説明

冷凍サイクル装置及びそれを備えた空調装置

【課題】所定の冷媒流量の範囲内で高圧圧力をほぼ一定に保つ機能を有する減圧手段が用いられる構成において、冷凍能力低下を抑制しつつ、圧縮機の吐出温度の上昇を抑えることができる冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機10と、空気との熱交換により冷媒を冷却するガスクーラ20と、冷媒を減圧する絞り装置30と、空気との熱交換により冷媒を蒸発させる蒸発器40と、ガスクーラ20に空気を送風する第1送風機21と、蒸発器40に空気を送風する第2送風機41と、圧縮機10の冷媒吐出温度を検出する吐出温度センサ11と、制御装置100とを有し、絞り装置30は、所定の流量範囲において冷媒の入口圧力をほぼ一定に保つ流量特性を有しており、制御装置100は、吐出温度が設定温度Td2を超えたとき、蒸発器40を通過する風量を増加させる制御を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置及びそれを備えた空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷凍サイクル装置を備えた従来の車両用空調装置が開示されている。この空調装置では、圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度が上昇したときに、ガスクーラに送風する送風ファンの回転数を増加させる制御、内気導入割合を増加させる制御、及び蒸発器に送風する送風ファンの回転数を減少させる制御をこの順に行い、これらの制御を行っても吐出温度が低下しない場合には、圧縮機の制御を行うようになっている。
【特許文献1】独国特許発明第102004042887B3号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特に二酸化炭素(CO)冷媒を用いた空調装置において、冷凍サイクルの高圧保護のために、ある冷媒流量の範囲内で高圧圧力(入口圧力)をほぼ一定に保つ機能を有する減圧手段(定圧弁に類するもの)が用いられる場合がある。このような減圧手段が用いられる空調装置では、上記のように蒸発器の送風ファンの回転数を低下させてしまうと、冷媒の低圧圧力が低下するため、吐出温度は逆に上昇してしまうことになる。したがって、最終的には圧縮機の回転数を余計に低下させる必要があるため、冷凍サイクルの冷凍能力が余計に低下してしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明の目的は、少なくとも所定の冷媒流量の範囲内で高圧圧力をほぼ一定に保つ機能を有する減圧手段が用いられる構成において、冷凍能力低下を抑制しつつ、圧縮機の吐出温度の上昇を抑えることができる冷凍サイクル装置及びそれを備えた空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1に記載の発明は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(10)と、圧縮機(10)から吐出された冷媒を空気との熱交換により冷却する高圧側熱交換器(20)と、高圧側熱交換器(20)で冷却された冷媒を減圧する減圧手段(30)と、減圧手段(30)で減圧された冷媒を空気との熱交換により蒸発させて圧縮機(10)に戻す低圧側熱交換器(40)と、高圧側熱交換器(20)に空気を送風する第1送風機(21)と、低圧側熱交換器(40)に空気を送風する第2送風機(41)と、圧縮機(10)から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検出手段(11)と、圧縮機(10)、第1送風機(21)及び第2送風機(41)を作動制御する制御手段(100)とを有し、減圧手段(30)は、少なくとも所定の流量範囲において冷媒の入口圧力をほぼ一定に保つ流量特性を有しており、制御手段(100)は、吐出温度が第1設定温度(Td2)を超えたとき、低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させる第1制御を行うことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0007】
所定の流量範囲において冷媒の入口圧力をほぼ一定に保つ流量特性を有する減圧手段(30)が用いられた冷凍サイクル装置では、当該流量範囲において、低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させて冷凍サイクルの低圧を上昇させることによって、圧縮機(10)の吐出温度を低下させることができる。これにより、冷凍能力を低下させることなく、圧縮機(10)の吐出温度保護を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、低圧側熱交換器(40)で冷却された空気の冷却空気温度を検出する冷却空気温度検出手段(42)をさらに有し、制御手段(100)は、冷却空気温度が所定の上限温度(Te2)を超えない範囲で低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させることを特徴としている。
【0009】
低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させると、低圧側熱交換器(40)を通過する空気の風速が増加するため、冷却空気温度が上昇してしまう。したがって、冷却空気温度の上限温度(Te2)を設定することによって、冷却空気温度の過度の上昇を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、制御手段(100)は、吐出温度が第2設定温度(Td3)以上となったときに圧縮機(10)を停止させる制御を行い、第1設定温度(Td2)は第2設定温度(Td3)よりも低いことを特徴としている。
【0011】
これにより、圧縮機(10)の停止によって冷凍能力が低下する前に、冷凍能力を維持しながら圧縮機(10)の吐出温度保護を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、制御手段(100)は、吐出温度が第1設定温度(Td2)を超えたとき、第1制御を行う前に、高圧側熱交換器(20)を通過する風量を増加させる第2制御を行い、第2制御によって吐出温度が第1設定温度(Td2)よりも低下しなかったときに第1制御を行い、第1制御によって吐出温度が第1設定温度(Td2)よりも低下しなかったときに、圧縮機(10)の吐出容量を低下させる第3制御を行うことを特徴としている。
【0013】
吐出温度が上昇したときに第2制御、第1制御及び第3制御をこの優先順位で行うことにより、圧縮機(10)の吐出温度保護を行う際の性能低下を抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明のように、冷媒として二酸化炭素を用いてもよい。
【0015】
請求項6に記載の発明は、上記発明の冷凍サイクル装置を備えていることを特徴とする空調装置である。これにより、上記発明と同様の効果が得られる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係の一例を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本実施形態における冷凍サイクル装置1の概略の全体構成を示している。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、例えば、車両に搭載される車両用空調装置を構成している。内部を循環する冷媒としては、例えばCOが用いられている。図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、圧縮機10、ガスクーラ(高圧側熱交換器)20、絞り装置(減圧手段)30、蒸発器(低圧側熱交換器)40及びアキュムレータ50が冷媒配管を介して順次環状に接続された構成を有している。また冷凍サイクル装置1は、ガスクーラ20と絞り装置30との間を流れる高圧冷媒と、アキュムレータ50と圧縮機10との間を流れる低圧冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器60を有している。さらに冷凍サイクル装置1は、ガスクーラ20に対し空気を送風する第1送風機21と、蒸発器40に対し空気を送風する第2送風機41と、圧縮機10、第1送風機21及び第2送風機41を作動制御する制御装置(制御手段)100とを有している。
【0018】
圧縮機10は、アキュムレータ50から気相冷媒を吸入し、高温高圧に圧縮してガスクーラ20側へ吐出する流体機械であり、図示しない電磁クラッチ及びベルトを介して車両走行用エンジンにより回転駆動される。圧縮機10は、制御装置100の制御によりその作動が制御されるようになっている。圧縮機10は、例えば、電磁式容量制御弁に制御装置100からの制御信号が入力されることにより吐出容量が可変される斜板式可変容量型圧縮機となっている。本実施形態の圧縮機10では、斜板室の圧力の調整により吐出容量を100%から0%付近まで連続的に変化させることができる。したがって、吐出容量を0%付近に減少させることにより、圧縮機10を実質的に作動停止状態にすることができる。よって、圧縮機10の回転軸をプーリ及びベルトを介して車両エンジンに常時連結するクラッチレスの構成としてもよい。さらに圧縮機10はモータとインバータなどにより回転数を制御する電動圧縮機としてもよい。
【0019】
圧縮機10の吐出側には、吐出温度センサ(吐出温度検出手段)11が設けられている。吐出温度センサ11は、圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度を検出し、制御装置100に検出信号を出力するようになっている。
【0020】
ガスクーラ20は、第1送風機21により強制的に送風される空気との熱交換によって、圧縮機10から吐出された高圧冷媒を放熱させて冷却する熱交換器である。第1送風機21は、制御装置100の制御によって可変の回転数で回転し、ガスクーラ20への送風量を調節できるようになっている。
【0021】
絞り装置30は、ガスクーラ20で冷却されて内部熱交換器60の高温側流路を通過した高圧冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。本実施形態では、冷媒の入口圧力をほぼ一定に維持する定圧弁、例えば、ここでは2段流量特性を備えた定圧弁が用いられている。2段流量特性を備えた定圧弁は、互いに並列に設けられた2つの絞り通路を有している。一方の絞り通路は常開となっており、他方の絞り通路は、例えばスプリングとベローズで構成される弁により入口圧力に基づいて開度が調整されるようになっている。
【0022】
図2は、絞り装置30の流量特性の一例を示すグラフである。グラフの横軸は絞り装置30の入口圧力を表し、縦軸は絞り装置30を通過する冷媒の質量流量を表している。図2に示すように、絞り装置30は、入口圧力に対する流量特性の傾きが2ステージある2段特性を有している。すなわち、入口圧力がPi1よりも低いとき(低負荷時及び中負荷時)には、スプリングとベローズで構成される弁が閉弁状態にあり、冷媒が一方の絞り通路のみを流れるため、入口圧力に対する流量特性の傾きは比較的小さくなっている。これに対し、入口圧力がPi1よりも高くなったとき(高負荷時)には、スプリングとベローズで構成される弁が開度制御されて大流量の冷媒が他方の絞り通路を流れるため、入口圧力に対する流量特性の傾きは低負荷時及び中負荷時と比較して極めて大きくなる。換言すれば、絞り装置30は、冷媒の質量流量がqm1以上となる流量範囲において、入口圧力(図4のA部)をほぼ一定に保つような流量特性を有している。
【0023】
蒸発器40は、第2送風機41により強制的に送風される外部空気からの吸熱作用によって、絞り装置30で減圧膨張した低圧冷媒を蒸発させる熱交換器である。蒸発器40は、例えば車両用空調装置の空調ケース内に配置されており、吸熱作用によって冷却された空気は、冷風として車室内に吹き出されるようになっている。第2送風機41は、制御装置100の制御によって可変の回転数で回転し、蒸発器40への送風量を調節できるようになっている。
【0024】
蒸発器40の空気流れ下流側には、冷却空気温度センサ(冷却空気温度検出手段)42が設けられている。冷却空気温度センサ42は、蒸発器40で冷却された空気の温度、または蒸発器40のフィン温度を検出し、制御装置100に検出信号を出力するようになっている。
【0025】
アキュムレータ50は、蒸発器40から流出した低圧冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を流出させる気液分離器である。アキュムレータ50から流出した気相冷媒は、内部熱交換器60の低温側流路を通って圧縮機10に吸入される。
【0026】
制御装置100は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置100には、操作パネル(図示せず)からの各種操作信号や、吐出温度センサ11及び冷却空気温度センサ42を含む各種センサ群からの検出信号等が入力されるようになっている。制御装置100は、これらの入力信号に基づいて圧縮機10、第1送風機21及び第2送風機41等の各種機器の作動を制御する。
【0027】
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の制御方法について説明する。図3は、制御装置100により実行される冷凍サイクル装置1の制御手順の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、まず制御装置100は、冷凍サイクル装置1の運転要求があると、圧縮機10の各種運転条件を満たしているか否かを判断し(ステップS1)、条件を満たしていれば圧縮機10の運転を開始する(ステップS2)。また制御装置100は、第1送風機21及び第2送風機41をそれぞれ所定の回転数で作動させる。その後制御装置100は、冷却空気温度センサ42で検出される冷却空気温度が所定の温度Te1となるように圧縮機10の吐出容量を制御する。
【0028】
圧縮機10の運転開始から所定時間経過後、制御装置100は、吐出温度センサ11で検出される圧縮機10の冷媒吐出温度と設定温度(第1設定温度)Td2とを比較する(ステップS3)。吐出温度が設定温度Td2未満であればステップS1に戻り、吐出温度が設定温度Td2以上であればステップS4に進む。
【0029】
ステップS4では、制御装置100は、ガスクーラ20に送風する第1送風機21の回転数を増加させる(第2制御)。第1送風機21の回転数を増加させると、ガスクーラ20を通過する空気の風量が増加するため、ガスクーラ20における空気と冷媒との熱交換が促進される。これにより、ガスクーラ20出口での冷媒温度が低下するため、冷凍サイクルの状態がモリエル線図上で左方に移動し、結果として圧縮機10の冷媒吐出温度が低下する。ただし実際の運転状態では、種々の環境条件等の影響によって、第1送風機21の回転数を増加させても圧縮機10の冷媒吐出温度が狙い通りに低下しない場合もあり得る。
【0030】
第1送風機21の回転数を増加させてから所定時間経過後、制御装置100は、冷媒吐出温度と設定温度Td1、Td2(Td1<Td2)とを比較する(ステップS5)。吐出温度が設定温度Td1以下であれば、第1送風機21の回転数を元の回転数に減少させ(ステップS11)、ステップS1に戻る。吐出温度が設定温度Td1よりも高く設定温度Td2よりも低ければ、第1送風機21の回転数を維持してステップS1に戻る。吐出温度が狙い通り低下せず、設定温度Td2以上であれば、ステップS6に進む。
【0031】
ステップS6では、制御装置100は、蒸発器40に送風する第2送風機41の回転数を増加させる(第1制御)。第2送風機41の回転数を増加させると、蒸発器40を通過する空気の風量が増加するため、蒸発器40における冷媒の蒸発が促進され、冷凍サイクルの低圧が上昇する。このときの冷媒流量が、絞り装置30において高圧圧力がほぼ一定に保たれる冷媒流量の範囲内にあれば、圧縮後の冷媒状態はモリエル線図上で左方に移動し、冷媒吐出温度が低下する。
【0032】
図4は、冷凍サイクルの状態の一例を示すモリエル線図である。破線Bは第2送風機41の回転数を増加させる前の冷凍サイクルの状態を示し、実線Cは第2送風機41の回転数を増加させた後の冷凍サイクルの状態を示している。図4の破線Bで示す状態では、冷媒吐出温度が設定温度Td2よりも高くなっている。これに対し、実線Cで示すように、第2送風機41の回転数を増加させた後の状態では、冷凍サイクルの低圧が上昇することにより、圧縮前後の冷媒状態がモリエル線図上で左方に移動し、冷媒吐出温度が設定温度Td2未満まで低下している。
【0033】
ここで、第2送風機41の回転数を増加させると、蒸発器40を通過する空気の風速も増加する。空気の風速が増加すると、蒸発器40のチューブやフィンと空気との熱伝達が促進されて、熱交換量が増加し、蒸発温度が上昇する。これにより、冷却空気温度が上昇し、車室内への吹出温度が変動するため、車両用空調装置の快適性が低下してしまうおそれがある。本実施形態ではステップS6において、冷却空気温度の上限温度Te2(Te2>Te1)を設定し、冷却空気温度が上限温度Te2を超えない範囲で第2送風機41の回転数を増加させている。これにより、冷却空気温度の過度の上昇を抑制できるため、吹出温度の変動を抑制でき、車両用空調装置の快適性低下を防止できる。
【0034】
第2送風機41の回転数を増加させてから所定時間経過後、制御装置100は、冷媒吐出温度と設定温度Td1、Td2とを比較する(図3のステップS7)。吐出温度が設定温度Td1以下であれば、第2送風機41の回転数を冷却空気温度がTe1となるまで減少させ(ステップS12)、ステップS1に戻る。吐出温度が設定温度Td1よりも高く設定温度Td2よりも低ければ、第2送風機41の回転数を維持してステップS1に戻る。吐出温度が設定温度Td2以上であれば、ステップS8に進む。
【0035】
ステップS8では、制御装置100は、圧縮機10の吐出容量を低下させる(第3制御)。所定時間経過後、制御装置100は、冷媒吐出温度と設定温度(第2設定温度)Td3(Td3>Td2)とを比較する(ステップS9)。吐出温度が設定温度Td3未満であればステップS1に戻り、吐出温度が設定温度Td3以上であれば、圧縮機10を停止させ(ステップS10)、ステップS1に戻る。
【0036】
これらのステップS1〜S12は、冷凍サイクル装置1の運転が終了するまで繰り返される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定の流量範囲において冷媒の入口圧力をほぼ一定に保つ流量特性を有する絞り装置30が用いられた冷凍サイクル装置1において、第2送風機41の回転数を増加させて冷凍サイクルの低圧を上昇させることによって、圧縮機10の吐出温度を低下させることができる。したがって、圧縮機10の吐出容量を高く維持しながら圧縮機10の吐出温度保護を行うことができるため、冷凍サイクル装置1の冷凍能力の低下を抑制できる。また、車両用空調装置を快適に使用できる空調負荷領域を拡大することができるため、車両用空調装置の空調性能を向上できる。
【0038】
また本実施形態では、圧縮機10の吐出温度保護制御において、第1制御乃至第3制御を行う設定温度Td2が圧縮機10を停止させる設定温度Td3よりも低くなっている。したがって、圧縮機10の停止による冷凍能力低下を回避しつつ、圧縮機10の吐出温度保護制御を行うことができる。
【0039】
さらに本実施形態では、圧縮機10の吐出温度保護制御において、第2制御、第1制御及び第3制御をこの優先順位で行うようになっている。第2制御は、ガスクーラ20の風量を増加させているため、冷凍サイクル装置1の冷凍能力及び車両用空調装置の空調性能のいずれにもさほど影響を与えずに吐出温度の低下が図れる。第1制御は、蒸発器40の風量を増加させているため、車両用空調装置の空調性能に影響が出る場合がある。第3制御は、圧縮機10の吐出容量を低下させているため、冷凍サイクル装置1の冷凍能力及び車両用空調装置の空調性能の双方を低下させてしまう。したがって、第2制御、第1制御及び第3制御をこの優先順位で行うことによって、冷凍サイクル装置1の冷凍能力及び車両用空調装置の空調性能の低下を抑えつつ、圧縮機10の吐出温度保護を効果的に行うことができる。
【0040】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、低圧側熱交換器40を通過する風量を増加する手段として、第2送風機41の回転数を増加したが、通風路に設置されたドアなどの開度調整機構により、通風抵抗を下げて、風量を増加するなど、他の手段によってもよい。
【0041】
上記実施形態では、高圧側熱交換器20を通過する風量を増加する手段として、第1送風機21の回転数を増加したが、図示しない他の補助送風機を作動させて、風量を増加するなど、他の手段によってもよい。
【0042】
上記実施形態では、車両に搭載される車両用空調装置を例に挙げたが、車両用以外の空調装置にも適用できる。
【0043】
また上記実施形態では、蒸発器40によって空調空気を冷却して冷房を行う空調装置を例に挙げたが、図示しない追加された冷凍サイクル回路により、熱交換器20を蒸発器として、熱交換器40を放熱器として空調空気を加熱するヒートポンプ装置での冷房サイクル側にも適用できる。
【0044】
さらに上記実施形態では、CO冷媒を例に挙げたが、フロン系冷媒、HC系冷媒等の他の冷媒を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置の概略の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態における冷凍サイクル装置に用いられる絞り装置の流量特性の一例を示すグラフである。
【図3】第1実施形態における冷凍サイクル装置の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】冷凍サイクルの状態を示すモリエル線図である。
【符号の説明】
【0046】
1 冷凍サイクル装置
10 圧縮機
11 吐出温度センサ(吐出温度検出手段)
20 ガスクーラ(高圧側熱交換器)
21 第1送風機
30 絞り装置
40 蒸発器(低圧側熱交換器)
41 第2送風機
42 冷却空気温度センサ(冷却空気温度検出手段)
100 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(10)と、
前記圧縮機(10)から吐出された冷媒を空気との熱交換により冷却する高圧側熱交換器(20)と、
前記高圧側熱交換器(20)で冷却された冷媒を減圧する減圧手段(30)と、
前記減圧手段(30)で減圧された冷媒を空気との熱交換により蒸発させて前記圧縮機(10)に戻す低圧側熱交換器(40)と、
前記高圧側熱交換器(20)に空気を送風する第1送風機(21)と、
前記低圧側熱交換器(40)に空気を送風する第2送風機(41)と、
前記圧縮機(10)から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検出手段(11)と、
前記圧縮機(10)、前記第1送風機(21)及び前記第2送風機(41)を作動制御する制御手段(100)とを有し、
前記減圧手段(30)は、少なくとも所定の流量範囲において冷媒の入口圧力をほぼ一定に保つ流量特性を有しており、
前記制御手段(100)は、前記吐出温度が第1設定温度(Td2)を超えたとき、前記低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させる第1制御を行うことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記低圧側熱交換器(40)で冷却された空気の冷却空気温度を検出する冷却空気温度検出手段(42)をさらに有し、
前記制御手段(100)は、前記冷却空気温度が所定の上限温度(Te2)を超えない範囲で前記低圧側熱交換器(40)を通過する風量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御手段(100)は、前記吐出温度が第2設定温度(Td3)以上となったときに前記圧縮機(10)を停止させる制御を行い、
前記第1設定温度(Td2)は前記第2設定温度(Td3)よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御手段(100)は、
前記吐出温度が前記第1設定温度(Td2)を超えたとき、前記第1制御を行う前に、前記高圧側熱交換器(20)を通過する風量を増加させる第2制御を行い、
前記第2制御によって前記吐出温度が前記第1設定温度(Td2)よりも低下しなかったときに前記第1制御を行い、
前記第1制御によって前記吐出温度が前記第1設定温度(Td2)よりも低下しなかったときに、前記圧縮機(10)の吐出容量を低下させる第3制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
冷媒として二酸化炭素を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置を備えていることを特徴とする空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−116033(P2010−116033A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290219(P2008−290219)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】