説明

写真フィルム材料の輸送時梱包方法

【課題】 ロール状フィルムの巻きゆるみを防止し、パトローネキャップ等の塗装鋼板部品の擦れを防止する、安価で簡単な写真フィルム材料の輸送時梱包方法を提供すること。
【解決手段】 写真フィルム材料を梱包箱に収納して輸送するための写真フィルム材料の輸送時梱包方法において、前記梱包箱内に前記写真フィルム材料と共に弾性部材を収納して、前記写真フィルム材料を輸送することを特徴とする写真フィルム材料の輸送時梱包方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は写真フィルム材料を輸送する時の梱包方法に関し、詳しくは輸送中の写真フィルム材料に過大な負荷をかけずに梱包状態を維持させ、製品の品質と開梱後に行う製造作業の作業性を向上させる、写真フィルム材料の動きを抑えた輸送時梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
写真感光フィルムの製造においては、その感光材料の調合、フィルムベースのキャスティング、感光材料の塗布、及び他のフィルム構成材料の加工には大規模な設備や高い技術レベルを要するため、一拠点で生産を行い、生産された最終製品幅のロール状長巻きフィルム(この状態のフィルムのことを、以下、パンケーキフィルムともいう。)を、別の場所に輸送し、そこでパンケーキフィルムを所定の長さに裁断してパトローネに装填し、キャッピングを行って最終製品であるフィルム製品に二次加工する生産形態をとるケースが多い。
【0003】
然るに、写真フィルム材料を塗布工場から二次加工工場に輸送する際には、輸送中の振動や衝撃が写真フィルム材料に与える物理的なダメージにより、二次加工工場での写真フィルム材料の使用時に種々の問題が発生している。
【0004】
即ち、フィルムを最終製品幅にスリット加工したロール状フィルムにおいては、輸送中の振動・衝撃や温湿度変化により巻きゆるみが生じ、その結果、フィルム最終形態への加工装置への装填時に、ロール状フィルムが竹の子状にずれてしまったり、巻きが崩れてバラバラになってしまうという問題である。
【0005】
また、パトローネの構成部品であり、プレス加工により加工されるパトローネキャップにおいては、輸送中にパトローネキャップ同士が擦れ合い、パトローネキャップのプレス加工時のバリが擦れ合う他のパトローネキャップの塗装面を損傷し、発生する塗装はがれがフィルムに付着して撮影画像に不具合を生じたり、パトローネキャップの塗装はがれ箇所の外観不良や錆びの発生するといった問題も起きている。
【0006】
ロール状フィルムやパトローネキャップ等の写真フィルム材料を輸送する輸送時梱包方法としては、写真フィルム材料を梱包容器である段ボール箱等に収納し、緩衝材により写真フィルム材料を固定するのが一般的に用いられる方法であり、梱包容器と写真フィルム材料との空隙部を埋める緩衝材としては、汎用のチップ状或いは球状に形成された発泡ポリスチレンや多数の空気層を有する合成樹脂製のシート材等が用いられていた。しかしながら、このような輸送時梱包方法はロール状フィルムの巻きゆるみやパトローネキャップ同士の擦れ合いといった問題に対しては有効な方法とは言えなかった。
【0007】
また、梱包容器の空隙部を埋める汎用の緩衝材に代わるものとして、内部に気体を出し入れできるゴム部材で構成された緩衝材が提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、この緩衝材は高価でもあり内部に気体を注入する際に装置を要するという問題もある。また、この緩衝材を用いても、ロール状に巻かれたロール状フィルムの巻きゆるみやパトローネキャップ等の塗装鋼板部品の擦れを防止することは困難であると推察できる。即ち、ロール状フィルムの巻きゆるみは輸送時の振動・衝撃がロール径の方向に繰り返し加えられることにより発生するもので、特許文献1のゴム部材で構成された緩衝材はロール径に直角な方向には押さえる効果が大きいがロール径の方向では効果が小さいと考えられる。また、パトローネキャップ等の塗装鋼板部品の輸送時梱包方法としては、当該塗装鋼板部品を小分けの袋に入れてから段ボール箱に入れ、緩衝材を入れるのが一般に行われている方法であるが、気密性の高い袋を用いると輸送時の振動・衝撃により袋内部に空気層(スペース)が出来、特許文献1のゴム部材の緩衝材を用いても押さえる力が十分に作用しなくなり、袋内部の塗装鋼板部品が動きやすくなると考えられる。また、特許文献1のゴム部材では前記小分けの袋と段ボール箱との空隙が小さくなるとゴム部材が空隙に入り込めず、上記した袋内部の空気層(スペース)が出来てしまう危険性がある。
【特許文献1】特開平7−251867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロール状フィルムの巻きゆるみを防止するには、ロール径の方向に繰り返し加えられる輸送時の振動・衝撃に耐えなければならず、そのためにはロール径の外周から中心へ向けて押さえの力を与えることが効果的である。
【0009】
また、パトローネキャップ等の塗装鋼板部品の擦れを防止するには、梱包時の袋内部の空気を少なくするか、緩衝材を入れたときに袋内部の空気が排除されるような構成にすることが効果的である。
【0010】
本発明は上記の問題を解決するため、ロール状フィルムの巻きゆるみを防止し、かつ、パトローネキャップ等の塗装鋼板部品の擦れを防止しうる、安価で簡単な写真フィルム材料の輸送時梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下記の構成により達成することが出来る。
(請求項1)
写真フィルム材料を梱包箱に収納して輸送するための写真フィルム材料の輸送時梱包方法において、前記梱包箱内に前記写真フィルム材料と共に弾性部材を収納して、前記写真フィルム材料を輸送することを特徴とする写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
(請求項2)
前記写真フィルム材料がロール状に巻かれたロール状フィルムであり、前記弾性部材が当該ロール状フィルムの外周に巻回される帯状部材であることを特徴とする請求項1に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
(請求項3)
前記写真フィルム材料は塗装鋼板部品であり、複数の塗装鋼板部品が一つの袋に袋詰めされ、前記複数の塗装鋼板部品は前記梱包箱内に一つまたは複数の袋に袋詰めされて収納され、前記弾性部材が前記梱包箱と前記複数の塗装鋼板部品の袋詰めとの間のスペースに挿入されることを特徴とする請求項1に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
(請求項4)
前記梱包箱に収納される前記一つまたは複数の袋が密閉されてないことを特徴とする請求項1または3に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
(請求項5)
前記複数の塗装鋼板部品の袋詰めが予め内部の気圧を減圧し、密閉された状態に構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2に記載の発明により、ロール状に巻かれたフィルムの輸送中の巻きゆるみが防止できる。
【0013】
請求項1または3に記載の発明により、複数の塗装鋼板部品が一つの袋に入れられることにより、輸送中に互いに擦り合うことを規制され、更にその袋が梱包箱に入れられることにより、梱包箱と袋との空隙に弾性部材が挿入されて複数の塗装鋼板部品同士が互いに擦り合うことを防止できる。
【0014】
請求項4に記載の発明により、輸送中の振動・衝撃により塗装鋼板部品が徐々に局部的に集結して袋の内部に空気層が出来そうになっても、袋詰めが密閉されてないため弾性部材に袋が押されて空気が袋の外へ押し出されるため空気層(スペース)ができず、従って複数の塗装鋼板部品同士が互いに擦り合う状態にはならない。
【0015】
請求項5に記載の発明により、複数の塗装鋼板部品の袋詰めが予め減圧され、密閉されるため、袋内部での塗装鋼板部品の動きが規制され、塗装鋼板部品同士が互いに擦り合うことが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明に係る写真フィルム材料の第1の実施形態であるロール状フィルムの外周にゴムバンド等からなる第1の弾性部材を挿入する工程を示す概略図であり、図2は、本発明に係るロール状フィルムを梱包箱に収納するまでの工程を示す概略構成図である。図2(a)はロール状フィルムを黒色の紙袋に挿入する工程を示す図、図2(b)は黒色の紙袋の先端を折り込んで封印する工程を示す図、図2(c)は黒色の紙袋を防湿バリア袋に挿入する工程を示す図、図2(c)は防湿バリア袋を段ボール箱に挿入する工程を示す図である。
【0018】
図1において、始めにロール状に巻かれたロール状フィルム1の外周端部に仮止めのシール材S1を貼る。次に、ゴムバンド等からなる第1の弾性部材(以下、単にゴムバンドともいう)2をロール状フィルムの外周に巻回する。本実施の形態では、第1の弾性部材2がエンドレスのゴムバンドで形成され、ロール状フィルム1の外周より小さい内径を有するように形成してあり、ゴムバンド2をロール状フィルム1の外周に巻回したときにロール状フィルム1がゴムバンド2の弾性により締め付けられる構成となっている。
【0019】
なお、ゴムバンドのゴム材質によっては直接フィルムに接触させると物理的または化学的に悪影響を及ぼすものもあるため、ロール状フィルム外周とゴムバンドとの間にシート(不図示)を挿入させてもよい。
【0020】
また、本実施の形態では、弾性部材をエンドレスのゴムバンドとしたが、両端近傍に係止部を有する帯状の弾性部材でもよく、帯状の弾性部材をロール状フィルム外周に巻回後に接着或いは熱溶着してもよい。
【0021】
外周にゴムバンドを巻回したロール状フィルムは、図2(a)に示すように、遮光のための黒色の紙袋3に収納される。
【0022】
次に図2(b)に示すように、黒色の紙袋3の開口部を折り返してシール材S2で封印する。
【0023】
次いで図2(c)に示すように、封印された黒色の紙袋3を防湿バリア袋4に収納する。
【0024】
次いで図2(d)に示すように、防湿バリア袋4の開口部をシール材S3により封印した後、段ボール箱等からなる梱包箱5に収納する。収納後、図示しない布テープや紙テープ等のシール材により封印して梱包を完了する。
【0025】
図3は本発明に係る写真フィルム材料の第2の実施形態である塗装鋼板部品を梱包箱に収納するまでの工程を示す概略構成図である。図3(a)は合成樹脂製または紙製の袋に袋詰めされた塗装鋼板部品を梱包箱である段ボール箱に収納した状態を示す斜視図、図3(b)は塗装鋼板部品と段ボール箱との空隙に第2の弾性部材を挿入した状態を示す模式的上面図、図3(c)は袋詰めされた塗装鋼板部品と段ボール箱との空隙に第2の弾性部材を挿入した状態を示す斜視図、図3(d)は梱包が完了した状態を示す斜視図である。
【0026】
図3(a)において、11はパトローネキャップ等の塗装鋼板部品を袋詰めした袋(以下、単に袋詰めという)であり、当該袋は本実施の形態では合成樹脂シートで形成されたものを用いているが、紙製のものを用いてもよい。本実施の形態において、袋詰め13は、袋の材質に通気性のあるものを用いるか、袋の一部または全体に微小な空気穴が空いたものを用いること等により、内側と外側の空気の出入りが自在な密閉されてない構成とされている。12は段ボール箱等からなる梱包箱、13は第2の弾性部材である多数の空気層を有する合成樹脂製のシート材(以下、エアキャップという)を示す。第2の弾性部材としては前記エアキャップ13以外に、汎用のチップ状或いは球状に形成された発泡ポリスチレンや紙製の緩衝材が挙げられる。袋詰め13は、密閉されてない構成であるため、輸送時に外部から振動や衝撃が加えられても袋詰め13の内部に塗装鋼板部品の片寄りや空気層のスペースを生じることがない。
【0027】
図3(b)に示すように、段ボール箱12と袋詰め11との空隙にエアキャップ13をそのまま丸めるか、小さく切断して丸めて挿入する。第2の弾性部材がチップ状或いは球状に形成された発泡ポリスチレンや紙製の緩衝材の場合には、空隙の大きさに見合った量の緩衝材を挿入する。第2の弾性部材が段ボール箱12と袋詰め11との空隙に押し込まれることにより、第2の弾性部材の弾性により袋詰め11を周囲から押さえ込まれ、輸送中に外部から段ボール箱12に振動や衝撃が加えられても、段ボール箱12内で袋詰め11が動くことがない。
【0028】
図3(c)において、14は、チップ状或いは球状に形成された発泡ポリスチレン等からなる緩衝材である。段ボール箱12に袋詰め11が収容され、空隙にエアキャップ13が挿入された後の空隙に緩衝材14が挿入され、段ボール箱12の蓋が閉められて梱包が完了する。
【0029】
図3(d)において、S4は、ガムテープや紙テープ等からなるシール材である。袋詰め11、エアキャップ13、及び緩衝材14の収納が完了した段ボール箱12の蓋が閉められた後、シール材S4により封印されて梱包を完了する。
【0030】
次に、本発明に係るパトローネキャップ等の塗装鋼板部品を梱包するための写真フィルム材料の第3の実施形態として、塗装鋼板部品の袋詰めを、予め内部の気圧を減圧し、袋詰めの内部を密閉された減圧状態に構成する輸送時梱包方法について説明する。
【0031】
本実施の形態は、図3(a)に示す袋詰め13の袋に気密性の高い材料を用い、袋詰め13の内部を減圧された状態に構成するというものである。他の工程は第2の実施形態と同一であるため説明は省略するが、図3(a)〜図3(d)がそのまま使用できる。袋詰め13の内部を減圧するため、内部の空気層が減少し、袋の内部での塗装鋼板部品同士の動きが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る写真フィルム材料の第1の実施形態であるロール状フィルムの外周にゴムバンド等からなる第1の弾性部材を挿入する工程を示す概略図である。
【図2】本発明に係る写真フィルム材料の第2の実施形態である塗装鋼板部品を梱包箱に収納するまでの工程を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る写真フィルム材料の第2の実施形態である塗装鋼板部品を梱包箱に収納するまでの工程を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ロール状フィルム
2 第1の弾性部材(ゴムバンド)
3 黒色の紙袋
4 防湿バリア袋
5、12 梱包箱(段ボール箱)
11 袋詰め(塗装鋼板部品を袋詰めしたもの)
13 第2の弾性部材(エアキャップ)
14 緩衝材
S1、S2、S3、S4 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真フィルム材料を梱包箱に収納して輸送するための写真フィルム材料の輸送時梱包方法において、
前記梱包箱内に前記写真フィルム材料と共に弾性部材を収納して、前記写真フィルム材料を輸送することを特徴とする写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
【請求項2】
前記写真フィルム材料がロール状に巻かれたロール状フィルムであり、前記弾性部材が当該ロール状フィルムの外周に巻回される帯状部材であることを特徴とする請求項1に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
【請求項3】
前記写真フィルム材料は塗装鋼板部品であり、複数の塗装鋼板部品が一つの袋に袋詰めされ、前記複数の塗装鋼板部品は前記梱包箱内に一つまたは複数の袋に袋詰めされて収納され、前記弾性部材が前記梱包箱と前記複数の塗装鋼板部品の袋詰めとの間のスペースに挿入されることを特徴とする請求項1に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
【請求項4】
前記梱包箱に収納される前記一つまたは複数の袋が密閉されてないことを特徴とする請求項1または3に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。
【請求項5】
前記複数の塗装鋼板部品の袋詰めが予め内部の気圧を減圧し、密閉された状態に構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の写真フィルム材料の輸送時梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−256628(P2006−256628A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72704(P2005−72704)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】