説明

円筒内周面の周期構造体加工方法と円筒内周面の周期構造体加工装置

【課題】 円筒ワークの円筒内周面に特化して周期構造(微細周期性溝やディンプル)の規則性形状を狂わせることなく高精度に整列加工できるようにした円筒内周面の周期構造加工方法とその装置を提供する。
【解決手段】 直線偏光のフェムト秒レーザを回転可能に設けられた第一回転筒体41内に導き、第一回転筒体内に配置したλ/2板により直線偏光の偏光方向を変化させるとともに、第一回転筒体に対して軸芯O2を合わせて回転可能に設けられた第二回転筒体49内に配置された集光レンズR3と反射ミラーMとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進ませ、円筒ワークWの内周面W1を対面させて上記フェムト秒レーザを照射させ、反射ミラーを備えた第二回転筒体の回転1回転に対して上記λ/2板Pを備えた第一回転筒体を1/2の回転させ、上記円筒ワークの内周面に周期性溝KMを同一方向に整列加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムト秒レーザ加工機で円筒ワークの内周面に周期構造体(ナノ単位の微細周期性溝やディンプル)を加工する加工方法とその装置に係り、特に、円筒ワーク(例えば、エンジンにおけるシリンダ内周面やベアリング内周面等の円筒内周面)に対する周期構造体の規則性形状を狂わせることなく合理的に整列加工できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止策の最も重要課題として大気汚染の低減を図ることが掲げられている。特に、大気汚染を起している主原因が自動車が出す排気ガスにあることが知られており、国際的な協定が結ばれる中で自動車メーカは競って低公害車を開発している。その行き着くところは、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等の開発と実用化による世界的普及が期待されている。このような状況の中で、自動車の燃費改善対策とエンジンの性能・耐久性の向上対策として、エンジンにおけるピストンとシリンダ間の摩擦低減、ベアリングの回転摩擦低減、ギアの噛合い摩擦の低減等の摩擦抵抗を極限まで減らすことが望まれている。上記エンジンの摺動部(摩擦面)又は回転部(転がり面)の表面の摩擦抵抗を極限まで減らす加工方法には、刃具の機械的な外力により表面に微細な凹凸筋の溝加工を施すものと、フェムト秒レーザ加工機でナノ周期構造体(連続した微細周期性溝、不連続のディンプルの窪み)を施す加工技術が注目を集め旺盛に開発されている。また、上記ナノ周期構造体が正しく生成されているか・否か・を判定する観測装置も開発されている。
【0003】
上記フェムト秒レーザ加工機において、周期構造体(例えば微細周期性溝)を加工する加工方法は、固体材料表面に、低フルーエンスの超短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)を偏光制御して照射することで、照射したレーザの波長より小さいサイズの微細構造を形成する。そして、超短パルスレーザを直線偏光させて固体材料表面に照射することで、偏光方向とは直交する方向に沿って細長い微細構造を形成でき、また、円偏光させて照射することで微細構造体が形成される。こうした微細構造のサイズは、照射するレーザの波長と正の相関関係があり、波長を選択することで微細構造のサイズを制御するものが提供されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、フェムト秒レーザがレーザ駆動部から入射されたとき、レーザを複数の光束に分離する回折格子3と、回折格子3によって分離された光束を互いに干渉させるための凸レンズ4,5と、光束が互いに交差し干渉する干渉領域と凸レンズ5との間に配設された円柱レンズ6と、レーザによって加工するため、加工用基材7を干渉領域に配設することができるXYZステージ8を備え、円柱レンズ6が、干渉領域を扁平な領域に整形するとともにエネルギ密度を集中し、加工用基材7と該干渉領域の物質レーザ相互作用によって微細加工することができるものが提供されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
更に、互いに干渉したフェムト秒レーザ・パルスを、基材に照射することにより、最小平均寸法5〜200nmを有する周期微細構造を基材中に作成するフェムト秒レーザの照射による一次元及び/または二次元周期微細構造の作成方法であり、特に近赤外領域の発振波長で、0.1TW/cm2以上の高密度エネルギーを有し、互いに干渉した2つのフェムト秒レーザ・パルスをシリカガラスに照射することにより、シリカガラス中に、平均幅5〜50nmを有する周期溝を作成するフェムト秒レーザの照射による一次元周期微細構造の作成方法が提供されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0006】
また、更には、溶接ヘッドの旋回駆動機構に、ロータリエンコーダからなる位置センサを取り付け、他方、各層毎の溶接工程におけるアークスタートおよびアークエンドの位置をあらかじめラップすることがないように設定できる位置決めユニットを設け、この位置決めユニットに前記位置センサを接続し、位置決めユニットには、前記各層毎の溶接工程を順に制御するシーケンスコントローラを接続し、前記位置センサからの検出信号に基いて位置決めユニットおよびシーケンスコントローラを介して多層溶接により継手溶接を行うようにしたものが提供されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0007】
そして、本発明の目的により近い技術として、金属対象表面の摩擦抵抗を現状以上に低減することを可能としたものが提供されている。この金属摺動面表面処理装置によると、金属対象物の摺動面にフェムト秒レーザを照射して微細周期構造を形成し、これにより当該摺動面の摩擦抵抗を低減させる構成となっているので、その性質上、加工サイズの均一性が大きく制御性も高いことから、金属対象物の摺動面の摩擦抵抗を現状以上に低減することが可能になる。また、どのような大きさ、形状、材質の金属対象物であってもその摺動面の摩擦抵抗を低減させることが可能であることから、摺動面を有する機械部品の性能を向上させる上で大きなメリットがある。(例えば、特許文献5を参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−211400号公報
【特許文献2】特開2003−334683号公報
【特許文献3】特開2003−57422号公報
【特許文献4】特開平6−320270号公報
【特許文献5】特開2004−360011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記各公知例において、フェムト秒レーザによる周期構造体(例えば微細周期性溝)の加工方法は、一次元の平面板の表面にフェムト秒レーザを照射して上記微細周期性溝を生成させる技術内容であるから、三次元形状をしているシリンダ内壁面やベアリングの内輪・外輪の摺動面に対する上記微細周期性溝を生成させることはできない。また、他の公知例(特開平6−320270)は、鉄筋の継手溶接を多層溶接により自動溶接する方法であって、各層毎の溶接アークのスタート位置およびエンド位置がラップすることがないように制御するものであり、溶接ヘッドを旋回駆動機構により円柱状ワークの周り、即ち、外周を旋回移動させるものであるから、本願発明のように比較的細い筒径からなる筒内周面に微細周期性溝を加工する省スペースを要求される加工ヘッドには、直ちに適用できないという問題点がある。
【0010】
そして、上記フェムト秒レーザ発振器の出力が高くなれば加工点での集光スポット径を大きくすることができ、ナノ単位の微細周期性溝を一度に広範囲に加工できる。しかし、上記微細周期性溝に替えて、ディンプル加工など一点を集中的に加工しようとすれば、通常の加工方法では機械軸や光学系がその都度加工したい位置に集光点が届くように移動する必要がある。この方法では、加工時間が長くなって加工を短縮させることが困難になる。更に、金属摺動面表面処理装置では、平面状の金属板の表面に微細周期構造を成形させるに止まっている。これがために、円筒内周面となるシリンダ内周面やベアリングの内周面のような三次元曲面に周期構造体を成形させることが出来ない。
【0011】
本発明の課題は、上記従来のフェムト秒レーザにより周期構造体を加工する加工方法やその装置、更には金属摺動面表面処理装置が持つ問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、特に、三次元曲面を持つ円筒ワークの内周面に特化して周期構造体(ナノ単位の微細周期性溝やディンプル)の規則性形状(溝の同一方向性)を狂わせることなく高精度・高効率に整列加工できるようにした加工方法とその装置を提供するものである。より具体的には、円筒内周面となるシリンダ内周面やベアリングの内周面のような三次元曲面に微細な周期構造体を加工する方法と装置を提供するものである。更に付け加えるならば、本発明が目指す大目的は、各種産業機械類が持つ摺動摩擦抵抗の低減を図ることでエネルギーロスの低減による省エネ効果や耐寿命効果に寄与する部品加工の技術開発を促進させることで、地球温暖化防止対策に大きく貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1の円筒内周面の周期構造体加工方法は、フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザを回転可能に設けられた第一回転筒体内に導き、上記第一回転筒体内に配置されたλ/2板により直線偏光の偏光方向を変化させるとともに、上記第一回転筒体に対して軸芯を合わせて回転可能に設けられた第二回転筒体内に配置された集光レンズと反射ミラーとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進ませ、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段で把持された円筒ワークの内周面を対面させて上記フェムト秒レーザを照射させ、上記反射ミラーを備えた上記第二回転筒体の回転1回転に対して上記λ/2板を備えた上記第一回転筒体を1/2の回転させ、上記円筒ワークの内周面に周期性溝を同一方向に整列加工することを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の円筒内周面の周期構造体加工方法は、請求項1記載の円筒内周面の周期構造体加工方法において、上記円筒ワークが把持されたチャック手段をZ軸駆動手段により円筒ワークの軸芯方向に連続移動または間欠移動させ、上記フェムト秒レーザを上記円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の円筒内周面の周期構造体加工方法は、請求項1または2記載の円筒内周面の周期構造体加工方法において、上記反射ミラーに向かうフェムト秒レーザを第二回転筒体内であって集光レンズの前側に配置されたディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーに入射させることにより、上記円筒ワークの内周面にディンプルまたは混合の周期構造体を形成することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の円筒内周面の周期構造体加工装置は、フェムト秒レーザ発振器と、上記フェムト秒レーザ発振器からの直線偏光のフェムト秒レーザを導入する回転可能な第一回転筒体と、上記第一回転筒体内に配置され上記フェムト秒レーザの偏光方向を変化させるλ/2板と、上記第一回転筒体に回転軸芯を合わせて配置される第二回転筒体と、上記第二回転筒体内に配置されフェムト秒レーザを集光させる集光レンズと、上記第二回転筒体の先端側に配置されフェムト秒レーザを外径方向に屈折させる反射ミラーと、上記第二回転筒体の回転1回転に対して上記第一回転筒体を1/2の回転させる回転駆動手段と、円筒ワークを所定位置に把持するチャック手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の円筒内周面の周期構造体加工装置は、請求項4記載の円筒内周面の周期構造体加工装置において、上記チャック手段に把持された円筒ワークをその軸芯方向に進退させるZ軸駆動手段を具備したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の円筒内周面の周期構造体加工装置は、請求項4または5記載の円筒内周面の周期構造体加工装置において、上記第二回転筒体内であって集光レンズの前側にディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを配置したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の円筒内周面の周期構造体加工方法は、フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザを筒体内に導き、上記筒体内の集光レンズと反射ミラーとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進ませ、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段により把持された円筒ワークの内周面を対面させて上記フェムト秒レーザを照射させ、上記円筒ワークを回転駆動させてこの内周面に周期性溝を同一方向に整列加工することを特徴とするものである。
【0019】
請求項8の円筒内周面の周期構造体加工方法は、請求項7記載の円筒内周面の周期構造体加工方法において、上記円筒ワークが把持されたチャック手段をZ軸駆動手段により円筒ワークの軸芯方向に連続移動または間欠移動させ、上記フェムト秒レーザを上記円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射させることを特徴とするものである。
【0020】
請求項9の円筒内周面の周期構造体加工方法は、請求項7または8記載の円筒内周面の周期構造体加工方法において、上記反射ミラーに向かうフェムト秒レーザを筒体内であって集光レンズの前側に配置されたディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーに入射させることにより、上記円筒ワークの内周面にディンプルまたは混合の周期構造体を形成することを特徴とするものである。
【0021】
請求項10の円筒内周面の周期構造体加工装置は、フェムト秒レーザ発振器と、上記フェムト秒レーザ発振器からの直線偏光のフェムト秒レーザを導入する筒体と、上記筒体内に配置され直線偏光のフェムト秒レーザを集光させる集光レンズと、上記筒の先端側に配置されフェムト秒レーザを外径方向に屈折させる反射ミラーと、上記円筒ワークを所定位置に把持するチャック手段と、上記チャック手段を回転駆動させるワーク回転駆動部と、を具備したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項11の円筒内周面の周期構造体加工装置は、請求項10記載の円筒内周面の周期構造体加工装置において、上記チャック手段に把持された円筒ワークをその軸芯方向に進退させるZ軸駆動手段を具備したことを特徴とするものである。
【0023】
請求項12の円筒内周面の周期構造体加工装置は、請求項10または11記載の円筒内周面の周期構造体加工装置において、上記筒体内であって集光レンズの前側にディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを配置したことを特徴とするものである。
【0024】
本発明の円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置は上記構成要件からなり、以下のように作用する。
第1に、請求項1〜5において、円筒内周面の三次元曲面にナノ単位の周期構造体を加工する方法と装置は、フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザは、上記レーザ加工ヘッドに導かれ、これに設けた第一回転筒体内のλ/2板で上記フェムト秒レーザが直角方向に直線偏光され、更に、上記第一回転筒体に回転可能とした第二回転筒体内に設けた集光レンズと反射ミラーとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進むフェムト秒レーザとなる。これで、上記フェムト秒レーザは、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段(この実施形態では回転させない)で把持された円筒ワークの内周面に向けて照射される。ここで、上記第一回転筒体を上記第二回転筒体の1/2の回転量で両筒体を回転駆動手段により回転駆動させると、微細周期性溝(例えば、溝幅=数百nm)が同一方向に整列加工される。更に、上記加工において、円筒ワークを把持するチャック手段をZ軸駆動手段により第二回転筒体の軸芯方向へフェムト秒レーザの出力と同期させて移動させると、上記フェムト秒レーザが円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射されるとともに、この円筒内周面には、微細周期性溝が同一方向に所定幅だけ整列加工される。その加工も簡単な加工装置で実行される。
【0025】
第2に、請求項3と6において、上記第1の円筒ワークの周期構造体加工方法とその装置は、第二回転筒体内の反射ミラーよりも光源側にディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを介在させることで、フェムト秒レーザの直線偏光を複数のスポット状またはスポットと均一なエネルギー分布との混合集光とすることができるから、ディンプル(例えば、ディンプルの穴径=数十μm)またはディンプルと微細周期性溝とが混合した周期構造体が任意寸法の加工幅に多数加工される。また、その加工も簡単な加工装置で実行される。
【0026】
第3に、請求項7〜11において、円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置は、フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザは、レーザ加工ヘッドへ導かれ、レーザ加工ヘッドの筒体を固定しこの筒内に備えた集光レンズで集光されつつ先端部の反射ミラーで外径方向に進むフェムト秒レーザとなる。そして、上記フェムト秒レーザは、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段で把持された円筒ワークの内周面に向けて照射される。ここで、上記反射ミラーを停止させた状態で、上記円筒ワークをワーク回転駆動部により回転駆動させると上記反射ミラーから円筒ワークの内周面に照射される直線偏光の向きが変化せず、円筒ワークの内周面に微細周期性溝(例えば、溝幅=数百nm)が同一方向に整列加工される。更に、上記加工において、円筒ワークを把持するチャック手段をZ軸駆動手段により筒体の軸芯方向へフェムト秒レーザの出力と同期させて移動させると、上記フェムト秒レーザが円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射され、この円筒内周面には、微細周期性溝が同一方向に所定幅だけ整列加工される。その加工もレーザ加工ヘッドの筒体を固定したままの簡単な加工装置で実行される。
【0027】
第4に、請求項9と12において、上記第3の円筒ワークの周期構造体加工方法とその装置は、筒体内の反射ミラーよりも光源側にディンプル加工用ホジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを介在させることで、フェムト秒レーザの直線偏光を複数のスポット状またはスポットと均一なエネルギー分布との混合集光とすることができるから、ディンプル(例えば、ディンプルの穴径=数十μm)またはディンプルと微細周期性溝とが混合した周期構造体が任意寸法の加工幅に多数加工される。また、その加工もレーザ加工ヘッドの筒体を固定したままの簡単な加工装置で実行される。
【発明の効果】
【0028】
しかして、上記請求項1〜6項記載の円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置によれば、ワーク側を固定し反射ミラー側を回転させる周期構造体加工方法とその装置としたから、三次元形状となる円筒ワークの内周面に対して、周期構造体となる微細周期性溝またはディンプルを単一的または複合的に効率良く加工できる。その加工幅も自由にできる。
また、上記請求項7〜12項記載の円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置によれば、反射ミラー側を固定しワーク側を回転させる周期構造体加工方法とその装置になるから、周期構造体加工方法とその装置は、その構造と運転が簡単になるとともに、円筒ワークの内周面に対して、微細周期性溝またはディンプルを単一的または複合的に効率良く加工できる。その加工幅も自由にできる。
【0029】
これにより、上記円筒ワークに微細周期性溝またはディンプル及びこれらの混合溝を施したシリンダ内周面とピストンリングとの接触面には、多数の凹溝に潤滑油が溜まってエンジンにおけるピストンとシリンダ間の摩擦抵抗を極限まで減らすことが可能になり、自動車の燃費改善が最大限に図られる。勿論、シリンダ以外の各種機器・部品、例えばベアリングの内周面に対する加工も行なえ、その転がり抵抗が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明による円筒ワークの円筒内周面を加工する周期構造加工方法とその装置について、図示の第1の実施の形態により説明する。図1は円筒内周面の周期構造体加工装置の全体構成図、図2は反射ミラー部の概要断面図、図3と図4はレーザ加工ヘッドの断面図と要部拡大図、図5は光学偏光素子となるλ/2板の拡大写真図、図6はλ/2板と反射ミラーとの作用図、図7は微細周期性溝を加工するレーザ加工ヘッドの構成図、図8はディンプルを加工するレーザ加工ヘッドの構成図、図9はホモジナイザーの構成図、図10は進退駆動手段による移動方法と加工軌跡の説明図、図11は微細周期性溝の拡大写真図、図12はディンプルの拡大写真図である。
【0031】
図1〜図3により、本発明の第1の実施の形態(位相板を備えた形態)となる円筒内周面の周期構造体加工装置100の概要を説明する。その構成は、直線偏光のフェムト秒レーザLOを発振するフェムト秒レーザ発振器10と、加工装置の中枢部となるレーザ加工ヘッド20と、円筒ワークWをチャック手段7で着脱自在に把持するとともに三次元方向(X軸,Y軸,Z軸の三方向)に移動させるワーク制御テーブル3と、からなる。まず、上記フェムト秒レーザ発振器10とレーザ加工ヘッド20とは、防振台1の基盤2上に水平姿勢の横向きに搭載されている。上記フェムト秒レーザ発振器10は、公知なものであるから詳細構成を省略して概要説明すれば、発振源となるレーザ発振部10Aとこの発振を調整するファイバーレーザ発振器10Bとパルスストレッチャー10CとTi:sapphire再生増幅器10Dとパルスコンプレッサー10Eとレーザパワー減衰器10Fと励起用パルスグリーンレーザ10Gと電源制御部10Hと筐体温度安定化用冷却装置10Iとにより構成されている。上記レーザ加工ヘッド20は、その入力側にフェムト秒レーザLOを受け入れ任意に出力遮断(出力制御)する電磁式のシャッターSTを装備したレーザ出力部20Aが繋がれている。また、上記レーザ加工ヘッド20の出力側には、外筒49Aと内筒49Bとを備え、円筒ワークW(例えば、エンジンにおけるシリンダ内周面、ベアリング外輪の内周面等)を外側から被せている。
【0032】
上記円筒ワークWは、上記レーザ加工ヘッド20に対して別設したワーク制御テーブル3のチャック手段7に把持されている。上記ワーク制御テーブル3は、円筒ワークWをX軸方向(図示の前後方向)に移動させるX軸駆動手段30と、これに搭載されて円筒ワークWをZ軸方向(図示の左右方向)に移動させるZ軸駆動手段9と、このZ軸駆動手段9上のコラム9Aに搭載されてY軸方向(図示の上下方向)に移動させるY軸駆動手段5と、この前壁面に配置したワーク回転駆動部5Aと、この前部に配置した把持具7とからなる。しかして、上記円筒ワークWは、上記レーザ出力部20Aの軸芯(回転中心)O1に対してその軸芯(回転中心)O2を一致させるべく、Y軸駆動手段5と、これを左右X軸の方向に移動させるX軸駆動手段30との合成された微動送りで位置合わせが行われる。また、上記レーザ出力部20Aに対する円筒ワークWの挿入深さ位置ZAは、上記X軸駆動手段30に搭載されたZ軸駆動手段9を前後方向となる−Z軸方向(図示の左側方向)又は+Z軸方向(図示の右側方向)へ微動させて行う。更に、上記円筒ワークWを、上記レーザ加工ヘッド20の先端における内筒49Bの外周でフェムト秒レーザLOの照射を受けながら回転ROさせるには、Y軸駆動手段5上のワーク回転駆動部5A内に備える回転制御モータMMによりチャック手段7を回転駆動させて行われる。上記上下のY軸と左右のX軸と前後のZ軸の各駆動は、ガイドレール部材G1, G2, G3とY軸送りのモータM1及びZ軸送りのモータM2,X軸送りのモータM3により行われる。
【0033】
また、上記円筒内周面の周期構造体加工装置100には、上記各モータM1,M2,M3,MMやシャッターST及び後記する回転駆動手段SDの駆動モータMO等を駆動制御する制御手段200を備えている。この制御手段200の概要構成と機能につてい説明する。まず、周期構造体加工装置100の全体を総括的にコンピュータ管理するとともに装置全体の運転制御を支配する中央制御部CPUと、この中央制御部CPUからの指令で各モータMO,M1, M2,M3,MMやSTの駆動制御をプログラム及び運転させるPC制御機能を備えたNC制御部NCと、NC制御部NCからの指令を受けて各モータMO,M1, M2,M3,MMやSTを駆動する駆動部DDとからなる。これらの機能を備えた上記制御手段200の制御のもとに、各ユニット3,5,9,10,20,30, M1, M2,M3,MMやSTの駆動部DDを作動させる。これで、上記光学偏光素子となるλ/2板Pが設けられた第一回転筒体41を、反射ミラーMが設けられた第二回転筒体49に対して1/2の回転量で回転駆動させる回転駆動手段SD(詳細は後記する)が駆動モータMOで駆動される。これで、フェムト秒レーザLOの直線偏光の偏光方向の向きを変えることなく内周体Wの内周面W1に照射して周期性溝KMが同一方向に整列加工される。更に、上記内周体Wは、これをチャック手段7で把持するY軸駆動手段5を乗せたZ軸駆動手段9により第二回転筒体49の軸芯方向O1に円筒ワークWをこの軸芯方向O2へ移動させることで、上記フェムト秒レーザLOを円筒ワークWの内周面に所定幅だけ照射させ、微細周期性溝が所定幅だけ整列加工される。更には、Y軸駆動手段5や第一回転筒体41及び第二回転筒体49とを、一定の関係のもとに回転させることも可能であるし、Z軸駆動手段9の進退制御と絡めての三次元形状の内筒体の内周面に倣う制御運転が可能である。
【0034】
続いて、上記レーザ加工ヘッド20について、図3と図4でその中枢部となる第一回転筒体41を第二回転筒体49の1/2の回転量で両筒体を回転駆動させる回転駆動手段SDと、両筒体内に設けた光学系を説明する。先ず、上記防振台1の基盤2上には、上記レーザ加工ヘッド20を水平姿勢に支持する支持体40がその回転軸芯O1を水平方向にして、座板40AをボルトBにより固着されている。上記支持体40内の後端側(図示の右端)には、短身で回転自在な第一回転筒体41が軸受手段を介して支持されており、この第一回転筒体41のレーザ光源側が軸受手段を介した連絡筒42によりレーザ出力部20Aに繋がれている。上記連絡筒42には、光学系となる平凹レンズR1を備え、上記第一回転筒体41の筒内先端には、平凸レンズR2・光学偏光素子となるλ/2板Pが取り付けられている。更に、上記支持体40内の先端側(図示の左端)には、第二回転筒体49が軸受手段を介して支持されており、第一回転筒体41と第二回転筒体49とは、回転駆動手段SDにより回転される。即ち、第一回転筒体41の外周にプーリー43を備え、これが駆動モータMOの回転軸47に取り付けたプーリー44(プーリー43の1/4の歯数)と確動ベルトKB1で繋がれている。尚、上記駆動モータMOは、支持体40から突設したフランジ46に保持され、回転軸47が上記支持体40に取り付けた軸受体48に回転自在に支持されている。上記支持体40内の先端側(外周体W側)には、短身で回転自在な第二回転筒体49が軸受手段を介して支持されている。上記第二回転筒体49の外周にプーリー50を備え、これが駆動モータMOの回転軸47に取り付けたプーリー51(プーリー50の1/2の歯数)と確動ベルトKB2で繋がれている。これにより、第二回転筒体49は第一回転筒体41の1/2の回転量で両筒体が回転駆動される。上記第二回転筒体49の筒内の後端側には、光学系のアイリスA2・三連スライド式のホモジナイザーH(エネルギー効率を改善する周期性溝用ホモジナイザーH1とディンプル加工用ホモジナイザーH2と両者の混合加工用ホモジナイザーH3の三種類に切替え選択される)・平凸レンズR3が順次に配置されている。また、上記第二回転筒体49の先端部には、外筒49Aとこの軸芯O1方向にスライドする内筒49Bとが連設され、この内筒49Bの先端には、反射ミラーMがフェムト秒レーザLOを外径方向へ屈折するようにダイアル取付具Dにより角度調節可能に配置されている。しかして、上記反射ミラーMは、外周体Wの外周面に向けた外径方向にフェムト秒レーザLOを直線偏光として照射される。尚、外筒49Aに対してスライドする内筒49Bは、反射ミラーMに対するフェムト秒レーザLOの焦点距離を調節させる機能を持たせている。
【0035】
上記レーザ加工ヘッド20において、光学系の全体構成の概要を説明する。まず、上記円筒ワークWの内周面W1に微細周期性溝KMを加工する場合は、図3と図6と図7に示すように、フェムト秒レーザ発振器10のレーザ出力部20Aからのフェムト秒レーザLOは、アイリスA1・シャッターST・平凹レンズR1を介して進み、更に、レーザ加工ヘッド20の第一回転筒体41内の平凸レンズR2とλ/2板PとアイリスA2を介して進み、更に、第二回転筒体49内の周期性溝用ホモジナイザーH1から平凸レンズ(集光レンズ)R3を介して先端の反射ミラーMに至る。上記周期性溝用ホモジナイザーにする理由は、上記フェムト秒レーザ光LOのエネルギー波形は、図9(b )に示す山形の二次曲線のもので両裾のエネルギーが利用されない。そこで、図9(c )に示すように、その特性を改善する周期性溝用ホモジナイザーH1によりエネルギー分布を矩形に整形し、エネルギー効率を限り無く100%にすることが可能だからである。従って、エネルギー効率を問題にしなければ、上記周期性溝用ホモジナイザーH1は省略することも可能である。続いて、反射ミラーMで外径方向に曲げられたフェムト秒レーザLOは、円筒ワークWの内周面W1に直線偏光の形(直径2mm前後)で照射される。即ち、フェムト秒レーザ光LOによる微細周期性溝KMの溝方向と加工面積は、フェムト秒レーザの偏光方向とフル−エンス(レーザ出力のエネルギー)に依存されるから、これらを制御しなければならない。従って、本発明の周期構造体加工装置100のように、三次元形状の円筒ワークWの内周面W1を加工するに際して、フル−エンス(レーザ出力のエネルギー)が一定した状態では、フェムト秒レーザ光LOの直線偏光の方向を反射ミラーMの回転に伴って制御しなければならない。具体的には、上記第一回転筒体41の光学経路上に入れた上記λ/2板Pを、第二回転筒体49内の反射ミラーMとの回転位置の調節により、フェムト秒レーザLOの直線偏光の方向が制御される。即ち、図6に示すように、反射ミラーMの1回転(θh )に対して、λ/2板Pを半回転θp
させることで円筒ワークWの内周面に一様な方向(図示では、円筒ワークWの軸芯方向にほぼ向けて整列させた方向)に微細周期性溝KMが加工される。(図6と図7を参照)
【0036】
上記λ/2板Pの追記説明をすれば、上記フェムト秒レーザLOは、光束に直交する方向の偏光成分(S成分とP成分)を持っている。この偏光成分に位相差(1/4 波長と1/2波長分に変化)を与えるものが位相板である。位相差π/2(90°)を与えるものをλ/4板と言い、直線偏光を円偏光に、逆に円偏光を直線偏光に変換する。また、位相差π(180 °)を与えるものをλ/2板と言い、直線偏光の偏光方向のみを90°方向の向きに変える。本発明では、λ/2板Pが使用される。このλ/2板Pは、例えば、図5の拡大写真に示すように、平面ガラス板Gの一部分に屈折率、厚さの等方性の透明薄膜G1を付けたもの、または透明薄膜の付いた部分と付かない部分とを透過する光の間に位相差ができるようにしたものである。従って、上記直線偏光のフェムト秒レーザLOが、λ/2板Pと反射ミラーMを通過して円筒ワークWの内周面W1に照射される直線偏光との関係を図6で説明する。フェムト秒レーザ光LOの偏光方向に対して、λ/2板Pを回転させることでこのλ/2板Pを通過するフェムト秒レーザ光LOの偏光方向をその回転角量だけ変えられる。従って、反射ミラーMを回転させて、円筒ワークWの内周面W1を加工するには、図6に示すように、反射ミラーMの2回転(θh )に対して、λ/2板Pを1回転(θp )させることで内周面に一様な方向に整列された微細周期性溝KMが加工される。
【0037】
次に、上記円筒ワークWの内周面W1にディンプルDPを加工する場合は、図3と図6と図8に示すように、フェムト秒レーザ発振器10のレーザ出力部20Aからのフェムト秒レーザ光LOは、アイリスA1・シャッターST・平凹レンズR1を介して進み、更にレーザ加工ヘッド20の第一回転筒体41内の平凸レンズR2とλ/2板P、アイリスA2・ディンプル加工用ホモジナイザーH2を介して進み、更に第二回転筒体49内の平凸レンズ(集光レンズ)R3を介して先端の反射ミラーMに至る。この後、反射ミラーMで外径方向に曲げられたフェムト秒レーザ光LOは、円筒ワークWの内周面W1に照射される。即ち、フェムト秒レーザLOによるディンプルDPは、円筒ワークWの内周面を加工するに際して、光学経路上の第二回転筒体49内にディンプル加工用ホモジナイザーH2を入れたフェムト秒レーザLOにより、ディンプルDPが加工される。上記ディンプル加工用ホモジナイザーH2は、図9(a)に示すように、一種のホログラムであり、集光部のエネルギー分布を制御する。即ち、ディンプル加工用ホモジナイザーH2は、その表面に微細な凹凸があり、この凹凸を通過するフェムト秒レーザLOの光が回折し、多数のエネルギー分布(エネルギー密度の高い複数のスポットS1〜S6)を生じさせる。このエネルギー分布により、図8に示すようなディンプルDPが加工される。尚、微細周期性溝KMとディンプルDPとを混合加工する混合加工用ホモジナイザーH3に切替えれば、図9(d)に示すように、均一なエネルギー分布SOとエネルギー密度の高い複数のスポットS1〜S6とが存在し、微細周期性溝KMとディンプルDPとが混在した複合加工が行われる。
【0038】
しかして、再度、レーザ加工ヘッド20の構成を簡潔に説明すれば、図7(a)に示すように、円筒ワークWの内周面に一様な方向に微細周期性溝KMを整列加工するには、図7(b)に示すレーザ加工ヘッド20の光学系の構成とする。また、図8(a)に示すディンプルDPを一様な方向に整列加工するときは、図8(b)に示すレーザ加工ヘッド20の光学系の構成とする。尚、上記ディンプルDPの加工において、ディンプル加工用ホモジナイザーH2無しで実施するには、フェムト秒レーザLOのエネルギー分布を一点に集中させた焦点で、1つづつのディンプルDPの加工を幾回も繰り返さなければならない。従って、加工能率が極めて悪いので実用的な価値が無いと言える。
【0039】
本発明の円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置は、上記構成要件からなり、以下のように作用する。先ず、上記円筒ワークWに対する周期構造体加工方法は、図7に示すレーザ加工ヘッド20において、λ/2板Pと周期性溝用ホモジナイザーH1と反射ミラーMとの作用を受けて円筒ワークWの内周面W1に向けてフェムト秒レーザLOを照射して微細周期性溝KMが加工される。即ち、図2〜図4・図7に示すように、レーザ加工ヘッド20は、このレーザ出力部20Aに入力したフェムト秒レーザLOを、シャッターSTによる開閉制御で第一回転筒体41のλ/2板Pに入射される。続いて、周期性溝用ホモジナイザーH1でエネルギー分布が改善された制御可能な直線偏光となる。更に、上記フェムト秒レーザLOは、第二回転筒体49の反射ミラーMにより回転軸線O1の方向から外径方向の外周に向けて進み、円筒ワークWの内周面W1に向けて照射される。このとき、上記第一回転筒体41と第二回転筒体49とが回転駆動手段SDにより回転され、この回転にレーザ出力が上記シャッターSTによる開閉制御で同期される。即ち、図6の作用説明図に示すように、上記λ/2板Pを備えた第一回転筒体41が回転されるに際して、上記第一回転筒体41を反射ミラーが備えた第二回転筒体49の1/2の回転量で回転させることで、上記フェムト秒レーザLOを円筒ワークの内周面の全周に照射されてナノ周期構造の微細周期性溝KMが同一方向に整列加工される。加工終了とともに、シャッターSTが閉じられてフェムト秒レーザLOを遮断する。その加工結果は、図7に示すものとなる。即ち、フェムト秒レーザLOは、長手方向Lが長い楕円形状(2mm前後のビーム幅L)をなし、これを円筒ワークWの内周面W1に向けて照射するとともに、上記λ/2板Pを上記反射ミラーの1/2の回転量で回転させることで、連続した周期性の微細周期性溝(2mm前後の加工幅L)KMが同一方向に整列加工される。
【0040】
尚、上記加工において、円筒ワークWを把持するチャック手段7をZ軸駆動手段9で第二回転筒体49の軸芯方向O1へのフェムト秒レーザの出力(シャツターSTで開閉制御)と同期させて移動させると、上記フェムト秒レーザが円筒ワークの内周面W1に所定幅だけ照射されるとともに、内周面W1には、微細周期性溝が同一方向に所定幅だけ整列加工される。その加工も簡単な加工装置で実行される。即ち、上記作用において、円筒ワークWをこの軸芯方向O2への微細周期性溝KMの加工幅は、該円筒ワークWをワーク回転駆動部5A内の回転制御モータMMによるチャック手段の回転状態でZ軸駆動手段9を+Z軸方向(第二回転筒体49側)へ前進させて行なわれる。しかして、円筒ワークWの内周面W1には、図10に示すように、Z軸駆動手段9の2通りの移動方法とその加工軌跡による加工が行なわれる。即ち、図10(a)は、第二回転筒体49の1回転毎に、Z軸駆動手段9を所定量毎の1ピック送りを繰り返した間欠移動により、内周面W1に対して周期構造体を所定幅に加工される。また、図10(b)は、第二回転筒体49の1回転毎に、Z軸駆動手段9を所定量の1ピック送りをネジ棒送りのように連続移動されスパイラル状に加工される。これにより、内周面W1に対して周期構造体を所定幅に加工される。しかして、任意寸法の加工幅にナノ周期構造の微細周期性溝KMが加工される。尚、上記微細周期性溝(2mm前後の加工幅L)KMの加工幅Lは、フェムト秒レーザ光LOの出力に比例的に広くなる。図11に微細周期性溝KMを加工した顕微鏡写真を示している。
【0041】
続いて、上記円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置100は、図2・図3・図8に示すように、λ/2板Pと反射ミラーMとの間にディンプル加工用ホモジナイザーH2を配置した実施例とすることができる。この実施例においては、フェムト秒レーザ光LOのエネルギー断面は、図8に示すように、エネルギー密度の高いスポットS1〜S6が数点見られる。これにより、上記微細周期性溝KM以外のディンプルDPが円筒ワークWの内周面W1に効率良く加工される。上記円筒ワークWの軸芯O2方向へのディンプルDPの加工幅は、該円筒ワークWをワーク回転駆動部5Aの回転状態でZ軸駆動手段9を+Z軸方向へ前進させて行なわれる。しかして、円筒ワークWの内周面W1には、任意寸法の加工幅にディンプルDPが並べられて加工される。即ち、図10(a)と図10(b)に示すように、Z軸駆動手段9の二つの移動方法と加工軌跡方法によって行われる。図12にディンプルDPを加工した顕微鏡写真を示している。
【0042】
従って、上記円筒ワークWが、例えば、シリンダブロックであれば、シリンダの内周面に微細周期性溝KM(2mm前後の加工幅L、一本の溝幅は数百nm)やディンプルDPが別個に加工される。更には、両者の混合加工用ホモジナイザーH3に切替えれば、図9(d)に示すように、均一なエネルギー分布SOとエネルギー密度の高い複数のスポットS1〜S6と存在し、微細周期性溝KMとディンプルDPとが混在した形態に複合的に加工される。上記微細周期性溝KMやディンプルDPを、円筒ワークWの一つの具体的な形態であるシリンダに加工すれば、ピストンリングとの接触面積の低減及び多数の凹溝に潤滑油が溜まってエンジンにおけるピストンとシリンダ間の摩擦抵抗を極限まで減らすことが可能になり、自動車の燃費改善が最大限に図られる。
【0043】
以上、本発明の第1の実施の形態となる円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置によれば、下記のような効果が発揮される。即ち、三次元形状の円筒ワークWの内周面に対して、円筒ワーク側を固定し反射ミラー側を回転させる周期構造体加工方法とその装置としたから、円筒ワークの内周面に対して、周期構造体となる微細周期性溝またはディンプルを単一的または複合的に効率良く加工できる。その加工幅も円筒ワークWをZ軸方向へ移動させれば、円筒ワークWの内周面W1には、任意寸法の加工幅に微細周期性溝KMまたはディンプルDPまたはこれらの混合溝が効率良く加工できる。
【0044】
しかして、上記円筒ワークWが例えば、シリンダブロックであれば、多数の溝に潤滑油が溜まってエンジンにおけるピストン往復運動の全ストローク区間において、ピストンとシリンダ間の摩擦抵抗を極限まで効率良く減らすことができる。また、ベアリングの回転摩擦抵抗を極限まで減らすことができる。
【0045】
続いて、図13〜図16により、本発明の第2の実施の形態となる外周体の周期構造体加工方法とその装置100´を説明する。この周期構造体加工方法と装置100´は、筒体49と反射ミラーM側を固定し、上記λ/2板Pを省略し、上記チャック手段7で円筒ワークWを回転させて加工するものである。その全体構成は、フェムト秒レーザ発振器10と、上記フェムト秒レーザ発振器10から発射される直線偏光のフェムト秒レーザLOを導入するレーザ加工ヘッド20を備える。上記レーザ加工ヘッド20は、これに導入されたフェムト秒レーザをホモジナイザーH(H1,H2,H3の一つ)を介して集光レンズR3で集光させ先端部の反射ミラーMで外径方向に進ませる筒体49を備え、上記反射ミラーで外径方向に向けたフェムト秒レーザを上記反射ミラーの外周囲に配置した円筒ワークWの内周面W1に向けて照射させる機能を有する。更に、上記レーザ加工ヘッド20における上記反射ミラーの外周囲に円筒ワークWをチャック手段7で把持しこの位置制御を行うワーク制御テーブル3を備える。上記ワーク制御テーブル3は、上記第1の実施の形態と同一であるが、再度説明をする。即ち、上記ワーク制御テーブル3は、円筒ワークWをX軸方向(図示の前後方向)に移動させるX軸駆動手段30と、これに搭載されて円筒ワークWをZ軸方向(図示の左右方向)に移動させるZ軸駆動手段9と、このZ軸駆動手段9上のコラム9Aに搭載されてY軸方向(図示の上下方向)に移動させるY軸駆動手段5と、この前壁面に配置したワーク回転駆動部5Aと、この前部に配置したチャック手段7とからなる。しかして、上記円筒ワークWは、上記レーザ出力部20Aの軸芯(回転中心)O1に対してその軸芯(回転中心)O2を一致させるべく、Y軸駆動手段5と、これを左右X軸の方向に移動させるX軸駆動手段30との合成された微動送りで位置合わせが行われる。また、上記レーザ出力部20Aに対する円筒ワークWの挿入深さ位置ZAは、上記X軸駆動手段30に搭載されたZ軸駆動手段9を前後方向となる−Z軸方向(図示の左側方向)又は+Z軸方向(図示の右側方向)へ微動させて行う。即ち、上記円筒ワークをチャック手段7とワーク回転駆動部5Aごと、この軸芯方向O2に移動させて上記フェムト秒レーザを円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射させるZ軸駆動手段9とからなる。更に、上記円筒ワークWを、上記レーザ加工ヘッド20の先端における内筒49Bの外周でフェムト秒レーザLOの照射を受けながら回転ROさせるには、Y軸駆動手段5に搭載したワーク回転駆動部5A内の回転制御モータMMによりチャック手段を回転駆動させて行われる。上記上下のY軸と左右のX軸と前後のZ軸の各駆動は、ガイドレール部材G1, G2, G3とY軸送りのモータM1及びZ軸送りのモータM2,X軸送りのモータM3により行われる。上記ワーク制御テーブル3やその他のユニット10,20等は、上記制御手段200により制御される。尚、その他の部材の詳細構成は、上記第1の実施の形態の周期構造体加工装置100と、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
本発明の第2の実施の形態となる円筒内周面の周期構造体加工装置100´は、上記構成からなり、以下のように円筒内周面の周期構造体加工方法が実施される。その作用は、筒体49を回転させずλ/2板を使用することなく、円筒ワークWの内周面にナノ周期構造体が加工される。具体的には、フェムト秒レーザ発振器10から発射されるフェムト秒レーザLOは、シャッターSTの開閉によりレーザ加工ヘッド20へ導かれ、この筒体49に導入されるフェムト秒レーザを周期性溝用ホモジナイザーH1を介して集光レンズR3で集光されつつ先端部の反射ミラーMで外径方向に進むフェムト秒レーザとなる。上記フェムト秒レーザは、反射ミラーの外周囲にチャック手段7で把持された円筒ワークWの内周面W1に向けて照射される。このフェムト秒レーザの出力(シャッターSTで開閉制御)と同期させて、上記ワーク回転駆動部5Aのチャック手段7に把持された円筒ワークは、このワーク回転駆動部5Aの回転制御モータMMにより回転駆動される。これにより、連続した周期性の微細周期性溝KMが円筒ワークWの内周面W1に対して同一方向に整列加工される。
【0047】
ここで、上記円筒ワークWをワーク回転駆動部5Aによるチャック手段7の回転動に同期させてZ軸駆動手段9により軸芯方向O2へ移動させると、フェムト秒レーザの出力が同期して円筒ワークWの内周面W1に所定幅だけ照射されるとともに、円筒内周面には、微細周期性溝が同一方向に所定幅だけ整列加工される。この加工は、円筒ワークWの回転と軸芯方向への移動だけで実行される。上記加工終了とともに、シャッターSTが閉じられてフェムト秒レーザLOを遮断する。この結果、円筒内周面W1には、微細周期性溝KMが同一方向に所定幅だけ整列加工され、簡単な加工装置で実行される。即ち、図10(a)に示すように、円筒ワークWは、この1回転毎に、Z軸駆動手段9により所定量毎の1ピック送りを繰り返えす間欠移動により、内周面W1に対して周期構造体が所定幅に加工される。また、図10(b)のように、筒体49の1回転毎に、Z軸駆動手段9を所定量の1ピック送りをネジ送りのように連続移動すれば、スパイラル状に加工される。これにより、内周面W1に対して周期構造体が任意寸法の所定幅に加工される。図11に微細周期性溝KMを拡大した顕微鏡写真で示している。
【0048】
また、上記周期構造体を成形させる方法と装置100´においては、筒体49内の上記周期性溝用ホモジナイザーH1を別のディンプル加工用ホモジナイザーH2に切替えれば、円筒ワークWの内周面W1には、任意寸法の加工幅にディンプルDPが加工される。図12にディンプルDPを拡大した顕微鏡写真で示している。更に、別の両者の混合加工用ホモジナイザーH3に切替えれば、円筒ワークWの内周面W1には、任意寸法の加工幅に微細周期性溝KMとディンプルDPとの混合加工が行なわれる。
【0049】
本発明の第2の実施の形態となる円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置100´によれば、下記のような効果が発揮される。即ち、筒体を回転させずλ/2板を使用することなく、極めて簡単な装置と加工方法により、円筒ワークの回転とこれを軸芯方向へ移動させるだけの制御で良く、円筒ワークWの内周面W1のような三次元曲面に各種形状の周期構造体を容易に加工することができる。その他の効果は、上記第1の実施の形態となる円筒内周面の周期構造体加工方法とその装置100と同様な効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の円筒内周面の周期構造体体加工方法とその装置は、円筒内周面の加工例で説明した。その具体例は、自動車の燃費改善対策として、エンジンにおけるシリンダ内周面に対する加工を施すことで、ピストンとシリンダ間の摩擦低減がなされるもので説明した。しかし、シリンダブロックに限定されず、その他の機器やベアリングの外輪内周面の回転摩擦抵抗、円筒状の内周面の摩擦抵抗を極限まで減らすために施すことが可能である。更に、本発明の方法とその装置において、発明の要旨内での各部の設計変更や構成部材の変更・置換も自由に行え得るものである。具体的には、上記各実施の形態では、横型の周期構造体加工装置100,100´として説明したが、フェムト秒レーザ発振器10を上部に配置して下向きにレーザを発射し、この下部に配置したワークを加工する縦型の周期構造体加工装置としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示し、円筒内周面の周期構造体加工装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示し、反射ミラー部の概要断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示し、レーザ加工ヘッドの詳細な断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示し、レーザ加工ヘッドの駆動系の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示し、λ/2板の拡大写真図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示し、λ/2板の作用図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示し、微細周期性溝を加工するレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示し、ディンプルを加工するレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示し、ホモジナイザーの構成図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示し、進退駆動手段の移動方法と加工軌跡の説明図である。
【図11】微細周期性溝の拡大写真図である。
【図12】ディンプルの拡大写真図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態を示し、円筒内周面の周期構造体加工装置の全体構成図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示し、レーザ加工ヘッドの詳細な断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態を示し、微細周期性溝を加工するレーザ加工ヘッドの構成図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態を示し、ディンプルを加工するレーザ加工ヘッドの構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 防振台
2 基盤
3 ワーク制御テーブル
5 Y軸駆動手段
5A ワーク回転駆動部
7 チャック手段
9 Z軸駆動手段
9A コラム
10 フェムト秒レーザ発振器
10A レーザ発生部
10B ファイバーレーザ発振器
10C パルスストレッチャー
10D Ti:sapphire再生増幅器
10E パルスコンプレッサー
10F レーザパワー減衰器
10G 砺起用パルスグリーンレーザ
10H 電源制御部
10I 筐体温度安定化用冷却装置
20 レーザ加工ヘッド
20A レーザ出力部
30 X軸駆動手段
40 支持体
41 第一回転筒体
42 連絡筒
43 プーリー
44 プーリー
45 保持体
46 フランジ
47 回転軸
48 軸受体
49A 外筒
49B 内筒
49 第二回転筒体(筒体)
50 プーリー
51 プーリー
A1,A2 アイリス
CPU 中央制御部
DD 駆動部
DP ディンプル
NC NC制御部
KM 微細周期性溝
LO フェムト秒レーザ
G1, G2, G3 ガイドレール部材
KB1,KB2 確動ベルト
M1, M2, M3 モータ
MO 駆動モータ
MM 回転制御モータ
M 反射ミラー
H ホモジナイザー
H1 周期性溝用ホモジナイザー
H2 ディンプル用ホモジナイザー
H3 混合加工用ホモジナイザー
O1,O2 軸芯(回転中心)
P λ/2板
RO 回転
R1 平凹レンズ
R2,R3 平凸レンズ
SD 回転駆動手段
SO 均一なエネルギー分布
S1〜S6 スポット
ST シャッター
W 円筒ワーク
W1 内周面
θh 反射ミラーの回転
θp λ/2板の回転
ZA 挿入深さ位置
−Z、+Z Z軸方向
100 周期構造体加工装置
100´ 周期構造体加工装置
200 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザを回転可能に設けられた第一回転筒体内に導き、上記第一回転筒体内に配置されたλ/2板により直線偏光の偏光方向を変化させるとともに、上記第一回転筒体に対して軸芯を合わせて回転可能に設けられた第二回転筒体内に配置された集光レンズと反射ミラーとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進ませ、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段で把持された円筒ワークの内周面を対面させて上記フェムト秒レーザを照射させ、上記反射ミラーを備えた上記第二回転筒体の回転1回転に対して上記λ/2板を備えた上記第一回転筒体を1/2の回転させ、上記円筒ワークの内周面に周期性溝を同一方向に整列加工することを特徴とする円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項2】
上記円筒ワークが把持されたチャック手段をZ軸駆動手段により円筒ワークの軸芯方向に連続移動または間欠移動させ、上記フェムト秒レーザを上記円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射させることを特徴とする請求項1記載の円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項3】
上記反射ミラーに向かうフェムト秒レーザを第二回転筒体内であって集光レンズの前側に配置されたディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーに入射させることにより、上記円筒ワークの内周面にディンプルまたは混合の周期構造体を形成することを特徴とする請求項1または2記載の円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項4】
フェムト秒レーザ発振器と、上記フェムト秒レーザ発振器からの直線偏光のフェムト秒レーザを導入する回転可能な第一回転筒体と、上記第一回転筒体内に配置され上記フェムト秒レーザの偏光方向を変化させるλ/2板と、上記第一回転筒体に回転軸芯を合わせて配置される第二回転筒体と、上記第二回転筒体内に配置されフェムト秒レーザを集光させる集光レンズと、上記第二回転筒体の先端側に配置されフェムト秒レーザを外径方向に屈折させる反射ミラーと、上記第二回転筒体の回転1回転に対して上記第一回転筒体を1/2の回転させる回転駆動手段と、円筒ワークを所定位置に把持するチャック手段と、を具備したことを特徴とする円筒内周面の周期構造体加工装置。
【請求項5】
上記チャック手段に把持された円筒ワークをその軸芯方向に進退させるZ軸駆動手段を具備したことを特徴とする請求項4記載の円筒内周面の周期構造体加工装置。
【請求項6】
上記第二回転筒体内であって集光レンズの前側にディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを配置したことを特徴とする請求項4または5記載の円筒内周面の周期構造体加工装置。
【請求項7】
フェムト秒レーザ発振器から発射される直線偏光のフェムト秒レーザを筒体内に導き、上記筒体内の集光レンズと反射ミラーとによりフェムト秒レーザを集光しつつ外径方向に進ませ、上記反射ミラーの外周囲にチャック手段により把持された円筒ワークの内周面を対面させて上記フェムト秒レーザを照射させ、上記円筒ワークを回転駆動させてこの内周面に周期性溝を同一方向に整列加工することを特徴とする円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項8】
上記円筒ワークが把持されたチャック手段をZ軸駆動手段により円筒ワークの軸芯方向に連続移動または間欠移動させ、上記フェムト秒レーザを上記円筒ワークの内周面に所定幅だけ照射させることを特徴とする請求項7記載の円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項9】
上記反射ミラーに向かうフェムト秒レーザを筒体内であって集光レンズの前側に配置されたディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーに入射させることにより、上記円筒ワークの内周面にディンプルまたは混合の周期構造体を形成することを特徴とする請求項7または8記載の円筒内周面の周期構造体加工方法。
【請求項10】
フェムト秒レーザ発振器と、上記フェムト秒レーザ発振器からの直線偏光のフェムト秒レーザを導入する筒体と、上記筒体内に配置され直線偏光のフェムト秒レーザを集光させる集光レンズと、上記筒の先端側に配置されフェムト秒レーザを外径方向に屈折させる反射ミラーと、上記円筒ワークを所定位置に把持するチャック手段と、上記チャック手段を回転駆動させるワーク回転駆動部と、を具備したことを特徴とする円筒内周面の周期構造体加工装置。
【請求項11】
上記チャック手段に把持された円筒ワークをその軸芯方向に進退させるZ軸駆動手段を具備したことを特徴とする請求項10記載の円筒内周面の周期構造体加工装置。
【請求項12】
上記筒体内であって集光レンズの前側にディンプル加工用ホモジナイザーまたは混合加工用ホモジナイザーを配置したことを特徴とする請求項10または11記載の円筒内周面の周期構造体加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−200698(P2008−200698A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37963(P2007−37963)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000121202)エンシュウ株式会社 (25)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(591114803)財団法人レーザー技術総合研究所 (36)
【Fターム(参考)】