説明

再生可能な繊維強化樹脂成形品の製造方法

【課題】容易に成形でき、しかも高精度で成形品を製造できる複合樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】フィラー状、粉状の強化繊維原料を60重量%以上、マトリックス樹脂に充填してなる繊維強化素材(130,130',130'') を用いる。この繊維強化素材を破砕し、繊維強化素材の破砕片を平面上又は所定の立体形状の面上に並べて加熱加圧し、密集一体化させることによって所定の形状の複合樹脂成形品(131,131'')を製造する。繊維強化素材の原料には各種不燃性強化繊維を用いることができる。また、マトリックス樹脂には各種熱可塑性樹脂を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生可能な繊維強化樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、繊維強化プラスチックFRPは一般に、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を使用する。エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂を使用する場合もある。そして、その成型方法としては、型に繊維骨材を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法のほか、あらかじめ骨材と樹脂を混合したシート状のものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維とマトリクス(接着剤)を予め馴染ませてある部材(プリプレグなど)を大型の窯(オートクレーブ)で「焼き固める」方法などがある。
【0003】
安価・軽量で耐久性がよいことから、小型船舶の船体や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器のほか、航空・宇宙などの先端技術で大きな地位を占めている。しかし、異種材料が混合した状態で成型されてしまっていること、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂としていることから、リサイクルがほとんど不可能な事が欠点である。
【0004】
そこで、近年、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)の代替として、リサイクル可能な、メチルメタアクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いる発表もあるが、上述したように熱硬化性樹脂をマトリックスとしないと所定の強度が得られにくく、しかも熱可塑性樹脂を使用した場合特殊な製法となる。例えば、繊維強化熱可塑性樹脂シートを用いたスタンパブルシート成形があるが,ここでは「分繊飛動装置」を用いて従来の方法とは異なるシート製造法を開発したもので、連続した強化繊維(ロ−ビング)及び熱可塑性樹脂繊維(スライバー)を同時に供給し,装置内で繊維を切断,分繊,混合させ,両繊維が均一に混合した複合マットを連続に製造する方法である(独立行政法人 産業技術総合研究所)。しかしながら、汎用性に欠けるため、実用性がない。他方、リサイクル法としては、わずかに、FRP製の基体を用いた自動車用内装材を再生原料とし、熱可塑性樹脂の樹脂ペレットをマトリックス原料として、粉砕工程により再生原料及びマトリックス原料を10mm大以下に粉砕し、撹拌混合工程により前記粉砕された再生原料及びマトリックス原料を撹拌し、この撹拌された再生原料及びマトリックス原料を一体に擦り合わせて混合し、混合減容工程により前記撹拌混合された再生原料及びマトリックス原料を一体に擦り合わせて減容した後、前記混合減容された再生原料及びマトリックス原料を一体に押出機2に投入し、この再生原料及びマトリックス原料を溶融一体化したリサイクル製品Rを押出成形する自動車用内装材のリサイクル方法が提案されているに過ぎない(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−264060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は鋭意研究の結果、通常樹脂強化のための繊維充填量は成形技術等からの制限から熱硬化性樹脂に対し高々40重量%程度であるが、熱可塑性樹脂をマトリックスとしてもそこへの強化繊維の充填量を60重量%以上という通常考えられない充填量を実現すると、熱硬化性樹脂をマトリックスとするFRPに匹敵する物性が得られることを見出されたものの、マトリックスへの充填量を60重量%以上とすると、通常の押出成形では全く不可能であり、SMCプレス法 (Sheet Molding Compounds)を使用するにしても. 所定のSMCシート(基材・樹脂・充填材を混練しシート状にしたもの)を用意するのが困難である。
そこで、本発明者は繊維充填量60重量%以上の成形品を直接成形するのは不可能であっても、熱可塑性樹脂を使用する場合、一旦混練固化させた繊維強化複合材料を、粉砕または破砕し、これを成形材料として用いると、60重量%以上、好ましくは70重量%以上85重量%までの繊維分を配合することができ、しかもこれを成形すると、繊維の配向がランダムでしかも上下で重畳し、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を使用しても極めて理想的な繊維強化樹脂製品が製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、60〜85重量%の不燃性繊維原料に対し40〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向をランダムに配向させて所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化し、複合樹脂成形品を製造することを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法にある。
本発明では、上記強化繊維はガラス繊維、カーボン繊維および繊維ボロン等の不燃性強化繊維から選ばれ、上記熱可塑性樹脂はFRPの用途に応じて各種熱可塑性樹脂が選択されてよく、強化繊維種類、寸法、充填量などとの関係で調整される。例えば、自動車車体、小型船舶船体材料などの構造材料にはPP(ポリプロピレン),PC(ポリカーボネイト)などが好ましい。また、強化繊維との混練性を改善する目的で、相溶する二以上の熱可塑性樹脂を配合して調整することができる。
【0008】
本発明は、人工大理石の着色方法に基いて発明されたもので、一種又は二種以上の着色した60〜85重量%の不燃性繊維原料に対し40〜15重量%の透明又は透光性熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意する場合は、繊維原料を着色するのが好ましく、ガラス繊維を着色して用いることができる。着色した不燃性繊維原料に対し同系統に着色した熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意することも可能であり、上記粉砕又は破砕片が2種以上の異種の着色材料である場合もある。
【0009】
本発明によれば、強化繊維の高充填により製造中に粘度が増加して所望の形状への成形が困難なFRPの場合であっても、繊維強化素材を粉砕または破砕して加熱加圧により、所望の形状に容易に成形できる。例えば、不燃性又は難燃性を付与するための強化繊維と樹脂とを60:40の重量割合で混練すると、粘度が次第に増大し、例えば薄板などへの成形が非常に困難であるが、本発明では繊維強化素材の粉砕片又は破砕片を並べて加熱加圧して成形しているので、高充填繊維の繊維強化素材であっても容易に薄板に成形できる。しかも本発明では破砕片中の強化繊維は配向を一定にせず、ランダムに配置され、これを重ねて加熱加圧するので、繊維の配向がランダムでしかも上下で重畳し合う結果、予測を遥かに超える強度を確保することができる。さらに、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であるため、繊維強化樹脂成形品を廃棄する場合、樹脂成形品を回収して破砕することによって新たに複合樹脂成形品の原料として用いることができるので、リサイクル性に優れている。
【0010】
繊維強化素材の原料、例えば強化繊維はマトリックス樹脂と混練するが、混練機で混練し、又は1軸又は2軸の押出機で攪拌しながら押し出し、あるいは混練機で混練した後、1軸又は2軸の押出機に移してさらに攪拌することにより、繊維原料とマトリックス樹脂とを混練することができる。
【0011】
本発明の特徴は混練固化した繊維強化素材を粉砕又は破砕し、これを並べて加熱し加圧して薄いシート、やや厚いプレート状又は立体形状の複合樹脂成形品を製造するようにした点にある。強化繊維の含有水分は溶融したマトリックス樹脂との混練前に、他の熱源で加熱し含有水分を蒸発させるようにしてもよく、又溶融したマトリックス樹脂と複数の強化繊維とを混練する際に強化繊維をマトリックス樹脂の熱によって加熱して強化繊維の含有水分を蒸発させるようにしてもよい。このようにすると、強化繊維の乾燥工程を別途必要とせず、製造工程を簡素化できる。
【0012】
使用済みの繊維強化素材をリサイクルする場合、回収した繊維強化素材を適当な大きさ、例えば強化繊維の立体的形状が残存する程度の大きさ、例えば一辺が5mm〜20mmの大きさに破砕し、適当な熱源によって加熱してマトリックス樹脂を軟化又は溶融させ、必要に応じてマトリックス樹脂を添加し、繊維強化素材の原料の全部又は一部として用いることもできる。
【0013】
使用済みの繊維強化素材を新たな繊維強化素材にリサイクルする場合にも原料とマトリックス樹脂の適切な比率を維持する必要がある。
【0014】
複合樹脂成形品に表面樹脂層を形成する場合、複合樹脂成形品の表面に軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねることにより形成してもよく、合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層することにより形成することもできる。複合樹脂成形品の表面樹脂層は複合樹脂成形品の外表面の全部に形成してもよく、外表面の一部、例えばプレート状複合樹脂成形品の上面又は下面だけに形成してもよい。
【0015】
複合樹脂成形品は表面樹脂層を形成して所定の製品形状に加圧成形することができるが、複合樹脂成形品の表面に合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートを積層し、あるいは軟化又は溶融した合成樹脂材料を重ねる際に、所定の製品形状に成形することもできる。この複合樹脂成形品の成形には金型やローラなどを用い、絞り成形、曲げ成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形などを採用することができる。
【0016】
合成樹脂製のフィルム、シート又はプレートと複合樹脂成形品とは接着剤によって接着するようにしてもよく、複合樹脂成形品のマトリックス樹脂と表面樹脂層の合成樹脂材料との親和性によって相互に結合するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る再生可能な繊維強化樹脂製品の製造方法の好ましい実施形態を示す。繊維強化樹脂製品を製造する場合、各種強化繊維材料を準備する。この強化繊維は長繊維、短繊維のほかに、平均外径10μm〜35μmの粉状のものを用いることもできる。
【0018】
また、樹脂、例えば適当な大きさのチップ状のポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を準備する。これらの樹脂は1種でもよく、2種が混ざったものでもよい。
【0019】
他方、混練機10の加熱ヒータを作動させ、混練機10内部を熱可塑性樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、図1の(a)に示されるように、破砕した熱可塑性樹脂のチップを混練機10内に投入し、攪拌しながら溶融させる。バインダー樹脂のチップの投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。バインダー樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生する場合には加熱ヒータによる加熱温度はバインダー樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂が十分に軟化又は溶融すると、準備した繊維原料、例えばガラス繊維を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入するとともに、着色剤、例えば塗料を一度に又は複数回に分けて混練機10内に投入し、軟化・溶融した熱可塑性樹脂と充填剤及び着色剤を実質的に均一になるように混練する。充填剤は一度に大量に投入すると、軟化・溶融した樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機10への投入前に繊維強化素材の原料を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。
【0021】
また、熱可塑性樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、加熱温度や熱可塑性樹脂の物性によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0022】
十分な混練が済むと、図1の(b)(c)に示されるように、混練物20を取り出し、破砕機11で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜40mmの大きさの粒状、片状又は塊状に破砕する。この破砕粒、破砕片又は破砕塊21の寸法は後の工程における加圧によって流動させるので特に限定されない。
【0023】
同様にして図1の(d)に示されるように、色彩の異なる、例えば白色、黒色、茶色、青色の破砕粒、破砕片又は破砕塊21を製造する。
【0024】
こうして複数の色彩の破砕粒、破砕片又は破砕塊21が得られると、これらを成形面、例えば図1の(e)に示されるように、加熱した金型12の下型面上に並べ、上型で加熱する。すると、色彩の異なる熱可塑性樹脂が流動しながら相互に一体化するので、温度低下後、取り出し、表面を研磨すると、図1の(f)に示されるように、磨いた表面の模様と思えるような繊維強化樹脂製品が得られる。
【0025】
以下、第2実施例を具体例に基づいて詳細に説明する。
図2は本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の好ましい実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料に強化繊維を用いた例である。本例の複合樹脂成形品を製造する場合、例えば廃繊維強化樹脂を破砕機によって破砕し、強化繊維として準備することができる。また、例えば廃プラスチックに由来するマトリックス樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンを破砕機によって適当な大きさのチップに破砕する。なお、これらは1種でもよく、2種が混ざったものでもよい。
【0026】
他方、混練機110の加熱ヒータを作動させ、混練機110内部をマトリックス樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、破砕したマトリックス樹脂のチップを混練機110内に投入し、攪拌しながら溶融させる。マトリックス樹脂のチップの投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。マトリックス樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生する場合には加熱ヒータによる加熱温度はマトリックス樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0027】
マトリックス樹脂が十分に溶融すると、準備した強化繊維を一度に又は複数回に分けて混練機110内に投入し、溶融したマトリックス樹脂が強化繊維の表面を確実にコーティングするように混練する。強化繊維は一度に大量に投入すると、溶融樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機110への投入前に、強化繊維を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。この場合には含有水分がある程度蒸発するので、混練機110での混練時間を短くできる。
【0028】
また、マトリックス樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、マトリックス樹脂の温度や強化繊維の乾燥状態によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0029】
また、混練の際、溶融樹脂の例えば100°C〜300°Cの高熱によって強化繊維分が加熱され、強化繊維分に含まれていた含有水分が蒸発し、混練機110の開口から放散されるので、強化繊維及び木粉の含有水分が大幅に減少する。なお、混練機110が密閉形の場合には一定の時間間隔をあけて間欠的に開放し、水蒸気を放散させるようにする。
【0030】
強化繊維分と溶融したマトリックス樹脂とが十分に混練されると、混練物をローラ型プレス機111に供給し、混練物を所定の強加圧力で挟んで送り、強加圧状態を維持してマトリックス樹脂を硬化させる。ローラ型プレス機111は上側及び下側のローラ列にベルトを無端状にかけわたして構成されている。また、終端側のローラは水冷しておき、混練物を強加圧状態のままで冷却するようにするのがよい。なお、水冷に代え、エアーを吹き付けて冷却するようにしてもよい。
【0031】
また、マトリックス樹脂が加熱軟化すると、増粘してローラなどに粘着してしまうが、上述のように強化繊維を添加し混練すると、粘着性が低下し、ローラによる加工が可能となる。
【0032】
混練物の送り速度はローラ列を出たときに混練物が十分に固まっている速度とする。また、上下のローラ列による加圧力は19.6×105Pa(20kgf/cm2)の面圧を加えるようになっているが、面圧は19.6×105Pa(20kgf/cm2)以上で58.8×105Pa(60kgf/cm2)程度までの範囲から、複合木材の用途や材料等に応じて適宜設定すればよく、又必要に応じてそれよりも大きな面圧を加えることもできる。
【0033】
こうして混練物が十分に硬化すると、複数の強化繊維とマトリックス樹脂とが相互に強く結合された繊維強化素材130が得られる。ローラ型プレス機111における加圧力を小さくし、あるいは送り速度を速くして、繊維強化素材130の半製品として得るようにしてもよい。
【0034】
得られた繊維強化素材130を破砕機112で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材130を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0035】
そして、繊維強化素材130の破砕片を加熱装置113に投入し、加熱軟化させる一方、ローラ型プレス機114を加熱し、軟化した繊維強化素材130の破砕片をローラ型プレス機114に押し出して並べ、ローラ型プレス機114で加圧してプレート状の複合樹脂成形品131を製造する。
【0036】
このプレート状の複合樹脂成形品131は製品の厚みから表面樹脂層の厚みを差し引いた厚みにプレスされるが、強化繊維とマトリックス樹脂とが既に高い強度で結合されたものを原料としているので、高い寸法精度が得られる加圧力でもってプレスすることができる。
【0037】
次に、得られた複合樹脂成形品131に樹脂製、例えばポリプロピレンやポリエチレン製のフィルム(シート又はプレートでもよい)132を積層させながらローラ型プレス機115に送り込み、加熱して複合樹脂成形品131の表面にフィルム132を結合させて表面樹脂層を形成する。同じ操作を繰り返して複合樹脂成形品131の上面、下面及び側面に表面樹脂層を形成してもよい。
【0038】
こうして製品の素材133が得られると、素材133を例えば金型116内にセットし、加熱加圧して所定の立体形状に加工すると、製品134が得られる。この製品134は図3に示されるように繊維強化素材134Aの表面を樹脂層134Bで被覆した構造をなし、表面から見ると、全体が樹脂だけで製造されているように見えることとなる。
【0039】
図4は第3の実施形態を示し、図において図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機111に代え、1軸又は2軸の押出機111’を用い、あまり高くない加圧力で繊維強化素材130’を製造し、これを破砕工程112で破砕するようにしている。これは後の工程で破砕片を加熱し加圧して複合樹脂成形品131を製造するので、繊維強化素材130’の製造工程において強化繊維とマトリックス樹脂とは必ずしも強固に結合させる必要はなく、強化繊維の表面側の微小腔の一部にマトリックス樹脂を侵入させた半複合材であってもよいからである。
【0040】
なお、混練機110は必ずしも用いる必要はなく、図5に示されるように、強化繊維とマトリックス樹脂を押出機111’に投入して混練することもできる。
【0041】
また、本例では繊維強化素材130’の破砕片を押出し機113ではなく、フィーダ113’によって破砕片のままローラ型プレス機114に供給し、平面上に並べて加熱加圧し、プレート状の複合樹脂成形品131を製造するようにしている。
【0042】
図6は第4の実施形態を示し、図において図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではローラ型プレス機115によって製品の素材133を製造する際に、押出し機117によって軟化又は溶融した樹脂をプレート状の複合樹脂成形品131上に押し出し、表面樹脂層を形成するようにしている。
【0043】
図7は第5の実施形態を示し、図において図2ないし図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では製品の素材133をプレスするローラ型プレス機115に代え、金型116を用い、下型116Aと上型116Bの間に複合樹脂成形品131と樹脂製フィルム132とを積層した状態でセットし、これを加熱加圧することによって複合樹脂成形品131と樹脂製フィルム132を結合して複合樹脂成形品31の表面に樹脂層を形成するとともに、同時に所定の製品形状に成型するようにしている。
【0044】
なお、第5の実施形態では下型116Aの上に基材131と樹脂製フィルム132を積層してセットするようにしたが、繊維強化素材130又は130’の破砕片を下型116Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、上型116Bで加圧して製品形状の複合樹脂成形品を製造した後、樹脂製フィルム132を重ねて上型116Bで加圧して表面樹脂層を形成するようにしてもよい。また、繊維強化素材130又は130’の破砕片を下型116Aの成形面(製品形状の面)上に並べ、その上に樹脂製フィルム132を重ねて加熱するとともに上型116Bで加圧して製品形状の複合樹脂成形品と表面樹脂層とを形成することもできる。
【0045】
また、繊維強化素材130又は130’を製造するローラ型プレス機111に代え、金型を用いて強加圧してもよく、又多段ローラを通過させて強加圧と冷却とを繰り返してマトリックス樹脂を硬化させて繊維強化素材130又は130’を製造するようにしてもよい。
【0046】
また、上記の例では繊維強化素材130又は130’を製造し、これを破砕して複合樹脂成形品を製造するようにしたが、廃棄された複合木材や複合樹脂成形品を回収して複合木材を取り出し、これを原料として複合樹脂成形品を製造することもできる。
【0047】
図8は第6の実施形態を示し、これは繊維強化素材の原料にカーボン繊維を用いた例である。本例の複合樹脂成形品を製造する場合、平均長さ5〜15mmのものを用いる。他方、マトリックス樹脂としてポリカーボネイトの適当なサイズものを準備する。
【0048】
他方、混練機110の加熱ヒータを作動させ、混練機110内部をマトリックス樹脂の軟化温度まで上昇させておき、マトリックス樹脂を混練機110内に投入し、攪拌しながら軟化させる。マトリックス樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。
【0049】
マトリックス樹脂が十分に軟化すると、樹脂30重両部に対し70重両部の準備したカーボン繊維分を一度に又は複数回に分けて混練機110内に投入し、軟化したマトリックス樹脂と十分に混練する。マトリックス樹脂を長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。
【0050】
強化繊維分とマトリックス樹脂とが十分に混練されると、混練機110から混練物を取り出すと、繊維強化素材130''が得られる。この繊維強化素材130''を破砕機112で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜20mmの大きさに破砕する。なお、破砕片の寸法は後の工程において繊維強化素材130''を十分に軟化又は溶融させて高い寸法精度のプレートに加工することができれば特に限定されない。
【0051】
そして、繊維強化素材130''の破砕片をフィーダ113に投入し、繊維強化素材130''の破砕片をローラ型プレス機114上に並べ、ローラ型プレス機114で適切な温度、例えば160°C程度に加熱して破砕片のマトリックス樹脂を軟化させるとともに加圧してプレート状の複合樹脂成形品131''を製造する。
【0052】
この得られた複合樹脂成形品131''は高充填のカーボン繊維によって十分な構造強度が付与されており、自動車用や船舶用構造材に用いることができる。
【0053】
また、ポリカーボネイト(PC)に代え、ポリプロピレン(PP)/エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を用い、強化繊維としてガラス繊維を用い、ガラス繊維80重量%及びPP15重量%、EVA5重量%からなる表面が極めて平滑な複合樹脂プレートが得られ、しかも厚みは1.5mm以上任意に設定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】上記実施形態において得られた繊維強化樹脂成形品の断面図である。
【図4】第3の実施形態を模式的に示す図である。
【図5】第4の実施形態の変形例を示す図である。
【図6】第5の実施形態を模式的に示す図である。
【図7】第6の実施形態における金型成形の工程を示す図である。
【図8】第6の実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 混練機
11 破砕機
12 金型
20、20’、20'' 混合物
21、21’,21''、22’ 破砕粒、破砕片、破砕塊
110 混練機
111 ローラ型プレス機
111' 押し出し機
112 破砕機
113 押し出し機
113’ フィーダ
114 ローラ型プレス機
115 ローラ型プレス機
16 金型
130、130’、130'' 繊維強化素材
131、131'' 複合樹脂成形品
132 合成樹脂フィルム
133 製品の素材
134 自動車車体製品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜85重量%の不燃性繊維原料に対し40〜15重量%の熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向をランダムに配向させて所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化し、強化繊維高充填樹脂成形品を製造することを特徴とする再生可能な繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
上記繊維原料がガラス繊維、カーボン繊維および繊維ボロン等の強化繊維から選ばれる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂が相溶する二以上の熱可塑性樹脂からなる請求項1記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
一種又は二種以上の着色した60〜85重量%の不燃性繊維原料に対し40〜15重量%の透明又は透光性熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向をランダムに配向させて所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化し、強化繊維高充填樹脂成形品を製造することを特徴とする再生可能な繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
上記繊維原料が着色したガラス繊維である請求項4記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
60〜85重量%の着色した不燃性繊維原料に対し40〜15重量%の同系統に着色した熱可塑性樹脂を混練して固化した繊維強化素材の粉砕又は破砕片を用意し、該粉砕又は破砕片中の繊維方向をランダムに配向させて所定の成形型中に充填して加熱加圧し、粉砕又は破砕片を密集一体化し、強化繊維高充填樹脂成形品を製造することを特徴とする再生可能な繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
上記粉砕又は破砕片が2種以上の異種の着色材料である請求項6記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−12441(P2009−12441A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212740(P2007−212740)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】