説明

円筒型非水電解液電池及びその製造方法

【課題】電極群を巻回する際の巻きずれ及び電極板の切れを防止できる円筒型非水電解液電池の製造方法を提供する。
【解決手段】第一電極リード210が接続された第一電極板21、セパレータ27及び第二電極リード710が接続された第二電極板22を巻回する。第一電極リード210は、板状部と丸棒部とを有する。板状部には、当該板状部とセパレータ27との間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が形成されている。第一電極板21及び第二電極板22の幅方向に関して、セパレータ27の周縁部を第一電極板21及び第二電極板22から突出させ、丸棒部をセパレータ27の周縁部の外に位置させる。セパレータ27の周縁部と滑り止め構造とを重ねつつ、第一電極板21、セパレータ27及び第二電極板22を巻回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型非水電解液電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ノート型パソコンを始めとした様々なポータブル機器に使用されている。携帯性の向上、駆動時間の延長及び駆動の安定化の観点から、ポータブル機器向けの二次電池には、軽量化、エネルギー密度の向上及び信頼性の向上が求められる。
【0003】
ポータブル機器向けの二次電池として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電極群を収容するための容器として、アルミニウム箔製の容器、及び金属製の角型容器が広く使用されている。
【0004】
一方、エネルギー分野向けの二次電池には、金属製の円筒状容器が広く使用されている。金属製の円筒状容器を用いた二次電池は、一般的には、容器内に電極群を収容し、容器の開口部を封口板により封口することにより製造される。電極群に接続された2つのリード端子は、容器及び封口板にそれぞれ溶接される。封口板の構造は、比較的複雑で値段も高い。また、リードの溶接工程も面倒である。そこで、特許文献1の構造の電池が提案されている。
【0005】
特許文献1には、図9に示すような円筒型非水電解液電池880が開示されている。円筒型非水電解液電池880は、電極群820、正極リード810、負極リード910、電池ケース860及び封口体870を備えている。電極群820は電池ケース860に収容されている。正極リード810及び負極リード910は丸棒部812及び912をそれぞれ有する。封口体870はゴム製であり、丸棒部812及び912を支持しながら電池ケース860の開口部を封口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−308206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らが、特許文献1に記載された円筒型非水電解液電池を作製したところ、次の不具合が生じた。具体的には、電極群を巻回するときに巻きずれが生じたり、正極板及び負極板が切れたりした。このような不具合は、電極群とリードとの相互干渉によるものと考えられる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、巻きずれ及び電極板の切れを防止できる円筒型非水電解液電池の製造方法と、当該製造方法によって製造された円筒型非水電解液電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第一活物質を含む第一電極板と、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第二活物質を含み、前記第一電極板の極性と反対の極性を有する第二電極板と、前記第一電極板及び前記第二電極板よりも幅広のセパレータとを準備する工程と、
前記第一電極板及び前記第二電極板に第一電極リード及び第二電極リードをそれぞれ電気的に接続する工程と、
前記第一電極板及び前記第二電極板の幅方向に関して前記セパレータの周縁部が前記第一電極板及び前記第二電極板から突出し、前記第一電極板からの前記第一電極リードの突出方向が前記第二電極板からの前記第二電極リードの突出方向に一致するように、前記第一電極板、前記セパレータ及び前記第二電極板の相対的な位置関係を定める工程と、
巻かれた電極群を形成するように、前記第一電極板、前記セパレータ及び前記第二電極板を巻回する工程と、
前記第一電極リード及び前記第二電極リードが封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びるように、前記電極群を前記電池ケースに入れて前記電池ケースの開口部を前記封口体で閉じる工程と、を含み、
前記第一電極リードは、前記第一電極板に固定された板状部と、前記板状部と一体に形成された丸棒部とを有し、前記板状部の厚さ方向に関する前記第一電極リードの寸法が前記板状部と前記丸棒部との境界で不連続に変化しており、
前記板状部には、当該板状部と前記セパレータとの間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が前記境界に隣接した位置に形成されており、
前記幅方向に関して前記丸棒部を前記セパレータの前記周縁部の外に位置させ、かつ、前記セパレータの前記周縁部を前記滑り止め構造に重ねつつ、前記巻回工程を実施する、円筒型非水電解液電池の製造方法を提供する。
【0010】
他の側面において、本発明は、
リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第一活物質を含む第一電極板と、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第二活物質を含み、前記第一電極板の極性と反対の極性を有する第二電極板と、前記第一電極板及び前記第二電極板よりも幅広のセパレータとを有する、巻かれた電極群と、
前記電極群を収容している円筒状の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を閉じている封口体と、
前記第一電極板に電気的に接続され、前記封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びている第一電極リードと、
前記第二電極板に電気的に接続され、前記封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びている第二電極リードと、を備え、
前記第一電極リードは、前記第一電極板に固定された板状部と、前記板状部と一体に形成された丸棒部とを有し、前記板状部の厚さ方向に関する前記第一電極リードの寸法が前記板状部と前記丸棒部との境界で不連続に変化しており、
前記板状部には、当該板状部と前記セパレータとの間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が前記境界に隣接した位置に形成されており、
前記第一電極板及び前記第二電極板の幅方向に関して前記セパレータの周縁部が前記第一電極板及び前記第二電極板から突出し、
前記幅方向に関して前記丸棒部が前記セパレータの前記周縁部の外に位置し、かつ、前記セパレータの前記周縁部が前記滑り止め構造に重なっている、円筒型非水電解液電池を提供する。
【0011】
第一電極板が正極板のとき、第一電極リードが正極リードに相当し、第一活物質が正極活物質に相当し、第二電極板が負極板に相当し、第二電極リードが負極リードに相当し、第二活物質が負極活物質に相当する。第一電極板が負極板のとき、第一電極リードが負極リードに相当し、第一活物質が負極活物質に相当し、第二電極板が正極板に相当し、第二電極リードが正極リードに相当し、第二活物質が正極活物質に相当する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第一電極リードの寸法が板状部と丸棒部との境界で不連続に変化している。第一電極リードの板状部には、当該板状部とセパレータとの間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が形成されている。幅方向に関して丸棒部をセパレータの周縁部の外に位置させ、かつ、セパレータの周縁部を滑り止め構造に重ねつつ、巻回工程を実施する。このようにすれば、セパレータの周縁部が第一電極リードから過度な荷重を受けたり、第一電極リードの表面を滑ったりすることを防止できる。そのため、電極群に過度な応力が加わることも防止できる。本発明によれば、巻きずれ及び電極板の切れを防止できる。また、本発明によれば、外部の振動などによる巻きずれが生じ難い電極群を有する円筒型非水電解液電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る円筒型非水電解液電池の断面図
【図2】図1に示す電池の電極群の分解斜視図
【図3A】電極リードの製造方法を説明するためのフロー図(斜視)
【図3B】電極リードの製造方法を説明するためのフロー図(断面)
【図3C】滑り止め構造として凹凸が形成された電極リードの平面図
【図3D】滑り止め構造としてローレットが形成された電極リードの平面図
【図4A】正極側のリード取付工程を説明するための斜視図
【図4B】負極側のリード取付工程を説明するための斜視図
【図4C】リード取付工程を説明するための、正極リード周辺の拡大斜視図
【図4D】リード取付工程を説明するための、負極リード周辺の拡大斜視図
【図5A】積層工程を説明するための斜視図
【図5B】積層工程を説明するための、正極リード周辺の拡大斜視図
【図5C】積層工程を説明するための、負極リード周辺の拡大斜視図
【図6】巻回工程を説明するためのフロー図
【図7】収容工程を説明するためのフロー図
【図8】封口工程を説明するためのフロー図
【図9】従来の円筒型非水電解液電池の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の円筒型非水電解液電池80(以下、単に「電池80」とも記載する)は、円筒状の電池ケース60、電池ケース60に収容された電極群20、及び電池ケース60の開口部に固定された封口体70を備えている。電池80は、典型的には、リチウムイオン二次電池である。
【0016】
図2に示すように、電極群20は、正極板21、負極板22及び2つのセパレータ27で構成されている。正極板21は、正極集電体23及び正極活物質層24で構成されている。負極板22は、負極集電体25及び負極活物質層26で構成されている。セパレータ27は、それぞれ、正極板21と負極板22との間に配置されている。正極板21には、電力取り出し用の正極リード210が電気的に接続されている。負極板22には、電力取り出し用の負極リード710が電気的に接続されている。電極群20は、渦状に巻かれており、全体として円筒の形を有している。電極群20の巻回軸に関して、正極リード210は、負極リード710と向かい合っている。
【0017】
図1に示すように、封口体70には、貫通孔70a及び70bが形成されている。正極リード210は、貫通孔70aの中で封口体70に保持されるように封口体70の貫通孔70aに挿し込まれている。同様に、負極リード710は、貫通孔70bの中で封口体70に保持されるように封口体70の貫通孔70bに挿し込まれている。つまり、正極リード210及び負極リード710は、それぞれ、貫通孔70a及び70bを通って電池ケース60の外部まで延びている。本実施形態では、電池ケース60の高さ方向に関して、正極リード210の長さが、負極リード710の長さに一致している。
【0018】
電池ケース60の側部には、電池ケース60の高さ方向に関して封口体70の上面70pと封口体70の下面70qとの間において、電極群20の中心軸に向かう方向に突出しているかしめ部60aが設けられている。かしめ部60aは、円環の形状を有するように電池ケース60の周方向に沿って形成されている。この構成によれば、封口体70に対して、周方向に均一な圧縮荷重を付与できる。電池ケース60の開口部には、U字状に曲げられたかしめ部60bが設けられている。かしめ部60bは、封口体70の上面に接しており、これにより、電池ケース60の中に押し込む方向の荷重を封口体70に付与している。
【0019】
なお、電池ケース60の底部の空間、すなわち、電池ケース60の底部と電極群20との間に絶縁シートなどの他の部材が設けられていてもよい。同様に、封口体70の下面70qと電極群20との間に絶縁シートなどの他の部材が設けられていてもよい。
【0020】
次に、図1に示す電池80の製造方法を説明する。
【0021】
[部材準備工程]
まず、電池80を構成する各部材を準備する。
【0022】
(電極リード)
本実施形態では、図3Aに示すように、ワークピース10を加工することにより正極リード210を作製する。ワークピース10として、既存の電極リードを使用できる。ワークピース10は、板状部11と、丸棒部12と、先端部13と、隆起部14とを有する。
【0023】
板状部11は、帯状の形状を有する。図3Aにおいて、板状部11の長手方向は、x方向に平行である。丸棒部12は、円柱の形状を有する。丸棒部12は、板状部11に一体に形成されている。先端部13は、線状の形状を有する。先端部13は、板状部11の反対側で丸棒部12に溶接されている。
【0024】
図3Bに示すように、隆起部14は、板状部11の厚さ方向(図3Bに示すy方向)に関するワークピース10の寸法を、板状部11と丸棒部12との境界近傍領域において連続に変化させるように設けられている。
【0025】
まず、ワークピース10の隆起部14を除去する。隆起部14を除去する方法は限定されない。例えば、ヤスリで隆起部14を削り取ればよい。隆起部14を除去した後、板状部11の厚さ方向に関するワークピース110の寸法は、板状部11と丸棒部12との境界で不連続に変化している。つまり、板状部11の厚さd1及び丸棒部12の直径d2は、それぞれ、一定であり、丸棒部12の直径d2は、板状部の厚さd1よりも大きい。丸棒部12は、例えば、板状部11の厚さの2〜10倍の直径を有している。板状部11の厚さd1は、例えば、0.2〜0.5mmである。丸棒部12の直径d2は、例えば、0.4〜5mmである。ワークピース110の板状部11及び丸棒部12の各構造は、正極リード210に反映される。
【0026】
次に、板状部11に溝11aを形成する。溝11aは、板状部11の幅方向(図3Aに示すz方向)に延びている。幅方向とは、板状部11の長手方向及び厚さ方向に直交する方向である。溝11aは、板状部11の長手方向の摺動性を低下させる、すなわち、摩擦係数を高めるように作用する滑り止め構造を構成する。本実施形態では、溝11aを、板状部11における、板状部11と丸棒部12との境界に隣接した位置に形成する。また、本実施形態では、溝11aを、板状部11の表面及び裏面に形成する。このようにして、正極リード210を作製する。
【0027】
なお、本実施形態では、複数の溝11aを形成している。しかし、溝11aは、1つの溝であってもよい。また、溝11aの具体的な寸法は限定されない。例えば、溝11aの深さは0.05〜0.1mmとすればよい。また、溝11aは、幅方向全体に形成することが好ましい。つまり、溝11aの一端が板状部11の一方の側面に位置し、溝11aの他端が板状部11の他方の側面に位置していてもよい。このようにすれば、板状部11の側面によってもセパレータ27を捕らえることができる。
【0028】
また、単一の工程で、隆起部14の除去と、溝11aの形成とを実施してもよい。例えば、隆起部14にヤスリを接触させ、ヤスリを幅方向に動かすことにより、隆起部14の除去と、溝11aの形成の双方を実施できる。このようにすれば、単一の工程でワークピース10から正極リード210が得られる。したがって、加工コストを抑制できる。
【0029】
また、ワークピース10としては、市販の電極リードを用いればよい。また、本実施形態では、ワークピース10を加工して正極リード210を作製しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、原材料から直接正極リード210を作製してもよい。具体的には、まず、丸棒部12の直径と同じ直径を有する線材を準備する。次に、線材を適切な長さに切断する。次に、板状部11が形成されるように、切断された線材をプレス加工する。次に、プレス加工によってできた隆起部14を研削、研磨などの加工方法で除去する。最後に、先端部13を丸棒部12に溶接すればよい。
【0030】
また、本実施形態では、溝11aにより滑り止め構造を構成している。溝11aによる滑り止め構造は、板状部11の長手方向の摺動性を低下させる点で優れている。しかし、他の態様で滑り止め構造を構成してもよい。例えば、凹凸、ローレット、突起又はノッチにより滑り止め構造を構成してもよい。図3Cに示すような、凹凸11bにより構成された滑り止め構造は、板状部11の厚さ方向に垂直な全ての方向の摺動性を低下させる点で優れている。凹凸11bは、例えば、板状部11の表面を粗すことで形成できる。なお、図3Cでは、凹凸11bは目視可能な大きさの凹凸であるが、凹凸11bは、目視できない粗面であってもよい。また、図3Dに示すような、ローレット11cにより構成された滑り止め構造も、凹凸11bにより構成された滑り止め構造と同様の点で優れている。ローレット11cは、例えば、板状部11における滑り止め構造を形成すべき部分に対してダイスを強く押し当てることにより、当該部分を塑性変形させることで形成できる。また、突起により構成された滑り止め構造も、板状部11の摺動性を低下させる点で優れている。また、ノッチにより滑り止め構造は、セパレータ27の破損を抑制しつつ板状部11の摺動性を低下させる点で優れている。
【0031】
本実施形態において、負極リード710は、正極リード210と同じ構造を有している。そのため、負極リード710も正極リード210と同じ方法で作製できる。図3A及び図3Bに示すように、リード作製工程では、ワークピース510から隆起部514を除去する。隆起部514が除去されたワークピース610に溝511aを形成することにより負極リード710が得られる。負極リード510は、板状部511、丸棒部512及び先端部513を有する。板状部511の表面及び/又は裏面には、滑り止め構造としての溝511aが形成されている。
【0032】
正極リード210及び負極リード710の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ステンレスが挙げられる。負極リード710は、正極リード210と同じ材料でできていてもよいし、異なる材料でできていてもよい。正極リード210において、板状部11及び丸棒部12は、基本的には、同じ材料でできている。先端部13は、板状部11及び丸棒部12と同じ材料でできていてもよいし、異なる材料でできていてもよい。このことは、負極リード710についても同じである。
【0033】
(正極板)
まず、正極活物質及び任意の材料を混練することにより正極合剤を作製する。任意の材料には、溶媒、導電助剤、結着剤などが含まれる。次に、正極合剤を正極集電体23に塗布する。塗布された正極合剤を乾燥させることにより、正極集電体23の上に正極活物質層24が形成される。次に、所定の厚さの正極板21が形成されるように、正極集電体23及び正極活物質層24を圧延する。その後、正極板21を所定の寸法に切断する。これにより、帯状の正極板21が得られる。なお、正極集電体23の両面に正極合剤を塗布してもよいし、正極集電体23の片面に正極合剤を塗布してもよい。
【0034】
正極集電体23は、導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成されている。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。正極集電体23の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が挙げられる。
【0035】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる材料を使用できる。このような正極活物質としては、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24又はLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4)などの酸化物が挙げられる。上記化学式の「x」及び「y」は、それぞれ、0〜1の範囲の値をとりうる。好ましい正極活物質としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄が挙げられる。これらは、金属リチウムの電位に対して例えば3.0V以上5.0V以下の充放電電位を有する。
【0036】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料を使用できる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの樹脂材料を使用できる。
【0037】
(負極板)
まず、負極活物質及び任意の材料を混練することにより負極合剤を作製する。任意の材料には、溶媒、導電助剤、結着剤などが含まれる。次に、負極合剤を負極集電体25に塗布する。塗布された負極合剤を乾燥させることにより、負極集電体25の上に負極活物質層26が形成される。次に、所定の厚さの負極板22が形成されるように、負極集電体25及び負極活物質層26をプレスする。その後、負極板22を所定の寸法に切断する。これにより、帯状の負極板22が得られる。なお、負極集電体25の両面に負極合剤を塗布してもよいし、負極集電体25の片面に負極合剤を塗布してもよい。
【0038】
負極集電体25も、導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成されている。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。負極集電体25の材料としては、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が挙げられる。
【0039】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる材料を使用できる。好ましい負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金、リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti512)、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる炭素材料、リチウムと合金を形成しうる材料(いわゆる合金系活物質)などが挙げられる。炭素材料としては、グラファイトが挙げられる。合金系活物質としては、スズ、スズ合金、シリコン及びシリコン合金が挙げられる。充放電効率及びサイクル寿命の観点から、炭素材料又はリチウムチタン複合酸化物を好適に使用できる。
【0040】
なお、負極板22が有する負極活物質の電位が金属リチウムの電位よりも1.0V以上高い場合は、負極集電体25の材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。これにより、電池ケース60の材料として、後述の理由で好適なアルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。すなわち、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された電池ケース60に負極板が触れると、電池ケース60の溶出することがあるが、このような負極板22によれば、電池ケース60の溶出を防ぐことができる。
【0041】
金属リチウムの電位に対して1.0V以上高い電位を有する負極活物質として、リチウムとチタンとを含む複合酸化物が挙げられる。具体的には、化学式Li4+xTi512(0≦x≦3)で表され、スピネル型構造を有するチタン酸リチウムが挙げられる。チタン酸リチウムを負極板22に使用すると、負極板22の柔軟性は損なわれることがある。柔軟性に乏しい電極板は、巻回時に切れやすい。したがって、チタン酸リチウムを負極活物質として使用する場合、本実施形態の方法が特に推奨される。
【0042】
負極板22の結着剤及び導電助剤としては、正極板21と同じものを使用できる。
【0043】
(セパレータ)
本実施形態では、正極板21及び負極板22よりも幅広である帯状の2つのセパレータ27を準備する。すなわち、セパレータ27の短辺は、正極板21の短辺及び負極板22の短辺よりも長い。また、本実施形態では、セパレータ27の長辺は、正極板21の長辺及び負極板22の長辺よりも長い。
【0044】
セパレータ27としては、例えば、多孔質フィルム、不織布などが挙げられる。多孔質フィルムとしては、ポリエチレン又はポリプロピレンでできたものなどが挙げられる。不織布としては、セルロース又はポリビニルアルコール(PVA)でできたものなどが挙げられる。
【0045】
(非水電解質)
本実施形態では、電解質と有機溶媒とを含む液状の非水電解質を準備する。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネートが挙げられる。また、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)などの環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)などを使用してもよい。これらの有機溶媒は、単独又は2種以上の混合物の形態で使用できる。
【0046】
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などのリチウム塩が挙げられる。化学的安定性と高誘電率化の観点から、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を主たる電解質として用いることが好ましい。「主たる電解質」とは、モル比にて最も多く含まれた電解質を意味する。電解質は、有機溶媒に対して、例えば0.5〜2.0mol/Lの濃度で溶解している。
【0047】
(電池ケース)
本実施形態では、底部と開口部とを有する円筒形の電池ケース60を準備する。電池ケース60の材料としては、軽量で、加工性に優れる金属材料が好ましい。また、後述のように封口体70をかしめるために、かしめ強度を高め易い金属材料の中から選択することが好ましい。軽量で加工性に優れた金属材料としては、アルミニウム及びアルミニウム合金などが挙げられる。かしめ強度を高め易い金属材料としては、Cu、Mn、Siなどの元素を微量添加したアルミニウム合金が挙げられる。もちろん、ステンレスなどの他の金属材料も使用できる。
【0048】
(封口体)
本実施形態では、弾性材料(エラストマー)により構成された円柱状の封口体70を準備する。封口体70には貫通孔70a及び70bが設けられている。封口体70の材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、ブタジエンスチレンゴム(SBR)が挙げられる。貫通孔70a及び70bの内径は、例えば、0.2〜4.9mmである。
【0049】
以上の部材を準備した後に、下記の工程により電池80を組み立てる。
【0050】
[リード取付工程]
まず、図4Aに示すように、正極板21に正極リード210を電気的に接続する。具体的には、正極集電体23に正極リード210の板状部11を溶接によって固定する。溶接の方法としては、抵抗溶接、超音波溶接などが挙げられる。正極板21と同様の方法で、図4Bに示すように、負極板22に負極リード710を電気的に接続する。
【0051】
本実施形態では、正極リード210の溝11aが、正極板21に重なり合わないように、正極リード210と正極板21とを接続する(図4C参照)。すなわち、正極板21の幅方向に関して板状部11の一部が正極板21から突出するように正極リード210を正極板21に接続する。板状部11には、正極板21から突出した部分にのみ溝11a(滑り止め構造)が形成されている。同様に、負極リード710の溝511aが、負極板22に重なり合わないように、負極リード710と負極板22とを接続する(図4D参照)。負極板22及び負極リード710にも正極板21及び正極リード210と同じ位置関係が採用されている。
【0052】
また、本実施形態では、正極板21の長手方向(図4Cに示すz方向)の一端を0%の位置、他端を100%の位置と定義したとき、正極リード210が正極板21の長手方向に関して10〜30%の範囲に位置するように、正極リード210を正極板21に接続する。同様に、負極板22の長手方向(図4Dに示すz方向)の一端を0%の位置、他端を100%の位置と定義したとき、負極リード710が負極板22の長手方向に関して10〜30%の範囲に位置するように、負極リード710を負極板22に接続する。これにより、後述の巻回工程後に、正極リード210及び負極リード710が適切な位置に配置される。
【0053】
[積層工程]
次に、図5Aに示すように、正極板21、1対のセパレータ27及び負極板22の相対的な位置関係を定める。具体的には、セパレータ27、負極板22、セパレータ27、正極板21の順にこれらを配置する。このようにして、電極群20、正極リード210及び負極リード710を有する積層体30を形成する。
【0054】
積層工程では、以下の関係を満たすように各部材の相対的な位置を調節する。すなわち、図5B及び図5Cに示すように、正極板21及び負極板22の幅方向(図5B及び図5Cに示すx方向)に関して、セパレータ27の周縁部27aが、正極板21及び負極板22から突出している。正極板21からの正極リード210の突出方向(図5B及び図5Cに示すx方向)は、負極板22からの負極リード710の突出方向に一致している。正極板21及び負極板22の幅方向に関して、丸棒部12の全部及び丸棒部512の全部が、周縁部27aの外に位置している。正極リード210の溝11aは、セパレータ27の周縁部27aに重なっている。負極リード710の溝511aも、セパレータ27の周縁部27aに重なっている。厳密には、溝11aは周縁部27aのみと重なり合っている。同様に、溝511aは周縁部27aのみと重なり合っている。
【0055】
なお、本実施形態では、溝11aが板状部11と丸棒部12との境界に隣接した位置に形成されている。板状部11と丸棒部12との境界に隣接した位置とは、詳細には、板状部11と丸棒部12との境界からその境界に最も近い正極板21の外縁までの領域に含まれた位置、又は、板状部11と丸棒部12との境界からその境界に最も近い負極板22の外縁までの領域に含まれた位置を意味する。より詳細には、板状部11と丸棒部12との境界に隣接した位置とは、板状部11と丸棒部12との境界からその境界に最も近い正極板21の外縁までの領域に含まれ、かつ、板状部11と丸棒部12との境界からその境界に最も近い負極板22の外縁までの領域に含まれた位置を意味する。
【0056】
[巻回工程]
次に、図6に示すように、積層体30を巻回する。具体的には、まず、巻芯40の軸方向が積層体30の短手方向に沿うように、積層体30の端部に巻芯40を接続する。次に、セパレータ27の周縁部27aを溝11a及び511aに重ねつつ、巻芯40を軸にして積層体30を巻回する。これにより、巻かれた電極群20が得られる。
【0057】
比較の形態として、正極リード及び負極リードとして、図3Aのワークピース10のような、隆起部を有する電極リードを用い、隆起部がセパレータに接触するように積層体を作製した場合を想定する。このような積層体を巻回すると、隆起部の外周側に巻回されたセパレータが巻回軸に平行な方向にずれ易い。したがって、巻きずれが生じたり、正極板及び負極板がねじれたり、正極板及び負極板の強度が弱い箇所が切れたりする。
【0058】
これに対し、本実施形態によれば、板状部11の厚さ方向に関する正極リード210の寸法は、板状部11と丸棒部12との境界で不連続に変化している。さらに、本実施形態では、正極板21の幅方向に関して、丸棒部12が、セパレータ27の周縁部27aの外に位置する。したがって、積層体30を巻回するときに丸棒部12がセパレータ27に接しない。すなわち、本実施形態では、セパレータ27が巻回軸に平行な方向にずれる要因が取り除かれている。正極板21、負極板22及びセパレータ27は、巻回軸に平行に保たれる。これにより、積層体30を巻回するときに巻きずれ並びに正極板21及び負極板22の切れを防止できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、正極リード210の溝11aがセパレータ27の周縁部27aに重なっている。溝11aは、セパレータ27の外縁に平行な方向に延びている。これにより、セパレータ27と正極リード210との間の摺動性を低下させることができる。特に、巻回軸に平行な方向に関して、セパレータ27を滑りにくくすることができる。したがって、積層体30を巻回するときに巻きずれ並びに正極板21及び負極板22の切れをより効果的に防止できる。
【0060】
また、溝11aは、セパレータ27の周縁部27aのみと重なっている。したがって、セパレータ27が、正極リード210の溝11aと正極板21との間に挟まれることがない。これにより、積層体30を巻回するときに、溝11aからセパレータ27に過剰な圧力が加わることを防止できる。したがって、積層体30を巻回するときに、セパレータ27が破れ難い。これにより、セパレータ27が破れることによって生じる電気的短絡を防ぐことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、溝11aが板状部11の表面及び裏面に形成されているので、セパレータ27の滑りをより確実に防止できる。ただし、板状部11の片面にのみ溝11aを形成しても、巻きずれ並びに正極板21及び負極板22の切れの防止効果を得ることができる。
【0062】
本実施形態において、負極リード710は正極リード210と同じ構造を有しており、負極リード710とセパレータ27との位置関係も正極リード210とセパレータ27との位置関係と同じように設定されている。したがって、上述した効果は、負極リード710についても得られる。
【0063】
本実施形態では、正極リード210及び負極リード710の両方がセパレータ27の滑りを防止するための構成を有している。しかし、正極リード210と負極リード710のいずれか一方のみを上記のように構成しても、巻きずれ並びに正極板21及び負極板22の切れを防止できる。
【0064】
一般的な円筒型二次電池では、リードの厚みは100μm程度なので、リードに起因した巻きずれ及び電極板の切れは起こり難い。
【0065】
これに対し、図9を参照して説明した電池880では、正極板の中間部に正極リードが固定されている。同様に、負極板の中間部に負極リードが固定されている。すなわち、電極群を巻回したとき、正極リード及び負極リードが電極群に巻き込まれる。そのため、巻きずれ並びに正極板及び負極板の切れが本質的に発生し易い。本実施形態では、上記したような構成を採用しているので、正極リード210及び負極リード710が電極群20に巻き込まれたとしても、巻きずれ並びに正極板21及び負極板22の切れを防止できる。
【0066】
[収容工程]
次に、図7に示すように、電極群20を電池ケース60に収容する。電極群20を電池ケース60に収容したら、非水電解液(図示せず)を電池ケース60に注入する。
【0067】
[封口工程]
次に、図8に示すように、電池ケース60の開口部を封口体70により封口する。具体的には、正極リード210及び負極リード710が封口体70に設けられた貫通孔70a及び70bからそれぞれ電池ケース60の外部に延びるように封口する。本実施形態では、丸棒部12及び丸棒部512が、貫通孔70a及び70bの中で封口体70から押圧力を受けて支持される。
【0068】
次に、電池ケース60をかしめて、封口体70を固定する。具体的には、電池ケース60に、かしめ部60aと、かしめ部60bとを形成する。かしめ部60aは、電池ケース60の側面を中心方向に向かって凹ませて形成する。また、かしめ部60bは、電池ケース60の開口側の端部を、中心方向に向かうU字状に折り曲げて形成する。
【0069】
封口体70の具体的な寸法は限定されないが、封口体70の直径は、封口体70が電池ケース60の開口部を密閉するように、電池ケース60の内径よりもある程度大きいことが好ましい。また、封口体70が有する貫通孔70a及び70bの内径は、封口体70と丸棒部12及び丸棒部512とが密着するように、丸棒部12及び丸棒部512の直径よりもある程度小さいことが好ましい。
【0070】
このようにして作製された電池80は、外部の振動などによる電極群20における巻きずれが発生し難い。したがって、電池80の信頼性は高い。また、電池80は、電極群20に接触すると巻きずれを引き起こす隆起部を省略できる。また、隆起部を省略すると、正極リード210の板状部11と丸棒部12との境界がセパレータ27の長辺に一致するように、正極リード210とセパレータ27との位置関係を設定することもできる。負極リード710とセパレータ27との位置関係も同様に設定することができる。したがって、本実施形態によれば、電池80を、小型化できる(すなわち、高エネルギー密度化できる)。
【実施例】
【0071】
(実施例)
まず、正極リード、負極リード、正極板、負極板、及びセパレータを準備した。
【0072】
正極リードを図3Aを参照して説明した方法で作製した。まず、ワークピースとして、コンデンサ用リード(ニューセントラル社製L3W20328FWPS)を準備した。次に、このワークピースの隆起部をやすりで削り取った。次に、ワークピースの板状部における丸棒部側の端部2mmの領域の表面及び裏面をやすりで削った。これにより、幅方向(図3Aに示すz方向)に延びる溝を形成した。このようにして正極リードを作製した。また、同様にして負極リードを作製した。
【0073】
正極板は、下記のように作製した。まず、正極活物質と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを、双腕式練合機で撹拌、混練して、正極合剤を作製した。正極活物質としては、コバルト酸リチウムを用いた。導電助剤としては、正極活物質100重量部に対して2重量部のアセチレンブラックを用いた。結着剤としては、正極活物質100重量部に対して2重量部のポリフッ化ビニリデンを用いた。溶媒としては、正極合剤の固形分濃度を50%程度にするのに適量のN‐メチル‐2‐ピロリドンを用いた。
【0074】
次に、厚さ15μmのアルミニウム箔でできた正極集電体の表面及び裏面に上記の正極合剤を塗布した。塗布した正極合剤を乾燥させ、正極集電体の上に正極活物質層を形成した。その後、正極集電体及び正極活物質層を圧延し、得られた正極板を所定の寸法に切断した。このようにして、幅42mm、長さ580mm、片面側の正極活物質層の厚さが50μmの正極板を作製した。なお、この幅は、円筒型電池の正極板の幅の規定値である。
【0075】
負極板は、下記のように作製した。まず、負極活物質と、導電助剤と、結着剤と、溶媒とを、双腕式練合機で撹拌、混練して、負極合剤を作製した。負極活物質としては、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti512)を用いた。導電助剤としては、負極活物質100重量部に対して4重量部の気相成長法炭素繊維(VGCF:Vapor Grown Carbon Fiber)を用いた。結着剤としては、負極活物質100重量部に対して5重量部のポリフッ化ビニリデンを用いた。溶媒としては、負極合剤の固形分濃度を50%程度にするのに適量のN‐メチル‐2‐ピロリドンを用いた。
【0076】
次に、厚さ15μmのアルミニウム箔でできた負極集電体の表面及び裏面に上記の負極合剤を塗布した。塗布した負極合剤を乾燥させ、負極集電体の上に負極活物質層を形成した。その後、負極集電体及び負極活物質層を圧延し、得られた負極板を所定の寸法に切断した。このようにして、幅40mm、長さ540mm、片面側の負極合剤層の厚さが100μmの負極板を作製した。なお、この幅は、円筒型電池の負極板の幅の規定値である。
【0077】
セパレータとしては、厚さ25μm、幅44mm、長さ600mmの寸法を有するセルロースフィルム(ニッポン高度紙工業社製)を用いた。
【0078】
次に、正極リードを正極集電体に溶接した。具体的には、正極板の長手方向(図4Aのz方向)の一端から他端に向かって110mmの位置に正極リードを溶接した。丸棒部と板状部との境界が正極板の長辺の外に(すなわち図4Cのxの正方向に)1mm突出するように正極リードと正極板との位置関係を設定した。
【0079】
次に、負極リードを負極集電体に溶接した。具体的には、負極板の長手方向(図4Bのz方向)の一端から他端に向かって95mmの位置に負極リードを溶接した。丸棒部と板状部との境界が負極板の長辺の外に(すなわち図4Dのxの正方向に)2mm突出するように負極リードと負極板との位置関係を設定した。
【0080】
溶接には、超音波溶着機(日本エマソン社製メタルウェルダ2000ea型)を用いた。また、ウェルドタイムは0.1秒に、振幅は80%に、それぞれ設定した。
【0081】
次に、セパレータ、負極板、セパレータ及び正極板の順にこれらを配置し、電極群、正極リード及び負極リードを有する積層体を形成した。セパレータの幅方向(図5Aに示すx方向)に関して、2つのセパレータが負極板の外に2mm突出するように2つのセパレータと負極板との位置関係を設定した。同様に、セパレータの幅方向に関して、2つのセパレータが正極板の外に1mm突出するように2つのセパレータと正極板との位置関係を設定した。すなわち、本実施例では、正極リードにおける丸棒部と板状部との境界、負極リードにおける丸棒部と板状部との境界、および2つのセパレータの長辺が一致するように、正極板、負極板、および2つのセパレータの位置関係を設定した。
【0082】
次に、積層体の長手方向の一端に巻芯を取り付けた。そして、巻回機を用いて10N程度の張力をかけながら積層体を巻回し、巻かれた電極群を得た。最後に、電極群の最外周を粘着テープで固定した。
【0083】
(比較例)
正極リード及び負極リードとして図3Aの電極リードが有するような隆起部を有するコンデンサ用リード(ニューセントラル社製L3W20328FWPS)を用いた。また、隆起部とセパレータとが重なるように積層体を作製した。それ以外は実施例と同様にして電極群を作製した。
【0084】
[評価]
実施例の電極群と比較例の電極群とを目視により比較した。実施例の電極群には、巻きずれ並びに正極板及び負極板の切れが発生していなかった。一方、比較例の電極群には、巻きずれ並びに正極板及び負極板の切れが発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、エネルギー分野向けの二次電池、例えば、一般家庭用の二次電池に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
10,510,110,610 ワークピース
11,511 板状部
11a,511a 溝(滑り止め構造)
11b 凹凸(滑り止め構造)
11c ローレット(滑り止め構造)
12,512 丸棒部
13,513 先端部
14,514 隆起部
20 電極群
21 正極板
22 負極板
23 正極集電体
24 正極活物質層
25 負極集電体
26 負極活物質層
27 セパレータ
27a 周縁部
30 積層体
40 巻芯
60 電池ケース
60a,60b かしめ部
70 封口体
70a,70b 貫通孔
70p 上面
70q 下面
80 円筒型非水電解液電池
210 正極リード
710 負極リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第一活物質を含む第一電極板と、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第二活物質を含み、前記第一電極板の極性と反対の極性を有する第二電極板と、前記第一電極板及び前記第二電極板よりも幅広のセパレータとを準備する工程と、
前記第一電極板及び前記第二電極板に第一電極リード及び第二電極リードをそれぞれ電気的に接続する工程と、
前記第一電極板及び前記第二電極板の幅方向に関して前記セパレータの周縁部が前記第一電極板及び前記第二電極板から突出し、前記第一電極板からの前記第一電極リードの突出方向が前記第二電極板からの前記第二電極リードの突出方向に一致するように、前記第一電極板、前記セパレータ及び前記第二電極板の相対的な位置関係を定める工程と、
巻かれた電極群を形成するように、前記第一電極板、前記セパレータ及び前記第二電極板を巻回する工程と、
前記第一電極リード及び前記第二電極リードが封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びるように、前記電極群を前記電池ケースに入れて前記電池ケースの開口部を前記封口体で閉じる工程と、を含み、
前記第一電極リードは、前記第一電極板に固定された板状部と、前記板状部と一体に形成された丸棒部とを有し、前記板状部の厚さ方向に関する前記第一電極リードの寸法が前記板状部と前記丸棒部との境界で不連続に変化しており、
前記板状部には、当該板状部と前記セパレータとの間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が前記境界に隣接した位置に形成されており、
前記幅方向に関して前記丸棒部を前記セパレータの前記周縁部の外に位置させ、かつ、前記セパレータの前記周縁部を前記滑り止め構造に重ねつつ、前記巻回工程を実施する、円筒型非水電解液電池の製造方法。
【請求項2】
前記滑り止め構造が、前記板状部の表面及び裏面に形成されている、請求項1に記載の円筒型非水電解液電池の製造方法。
【請求項3】
前記滑り止め構造は、前記セパレータの外縁に平行な方向に沿って前記板状部の表面及び/又は裏面に形成された溝を含む、請求項1又は2に記載の円筒型非水電解液電池の製造方法。
【請求項4】
前記滑り止め構造は、前記板状部の表面及び/又は裏面に形成された凹凸を含む、請求項1又は2に記載の円筒型非水電解液電池の製造方法。
【請求項5】
前記第一電極板がその長手方向に関して一端及び他端を有し、
前記一端を前記長手方向に関する0%の位置、前記他端を前記長手方向に関する100%の位置と定義したとき、
前記第一電極リードが前記長手方向に関して10〜30%の範囲に位置するように、前記第一電極板に前記第一電極リードを接続する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒型非水電解液電池の製造方法。
【請求項6】
リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第一活物質を含む第一電極板と、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうる第二活物質を含み、前記第一電極板の極性と反対の極性を有する第二電極板と、前記第一電極板及び前記第二電極板よりも幅広のセパレータとを有する、巻かれた電極群と、
前記電極群を収容している円筒状の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を閉じている封口体と、
前記第一電極板に電気的に接続され、前記封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びている第一電極リードと、
前記第二電極板に電気的に接続され、前記封口体を通じて円筒状の電池ケースの外部に延びている第二電極リードと、を備え、
前記第一電極リードは、前記第一電極板に固定された板状部と、前記板状部と一体に形成された丸棒部とを有し、前記板状部の厚さ方向に関する前記第一電極リードの寸法が前記板状部と前記丸棒部との境界で不連続に変化しており、
前記板状部には、当該板状部と前記セパレータとの間の摺動性を低下させるための滑り止め構造が前記境界に隣接した位置に形成されており、
前記第一電極板及び前記第二電極板の幅方向に関して前記セパレータの周縁部が前記第一電極板及び前記第二電極板から突出し、
前記幅方向に関して前記丸棒部が前記セパレータの前記周縁部の外に位置し、かつ、前記セパレータの前記周縁部が前記滑り止め構造に重なっている、円筒型非水電解液電池。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169161(P2012−169161A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29481(P2011−29481)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】