説明

再循環された塩化水素を用いたクロロメタンの製造方法

【課題】再循環された塩化水素をクロロメタンの製造に用いるにあたり、MeCl合成において持ち込まれるSi化合物によって、プロセス不確実性が高まり、プロセス収率を低減させるシロキサンの損失が見られ、環境は汚されるという従来技術の欠点を解消する。
【解決手段】メタノールと、メチルクロロシラン、メトキシメチルシラン並びにその加水分解生成物及び縮合生成物から選択されるSi化合物で汚染された塩化水素とからクロロメタンを製造するための方法において、形成されたクロロメタンから、該Si化合物の一部を凝縮させ、そして残りのSi化合物をメタノールで洗浄し、その際に得られたSi化合物を含有するメタノールをクロロメタンの製造のために塩化水素と一緒に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールと、ケイ素化合物で汚染された塩化水素とから、クロロメタンを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタノールと、メチルクロロシラン加水分解に由来する塩化水素とからクロロメタンを製造する場合には、ケイ素化合物がクロロメタン反応器中にもたらされる。従って、クロロメタン反応器の蒸留物は、不所望な不純物として、メチルクロロシラン、メトキシメチルシラン、その加水分解物及び縮合生成物(ポリメチルシロキサン)(以下、共通にSi化合物と呼ぶ)並びにメチルクロロシラン合成(ミュラー・ロッホウ(Mueller−Rochow))に際して副生成物として生成する炭化水素を含有する。Si化合物の主成分は、ポリジメチルシロキサン環、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、特にD4である。これらのSi化合物は、凝縮によって、クロロメタンガスから十分に分離することができない。Si化合物の一部は、ウォータースクラバ(Wasserwaescher)中で凝縮され、流出するMeOH/水−混合物と一緒に、メタノール回収のために蒸留に供給される。Si化合物の他の部分は、MeClと一緒にウォータースクラバから取り出され、引き続きMeClの乾燥に際して硫酸スクラバ(Schwefelsaeurewaescher)中で転化されて、シロキサニルスルフェートとなる。シロキサニルスルフェートの含分は、硫酸の廃棄もしくは再循環を困難にする。それというのも、取り扱いが困難なケイ酸様の固体が形成されるからである。蒸留によるメタノール回収にメタノール/塩酸−混合物と一緒に供給されるSi化合物は、部分的に、シロキサノールの形で希塩酸と一緒に塔を出て行く。Si化合物の他の部分は、塔頂生成物として回収されるメタノールと一緒に、MeCl反応器へと返送される。
【0003】
廃水と、とりわけ硫酸とを介して、シロキサン製造業者では、年間何トンものSi化合物が失われる。これらのSi化合物は、乾燥のために使用される硫酸の取り扱いに際して問題を引き起こし、更に環境を、生物学的に分解が困難な有機ケイ素成分で汚すことになる。
【0004】
ジメチルジクロロシランをポリジメチルシロキサンへと加水分解することの第一工程は、しばしば、実質的に化学量論的な水量(つまり、1モルのMe2SiCl2あたり1モルの水)をもって実施される。この方法様式の場合には、オルガノクロロシラン中に含まれる塩素は、塩酸の形ではなく、十分に乾式の塩化水素ガスの形で得られる。塩酸からの塩化水素のエネルギーを消費する回収は、その際には必要ない。
【0005】
塩化水素ガスは、MeClの製造のために必要となり、またMeClは、Siからメチルクロロシランを製造するために使用される。
【0006】
しかしながら、直接的に塩化水素ガスを提供するオルガノクロロシランの全ての加水分解法は、得られる塩化水素がケイ素化合物並びに炭化水素で汚染されているという欠点を有する。
【0007】
クロロシランもしくはシロキサンを生産する作業において生ずる、Si化合物及び/又はアルコールを不純物として含む塩化水素の精製は、一般に、該ガス混合物を、水、塩酸もしくは硫酸などの洗液で洗浄することによって行われる。塩化水素の蒸留による精製も同様に記載されている。
【0008】
Si化合物及び炭化水素を含有するジメチルジクロロシランの加水分解法から塩化水素を精製することについては、今まであまり報告されていない。
【0009】
α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン及びMeClの製造のための一体型プラントにおいて、α,ω−ポリジメチルシロキサンを、HClガスからSi化合物を分離するための精製液として使用することが見られる。しかしながら、この反応様式では、α,ω−ポリジメチルシロキサンの反応性に基づき、解決されるべき数多くの後続問題が生ずる。
【0010】
オルガノクロロシラン加水分解に由来する塩化水素の不十分な純度に基づき、これは、液相法でのみメタノールと反応させて、MeClを得ることができるに過ぎない。触媒を用いた液相法と触媒を用いない液相法とは区別される。液相法のための触媒の選択は、塩化水素の不純物に基づき制限される。しかしながら、触媒を用いた方法は、メタノールとHClとに関する、より高い空時性能及びより高い収率という利点を有する。液相法でしばしば使用される触媒は、ルイス酸特性を有する金属塩化物、例えば塩化亜鉛、塩化鉄、オキシ塩化ビスマス又はアミン、第四級アンモニウム化合物もしくはホスホニウム化合物である。
【0011】
塩化水素(ガス)及びメタノールを使用してMeClを製造するための液相法は、例えばEP0428166号A1に記載されている。しかしながら、そこでは、使用される塩化水素の品質について検討していない。
【0012】
塩化水素を介してもたらされるSi化合物は、MeCl反応器中で優勢な圧力温度比に応じて、生成物のMeCl中に達するか、又は形成された反応水を介してプロセス水中に達してしまう。使用される塩酸もしくは塩化水素ガスを介して持ち込まれるSi化合物がどこに残留し、あるいは該化合物をどのように処理するかは、記載されていない。部分的に、該文献に記載される方法は、研究室での調査においてのみ試験された。低い濃度で含まれるSi化合物がはらむ問題は、そこでは認識されていない。MeClの再処理又は過剰に使用されるMeOHの蒸留による回収は記載されていない。
【0013】
MeCl合成で必然的に生ずる、水と、MeOHと、HClと、Si化合物とからの混合物の蒸留による後処理に際して、それらのSi化合物はしばしば重合する。装置と管路において遮断が生ずる。熱交換器での熱輸送が妨害されることがある。プロセス廃水中に残留するSi化合物は、生分解性ではなく、いわゆる残留CSBを引き起こす。係るSi化合物は、環境的理由から廃水において回避されるべきである。
【0014】
Si化合物によって汚染されたMeClは、MeCl及びSiからのオルガノクロロシランの直接的な合成のための原料として使用できない。
【0015】
MeClからSi化合物を分離するには、付加的な費用のかかる分離法、例えば蒸留が必要となる。Si化合物をMeClから分離しない場合には、該化合物は、ジメチルエーテル(DME)の分離と、乾燥のためにしばしば使用される濃硫酸による処理において、ケイ酸様の固体の形成による問題を引き起こす。
【0016】
MeCl合成において持ち込まれるSi化合物によって、プロセス不確実性が高まる。プロセス収率を低減させるシロキサンの損失が見られるべきである。環境は汚される。
【0017】
メチルクロロシランの、いわゆるメタノール分解法において、Si結合した塩素は、メタノール−水混合物との反応によって、直接的にMeClに移る。また、前記の方法では、Si化合物で汚染されたMeClが生ずることがある。DE2521742号A1において、係る方法が記載されている。反応器から出て行くMeCl、MeOH、HCl、DMEからの混合物は、部分凝縮され、そして未凝縮の成分は、12℃に冷却されたメタノールで洗浄される。メタノール洗浄器(Methanolwaescher)は、明らかに、水、HCl及びDMEを、MeClから分離するために用いられる。該洗浄器に供給され排出される物質流の組成についての指摘は、見られない。
【0018】
DE3146526号A1は、Si含有のMeClを反応器から蒸気混合物として取り出すメタノール分解法を記載している。MeCl中に含まれるSi化合物の一部は、凝縮される。Si化合物の残留含分と、MeClの再処理とについては、何も述べられていない。
【特許文献1】EP0428166号A1
【特許文献2】DE2521742号A1
【特許文献3】DE3146526号A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、上記の従来技術の欠点を解消することであった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の対象は、メタノールと、メチルクロロシラン、メトキシメチルシラン並びにその加水分解生成物及び縮合生成物から選択されるSi化合物で汚染された塩化水素とからクロロメタンを製造するための方法において、形成されたクロロメタンから、該Si化合物の一部を凝縮させ、そして残りのSi化合物をメタノールで洗浄し、その際に得られたSi化合物を含有するメタノールをクロロメタンの製造のために塩化水素と一緒に使用する、クロロメタンの製造方法である。
【0021】
該方法によって、Si化合物を十分に形成されたクロロメタンから十分に分離すること成功する。分離されたSi化合物は、更に使用することができ、かつ他の後続プロセスをもはや妨げない。環境的負荷は、低減される。
【0022】
有利には、塩化水素とメタノールとを反応させてクロロメタンを得ることは、反応条件下での液相中で実施される。有利には、該液相は、触媒を含有する。好ましい触媒は、アミン塩酸塩と、そこからプロセス条件下で形成される第四級のメチルアンモニウムクロリド、第四級のホスホニウム化合物及びルイス酸特性を有する金属塩化物、例えば塩化亜鉛、塩化鉄、オキシ塩化ビスマスである。
【0023】
本発明による方法では、有利には、第一級、第二級、第三級の、直鎖状の、環状の、脂肪族の、及び芳香族のアミンの塩酸塩が使用されるが、但し、本発明により使用される触媒は、十分な熱的安定性を有する。
【0024】
本発明により使用されるアミン塩酸塩におけるアミンのための例は、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、アニリン並びに、ハロゲン原子及び/又はアルキル基で置換されたアニリン、例えばN,N−ジメチルアニリン、o−、m−、p−フェニレンジアミン、複素環、例えばキノリン、イミダゾール、ピペリジン及びピペラジン、そしてピリジン、並びに置換されたピリジン、例えばハロゲン原子、アルキル基及び/又はアミノ基で置換されたピリジン並びにそれらのMeClによる第四級のメチル化生成物である。
【0025】
本発明により使用されるアミンハロゲン化水素塩における好ましいアミンは、芳香族アミン、例えばアニリン、ピリジン、キノリン、フェニレンジアミン、並びにα−及びβ−ナフチルアミンであり、その際、芳香族アミン並びにそれらのMeClによる低分子量を有するメチル化生成物が特に好ましい。
【0026】
本発明による方法で特に好ましく使用されるハロゲン化水素塩のための例は、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン及びアニリンの塩酸塩である。本発明による方法で使用されるアミン塩酸塩は、それ自体で、例えば水との混合物において反応器に導入することができ、又は反応器中で相応のアミンから、ハロゲン化水素との反応によって製造することができ、その際、MeClによるメチル化生成物も生ずる。
【0027】
本発明による方法で使用されるアミン塩酸塩は、係るアミン塩酸塩の個別の1種でもよく、また係るアミン塩酸塩の少なくとも2種からの混合物であってもよい。
【0028】
有利には、液相中の触媒の割合は、液相の全質量に対して、遊離アミンの質量として計算して、10〜80質量%、特に有利には35〜60質量%である。有利には、塩化水素は、塩化水素の液相中での濃度がその都度の共沸濃度未満となる量で供給される。
【0029】
液相反応は、有利には、90〜200℃、特に有利には100〜180℃の温度及び900〜16000hPa、特に有利には1000〜6000hPaの圧力で実施され、その際、反応条件は、有利には、液相の容量が一定に保たれるように選択される。
【0030】
本発明による方法においては、メタノールは、MeClに対して過剰に、有利には10〜50質量%過剰に、特に25〜35%過剰に使用される。
【0031】
本発明による方法では、有利には塩化水素は、液相中の遊離塩化水素の濃度が、その都度の共沸濃度未満にある量で使用される。特に有利には、液相中の遊離塩化水素の濃度は、それぞれ液相の全質量に対して、0.1〜19質量%、特に0.1〜10質量%である。その際、遊離塩化水素とは、アミンに結合されていない塩化水素を指す。
【0032】
有利には、クロロメタンからのSi化合物の部分的な凝縮の後に、有機化合物を有するSi化合物の相とメタノール−HCl−水相とにおいて凝縮物の分離が行われる。有利には、相の分離は、分離容器中で行われる。
【0033】
Si化合物が軽相として生ずるか又は重相として生ずるかどうかは、メタノール−水相の組成を介して制御することができる。
【0034】
有利には、分離されたSi化合物を、メチルクロロシラン、特にジメチルジクロロシランの加水分解へと戻して配量される。
【0035】
メタノール中でのSi化合物の溶解度は、含水率によって影響される。従って、Si化合物の洗浄のために使用されるメタノール中の好ましい含水率は、高くても10質量%、特に有利には高くても5質量%、特に高くても2質量%である。
【0036】
本方法で使用される全メタノールは、Si化合物の洗浄のために使用できるか、又はその部分量のみが使用できる。有利には、使用されるメタノールの30〜100%、特に40〜80%がSi化合物の洗浄のために使用される。
【0037】
有利には、Si化合物の洗浄のためのメタノールの温度は、支配的な圧力でのその沸点より0℃〜1℃低い。
【0038】
有利には、メタノールによりSi化合物を洗浄する際の圧力は、500〜5000hPaである。
【0039】
メタノールによりSi化合物を洗浄するために、例えば充填体及び/又は分配トレイ(Verteilerboeden)を有する洗浄器を使用することができる。メタノールの供給は、有利には洗浄器の上から三分の一で行われる。有利には、クロロメタンは、洗浄器の下から三分の一で供給される。飛沫同伴されたメタノールの分離の改善のために、クロロメタンを好適な冷却器及び分離器に導通させて、ガスから液滴を分離し、そして分離されたメタノールをメタノール洗浄器中に戻して供給する。
【0040】
有利には、メタノール洗浄器から発生したクロロメタンから、ウォータースクラバ中で残留メタノールを除去する。有利には、そのメタノールは、ウオータースクラバのメタノール含有の排流から蒸留塔を介して回収される。
【0041】
本発明による方法の好ましい一実施形態を、図1をもとに詳説する:
触媒を水との混合物で含有する加熱可能な反応器(1)において、導管(2)を介して、Si化合物を含有する塩化水素を供給し、かつ導管(3)を介して、受容器(4)及びメタノール洗浄器(13)からのメタノールを供給する。反応で形成されたクロロメタンが、水、メタノール、Si化合物及び微量の塩化水素との混合物で、ガス室へと出て行き、そして導管(5)を介して凝縮器(6)へと到達し、そこで、水、メタノール及びSi化合物の主要量が液体として分離され、それらは導管(7)を介して分離容器(8)に供給される。分離容器(8)において、Si化合物を相として分離し、そして該化合物は導管(9)を介して更なる利用へと供給される。大部分が水とメタノールからなる相を、導管(10)を介して、メタノール回収のための蒸留塔(11)に供給する。凝縮器(6)から取り出されたクロロメタンは、導管(12)を介してメタノール洗浄器(13)に到達し、そこで、前記クロロメタンから、向流において、導管(20)からの新たなメタノールを用いて、Si化合物が除去される。メタノール洗浄器(13)から排出された、Si化合物を含有するメタノールを、蒸留塔(11)中で回収され導管(14)を介して返送されたメタノールと一緒に、導管(3)を介して反応器(1)へと供給する。メタノール洗浄器(13)から出て行くクロロメタンは、導管(15)を介して、ウォータースクラバ(16)、つまり頂部から導入された水との接触によってクロロメタンからメタノールを除去する装置に到達し、そして導管(17)を介してプラントを出る。ウォータースクラバ(16)からのメタノールを含有する水は、導管(18)を介して蒸留塔(11)に供給される。蒸留塔(11)の缶出物中に含まれる水は、導管(19)を介してプラントを出て行く。
【0042】
以下の実施例及び比較例においては、それぞれ特に記載がない限り、全ての量及び割合の表示は、質量に対するものであり、かつ全ての反応は、0.10MPa(絶対圧)の圧力及び20℃の温度で実施される。
【実施例】
【0043】
本発明によるものでない実施例1
EP428166号A1の実施例1と同様の装置において、クロロメタンを製造した。該装置を、図2に図示する。
【0044】
塩酸中に溶解された触媒を含有する加熱可能な反応器(1)において、導管(2)を介して、Si化合物を含有する塩化水素283l/hを供給し、そして導管(3)を介して、メタノール受容器(4)及び蒸留塔(11)からのメタノール520g/hを供給した。
【0045】
そのプロセスで使用されるHClガスは、ジメチルジクロロシランの塩酸による連続的加水分解のための装置に由来するものであった。ジメチルジクロロシランの純度は、(<)>99.0質量%であった。HClガス中に不純物として含まれるSi化合物の含有率は、Me2SiOとして計算して、合計で約2000ppmであった。そのうち、約25%が、環状化合物D3に割り当てられ、50%が、D4に割り当てられ、そして約25%が、D6に割り当てられた。その他に、微量(<50ppm)のジメチルジクロロシラン、α,ω−ジクロロシロキサンCl(Me2SiO)nCl(nは1〜5である)と、HO(Me2Si)mX型(mは、1、2、3、…であり、;Xは、Cl、OHである)の微量の化合物を含有していた。
【0046】
Siを含まない不純物には、分枝鎖状のC7−炭化水素(トリメチルブタン、ジメチルペンタン、C7−オレフィン)と、前記のオレフィンへのHClの付加生成物と、微量の水とが含まれていた。
【0047】
HClガス中の不純物の濃度測定は、ガスクロマトグラフィーによって行った。
【0048】
反応器(1)を頂部を介して出て行く、MeCl、MeOH、微量のジメチルエーテル、HCl、Si化合物及び炭化水素からなる混合物を、導管(5)を介して、氷水で冷却された凝縮器(6)に導入し、約10℃に冷却し、そして形成された凝縮物を回収した。
【0049】
その凝縮物(約30%のメタノール、6%のHCl;63%の水)は、780ppmのMe2SiOを含有していた。
【0050】
測定法: 1H−NMR(文献: R.Lehnert;Nachr.Chem.Tech.Lab.2009(09),1167−1168)。
【0051】
前記の凝縮物は、含まれるSi化合物によって軽く混濁していた。しかしながら、相分離は、16時間の貯蔵後にも生じなかった。
【0052】
凝縮器(6)中で分離された凝縮物を、導管(7)を介して蒸留塔(11)に供給した。
【0053】
凝縮器(6)から取り出されたクロロメタンは、導管(15)を介してウォータースクラバ(16)に到達した。そこで、凝縮器(6)を通過した際に凝縮されなかった成分(MeCl、MeOH、DME、水、HCl、Si化合物(Me2SiO))を、充填体(セラミック製のBerlsaettel 6×6mm)で充填された塔(内径50mm、高さ1m)中で向流において2000g/hの水で洗浄した。ウォータースクラバ(16)後に導管(17)で行ったMeCl中のSi測定により、283ppmのMe2SiO濃度が得られた。
【0054】
5時間にわたる試みからのウォータースクラバ(16)の排流(10.24kg)を、まず回収した。その排流は、乳化され微分散された液滴の形でシロキサンを含有しており、それらは、長期静置時間後にも相分離によって分離し得なかった。Me2SiO濃度は、240ppmであった。該排流は、約2.5%のメタノールを含有していた。試験時間5時間後のウォータースクラバ(16)の回収された排流と凝縮器(6)の凝縮物とを混合し(約12kg)、それをメタノールの回収のために、連続的に、加熱された蒸留塔(11)、つまり充填体塔(1m、5cm、セラミック製のBerlsaettel 6×6mm)の下方部へと配量した。その塔底部は、充填状態を一定に保持する溢流口を有する加熱された250mlのフラスコからなっていた。Me2SiO含有率310ppmを有するメタノール性塩酸約5000gを配量した後に、該塔の配量箇所の周辺でポリマーシロキサンによる遮断が観察された。その試験は、中断せざるを得なかった。得られた蒸留物(約70g;10%水、90%MeOH)中のMe2SiO濃度は、約880ppmであった。蒸留塔(11)の蒸留物を、導管(3)を介して反応器(1)へと供給した。導管(19)から流出する缶出物は、含まれるSi化合物によって混濁していた。Me2SiO濃度は、155ppmと測定された。
【0055】
クロロメタンを、導管(17)を介してプラントから排出した。
【0056】
第1表: MeOHと、2000ppmのMe2SiO含有率を有するHCl(ガス)とからのMeCl合成の生成物流における、5時間の試験時間後のMe2SiOの収支
【表1】

【0057】
HClガスを介してもたらされたSi化合物の87%は、廃水を介して、又はMeCl中の不所望な不純物として失われる。副生成物として生ずるメタノール性塩酸中のSi化合物の含分は、未反応のメタノールを回収するという目的がある蒸留による後処理で問題を引き起こす。
【0058】
メタノール回収のMe2SiO収支において、5時間の試験時間にわたって、約1g(それは仕込まれたMe2SiO量の45%に相当する)の損失量であった。
【0059】
本発明による実施例2
当該方法を、図1によるプラントで実施した。そのために使用されるHClガスは、ジメチルジクロロシランの塩酸による連続的加水分解のための装置に由来するものであった。ジメチルジクロロシランの純度は、(<)>99.0質量%であった。
【0060】
HCl506l/hとMeOH1070g/hとが反応して、485l/hが得られた。
【0061】
メタノール洗浄器(13)の排流中のMe2SiO濃度は、約3500ppm(4.28g/h)であった。凝縮器(6)における粗製MeClの冷却後に出て行く液体を、分離容器(8)において回収した。その表面上に、シロキサン相が堆積した(Si相の密度:0.91〜0.98g/cm3;25℃)。導管(9)を介して分離されたシロキサン相の量は、24時間後に約27gであった。導管(10)の水−メタノール性相中のMe2SiO濃度は、1340ppm(0.9g/h)であった。その相は、軽く混濁していた。相分離の加減は、水−メタノール性の塩酸の密度によって影響されうる。
【0062】
ウォータースクラバ(16)は、実施例1と同様に、2000g/hの給水で運転させた。ウォータースクラバ(16)後の導管(17)からのMeClにおいては、Me2SiOは検出できなかった。ウォータースクラバ(16)の排流(18)においても同様に、Me2SiOは検出できなかった(<50ppm)。排出される水−メタノール混合物は、澄明であった。
【0063】
24時間の試験期間内で集積されたウォータースクラバ(16)の排流(18)と、分離容器(8)からのメタノール性の塩酸とを混合し、そして実施例1と同じ蒸留塔(11)を介して蒸留した。供給された混合物(10)中のMe2SiO濃度は、320ppmであった。蒸留塔(11)を流れ出る缶出物において、225ppmのMe2SiO(=0.55g/h)が見出された。メタノール蒸留物(14)において、1000ppm(0.35g/h)のMe2SiOが見出された。蒸留塔(11)において、ポリマーシロキサンは分離されなかった。
【0064】
第2表: MeOHと、2000ppmのMe2SiO含有率を有するHCl(ガス)とからのMeCl合成の生成物流における、Me2SiO分離を伴う24時間の試験時間後のMe2SiOの収支
【表2】

【0065】
HClガスと一緒にもたらされた1.6g/hのMe2SiOから、その1.1g/h(68%)を、MeOH−HCl−水混合物から分離容器F中で相分離することによって分離することができた。約0.50g/hのMe2SiOは、メタノール蒸留の缶出物排流を介して廃水として失われる。
【0066】
分離容器からの有機相は、約90〜99%までが、Si化合物(主に、環状化合物D3〜D10)からなっていた。その他には、種々の、とりわけ分枝鎖状のC4乃至C12アルカン、アルケン、カルボニル化合物、塩素化炭化水素、EtCl及びMeClが含まれていた。分離されたSi混合物は、種々異なる様式で使用することができる:
該混合物は、例えば、更に処理することなく、ジメチルジクロロシランの加水分解のための反応器に供給することができる。Si混合物から、好適な方法(蒸留、抽出など)によって、含まれている純粋に有機的な不純物(例えばアルカン、アルケン、カルボニル化合物、塩素化炭化水素)を分離することができ、それによりはじめて、その際に残っているSi化合物を、ジメチルジクロロシランの加水分解のための反応器中に供給することによって使用することができる。このように、不所望な有機物を、シロキサンの製造のための1つの接続された一体型のプラントから分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明による方法の好ましい一実施態様を示している。
【図2】図2は、EP428166号A1の実施例1と同様の装置を示している。
【符号の説明】
【0068】
2、3、5、7、9、10、12、14、15、17、18、19、20 導管、 1 反応器、 4 受容器、 6 凝縮器、 8 分離容器、 11 蒸留塔、 13 メタノール洗浄器、 16 ウォータースクラバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールと、メチルクロロシラン、メトキシメチルシラン並びにその加水分解生成物及び縮合生成物から選択されるSi化合物で汚染された塩化水素とからクロロメタンを製造するための方法において、形成されたクロロメタンから、該Si化合物の一部を凝縮分離させ、そして残りのSi化合物をメタノールで洗浄分離し、その際に得られたSi化合物を含有するメタノールをクロロメタンの製造のために塩化水素と一緒に使用する、クロロメタンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、クロロメタンからのSi化合物の一部の部分的な凝縮分離の後に、分離容器中で、有機化合物を有するSi化合物の相とメタノール−HCl−水相とに凝縮物の分離を行う、クロロメタンの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、分離されたSi化合物をメチルクロロシランの加水分解へと戻して配量する、クロロメタンの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、該方法で使用されるメタノールの30〜100%を、Si化合物の洗浄のために使用する、クロロメタンの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、塩化水素とメタノールとを反応させてクロロメタンを得ることを、反応条件下で液状で触媒を含有する相中で実施する、クロロメタンの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、アミン塩酸塩を触媒として使用する、クロロメタンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−285488(P2008−285488A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129621(P2008−129621)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】