説明

円筒形電池

【課題】組立封口体に設けられた安全弁の弁孔が電池ケースの内部の圧力が上昇したときに塞がれるのを防止して、安全性を向上させることができる円筒形電池を提供する。
【解決手段】有底円筒形の電池ケース1の開口部が組立封口体5により封口される。組立封口体5は、上側弁板13、下側弁板15および基板16を有している。基板16には内部ガス抜き孔21が形成されている。内部ガス抜き孔21の投射形状は、少なくとも一部が下側弁板15の破断可能部15bと重なっている。これにより、基板16により弁孔が塞がれるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池に関し、特に円筒形電池の安全性を向上させるための封口構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形電池は、一般に、有底円筒形の金属製の電池ケースに発電要素を収納し、その開口部を金属製の封口板もしくは組立封口体により封口して構成される。リチウムイオン二次電池等の二次電池においては、発電要素は、電極群および電解質により構成される。電極群は、正極および負極を、その間にセパレータを挟んで渦巻き状に巻回して構成される。セパレータは、正極と負極との間を絶縁するとともに、電解質を保持する機能を有している。
【0003】
組立封口体は、電池の安全性を確保するための弁機構を有する。電池に異常が発生し、電池ケースの内部の圧力が所定値以上にまで上昇すると弁機構が開き、電池ケースの内部のガスが放出される。これにより、電池ケースの亀裂等の事故が防止される。
【0004】
しかしながら、近年、電子機器の多機能化に伴って、電池の益々の高容量化が推進されており、その結果、異常が発生したときの電池ケース内部の圧力の上昇もますます大きくなってきている。これに対処するために、電池の安全性を確保する技術についての提案が種々なされている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、組立封口体に設けられるガス抜き孔の面積を、電池容量(Ah)あたり0.15〜1.2cm2とするものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−187957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の円筒形電池においては、図6に示すように、電池ケース103内部の圧力が異常に上昇すると、例えば電極群が迫り上り、これにより組立封口体101の最下部に配される基板102が押し上げられることがあった。その結果、弁板104および105の破断弁体106および107が破断したときに形成される弁孔が基板102により塞がれることがあった。そして、そのような場合には、電池ケース103の内部のガスを迅速に放出することができなくなるおそれがあった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、組立封口体に設けられた安全弁の弁孔が電池ケースの内部の圧力が上昇したときに他部材により塞がれるのを防止して、安全性を向上させることができる円筒形電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、発電要素と、その発電要素を収納する有底円筒形の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を封口する組立封口体とを含む円筒形電池であって、
前記組立封口体は、互いに導通された端子板、弁板および基板を含んでおり、
前記端子板および基板は、それぞれ1つ以上の外部ガス抜き孔および内部ガス抜き孔を有し、
前記弁板は、破断すると弁孔として開口する破断可能部を有しており、
前記内部ガス抜き孔は、投射形状の少なくとも一部分が、前記弁板の破断可能部と重なっている、または、前記基板は、当該基板が前記弁板に向かって押しつけられたときに前記弁板の前記破断可能部以外の部分と当接する突出部を有している円筒形電池を提供する。
【0009】
本発明の好ましい形態の円筒形電池は、前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
それぞれの内部ガス抜き孔は、投射形状の一部分が前記弁板の破断可能部と重なり、残りの部分が前記弁板の前記破断可能部以外の部分と重なっている。
【0010】
本発明の別の好ましい形態の円筒形電池は、前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
その少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の全部が前記弁板の破断可能部と重なっている。
【0011】
本発明の別の好ましい形態の円筒形電池は、前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
その少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の一部分が前記弁板の破断可能部と重なり、残りの部分が前記弁板の前記破断可能部以外の部分と重なっており、
他の少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の全部が前記弁板の破断可能部以外の部分と重なっている。
【0012】
本発明の別の好ましい形態の円筒形電池は、前記発電要素が、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ、並びにリチウムイオン伝導性の非水電解質から構成される。
【0013】
本発明の別の好ましい形態の円筒形電池は、前記正極が、正極活物質および金属箔からなる集電体を含み、前記正極活物質がリチウム含有遷移金属酸化物を含んでいる。
【0014】
本発明の別の好ましい形態の円筒形電池は、前記負極が、負極活物質および金属箔からなる集電体を含み、前記負極活物質が炭素材料を含んでいる。
【0015】
ここで、内部ガス抜き孔の投射形状とは、内部ガス抜き孔を弁板に対して垂直な方向に投射したときの形状をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板の内部ガス抜き孔の投射形状の少なくとも一部が、破断すると弁孔となる、弁板の破断可能部と重なっている。これにより、電池ケースの内部の圧力が上昇し発電要素が迫り上がるなどして基板が弁板に押しつけられたときに、基板により弁孔が塞がれてしまい、電池ケースの内部のガスを迅速に放出することができなくなるのを防止することができる。
【0017】
また、本発明によれば、基板が、弁板に向かって押しつけられたときに弁板の破断可能部以外の部分と当接する突出部を有しているので、基板により弁孔が塞がれてしまい、電池ケースの内部のガスを迅速に放出することができなくなるのを防止することができる。
【0018】
したがって、本発明によれば、電池の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る円筒形電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】同上の円筒形電池の基板の底面図である。
【図3】同上の円筒形電池の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図4】同上の円筒形電池の別の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る円筒形電池の概略構成を示す断面図である。
【図6】従来例に係る円筒形電池の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に本発明の一実施の形態に係る円筒形電池の概略構成を断面図により示す。図示例の電池10は、円筒形のリチウムイオン二次電池であり、正極2と、負極3と、それらの間に介在されるセパレータ4とを渦巻き状に巻回して構成された電極群20を備えている。電極群20は、図示しない非水電解質とともに有底円筒型の金属製の電池ケース1に収納される。電池ケース1の開口部は組立封口体5により封口され、これにより電極群20および非水電解質は電池ケース1の内部に密閉される。電池ケース1の内部において、電極群20の上側および下側には、それぞれ上側絶縁板8Aおよび下側絶縁板8Bが配設される。
【0021】
組立封口体5は、導体からなる、ハット状の端子板11、環状のPTC(positive temperature coefficient: 正温度係数)サーミスタ板12、円形の上側弁板13および下側弁板15、並びに基板16と、絶縁体からなる環状の組立体用ガスケット14とから構成される。組立体用ガスケット14は上側弁板13の周辺部と下側弁板15の周辺部との間に配設されて、上側弁板13の周辺部と下側弁板15の周辺部とが接触するのを防いでいる。また、組立体用ガスケット14は、後で説明する基板16の円筒部16bと端子板11の周縁部とが接触しないように、両者の間に介在される。
【0022】
組立封口体5の周縁部と電池ケース1の開口部との間には、絶縁体からなるガスケット9が配設される。ガスケット9は、組立封口体5と電池ケース1との間を封止するとともに、それらの間を絶縁している。
【0023】
端子板11とPTCサーミスタ板12とはそれらの周辺部で接触している。PTCサーミスタ板12と上側弁板13とはそれらの周辺部で接触している。上側弁板13と下側弁板15とはそれらの中央部で接触している。下側弁板15と基板16とはそれらの周辺部で接触している。以上の結果、端子板11と基板16とは互いに導通されている。
【0024】
組立封口体5の基板16は正極2と正極リード6を介して導通される。その結果、組立封口体5の端子板11が、電池10の正極側の外部端子として機能する。一方、電池ケース1が、負極3と負極リード7を介して導通されて、電池10の負極側の外部端子として機能する。
【0025】
基板16は、薄い円皿状の本体16aと、その周縁部から立ち上がる円筒部16bとを有している。基板16の本体16aの周辺部の上には下側弁板15が載置され、その周辺部の上に組立体用ガスケット14が載置され、さらにその上に、上側弁板13、PTCサーミスタ板12および端子板11がこの順に載置される。このとき、組立体用ガスケット14の外縁部は基板16の円筒部16bの端部よりも突出した状態となっている。この状態で、基板16の円筒部16bの上端部を内側に曲げるようにしてかしめることで、端子板11、PTCサーミスタ板12、上側弁板13、組立体用ガスケット14および下側弁板15が、基板16に保持される。このとき、端子板11、PTCサーミスタ板12および上側弁板13の周縁部は、組立体用ガスケット14により、基板16の円筒部16bと接触しないように隔離される。
【0026】
組立封口体5の端子板11は、複数の外部外部ガス抜き孔22を有している。基板16もまた複数の内部ガス抜き孔21を有している。
上側弁板13は、環状の破断可能溝13aにより囲われた円形の破断可能部13bが中央部に形成されている。上側弁板13の破断可能部13bは、破断可能部13bの周囲の外側部13cにより支持されている。破断可能部13bが破断すると、そこに弁孔が形成される。
【0027】
一方、下側弁板15は、環状の破断可能溝15aにより囲われた円形の破断可能部15bが中央部に形成されている。下側弁板15の破断可能部15bは、破断可能部15bの周囲の外側部15cにより支持されている。破断可能部15bが破断すると、そこに弁孔が形成される。
【0028】
下側弁板15の破断可能部15bの径は、上側弁板13の破断可能部13bの径よりもわずかに小さくされている。そして、下側弁板15の破断可能部15bは、全体が上側弁板13の破断可能部13bと重なっている。
【0029】
環状のPTCサーミスタ板12の中央の孔の内径は、上側弁板13の破断可能部13bの径よりもわずかに大きくされている。そして、上側弁板13の破断可能部13bは、全体がPTCサーミスタ板12の中央の孔の投射形状と重なっている。組立体用ガスケット14の中央の孔の内径はPTCサーミスタ板12の中央の孔の内径よりも大きくされている。PTCサーミスタ板12の中央の孔の投射形状は、全体が組立体用ガスケット14の中央の孔の投射形状と重なっている。
【0030】
基板16は、内部ガス抜き孔21の投射形状の少なくとも一部が下側弁板15の破断可能部15bと重なるように構成されている。
より具体的には、図2の基板16の底面図に示すように、基板16には複数(図示例では3個)の内部ガス抜き孔21が設けられている。それらの内部ガス抜き孔21の投射形状は、それぞれの内側の部分が下側弁板15の破断可能部15bと重なり、それぞれの外側の部分が下側弁板15の外側部15cと重なっている。
【0031】
以上の構成により、何らかの事故で電池ケース1内部の圧力が異常に上昇したときには、上側弁板13および下側弁板15の破断可能部13bおよび15bが押し破られて、上側弁板13および下側弁板15に図示しない弁孔が形成される。その結果、電池ケース1の内部のガスが、基板16の内部ガス抜き孔21、上側弁板13および下側弁板15の上記弁孔、並びに端子板11の外部ガス抜き孔22を通過して外部に放出される。
また、PTCサーミスタ板12は、過大な電流が流れると温度が上昇し、電流を遮断する。
【0032】
そして、電池ケース1内部の圧力が異常に上昇すると、電極群20が迫り上がるなどして基板16の本体16aが上側弁板13および下側弁板15に向かって押しつけられることがある。このようなときにも、内部ガス抜き孔21の投射形状の少なくとも一部が上側弁板13および下側弁板15の弁孔(破断可能部13bおよび15b)と重なっているので、上側弁板13および下側弁板15の弁孔が基板16により完全に塞がれてしまうのを防止することができる。これにより、電池ケース1内部のガスの抜け道を確保することができる。したがって、電池の安全性を向上させることができる。
【0033】
以上、図1および図2を参照して本発明の実施の形態1を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図3に示すように、基板16Aの複数の内部ガス抜き孔21Aの中のいくつかを、その投射形状の全体が下側弁板15の破断可能部15bと重なる位置に設けるようにしてもよい。
また、図4に示すように、基板16Bの複数の内部ガス抜き孔21Bを基板16Bの中心に対して非対称、ないしはその少なくとも1つの内部ガス抜き孔21Bが、投射形状の一部分が下側弁板15の破断可能部15bと重なり、残りの部分が下側弁板15の外側部15cと重なり、他の少なくとも1つの内部ガス抜き孔21Bが、投射形状の全部が下側弁板15の外側部15cと重なるようにしてもよい。
【0034】
次に、実施の形態1に係る本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
以下のようにして、リチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。
(正極の作製)
正極活物質として、平均粒径が10μmであるコバルト酸リチウム(LiCoO2)を使用した。100重量部の正極活物質に、結着剤としての8重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電材としての3重量部のアセチレンブラックと、適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを混合して正極合剤ペーストを調製した。
【0035】
その正極合剤ペーストを、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、正極リード6の接続部分を除いて塗布し、乾燥して正極合剤層を形成した。そのようにして、正極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して、正極を得た。このとき、集電体の片面あたりの正極合剤層の厚みが70μmとなるように正極の前駆体を圧延した。
また、正極集電体として使用したアルミニウム箔の長さは600mm、幅は54mm、厚さは20μmであった。また、正極リード6の接続部分は、後述するように、正極の巻始めの部分に形成した。
【0036】
(負極の作製)
負極活物質として、平均粒径が20μmである人造黒鉛を使用した。100重量部の負極活物質に、結着剤としての1重量部のスチレンブタジエンゴムと、増粘剤としての1重量部のカルボキシメチルセルロースと、適量の水とを混合して負極合剤ペーストを調製した。
【0037】
その負極合剤ペーストを、銅箔からなる負極集電体の両面に、負極リード7の接続部分を除いて塗布し、乾燥して負極合剤層を形成した。そのようにして、負極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して、負極を得た。このとき、集電体の片面あたりの負極合剤層の厚みが65μmとなるように負極の前駆体を圧延した。
また、負極集電体として使用した銅箔の長さは630mm、幅は56mm、厚さは10μmであった。また、負極リード7の接続部分は負極の巻終わりの部分に形成した。負極リード7は、上記接続部分に超音波溶接法により接続した。
【0038】
(組立封口体の作製)
図1に示した組立封口体5を作製した。上側弁板13および下側弁板15はアルミニウム製とした。端子板11は鉄製とした。基板16はアルミニウム製とした。組立体用ガスケット14はポリプロピレン製とした。基板16の内部ガス抜き孔21は、それぞれの投射形状の内側の部分が下側弁板15の破断可能部15bと重なり、外側の部分が下側弁板15の外側部15cと重なるように形成した。
【0039】
(電池の組立)
上述のようにして作製した正極および負極を、間にセパレータ4を介在させて積層し、積層体を得た。セパレータ4には、厚さが20μmであるポリエチレン製の多孔膜を使用した。得られた積層体の正極の巻き始めの部分に正極リード6を接続し、負極の巻き終わりの部分に負極リード7を接続した。その状態で、上記積層体を渦巻き状に巻回して電極群20を得た。
【0040】
そのようにして得られた電極群20を鉄製の電池ケース1に収納した。このとき、正極リード6を周縁部にポリプロピレン製のガスケット9を取り付けた組立封口体5の基板16にレーザー溶接法により溶接し、負極リード7を電池ケース1の底部に抵抗溶接法により溶接した。電池ケース1は、直径(外径)が18mm、高さが65mm、缶壁の厚みが0.15mmであるものを使用した。この電池ケース1の厚みは、通常市販されている円筒形のリチウムイオン二次電池の電池ケースの厚みに近いものである。また、電極群20の上側および下側には、それぞれ、ポリプロピレン製の上側絶縁板8Aおよび下側絶縁板8Bを配設した。また、その電池ケース1の側壁の底部に近い位置に溝入れをして、亀裂予定部を形成した。
【0041】
そして、電池ケース1内に非水電解質を注入した。非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1対1の体積比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
そして、電池ケース1の開口端部より5mmの位置において、電池ケース1を周方向に一周するように、内側に突出する突出部1a(図1参照)を形成し、これにより電極群20を電池ケース1の内部に保持した。
【0042】
次に、突出部1aの上に載せるようにして、組立封口体5を電池ケース1の開口部に配置した後、電池ケース1の開口部を内側に曲げるようにかしめて、電池ケース1を封口した。
以上のようにして、直径が18mm、高さが65mmである円筒形のリチウムイオン二次電池からなる試験体を10個作製した。このリチウムイオン二次電池の設計容量は2600mAhとした。
【0043】
作製された10個の試験体に対して以下のような試験を実施した。まず、25℃の環境の下で1500mAの電流により電池電圧が4.25Vとなるまで充電した。充電後の試験体をホットプレートの上に置き、25℃から200℃まで毎秒1℃ずつ温度が上昇するように加熱した。そして、電池ケース1に小さな亀裂が発生した試験体の個数をカウントした。その結果を、下記表1に示す。
【0044】
《実施例2》
缶壁の厚みが0.12mmである電池ケース1を使用したこと以外は、実施例1と同様にして10個のリチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。そして、実施例1において行ったのと同じ内容の試験をそれらの試験体に対して行った。その結果を下記表1に示す。
【0045】
《実施例3》
缶壁の厚みが0.10mmである電池ケース1を使用したこと以外は、実施例1と同様にして10個のリチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。そして、実施例1において行ったのと同じ内容の試験をそれらの試験体に対して行った。その結果を下記表1に示す。
【0046】
《比較例1》
組立封口体の基板に、投射形状が下側弁板15の破断可能部15bと全く重ならないようにガス抜き孔を設けた(図6参照)こと以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池からなる試験体を10個作製した。その結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、実施例1〜3においては試験体に亀裂は生じなかった。これは、実施例1〜3においては、基板16の内部ガス抜き孔21の投射形状の少なくとも一部が下側弁板15の外側部15cと重なっているために、基板16が内部圧の上昇により下側弁板15に向かって押しつけられたときにも、下側弁板15の弁孔が全て基板16により塞がれてしまうことがなかったからであると考えられる。したがって、実施例3のように、電池ケース1の厚みを通常のもの(実施例1参照)よりもかなり薄くしても亀裂は生じていない。
【0049】
これに対して、比較例1においては試験体に亀裂が生じたものが3個あった。これは、比較例1においては、基板のガス抜き孔の投射形状が下側弁板15の外側部15cと全く重なっていないために、基板が内部圧の上昇により下側弁板15に向かって押しつけられたときに、下側弁板15の弁孔が基板により塞がれて内部圧力が過大となったものがあったからであると考えられる。
【0050】
比較例1におけるこの結果は、電池ケース1の厚みを通常よりもかなり薄くしたことにも起因すると考えられる。しかしながら、電池ケース1の厚みが通常の厚みであっても、何千個、何万個あるいは何十万個という電池の中には、比較例1の試験体に亀裂が生じたのと同様の原因により亀裂が生じる電池がないとは言い切れない。
したがって、上記結果は、本発明により電池の安全性が向上したことを示すものであるといえる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。図5に、実施の形態2に係る電池の概略構成を断面図により示す。実施の形態2は、実施の形態1を改変したものであり、その基本的な構成は実施の形態1と共通している。以下においては、実施の形態1とは異なる部分を主に説明する。
【0052】
実施の形態2においては、図5に示すように、基板16Cは、下側弁板15の破断可能部15bと重なる位置に内部ガス抜き孔21Cが形成されていない。代わりに、基板16Cは、基板16Cが下側弁板15に向かって押しつけられたときに下側弁板15の外側部15cと当接して、下側弁板15の弁孔が基板16Cにより塞がれてしまうのを防止するための突出部23を有している。
【0053】
突出部23は、図示例のように、基板16Cとは別部材から構成することも可能である。また、突出部23は、基板16Cと一体的に形成することも可能である。その材質はある程度以上の剛性を有すればよく、特に限定されない。その形状は、環状としたり、独立した突起状としたりすることができる。独立した突起状とした場合の個数は、より確実に下側弁板15の弁孔が基板16Cにより塞がれてしまうのを防止するために、複数個とするのが好ましい。
【0054】
以上のように、基板16Cが下側弁板15に向かって押しつけられたときに下側弁板15の外側部15cと当接すべき位置に突出部23を設けることによって、下側弁板15の弁孔が基板16Cにより塞がれてしまうのを防止することができる。したがって、円筒形電池の安全性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、安全性がさらに向上された円筒形電池を提供することができる。このような本発明の円筒形電池は、特にパーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器並びにビデオカメラ等の携帯用電子機器の電源として有用である。また、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池自動車等の交通用機器において、その電動機の駆動を補助する電源としても有用である。また、電動工具、掃除機、およびロボット等の駆動用電源としても有用であり、プラグインHEVの動力源としても有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 電池ケース
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 組立封口体
10 電池
11 端子板
13 上側弁板
15 下側弁板
16 基板
21、22 ガス抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、その発電要素を収納する有底円筒形の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を封口する組立封口体とを含む円筒形電池であって、
前記組立封口体は、互いに導通された端子板、弁板および基板を含んでおり、
前記端子板および基板は、それぞれ1つ以上の外部ガス抜き孔および内部ガス抜き孔を有し、
前記弁板は、破断すると弁孔として開口する破断可能部を有しており、
前記内部ガス抜き孔は、投射形状の少なくとも一部分が、前記弁板の破断可能部と重なっている、または、前記基板は、当該基板が前記弁板に向かって押しつけられたときに前記弁板の前記破断可能部以外の部分と当接する突出部を有している円筒形電池。
【請求項2】
前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
それぞれの内部ガス抜き孔は、投射形状の一部分が前記弁板の破断可能部と重なり、残りの部分が前記弁板の前記破断可能部以外の部分と重なっている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
その少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の全部が前記弁板の破断可能部と重なっている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記基板が前記内部ガス抜き孔を複数個有しており、
その少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の一部分が前記弁板の破断可能部と重なり、残りの部分が前記弁板の前記破断可能部以外の部分と重なっており、
他の少なくとも1つの内部ガス抜き孔は、投射形状の全部が前記弁板の破断可能部以外の部分と重なっている請求項1記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記発電要素が、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ、並びにリチウムイオン伝導性の非水電解質から構成される請求項1〜4のいずれかに記載の円筒形電池。
【請求項6】
前記正極が、正極活物質および金属箔からなる集電体を含み、前記正極活物質がリチウム含有遷移金属酸化物を含んでいる請求項1〜5のいずれかに記載の円筒形電池。
【請求項7】
前記負極が、負極活物質および金属箔からなる集電体を含み、前記負極活物質が炭素材料を含んでいる請求項1〜6のいずれかに記載の円筒形電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250970(P2010−250970A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96226(P2009−96226)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】