説明

再剥離性粘着シート

【課題】
粘着剤層において不快なベタツキ感のなく、かつ種々の適性に優れた再剥離性粘着シートを提供する。
【解決手段】
基材、粘着剤層及び剥離シートがこの順で積層されてなる再剥離性粘着シートであって、前記粘着剤層は、アルミニウム粒子を10〜20重量%含有し、前記剥離シートは、テープ法剥離試験で測定する剥離力が800〜1600mN/40mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再剥離性粘着シートに関し、詳細には、各種の被着体に対して貼着・剥離を繰り返し行うことができる再剥離性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材、粘着剤層及び剥離シートがこの順で積層されてなる粘着シートは、商業用、事務用、工程管理用、物流管理用又は家庭用等、非常に広範囲の用途にわたって、ラベル、シール、ステッカー、ワッペン又は配送伝票等の形態で使用されている。
【0003】
粘着シートとしては、比較的強固な粘着力を有する強粘タイプ、中程度の粘着力を示す中粘タイプ、低い粘着力を示す弱粘タイプ、及び低温での粘着力に優れる低温タイプ等が挙げられ、用途に応じて選択される。しかし、これらの粘着シートにおける粘着剤はいずれも永久もしくは半永久的に被着体に接着させることを目的としている。したがって、これらの粘着剤を使用した粘着シートを貼着した後、剥がした場合、表面基材が破れたり、被着体に粘着剤が残ったり、被着体の一部が粘着シートに取られたりしてしまうものが多かった。一方、再剥離タイプの粘着シートは、貼着・剥離を多数回繰り返すことができ、しかもその粘着性能を維持することができる特徴を有している。
【0004】
再剥離タイプの粘着シートに用いる粘着剤として、粘着剤中に可塑剤等を添加して粘着力を下げたものがあるが、被着体に対して浮き剥がれが発生する問題がある。また、粘着剤層表面に凹凸をつけて接着面積を減少させたものについては剥離・貼着を繰り返すことにより凹凸が小さくなり、効果が薄れる。
【0005】
これらの解決策として、粘着剤層に粘着性をもつ微小球を含有させた粘着シート(特許文献1参照)や、粘着性を有する微小球と、粘着性を有さない微小球とを含有させた粘着シート(特許文献2参照)が開示されている。これら粘着剤層に微小球を含有させた従来の粘着シートにおいて、微小球は、高分子化合物又は無機化合物からなる。
【特許文献1】特開昭62−143988号公報
【特許文献2】特開平11−21524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着剤層に微小球を含有させた従来の粘着シートは、粘着剤層に一定の粘着力を付与しつつ、微小球を含有させることにより再剥離・再接着性を有するように構成されているものであり、粘着面を手で触ると不快なベタツキ感がある。
【0007】
本発明は、粘着剤層において不快なベタツキ感のない、かつ種々の適性に優れた再剥離性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、再剥離性粘着シートにおける粘着剤層に添加する成分を種々検討した結果、アルミニウム粒子を添加することにより、ベタツキ感がほとんどない粘着剤層を形成できることを見出した。そして、さらに鋭意研究をした結果、基材は、粘着剤層側が目止め処理されており、粘着シートを構成する剥離シートのテープ法剥離試験における剥離強度を800〜1600mN/40mmとすることにより、再剥離性粘着シートとして種々の適性に優れるものを提供し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、基材、粘着剤層及び剥離シートがこの順で積層されてなる再剥離性粘着シートであって、前記粘着剤層は、アルミニウム粒子を10〜20重量%含有し、前記基材は、前記粘着剤層が積層されている側の面に目止め処理が施されており、前記剥離シートは、テープ法剥離試験で測定する剥離力が800〜1600mN/40mmである。前記基材として、好ましくは、前記粘着剤層が積層されている側の面に目止め処理が施されているものを用いる。この場合、粘着剤層は、前記基材の目止め処理が施されている面に粘着剤を塗工して形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る粘着シートは、不快なベタツキ、臭気がなく、また再剥離性粘着シートとして種々の適性に優れた粘着シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、基材、粘着剤層及び剥離シートがこの順で積層されてなる再剥離性粘着シートであって、前記基材は、前記粘着剤層は、アルミニウム粒子を10〜20重量%含有し、前記剥離シートは、テープ法剥離試験で測定する剥離力が800〜1600mN/40mmである。
【0012】
本発明に係る再剥離性粘着シートにおいて、粘着剤層を形成するために用いる粘着剤の主成分は、好ましくはアクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーを構成するモノマーの種類は特に限定されないが、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルメタクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0013】
粘着剤は、さらにアルミニウム粒子を含有する。アルミニウム粒子は、粘着剤層において生じるベタツキの低減に寄与する。これは、アルミニウム粒子が粘着剤層の被着体に対する接触面積を下げ、またボールタックが下がることによると考えられる。さらに、アルミニウム粒子の粘着剤の主成分との反応による凝集効果で、粘着剤が硬くなり、このことにより粘着シートの再剥離・再接着を繰り返し可能にする。アルミニウム粒子は、粘着剤中に固形分換算で10〜20重量%含有される。10重量%未満では接触面積を下げる効果が少なく、ベタツキ感があり、20重量%を超えると接触面積が下がりすぎて粘着力が低下し、粘着シートとしての適性に劣る。本発明におけるアルミニウム粒子の材質は、主成分、すなわち全体の50重量%以上を占める成分がアルミニウムであれば良いが、アルミニウムの純度が高い程好ましく、純アルミニウムは特に好ましい。アルミニウム以外の成分を含有する場合、その成分は特に限定されない。
【0014】
アルミニウム粒子の形状は、特に限定されず、たとえば、粒状、板状、塊状、フレーク状(鱗片状)等の種々の形状がありうる。アルミニウム粒子の平均粒子径としては1〜10μmが好ましい。1μm未満では被着体に対する接触面積を下げる効果がなく、再剥離が困難になり、10μmを超えると被着体に対する接触面積が下がりすぎて粘着力が低下する。ここでのアルミニウム粒子の平均粒子径は、レーザー回折光散乱法により測定された値とする。後述するように、粘着剤を基材に直接塗工することにより粘着層を形成することが好ましい。
【0015】
本発明に係る再剥離性粘着シートに用いる剥離シートの基紙としては、グラシン紙や、目止め処理したクレーコート紙、クラフト紙または上質紙等を使用することができる。基紙は、その表面(目止め処理がなされている場合は目止め処理が施されている面)に剥離層を有する。剥離剤として、ケイ素原子に結合したビニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比(SiH/SiVi比)が2.0〜3.0である重剥離タイプのシリコーン系剥離剤を使用する。剥離剤は、SiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH32SiO1/2単位を有するレジン構造のものや、SiO2単位を有するシリカ構造のものを有する重剥離添加剤を添加して調製する。塗工量としては特に限定されないが、固形分換算で0.5〜1.0g/m2程度が好ましい。
【0016】
剥離シートは、以下に説明するテープ法剥離試験において、剥離力が800〜1600mN/40mm、特に1000〜1400mN/40mmであることが好ましい。800mN/40mm未満では、粘着シートの巻き取りの際に基材上の粘着剤層と剥離シートとの間で浮き(トンネリング)が発生しやすく、また粘着シートの基材に切り込みを入れ不要部分を取り除く際に不要部分が必要部分からきれいに分離されず必要部分も剥がれてしまう現象(ともあがり)が生じやすく、1600mN/40mmを超えると粘着シートの基材に切り込みを入れ不要部分を取り除く際に不要部分の領域内で分断されてしまい(カス切れ)、不要部分を一気に除去することができないという不都合が発生しやすい。
【0017】
本発明の粘着シートに用いられる基材としては特に限定されない。例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、熱転写記録紙、インクジェット記録紙、感熱記録紙、感圧記録紙等の紙基材の他に、フィルムとして、ポリプロピレン樹脂合成紙、ポリエチレン樹脂合成紙、セロハンフィルム、ナイロンフィルム、アセチルセルロース樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂等のポリイミド系樹脂フィルム、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、変成ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルホン樹脂等のポリエーテル系樹脂フィルム、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシベンゾエート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂フィルム、およびアルミニウム、銅、ブリキ、トタン等の金属箔等が挙げられる。基材の厚さとしては特に限定されないが、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは50〜120μmの範囲のものが用いられる。
【0018】
本発明の粘着剤を用いた粘着剤層の形成は、基材の表面に粘着剤を塗布、乾燥して粘着剤層を設け、剥離シートを貼り合わせる直接塗工方法、あるいは剥離シートの剥離剤塗布表面に粘着剤を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、ついで、基材を貼り合わせる間接塗工方法等によるが、好ましくは直接塗工方法による。再剥離・再接着が可能な本発明に用いられる粘着剤は、間接塗工方法の際の基材に対する投錨性が悪いからである。
【0019】
直接塗工方法により粘着剤層を形成する場合、基材の粘着剤塗工面は、直接塗工による粘着剤の浸透を抑制するため、好ましくは目止め処理を施す。目止め処理は、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の顔料;ポリエチレン等樹脂フィルムのラミネート;エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリカ変性ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の合成高分子等による。粘着剤の浸透が抑制されるように構成されていない、例えば目止め処理が施されていない基材を用いると、粘着粘着剤が含浸され、粘着効果のある所定の有効塗工量を得るには実塗工量が多く必要であり、基材に含有される多量の粘着剤により臭気が発生してしまうので好ましくない。
【0020】
粘着剤は、上述のように基材上に直接塗工することが好ましく、この場合、上記のように調製された粘着剤を、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等によって基材の上記目止め処理面上に塗工・乾燥して粘着剤層を形成し、剥離シートと貼合して粘着シートを製造する。乾燥後の有効塗工厚が、好ましくは5〜15μmとなるように塗工する。なお、有効塗工厚とは基材への浸透分を除いた塗工厚であり、粘着剤塗布後の基材と粘着剤層とを合わせた厚さから塗工前の基材の厚さを引くことにより算出される。
【0021】
本発明に係る粘着シートは、再剥離・再接着可能な構成が有用である用途に好ましく用いられ、特に平滑性を有する被着面への貼着用途が好ましい。
【0022】
(テープ法剥離試験)
温度23℃、湿度50%に調湿された剥離シートに、標準テープ(日東電工社製、No.31B、40mm巾)を長さ200mmで貼り付け、2kgのゴムローラーで1往復圧着する。上記サンプルをガラス板間に挟み、20g/cm2の荷重をかけ70℃で20時間エージング後、温度23℃、湿度50%にて3時間放冷後、引張り試験機(島津製作所製、AGS−500NG)にて剥離速度300mm/分、剥離角度180°で剥離力(単位:mN/40mm)を測定する。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0024】
(製造方法)
実施例1〜6および比較例1〜5の各再剥離性粘着シートを以下のように作製した。
【0025】
1.基材
目止め処理が施されている基材として、コート紙(大王製紙社製、ユトリロコート84.9g/m2、クレーと炭酸カルシウムとを含有する目止め剤による目止め処理が施されている)を使用した。なお、比較例3、4は目止め処理が施されていない基材として上質紙(大王製紙社製、たいおう64g/m2)を使用した。
【0026】
2.剥離シート
剥離剤(東レダウコーニング社製、BY24−312)100重量部に対して、重剥離添加剤(東レダウコーニング社製、BY24−843)を表1に記載の重量部添加したものを剥離剤溶液とした。なお、表1中の部数は全て有効成分の重量である。この剥離剤溶液を、目止めにポリエチレンラミネートを使用した上質紙(米坪73g/m2)に表1に記載の乾燥重量となるよう塗工したものを各実施例及び各比較例の剥離シートとした。各剥離シートについて、上述のテープ法剥離試験による剥離力を測定した結果を表1に示す。
【0027】
3.粘着剤
アルミニウム粒子(平均粒子径5μm)を15重量%含有する粘着剤(ハクビ化学社製、マジックタック)を使用し、粘着剤層が表1に記載の有効塗工厚となるよう調整した。なお、比較例1はアクリル酸エステル系樹脂からなる微小球入りの再剥離・再接着タイプの粘着剤(日本カーバイド社製、B−7587)を使用した。
(評価方法)
上述のように作製した各再剥離性粘着シートについて、以下の評価試験を行った。
【0028】
1.粘着性評価
20cm×20cmの大きさにカットした粘着シートをガラス板に貼り付け、24時間後の状況を目視で確認した。評価結果を表1に示す。
〇:浮き、剥がれが全く見られなかった。
×:浮き、剥がれが部分的に発生していた。
【0029】
2.ベタツキ評価
粘着シートの粘着剤層表面と、通常のタック紙(エリエールテクセル社製、一般強粘タック紙)の粘着剤層表面を、指先で指圧をかけて触り、各実施例及び各比較例の粘着シートについてタック紙との対比で20名よりベタツキ感の評価を得た。評価結果を表1に示す。
〇:80%以上の人がベタツキ感がないと評価した。
×:半数以上の人がベタツキ感があると評価した。
【0030】
3.臭気評価
20cm×20cmの大きさにカットした粘着シートを上記通常のタック紙と比較して、臭気について20名の評価を得た。評価結果を表1に示す。
〇:80%以上の人が差はない、または臭いが少ないと評価した。
×:半数以上の人が臭いがあると評価した。
【0031】
4.トンネリング評価
実機タックコーター(エリエールテクセル社製)で5,000m巻き取り、トンネリング有無について巻取側面で確認し、以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
◎:トンネリングが全く見られなかった。
〇:浮きかけていたが、トンネリングには至っていなかった。
×:はっきりと浮いている部分があり、トンネリングが多数見られた。
【0032】

5.カス上げ適性
実機印刷機で30mm四方での型抜き(基材に切り込みを入れる)後、5mm幅でカス上げを行い、評価した。評価結果を表1に示す。
◎ :カス切れ、ともあがりの発生は全く見られなかった。
〇T:抜き加工の端部で浮いた部分もあったが、ともあがりにはならなかった。
〇K:カス部分で裂け目ができた部分もあったが、カス切れにはならなかった。
×T:ともあがりが発生した。
×K:カス切れが発生した。
【0033】
【表1】

表1に示す結果からわかるように、実施例1〜6の粘着シートは、臭気、ベタツキがなく、また十分な粘着性を有し、トンネリングの発生がなく、カス上げ適性も備えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、臭気、ベタツキがなく、使用感に優れた再剥離性粘着シートとして、種々の用途に使用することができる。また、トンネリングがなく、カス上げ適性に優れていることから、特に、巻き取られた状態で保管され、適切な大きさに型抜き後カス上げして使用される用途、例えば再剥離して使用されるラベル、伝票、シール等に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、粘着剤層及び剥離シートがこの順で積層されてなる再剥離性粘着シートであって、
前記粘着剤層は、アルミニウム粒子を10〜20重量%含有し、
前記基材は、前記粘着剤層が積層されている側の面に目止め処理が施されており、
前記剥離シートは、テープ法剥離試験で測定する剥離力が800〜1600mN/40mmである、再剥離性粘着シート。


【公開番号】特開2008−81652(P2008−81652A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264868(P2006−264868)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】