説明

再加熱バーナー

【課題】 チャネル(2)と、そのチャネル内に突き出た、チャネルの縦軸(15)に対して垂直な噴出面(4)に渡って燃料を噴射するためのランス(3)とを備えた再加熱バーナー(1)である。
【解決手段】 チャネル(2)とランス(3)は、高温ガス(G)の流れる方向に対して、噴出面(4)の上流の渦流生成ゾーン(6)と、噴出面(4)の下流の混合ゾーン(9)とを規定する。混合ゾーン(9)は、断面が一定である高速領域(16)と、高温ガス(G)の流れる方向に対して、高速領域(16)の下流に有る、断面が拡がって行く発散領域(17)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再加熱バーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
二段燃焼式ガスタービンは、第一のバーナーを備えており、その中で、圧縮空気の流れに燃料を噴射して燃焼させ、発生した排ガスを高圧タービン内で部分的に膨張させることが知られている。
【0003】
次に、高圧タービンから出て来た排ガスは、再加熱バーナーに供給され、その中で、更に燃料を噴射されて、混合され、その下流の燃焼室で燃焼した後、発生した排ガスが、低圧タービン内で膨張する。
【0004】
図1〜3は、従来の再加熱バーナーの典型的な例を図示している。
【0005】
図1〜3を参照すると、従来のバーナー1は、四角形のチャネル2とその中に収容されたランス3とを有する。
【0006】
ランス3は、図1に図示されている通り、ノズルを有し、そこから、燃料(オイル、即ち、液体燃料又は気体燃料)を噴射しており、燃料は、噴出面4として知られる面に渡って噴射される。
【0007】
噴出面4の(高温ガスGの流れる方向に対して)上流のチャネルゾーンは、渦流生成ゾーン6であり、そのゾーンには、各チャネル壁から突き出ている、高温ガスGに渦流と乱流を生じさせる渦流生成器7が収容されている。
【0008】
噴出面4の(高温ガスGの流れる方向に対して)下流のチャネルゾーンは、混合ゾーン9であり、このゾーンは、典型的には、ディフューザを規定する平坦な拡がって行く側壁を有する。
【0009】
図面に図示されている通り、チャネル2の側壁10は、集束又は発散して、(中間の高さで測定して)可変のバーナー幅wを規定する一方、チャネル2の上方と下方壁11は、互いに平行であり、一定のバーナー幅hを規定している。
【0010】
そのようなバーナー1の構造は、設計温度におけるチャネル2内の高温ガスの速度と下流及び乱流との最良の妥協策を実現するのに最適な構造である。
【0011】
実際に、バーナーのチャネル2を通る高温ガスの速い速度は、(バーナー1の下流の燃焼室12内での燃焼する燃料の滞留時間が短くなるので)NOx排出量を低減し、(バーナー1内での燃料の残留時間が短くなり、そのため、燃料が自動点火することを難しくしているので)フラッシュバックマージンを増大し、(フラッシュバックの防止のためにオイルに水を混ぜる)オイル動作での水消費量を低減している。それと反対に、高温ガスの速い速度は、(バーナー1の下流の燃焼室12内での滞留時間が短くなるので)CO排出量と圧力降下量を増大している(即ち、達成可能な効率と出力を低減している)。
【0012】
更に、大きな渦流強度と乱流レベルは、(良好な混合のために)NOxとCO排出量を低減するが、圧力降下量を増大する(そのため達成可能な効率と出力を低減する)。
【0013】
ガスタービンの効率と性能を上げるためには、再加熱バーナー1の入口と出口での高温ガスの温度を上昇させるべきである。
【0014】
そのような上昇は、全てのパラメータ間の微妙な均衡を破り、そのため、設計温度を上回る温度の高温ガスで動作する再加熱バーナーは、フラッシュバック、NOx及びCO排出量、水消費量及び圧力降下量の問題を抱えることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許公開第2211109号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第1265029号明細書
【特許文献3】米国特許公開第5673551号明細書
【特許文献4】欧州特許公開第0287392号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のことから、本発明の課題は、従来技術の前述した問題の解決を目指した再加熱バーナーを提供することである。
【0017】
本課題の範囲内における本発明の一つの側面は、特に、従来のバーナーよりも高い温度の高温ガスで動作する場合に、フラッシュバック、NOx及びCO排出量、水消費量及び圧力降下量の問題を抱えないか、或いはそのような問題を限定した形で安全に動作する再加熱バーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本課題は、前記の側面及び更に別の側面と共に、以下の本発明による再加熱バーナーによって解決される。
【0019】
本発明による再加熱バーナー1は、チャネル2と、そのチャネル内に突き出た、チャネルの縦軸15に対して垂直な噴出面4に渡って燃料を噴射するためのランス3とを備え、チャネル2とランス3が、高温ガスGの流れる方向に対して、噴出面4の上流の渦流生成ゾーン6と、噴出面4の下流の混合ゾーン9とを規定する再加熱バーナー1において、混合ゾーン9が、断面が一定である高速領域16と、高温ガスGの流れる方向に対して、高速領域16の下流に有る、断面が拡がって行く発散領域17とを有することを特徴とする再加熱バーナーである。
【0020】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、混合ゾーン9の高速領域16の断面がバーナーの中で最も小さいことを特徴とする。
【0021】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、混合ゾーン9が高速領域(16)の上流に縮小領域18を有することを特徴とする。
【0022】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、発散領域17の幅wと高さwの両方がバーナーの出口19に向かって増大して行くことを特徴とする。
【0023】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、発散領域17の幅wと高さwの増大傾向が流れの離脱傾向に適合していることを特徴とする。
【0024】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、発散領域17の内壁20が、高温ガスが発散領域の内壁20から離れる線を規定する突起21を有することを特徴とする。
【0025】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、突起21が発散領域の内壁20の周囲に渡って延びていることを特徴とする。
【0026】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、渦流生成ゾーン6が、幅wと高さhの両方がバーナーの出口(19)に向かって増大して行く少なくとも一つの区画を有することを特徴とする。
【0027】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、チャネル2の断面が四角形、正方形又は台形であることを特徴とする。
【0028】
本発明による再加熱バーナー1は、更に、ランスの先端14が高速領域16の上流に有ることを特徴とする。
【0029】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面に非限定的な例として図示された再加熱バーナーの好ましいが排他的でない実施例の記述から一層明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の再加熱バーナーの平面図
【図2】従来の再加熱バーナーの側面図
【図3】従来の再加熱バーナーの正面図
【図4】本発明による再加熱バーナーの実施例の平面図
【図5】本発明による再加熱バーナーの実施例の側面図
【図6】本発明による再加熱バーナーの実施例の正面図
【図7】本発明による再加熱バーナーの別の実施例の平面の部分拡大図
【図8】本発明による再加熱バーナーの別の実施例の側面の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照すると、それらは、再加熱バーナーを図示しており、以下において、同じ符号は、幾つかの図面に渡って同じ又は同様の部分を表すものとする。
【0032】
再加熱バーナー1は、断面が四角形、正方形又は台形であるチャネル2を有する。
【0033】
ランス3は、チャネルの縦軸15に対して垂直な噴出面4に渡って燃料を噴射するために、チャネル2内に突き出ている。
【0034】
チャネル2とランス3は、高温ガスGの流れる方向に対して、噴出面4の上流の渦流生成ゾーン6と噴出面4の下流の混合ゾーン9とを規定している。
【0035】
混合ゾーン9は、断面が一定である高速領域16と、高温ガスGの流れる方向に対して、高速領域16の下流に有る、断面が拡がって行く発散領域17とを有する。
【0036】
高速領域16の断面は、バーナー1の中で最も小さい。
【0037】
更に、混合ゾーン9は、高速領域16の上流に縮小領域18を有する。
【0038】
図4と5に明確に図示されている通り、発散領域17の幅wと高さhの両方は、バーナーの出口19に向かって増大している。有利には、発散領域の幅wと高さhの増大傾向は、流れの離脱傾向に適合している、即ち、発散領域17の拡がって行く壁面から流れが離れて行かないようにしている。そのような観点から、この発散領域は、所謂コアンダ式ディフューザを規定している。
【0039】
渦流生成ゾーン6は、幅wと高さhの両方がバーナーの出口19に向かって変化して行く(即ち、それらが増減する)区画を有する。
【0040】
有利には、ランスの先端14は、高速領域16の上流に有る。
【0041】
好ましい実施形態(図7と8)では、発散領域17の内壁20は、バーナー1内を流れる高温ガスが発散領域の内壁20から離れる線を規定する突起21を有する。この突起21は、発散領域の内壁20の周囲に渡って延びている。
【0042】
本発明による再加熱バーナーの動作は、ここで述べるとともに、図示した事柄から明らかであり、実質的に次の通りである。
【0043】
高温ガスGは、バーナー1のチャネル2に入って、渦流生成ゾーン6を通り、そこで、大きな渦流と乱流にされる。そのゾーンの断面の幅wと高さhの両方が(少なくとも渦流生成ゾーン6の中央において)増大して行くので、その断面は、通過する高温ガスに同程度の渦流と乱流を発生させる従来のバーナーの渦流生成ゾーンの断面よりも実質的に大きい。それによって、高温ガスに生じる圧力降下量を従来のバーナーよりも小さくすることができる。
【0044】
次に、高温ガスは、混合ゾーン9を通過する時に、縮小領域18で最高速度に加速され、そのため、高温ガスは、高速領域16を通過する時に、その速い速度を実質的に維持する。
【0045】
高温ガスが速い速度で高速領域16を通過するので、バーナー内での燃料の残留時間が短くなり、フラッシュバックの危険性、水消費量及びNOx排出量が低減される。
【0046】
更に、ランスの先端14が(高温ガスの流れる方向に対して)高速領域16の上流に有るとともに、縮小領域18内に収容されている特別な構成のために、高温ガスは、ランスの先端14の下流の地点まで加速し続け、そのため、火炎がランスの先端14の上流に伝わって、それによってフラッシュバックを引き起こす危険性が低減され、それによって、フラッシュバックの危険性が低減されるとともに、水量を削減したオイル動作が可能となる。
【0047】
高温ガスは、高速領域16の後に、発散領域17を通過し、そこでは、速度が低下して、運動エネルギーの一部が静圧に変換される。そのような減速によって、高速領域を速く(即ち、速い速度で)通過した燃料を含む高温ガスの速度が低下し、そのため、高温ガスが、バーナー1の下流の燃焼室12に遅い速度で入り、それによって、燃焼室12内での燃料の滞留時間を燃料が完全かつ正常に燃焼して、低いCO排出量を達成するのに十分な長さとすることができる。更に、運動エネルギーの一部が静圧に変換されるので、渦流生成ゾーン6、縮小領域18及び高速領域16内で生じた圧力降下量の一部が補償され、そのため、バーナー全体での小さい圧力降下量が実現される。
【0048】
従って、そのような渦流生成ゾーン6、高速領域16及び発散領域17の組み合わせによって、チャネル2を通る高温ガスの速い速度(そのため、少ないNOx排出量、大きなフラッシュバックマージン及びオイル動作での少ない水消費量)と同時に、バーナー1から出る時の遅い速度を実現することができ、その結果、燃焼室内での残留時間が長くなり、そのためCO排出量が低減される。
【0049】
更に、反応ゾーンを或る程度下流に移動させることができるので、従来のバーナーと比べて混合品質が良くなった時に反応が起こり、そのような要因は、NOx排出量の低下にも寄与する。
【0050】
更に、バーナー全体を通した圧力降下量が小さくなり、そのため、ガスタービンの効率と出力が増大する。
【0051】
更に、高温ガスが発散領域17の内壁20から離れる地点を固定するための突起21は、不安定な流れの発生と、そのため、燃焼室内での不安定な燃焼及び脈動の発生とを防止している。
【0052】
当然のことながら、ここで述べた特徴は、互いに独立して規定することができる。
【0053】
実際には、使用する材料とサイズは、要求条件と技術水準に応じて任意に選定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 バーナー
2 チャネル
3 ランス
4 噴出面
6 渦流生成ゾーン
7 渦流生成器
9 混合ゾーン
10 側壁
11 上方/下方壁
12 燃焼室
14 ランスの先端
15 チャネル2の縦軸
16 混合ゾーン9の高速領域
17 混合ゾーン9の発散領域
18 縮小領域
19 バーナーの出口
20 発散領域17の内壁
21 突起
G 高温ガス
h 高さ
w 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル(2)と、そのチャネル内に突き出た、チャネルの縦軸(15)に対して垂直な噴出面(4)に渡って燃料を噴射するためのランス(3)とを備え、チャネル(2)とランス(3)が、高温ガス(G)の流れる方向に対して、噴出面(4)の上流の渦流生成ゾーン(6)と、噴出面(4)の下流の混合ゾーン(9)とを規定する再加熱バーナー(1)において、
混合ゾーン(9)が、
断面が一定である高速領域(16)と、
高温ガス(G)の流れる方向に対して、高速領域(16)の下流に有る、断面が拡がって行く発散領域(17)と、
を有することを特徴とする再加熱バーナー。
【請求項2】
混合ゾーン(9)の高速領域(16)の断面が、バーナーの中で最も小さいことを特徴とする請求項1に記載の再加熱バーナー。
【請求項3】
混合ゾーン(9)は、高速領域(16)の上流に縮小領域(18)を有することを特徴とする請求項2に記載の再加熱バーナー。
【請求項4】
発散領域(17)の幅(w)と高さ(w)の両方が、バーナーの出口(19)に向かって増大して行くことを特徴とする請求項1に記載の再加熱バーナー。
【請求項5】
発散領域(17)の幅(w)と高さ(w)の増大傾向が、流れの離脱傾向に適合していることを特徴とする請求項4に記載の再加熱バーナー。
【請求項6】
発散領域(17)の内壁(20)が、高温ガスが発散領域の内壁(20)から離れる線を規定する突起(21)を有することを特徴とする請求項5に記載の再加熱バーナー。
【請求項7】
突起(21)が、発散領域の内壁(20)の周囲に渡って延びていることを特徴とする請求項6に記載の再加熱バーナー。
【請求項8】
渦流生成ゾーン(6)が、幅(w)と高さ(h)の両方がバーナーの出口(19)に向かって増大して行く少なくとも一つの区画を有することを特徴とする請求項1に記載の再加熱バーナー。
【請求項9】
当該のチャネル(2)の断面が、四角形、正方形又は台形であることを特徴とする請求項5に記載の再加熱バーナー。
【請求項10】
ランスの先端(14)が、高速領域(16)の上流に有ることを特徴とする請求項1に記載の再加熱バーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42200(P2012−42200A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175693(P2011−175693)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】