説明

再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具用の処理方法

【課題】
再生医療手術者が、衛生的かつ容易に再生医療手術の前準備をすることのできる再生医療用器具のトレイ及び包装体の提供が求められる。
【解決手段】
本発明は、再生医療用器具の包装体に関する。より詳細には、生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具、液体を貯留する液槽を備えたトレイ、並びに、
前記再生医療用器具及び前記トレイを密封した包材を含み、前記再生医療用器具、トレイ並びに包材は滅菌されたものである再生医療用器具の包装体に関する。さらに、本発明は再生医療用器具の処理方法にも及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療用器具の包装体に関する。より詳細には、生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具、液体を貯留する液槽を備えたトレイ、並びに、
前記再生医療用器具及び前記トレイを密封した包材を含み、前記再生医療用器具、トレイ並びに包材は滅菌されたものである再生医療用器具の包装体に関する。さらに、本発明は再生医療用器具の処理方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
近年、事故及び手術などにより欠損又は切除した組織などに、当該組織の細胞が増殖するための足場を有する器具を埋植し、細胞を当該足場に沿って成長させることにより、機能を回復させる治療法について種々の研究がなされている。いわゆる再生医療の研究である。
【0003】
しかしながら、これら再生医療に用いる器具の開発において、研究者は安易に器具に薬剤及び/又は細胞を組み込むことを考えてしまう。確かに、薬剤及び/又は細胞を器具に組み込めば高い治療効果が望めるが、器具の保存および安全管理の面で医師に余計な負担がかかる。また、医師に薬剤及び/又は細胞の取り扱いの知識が要求されることもある。特に、細胞を組み込んだ器具に至っては細胞培養の技術を要求することになる。
【0004】
本発明者らは、上述した再生医療の現状を鑑み、細胞を取り扱わない再生医療用器具の開発に鋭意検討を行い、コラーゲン製の組織再生医療用器具を発明するに至った(特許文献1〜6)。かかる器具は、全て生体内分解吸収性の材料であるコラーゲンで構成される。しかも、架橋剤などの化学合成物を使用していないために、生体内で安全に分解吸収される。さらに、驚くべきことにこれら器具は、特殊な細胞を組み込むことなく組織が再生することが実証されている。つまり、これらの器具を用いれば、細胞を取り扱う必要がないため、メーカーは安価にこれらの器具を製造することができる。さらに、製造された器具は長期にわたって劣化することがなく、良好に保存することができる。また、医師は、細胞を取り扱う技術を身につける必要がないため、容易にこの器具を用いて治療を行うことができる。
【0005】
ところで、以上に説明した再生医療用器具は、埋植の際に体内の浸透圧を調整するために、例えば、生理食塩水などの溶液に浸漬し、前記再生医療用器具を膨潤させることが一般的に行われている。今現在、この作業は別途容器を用意して行なわれているが、用意する容器は滅菌されているものではないため、衛生面、並びに、菌又はウイルス感染の問題がある。また、術者が用意した容器に再生医療用器具を移す際に、過って再生医療用器具を床などに落下させ、器具が汚染される問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−320630号公報
【特許文献2】特開2004−073221号公報
【特許文献3】特開2003−235955号公報
【特許文献4】特開2003−245341号公報
【特許文献5】特開2004−188037号公報
【特許文献6】国際公開2005/070340パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
再生医療手術者が、衛生的かつ容易に再生医療手術の前準備をすることのできる再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具の処理方法の提供が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
[1] 再生医療用器具を搬送するための包装体であって、
生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具;
液体を貯留する液槽を備えたトレイ;並びに、
前記再生医療用器具及び前記トレイを密封した包材
を含み、
前記再生医療用器具、トレイ並びに包材は滅菌されたものである
再生医療用器具の包装体、
[2] 再生医療用器具が、液槽内の底面又は側壁に配置された[1]に記載の包装体、
[3] さらに、再生医療用器具を固定する固定手段を備え、
前記再生医療用器具を前記固定手段で固定した[2]に記載の包装体、
[4] 液槽が、第1の液槽と、前記第1の液槽の底面に備えた第2の液槽を含み、
固定手段が、凹溝と、凸部からなり、
前記凹溝は、前記第1の液槽の底面に、前記第2の液槽における対向した側壁から延出するように備え、
前記凸部は、再生医療用器具を固定するように凹溝の上壁部に備えた
[3]に記載の包装体、
[5] 生体内分解吸収性高分子が、コラーゲンである[1]に記載の包装体、
[6] 成形体が、糸で構成された構造体である[1]に記載の包装体、
[7] 構造体が、コイル体である[6]に記載の包装体、
[8] さらに、液体を収容した容器を備えた[1]に記載の包装体、
[9] 液体を収容した容器を、液槽内に配置した[8]に記載の包装体、
[10] さらに、脱酸素剤及び/又は吸湿剤を備え、
前記脱酸素剤及び/又は吸湿剤は、再生医療用器具及びトレイと共に包材で密封した[1]に記載の包装体、
[11]トレイが、液槽を支持する脚壁部をさらに備え、前記液槽の底面を前記脚壁部の下端よりも高くすることにより、前記脚壁部と前記液槽の底面で囲われたスペースを形成したものであり、
前記スペースに、脱酸素剤及び/又は吸湿剤を配置した
[10]に記載の包装体、
並びに[12] 生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具;
液体を貯留する液槽を備えたトレイ;並びに、
前記再生医療用器具及びトレイを密封した包材
を含み、
前記再生医療用器具、前記トレイ、並びに、前記包材は滅菌されたものである再生医療用器具の包装体を用いた再生医療用器具の処理方法であって、
(i) 前記包材を除去する工程;及び
(ii) 前記トレイの液槽に液体を注ぎ、前記再生医療用器具を前記液体に浸漬する工程
を含む再生医療用器具の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装体によれば、再生医療用器具を生理食塩水などの溶液に浸漬する作業の際に、別途に容器を用意する必要がない。したがって、再生医療手術における一連の作業を、衛生的かつ容易に行うことができ、菌又はウイルスによる感染を防止することができ、手術者に医療責任が問われる可能性が大幅に低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の「包装体」とは、再生医療用器具を搬送するための包装構造をいい、再生医療用器具、トレイ並びに包材を含む。再生医療用器具及びトレイは、包材により密封される。ここで「密封」とは、包材により内部と外部を遮断した状態をいい、雑菌及びウイルスなどが内部に侵入、いわゆるコンタミネーションを抑制した状態をいう。
【0011】
ここで「再生医療用器具」とは、生体内に埋植し、損傷又は欠損した組織を再生しうる器具をいい、生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を少なくとも備えた器具をいう。「組織」とは、例えば、腎臓、膵臓、肝臓、胃、心臓、胆のう、脳硬膜、横隔膜、心膜、漿膜、神経、靱帯、腱、血管、消化器官、歯槽骨及び骨などが挙げられる。
【0012】
上記「乾燥した成形体」とは、水分含率が約0〜60%、好ましくは約0〜40%、特に好ましくは約0〜20%のものをいう。また、液体に浸漬した場合、膨潤、軟化、硬化、湿潤化又は重量増加などの物理的性質が変化しうるものをいう。言い換えれば、水分を保有する細胞又は組織は含まれない。このような物理的性質の変化は、生体内分解吸収性高分子の共有結合、疎水性相互作用、イオン結合及びジスルフィド結合などの架橋構造などによる分子論的要素、生体内分解吸収性高分子の液体との相溶性による物理化学的要素、並びに、多孔構造、綿状構造及び微細繊維構造などの構造的要素に起因するものであれば、特に限定されるものではない。乾燥した成形体は、例えば、糸、フィルム、織物、編物、織布、不織布及びスポンジからなる群より選択される少なくとも1を含むものを、膜状、線状及び筒状からなる群より選択される少なくとも1の形状にしたものが挙げられる。
【0013】
上記「液体」としては、再生医療用器具の浸漬により、再生医療用器具が、膨潤、軟化、硬化、湿潤化又は重量増加などの物理的性質が変化するものであれば特に限定されるものではないが、再生医療用器具を生体内に埋植した際の浸透圧を調整する観点から、一般的には生理食塩水が挙げられる。さらに、本発明の再生医療用器具の治療効果を向上させるための薬液なども選択できる。
【0014】
成形体の形状は、再生する臓器、組織及び器官の種類により当業者が適宜選択できるものであるが、例えば、脳硬膜、横隔膜、心膜及び漿膜などの膜状の組織を再生するためには、フィルム、織物、編物、織布又は不織布などで構成される膜状物を選択することができる。また、例えば、神経、靱帯、腱、血管及び消化器官などの管状又は線状の組織を再生するための成形体としては、糸、フィルム、織物、編物、織布又は不織布など構成される線状又は筒状物を選択することが挙げられる。
【0015】
成形体は、再生医療用に用いるものであることから、生体内分解吸収性高分子を素材とするものである。「生体内分解吸収性高分子」とは、生体内に埋植後、分解又は吸収されうるものをいう。例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−アミノカプロン酸、コラーゲン、ならびに、キトサン、アルギン酸及びヒアルロン酸などのグリコサミノグリカン類などが挙げられる。これら生体内分解吸収性高分子の中でも、埋植後の炎症反応が生じることがなく、架橋処理などにより分解吸収性を容易に制御できる観点から、コラーゲンが好ましい。
【0016】
上記「コラーゲン」とは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分をいい、分子の主鎖構造が、(Gly−X−Y)、(Gly−Pro−X)及び(Gly−Pro−Hyp)で構成されるものをいう。ここで、X及びYは、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリン以外の天然及び非天然アミノ酸である。
【0017】
また、コラーゲンのタイプについては、例えば、I型、II型及びIII型などが挙げられる。中でも取り扱いが容易である観点から、I型及びIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明のコラーゲンは、熱変性コラーゲンであるゼラチンであってもよいが、細胞接着性の観点からコラーゲンの方が好ましい。
【0018】
コラーゲンは、生体組織からの抽出、化学的ポリペプチド合成及び組み替えDNA法などにより製造される。現時点では、製造コストの観点から、生体組織からの抽出により得られたものが好ましい。また、生体組織の由来は、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、鳥類、魚類及びヒトなどが挙げられる。また、前記生体組織としては、これらの皮膚、腱、骨、軟骨及び臓器などが挙げられる。これらの選択は当業者が適宜行うことができるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
さらに、コラーゲンは、工業的な製造を容易とする観点から、溶媒に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンを選択することが好ましい。例えば、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン及び中性可溶化コラーゲンなどの可溶化コラーゲンが挙げられる。中でも取り扱いの容易性の観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。さらに、生体内埋殖時の安全性の観点から、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンであることが好ましい。
【0020】
以上に説明した乾燥した成形体を含む再生医療用器具の例としては、特開2002−320630号公報(特許文献1)及び特開2004−073221号公報(特許文献2)に開示された神経を再生する器具、特開2003−235955号公報(特許文献3)及び特開2003−245341号公報(特許文献4)に開示された漿膜又は心膜を再生する器具、特開2004−188037号公報(特許文献5)に開示された血管を再生する器具、並びに、国際公開2005/070340パンフレット(特許文献6)に開示された腱又は靱帯を再生する器具などが挙げられる。
【0021】
一方、上記「トレイ」とは、再生医療用器具を液体に浸漬する作業を行うための容器となりうるものをいう。トレイの形状は、直方体状、円柱状、三角柱状及び半球状などが挙げられる。これらの形状の中でも、搬送時に積み上げが可能である観点から、直方体形状であることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。その大きさは、再生医療用器具の大きさなどに依存するために一概に述べることはできないが、例えば、トレイの形状が直方体である場合、約100〜100,000,000mm3、好ましくは約1000〜1,000,000mm3程度であればよい。
【0022】
本発明のトレイは、液体を注入することができる液槽を備える。「液槽」とは、液体を注入するための一般的な容器状のものをいう。その形状は、直方体状、円柱状、三角柱状及び半球状などが挙げられる。これらの形状の中でも、後述する拘止手段を容易に設けることができる観点から、直方体形状であることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。液槽の容積は、再生医療用器具が吸収する液量に依存するため一概に述べることはできないが、例えば、約0.1〜100,000ml、好ましくは約1〜1,000mlである。
【0023】
トレイの素材は、一般的に成形加工が容易のものであればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル及びエポキシ樹脂などの高分子材料、ガラス及びセラミックスなどの無機材料、並びに、鉄、銅及びステンレスなどの金属材料などが挙げられる。これらの素材の中でも、軽量で、成型が容易であり、製造コストも安い観点から、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0024】
また、トレイの製造方法も、一般的な製法を選択すればよく、例えば、トレイの素材が高分子材料である場合、押出成型、溶融成型、射出成形、真空成型及び圧縮成型などが挙げられる。これらの製造方法の中でも、製造が容易であり、コストが安い観点から、押出成型、射出成形及び真空成型が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
さらに、上記「包材」とは、上記再生医療用器具及び上記トレイを包装しうる可撓性のシートをいう。包材は、可撓性のシートであれば、特に限定されるものではないが、密封する再生医療用器具を良好に保存することができる観点から、非通気性材料であることが好ましい。
【0026】
ここで「非通気性材料」とは、気体、特に酸素及び水蒸気が透過しにくい材料をいう。酸素の透過性は、例えば、温度約25℃、湿度約50%における酸素透過係数が約5.0×10cc/m・atm・hour以下、好ましくは1.0×10cc/・atm・hourである。また、水蒸気の透過性は、約1,000g/m・atm・24hr以下、好ましくは約100g/m・atm・24hr以下であり、さらに好ましくは約10g/m・atm・24hr以下である。
【0027】
上記の条件を満足する非通気性材料しては、例えば、延伸ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン、ポリ塩化ビニリデンコートポリエステル、ポリ塩化ビニルコートポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン−ビニルアルコール)コポリマー、アルミ蒸着ポリエチレン、アルミ蒸着ポリエステル及びシリカコートポリエステルなどが挙げられる。これらの非通気性材料の中でも、成形加工性が容易であり、放射線滅菌に耐えうるものであり、且つ外部からの光を遮断できる観点から、外層がポリエチレン、中間層がアルミニウム、内層がポリエチレンのラミネートシートが最も好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明の包装体は、再生医療用器具及びトレイを包材で密封した状態で滅菌する。滅菌は、再生医療用材料が乾燥した成形体を含むために、乾燥状態で達成される滅菌方法が採用される。具体的には、α線、β線、γ線、X線及び電子線滅菌が挙げられる。これらの滅菌方法の中でも、医療用器具して十分に清潔なものを提供する観点からγ線滅菌が好ましが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明の包装体における好ましい態様としては、再生医療用器具を、トレイの液槽内の底面又は側壁に配置した態様が挙げられる。この事により、手術者は、手元に搬送された本発明の包装体において、包材を除去した後、液槽に液体を注入するだけで、そのまま再生医療用器具を液体に浸漬することができる。
【0030】
この際、液槽に再生医療用器具を固定する固定手段を備え、再生医療用器具を固定手段で固定すれば、搬送時に再生医療用器具が液槽内壁などに衝突し、破損することがないために好ましい。「固定手段」とは、乾燥状態の再生医療用器具を、トレイに保持、拘束、拘止、嵌合及び係止により、再生医療用器具の動きを制限する手段をいう。特に、搬送時に固定が解除されにくくする観点から、遊びがない程度にトレイに拘止することが好ましい。
【0031】
また、固定手段の構造は、前記再生医療用器具を固定する構造であればよいが、例えば、図1に示すような嵌合構造、並びに、図2に示すような凹溝及び凸部との組み合わせなどが挙げられる。これらの中でもトレイの製造が容易であり、固定時における再生医療用器具の破損を抑制できる観点から、図2に示すような凹溝及び凸部との組み合わせが好ましい。
【0032】
ここで、再生医療用器具が、液体の浸漬により、軟化又は変形する特徴を有するものであれば、固定手段による固定を解除することができる。つまり、搬送時では再生医療用器具はタイトにトレイに固定されているが、液体の浸漬により軟化又は変形することにより、手術時には容易に再生医療用器具をトレイから取り外すことができる。
【0033】
このような液体の浸漬により軟化又は変形する再生医療用器具としては、上記で列挙したコラーゲン成形体を含む再生医療用器具などが主に挙げられる。特に、成形体が生体内分解吸収性高分子の糸で構成された構造体であれば、液体の浸漬により容易に軟化する。
【0034】
上記「糸」とは、単糸及び縒糸を含む。単糸は、例えば、湿式紡糸法、乾式紡糸法及び溶融紡糸法などで製造されたものが挙げられる。これらの製造方法の中で好ましい方法は、原材料がコラーゲンである場合、製造が容易であり、かつ製造コストが安価である観点から、湿式紡糸法である。
【0035】
湿式紡糸法の具体的な方法としては、例えば、生体分解性高分子の水溶液を、ギアポンプ、ディスペンサー及び各種押し出し装置などを用いて、凝固浴槽に吐出する方法が挙げられる。上記の吐出する器具は、脈動が少なく安定して溶液を定量吐出する観点から、ディスペンサーが好ましい。また、吐出するノズルの口径は、単糸の強度の観点から、約10〜200μm、好ましくは約50〜150μmである。さらに水溶液の濃度は、単糸の強度の観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
【0036】
また、湿式紡糸で用いられる凝固浴の溶媒としては、生体内分解吸収性高分子を凝固させうる溶媒、懸濁液、乳濁液及び溶液であればよい。例えば、糸状物の原材料としてコラーゲンを用いる場合、凝固浴の溶媒は、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類及びケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム並びに塩化マグネシウムなどの水溶液、特に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム並びに硫酸アンモニウムなどの水溶液が挙げられる。これらの無機塩類をアルコール類又はアセトン類に溶解若しくは分散させた溶媒などを用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、単糸の強度の観点から、エタノール、塩化ナトリウムのエタノール溶液及び塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましい。
【0037】
凝固浴槽に吐出された生分解性材料の糸は、凝固浴槽から引き上げたのち、乾燥工程を経て単糸として製造される。乾燥工程は、コラーゲンが熱変性せず、単糸の周囲に付着した凝固浴槽の液滴を除去し、かつ単糸が破断しない程度の条件で乾燥させ、単糸の内部は多少の上記溶媒が残存していることが好ましい。乾燥工程における具体的な条件としては、例えば、コラーゲン水溶液をエタノールの凝固浴槽に吐出して紡糸する場合、紡糸速度約1〜100m/min、湿度約50%以下、温度43℃以下の条件で、空気による送風乾燥が挙げられる。
【0038】
さらに、上記製造された単糸を複数用意し、この複数の単糸を縒ることにより、縒糸を製造してもよい。縒糸を構成する単糸の種類は、同一であっても複数であってもよい。例えば、コラーゲン単糸及びポリ乳酸単糸からなる縒糸は、コラーゲンによる細胞接着性及びポリ乳酸による耐分解吸収性の両方の特徴を合わせ持つ。上記縒糸は、市販の縒糸機などにより製造することができる。
【0039】
以上に説明した糸は、液体に浸漬することにより膨潤し、軟化する。また、生体内分解吸収性高分子の種類によっては変形することもある。糸の変形は、糸を構成する生体内分解吸収性高分子の材料の種類及び糸の製造方法などに依存するため、一概に述べることができないが、例えば、エタノール凝固浴を用いた湿式紡糸した後、約12〜60時間ほど熱脱水架橋したコラーゲン単糸を、約30〜40度で生理食塩水に膨潤させた場合、単糸の長さは約99〜70%となり、太さは約101〜400%となる。
【0040】
さらに、成形体が、上述した生体内分解吸収性高分子の糸からなるコイル体であれば、液体の浸漬により、より顕著に変形するものを提供することができる。ここで「コイル体」とは、内腔を備え、生体内分解吸収性高分子の糸を構成ユニットとし、糸が長手方向に対して少なくとも45度以上、好ましくは60度以上で配列する構造体をいう。好ましくは、組織の細胞が周辺組織へ成長することを防止し、組織の細胞が長手方向への再生を誘導しうる構造のものをいう。コイル体の形状は、例えば、円筒形(チューブ形状)及び角筒形(三角形、四角形、五角形及び六角形)などが挙げられる。これらの形状の中でも、製造が容易である観点から、円筒形(チューブ形状)が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
コイル体の長手方向の長さは、患者又は患畜の生物学的分類、体型ならびに組織の種類に依存するため、特に限定されるものではないが、当業者が想定しうる切除された組織の長さよりも十分に長いことが好ましい。当業者が想定しうる切除された組織の長さは、例えば、組織がヒトの正中神経である場合は、約1〜300mmである。また、組織がヒトの坐骨神経である場合は、約1〜500mmである。
【0042】
したがって、例えば、組織がヒトの神経である場合、コイル体の長手方向の長さは、あらゆるヒトの神経の再生に適用できる観点から、約5mm以上であればよいが、好ましくは約10〜100mmである。また、例えば、組織がヒトの腱である場合、コイル体の長手方向の長さは、約5mm以上であればよいが、好ましくは約10〜200mmである。さらに、例えば、組織がヒトの靭帯である場合、コイル体の長手方向の長さは、約5mm以上であればよいが、好ましくは約10〜100mmである。
【0043】
一方、コイル体の内径に関しても再生する組織によって当業者が適宜設定できるものであり、特に限定されるものではない。例えば、組織が神経である場合は、取り扱い頻度が最も高い可能性がある観点から、約1〜20mm、好ましくは約1〜10mmである。また、例えば、上記組織がヒトの腱である場合は、約1〜30mm、好ましくは約1〜20mmである。さらに、例えば、上記組織がヒトの靭帯である場合は、約1〜20mmで、好ましくは約1〜10mmである。
【0044】
コイル体は、糸を棒状体に何重にも巻きつけることにより複数層に積層することにより製造することができる。この時、少なくとも1層の糸の巻き密度を、他の層の単糸の巻き密度と異なるようにすることによりさらに強度は向上して好ましい。本発明における巻き密度とは、コイル体の長手方向の単位長さ当りの巻き回数をいう。例えば、少なくとも1層の単糸の巻き密度は10回/cm未満とし、他の層の単糸の巻き密度を約10〜30回/cmとすることが好ましい。詳細は、特開2004−073221号公報を参照されたい。
【0045】
また、上述した単糸の乾燥後に連続してコイル体を形成する工程を行えば、製造工程数が減り、コストが抑えられるため好ましい。この時、コイル体の強度を向上させる観点から、単糸の乾燥を敢えて不十分に行うことが好ましい。この不十分な乾燥により単糸に溶媒が多少残存する。この残存した溶媒は、コイル体における隣接する単糸同士が接着させる効果を奏する。この後、コイル体を乾燥することにより、さらに強度が向上したコイル体を形成することができる。
【0046】
また、得られたコイル体の側壁に、生分解性材料溶液を塗布、乾燥することにより、強度が向上するため好ましい。この処理に用いる生分解性材料は、コイル体の材料との親和性の観点から、コイル体の材料と同じ材料であることが好ましい。また、その濃度は、例えば生分解性高分子がコラーゲンである場合、溶液の取り扱いが容易である観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
【0047】
上記コイル体は、乾燥後、さらに架橋処理を施すことが好ましい。この架橋処理により、組織再生医療用器具の生体内における分解時間を制御することができる。架橋方法としては、架橋剤による化学的な架橋、並びに、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などによる物理化学的な架橋が挙げられる。これらの架橋方法の中でも生体内埋殖後における安全性の観点から、熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋の条件としては、例えば、架橋温度は約100〜140度、好ましくは約110〜130度であり、架橋時間は約6〜72時間、好ましくは約12〜48時間である。
【0048】
以上のコイル体の製造方法における製造方法の選択及びその製造条件などは、当業者により適宜設定できるものであるため、特に限定されるものではない。
【0049】
以上に説明したコイル体を液体に浸漬させると、図4に示すように長手方向に細長くなる。これは、長手方向に対して少なくとも45度以上の角度をなして配列した糸が、生理食塩水などの溶液などで膨潤すると、幅は太く、長さは短くなるからである。コイル体の変形については、上述した糸の種類の他にも、コイル体の大きさ、糸の巻き密度及び配列などに依存するため、一概に述べることはさらに難しいが、例えば、外径約1〜5mm、長手方向の長さ約10〜100mmとしたコイル体であって、上記のコラーゲン単糸を、巻き密度約10〜100回/cm、コイル体の長手方向に対して約60〜90度の範囲で配列させたコイル体を、約30〜40度の生理食塩水に浸漬した場合、太さが約70〜99%、長手方向の長さは約101〜150%となる。
【0050】
得られたコイル体は、本発明の再生医療用器具の部品として取り扱う。ここで、コイル体のみをそのまま再生医療用器具として取り扱ってもよいが、コイル体の内腔に、組織又は器官の再生を促進するための誘導手段、細胞及び薬品などを組み合わせてもよい。
【0051】
例えば、本発明の再生医療用器具を神経の再生に用いる場合は、コイル体の内腔に、神経細胞が増殖するための誘導手段を設けることが挙げられる。ここで「誘導手段」とは、損傷した組織又は器官の細胞が、コイル体の長手方向への成長を可能とする足場となる部分をいう。その形態は、例えば、スポンジ、線維束ならびに織布、不織布及びシートなどの膜状物を変形又は細断したものが挙げられる。
【0052】
上記「スポンジ」とは、均一または不均一な大きさの空孔が連続または不連続に分散した多孔体をいう。スポンジの空孔率は、細胞が成長可能な足場および空間が保持できる観点から、約10〜99%、好ましくは約50〜99.9%である。
【0053】
上記スポンジの製造方法は、例えば、目的の形状に合わせて作製した型に、生分解性材料の溶液を流し込み、自然乾燥、真空乾燥、凍結融解および真空凍結乾燥などの方法により形成させる方法が挙げられる。これらの乾燥方法の中でも、空孔を均一に形成させる観点から、真空凍結乾燥法が好ましい。真空凍結乾燥法の条件としては、例えば、製造の容易性の観点から、約0.05〜30重量%の生分解性材料の溶液を、約0.08Torrである。
【0054】
一方、上記「繊維束」とは、少なくとも2本以上の糸状物から構成されたものをいい、それぞれの糸状物が、筒状体の長手方向に対して約85度以下、好ましくは約45度以下、特に好ましくは約30度以下のなす角度で配列したものをいう。それぞれの糸状物同士は平行であっても、または平行でなくてもよい。
【0055】
上記繊維束を構成する糸状物は、本発明のコイル体を構成する糸と実質同じのものを使用すればよく、単糸及び縒糸が挙げられる。これらの中でも製造コストの観点から、単糸であることが好ましい。単糸は、上記と同様の製造方法で製造すればよい。
【0056】
また、繊維束の糸状物は、細胞が成長可能な足場および空間が保持できる観点から、外径約1〜10000μmの糸状物を約1〜99%、好ましくは約10〜30%の充填率でコイル体の内腔に充填すればよい。ここで「充填率」とは、コイル体内腔の容積に対する繊維束の占有体積の比率をいう。
【0057】
繊維束を形成する方法としては、例えば、糸状物を製造後、少なくとも向かい合う2辺が平行な四角形の板またはフレームに、糸状物をこの2辺と略直行するように複数回巻き取り、巻き取られた糸状物を2辺付近で切断することにより得る方法が挙げられる。板およびフレームの巻き速度は、上述した糸から筒状体を製造する条件と同様とすればよい。
【0058】
以上の誘導手段における形状、材料および製造条件などは、当業者が適宜選択できるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
また、本発明の包装体の別態様として、液体を収容した容器をさらに備えたキットであることが好ましい。これにより、再生医療用器具を浸漬するための液体を別途用意する必要がないため便利である。液体を収容した容器は、包材により再生医療用基材及びトレイと共に密封されていてもよく、別途に備えてもよい。容器は、収容した液体が漏れないような構造であれば、特に限定されるものではないが、包材により再生医療用基材及びトレイと共に密封する場合は、再生医療用器具を乾燥状態で保つために水蒸気透過性の低い非通気性材料である必要がある。非通気性材料は、上述した包材と同じ材料が好適に選択される。
【0060】
さらに、本発明の包装体は、脱酸素剤及び/又は吸湿剤をさらに備え、包材により再生医療用基材及びトレイと共に密封することが好ましい。脱酸素剤により、γ線滅菌時における活性酸素の発生を抑制し、再生医療用器具の物理的強度の低下を抑制することができる。つまり、手術時において縫合に耐えうる強度を保つことができる。また、吸湿剤により再生医療用器具の乾燥状態を保ち、良好に保存することができる。
【0061】
ここで「脱酸素剤」とは、大気中に存在する酸素を吸着又は吸収しうるものをいう。例えば、鉄、亜鉛、銅および錫などの酸化物、糖類、多糖類、ビタミンC、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、活性炭、キチン系活性炭、キトサン系活性炭、セルロース系活性炭、ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ、シリカゲルおよび活性アルミナなどが挙げられる。市販されているものとしては、例えば、サンソカット(商品名、ニッテツ・ファイン・プロダクツ社製)、エイジレス(商品名、三菱ガス化学社製)、タモツ(商品名、王子ダック社製)、ウェルパック(商品名、タイセイ社製)およびA500−HS酸素吸収剤(商品名、アイ.エス.オー社製)などが挙げられる。
【0062】
また「吸湿剤」とは、大気中に存在する水蒸気を吸着又は吸収しうるものをいう。例えば、シリカゲル、結晶性ゼオライト及び塩化カルシウムなどが挙げられる。市販されているものとしては、例えば、モレキュラーシーブ(商品名、コスモ・バイオ社製)、アイディシート(商品名、アイディー社製)及びドライキープ(商品名、佐々木化学社製)などが挙げられる。
【0063】
上記の脱酸素剤及び/又は吸湿剤を備える態様において、本発明のトレイは図3に示すようにトレイに脱酸素剤及び/又は吸湿剤を配置することができるスペースを備えることが好ましい。例えば、トレイに液槽を支持する脚壁部をさらに備え、前記液槽の底面を前記脚壁部の下端よりも高くすることにより、前記脚壁部と前記液槽の底面で囲われたスペースを形成することができる。このスペースに脱酸素剤及び/又は吸湿剤を配置すれば、脱酸素剤及び/又は吸湿剤が液槽に注入する液体で濡れることがない。さらに、脱酸素剤及び/又は吸湿剤あやまって生体内に混入することがないため、安全である。スペースの高さは、市販されている脱酸素剤及び吸湿剤の大きさを考慮すると、約3mm〜20mm、好ましくは5〜10mmであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
また、本発明の包装体の別態様として、細胞及び/又は組織を収容した容器をさらに備えてもよい。細胞及び/又は組織を収容する容器は、包材により再生医療用基材及びトレイと共に密封されていてもよく、別途に備えてもよい。容器は、収容した液体は漏れないような構造であれば、特に限定されるものではないが、包材により再生医療用基材及びトレイと共に密封する場合は、再生医療用器具を乾燥状態で保つために水蒸気透過性の低い非通気性材料である必要がある。非通気性材料は、上述した包材と同じ材料が好適に選択される。
【0065】
さらに、本発明は再生医療用器具の処理方法にも及ぶ。本発明の処理方法とは、上記で説明した再生医療用器具の包装体のトレイに液体を注ぎ、再生医療用器具を液体で浸漬する工程を含む方法をいう。ここで「液体」としては、上述したように膨潤、軟化、硬化、湿潤化又は重量増加など再生医療用器具の物理的性質を変化させるものであれば特に限定されない。一般的には、再生医療用器具を生体内に埋植した際の浸透圧を調整する観点から、生理食塩水が主に挙げられる。さらに、本発明の再生医療用器具の治療効果を向上させるための薬液を選択することもできる。
【0066】
医師は、液槽に液体を注入することにより、再生医療用器具を浸漬する。再生医療用器具は液体により物理的な特性が変化する。例えば、上述したコラーゲン製の糸からなるコイル体を生理食塩水で浸漬した場合、図4に示すように長手方向に伸長し、幅は細くなる。これは、コイル体における糸は、長手軸方向に対して、少なくとも45度、好ましくは60度以上という角度をなして配列しているため、コイル体を構成する糸は、膨潤によりコイル体の円周方向に短く、長手方向に太くなるためである。
【0067】
さらに、上記固定手段で再生医療用器具を固定している場合は、軟化又は変形により固定が解除される。このことにより、容易に再生医療用器具を固定手段から取り出すことができ、そのまま手術に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を図を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
図1は、本発明の一実施態様である。トレイは、直方体状の液槽21と、液槽の底面に再生医療用器具1を固定する爪状の固定手段22を備える。この固定手段22により、再生医療用器具1を狭持により固定することができる。尚、図面を見やすくするため包材を省略しているが、再生医療用器具1及びトレイ2は包材により密封される。
【0070】
実施例2
図2は、図1とは異なる他の本発明の一実施態様である。トレイ2は、液槽21と、再生医療用器具1を固定する固定手段22及び脚壁部23を備える。液槽21は、第1の液槽211と、第1の液槽211の底面よりも深い底面を有する第2の液槽212を備える。固定手段22は、凹溝221と凸部222の組み合わせにより構成される。凹溝221は、第1の液槽211の底面に、第2の液槽212において対向する壁面から外側に延出するように設ける。さらに、凸部222は、凹溝221の上壁部に備える。この凹溝221と凸部222で再生医療用器具1を係止することにより固定することができる。尚、図面を見やすくするため包材を省略しているが、再生医療用器具1及びトレイ2は包材により密封される。
【0071】
図3は、図2における破線Xを通り、法線方向に平行な面における断面図である。第2の液槽212の底面は、脚壁部23の下端よりも高い位置にあり、脚壁部23の内壁と、第2の液槽212の底面により24スペースを形成している。このスペース24には、脱酸素剤4及び吸湿剤5が配置されている。尚、図面を見やすくするため包材を省略しているが、再生医療用器具1、トレイ2、脱酸素剤4及び吸湿剤5は包材により密封される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の包装体によれば、再生医療用器具を生理食塩水などの溶液に浸漬する作業の際に、別途に容器を用意する必要がない。したがって、再生医療手術における一連の作業を、衛生的かつ容易に行うことができ、菌やウイルスによる感染を防止することができ、手術者に医療責任が問われる可能性が大幅に低減するため、多くの医師が再生医療の治療を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明の包装体の一実施態様を示す図である。
【図2】図2は、本発明の包装体の図1とは異なる他の一実施態様を示す図である。
【図3】図3は、図2における破線Xを通る法線方向の断面図である。
【図4】図4は、本発明の生体内分解吸収性高分子の単糸及びコイル体の膨潤挙動を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0074】
1 再生医療用器具
111 コイル体
112 膨潤したコイル体
121 糸
122 膨潤した糸
2 トレイ
21 液槽
211 第1の液槽
212 第2の液槽
22 固定手段
221 凹溝
222 凸部
23 脚壁部
24 スペース
4 脱酸素剤
5 吸湿剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生医療用器具を搬送するための包装体であって、
生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具;
液体を貯留する液槽を備えたトレイ;並びに、
前記再生医療用器具及び前記トレイを密封した包材
を含み、
前記再生医療用器具、トレイ並びに包材は滅菌されたものである
再生医療用器具の包装体。
【請求項2】
再生医療用器具が、液槽内の底面又は側壁に配置された請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
さらに、再生医療用器具を固定する固定手段を備え、
前記再生医療用器具を前記固定手段で固定した請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
液槽が、第1の液槽と、前記第1の液槽の底面に備えた第2の液槽を含み、
固定手段が、凹溝と、凸部からなり、
前記凹溝は、前記第1の液槽の底面に、前記第2の液槽における対向した側壁から延出するように備え、
前記凸部は、再生医療用器具を固定するように凹溝の上壁部に備えた
請求項3に記載の包装体。
【請求項5】
生体内分解吸収性高分子が、コラーゲンである請求項1に記載の包装体。
【請求項6】
成形体が、糸で構成された構造体である請求項1に記載の包装体。
【請求項7】
構造体が、コイル体である請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
さらに、液体を収容した容器を備えた請求項1に記載の包装体。
【請求項9】
液体を収容した容器を、液槽内に配置した請求項8に記載の包装体。
【請求項10】
さらに、脱酸素剤及び/又は吸湿剤を備え、
前記脱酸素剤及び/又は吸湿剤は、再生医療用器具及びトレイと共に包材で密封した請求項1に記載の包装体。
【請求項11】
トレイが、液槽を支持する脚壁部をさらに備え、前記液槽の底面を前記脚壁部の下端よりも高くすることにより、前記脚壁部と前記液槽の底面で囲われたスペースを形成したものであり、
前記スペースに、脱酸素剤及び/又は吸湿剤を配置した
請求項10に記載の包装体。
【請求項12】
生体内分解吸収性高分子の乾燥した成形体を含む再生医療用器具;
液体を貯留する液槽を備えたトレイ;並びに、
前記再生医療用器具及びトレイを密封した包材
を含み、
前記再生医療用器具、前記トレイ、並びに、前記包材は滅菌されたものである再生医療用器具の包装体を用いた再生医療用器具の処理方法であって、
(i) 前記包材を除去する工程;及び
(ii) 前記トレイの液槽に液体を注ぎ、前記再生医療用器具を前記液体に浸漬する工程
を含む再生医療用器具の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−159866(P2007−159866A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360991(P2005−360991)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】