説明

再生式ガスタービンシステム

【課題】再生式ガスタービンシステムでの緊急停止時におけるタービンの過速度を防止する。
【解決手段】圧縮機1と、この圧縮機1に連結するタービン3と、前記圧縮機1から圧縮空気に湿分を与える増湿装置12と、この増湿装置12からの湿分を含んだ圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器9と、この再生熱交換器9で熱交換された圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器2とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、前記増湿装置12と前記再生熱交換器9との間の流路14に分岐して設けた湿分を含んだ圧縮空気の排出流路17と、この排出流路17に設けた開閉弁18とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生式ガスタービンシステムに係わり、更に詳しくは緊急停止時における過速度を防止し、安全かつ迅速に停止することができる再生式ガスタービンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の観点から、低エミッションのガスタービンシステムの開発が積極的に進められている。その一方策として、圧縮空気流量や燃料流量が変化する起動時や、部分負荷時においても、燃焼安定性を損なうことなく空気に水分を加えることによって、広負荷の範囲に亙って熱効率に優れ、NOx排出量の少ないガスタービンシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種のガスタービンシステムは、一般的に、再生式ガスタービンシステムと称されており、増湿装置によって圧縮機からの燃焼用圧縮空気に水分を加え、再生熱交換器によって増湿装置からの水分を含んだ圧縮空気とタービンからの排気との間で熱交換を行い、この熱交換された圧縮空気を燃焼器に供給する構成を採用している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−54857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した再生式ガスタービンシステムにおいては、負荷遮断などの緊急停止時には、圧縮機の出口側に設けた緊急放風弁を開いて燃焼器への圧縮空気の供給量を削減することが行われるが、このように緊急放風弁を開いても、上記の再生式ガスタービンシステムでは、圧縮機の出口側からの圧縮空気が、再生熱交換器を通過して燃焼器に供給される構成であるため、直ちに燃焼器への圧縮空気の量を低減することができない。また、燃焼器への圧縮空気が、大きな熱容量と内容積を有する再生熱交換器で加熱されているので、高温空気がタービンへ供給されて、タービンを駆動してしまう。
【0006】
その結果、緊急停止時におけるタービンの過速度を防止することができないという憾みがある。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、緊急停止時におけるタービンの過速度を防止することができる再生式ガスタービンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、第1の発明は、圧縮機と、この圧縮機に連結するタービンと、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含んだ圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に分岐して設けた湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステムにある。
【0009】
また、第2の発明は、圧縮機と、この圧縮機に連結するタービンと、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含む圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された前記タービンに供給する圧縮空気と燃料とを混合して燃焼する燃焼器とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、一端を前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に連通し、他端を前記再生熱交換器の出口側流路に連結した湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステムにある。
【0010】
更に、第3の発明は、第1及び第2の発明において、前記タービンの回転数が予め設定した設定値の上限を超えた場合に、前記開閉弁に開信号を出力する制御装置を備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステムにある。
【0011】
また、第4の発明は、圧縮機と、この圧縮機に連結するタービン及び発電機と、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含んだ圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された前記タービンに供給する圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器と、前記圧縮機の吐出側に設けた放風弁とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、一端を前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に連通し、他端を前記再生熱交換器の出口側流路に連結した湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁と、前記タービンの回転数を検出する第1の検出器と、前記発電機の出力信号を検出する第2の検出器と、前記第1の検出器からの検出信号が予め設定した設定値の上限を超えた場合及び前記第2の検出器からの検出信号が予め設定した負荷遮断と判断した場合に、前記開閉弁及び前記放風弁にそれぞれ開信号を出力する制御装置とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステムにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生式ガスタービンシステムでの緊急停止時におけるタービンの過速度を防止することができるので、緊急停止時の安全操作が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の再生式ガスタービンシステムの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の再生式ガスタービンシステムの一実施の形態を示すもので、この図1において、1は高圧の燃焼用空気を生成する圧縮機、2は圧縮機1からの燃焼用空気と燃料とを混合して燃焼ガスを生成する燃焼器、3は燃焼器2からの燃焼ガスを導入するタービンで、このタービン3は圧縮機1及び発電機4に連結している。
【0014】
5は圧縮機1の空気吸入流路、6は圧縮機1の吐出流路、7は圧縮機1の吐出流路6に設けた緊急用の放風弁、8は煙道である。9は再生熱交換器で、この再生熱交換器9は一端がガスタービン3の高圧段側に連結され、他端が煙道8に導入された排気流路10に連結する第1の熱交換流体流路9Aと、一端が後述する増湿装置に連結され、他端が流路11によって燃焼器2に連結され、前記第1の熱交換流体流路9Aからの熱により加熱される第2の熱交換流体流路9Bとを備えている。
【0015】
12は圧縮機からの圧縮空気に湿分を与える増湿装置で、この増湿装置12の入口側は流路13によって圧縮機1の吐出管6における緊急用の放風弁7の上流側部に連結され、出口側は流路14によって再生熱交換器9における第2の熱交換流体流路9Bの一端に連結されている。15は増湿装置12に増湿用水を供給する増湿用給水流路で、この増湿用給水流路15の入口側は、煙道8に設けた給水加熱器16を通して給水ポンプに連結されている。
【0016】
17は増湿装置12と再生熱交換器9との間の流路14から分岐した湿分圧縮空気用の排気流路で、その出口側は煙道8に導入されている。18は湿分圧縮空気用の排気流路17に設けた開閉弁である。
【0017】
19はタービン3の回転数を検出する第1の検出器、20は発電機4の出力信号を検出する第2の検出器、21は開閉弁18及び放風弁7を開制御する制御装置で、この制御装置21は、予め設定したタービン3の設定回転数の範囲及び負荷遮断と判断するための発電機出力変化値を記憶する記憶部22と、前記第1の検出器19からのタービン3の回転数を予め設定した設定回転数に比較してその上限を超えた場合、及び前記第2の検出器20からの発電機出力信号を予め設定した発電機出力変化値と比較して負荷遮断と判断した場合に、開閉弁18及び放風弁7にそれぞれ開信号を出力する演算部23と、信号の入出力部24とで構成されている。
【0018】
次に、上述した本発明の再生式ガスタービンシステムの一実施の形態の動作を図面を用いて説明する。
まず、放風弁7及び開閉弁18は、閉状態になっている。圧縮機1はその空気吸入流路5から空気を吸い込んで圧縮し、この圧縮した燃焼用の圧縮空気を吐出流路6、流路13を通して、増湿装置12に供給する。増湿装置12は燃焼用の圧縮空気に増湿用給水流路15からの増湿用水を添加して、湿分を含んだ燃焼用の圧縮空気を流路14を通して、再生熱交換器9の熱交換流体流路9Bに供給する。この再生熱交換器9の熱交換流体流路9Bに供給された湿分を含んだ燃焼用の圧縮空気は、再生熱交換器9の熱交換流体流路9Aに供給されているタービン排出ガスと熱交換され加熱され、流路11を通して燃焼器2に供給される。
【0019】
燃焼器2は加熱された湿分を含んだ燃焼用の圧縮空気と燃料Fとを混合して燃焼し、この燃焼ガスをタービン3に供給する。タービン3は燃焼ガスによって駆動される。タービン3の排気ガスは、再生熱交換器9の熱交換流体流路9Aに供給されて、熱交換した後、流路10、給水加熱器16を通して煙道8から排気される。煙道8内に設置した給水加熱器16は、排気ガスの熱により、増湿装置12に供給する増湿用の水を加熱する。
【0020】
タービン3により駆動される発電機4は、タービン3の残りの軸出力から圧縮機1の駆動動力等を差し引いた出力を電気に変換する。
【0021】
上述したタービン3の駆動状態において、タービン3の回転数は第1の検出器19によって検出され、制御装置21に出力されている。また、発電機4の発電出力は第2の検出器20によって検出され、制御装置21に出力されている。制御装置21は第1の検出器19からのタービン3の回転数を予め設定した設定回転数と比較してその上限を超えた場合、及び前記第2の検出器20からの発電機出力信号を予め設定した発電機出力変化値と比較して負荷遮断と判断した場合に燃料Fの供給を停止し、開閉弁18及び放風弁7にそれぞれ開信号を出力する。
【0022】
開閉弁18及び放風弁7は、制御装置21からの信号により、開位置に切り替えられる。これにより、放風弁7は圧縮機1からの圧縮空気を大気に放出して、その下流側への流出空気を減少させる。また、開閉弁18は増湿装置12、再生熱交換器9の熱交換流体流路9A内における内容積の大きい空気を排気流路17を通して大気に排出する。
【0023】
その結果、燃焼器2を介してタービン3に供給される空気量が減少するので、タービン3の過速度による危険を回避することができる。
【0024】
この実施の形態によれば、タービン3の過速度を抑え、その安全性を更に向上させることができる。また、特にガスタービンが小型で軽量になる程、負荷遮断時に角加速度が大きくなり、回転数が急激に増加する傾向を生じるが、これにも対応することができる。
【0025】
また、再生熱交換器9のケーシングやその配管が保有する熱も、排気流路17からの排気とともに排出されるので、負荷遮断後のタービンの継続作動を抑えて、減速させ、その停止時間を短縮することができる。
【0026】
更に、負荷遮断時に燃料停止するので、タービン排出ガスや再生熱交換器出口燃焼用空気の温度が低下し、燃焼器2やタービン3や再生熱交換器9内に増湿装置12で噴霧された水滴などが蒸発しないまま流入する可能性があるが、開閉弁18から圧縮空気を逃がし、前記各装置内に流入する未蒸発の水分を含む高湿分空気流量を低減することにより、空気中の水滴や結露した湿分による摩耗や腐食を防止することができる。
【0027】
また、再生熱交換器9や燃焼器2内の残留水分もなくなるので、復旧時の再起動も良好になる。
【0028】
更に、この実施の形態において、開閉弁18は、再生熱交換器9の出口側の空気温度に比べて温度が低くなる入口側に設けているので、その弁材質または構造等が低温度対応となり、安価なものを使用することができる。
【0029】
図2は本発明の再生式ガスタービンシステムの他の実施の形態を示すもので、この図2において、図1と同符号のものは同一部分または相当する部分である。この実施の形態は、湿分圧縮空気用の排気流路17出口側を、再生熱交換器9側の排気流路10に合流連結して構成したものである。
【0030】
この実施の形態によれば、前述した本発明の一実施の形態と同様な効果が得られるとともに、タービン排気に湿分を含んだ圧縮空気を加えることで、負荷遮断時に温度が上昇する再生熱交換器出口のタービン排出ガスを冷却でき、給水加熱器16の設計温度を低く設定することができるので、その製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の再生式ガスタービンシステムの一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明の再生式ガスタービンシステムの他の実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 発電機
7 緊急用の放風弁
8 煙道
9 再生熱交換器
12 増湿装置
17 排気流路
18 開閉弁
19 第1の検出器
20 第2の検出器
21 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、この圧縮機に連結するタービンと、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含んだ圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に分岐して設けた湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステム。
【請求項2】
圧縮機と、この圧縮機に連結するタービンと、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含む圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された前記タービンに供給する圧縮空気と燃料とを混合して燃焼する燃焼器とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、一端を前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に連通し、他端を前記再生熱交換器の出口側流路に連結した湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステム。
【請求項3】
前記タービンの回転数が予め設定した設定値の上限を超えた場合に、前記開閉弁に開信号を出力する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の再生式ガスタービンシステム。
【請求項4】
圧縮機と、この圧縮機に連結するタービン及び発電機と、前記圧縮機から圧縮空気に湿分を与える増湿装置と、この増湿装置からの湿分を含んだ圧縮空気とタービン排気との間で熱交換を行う再生熱交換器と、この再生熱交換器で熱交換された前記タービンに供給する圧縮空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器と、前記圧縮機の吐出側に設けた放風弁とを有する再生式ガスタービンシステムにおいて、一端を前記増湿装置と前記再生熱交換器との間の流路に連通し、他端を前記再生熱交換器の出口側流路に連結した湿分を含んだ圧縮空気の排出流路と、この排出流路に設けた開閉弁と、前記タービンの回転数を検出する第1の検出器と、前記発電機の出力信号を検出する第2の検出器と、前記第1の検出器からの検出信号が予め設定した設定値の上限を超えた場合及び前記第2の検出器からの検出信号が予め設定した負荷遮断と判断した場合に、前記開閉弁及び前記放風弁にそれぞれ開信号を出力する制御装置とを備えたことを特徴とする再生式ガスタービンシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−57488(P2006−57488A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238249(P2004−238249)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】