説明

円盤状基板の製造方法および研磨液供給装置

【課題】研磨液を供給するために研磨剤を流通させる樋を使用する場合でも、研磨液の流通に阻害が生じにくく、安定的に研磨を行なうことができる円盤状基板の製造方法等を提供する。
【解決手段】ガラス基板の主表面を研削する研削工程と、研削工程を経たガラス基板を研磨液を用いて研磨する研磨工程とを有する円盤状基板の製造方法であって、研磨工程に用いられる研磨機50は、研磨液槽101から樋104を介してガラス基板に対して研磨液を供給されるとともに樋104の内面が撥水性被材によって被覆されていることを特徴とする円盤状基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁気記録媒体用ガラス基板などの円盤状基板の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録メディアとしての需要の高まりを受け、磁気ディスク等の情報記録媒体の製造が活発化している。ここで磁気ディスク用の基板として用いられる円盤状基板としては、アルミ基板とガラス基板とが広く用いられている。このアルミ基板は加工性も高く安価である点に特長があり、一方のガラス基板は強度、表面の平滑性、平坦性に優れている点に特長がある。特に最近ではディスク基板の小型化と高密度化の要求が著しく高くなり、基板の表面の粗さが小さく高密度化を図ることが可能なガラス基板の注目度が高まっている。
【0003】
特許文献1には、被研磨物を狭持する上定盤及び下定盤と、下定盤を支持する下定盤支持部と、上定盤及び下定盤との間に研磨液を供給する研磨液供給部とを備え、太陽歯車が、下定盤の中央に形成された孔から突出する遊星歯車方式の研磨装置において、下定盤の中心側と太陽歯車の上面の少なくとも一方に滞留した研磨液を外部に排出する排出手段を設けた構成とした磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が開示されている。
また特許文献2には、中心部に円孔を有する磁気記録媒体用基板は複数枚重ねて保持され、その円孔を形成する基板の内周端面をまとめて研磨するように、重ねられた複数枚の基板により少なくとも部分的に区画形成された中央孔に共通の研磨ブラシが挿入される。そして研磨ブラシが基板の内周端面に接触させられつつ相対運動させられるとき、中央孔にはその鉛直方向下方からその上方に向けて研磨液が流れるように、研磨液供給手段によって研磨液が供給される磁気記録媒体用基板の研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6423号公報
【特許文献2】特開2009−226570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで研磨装置によりガラス基板等の円盤状基板の研磨を行う際に、研磨液を供給するため研磨剤を流通させる樋を使用する場合がある。ところが、この樋に研磨液に含まれる研磨剤が付着し、そのため研磨液の流通を阻害し、安定的に研磨を行なうことができなくなる場合があった。
本発明は、研磨液を供給するために研磨剤を流通させる樋を使用する場合でも、研磨液の流通に阻害が生じにくく、安定的に研磨を行なうことができる円盤状基板の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の円盤状基板の製造方法は、円盤状基板の主表面を研削する研削工程と、研削工程を経た円盤状基板を研磨液を用いて研磨する研磨工程とを有する円盤状基板の製造方法であって、研磨工程に用いられる研磨装置は、研磨液貯留手段から樋を介して円盤状基板に対して研磨液を供給されるとともに、樋の内面が撥水性被材によって被覆されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、撥水性被材は、樋の側面を被覆することが好ましく、表面が撥水性を有するフィルムからなることが更に好ましい。また樋は、研磨装置の外周に沿って環状に配され、研磨装置に連動して回転動作することが好ましい。
【0008】
また、本発明の研磨液供給装置は、円盤状基板の製造において円盤状基板を研磨する研磨装置に使用する研磨液を供給する研磨液供給装置であって、研磨液を調製するとともに、研磨液を貯留する研磨液貯留手段と、研磨液貯留手段により貯留された研磨液を研磨装置に供給するため研磨装置に連動して回転動作する樋と、を備え、樋は、内面が撥水性被材によって被覆されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、撥水性被材は、一方の面が撥水性とされ、他方の面が樋と接着するために粘着性とされたフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、研磨液を供給するために研磨剤を流通させる樋を使用する場合でも、研磨液の流通に阻害が生じにくく、安定的に研磨を行なうことができる円盤状基板の製造方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図1−2】(d)〜(f)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図1−3】(g)〜(i)は、本実施の形態が適用される円盤状基板(ディスク基板)の製造工程を示した図である。
【図2】研削機の構造を説明した図である。
【図3】保持具を更に詳しく説明した図である。
【図4】内周研磨工程において使用するブラシの一例を示した図である。
【図5】本実施の形態における研磨液供給装置について説明した図である。
【図6】(a)〜(b)は、樋の内面に被覆する撥水性被材の形態について説明した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1−1(a)〜(c)、図1−2(d)〜(f)、図1−3(g)〜(i)は、本実施の形態が適用される円盤状基板の製造工程を示した図である。
【0013】
(1次ラップ工程)
図1−1(a)は1次ラップ工程を示している。この工程でまず、研削機(研削装置、ラッピングマシン)40により1回目の研削(ラッピング)を行い、円盤状基板の一例としてのガラス基板(ワーク)10の表面11を平滑に研削する。
ここで図2は、研削機40の構造を説明した図である。
図2に示した研削機40は、ガラス基板10を載置する下定盤21aと、ガラス基板10を上部から押えつけ研削を行うために必要な圧力を加えるための上定盤21bとを備えている。
ここで、下定盤21aの外周部には歯部42が設けられ、下定盤21aの中央部には太陽歯車44が設けられている。さらに下定盤21aには、研削が行われる際にガラス基板10を位置決めする円盤状の保持具(キャリア)30が設置されている。
保持具30は、図2に示す研削機40では、5個設置されている。保持具30の外周部には歯部32が備えられ、下定盤21aの歯部42および太陽歯車44の双方に噛合している。また下定盤21aおよび上定盤21bには、これらを回転させるための回転軸46a,46bがそれぞれ中心部に設置されている。
【0014】
この1次ラップ工程においては、まず研削機40の下定盤21aに保持具30を利用してガラス基板10の載置を行う。
図3は、保持具30を更に詳しく説明した図である。図3に示した保持具30には、上述の通り、外周部に歯部32が備えられている。また、研削を行う際にガラス基板10が内部に載置される円形形状の孔部34が複数開けられている。この孔部34の直径は、ガラス基板10の直径よりわずかに大きく開けられる。このようにすることで、研削を行う際にガラス基板10の外周端の一部に余分な応力がかかるのを抑制することができるため、ガラス基板10の外周端が損傷しにくくなる。本実施の形態において、孔部34の直径はガラス基板10の直径より、例えば、約1mm大きくなっている。また孔部34は、ほぼ等間隔で並んでおり、本実施の形態の場合、孔部34は、例えば、35個開けられている。
【0015】
保持具30の材料としては、例えば、アラミド繊維やガラス繊維を混入することで強化されたエポキシ樹脂を使用することができる。また保持具30の厚さは、本工程において、研削を行う際に、上定盤21bに接触し、研削を阻害しないために、本工程におけるガラス基板10の仕上げ厚さより薄く作成されている。例えば、ガラス基板10の仕上げ厚さが1mmであるとすると、保持具30の厚さは、それより0.2mm〜0.6mm薄くなっている。
【0016】
保持具30の孔部34にガラス基板10を載置した後は、上定盤21bをガラス基板10に接触するまで移動させ、研削機40を稼働させる。
この際の研削機40の動作を図2を用いて説明する。研削機40を稼働する際には、図の上方の回転軸46bを一方向に回転させ、上定盤21bを、同様な一方向に回転させる。また、図の下方の回転軸46aを、回転軸46bの回転とは逆方向に回転させ、下定盤21aを回転軸46aと同様な方向に回転させる。これにより下定盤21aの歯部42も回転軸46aと同様な方向に回転する。また中央部の太陽歯車44も、回転軸46aと同様な方向に回転する。
このように上定盤21b、下定盤21a、太陽歯車44を回転させることにより、これらの歯車に噛み合う保持具30は自転運動と、公転運動が組み合わされたいわゆる遊星運動を行う。同様に、保持具30にはめ込まれたガラス基板10も遊星運動を行う。このようにすることによりガラス基板10の研削をより精度よく、また迅速に行うことができる。
【0017】
本実施の形態において、研削は、研削剤を用いて行うことができる。研削剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナやダイヤモンドからなる研削剤をスラリー化して使用することができる。または、上定盤21bや下定盤21aにこれらの研削剤が分散して含んだ砥石を使用してもよい。
【0018】
(内外周研削工程)
図1−1(b)は内外周研削工程を示している。この工程では、ガラス基板10の開孔12の内周面および外周13の外周面の荒削りである研削を行う。また本実施の形態では、内周面と外周面の研削を同時に行う。具体的には、ガラス基板10の中心に設けられた開孔12を内周砥石22によって研削し、ガラス基板10の外周13を外周砥石23によって研削する。このとき、内周砥石22と外周砥石23でガラス基板10の内周面と外周面を挟み込んで同時加工する。これにより内径と外径の同心度を確保し易くすることができる。
本実施の形態において、内周砥石22および外周砥石23は、波状の表面を有している。そのため、ガラス基板10の開孔12の内周面および外周13の外周面を研削することができるだけでなく、開孔12および外周13における縁部の面取りを併せて行うことが可能となる。
【0019】
(内周研磨工程)
図1−1(c)は内周研磨工程を示している。この工程では、図1−1(b)に示した内外周研削工程において、荒削りである研削を行ったガラス基板10の開孔12の内周面を更に平滑にする研磨を行う。
具体的には、まずガラス基板10を積層し、図示しないホルダにセットする。そして、このホルダにセットされたガラス基板10の開孔12の中心にブラシ24を挿入する。そして研磨液をガラス基板10の開孔12に流し込みながら、ブラシ24を高速で回転させることで、ガラス基板10の内周面を研磨する。本実施の形態では、研磨に際してブラシ24を使用しているので、ガラス基板10の内周面を研磨すると共に、上述した内外周研削工程において行った開孔12の縁部の面取りした部分も同様に研磨することができる。なお研磨液としては、例えば酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものを用いることができる。
【0020】
図4は、内周研磨工程において使用するブラシ24の一例を示した図である。このブラシ24は、毛先が螺旋状に配列して形成されるブラシ部241と、このブラシ部241の両端部に連続して形成され、一端と他端とを形成する軸242とを備えている。ガラス基板10の開孔12として例えば0.85インチ等の小径ディスクの内周面を研磨するような場合は、ブラシ24の芯を細くする必要がある。その場合、本実施の形態では、例えば、複数本のワイヤ(材質:例えば、軟鋼線材(SWRM)、硬鋼線材(SWRH)、ステンレス線材(SUSW)、黄銅線(BSW)など、加工性、剛性などから適宜選定できる)の間に、ブラシの毛(材質:例えばナイロン(デュポン社の商品名))を挟み込み、この毛が挟み込まれたワイヤをねじることで、ブラシ部241を形成している。このワイヤをねじってブラシ部241を形成することで、ブラシ部241に形成されるブラシ毛先を螺旋状とすることができ、挿入されているガラス基板10の開孔12にて、研磨液を軸方向に流すことが可能となる。そのため研磨液の搬送を良好に行うことができる。
【0021】
(2次ラップ工程)
図1−2(d)は2次ラップ工程を示している。この工程では、図1−1(a)に示した1次ラップ工程において、研削を行ったガラス基板10の表面11を再度研削を行うことにより更に平滑に研削する。
2次ラップ工程において、研削を行う装置としては、図1−1(a)に示した研削機40を使用することができる。また研削の方法、条件等は、図1−1(a)で説明した場合と同様に行うことができる。なお本実施の形態において、1次ラップ工程および2次ラップ工程は、ガラス基板10を研削する研削工程として把握することができる。
【0022】
(外周研磨工程)
図1−2(e)は外周研磨工程を示している。この工程では、図1−1(b)に示した内外周研削工程において、荒削りである研削を行ったガラス基板10の外周13の外周面を更に平滑にする研磨を行う。
具体的には、まずガラス基板10の開孔12の部分に治具25を通して積層させ、ガラス基板10を治具25にセットする。そして研磨液をガラス基板10の外周13の箇所に流し込みながら、ブラシ26を積層したガラス基板10に接触させ、高速で回転させる。これにより、ガラス基板10の外周面を研磨することができる。本実施の形態では、研磨に際してブラシ26を使用しているので、ガラス基板10の外周面を研磨すると共に、上述した内外周研削工程において行った外周13の縁部の面取りした部分も同様に研磨することができる。なお研磨液としては、内周研磨工程の場合と同様に、例えば酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものを用いることができる。
【0023】
(1次ポリッシュ工程)
図1−2(f)は1次ポリッシュ工程を示している。この工程では、図1−2(d)に示した2次ラップ工程において、研削を行ったガラス基板10の表面11を、研磨機(研磨装置、ポリッシングマシン)50を用いて研磨(ポリッシング)を行うことで研磨し、更に平滑度を上げていく。この研磨機50は、上述した研削機40とほぼ同様な構成を有する。即ち、ガラス基板10を載置する下定盤21aと、ガラス基板10を上部から押えつけ研磨を行うために必要な圧力を加えるための上定盤21bとを備えている。そして研磨機50の下定盤21aに保持具30を利用してガラス基板10を載置し、上定盤21b、下定盤21a、および太陽歯車44を回転させることによりガラス基板10の研磨を行なう。ただし、下記に示すように研磨に使用する材料等が一部異なる。
本実施の形態において、研磨を行うに際し、例えばウレタンにより形成された硬質研磨布を用い、酸化セリウム砥粒等を水に分散してスラリー化した研磨液を使用して行なうことができる。
【0024】
(2次ポリッシュ工程)
図1−3(g)は2次ポリッシュ工程を示している。この工程では、図1−2(f)に示した1次ポリッシュ工程において、研磨を行ったガラス基板10の表面11を、精密研磨を行うことで更に研磨し、表面11の最終的な仕上げを行う。
本実施の形態において、この研磨を行うに際し、例えばスエード状の軟質研磨布を用い、酸化セリウム砥粒若しくはコロイダルシリカ等を水等の分散媒に分散してスラリー化した研磨液を使用して行なうことができる。なお本実施の形態において、1次ポリッシュ工程および2次ポリッシュ工程は、研削工程を経た円盤状基板を研磨液を用いて研磨する研磨工程として把握することができる。また本実施の形態では、詳しくは後述するが、研磨工程に用いられる研磨機50は、研磨液貯留手段から樋を介してガラス基板10に対して研磨液が供給される。
【0025】
(最終洗浄・検査工程)
図1−3(h)は最終洗浄・検査工程を示している。最終洗浄では、上述した一連の工程において、使用した研磨剤等の汚れの除去を行う。洗浄には超音波を併用した洗剤(薬品)による化学的洗浄などの方法を用いることができる。
また、検査工程においては、例えばレーザを用いた光学式検査器により、ガラス基板10の表面の傷やひずみの有無等の検査が行われる。
【0026】
(梱包工程)
図1−3(i)は梱包工程を示している。梱包工程では、上記の検査工程において予め定められた品質基準に合格したガラス基板10の梱包が行なわれ、ガラス基板10の梱包体90となる。そして梱包体90は、磁気記録媒体(磁気ディスク)を製造する箇所まで輸送される。この梱包は、輸送の際にガラス基板10への塵埃等の異物の付着や表面の状態変化を抑制するために行なわれる。
【0027】
次に、研磨工程において用いられる研磨機50に研磨液を供給する研磨液供給装置について説明を行なう。
図5は、本実施の形態における研磨液供給装置100について説明した図である。
図5に示した研磨液供給装置100は、研磨液を調製するとともに研磨液を貯留する研磨液貯留手段の一例としての研磨液槽101と、研磨液槽101により貯留された研磨液を研磨機50に供給するための樋104とから主要部が構成されている。
【0028】
研磨液槽101では、上述した酸化セリウム砥粒等の研磨剤と純水である調整水とを混合し、攪拌翼102で撹拌しながら研磨液を調製する。そして研磨機50の動作に必要な量の研磨液を貯留する。また研磨液槽101では、研磨機50の運転中、研磨液の濃度の調整が行なわれる。
【0029】
樋104は、研磨機50の上部に設けられる。そして研磨液は、配管107aを介して樋104に供給される。即ち、配管107aの途中には、ポンプ103が備えられ、このポンプ103により研磨液は、樋104の上部まで達し、そこから図示しない供給口により樋104に供給される。樋104に供給された研磨液は、樋104の底部に設けられた図示しない孔およびこの孔に接続されるチューブ105を通じて下部に流通する。そしてこれにより研磨液は、研磨機50の上定盤21bに供給される。樋104は、研磨機50の上部に設けられるため、この場合、研磨液は、重力により自然落下することで孔およびチューブ105を通し、研磨機50の上定盤21bに達する。
【0030】
また本実施の形態において、樋104は、研磨機50の外周に沿って環状に配される。そのため研磨液の供給方向から見て円形である研磨機50全体に均等に研磨液を供給しやすくなる。また樋104は、研磨機50の回転軸46bと回転軸を共用し、研磨機50の上定盤21bの回転動作と同様の回転動作を行なう。これは、樋104は、研磨機50に連動して回転動作すると言い換えることもできる。このように樋104が、回転する上定盤21bに対し同様の回転動作を行なうことで、研磨機50全体に均等に研磨液を供給することが更に容易となる。
【0031】
研磨機50の上定盤21bに対し供給された研磨液は、上定盤21bの上部に設けられた図示しない孔を通して下定盤21aとの間に達する。そしてこれにより研磨液は、ガラス基板10の研磨を行なうのに使用される。そしてガラス基板10の研磨に使用された後の研磨液は、下定盤21aと上定盤21bの回転により生ずる遠心力により、下定盤21aおよび上定盤21bの外周部から外部に放出される。
【0032】
本実施の形態では、研磨に使用された後の研磨液は、回収され、配管107bを介して研磨液槽101に再び貯留される。即ち研磨液は、研磨液槽101と研磨機50との間で循環供給される。なおこの際に配管107bの途中に設けられたフィルタ106によって研磨により生じた研磨屑が除去される。
【0033】
ここで、研磨液は、上述した通り酸化セリウム砥粒等の研磨剤と純水である調整水とを混合したものであり、所謂スラリーである。そのため研磨材が沈殿することにより、研磨材が流通経路内で、滞留する場合がある。本実施の形態の研磨液供給装置100においては、樋104において、特に研磨材の滞留が生じやすい。そして研磨剤が滞留すると、それが固化し、研磨液の流通を阻害することになる。
【0034】
本実施の形態では、樋104における研磨剤の滞留を抑制するため、樋104の内面が撥水性被材によって被覆されている。これにより、研磨液と接触するのは、樋104の内面に設けられた撥水性被材となる。そして撥水性被材は、研磨液との濡れ性が悪いため、研磨液をはじくことができる。そのため研磨液に含まれる研磨材の滞留が生じにくくなる。
撥水性被材は、例えば、表面が撥水性を有するフィルムである。この場合、フィルムの研磨液と接触する側の面を撥水性とする。このようなフィルムは、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなる基材に、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂をコーティングすることで作製することができる。またフィルムと樋104との密着性を高めるため、撥水性を有する側とは反対側の面に粘着性を備えることが好ましい。これによりフィルムと樋104とを接着することができ、フィルムと樋104との密着性が向上する。この場合、撥水性を有するフィルムは、より具体的には、撥水性テープ等である。ただし、このような撥水性テープを設けても、研磨剤の滞留を完全に阻止することは、困難であるため、定期的に剥がして交換できる程度の粘着性を有する撥水性テープであることが好ましい。
【0035】
図6(a)〜(b)は、樋104の内面に被覆する撥水性被材の形態について説明した断面図である。
図6(a)において、樋104は、断面形状が長方形である。そして撥水性被材120は、樋104の内面全体に被覆されている。即ち、撥水性被材は、樋104の底面104aおよび側面104bの双方に被覆される。
【0036】
一方、図6(b)では、撥水性被材120は、樋104の内面全体ではなく、樋104の側面104bにのみ被覆される。研磨材の滞留は、樋104全体で生じやすいわけではなく、その側面でより生じやすい。つまり研磨機50の運転中は、樋104の底面104aには、通常研磨液が流通している。一方、樋104の側面に付着した研磨液は、底面に落下しない限りその箇所に付着したままとなる。つまり通常研磨液が流通している底面104aより側面104bの方が、研磨液に含まれる研磨剤は、より滞留しやすい。よって図6(b)のように樋104の底面104aには、撥水性被材120を設けず、側面104bに設けるだけで十分な場合がある。この場合、撥水性被材を被覆する場合および撥水性被材を交換する場合において、作業がより容易となる。
【符号の説明】
【0037】
10…ガラス基板、40…研削機、50…研磨機、100…研磨液供給装置、101…研磨液槽、104…樋、104a…底面、104b…側面、120…撥水性被材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板の主表面を研削する研削工程と、当該研削工程を経た円盤状基板を研磨液を用いて研磨する研磨工程とを有する円盤状基板の製造方法であって、
前記研磨工程に用いられる研磨装置は、研磨液貯留手段から樋を介して円盤状基板に対して前記研磨液を供給されるとともに、当該樋の内面が撥水性被材によって被覆されていることを特徴とする円盤状基板の製造方法。
【請求項2】
前記撥水性被材は、前記樋の側面を被覆することを特徴とする請求項1に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項3】
前記撥水性被材は、表面が撥水性を有するフィルムからなることを特徴とする請求項1または2に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項4】
前記樋は、前記研磨装置の外周に沿って環状に配され、当該研磨装置に連動して回転動作することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の円盤状基板の製造方法。
【請求項5】
円盤状基板の製造において当該円盤状基板を研磨する研磨装置に使用する研磨液を供給する研磨液供給装置であって、
研磨液を調製するとともに、当該研磨液を貯留する研磨液貯留手段と、
前記研磨液貯留手段により貯留された研磨液を前記研磨装置に供給するため当該研磨装置に連動して回転動作する樋と、
を備え、
前記樋は、内面が撥水性被材によって被覆されていることを特徴とする研磨液供給装置。
【請求項6】
前記撥水性被材は、一方の面が撥水性とされ、他方の面が前記樋と接着するために粘着性とされたフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の研磨液供給装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−53948(P2012−53948A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195687(P2010−195687)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】