説明

冷凍ピザ生地の製造方法、それにより得られる冷凍ピザ生地包装体及びそれを用いたピザの製造方法

【課題】容易に任意の形状のピザクラストを得ることができる冷凍ピザ生地の製造方法、及び、該製造方法により得られるハンドリング性に優れた冷凍ピザ生地包装体、それを用いた、所望の形状とトッピング材料を選択しうる簡易なピザの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)小麦粉、イースト、及び水を含有するピザ生地用材料を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地を円筒形に成形し、包装材料中に投入する生地投入工程と、(D)生地を投入した包装材料の内部を減圧して密閉する減圧包装工程と、(E)生地が投入され、減圧密閉された包装材料内のピザ生地を冷凍する冷凍工程と、を有することを特徴とする冷凍ピザ生地の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ピザ生地の製造方法、それにより得られる冷凍ピザ生地包装体及びそれを用いたピザの製造方法に関し、詳細には、家庭やレストランなどで手作り感覚で、簡単且つ任意に成形することができる応用範囲の広い冷凍ピザ生地とその製造方法、さらには、それを用いたピザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピザは、通常、小麦粉を主原料とし、オーブンで焼成することにより調製されたピザクラスト上に、ピザソースを塗布した後、魚介類、野菜類、肉加工品等の各種具材とチーズ片とをトッピングし、加熱、焼成して供されたり、未焼成の状態で、冷凍、チルドの状態で半製品として流通されている。
近年、食事の多様化にともない、手軽に食することができ、栄養価も高いピザが注目され、ピザ専門店のみならず、喫茶店や居酒屋などでもピザが提供されるようになり、それに伴い、前記したような通常用いられる具材のみならず、のりや明太子といった和風の具材も用いられるようになり、多様化が進んでいる。
【0003】
これらピザの食感や味に大きな影響を与えるピザクラストは、小麦粉、イースト、塩及び水を含有するピザ生地用材料をよく混練りし、発酵させて生地玉を調製し、その状態から、1枚ずつの生地塊に分割し、円盤状に成形して製造するものであり、発酵に際しての温度や時間の制御、或いは、柔らかい生地玉からクラストを成形するなど、煩雑な工程を要するため、家庭や専門店以外の店舗において実施するのは困難であった。
このため、飲食店や家庭などで好みのトッピングを行うことができる、冷凍やチルドで流通するピザクラストが汎用されている。
【0004】
このようなピザクラストの形状には、パンタイプの生地からなり、生地の周縁部が厚くなっているフチ付きタイプと、全体に均一の厚みの生地であって、薄くパリッとした感触のフラットタイプがあり、それぞれの特徴を生かして使用されているが、冷凍やチルドで流通しているピザクラストは、生タイプ、半焼成タイプのいずれも、厚みが3〜8mm程度の厚みが均一でフラットな円盤状ものが多く、バリエーションに乏しい。
ピザクラストのハンドリング性を向上させる目的で、金属箔上に成形済みピザクラストを載置してなるピザクラスト用冷凍生地(例えば、特許文献1参照。)や、ピザのカットを容易にする目的で、放射状のV字突状を底面に有する食型にピザ生地を充填して発酵させ、そのまま焼成するピザクラストの製造方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案されているが、これらもクラストの形状を変形しうるものではなかった。
このため、所望の形状のピザクラストを容易に成形することができ、家庭などでも容易に好みのピザを調製しうる、冷凍ピザ生地が求められている。
【特許文献1】特開2002−253110公報
【特許文献2】特開2000−102340公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮した本発明の目的は、保存性に優れ、家庭や飲食店で容易に任意の形状のピザクラストを得ることができる冷凍ピザ生地の製造方法、及び、該製造方法により得られるハンドリング性に優れた冷凍ピザ生地包装体を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、前記本発明の冷凍ピザ生地包装体を用いた、所望の形状とトッピング材料を選択しうる簡易なピザの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、生地の一次発酵を完了した後、所定の形状に成形した半生ピザ生地を包装体中に減圧状態で密閉することで、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下の構成を有する。
<1> (A)小麦粉、イースト、及び水を含有するピザ生地用材料を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地を包装材料中に投入する生地投入工程と、(D)生地を投入した包装材料の内部を減圧して密閉する減圧包装工程と、(E)生地が投入され、減圧密閉された包装材料内のピザ生地を冷凍する冷凍工程と、を有することを特徴とする包装材料に密閉された円筒形の形状を有するピザ生地の製造方法。
【0007】
<2> 前記(C)生地投入工程に使用する包装材料が、深絞り包装機により予め成形された凹部を有するボトムフィルムと、軟質のトップフィルムとからなる包装材料であることを特徴とする<1>に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
<3> 前記(C)生地投入工程において包装材料に生地を投入する際に、油脂類を添加することを特徴とする<1>又は<2>に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
<4> 前記(C)生地投入工程、又は、(D)減圧包装工程において成形されたピザ生地が直径100〜300mm、厚み5〜30mmの円筒形の形状を有することを特徴とする<1>乃至<3>のいずれか1項に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
【0008】
<5> (a)前記<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の冷凍ピザ生地の製造方法により得られた冷凍ピザ生地を、包装体のまま解凍する生地解凍工程と、(b)解凍した生地を包装体より取り出し、所望の形状に成形してピザクラストを得るピザクラスト成形工程と、(c)成形したピザクラストに具材をトッピングし、焼成を行う焼成工程と、を有することを特徴とするピザの製造方法。
<6> 前記(d)焼成工程において、240℃〜400℃の温度範囲のオーブンで、1分〜4分間焼成することを特徴とする<5>に記載のピザの製造方法。
<7> 深絞り包装機により予め成形されたボトムフィルムとトップフィルムからなる包装容器内に、発酵済みであり、直径100〜300mm、厚み5〜30mmの円筒形に成形された冷凍ピザ生地が減圧密閉されてなる冷凍ピザ生地包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、家庭や飲食店で容易に任意の形状のピザクラストを得ることができる冷凍ピザ生地の製造方法、及び、該製造方法により得られるハンドリング性に優れた冷凍ピザ生地包装体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、前記本発明の冷凍ピザ生地包装体を用いることで、所望の形状とトッピング材料を選択しうる簡易なピザの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の冷凍ピザ生地の製造方法は、(A)小麦粉、イースト、及び水を含有するピザ生地用材料を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地をピザ1枚分の量に分割し、包装材料中に投入する生地分割、投入工程と、(D)生地を投入した包装材料の内部を減圧して密閉する生地減圧包装工程と、(E)生地が投入され、密閉された包装材料内のピザ生地を冷凍する冷凍工程と、を有することを特徴とする。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
<(A)生地調製工程>
本発明の製造方法に好適に用いうるピザ生地材料としては、少なくとも、小麦粉、イースト、及び水を含み、所望により食塩やその他の調味料、香味剤、油脂類などを含む。
イーストは、一般にパン生地の調製に使用されるドライイースト、生イーストなどを適宜選択して用いることができるが、食感の観点からは、天然酵母を含むものが好ましい。イーストは、生地材料中に0.3〜5質量%程度含まれるのが一般的である。
【0012】
小麦粉は、薄力粉、強力粉、両者の混合物などを用いることができるが、得られるピザ生地の食感の観点からは強力粉を用いることが好ましい。
使用されるピザ生地の原料の配合割合は特に限定されず、適宜設定できるが、小麦粉は、生地材料における主成分であり、50〜70質量%含まれるのが一般的であり、好ましくは52〜67質量%、さらに好ましくは55〜65質量%の範囲である。
【0013】
また、通常は小麦粉50〜70質量%に対して、イーストを0.5〜3.5質量%、その他の成分として、塩を0.5〜3.0質量%、水を30〜45質量%の割合で配合することが好ましい。
【0014】
ピザ生地には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、食感の向上や生地の取り扱い性向上の観点から、パンなどの小麦粉を含む生地に汎用される種々の材料を含むことができる。また、風味を調整するための調味料を含むことができる。
具体的には、例えば、イーストフード、油脂類、乳製品、乳化剤、ビタミンCなどが挙げられる。調味料としては、塩、砂糖などが用いられ、風味付けのため、各種香辛料、ハーブ(香味植物)などを配合することもできる。
また、もちもち感を向上させるため、マンナンを主成分とする増粘多糖類や、でん粉、好ましくは小麦粉でん粉、米粉でん粉等、を倍量以上の熱湯に溶解させた食品用糊剤などを使用することもできる。
他の材料の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、通常は小麦粉100質量部に対し、イーストフード0〜0.1質量部、安定化剤としてのビタミンC0〜0.1質量部の範囲であることが好ましい。また、調味料としての砂糖0〜5質量部を所望により添加することができる。
【0015】
これらの材料を均一に混合することで、生地を調製するが、混合(ミキシング)に際しては、例えばミキサー等の公知のミキシング装置を使用することができる。
ミキシングを行って生地を調製する際の作業環境としては、特に限定されないが、通常は、温度が20〜30℃、好ましくは、22〜28℃程度、湿度が60〜80%程度の雰囲気下で行われることが好ましい。
ミキシング時間は特に限定されず、ミキシングする原料の量、その他の条件等に応じて適宜設定できるが、40〜80rpmの速度で、5〜15分間程度攪拌されることが好ましく、このような条件でミキシングすることで、生地の伸展性向上などの効果が得られる。
このようにして生地の調製を行う。
【0016】
<(B)生地発酵工程>
(B)工程では、前記(A)工程で調製されたピザ生地を発酵させる。
第1の発酵における発酵室の温度は20〜40℃の範囲であることが好ましく、使用するイーストの働きを適正化するという観点からは、さらに好ましくは、25〜38℃の範囲である。
また、発酵時間は0.2〜2時間の範囲であれば特に制限されず、使用するイーストの種類、生地の組成、発酵温度等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは0.3〜1時間の範囲である。
【0017】
発酵室の湿度は、イーストの働きを適正化するという観点から、高湿度であることが好ましく、具体的には、湿度60RH%以上、さらに好ましくは、70〜100RH%の範囲である。
発酵室条件を前記範囲とすることにより、生地の効率的な発酵が行われる。
生地の発酵による膨脹倍率は限定的ではないものの、通常は発酵前の体積と比較して1.5〜3倍程度となることが好ましい。このような膨張倍率となったときに、第1次発酵を終了させればよい。
【0018】
次に、1次発酵済みの生地を、ピザ1枚分に分割し、生地丸目を行った後、2次発酵を行う。
第2の発酵(2次発酵)における発酵室の温度は、1次発酵と同様、20〜40℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、25〜38℃の範囲である。
また、発酵時間は0.01〜2時間の範囲であれば特に制限されず、使用するイーストの種類、生地の組成、発酵温度等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは0.3〜1時間の範囲である。
発酵室の湿度は、2次発酵においても、高湿度であることが好ましく、具体的には、湿度60RH%以上、さらに好ましくは、70〜100RH%の範囲である。
【0019】
2次発酵は、冷蔵発酵により行うことも可能であり、冷蔵発酵の条件としては、室温10℃以下、好ましくは、0〜5℃の温度条件下、0.5〜48時間にわたって行われることが好ましい。冷蔵発酵の場合、湿度は特に制限されないが、50〜80RH%の範囲であることが好ましい。
【0020】
<(C)生地投入工程>
(B)工程において醗酵を行った生地玉を、包装材料に投入する。
本発明においては、最終的に得られるピザ生地は円筒形の形状を有する。生地を円筒形とすることで、ピザ生地の解凍後、ピザクラストの成形が容易に行える。即ち、発酵後の略球形の生地玉を円盤状の均一なピザクラストに成形するのには熟練を要するが、円筒形とした場合には、調理台において生地を麺棒などでシート状に延伸するなどの簡易な作業により、容易に表面形状が円形の平板状に成形することが可能となる。
ピザ生地は、本工程において予め円筒形に成形した後、包装材料に投入してもよく、また、略円筒形に成形したピザ生地を金型上に配置された状態の包装材料に投入し、後述する減圧包装工程において最終的に円筒形に成形してもよく、また、ピザ生地を所定量とり、金型上に配置された状態の包装材料に投入し、後述する減圧包装工程において金型中で円筒形に成形してもよい。
【0021】
包装材料に生地を投入する際に、所望によりピザ生地に油脂類を添加するもできる。
ここで用いうる油脂類の種類は特に限定されず、ピザ生地の所望の食感や食味により、通常、パンなどの製造に用いる油脂を任意に選択して使用することができ、例えば、大豆油、菜種油、米油、綿実油などの植物性油脂、植物油脂を乳化してなる製パン用マーガリンや市販のベーカリークリーム、バター、ショートニングなどの動物性油脂などが挙げられる。
油脂類の添加量、添加方法にも特に制限はないが、生地玉に0〜15質量%程度、練り込む方法、円筒形の生地の表面に0.01〜0.05g/cm程度を刷毛などで塗布する方法、スポイトで生地表面に0.3g/個程度滴下する方法などが挙げられる。
【0022】
本発明において冷凍ピザ生地に用いられる包装材料は、減圧包装が可能であれば特に制限はなく、フィルムにより形成された袋やチューブ、箱状のものなどいずれの形態もとりうるが、搬送中、或いは、使用時に生地を解凍する際に、生地を好ましい円筒形に維持しうる点、ハンドリング性に優れるという点から、深絞り包装機により予め成形された凹部を有するボトムフィルムと、軟質のトップフィルムとからなる包装材料であることが好ましい。
【0023】
以下、好ましい包装材料である深絞り包装機により予め成形された凹部を有するボトムフィルムと、軟質のトップフィルムとからなる包装材料を用いた場合の工程の詳細について説明する。
【0024】
この包装材料は、円筒形のピザ生地を収納するのに適した凹部を有するように予め成形されたボトムフィルム内に円筒形の生地を投入し、熱と圧力によって軟質のトップフィルムをボトムフィルムに固定して、内部を減圧した密封容器とするものである。
ボトムフィルムの素材としては、未延伸フィルムが好ましく、軟質フィルムとしては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等から選択される単層フィルムやこれらのうち2種以上を積層した多層フィルムなどを用いることができる。硬質フィルムとしては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン等から選択される単層フィルムや、これらの硬質フィルムにポリエチレン等を積層した多層フィルムなどを用いることができる。
【0025】
このボトムフィルム素材である樹脂フィルムを、深絞り成形包装機に備えられたステーション内で熱し、真空及び圧縮空気によって型(インサート)の形状に成形する。生地投入後、トップフィルムを熱接着により固定化することを考慮すれば、素材フィルムとして熱接着可能な素材を使用するか、或いは、フィルムの表面(トップフィルムとの接着面)に熱接着性に優れたシーラント層を備えるものが好ましい。
フィルムの厚みには特に制限はないが、形状保持性、製品の品質保持の観点から、100〜250μmのものが好ましく、120〜150μmであることがさらに好ましい。
【0026】
成形方法としては、圧空成形、圧空真空成形、プレヒーティングを伴った成形等の手段を適用して行うことができる。成形時の温度としては、80〜140℃程度が好ましく、例えば、素材としてポリエチレンが主体のフィルム或いはポリエチレンをシーラント層として用いる場合は、80〜110℃程度が好ましく、素材としてポロプロピレンが主体のフィルム或いはポリプロピレンをシーラント層として用いる場合は、110〜140℃程度であることが好ましい。成形圧力は、通常、約7kg/m(直圧)前後であり、目的に応じて2〜10kg/mの範囲で適宜選択できる。
成形済みのボトムフィルムの凹部に、2次醗酵を行い、円筒形に成形したピザ生地を投入する。この際に、必要に応じて、前記の如き、生地に油脂類を添加する工程を行う。
【0027】
<(D)減圧包装工程>
(C)工程で包装材料、好ましくは成形済みボトムフィルムの凹部に、ピザ生地を投入した後、ボトムフィルムにトップフィルムを被覆し、減圧しながらボトムフィルムとトップフィルムとを接着して包装を行う。
この減圧包装工程の途上において、最終的にピザ生地は所定の円筒形状に成形される。
ピザ生地の形状は、前記した如く、クラスト成形容易性の観点から、目的とするピザクラストの厚みの1.5〜10倍程度の厚みの円筒形とすることが好ましく、具体的には、直径100〜300mm、厚み5〜30mmの円筒形の形状に成形することが好ましく、直径100〜200mm、厚み5〜20mmの円筒形の形状とすることがさらに好ましい。
ピザ生地の投入に際し、ボトムフィルムは凹部の成形に使用された型に配置された状態であり、ピザ生地を投入後、減圧する際に、ピザ生地もまた、型に適合する形状に成形される。この方法によれば、予め円筒形に成形して包装材料に投入するよりも、簡易に、目的とする均一な円筒形に容易に成形できる。
【0028】
トップフィルムに使用するフィルム素材としては、延伸された軟質フィルムが好ましく、例えば、一軸延伸ポリエステル、二軸延伸ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等から選択された基材フィルムと、熱接着性に優れたポリエチレン等のシーラント層とを貼り合わせた多層フィルムが好ましく用いられる。
フィルムの厚みには特に制限はないが、ピザ生地の品質保持の観点から、65〜100μmのものが好ましく、75〜90μmのものがさらに好ましい。
トップフィルムは、視認性の観点からは透明なものが好ましいが、これに限定されず、フィルムに商品名などを印刷したものを用いることもできる。
【0029】
成形されたボトムフィルムを、熱と圧力によってこのようなトップフィルムに固定させ、容器内を減圧して密封包装とする。
減圧条件としては、強真空〜緩慢真空〜弱真空まで圧力制御により可能であり、真空圧力制御範囲は100〜99,900Pa(1〜999mbar)の範囲である。完全な真空状態に近い状態に減圧した後、そのまま密閉してもよく、包装容器内を減圧(真空に)した後、一定気圧まで不活性ガスなどのガス充填を行って空気を除去した後、密閉包装することもできる。
生地の鮮度保持の観点から、減圧してガス充填を行わない場合には、減圧条件は100〜1500Pa(1〜15mbar)程度とすることが好ましい。
【0030】
容器内にガス充填する場合に使用するガスの種類は、内容物と希望保存期間により適宜選択できるが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス、アルコール入り炭酸ガスなどの滅菌効果のあるガス、酸素、二酸化炭素などが挙げられ、これらを目的に応じて選択すればよい。カス充填を行う場合の減圧条件は、20,000〜70,000Pa(200〜700mbar)であることが好ましい。
密封は加圧による熱シールによることが好ましく、ボトムシール、トップシールの種類や熱特性にもよるが、一般に温度120〜170℃の範囲で行われ、より具体的には、トップフィルム基材或いはそのシーラント層として一般的なポリエチレンを使用する場合には、120〜130℃の範囲であることが、超低密度ポリエチレンを使用する場合には、130〜150℃の範囲であることが、ポリプロピレンを使用する場合には、150〜170℃の範囲であることが好ましい。
また、加圧条件もシーラント層の材質により異なるが、一般的には4kg/m〜6kg/mの範囲であることが好ましい。
【0031】
密封された包装容器は、通常、深絞包装装置により、ロール状のフィルムから製造されるため、これを縦・横のカッティング装置で、通常は1点ずつにカットすることで、個装されたピザ生地包装体を得る。
包装材料を個別にカットする方法としては、切断されるボトムフィルム材料が軟質フィルムの場合、クロスカット、即ち、フィルムの搬送方向に垂直に切断する方法として、ギロチン式ストレートカット、ギロチン式ジグザグカット、圧縮方式コーナーRカット、完全抜きカットなどの方法が挙げられ、縦カット、即ち、フィルム搬送方向に複数の凹部を有する場合の個別カットや、側面フィルムのカットにおいて搬送方向に平行にカットする手段としては、ロータリーナイフ、押し切りナイフ、シェアカット(ハサミ切り)などの手段から選択することができる。
【0032】
ボトムフィルムに硬質フィルムを用いた場合、クロスカットとしては、コーナーカット、ストリップパンチ(部分オスメスカット)、コンプリートカット(オスメス完全抜きカット)、から選択される手段により行うことができるが、基本的にはパックの各コーナーにRをとるカット方法が採用される。また、縦カット方法としては、軟質フィルムを用いた場合と同様に、ロータリーナイフ、押し切りナイフ、シェアカットから選択される手段により行えばよい。
包装体のカット方法には、その他所望により、ミシン目、Iノッチ、ハンガーホール等を形成するようなカット装置を付加することもできる。
このようにして、包装材料内に円筒形のピザ生地が内包され、真空或いはガス充填されたピザ生地包装体が得られる。
【0033】
前記(C)工程及び(D)工程は、市販の深絞包装装置を用いて連続的に行うことができ、本発明に適用しうる装置としては、ムルチバック社製深絞包装機R140、R240、R530等が挙げられる。
【0034】
<(E)冷凍工程>
(C)工程、(D)工程を経て得られたピザ生地包装体を、冷凍する。ピザ生地の冷凍は、一般的な急速冷凍を用いて行うことができる。
このようにして得られた冷凍ピザ生地は、所定の搬送用箱などに収納され、冷凍状態のまま流通させる。
本発明の方法により得られる本発明の冷凍ピザ生地包装体は、包装容器のまま流通、保存することができ、内部のピザ生地の鮮度保持性、及び、ハンドリング性に優れる。
【0035】
以下、このピザ生地包装体を用いて、ピザを製造する方法について説明する。
本発明のピザの製造方法は、(a)前記した本発明の冷凍ピザ生地の製造方法により得られた冷凍ピザ生地を、包装体のまま解凍する生地解凍工程と、(b)解凍した生地を包装体より取り出し、所望の形状に成形してピザクラストを得るピザクラスト成形工程と、(c)成形したピザクラストに具材をトッピングし、焼成を行う焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0036】
<(a)生地解凍工程>
本発明の製造方法により得られた冷凍ピザ生地を用いてピザを製造する場合、包装容器のまま解凍すればよい。解凍されて柔軟となったピザ生地は任意の形状に成形することができる。解凍は常法で行うことができ、例えば、常温の雰囲気下に配置する方法、包装容器ごと流水に浸漬する方法、電子レンジにて解凍する方法、冷蔵温度帯で解凍する方法などが挙げられるが、生地状態を適切に維持するといった観点から、常温又は冷蔵温度帯での解凍方法をとることが好ましい。
本発明の冷凍ピザ生地包装体は、個別包装であり、家庭などでは、使用する1枚分を解凍して用いればよく、また、飲食店にて使用する場合にも、店の規模に応じて必要枚数を解凍すればよい。また、包装体のボトムフィルムは保形性、強度に優れるため、重ねて保存ができ、冷凍庫内でもコンパクトに収納しうるため、ハンドリング性に優れる。
【0037】
<(b)クラスト成形工程>
解凍された円筒形の生地は、柔軟性を有するため、そのまま麺棒などで延伸することで容易に円盤状のピザクラストが成形される。また、円盤状にする際の厚みや延伸状態を任意に選択できるため、所望により、均一な厚みの平板状のクラスト、生地の周縁部が厚くなっているフチ付きタイプのクラスト、全体が薄くぱりっとした食感が得られるフラットタイプなど、いずれの形状にも容易に成形することができる。
このため、通常市販されている、生タイプ、焼成タイプのピザ生地に比較して様々な変形例が可能となり、飲食店での利用にも適している。
ピザクラストの厚みには制限はないが、通常は、1〜15mmの範囲のものが好ましく用いられる。
【0038】
<(c)焼成工程>
(c)成形したピザクラストに具材をトッピングし、焼成を行ってピザが完成する。
使用される具材は任意であり、チーズ、野菜類、魚介類、肉加工品などから任意に選択して使用することができる。また、ピザソース、トマトソースなどを用いることもできる。具材のなかでも、プロセスチーズ、ナチュラルチーズなどから選択される材料からなる所謂シュレッドチーズと呼ばれる厚さ0.5〜2mm、幅3〜7mm、長さ5〜20mm程度の小短冊状チーズ片を用いるのが一般的である。
焼成に係る条件は、ピザ生地の配合などにより適宜選択されるが、一般的には、240℃〜450℃の温度範囲のオーブンで、1.5〜7分間焼成することが好ましい。
本発明のピザ生地包装体を用いることで、特段の技術も必要とせず、所望の形状のピザクラストを手軽に成形できるため、家庭においては、手軽に手作りピザを作る楽しさを味わうことができる。また、飲食店においては、個性的な種々の形状や味のピザのメニューを容易に提供することができるという利点を有する。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において特に断らない限り「部」は「質量部」を示すものとする。
【0040】
(実施例1)
<(A)ピザ生地の調製>
クラスト生地原料として、強力粉1000g、水600g、食塩15g、砂糖10g、植物油10g及びイースト20gをミキサーにより、20〜30℃の温度条件下、低速で3分間混合し、その後、ミキサーの回転速度を80rpmに上げて5分間混合してピザクラスト生地を調製した。
<(B)発酵工程>
この生地を湿度75%RH,温度30℃の発酵室内で10分間発酵させた後、所定の重量に分割した生地玉を得た。生地が膨張したところで、所定のサイズの天板にのせ、30℃70%RHの条件で、10分間二次発酵させた後、以下の包装材料に投入し、減圧することで型に適合した直径150mm、厚み10mmの円筒形に成形される。
【0041】
<(C)〜(D)生地投入、減圧包装工程>
成形後の生地を、ムルチバック社製深絞包装機R240により、以下の包装材料を用いて個別包装し、図1に示すようなピザ生地包装体10を得た。
使用した包装用フィルムは以下に示すとおりである。
ボトムフィルム:ポリアミド/ポリエチレン/離型剤コート(厚み:150μm)
トップフィルム:ポリアミド/ポリエチレン(離型剤添加イージーピール)(厚み:80μm)
凹部形状、直径150mm、深さ10mmの円筒状凹部
減圧条件:500〜1,000Pa(5〜10mbr)
【0042】
図1は、実施例1のピザ生地包装体10を示す斜視図であり、この状態で冷凍することで本発明の冷凍ピザ生地を得る。ピザ生地包装体10は、予め円筒形の凹部を形成したボトムフィルム12内にピザ生地14を投入し、減圧しながらトップフィルム16とボトムフィルム12とを密閉して得たものである。
図2は、図1に示すピザ生地包装体10の断面図を示す。
<(E)冷凍工程>
得られたピザ生地包装体を−40℃の急速凍結機で凍結後、12個つづダンボール製の箱にいれて180日間−20℃で保存した。保存後の包装体については、外観上の変化は見られなかった。
【0043】
<(a)生地解凍工程>
このようにして得られた冷凍ピザ生地包装体を1個取りだし、3℃で12時間放置して解凍した。
<(b)ピザクラスト成形工程>
解凍したピザ生地を容器のトップフィルムを剥離して取りだしたところ、柔軟性を有するピザ生地は、密封包装完了前の円筒形の形状を維持していたため、これを麺棒にて延伸し、円形で厚さ3mmのピザクラストに成形した。
<(c)焼成工程>
ピザクラストに、チーズ片、ピザソースをトッピングし、オーブンレンジを用い、250℃で9分間加熱調理してピザパイを得た。
【0044】
<使用試験>
本発明の方法により得られた実施例1の冷凍ピザ生地を用いて、ピザクラスト成形の容易性についてアンケートを実施した。
アンケート方法は、30名のアンケート対象者に、実施例1の冷凍ピザ生地を解凍して得られた円筒形の生地から所望の形状のピザクラストを成形してもらい、その容易性について評価させる方法により行った。その結果、27名が、容易に自分の求めている形状のクラストを成形できたと答えた。
アンケートは、20代〜50代の男女計30人に対して行い、クラスト成形後、直ちに面接調査による聞き取りを行う方法をとった。
なお、30人中、縁つきタイプを成形したモニターは22名、フラットタイプのクラスト成形したモニターは8名であった。
この結果より、本発明の冷凍ピザ生地の製造方法により得られた冷凍ピザ生地を用いることで、手軽に好みの形状のクラストを成形できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で得られたピザ生地包装体を示す斜視図である。
【図2】実施例1で得られたピザ生地包装体を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)小麦粉、イースト、及び水を含有するピザ生地用材料を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地を包装材料中に投入する生地投入工程と、(D)生地を投入した包装材料の内部を減圧して密閉する減圧包装工程と、(E)生地が投入され、減圧密閉された包装材料内のピザ生地を冷凍する冷凍工程と、を有することを特徴とする包装材料に密閉された円筒形の形状を有する冷凍ピザ生地の製造方法。
【請求項2】
前記(C)生地投入工程に使用する包装材料が、深絞り包装機により予め成形された凹部を有するボトムフィルムと、軟質のトップフィルムとからなる包装材料であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
【請求項3】
前記(C)生地投入工程において包装材料に生地を投入する際に、油脂類を添加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
【請求項4】
前記(C)生地投入工程、又は、(D)減圧包装工程において成形されたピザ生地が直径100〜300mm、厚み5〜30mmの円筒形の形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷凍ピザ生地の製造方法。
【請求項5】
(a)前記請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の冷凍ピザ生地の製造方法により得られた冷凍ピザ生地を、包装体のまま解凍する生地解凍工程と、(b)解凍した生地を包装体より取り出し、所望の形状に成形してピザクラストを得るピザクラスト成形工程と、(c)成形したピザクラストに具材をトッピングし、焼成を行う焼成工程と、を有することを特徴とするピザの製造方法。
【請求項6】
深絞り包装機により予め成形されたボトムフィルムとトップフィルムからなる包装容器内に、発酵済みであり、直径100〜300mm、厚み5〜30mmの円筒形に成形された冷凍ピザ生地が減圧密閉されてなる冷凍ピザ生地包装体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−118874(P2008−118874A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303950(P2006−303950)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(397030145)株式会社ジェーシー・コムサ (2)
【Fターム(参考)】