説明

再成形ソフト食

【課題】
高齢者など咀嚼機能の低下した人向けのソフト加工食品は、球状やダイズ状、或いは板状等であり、実際の食品材料を用いて調理した本来の食品の外観形状とはかけ離れたものであり、食する者の食欲を増す性状とは言い難いものであった。
【解決手段】
魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを裁断して混練したのち、その一部を取り分けて少なくとも二以上の食品材料とし、これら二以上に分けられた食品材料を更に成型枠に入れて成型し或いは食用色素により色付け加工した後、これらの食品材料を組み合わせることによって、魚介類や食肉或いは野菜果物類を小口に切断して調理した実際の加工食品の外観及び形状をほぼそのまま再現し、かつ嚥下或いは咀嚼機能の低下又は不十分な人が容易に食べられるように柔らかく加工してなることを特徴とする加工食品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉又は魚介類或いは野菜果実類などを主原料とした、いわゆるソフト加工食品及びその製造方法に関するものである。特に、咀嚼困難な高齢者や嚥下障害者向けの介護食や幼児向けの離乳食として用いられ、咀嚼能力が十分でなくとも容易に食することができる性状を有するソフト加工食品及びその製造方法に関する。
【0002】
しかも、加工食品でありながら、これらの食品素材の持つ外観や調理した際の形状に近似させ、より本物に近いものに再現したため、喫食者の食欲を阻害することがない。このように本発明は、加工された食品でありながら見た目も実際の食品材料の調理品と極めて近似する外観形状を有する食肉又は魚介肉、或いは野菜果実等の食品材料全般を主原料とするソフト加工食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年わが国では人口の高齢化に伴い、長寿命化となるにしたがい咀嚼機能や嚥下機能の低下した高齢者の割合が増加するにつれて、喫食時にきわめて軟らかい嚥下等が容易な加工食品の需要が年々高まっている。
【0004】
また一方で、これら嚥下或いは咀嚼機能の十分に発達していない離乳食を必要とする乳幼児にとっても、こうした軟らかなソフト加工食品は有効な食品である。こうした咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者等が食物を摂取する場合、その摂取能力に応じて食品材料を細かく刻んだり、ミキサー等でペースト状にしたり様々な食品性状によって対応している。
【0005】
基本的な食品素材の中では、肉類は加工方法の難しいものの一つと言われている。そうした中で、咀嚼困難者及び軽度の嚥下困難者向けに適した固形状の食肉ソフト加工食品であって、ミンチ状又は細切状の食肉材料に、少なくとも澱粉と油脂と増粘多糖類と水とが添加混合された食肉混合材からなり、この食肉混合材を所定の形状に成形された食肉混合成形品を含んでいる食肉ソフト加工食品及びその製造方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、嚥下の容易な魚肉練り製品として、魚肉原料に食塩を主体とした調味料を添加した後これを混錬して粘調な魚肉糊を形成し、さらにアルファ化澱粉や気泡剤などを添加することによって、経口摂取する際は口中で溶けるように軟らかい食感を与えることができるとともに、製造の過程では保形性を保持し得る魚肉練り製品の製造方法が開示されている(特許文献2)。
【0007】
また、食べる人の視覚的効果の向上を目的として、誕生日記念などに提供されるデコレーションケーキの表面などに、可食フィルムに可食インクを用いて人物写真等の原画を加工して得た画像を印刷し、これをケーキなどの食品表面に貼着した画像付き食品や(特許文献3)、パンや饅頭のような食品の表面に自動的に可食フィルムを貼付けることによって、意匠感や高級感をもった食品を効率よく得る可食フィルム自動貼付装置などが開示されている(特許文献4)。
【0008】
【特許文献1】特開2005ー110677号公報(第5頁35行〜第6頁12行)
【特許文献2】特開2005ー269947号公報(第3頁4行〜第4頁11行)
【特許文献3】特開2001ー78681号公報(第2頁右欄19行〜第3頁右欄4行)
【特許文献4】特開平7ー7489号公報(第2頁左欄2行〜同20行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている食肉のソフト加工食品及びその製造方法においては、その成形工程で作られる食肉混合材の形状が、例えば、球状やダイス状、或いは板状、厚みのある楕円状や麺状などであり、食肉を用いて調理した食品の実際の外観形状とはかけ離れたものであり、食べる者にとって食欲をそそる食品の性状とは言い難いものであった。
【0010】
また、特許文献1では、食肉混合成形品の形状を咀嚼嚥下機能正常者用の普通食と同様の形状に成形して製造することが記載されているが、具体的にどのような外観形状であるのか開示されていない。
【0011】
また、特許文献2に記載されている嚥下容易な魚肉練り製品の製造方法及びその製品においては、咀嚼嚥下機能の低下した人のために摂食した際に口中で溶けるように軟らかい食感を与えるような性状となっているが、ここで開示されている製品の形状は成形時の作業性や成形後の保形性のためのものであって、実際の食品材料を用いて調理した本来の食品の外観形状とはかけ離れたものとなっており、食べる者の食欲を増す食品の性状とは言い難いものである。
【0012】
また、こうした見た目の食品性状を改善するものとして、特許文献3に記載されている画像付食品においては、ケーキやかまぼこなどの食品の表面の一部に、人物写真やコンピューターグラフィックの画像を直接可食フィルムに印刷して貼着しているだけであり、画像の内容自体の装飾的な効果は得られるが、実際の調理済み食品の外観形状をそのまま現実的に再現するものではなく、食べる人の食欲を増進させるものでもなかった。
【0013】
さらに、特許文献4に記載されている発明においては、可食インクを用いて絵柄や文字等が描かれた可食フィルムをパンや饅頭などの食品材料表面に自動的にプリントする装置が開示されているが、これは従来手作業で行われていたものを自動化して作業の効率化を図ったものであり、上記特許文献に開示されたものと同様に実際の調理済み食品の外観形状をそのまま現実的に再現するものではなく、食べる人の食欲を増進させるものでもなかった。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、咀嚼或いは嚥下機能の低下又は十分でない者の食する、食肉や魚介類などを主原料として調理加工された実際の調理済み食品の外観形状をそのまま現実的に再現して、これを食する者の食欲を増進させる効果を有する加工食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明は上記目的を達成するために、魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを裁断して混練したのち、その一部を取り分けて少なくとも二以上の食品材料とし、これら二以上に分けられた食品材料を更に成型枠に入れて成型し或いは食用色素により色付け加工した後、これらの食品材料を組み合わせることによって、魚介類や食肉或いは野菜果物類を小口に切断して調理した実際の加工食品の外観及び形状をほぼそのまま再現し、かつ嚥下或いは咀嚼機能の低下又は不十分な人が容易に食べられるように柔らかく加工した食品としたものである。
【0016】
また、更に、魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを細かく裁断したのち、これに増粘剤又はゲル化剤を添加して、ほぼペースト状となるまで混練してベースとなる第一食品材料を生成する第一工程と上記第一工程で混練した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、これに天然色素等の食用色素を添加して色付けを行った後、所定の形状に加工することによって上記魚介類等の食物の一部部位の実際の外観形状をほぼ再現して第二食品材料を生成する第二工程と、上記第一食品材料を所定の成型枠に注入した後所定の温度で加熱して固化させ、さらに冷却する第三工程と、上記第二の食品材料を第一の食品材料に貼付して一体的に結着させた後、所定の包装材を用いて真空包装する第四工程と、上記真空包装した食品材料を再度加熱及び冷却する第五工程とからなる加工食品の製造方法としたものである。
【0017】
また、上記加工食品の製造方法において、第二工程で加工される第二の食品材料は、略シート状、短冊状又はブロック状に形成されている加工食品の製造方法としたものである。
【0018】
さらに、上記記載の加工食品の製造方法において、第二工程が、第一工程で混練した第一の食品材料を所定の形状に加工することによって上記魚介類等の食物の食品材料のベースとする工程であり、第四工程が、魚介類等の食物の一部部位がほぼ再現されるように可食インクを用いて第一の食品材料の表面に直接印刷した後、所定の包装材を用いて真空包装する工程である加工食品の製造方法としたものである。
【0019】
また、上記加工食品の製造方法において、第二工程が、魚介類等の食物の一部部位がほぼ再現されるように直接可食インクを用いて可食フィルムに印刷したものを第一の食品材料に貼付する工程であり、第四工程が、上記可食インクを用いて印刷された可食フィルムを第一の食品材料に貼付して一体的に結着させた後、所定の包装材を用いて真空包装する工程である加工食品の製造方法としたものである。
【0020】
また、魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを細かく裁断したのち、これに増粘剤又はゲル化剤を添加して、ほぼペースト状となるまで混練してベースとなる第一食品材料を生成する第一工程と、上記第一工程で混練した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、これに天然色素等の食用色素を添加して色付けを行うことにより、上記魚介類等の食物の一部部位の実際の色味や模様等をほぼ再現して第二食品材料を生成する第二工程と、上記第一食品材料と第二食品材料とを所定の成型枠に同時に注入した後所定の温度で加熱して固化させ、さらに冷却する第三工程と、上記第一食品材料と第二食品材料とを一体的に結着成型させた後同時に成型枠から取り外し、所定の包装材を用いて真空包装する第四工程と、上記真空包装した食品材料を再度加熱及び冷却する第五工程とからなる加工食品の製造方法としたものである。
【0021】
また、上記加工食品の製造方法において、第三工程で用いられる成型枠は、魚介類、食肉又は野菜や果物類の現物の一部を切り分けたものから、シリコン又はシリコンシートなどの樹脂素材を用いて直接型取りした型枠である加工食品の製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0022】
上述したように本発明による加工食品は、咀嚼或いは嚥下機能の低下又は十分でない者向けに適した性状を有する加工食品であり、所定の包装材に冷凍状態で保管されているため、長時間の保存が可能であるうえ、解凍後一定時間加熱することにより簡単に喫食ができるため、一般家庭はもちろん多人数を収容する施設の食事にも便利に利用することができる。
【0023】
また、本発明による加工食品は、素材の裁断、混練等により略ペースト状とした食品材料をベースに用いているため嚥下等容易に食することができる軟らかい食品性状を有するうえ、魚介類、食肉又は野菜果実類の現物を所定の大きさに切断したものを使って直接型取りした型枠を用いて作られるため、型抜きした食品の外観形状は極めて実際の食材に近似したものとなることから、食べる者の食欲を増進させる効果を得られる。
【0024】
さらに、本発明による加工食品の製造方法によれば、少なくとも二以上の食品材料のうちの一方を実際の食材の切り身などから型を取った所定の成形枠で形成し、他の一方の食品材料をつかって、例えば魚の皮やその焼目、食肉の赤身や脂身、帆立貝の貝柱や卵巣、野菜の茎や葉などの食品材料の一部分を製造し、これら二つの材料を組み合わせて作ることができるため、様々な食品素材を用いる必要もなく極めて簡便に製造することができるうえ、より実際の食品に近いものを簡単な調理加工方法で大量に製造することができる。
【0025】
さらに、他の一方の食品材料を用いるかわりに実際の食材の一部を食用色素によりその色調を再現したものや、写真などの画像を印刷した可食フィルムを用いることにより、前述の成形枠から型抜きした食品材料の外観形状と相俟って、様々な種類の食材に対応したより実際の食材に近いものを現実感を持って簡単に再現することができる。
【0026】
以上のように、本発明による加工食品及びその製造方法によると、食肉や魚介類などを主原料として調理加工された実際の調理済み食品の外観形状をそのまま現実的に再現して、これを食する者の食欲を増進させる効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施の形態を示す図面に基づいて、本発明による加工食品及びその製造方法を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0028】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る加工食品及びその製造方法は、図1に示すように、第一工程から第五工程からなる製造工程により製造される。すなわち、第一工程である下処理工程では、鱈、ハマチ、アジ等の魚の頭や皮及び骨を取り除き、これらが取り除かれた後の魚肉を裁断装置等を用いて細かく裁断する。その後、この裁断した食品材料に山芋、卵、水、更に油や砂糖、食塩、増粘多糖類などをそれぞれ所定重量%の割合で混ぜ合わせる。
【0029】
具体的な混合割合としては、例えば、全体量の重量42%を裁断した魚肉とし、つなぎとして山芋を重量の15%、卵を重量の14%、植物油を重量の7.9%、砂糖を重量の20%、食塩を重量の0.5%、水を重量の8.7%、増粘多糖類を重量の0.1%等を加えて略ペースト状になるまで混練する。
【0030】
次に第二工程では、図1及び図2に示すように第一工程である下処理工程で混練加工した食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、例えば「イカ墨」等の食用色素を添加することにより本物の魚の皮の色目様の着色を施した後、更に混錬し略シート状に形成する。その後、該シート状形成品を加熱して固化させ、所定の大きさにカットして成形する。ここで成形された略シート状形成品は、後述する工程において魚の皮部材として最終加工食品の製造に利用される。
【0031】
次に第三工程では、図1及び図3に示すように前述した第一工程で混練加工後に取り分けた食品材料の残りの材料を全て所定の成型枠に流し込む。その後、各型枠ごとスチームオーブンなどの調理機器を用いて食品材料の中心温度が75度となるよう1分以上加熱し固化成形する。更に図4に示すように、加熱・固化工程を終了の後、ショックフリーザー等を用いて一定時間以内に食品材料の中心温度を約摂氏3度C以下に冷却し、その後同摂氏マイナス20度C前後の温度にて冷凍した後型枠より外す。なお、ここで、急速冷却時間としては、例えば約90分程度とするのがよい。
【0032】
次に第四工程では、図1及び図5に示すように第二工程で一部取り分けて食用色素等を混練して生成した食品材料(本実施態様においては魚の皮に相当する部分)を、上述の第三工程により冷却、生成した食品材料(本実施態 様においては魚肉に相当する部分)に接合して結着させる。図5に示すよう に、第四工程で生成した食品材料を所定の包装資材を用いて真空包装することにより各食品材料の素材の結着力を高めると共に食材の保存性をも高めることができる。
【0033】
最後に第五工程では、第四工程で真空包装することにより各食品材料を結着した後、該食品材料を包装したままの状態で再度一定時間加熱した上で、再冷却を行いマイナス18度以下にて冷凍保存する。
【0034】
なお、上述した第二工程では、第一の食品材料の一部を取り分けて食用色素と混練して魚の皮に相当する部分として第二の食品材料を生成したが、この工程を行わずに、第四工程において可食インクを用いて、第一の食品材料の表面に魚の皮様の色彩や模様を直接印刷することにより本物に近い食材の外観形状とすることもできる。
【0035】
さらに、同様に、上記可食インク等を用いて魚の皮様の色彩や模様を可食フィルムに直接印刷したものを、第一の食品材料である魚肉部分に貼り付けて結着することにより、第二工程としても良い。この場合には、本物の魚の皮に似せるため、用いられる魚の種類に応じて、略シート状や短冊状として魚の皮の厚さに近似するように可食フィルムの厚さを調整してもよい。
【0036】
(第二の実施形態)
次に、本物の貝類に近似した加工食品の製造方法に関する第二の実施形態について説明する。この、第二の実施形態における加工食品は、図6に示す第一工程から第五工程からなる製造工程により製造される。
【0037】
すなわち、第一工程である下処理工程では、ホタテ貝を用いてホタテの貝柱及びその卵巣を取り出して細かく裁断する。その後、この裁断した食品材料に山芋、卵、玉葱、更に油や砂糖、食塩、増粘多糖類などをそれぞれ所定重量%の割合で混ぜ合わせる。
【0038】
ホタテの加工食品の場合における具体的な混合割合としては、例えば、全体量の重量53.8%を裁断した貝肉とし、つなぎとして山芋を重量の11.7%、卵を重量の11.2%、植物油を重量の6.6%、砂糖を重量の2.5%、食塩を重量の0.5%、玉葱を重量の13.7%、増粘多糖類を重量の0.1%等を加えて略ペースト状になるまで混練する。
【0039】
次に第二工程では、図7に示すように第一工程で混練加工した食品材料の一部(本実施態様ではホタテの卵巣部分を含む貝肉部分)をあらかじめ取り分け、この「ホタテの卵巣」を食用色素として添加することにより本物のホタテの卵巣の色目様の着色したペースト状素材を生成しておく。
【0040】
次に第三工程では、図8に示すように前述した第一工程で混練加工後に取り分けた食品材料の残りの材料を全て所定の成形枠に流し込む。さらに上記取り分けて着色した卵巣部材となるペースト状素材を同時に型枠内に注入して両食品材料を結着させる。なお、このホタテ成型枠には、ホタテの貝柱部分と卵巣部分とに区分けされた凹型が形成されているため、これらの食品部材はそれぞれの型枠内に注入することになる。
【0041】
その後、各型枠ごとスチームオーブンなどの調理機器を用いて両食品材料の中心温度が75度となるよう1分以上加熱し固化成形させる。更に図9に示すように、加熱・固化工程を終了の後、ショックフリーザー等を用いて一定時間以内に食品材料の中心温度を約摂氏3度C以下に冷却し、その後同摂氏マイナス20度C前後の温度にて冷凍した後型枠より外す。なお、ここで、急速冷却時間としては、例えば約90分程度とするのがよい。
【0042】
次に第四工程では、図10に示すように第二工程で一部取り分けて食用色素等を混練して生成した食品材料(本実施態様においてはホタテの卵巣に相当する部分)と、上述の第三工程で成形枠に注入して結着した食品材料(本実施態様においては貝肉に相当する部分)を所定の包装資材を用いて真空包装することにより、各食品材料の素材の結着力をより一層高めると共に食材の保存性をも高めることができる。
【0043】
最後に第五工程では、第四工程で真空包装することにより各食品材料を結着した後、該食品材料を包装したままの状態で再度一定時間加熱した上で、再冷却を行いマイナス18度以下にて冷凍保存する。
【0044】
なお、上述した第三工程では、ホタテの卵巣に相当する部分として第一の食品材料の一部を取り分けてホタテの卵巣や他の食用色素と混練生成した食品材料を用いたが、いわゆる可食フィルムにホタテの卵巣様の色彩や模様を印刷したもの用いても良い。さらにこの場合には、本物のホタテの卵巣に似せるため略短冊状やブロック状の形状とすることにより、本物のホタテの厚さに近似するように可食フィルムの厚さや形状を調整してもよい。
【0045】
(第三の実施形態)
次に、食肉の加工食品の製造方法について説明する。図11に示すように、第一工程である下処理工程では、食肉を細かく裁断する。その後、この裁断した食品材料を全体量の重量40.0%とし、つなぎとして山芋を重量の25.0%、卵を重量の14.0%、植物油を重量の8.0%、砂糖を重量の0.83%、食塩を重量の0.83%、水を重量の5.0%、豚エキスを重量の4.0%等を加えて略ペースト状になるまで混練する。
【0046】
本実施形態における第二工程では、図12に示すように、第一工程で加工した一部をあらかじめ取り分けておき、例えば食用色素を添加して、食肉の脂身或いは霜降り肉などの色彩や模様となるように調整しつつ別途混練して略ペースト状の食品材料を作成しておく。
【0047】
本実施形態における第三工程では、図13に示すように、前述の食品材料の一部を取り分け着色を施したものを、取り分けない残余の食品材料とともに所定の成形型枠に注入し結着させる。その後、当該成形型枠ごとスチームオーブンなどの調理機器を用いて各食品材料の中心温度が摂氏75度Cにて1分以上加熱し固化成形させる。
【0048】
次に、図14に示すように、加熱・固化工程を終了の後、ショックフリーザー等を用いて90分以内に食品材料の中心温度3度以下に冷却し、その後マイナス20度前後の温度にて冷凍した後型枠より外す。
【0049】
更に図15に示すように、第二工程で生成した第二の食品材料或いは上述した可食フィルムに可食インクを用いて素材の食肉の脂身等の模様や色を印刷したものを、第三工程により生成した第一の食品材料と結着させておく。
【0050】
次に、第四工程ではこれら第一及び第二の食品材料を所定の包装資材を用いて真空包装することにより素材の結着をより一層高めると共に食材の保存性をも高めることができる。その後、第四工程で真空包装した食品材料を再度加熱した上で、再冷却のうえマイナス18度以下にて冷凍保存する。
【0051】
(第四の実施形態)
次に、第四の実施形態として海老を主原料とした加工食品の製造方法について説明する。図16に示すように、第一工程である下処理工程では、海老の頭及び殻を取り除き、細かく裁断する。その後、この裁断した食品材料を全体量の重量42%とし、つなぎとして山芋を重量の15%、卵を重量の14%、植物油を重量の7.9%、砂糖を重量の2.0%、食塩を重量の0.5%、水を重量の8.7%、増粘多糖類を重量の0.1%等を加えて略ペースト状になるまで混練する。
【0052】
次に図17に示すように、第一工程で下処理加工した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分け、例えば食用色素を添加して加熱した海老の背面の外観形状となるように色彩や模様を施し第二の食品材料を生成しておく。
【0053】
ここで、図18に示すように、第一工程で生成し取り分けた残りの第一の食品材料を所定の成形枠にいれる。その後型枠ごとスチームオーブンなどの調理機器を用いてこれら食品材料の中心温度を75度とし1分以上加熱し固化成形する。
【0054】
次に図19に示すように、加熱・固化工程を終了の後、ショックフリーザー等を用いて90分以内に第一の食品材料の中心温度を3度以下に冷却し、その後マイナス20度前後の温度にて冷凍した後型枠より外す。
【0055】
次に図20に示すように、第二工程で生成した第二の食品材料或いは可食フィルムに海老の背模様を印刷したものとを、第三の工程により生成した第一の食品材料と結着させる。同図に示すように、第四工程で生成したこれら食品材料を所定の包装資材を用いて真空包装することにより素材の結着をより一層高めると共に食材の保存性をも高める。その後、第四工程で真空包装した食品材料を再度加熱した上で、再冷却のうえマイナス18度以下にて冷凍保存する。
【0056】
(第五の実施形態)
最後に第五の実施形態として野菜のブロッコリー及びほうれん草を主原料とした加工食品の製造方法について説明する。
【0057】
図21に示すように、第一工程である下処理工程では、ブロッコリーなどの皮や筋を取り除き、例えば葉とくき部分を予め取り分け、細かく裁断する。その後、この裁断した食品材料を全体量の重量42%とし、つなぎとして植物油を重量の7.9%、砂糖を重量の2.0%、食塩を重量の0.5%、水を重量の8.7%、増粘多糖類を重量の0.1%等を加えて略ペースト状になるまで混練する。
【0058】
次に図22に示すように、第一工程で混練加工した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、例えばブロッコリーの緑葉に近似した食用色素を添加した後、別途混練し略ペースト状にした第二の食品材料を生成しておく。
【0059】
次に図23に示すように、第一工程で混練加工し取り分けた残りの第一の食品材料及び上記の取り分け着色を施した第二の食品材料を、例えば葉と茎が型取られた所定の成型枠に注入する。その後型枠ごとスチームオーブンなどの調理機器を用いてこれら食品材料の中心温度が75度にて1分以上加熱し固化成形させる。
【0060】
次に図24に示すように、加熱・固化工程を終了の後、ショックフリーザー等を用いて90分以内に食品材料の中心温度3度以下に冷却し、その後マイナス20度前後の温度にて冷凍した後型枠より外す。
【0061】
更に、図25に示すように、第一及び第二の食品材料の結着をより強固にするため、所定の包装資材を用いて真空包装するとよい。これにより、より素材の結着を高めると共に食材の保存性をも高めることができる。その後、第四工程で真空包装した食品材料を再度加熱した上で、再冷却のうえマイナス18度以下にて冷凍保存する。
【0062】
以上の通り、本発明による加工食品及び製造方法について、第一の実施例として「鮭、たら、さば等の魚肉の切り身」、第二の実施例として「ホタテ貝のソテー」、第三の実施例として「豚ヒレ肉のソテー」、第四の実施例として「海老のむき身」、第五の実施例「ブロッコリーの小片、ほうれん草のお浸し」について実施例を示して具体的に説明したが、加工食品の対象物はこれらに限定されるものではなく、食材として牛肉や鶏肉、果物、穀類を用いてよく、また、調理形態としては、焼き物やソテーのほかに、天ぷら等の揚げ物、焼き鳥、羊羹や饅頭などの菓子類等、様々な食材や調理法に応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、食肉又は魚介類或いは野菜果実などを主原料として、咀嚼困難な高齢者や嚥下障害者向けの介護食や乳幼児向けの離乳食として用いられ、咀嚼能力が十分でなくとも容易に食することができる性状を有するソフト加工食品及びその製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す魚肉の製造工程図
【図2】同製造工程の第二工程で取り分けた一部の食品材料を用いて成型される魚の皮の概念図
【図3】同製造工程の第三工程で行われる成型枠への魚肉の注入概念図
【図4】同製造工程の第三工程で行われる成型枠からの魚肉の取り外し概念図
【図5】同製造工程の第四工程で行われる各食品材料の結着及び真空包装の概念図
【図6】本発明の第二の実施形態を示す貝類の製造工程図
【図7】同製造工程の第二工程で取り分けた一部の食品材料と食用色素を混合する概念図
【図8】同製造工程の第三工程で行われる成型枠への注入及び結着の概念図
【図9】同製造工程の第三工程で行われる成型枠からの貝肉の取り外し概念図
【図10】同製造工程の第四工程で行われる各食品材料の再結着及び真空包装の概念図
【図11】本発明の第三の実施形態を示す食肉類の製造工程図
【図12】同製造工程の第二工程で取り分けた一部の食品材料と食用色素を混合する概念図
【図13】同製造工程の第三工程で行われる成型枠への注入及び結着の概念図
【図14】同製造工程の第三工程で行われる成型枠からの食肉の取り外し概念図
【図15】同製造工程の第四工程で行われる各食品材料の再結着及び真空包装の概念図
【図16】本発明の第四の実施形態を示すエビ類の製造工程図
【図17】同製造工程の第二工程で取り分けた一部の食品材料を用いて成型されるエビの背の概念図
【図18】同製造工程の第三工程で行われる成型枠へのエビ肉の注入概念図
【図19】同製造工程の第三工程で行われる成型枠からのエビ肉の取り外し概念図
【図20】同製造工程の第四工程で行われる各食品材料の結着及び真空包装の概念図
【図21】本発明の第五の実施形態を示す野菜果物類の製造工程図
【図22】同製造工程の第二工程で取り分けた一部の食品材料と食用色素を混合する概念図
【図23】同製造工程の第三工程で行われる成型枠への注入及び結着の概念図
【図24】同製造工程の第三工程で行われる成型枠からの野菜類の取り外し概念図
【図25】同製造工程の第四工程で行われる各食品材料の再結着及び真空包装の概念図
【符号の説明】
【0065】
1 シート状加工品
2 第一の食品材料
3 包装資材
4 取り分けた食品材料
5 食用色素
6 第一の食品材料
7 第二の食品材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを裁断して混練加工したのち、その一部を取り分けて少なくとも二以上の食品材料とし、これら二以上に分けられた食品材料を更に成型枠に入れて成型し、或いは食用色素により色付け加工した後、これらの食品材料を組み合わせることによって、魚介類や食肉或いは野菜果物類を小口に切断して調理した実際の加工食品の外観及び形状をほぼそのまま再現し、かつ嚥下或いは咀嚼機能の低下又は不十分な人が容易に食べられるように柔らかく加工してなることを特徴とする加工食品。
【請求項2】
魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを細かく裁断したのち、これに増粘剤又はゲル化剤を添加して、ほぼペースト状となるまで混練してベースとなる第一食品材料を生成する第一工程と、上記第一工程で混練した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、これに天然色素等の食用色素を添加して色付けを行った後、所定の形状に加工することによって上記魚介類等の食物の一部部位の実際の外観形状をほぼ再現して第二食品材料を生成する第二工程と、上記第一食品材料を所定の成型枠に注入した後所定の温度で加熱して固化させ、さらに冷却する第三工程と、上記第二の食品材料を第一の食品材料に貼付して一体的に結着させた後、所定の包装材を用いて真空包装する第四工程と、上記真空包装した食品材料を再度加熱及び冷却する第五工程とからなることを特徴とする請求項1記載の加工食品の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の加工食品の製造方法において、第二工程で加工される第二の食品材料は、略シート状、短冊状又はブロック状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の加工食品の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の加工食品の製造方法において、第二工程が、第一工程で混練した第一の食品材料を所定の形状に加工することによって上記魚介類等の食物の食品材料のベースとする工程であり、第四工程が、魚介類等の食物の一部部位がほぼ再現されるように可食インクを用いて第一の食品材料の表面に直接印刷した後、所定の包装材を用いて真空包装する工程であることを特徴とする請求項1乃至3記載の加工食品の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の加工食品の製造方法において、第二工程が、魚介類等の食物の一部部位がほぼ再現されるように直接可食インクを用いて可食フィルムに印刷したものを第一の食品材料に貼付する工程であり、第四工程が、上記可食インクを用いて印刷された可食フィルムを第一の食品材料に貼付して一体的に結着させた後、所定の包装材を用いて真空包装する工程であることを特徴とする請求項2乃至4記載の加工食品の製造方法。
【請求項6】
魚介類、食肉又は野菜や果物類などの食物のいずれかを細かく裁断したのち、これに増粘剤又はゲル化剤を添加して、ほぼペースト状となるまで混練してベースとなる第一食品材料を生成する第一工程と、上記第一工程で混練した第一の食品材料の一部をあらかじめ取り分けておき、これに天然色素等の食用色素を添加して色付けを行うことにより、上記魚介類等の食物の一部部位の実際の色味や模様等をほぼ再現して第二食品材料を生成する第二工程と、上記第一食品材料と第二食品材料とを所定の成型枠に同時に注入した後所定の温度で加熱して固化させ、さらに冷却する第三工程と、上記第一食品材料と第二食品材料とを一体的に成型させた後同時に成型枠から取り外し、所定の包装材を用いて真空包装する第四工程と、上記真空包装した食品材料を再度加熱及び冷却する第五工程とからなることを特徴とする請求項1記載の加工食品の製造方法。
【請求項7】
成型枠は、魚介類、食肉又は野菜や果物類の一部を切り分けたものから、シリコン又はシリコンシートなどの樹脂素材を用いて直接型取りした型枠であることを特徴とする請求項1乃至6記載の加工食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−99023(P2010−99023A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274178(P2008−274178)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(308033733)株式会社ベスト (2)
【Fターム(参考)】