説明

再生装置

【課題】 特殊再生用画像を良好に再生する。
【解決手段】 通常再生用の画像データと、隣接するフレーム間で異なる値を持つフレームチェンジ情報を含み1フレームがN本のトラックにわたって記録された特殊再生用画像データとをテープ状記録媒体上の多数のトラックから再生する再生手段と、再生された特殊再生用画像データを出力する出力手段と、再生されたフレームチェンジ情報の値に基づいて、前記出力手段より出力する特殊再生用画像データのフレームを更新する制御手段とを備え、前記制御手段は、サーチ再生時において、同一の値を持つ前記フレームチェンジ情報が連続して前記Nトラックを超えて再生された場合、前記同一の値を持つフレームチェンジ情報に対応するフレームの出力を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生装置に関し、特に特殊再生用画像データを通常再生用の画像データとは別に記録してなる記録媒体から画像データを再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データをMPEG方式で符号化し、磁気テープに記録する記録装置が知られている。この種の記録装置として、近年、HDV方式と呼ばれる民生用のデジタルVTRの規格が策定された。HDV方式では、MPEG方式で符号化した通常再生用画像データに加え、特殊再生用画像データを生成し、特殊再生用画像データは、テープ上の特定エリアに記録される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、磁気テープのデータ配置図である。図1において、通常再生用画像データはMPEG符号化され、16トラック単位にエラー訂正符号化処理されている。一方、特殊再生用画像データは、8倍速用データと24倍速用データからなり、8倍速用の特殊再生用データは、エラー訂正符号化処理の単位である16トラック単位で配置される。このエラー訂正符号化の単位をECCユニットという。特殊再生用画像データの記録位置は、インターリーブ後の物理的な位置で定義される。
【0004】
ここで8倍速用のサーチ画像データは、各ECCユニット内の同じ番号のトラックに配置される。また、1画面の特殊再生用画像データが9個のECCユニットにわたって記録される。この9個のECCユニットの一つ一つをサーチユニットと呼び、各サーチユニットには番号「0」〜「8」のいずれかが付与されている。
【0005】
また、24倍速用のサーチ画像データは、3EECユニット(16×3=48トラック)中で同じトラック位置に配置される。各ECCユニットには、サーチユニット番号「0」〜「11」のいずれかが付与されている。
【0006】
特殊再生用画像データと通常再生用の画像データのフレームの関係について図2を用いて説明する。
【0007】
ここでは一例として、15フレームで構成されるGOPを単位とする通常再生用の画像データのフレームと8倍速用のサーチ画像データの関係を説明する。
【0008】
8倍速用の特殊再生用画像データは、それぞれのGOPの中のIピクチャから生成される。各ECCユニットには、サーチユニット番号201が付与されている。また、各特殊再生用画像データのシンクブロックヘッダ(SBヘッダ)にはピクチャチェンジカウンタ(以下PCC)が付加されている。PCCは1から3までの値を持ち、特殊再生用画像データのフレーム毎に増加する。
【0009】
特殊再生用画像データの再生時には、このPCCの値を利用して再生された特殊再生用画像データを記憶する際のメモリアドレスを制御したり、或いは、再生画面の切り替えを制御する。
【特許文献1】特開2004−15457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、図3に示すように、つなぎ記録などにより、1フレームの特殊再生用画像データが記録されている9個のサーチユニットの途中から、別のサーチユニットのデータが記録されることが考えられる。
【0011】
その際、つなぎ記録された特殊再生用画像データのPCCの値が、元の特殊再生用画像データに付加されていたPCCの値と同じであった場合、再生時には、PCCの値を利用した前述の様なメモリアドレスの制御や画面の切り替えが良好に行われないおそれがある。
【0012】
そのため、再生画像が乱れてしまうという問題がある。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特殊再生用画像を良好に再生する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、通常再生用の画像データと、隣接するフレーム間で異なる値を持つフレームチェンジ情報を含み1フレームがN本のトラックにわたって記録された特殊再生用画像データとをテープ状記録媒体上の多数のトラックから再生する再生手段と、前記再生手段により再生された特殊再生用画像データを出力する出力手段と、前記再生手段により再生されたフレームチェンジ情報の値に基づいて、前記出力手段より出力する特殊再生用画像データのフレームを更新する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記テープ状記録媒体を通常再生時よりも高速に搬送しながら前記特殊再生用画像データを再生するサーチ再生時において、同一の値を持つ前記フレームチェンジ情報が連続して前記Nトラックを超えて再生された場合、前記同一の値を持つフレームチェンジ情報に対応するフレームの出力を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不正な特殊再生用画像データの出力を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図4は、本発明の実施形態に係る再生装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図4の再生装置400は、HDV方式で記録されたデータの再生機能を持つ。
【0019】
図4において、401は再生されたMPEGデータを復号するデコーダ、402はメモリ、403はデコードされた画像データを出力する出力部、404は再生装置全体を制御するCPU、405は各種の操作スイッチを有する操作キー、406は再生画像の他、各種の情報を表示する表示部、407はテープTからデータを再生する再生部、408はデータバスである。
【0020】
テープTには、図1に示した形態で通常再生用の画像データと特殊再生用画像データとが記録されている。
【0021】
通常再生時においては、操作キー405により再生指示があると、CPU404は再生部407に対し通常再生を指示する。再生部407は、テープTを通常再生速度で搬送しながらテープTより通常再生用の画像データを再生し、メモリ402に出力する。デコーダ401は、CPU404の指示により、メモリ402に書き込まれた通常再生用の画像データ(MPEGデータ)をデコードし、表示部406及び出力部403に出力する。表示部406はこの様に再生された通常再生用の画像を表示する。
【0022】
次に、高速再生時の処理について説明する。
【0023】
まず、特殊再生用画像データについて説明する。
【0024】
本実施形態において、通常再生用の画像データの輝度データの有効画素数は、水平方向に1440サンプル、垂直方向に1080サンプルである。また、色差データの有効画素数は、水平方向に720サンプル、垂直方向に540サンプルである。
【0025】
この1画面分の画像データは、図5に示されるように、水平方向に90(=1440÷16)個、垂直方向に68(=1080÷16(小数点切り上げ))個のマクロブロック(MB)に区分される。すなわち、1画面は、90×68の6120マクロブロックに区分される。
【0026】
輝度信号Yの1つのマクロブロックは、8画素×8画素毎の4個のDCTブロックから構成される。そして、特殊再生用画像データとして、各DCTブロックのDC成分を抽出し、それぞれ6ビットのデータに変換する。また、色差信号CbおよびCrの8画素×8画素のそれぞれのDCTブロックからDC成分を抽出し、それぞれ5ビットのデータに変換する。この様に、一つのマクロブロックにおける輝度信号から得られた4サンプルのデータと、色差信号から得られた2サンプルのデータで、特殊再生用画像データを構成する。即ち、通常再生用の画像データの一つのマクロブロックのデータを34(=6×4+5×2)ビットのデータに変換し、特殊再生用画像データを生成する。
【0027】
更に、この様に変換した特殊再生用画像データを記録する際、図6(A)に示すベースデータ用マクロブロックと、図6(B)に示すヘルパーデータ用のマクロブロックの2種類に分けて記録する。ベースデータは、図2に示した1フレームの特殊再生用画像データが記録される9個のサーチユニットのうち、サーチユニット番号が0〜3サーチユニットに記録され、ヘルパーデータはサーチユニット番号が4〜8のサーチユニットに記録される。
【0028】
ベースデータは、図6(A)に示されるように、通常再生用の画像データにおける一つのマクロブロックの4個の輝度信号のDCTブロックY0、Y1、Y2、Y3のうち、左上のDCTブロックY0のDC成分を抽出して6ビットに変換したマクロブロックと、色差信号CbおよびCrのDCTブロックのDC成分を抽出して、それぞれ5ビットのデータに変換したマクロブロックとの、3つのマクロブロックから構成される。
【0029】
また、ヘルパーデータは、図6(B)に示されるように、輝度信号4個のDCtブロックのうち、残りの3個のDCTブロックY1乃至Y3からDC成分を抽出して6ビットに変換した3つのマクロブロックから構成される。
【0030】
図7は、1フレームの特殊再生用画像データの様子を示す図である。本実施形態では、図7に示す1フレーム分の特殊再生用画像データを、図2におけるサーチユニット番号0〜8の9個のサーチユニットにわたって記録されている。
【0031】
図7に示すように、1フレームの特殊再生用画像データは、水平方向に90マクロブロック、垂直方向に68マクロブロックで構成される。そして、この1フレームの特殊再生用画像データを0〜33の34個のブロック(サーチデータブロック)に分割する。そして、更に各ブロックを垂直方向に1マクロブロック毎に分割し、同期、IDデータが付加されてテープTに記録されている。このIDには、PCCデータと図7に示した各シンクブロックの位置を示す位置情報とが含まれており、再生時には、このIDと後述のPCCの値とに基づいて、メモリ402における各シンクブロックの記録アドレスを決定する。
【0032】
具体的には、ECCユニット内のトラック番号が0及び4のトラックに対し、サーチデータブロックの番号が17から33までの17シンクブロック分のデータがそれぞれ2回づつ記録される。更に、サーチユニット番号0のECCユニットには、各サーチデータブロックの上から3番目のシンクブロックのデータが記録される。同様に、サーチユニット番号1、2、3の各ECCユニットには、それぞれ、各サーチデータブロックの上から1番目、4番目、2番目のシンクブロックのデータが記録される。
【0033】
一方、ECCユニット内のトラック番号が2のトラックに対し、サーチデータブロックの番号が0から16までの17シンクブロック分のデータが3回づつ記録される。更に、サーチユニット番号0のECCユニットには、各サーチデータブロックの上から3番目のシンクブロックのデータが記録される。同様に、サーチユニット番号1、2、3の各ECCユニットには、それぞれ、各サーチデータブロックの上から1番目、4番目、2番目のシンクブロックのデータが記録される。
【0034】
また、へルーパーデータについても同様に34個のサーチデータブロックに分割され、サーチユニット番号4〜9のトラックに記録されている。
【0035】
この様に記録された特殊再生用画像データの再生処理について説明する。
【0036】
図8は、テープTに記録されたデータの一例を示す図である。図9はサーチ再生時の処理を示すフローチャートである。
【0037】
図4の操作キー405によりサーチ再生の指示があると、CPU404は変数Trをリセットし(ステップS901)、再生部407に対し、サーチ再生開始を指示する。再生部407はテープTを通常再生時の8倍の速度で搬送し、テープTより特殊再生用画像データを再生する(ステップS902)。CPU404は、サーチ再生中、サーチユニット番号0のサーチユニットの先頭(逆サーチの場合、最後尾)のトラックからのトラック数Trをカウントする。
【0038】
そして、CPU404は、再生された特殊再生用画像データ中のPCCを検出し(ステップS903)、直前のサーチユニット(ECCユニット)から再生した特殊再生用画像データ中のPCCの値と比較して変化したか否かを判別する(ステップS904)。
【0039】
PCCの値が変化していなかった場合、トラック数Trがサーチユニット番号0〜8までのトラック数N(ここでは、16×9=144)を超えているか否かを判別する(ステップS908)。超えていない場合には、特殊再生用画像データのシンクブロックの中のPCC及び位置情報に基づいて、メモリ402に書き込む(ステップS909)。
【0040】
メモリ402は、それぞれ1フレームの特殊再生用画像データを記憶可能であり、独立に書き込み及び読み出しが複数のメモリバンクから構成されている。そして、PCCの値に基づいて書き込みバンクを決定すると共に、位置情報に従い、メモリバンク中の書き込みアドレスを決定する。
【0041】
一方、ステップS904において、PCCの値が変化していた場合、変数Trをリセットし(ステップS905)、メモリ402の読み出しバンクを、現在表示中のフレームの次のフレームのデータが書き込まれているメモリバンクに切り替える。そして、切り替え後の読み出しバンクより、特殊再生用画像データを読み出して表示部406に表示することで、表示画面を更新する(ステップS906)。
【0042】
また、ステップS908で、サーチユニットの先頭からのトラック数がNを超えていた場合、現在書き込み中のメモリバンクのデータを破棄し、そのまま書き込みバンクを切り替えずにS907に進む(ステップS910)。
【0043】
ステップS907では、操作キー405により再生停止の指示があるか否かを判別し、再生停止の指示が無ければステップS902に戻る。
【0044】
例えば、図8の802に示す様に、PCCの値が2である元の特殊再生用画像データが記録されているサーチユニット番号3の後から、新たにPCCが2の特殊再生用画像データが記録されていた場合、PCCの値が2である特殊再生用画像データが、9個のサーチユニットの期間を超えてしまうことになる。
【0045】
ステップS908では、この様な状態を検出し、そのとき書き込まれていたPCCが2の特殊再生用画像データを全て破棄している。
【0046】
前述のように、本実施形態では、再生された特殊再生用画像データのシンクブロックのIDに従ってメモリ402の書き込みアドレスを決定している。そのため、逆方向にサーチ再生した場合、テープ上でつなぎ位置804以降に記録されたPCC=2の特殊再生用画像データをメモリ402に書き込んだ後、つづけて特殊再生用画像データを再生した場合、つなぎ位置804の直前に記録されている、PCC=2のサーチユニット0〜3までのデータが再生されることになる。
【0047】
そして、メモリ402上に既に書き込まれていた、つなぎ位置804の直後のサーチユニット0〜3のデータが、つなぎ位置804の直前のサーチユニット0〜3のデータにより上書きされてしまう。
【0048】
その結果、PCC=2の特殊再生用画像データは、つなぎ記録前後の画像が混在して表示されてしまうことになる。
【0049】
そこで、本実施形態では、この様な状態を検出した場合には、そのフレームについて、メモリ402に記憶された特殊再生用画像データを破棄し、元の画像とつなぎ記録後の画像が混在表示されることを防止している。
【0050】
なお、ここでは8倍速サーチ再生の場合について説明したが、24倍サーチの場合には、再生すべき特殊再生用画像データの種類、及び、S908におけるNの値が変わるだけで、8倍速の場合と同様に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】テープ上の記録フォーマットを示す図である。
【図2】通常再生用の画像データと特殊再生用画像データの関係を示す図である。
【図3】テープ上のピクチャチェンジカウンタと特殊再生用画像データの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における再生装置のブロック図である。
【図5】実施形態におけるマクロブロックの様子を示す図である。
【図6】特殊再生用画像データの構成を示す図である。
【図7】特殊再生用画像データの記録時のブロック構成を示す図である。
【図8】実施形態に係るテープ上の記録データを示す図である。
【図9】サーチ再生時の動作を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常再生用の画像データと、隣接するフレーム間で異なる値を持つフレームチェンジ情報を含み1フレームがN本のトラックにわたって記録された特殊再生用画像データとをテープ状記録媒体上の多数のトラックから再生する再生手段と、
前記再生手段により再生された特殊再生用画像データを出力する出力手段と、
前記再生手段により再生されたフレームチェンジ情報の値に基づいて、前記出力手段より出力する特殊再生用画像データのフレームを更新する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記テープ状記録媒体を通常再生時よりも高速に搬送しながら前記特殊再生用画像データを再生するサーチ再生時において、同一の値を持つ前記フレームチェンジ情報が連続して前記Nトラックを超えて再生された場合、前記同一の値を持つフレームチェンジ情報に対応するフレームの出力を禁止することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記出力手段は、それぞれ1フレームの前記特殊再生用画像データを記憶可能な複数のメモリバンクから構成されるメモリを有し、前記制御手段は、前記フレームチェンジ情報に基づいて前記メモリにおける前記特殊再生用画像データの書き込みメモリバンクと読み出しメモリバンクとを切り替えることを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記特殊再生用画像データはそれぞれ所定量のデータ及びIDからなる複数の同期ブロックから構成され、前記制御手段は更に、前記同期ブロックのIDに基づいて前記メモリバンクにおける書き込みアドレスを決定することを特徴とする請求項2記載の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−74523(P2007−74523A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260881(P2005−260881)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】