大径環状部を備えていない、いわゆるくし型保持器であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 円すいころ軸受
2 内輪
2a 内輪軌道面
2b 小鍔部
3 外輪
3a 外輪軌道面
4 円すいころ
5、5A、5B、5C、5D、5E、5F 保持器
6 小径環状部
7 大径環状部
8 柱部
8a 柱部内周面
8b 柱部の周方向側面
9 ポケット
11 ラビリンスシール部
20 柱部本体
20a 柱部本体の内周面
20a 柱部本体の周方向側面
30 凸部
31 外径側凸部
31a 外径側凸部の内周面
31b 外径側凸部の周方向側面
32 内径側凸部
32a 内径側凸部の内周面
32a 外径側凸部の周方向側面
40 円弧部
50 平行部
60 テーパ部
O 回転軸
P ピッチ円すい面
【技術分野】
【0001】
本発明は、油潤滑で使用される円すいころ軸受に関し、より詳細には、自動車用トランスミッション又は自動車用でデファレンシャルギヤに使用される円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
円すいころ軸受は、大きなラジアル荷重およびアキシャル荷重を支持して高速回転での使用が可能であり、且つコンパクトであるため、トランスミッション、デファレンシャルギヤなど、自動車の減速装置部分などに多用されている。このような円すいころ軸受では、軸受の回転に伴うポンプ作用によって、潤滑油が内輪の小鍔部と保持器の小径環状部側端部との間から流入し、内輪の大鍔部と保持器の大径環状部側端部との間から流出するように構成されている。
【0003】
一方、円すいころ軸受の回転トルクは、円すいころと内輪との摩擦抵抗や、軸受内部に滞留する潤滑油の攪拌抵抗が主な要因となって発生し、特に、高速回転領域で使用される円すいころ軸受においては、潤滑油の攪拌抵抗が大きな要因となっている。自動車の減速装置部分などで用いられる場合、潤滑油の供給量が多く、そのため潤滑油の攪拌抵抗が大きくなりやすいという問題がある。
【0004】
図12に示すように、特許文献1に記載の円すいころ軸受100では、プレス成形された金属製保持器101の内径端面101aと、内輪102の小径側端部102aの外周面102bの隙間を小さくしてラビリンスシールを形成し、流入する潤滑油量の低減を図ることにより、攪拌トルクを低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−69421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の円すいころ軸受100は、軸受への潤滑油流入量の低減を図ることにより攪拌トルクの低減を図っているが、高速回転時にはころ103の回転によりエアーカーテンが発生し、潤滑油の軸受内への進入を妨げるため内輪102の小鍔部外周面102cと保持器101のかしめ部101bとの隙間Aに潤滑油が滞留しやすく、その結果、円すいころ軸受100の攪拌トルクが上昇しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑油の排出効果を高めて軸受内部に滞留する潤滑油量を減少させて、攪拌トルクを低減することができる円すいころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間を周方向に転動可能な複数の円すいころと、前記複数の円すいころを所定の間隔で保持する樹脂製保持器とを備え、油潤滑で使用される円すいころ軸受であって、
保持器柱部は、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きより大きく、軸受内部の潤滑油の排出を促進する円弧部を備えることを特徴とする円すいころ軸受。
(2) 前記円弧部の外径側端部は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする(1)に記載の円すいころ軸受。
(3) 前記保持器の小径環状部は、内周面が前記内輪の小鍔部の外周面に対向してラビリンスシールを構成し、
前記柱部の最内径部は前記小鍔部の外周面よりも内径側に位置していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の円すいころ軸受。
(4) 前記柱部内周面が略直線状に形成され前記柱部内周面の傾きが柱部外周面の傾きと同一に形成された平行部を備え、
前記平行部は、前記円弧部の外径側端部から連続して形成されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の円すいころ軸受。
(5) 前記保持器柱部は前記保持器の小径環状部と大径環状部を連接し、
前記大径環状部の内周面は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の円すいころ軸受。
【発明の効果】
【0009】
本発明の円すいころ軸受によれば、保持器柱部が、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きを大径側における保持器内周面の回転軸に対する傾きより大きい円弧部を備えたことにより、潤滑油が大径側に流れやすくなる。これにより、潤滑油の排出効果が高まり軸受内部に滞留する潤滑油量が減少し、攪拌トルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態である円すいころ軸受の軸方向断面図である。
【図2】図1に示す保持器の全体斜視図である。
【図3】図1に示す保持器の要部斜視図である。
【図4】図1のA−A線矢視図であり、第1実施形態である円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図5】図1に示す保持器における潤滑油の流れ方向を説明する要部断面図である。
【図6】第2実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図7】第3実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図8】第4実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図9】第5実施形態の円すいころ軸受に組み込まれる保持器の断面図である。
【図10】図1のA−A線矢視図であり、第6実施形態の円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図11】第7実施形態の円すいころ軸受の径方向断面図である。
【図12】従来の円すいころ軸受の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る円すいころ軸受の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
まず、図1〜図5を参照して、本発明に係る円すいころ軸受の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の円すいころ軸受1は、外周面に内輪軌道面2aが形成された内輪2と、内周面に外輪軌道面3aが形成された外輪3と、内輪軌道面2aと外輪軌道面3a間を周方向に転動可能な複数の円すいころ4と、複数の円すいころ4を所定の間隔で転動可能に保持する保持器5とを備えている。
【0013】
内輪2は、内輪軌道面2aと、その小径側端部に半径方向外方に突出して形成された小鍔部2bと、大径側端部に半径方向外方に突出して形成された大鍔部2cとを備え、内輪軌道面2aは、内輪2の外周面が小鍔部2bから大鍔部2cに向うに従って、外径が次第に大きくなるように形成されている。
【0014】
外輪3は、外輪軌道面2bが外輪3の内周面に小径側から大径側に向けて内径が次第に大きくなるように形成されている。
【0015】
保持器5は、例えば図2に示すように、小径環状部6と、大径環状部7と、小径環状部6と大径環状部7とを連結して周方向に略等間隔で配置される複数の柱部8とを備え、これら小径環状部6、大径環状部7、および隣接する柱部8とで円すいころ4を保持するポケット9を構成する。
【0016】
保持器5の小径環状部6は、その内周面が内輪2の小鍔部2bと略平行に近接して対向配置され、小径環状部6の内周面6aと小鍔部2bの外周面とによってラビリンスシール部11が形成されている。
【0017】
保持器5の柱部8は、例えば図3、図4に示すように、小径環状部6と大径環状部7とを連接する柱部本体20と、柱部本体20から径方向内側に向けて突出して形成される凸部30を有する。柱部本体20は、円周方向両側面に径方向内方に向けて僅かに幅狭となる側面20bを有し、柱部本体20の内周面からはさらに径方向内方に向けて幅狭となる凸部外径部31と、凸部外径部31から一様の幅で内輪2の小鍔部2bより内径側であって内輪軌道面2a近傍まで延びる凸部内径部32が形成されている。この凸部外径部31と凸部内径部32とから凸部30が構成されている。
なお、保持器5は、凸部外径部31の側面31bがころ案内面となって円すいころ4に当接することにより周方向の位置決めがなされ、回転時には円すいころ4により案内される。
【0018】
柱部8の内周面8a、すなわち凸部内径部32の内周面32aとこの内周面32aから連なる凸部外径部31と柱部本体20の内周面31a、20aは、例えば図5に示すように、円弧状に形成された円弧部40を備えている。
【0019】
円弧部40は、内径側の回転軸Oに対する傾きが外径側の回転軸Oに対する傾きより大きく形成されている。すなわち、凸部内径部32の内周面32aの回転軸Oに対する傾きが、柱部本体20の内周面20aの回転軸Oに対する傾きより大きく形成されている。
【0020】
したがって、隣接する円すいころ4と柱部8の内周面8aと内輪軌道面2aとの径方向距離により定義される断面積は図1に示すように、小径環状部6側の断面積A1より外径環状部7側の断面積A2の方が大きくなっている。
【0021】
保持器5の大径環状部7は、その内周面7aが円すいころのピッチ円直径Pより外径側に位置するように形成され、内輪2の大鍔部2cと大径環状部7の内周面7aとの間には潤滑油排出用の開口が確保されている。
【0022】
保持器5は、樹脂からなり、樹脂材料としては、ポリアミド46やポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェレンサルサイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)などが例示される。また、上記樹脂に、例えば、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状充填材を10〜50wt%程度適宜添加することによって、保持器5の剛性および寸法精度を向上させることができる。なお、保持器は金属により形成してもよいが、合成樹脂により形成することで保持器自体の慣性質量を十分に小さくでき、その分だけ、軸受の軽量化や回転速度の高速化を図ることができる。
【0023】
上記のように構成された円すいころ軸受1では、軸受の回転に伴うポンプ作用によって、潤滑油が内輪2の小鍔部2bと保持器5の小径環状部6の内周面6aとの隙間からラビリンスシール部11を介して軸受内部に流入し、円すいころ軸受1の回転による遠心力により大径環状部7側の開口から流出する。
【0024】
本実施形態の円すいころ軸受1によれば、柱部8の内周面8aに、小径側における回転軸Oに対する傾きが大径側における回転軸Oに対する傾きより大きい円弧状の円弧部40が形成されているので、内輪2の内輪軌道面2aと保持器5の柱部8の内周面8aにより形成される隙間面積が小径環状部側で小さく、大径環状部側で大きくなり、ポンプ効果の影響が強くなる。これにより、軸受内部の潤滑油の排出が促進され、攪拌トルクを低減することができる。
【0025】
更に、図5の矢印で示すように、柱部8の内周面8aは、小径環状部6側から大径環状部7に向って次第に拡径するので、円すいころ軸受1内に滞留する潤滑油は、円すいころ軸受1の回転に伴って生じる遠心力によって内周面8aに案内されて矢印方向の潤滑油の流れが生じ、円すいころ軸受1からの排出が促進される。
【0026】
さらに、保持器5の大径環状部7の内周面7aは円すいころのピッチ円直径Pより外径側に位置するように形成されているので、内輪2の大鍔部2cと大径環状部7の内周面7aとの間には大きな開口面積が確保されている。したがって、潤滑油が軸受空間から外部に流出するための隙間(開口)の面積を大きくとることができ、潤滑油の排出性が向上する。
【0027】
また、本実施形態における円すいころ軸受1においては、小径環状部6の内周面6aと小鍔部2bの外周面とによってラビリンスシール部11が形成されているので、このラビリンスシール部11の隙間を調整することにより円すいころ軸受1内に流入する潤滑油量を調整でき、攪拌トルクを低減することができる。
【0028】
さらに、保持器5の柱部8に設けられた凸部30の体積分だけ円すいころ軸受1の内部空間の体積は狭くなる。これによって軸受1の内部空間の潤滑油量も少なくすることができ攪拌トルクを低減することができる。なお本実施形態において、図1に示すように凸部30の最内径部33は内輪2の小鍔部2bより内径側に位置しているが必ずしも小鍔部2bよりも内径側である必要はなく、ピッチ円直径P上又はピッチ円直径Pより内径側であればよい。
【0029】
<第2実施形態>
第2実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0030】
第2実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Aは、図6に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から、内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0031】
これにより第2実施形態の保持器5Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
<第3実施形態>
第3実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0033】
第3実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Bは、図7に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から、テーパ部60とする。
【0034】
テーパ部60は、その内周面も略直線状に形成され、その内周面の回転軸Oに対する傾きがその外周面の回転軸Oに対する傾きより大きく形成され、柱部本体20の径方向長さ(厚さ)が小径環状部6側から外径環状部7側に向かって小さくなっている。
【0035】
これにより第3実施形態の保持器5Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
<第4実施形態>
第4実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0037】
第4実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Cは、図8に示すように、第1実施形態における保持器5において、凸部外径部31の内周面31aを円弧部40から内周面の傾きが外周面の傾きより大きく形成されたテーパ部60とし、柱部本体20の内周面20aをテーパ部60から内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0038】
これにより第4実施形態の保持器5Cにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第4実施形態の保持器5Cにおいて、柱部本体20の内周面20aを円弧部40又はテーパ部60としても同様の効果を得ることができる。
<第5実施形態>
第5実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0039】
第5実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Dは、図9に示すように、第1実施形態における保持器5において、凸部内径部32の内周面32aを円弧部40から内周面の傾きが外周面の傾きより大きく形成されたテーパ部60とし、柱部本体20の内周面20aを円弧部40から内周面20aの傾きが外周面の傾きと略同一に形成された平行部50とする。
【0040】
これにより第5実施形態の保持器5Dにおいても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第5実施形態の保持器5Dにおいて、柱部本体20の内周面20aを円弧部40又はテーパ部60としても同様の効果を得ることができる。
【0041】
<第6実施形態>
第6実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0042】
第6実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Eは、図10に示すように、第1実施形態における保持器5において、柱部8の円周方向両側面8b、すなわち柱部8を構成する柱部本体20、凸部外径部31及び凸部内径部32の円周方向両側面20b、31b、32bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とする。なお、柱部内周面の形状は第1実施形態と同一である。
【0043】
ここで円すいころ4のピッチ円直径Pの位置における柱部8の周方向側面8bと円すいころ4の周方向の隙間(ポケット隙間)は0.05〜0.4mmであることが望ましい。ポケット隙間が0.05mm以下では円すいころ4が柱部8により拘束される可能性があり、0.4mm以上では回転中に保持器5の振れ回りが大きくなって振動が増大し、トルクが増大する原因となる可能性がある。
【0044】
本実施形態の円すいころ軸受1によれば、第1実施形態の円すいころ軸受の効果に加え、円すいころ軸受1の内部空間の体積がさらに減少し、軸受内部の潤滑油の潤滑油量を減らすことができ、攪拌トルクをさらに低減させることができる。また、ポケット9を構成する柱部8の円周方向両側面8bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とすることで、保持器5と円すいころ4の接触可能な面積が増えるため、円すいころ4にスキューが発生して傾くとすぐに柱部8の側面8bと接触してスキューが矯正され、円すいころのスキューを抑制することができる。したがって、スキューに起因して発生するトルクの変動をも抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態は、第1実施形態に限らず、第2〜第6実施形態の円すいころ軸受にも適用することができる。
【0046】
<第7実施形態>
第7実施形態の円すいころ軸受は、保持器の柱部形状が異なる以外は、本発明の第6実施形態の円すいころ軸受と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0047】
第7実施形態の円すいころ軸受に使用される保持器5Fは、図11に示すように、第6実施形態における保持器5Eにおいて、柱部8の円周方向両側面8bのうち柱部8を構成する柱部本体20及び凸部外径部31の円周方向両側面20b、31bを円すいころ4の形状に沿った円弧形状とし、凸部内径部32の円周方向両側面32bを一様の幅を有するように構成する。
【0048】
これにより、第6実施形態の円すいころ軸受1と同様の効果を得ることができる。さらに、第6実施形態の円すいころ軸受1と比較して、円すいころ4の組込み性が向上する。
【0049】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、本実施形態において保持器として大径環状部7を備えた保持器を例示したが、大径環状部を備えていない、いわゆるくし型保持器であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 円すいころ軸受
2 内輪
2a 内輪軌道面
2b 小鍔部
3 外輪
3a 外輪軌道面
4 円すいころ
5、5A、5B、5C、5D、5E、5F 保持器
6 小径環状部
7 大径環状部
8 柱部
8a 柱部内周面
8b 柱部の周方向側面
9 ポケット
11 ラビリンスシール部
20 柱部本体
20a 柱部本体の内周面
20a 柱部本体の周方向側面
30 凸部
31 外径側凸部
31a 外径側凸部の内周面
31b 外径側凸部の周方向側面
32 内径側凸部
32a 内径側凸部の内周面
32a 外径側凸部の周方向側面
40 円弧部
50 平行部
60 テーパ部
O 回転軸
P ピッチ円すい面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間を周方向に転動可能な複数の円すいころと、前記複数の円すいころを所定の間隔で保持する樹脂製保持器とを備え、油潤滑で使用される円すいころ軸受であって、
保持器柱部は、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きより大きく、軸受内部の潤滑油の排出を促進する円弧部を備えることを特徴とする円すいころ軸受。
【請求項2】
前記円弧部の外径側端部は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記保持器の小径環状部は、内周面が前記内輪の小鍔部の外周面に対向してラビリンスシールを構成し、
前記柱部の最内径部は前記小鍔部の外周面よりも内径側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の円すいころ軸受。
【請求項4】
前記柱部内周面が略直線状に形成され前記柱部内周面の傾きが柱部外周面の傾きと同一に形成された平行部を備え、
前記平行部は、前記円弧部の外径側端部から連続して形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【請求項5】
前記保持器柱部は前記保持器の小径環状部と大径環状部を連接し、
前記大径環状部の内周面は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間を周方向に転動可能な複数の円すいころと、前記複数の円すいころを所定の間隔で保持する樹脂製保持器とを備え、油潤滑で使用される円すいころ軸受であって、
保持器柱部は、小径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きが、大径側における柱部内周面の回転軸に対する傾きより大きく、軸受内部の潤滑油の排出を促進する円弧部を備えることを特徴とする円すいころ軸受。
【請求項2】
前記円弧部の外径側端部は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記保持器の小径環状部は、内周面が前記内輪の小鍔部の外周面に対向してラビリンスシールを構成し、
前記柱部の最内径部は前記小鍔部の外周面よりも内径側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の円すいころ軸受。
【請求項4】
前記柱部内周面が略直線状に形成され前記柱部内周面の傾きが柱部外周面の傾きと同一に形成された平行部を備え、
前記平行部は、前記円弧部の外径側端部から連続して形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【請求項5】
前記保持器柱部は前記保持器の小径環状部と大径環状部を連接し、
前記大径環状部の内周面は、前記円すいころのピッチ円直径より外径側に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−163217(P2012−163217A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129070(P2012−129070)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2008−174508(P2008−174508)の分割
【原出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2008−174508(P2008−174508)の分割
【原出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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