説明

円偏光分離シート、製造方法及び液晶表示装置

【課題】液晶組成物の硬化物の層が均一に設けられ、表面のハジキ、バースジなどの欠陥が少なく、且つ簡便に製造することができる円偏光分離シート、その製造方法、並びにそれを有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】基材の表面に設けられた変性ポリアミドを含む配向膜を設け、前記配向膜上にコレステリック規則性を有する樹脂層を設けてなる円偏光分離シートにおいて、基材の、前記配向膜が設けられる側の面の表面張力が23℃において35〜60mN/mであることを特徴とする円偏光分離シート;前記組成物を用いた製造方法;並びに前記円偏光分離シートを有する液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光分離シート、その製造方法、及び当該円偏光分離シートを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などのディスプレイ装置において、その輝度を向上させるため等の目的で、特定の円偏光を透過し他の光を反射する円偏光分離シートを設けることが知られている。かかる円偏光分離シートの主なものとしては、基材に配向膜を設け、当該配向膜上に液晶性化合物を含む組成物(以下において単に「液晶組成物」ということがある。)を展開して塗膜を設け、均一に配向させ、さらに必要に応じて重合度の勾配を設ける等の広帯域化処理をし、最後に塗膜を硬化させ、コレステリック規則性を有する重合体の構造を有し円偏光分離能を示す樹脂層を形成することにより得られるものが知られている。
【0003】
そのような円偏光分離シートの調製においては、光学的な精度の高いものを得るべく、各工程に高い精密度が求められる。特に、液晶組成物液を配向膜上に均一に展開させ配向させることは重要である。液晶組成物の展開及び配向が不均一であると、円偏光分離シート上に配向欠陥が発生したり、曇りが生じるなどし、所望の精密な円偏光分離能が得られなくなる。
【0004】
特許文献1には、液晶層を含む光学リターデーション板の製造において、ピンホールなどの欠陥を防止することを目的として、特定の接触角を有する溶剤からなる添加剤を添加した液晶層を設けることが記載されている。しかしながら、特許文献1においては、液晶層においてハジキ、バースジ等が生じることを防止して、液晶層の全体的な概観を向上させることについては特に記載されておらず、そのような問題の解決策を何ら提示していない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−287407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液晶組成物の硬化物の層が均一に設けられ、表面のハジキ、バースジなどの欠陥が少なく、且つ簡便に製造することができる円偏光分離シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、高く均質な輝度を有する液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記目的に鑑み鋭意検討した結果、上記のように基材、配向膜及びコレステリック樹脂層をこの順に有する円偏光分離シートの製造にあたり、意外にも、樹脂層に直接接触しない基材の表面張力が、配向膜を介して設けられたコレステリック樹脂層の配向性に大きく影響することを見出した。本願発明者はさらに、基材の表面張力を所定範囲とすることにより、上記課題を解決しうることをも見出し、本願を発明するに到った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下のものが提供される。
【0009】
〔1〕 基材の表面に変性ポリアミドを含む配向膜を設け、前記配向膜上にコレステリック規則性を有する樹脂層を設けてなる円偏光分離シートにおいて、基材の、前記配向膜が設けられる側の面の表面張力が23℃において35〜60mN/mであることを特徴とする円偏光分離シート。
〔2〕 前記配向膜が、配向膜組成物液を前記基材に塗布して塗膜を得、前記塗膜を乾燥させてなる配向膜であり、前記配向膜組成物液の表面張力が23℃において22〜31mN/mであることを特徴とする前記円偏光分離シート。
〔3〕 前記基材が、脂環式構造を有する樹脂を表層に有する単層又は多層のフィルムであることを特徴とする前記円偏光分離シート。
〔4〕 前記円偏光分離シートの製造方法であって、シート状の前記基材の表面に前記配向膜を設け、前記配向膜の表面をラビング処理し、前記配向膜の表面に、コレステリック規則性を有する樹脂層を形成しうる重合性組成物液を展開し塗膜を設け、前記塗膜を硬化させ、前記コレステリック規則性を有する樹脂層を設ける工程を含む製造方法。
〔5〕 前記円偏光分離シートを有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の円偏光分離シートにおいては、液晶組成物の硬化物の層が配向膜上に均一に設けられ、表面のハジキ、バースジなどの欠陥が少なく、且つ簡便に製造することができる。
本発明の円偏光分離シートの製造方法では、液晶組成物の硬化物の層が配向膜上に均一に設けられ、表面のハジキ、バースジなどの欠陥が少ない円偏光分離シートを簡便に製造することができる。
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の円偏光分離シートを有するため、高く均質な輝度を有し且つ製造コストが安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(基材)
本発明の円偏光分離シートは、基材を有する。前記基材は、透明樹脂材料からなる、シート状の、透明樹脂フィルムであることが好ましい。
【0012】
本発明に用いる基材においては、配向膜が設けられる側の面の表面張力が、23℃において35〜60mN/mである。基材の表面をこのような特定の表面張力とする方法は特に限定されないが、基材の面上に、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理を施すことにより行うことができる。または、基材の材料として、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等の樹脂を適宜選択することにより、表面処理を特に施さなくても上記範囲内の表面張力とすることができる場合もある。
【0013】
前記プラズマ放電処理、コロナ放電処理の条件は、特に限定されないが、簡便に基材表面の表面張力を上げる方法として、大気圧プラズマ放電処理、コロナ放電処理が好ましく用いられる。処理方法としては、市販のコンベヤ型処理装置を使用し、大気圧下、空気中で出力0.1kW〜0.5kWでラインスピード5m/min以上で処理することで、35〜60mN/mの範囲の表面張力にすることができる。
【0014】
本発明に用いる基材は、配向膜が設けられる側の面に、接着層(下塗り層)を有していてもよい。このような接着層を設けることにより、基材フィルムと配向膜との密着性を高めることができる。
【0015】
本発明に用いる基材の材料として前記透明樹脂を用いる場合、当該透明樹脂としては、JIS K7361−1に基づいて、両面平滑な2mm厚の板で測定した全光線透過率が70%以上の樹脂を好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、芳香族ビニル単量体と低級アルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、芳香族ビニル単量体と低級アルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリカーボネート、アクリル樹脂、および脂環式構造を有する樹脂などを挙げることができ、脂環式構造を有する樹脂であることが特に好ましい。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸のことである。
【0016】
脂環式構造を有する樹脂は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する非晶性の樹脂であり、主鎖中に脂環式構造を有する樹脂及び側鎖に脂環式構造を有する樹脂のいずれも用いることができる。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは6〜15個である。
【0017】
脂環式構造を有する樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位が過度に少ないと、フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
【0018】
脂環式構造を有する樹脂は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
【0019】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。上記の脂環式構造を有する重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0020】
本発明に好適な透明樹脂は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある樹脂材料からなる透明樹脂フィルムは、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0021】
本発明に好適な透明樹脂の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂材料が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0022】
本発明に好適な透明樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0023】
本発明に好適な透明樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。オリゴマ一成分の量が前記範囲内にあると、表面に微細な凸部が発生しづらくなり、厚みむらが小さくなり面精度が向上する。オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択、重合、水素化等の反応条件、樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件、等を最適化すればよい。オリゴマーの成分量は、前述のGPCによって測定することができる。
【0024】
本発明に用いる基材として、脂環式構造を有する樹脂を表層に有する単層又は多層のフィルムであることが好ましい。脂環式構造を有する樹脂を表層に有する単層又は多層のフィルムを用いることにより、コロナ処理等の表面処理で、変性ポリアミドを含む配向膜との密着性を容易に確保することができる。基材が脂環式構造を有する樹脂を表層に有する多層フィルムで有る場合は、表層が脂環式構造を有する樹脂を有する構成であればよく、他の層に用いる樹脂は特に制限されず、前記透明樹脂の中から適宜選択すればよい。本発明において、基材として脂環式構造を有する樹脂を表層に有する単層又は多層のフィルムを用いる場合は、配向膜が設けられる面が脂環式構造を有する樹脂の層であるようにする。
本発明に用いる基材の平均厚みは、通常1〜1000μmであり、5〜300μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。
【0025】
(配向膜)
本発明の円偏光分離シートは、前記基材の表面に配向膜を設ける。前記配向膜は、変性ポリアミドを含む。
【0026】
変性ポリアミドは、ポリアミドの構造中の少なくとも一部を変性してなるものである。
前記変性ポリアミドとしては、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものを挙げることができ、脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体的には例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたものを挙げることができる。当該変性としては、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性を挙げることができる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。前記変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜200000とすることができる。
【0027】
本発明において、配向膜は、ポリマーとして前記変性ポリアミドのみを含んでいてもよいが、任意に他のポリマーを含んでいてもよい。当該他のポリマーとしては、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレン、これらの変性物、前記変性ポリアミド以外のポリアミド、及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0028】
前記配向膜は、必要に応じてコロナ放電処理等を施した前記シート状基材上に、配向膜組成物液を塗布して塗膜を得、さらに前記塗膜を乾燥させることにより形成することができる。
【0029】
前記配向膜組成物液は、前記変性ポリアミドを含む。また任意に前記他のポリマーを含むことができる。さらに、前記配向膜組成物液は、前記のポリマー等の固形分に加えて、溶媒を含むことができる。かかる溶媒としては例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール等のアルコール;ホルムアミド、グリセロール、ピリジン、酢酸;並びにこれらの混合物を用いることができる。
【0030】
前記配向膜組成物液は、その表面張力が22〜31mN/mであることが、より均質なコレステリック樹脂層を得る上で好ましい。配向膜組成物液の表面張力をこのような特定の範囲内とする方法は特に限定されないが、前記アルコールの中でメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコールを70重量%以上含む溶剤組成で、固形分率1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%に調整することで行うことができる。
【0031】
また、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどを配向膜組成物液の固形分に対して、0.1〜5重量%添加、もしくは陰イオン性界面活性剤としてアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩などを配向膜組成物液の固形分に対して、0.05〜3重量%添加することで、表面張力を上記範囲に調整することができる。
【0032】
配向膜組成物液の表面張力の測定は、例えば表面張力計を使用し、定量液滴を作製し、懸滴法を用いて式Iにより解析することで算出することができる。ここで液滴径de及びdsは、図1に示すとおり細管11から懸滴させた液滴12を計測することにより求めることができる。
γL=g・ρ・(de)2-1 式I
γL:液晶組成物の表面張力
g:重力加速度
ρ:液密度
de:最大液滴径
H-1:ds/deから求められる補正項
ds:液下端de上がった位置での径
【0033】
前記配向膜組成物液の塗布の工程は、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の方法を用いて行うことができ、適宜乾燥させ溶媒を揮発することにより行うことができる。乾燥の条件は、例えば温度80〜150℃の範囲、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃の範囲で行うことができる。
【0034】
形成された配向膜には、必要に応じてラビング処理を施した後、後述するコレステリック樹脂層の形成に供することができる。配向膜の平均厚みは、所望する樹脂層の配向均一性が得られる厚みであれば特に制限されないが、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜2μmであることがさらに好ましい。
【0035】
本発明に用いる配向膜自体の表面張力は、特に限定されないが、23℃における表面張力として好ましくは34〜45mN/m、さらに好ましくは35〜40mN/mとすることができる。配向膜の表面張力をこのような特定範囲とするには、配向膜に使用する主ポリマーの表面張力が上記範囲にある材料を選択すること、配向膜に使用するポリマーに表面張力の異なる複数種類のポリマーを選択し、適当な混合率で混合し、上記範囲内に設計することなどの手段を取りうる。また、配向膜の表面張力の測定は、例えば、表面張力計、接触角計を使用し、測定試料液として純水A3(JIS K0557)を使用して液滴を作製し、配向膜サンプル表面上に着滴させて測定することができる。
接触角計を用いて、液滴と配向膜表面の接触角を測定した場合、式IIの経験式を用いて表面張力を算出することができる。
cosθ=0.0467・γS−1.508 式II
θ:純水の接触角(degree)、γSは配向膜の表面張力(mN/m)である。
【0036】
(コレステリック樹脂層)
本発明の円偏光シートは、前記配向膜上に液晶性化合物を含む組成物を硬化してなる、コレステリック規則性を有する樹脂層(本明細書において単に「コレステリック樹脂層」と言うことがある。)を設けてなる。液晶組成物は通常液体とすることができ、これを配向膜表面に展開し塗膜を設け、これを後に詳述する手法にて硬化させることで、コレステリック樹脂層を得ることができる。
【0037】
液晶組成物に含まれる液晶性化合物としては、コレステリック液晶相を呈しうる棒状液晶性化合物、及びネマチック液晶相を呈しうる化合物であって、カイラル剤等の他の成分とともに配合することによりコレステリック液晶相を呈しうる棒状液晶性化合物を用いることができる。
【0038】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、1分子あたり好ましくは1つ以上、より好ましくは2つ以上の反応性基を有するものが好ましい。前記反応性基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの反応性基を有することにより、液晶組成物を硬化させた際に、安定した硬化物を得ることができる。液晶性化合物1分子あたり反応性基が1つ未満の場合、液晶組成物を硬化させた際に、架橋した硬化物が得られないため実用に耐えうる膜強度が得られない場合があり好ましくない。後述する架橋剤を使用した場合でも、膜強度が不足してしまう場合がある。実用に耐えうる膜強度とは鉛筆硬度(JIS K5400)でB以上、好ましくはHB以上である。膜強度がBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠けてしまう。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0039】
前記棒状液晶性化合物としては、(式1)で表される化合物を挙げることができる。
3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 (式1)
(式中、R3及びR4は反応性基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D3及びD4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C3〜C6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又はハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
【0040】
本発明において、該棒状液晶性化合物は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(1)において、メソゲン基Mを中心としてR3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4が異なる構造のことをいう。該棒状液晶性化合物として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0041】
本発明において、前記棒状液晶性化合物は、そのΔn値が好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを与えることができる。
【0042】
本発明に用いる液晶組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、液晶組成物を塗布して得た液晶層の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
【0043】
前記架橋剤の配合割合は、液晶組成物を硬化して得られるコレステリック樹脂層中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0044】
本発明に用いる液晶組成物は、任意に光開始剤を含有することができる。当該光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイル)]オキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、所望する物性に応じて2種以上の化合物を混合することができ、必要に応じて公知の光増感剤や重合促進剤としての三級アミン化合物を添加して硬化性をコントロールすることもできる。
【0045】
該光重合開始剤の配合割合は、液晶組成物中0.03〜7重量%であることが好ましい。該光開始剤の配合量が0.03重量%より少ないと重合度が低くなってしまい膜強度が低下してしまう場合があるため好ましくない。逆に7重量%より多いと、液晶の配向を阻害してしまい液晶相が不安定になってしまう場合があるため好ましくない。
【0046】
本発明に用いる液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、ジェムコ社製EF−121、EF−122A、EF−122B、EF−122C、大日本インキ化学工業製メガファック F−472SF、F−480SF、F−178RM、ESM−1、セイミケミカル社のサーフロンKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合は液晶組成物を硬化して得られるコレステリック液晶層中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じたり、組成物液の表面張力が高くなり組成物液の塗布層を設けた際に塗面にハジキが見られる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、液晶分子の配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0047】
本発明に用いる液晶組成物は、通常液体とすることができ、溶媒を含むことができる。前記溶媒としては、具体的には例えば、23℃におけるその表面張力が23〜35mN/m、好ましくは24〜33mN/mである液体を用いることができる。溶媒の種類としては、具体的には例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。液晶組成物における溶媒の配合割合は、30重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜80重量%とすることができる。
【0048】
本発明に用いる液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有することができる。当該他の任意成分としては、カイラル剤、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0049】
本発明に用いる液晶組成物の調製方法は、特に限定されず、上記必須成分及び任意成分を混合することにより製造することができる。
【0050】
本発明においては、前記配向膜と、前記液晶組成物との23℃における界面張力γSL(mN/m)が、8〜22、好ましくは9〜15であることが好ましい。界面張力γSLの値は、配向膜の表面張力及び液晶組成物の表面張力に基づいて計算することができる。界面張力γSLの値を前記範囲とする方法は、特に限定されないが、例えば液晶組成物における溶媒及び界面活性剤の種類及び含有割合を適宜選択し、液晶組成物の表面張力を調整することにより行うことができる。
【0051】
液晶組成物の表面張力の測定は、例えば前述の配向膜組成物液の表面張力の測定と同様に、表面張力計を使用し、定量液滴を作製し、懸滴法を用いて式IIにより解析することで算出することができる。
【0052】
前記液晶組成物を前記配向膜の表面に展開し塗布層を設け、当該塗布層を硬化させることにより、前記コレステリック樹脂層を得ることができる。前記液晶組成物の展開は、リバースグラビアコーティング、ダイレクトグラビアコーティング、ダイコーティング、バーコーティング等の公知の塗布方法により行うことができる。液晶組成物の塗布層の厚さは、後述する所望のコレステリック樹脂層の乾燥膜厚が得られるよう、適宜調整することができる。
【0053】
前記展開により得られた塗布層を硬化する前に、必要に応じて、配向処理を施すことができる。配向処理は、例えば塗布層を50〜150℃で0.5〜10分間加温することにより行うことができる。当該配向処理を施すことにより、液晶性化合物を良好に配向させることができる。
【0054】
必要に応じて配向処理を施した後、塗布層を硬化させることにより、コレステリック樹脂層を有する円偏光分離シートを得ることができる。前記硬化の工程は、1回以上の加温及び/又は光照射により行うことができる。加温条件は、具体的には例えば、温度40〜140℃、時間は1秒〜3分とすることができる。本発明において光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、具体的には例えば波長200〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。また、例えば0.01〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返し、反射帯域の広い円偏光分離シートとすることもできる。
【0055】
本発明において、配向膜表面への液晶組成物の展開及び硬化の工程は、1回に限られず、展開及び硬化を複数回繰り返し2層以上のコレステリック樹脂層を形成することもできる。ただし本発明においては、1回のみの液晶組成物の展開及び硬化によっても、良好に配向し、反射帯域幅の広い液晶性化合物を含むコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0056】
本発明の円偏光分離シートにおいて、コレステリック樹脂層の乾燥膜厚は好ましくは3.0μm〜9.0μm、より好ましくは3.0〜7.0、特に好ましくは3.5〜6.5μmとすることができる。コレステリック樹脂層の乾燥膜厚が3.0μmより薄いと反射率が低下してしまい、逆に7.0μmより厚いと、コレステリック樹脂層に対して斜め方向から観察した時に着色してしまうため、それぞれ好ましくない。
【0057】
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の円偏光分離シートを有する。本発明の液晶表示装置は、具体的には例えば、バックライトと液晶セルとの間に、1/4λ板と、本発明の円偏光分離シートとを組み合わせてなる輝度向上シートを備える液晶表示装置とすることができる。より具体的には、液晶表示装置のバックライトと液晶セルとの間において、1/4λ板よりもバックライト側になるよう本発明の円偏光分離シートを配置し、輝度向上を達成することができる。本発明の液晶表示装置において、円偏光分離シートは1枚のみを用いても良いが、反射帯域が異なる複数の円偏光分離シートを貼付したものを用い、より広い波長帯域における選択反射を達成することもできる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
下記実施例及び比較例において、諸物性の測定は、下記の通り行った:
(A)基材の表面張力
協和界面科学(株)製Drop Master DM500を使用し、基材をテーブルにセットし、表面張力測定用液として純水A3を使用し、液滴法により接触角測定を行った。測定した接触角を上記式IIに代入することで、基材の表面張力を求めた。
(B)配向膜組成物液の表面張力
協和界面科学(株)製Drop Master DM500を使用し、後述した手順にて作製した配向膜組成物液を表面張力測定用液として使用し、懸滴法により上記式Iを用いて配向膜組成物液の表面張力を求めた。
(C)円偏光分離シートの最低透過率
後述した方法で作製した円偏光分離シートに大塚電子(株)製MCPD−3000にて平行光を照射し、波長400nm〜800nm範囲の透過率を測定した。
【0060】
<実施例1>
(1−1:配向膜を有する基材の調製)
厚さ100μm、幅50mm、長さ200mmノルボルネン樹脂フィルム(ゼオノアフィルムZF14−100、株式会社オプテス製)の片面に、春日電機(株)製コンベヤー式コロナ放電表面処置を用いて、出力0.16kW、ラインスピード5m/min、フィルム/処理電極間距離10mmにてコロナ放電処理を施した。
このコロナ放電処理面に、表1に示す組成を有するポリマー及び溶剤を、ポリマー/溶剤=3/97の重量比で混合して得た配向膜材料を、#4バーにて塗布し、120℃で5分間乾燥し、膜厚0.2μmの乾膜を作製した。該乾膜を一方向にラビング処理することで、配向膜を有する基材を得た。得られた配向膜の表面張力を、測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
(1−2:液晶組成物液の調製)
コレステリック樹脂層を形成するための液として、下記組成の液晶組成物液を調製した:
液晶性化合物(Δn(=ne−no)=0.18を有する棒状液晶性化合物)、93.0重量部
光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 IRG907)3.1重量部
界面活性剤(セイミケミカル(株)製 KH−40)0.11重量部
カイラル剤(BASF社製 LC756)6.7重量部
溶剤:メチルエチルケトン/シクロペンタノン=75/25(固形分率(液晶組成物中における液晶性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、カイラル剤の重量分率)40重量%となるよう添加)
【0062】
(1−3:円偏光分離シートの製造及び評価)
(1−1)で得た配向膜を有する基材の配向膜上に、(1−2)で得た液晶組成物液を、ワイヤーバー#6を用いて塗布し、100℃にて5分間、塗布膜を乾燥および配向熟成させた後、基材側より70mJ/cm2(UV−A)の紫外線を照射し、100℃にて1〜5分間保持し、次いで紫外線を照射して塗布膜を完全に硬化させて、膜厚3μmのコレステリック樹脂層を得た。
得られた円偏光分離シートの400nm〜800nmの光線透過率を測定したところ、円偏光分離シートの反射帯域幅内の最低光線透過率は、54.0%であった。また、選択反射中心波長は490nmであった。
【0063】
さらに、コレステリック樹脂層外観を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
○:目視にて樹脂層にギラツキ、バースジが見られないもの
×:目視にて樹脂層にギラツキ、バースジが見られるもの
【0064】
<実施例2>
基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー100T60、東レ社製)を用い、コロナ処理を行わなかった他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0065】
<実施例3>
基材として下記製法により調製した積層体1を用い、コロナ処理を行わなかった他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0066】
(積層体1の製造方法)
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得、これを積層体1として用いた。
【0067】
<実施例4>
基材として上記積層体1を用い、出力を0.1kWでコロナ処理を行った他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0068】
<実施例5>
配向膜組成物液の組成を表1に示す通り変更した他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0069】
<実施例6>
基材として下記製法により調製した積層体2を用い、出力0.1kWでコロナ処理を行った他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0070】
(積層体2の製造方法)
透明樹脂材料としてノルボルネン系樹脂(ゼオノア1020、日本ゼオン株式会社製、Tg=105℃)(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を用い、温度280度で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が50/200/50(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。
【0071】
<比較例1>
コロナ処理を行わなかった他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
【0072】
<比較例2>
コロナ処理条件で出力を1.0kWに変更した他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択反射中心波長は490nmであった。
<比較例3>
コロナ処理を行わなかった他は実施例6と同様に操作し、円偏光分離シートを製造し、その諸物性を評価した。結果を表1に示す。選択中心波長は490nmであった。
【0073】
【表1】

【0074】
表1中の略称、商品名等は、それぞれ以下のものを示す。
FR105:株式会社鉛市製 メトキシメチル化ナイロン
CM4000:東レ株式会社製 共重合ポリアミド
全実施例及び比較例において、配向膜組成物液中のポリマーと溶剤の重量比は、ポリマー/溶剤=3/97とした。
【0075】
表1に示す結果より、本発明の円偏光分離シートの製造に際しては、ギラツキ、バースジなどの発生なく良好に液晶組成物液が展開され、外観及び光線透過率が良好な円偏光分離シートが得られたことが分かる。
【0076】
<実施例6>
(円偏光分離素子)
重合性液晶性化合物93.0重量部を95.2重量部に、カイラル剤6.7重量部を4.8重量部に変更した他は、実施例1同様に円偏光分離シート(以下、「円偏光分離シート6」という。)を得た。円偏光分離シート6の光学特性を測定したところ、最低光線透過率は53.8%であり、選択反射中心波長は630nmであった。
【0077】
円偏光分離シート6のコレステリック樹脂層側と、実施例1で作製した円偏光分離シート(以下、「円偏光分離シート1」という。)の基材側とを貼り合せ、2層のコレステリック樹脂層を有する複合円偏光分離シートを作成した。
【0078】
<位相差補償素子積層板(兼λ/4板)>
実施例3で得た積層体を延伸温度128℃、延伸倍率1.4倍、延伸速度10m/分でテンター一軸延伸し、延伸複層フィルム(位相差補償素子)を得た。さらにこの位相差補償素子の片面を、濡れ指数が56dyne/cmになるように春日電機(株)製コンベヤー式コロナ放電表面処置を用いて、出力0.12kW、ラインスピード5m/min、フィルム/処理電極間距離10mmにてコロナ処理を施した。
得られた位相差補償素子の波長550nmにおけるレターデーション値は、厚み方向のレターデーションRthは−118nm、面内方向のレターデーションReは140nmであった。
該複合円偏光分離シートのコレステリック樹脂層側に前記位相差補償素子をエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンにて形成される接着層を介して貼り合わせ、位相差補償素子積層板(兼λ/4板)を得た。
前記位相差補償素子積層板(兼λ/4板)を、前記複合円偏光分離シートのコレステリック樹脂層側に、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンにて形成される接着層を介して貼り合わせ、積層シートを得た。
【0079】
市販の液晶テレビ(シャープ(株)製 AQUOS 37インチ)を解体し、液晶セルとバックライトの間の輝度向上フィルムを取り出し、代わりに上で得た積層シートを、円偏光分離シート側をバックライト側として組み込み、液晶表示装置を得た。この液晶表示装置を白表示モードとして、出光面側から観察したところ、表示面全面にわたって着色がなく、明るく良好な白表示が確認できた。
【0080】
<比較例3>
実施例1で作製した円偏光分離シートの代わりに比較例1で作製した円偏光分離シートを使用した他は、実施例6と同様に操作し、液晶表示装置を作成し、同様の観察を行ったところ、全面に渡って、ギラツキの発生により、実施例6の場合に比べて白表示が暗くなっているのが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、懸滴法による液晶組成物の表面張力の測定を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0082】
11:細管
12:液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に変性ポリアミドを含む配向膜を設け、
前記配向膜上にコレステリック規則性を有する樹脂層を設けてなる円偏光分離シートにおいて、
基材の、前記配向膜が設けられる側の面の表面張力が23℃において35〜60mN/mであることを特徴とする円偏光分離シート。
【請求項2】
前記配向膜が、配向膜組成物液を前記基材に塗布して塗膜を得、前記塗膜を乾燥させてなる配向膜であり、
前記配向膜組成物液の表面張力が23℃において22〜31mN/mであることを特徴とする請求項1記載の円偏光分離シート。
【請求項3】
前記基材が、脂環式構造を有する樹脂を表層に有する単層又は多層のフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の円偏光分離シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の円偏光分離シートの製造方法であって、
シート状の前記基材の表面に前記配向膜を設け、
前記配向膜の表面をラビング処理し、
前記配向膜の表面に、コレステリック規則性を有する樹脂層を形成しうる重合性組成物液を展開し塗膜を設け、
前記塗膜を硬化させ、前記コレステリック規則性を有する樹脂層を設ける工程を含む製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の円偏光分離シートを有する液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−242094(P2008−242094A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82884(P2007−82884)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】