説明

冷凍装置および冷凍方法

【課題】冷凍槽内で被冷凍物を均斉に冷却することができ、冷凍時間を短縮することができ、被冷凍物の鮮度を容易に保持できる冷凍装置および冷凍方法を提供する。
【解決手段】冷凍槽13内の冷凍用液cで被冷凍物Wを冷凍させる冷凍装置本体10において、冷凍用液c内に気泡aを発生させる気泡発生器30が設けられている。この気泡発生器30が、空気を吸入する空気吸入部31と、冷凍槽13内の冷凍用液cに配設され、空気を気泡化する気泡化部34と、空気吸入部31で吸入された空気を、気泡化部34に送り出す空気送出部33とから構成されており、空気吸入部31が、冷凍槽13内における冷凍用液cの液面上における密閉空間内に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置および冷凍方法に関する。さらに詳しくは、魚介類や食肉等の食品やその他種々の物品を冷凍する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術1として特許文献1に記載の冷凍装置がある。この従来技術は、冷凍装置によって冷却されるブラインを備蓄するブライン槽と、冷凍室内の空気を上記ブラインで冷却させる冷却器と、冷凍室内に空気を循環させる可変速ファンと、上流側に設けた温度センサと、貯蔵品棚とを備えたものである。
このように、ブライン槽と冷凍室を個別に設けた装置では、それぞれがスペースを占有するので、設備が大掛かりになり、設備コストも高くなる。そこで、ブライン槽に直接、被冷凍物を入れて冷凍する従来技術が登場した。
【0003】
上記従来例2の冷凍装置を図3に基づき説明する。
同図に示すように、冷凍槽13には、ブライン液などの冷凍用液cが入れられている。
この冷凍槽13には、循環用パイプ22の両端が連結されており、この循環用パイプ22内を冷凍用液cが通るようになっている。また、循環用パイプ22の送出口には、冷凍槽13の内部において、パイプに複数の送出孔24hが形成された送出パイプ24が連結されている。前記循環用パイプ22にはポンプ23が設けられており、このポンプ23によって、冷凍用液cを循環用パイプ22に通して循環させることができる。そして、冷凍機11によって冷却された冷却液は、熱交換器12内の冷液パイプ11Pを循環するようになっており、冷凍槽13に通ずる循環用パイプ22と熱交換するようになっている。したがって、ポンプ23によって、冷凍槽13には冷却された直後の冷凍用液cを常時送ることができ、冷凍槽13内の冷凍用液cによって被冷凍物Wを冷凍させることができる。
【0004】
しかるに、従来例2では、以下の問題点がある。
(i)冷凍槽13内において、送出パイプ24の送出孔24hの近くに位置する被冷凍物Wは、熱交換器12で冷却された低温の冷凍用液cによって冷却されやすいので、冷凍が完了するまでの冷凍時間が短いが、逆に送出孔24hから離れて位置する被冷凍物Wは、冷凍用液cによって冷却されにくいので、冷凍が完了するまでの冷凍時間が長くなる。このため、冷凍槽13内における被冷凍物の位置によって、冷凍時間のバラツキが大きく、被冷凍物を均斉に冷凍することができない。
(ii)送出孔24hから離れている被冷凍物Wに対しては、図4に示すように、その表面の近くのx領域では冷凍用液cがほとんど移動しないので、熱伝導でしか熱が移動せず熱の移動量が少ない。また、被冷凍物Wの表面から離れたy領域では対流が生じるが、この対流は冷凍用液cが温かくなったものが上昇して生じるものであるから、動きが緩やかである。よって、被冷凍物部Wからの熱の放出には時間がかかるので全ての被冷凍物の冷凍が完了するまでの時間は、長くなる。また、冷却までの時間が長いことから、細胞破壊を招来しやすくなり、鮮度の保持が容易でない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−325665号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑み、冷凍槽における被冷凍物の位置によらず被冷凍物を均斉に冷却することができ、冷凍時間を短縮することができ、被冷凍物の鮮度を容易に保持できる冷凍装置および冷凍方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の冷凍装置は、冷凍槽内の冷凍用液で被冷凍物を冷凍させる装置において、前記冷凍用液中で気泡を発生させる気泡発生器が設けられたことを特徴とする。
第2発明の冷凍装置は、第1発明において、前記気泡発生器が、空気を吸入する空気吸入部と、前記冷凍槽内の冷凍用液中に配設され、空気を気泡化する気泡化部と、前記空気吸入部で吸入された空気を、前記気泡化部に送り出す空気送出部とからなり、前記空気吸入部が、前記冷凍槽内における冷凍用液の液面上における密閉空間内に配設されたことを特徴とする。
第3発明の冷凍装置は、第2発明において、前記空気吸入部が、液体を吸引せず空気のみ吸引する吸引フィルターを備えたことを特徴とする。
第4発明の冷凍方法は、冷凍槽内の冷凍用液で被冷凍物を冷凍させる方法において、
前記冷凍用液中に気泡を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、気泡発生器によって、冷凍槽内の冷凍用液中に気泡を発生させると、冷凍用液中を気泡が上昇することにより、冷凍用液を対流させ撹拌させることができ、また、気泡が被冷凍物の表面の温度境界層を撹乱することによって熱伝達性能が向上するので、冷凍槽内の全ての被冷凍物に、冷温の冷凍用液を接触させることができる。このため、冷凍槽における被冷凍物の位置によらず、被冷凍物を均斉に冷却することができ、冷凍完了までの時間を短縮することができる。この結果、被冷凍物の細胞破壊を防止でき、被冷凍物の鮮度を容易に保持することができる。
第2発明によれば、空気吸入部が、冷凍槽内における冷凍用液の液面上における密閉空間内に配設されているので、冷却された低温の空気を吸引することができる。このため、低温の空気を冷凍槽内の冷凍用液に送り出すことができ、熱損失を抑制でき効率的に冷凍することができる。
第3発明によれば、空気吸入部によって液体を吸引せず空気のみ吸引でき、液面上に浮上した気泡が破裂したときに飛散する液滴をパイプ内に吸引するのを防止できる。また、冷却された空気のみを吸引できるので、パイプが冷凍槽で冷却されても、凝縮水の氷結によるパイプ結まりを抑制することができる。
第4発明によれば、気泡発生器によって、冷凍槽内の冷凍用液の内部に気泡を発生させると、冷凍用液を対流させ撹拌させることができ、冷凍槽内の全ての被冷凍物に、同じくらいの温度の冷凍用液を接触させることができる。このため、冷凍槽における被冷凍物の位置によらず被冷凍物を均斉に冷却することができる。しかも、気泡を発生させることにより、冷凍用液を対流させることができ、より低温の液を被冷凍物に接触し続けることができるので、冷却効果が高くなり、冷凍完了までの時間を短縮することができる。この結果、被冷凍物の細胞破壊を防止でき、鮮度を容易に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る冷凍装置1のブロック図である。同図に示すように、本実施形態の冷凍装置1は、冷凍装置本体10と気泡発生器30とからなる。冷凍装置本体10は、冷凍槽13内の冷凍用液cで被冷凍物Wを冷凍させる基本装置であり、気泡発生器30は、冷凍用液c中で気泡aを発生させるため、付加的に設けられたものである。
【0010】
まず、冷凍装置本体10を説明する。この冷凍装置本体10は、冷凍機11、熱交換器12、冷凍槽13および液循環部20から構成されている。
【0011】
前記冷凍機11は、例えば冷媒蒸発温度が−35℃程度の冷凍機である。この冷凍機11によって冷却された冷媒液は、冷媒パイプ11Pを循環するようになっている。そして冷媒パイプ11Pの一部は、後述する熱交換器12内を通過するように配設されている。
【0012】
前記熱交換器12は、例えばプレート熱交換器であり、この熱交換器12によって、冷媒パイプ11Pと循環用パイプ22との間で、熱量を交換できる。
なお、熱交換器12は、プレート熱交換器だけでなく、多管式の熱交換器など、種々の熱交換器を採択しうる。
【0013】
前記冷凍槽13は、例えばブライン槽が用いられ、その内部にブライン液等の冷凍用液cを入れておく槽である。冷凍用液cは、例えばブライン液であり、氷点下でも凍らず液体の状態のものであり、例えば魚介類や肉等の食品などの被冷凍物Wを冷凍することができる。なお、ブライン液としては、塩水などの塩化物溶液及びエチルアルコールなどであってもよい。
【0014】
前記液循環部20は、循環用パイプ22、ポンプ23および送出パイプ24から構成されたものであり、冷凍用液cを冷凍槽13と熱交換器12の間で循環させる部分である。
【0015】
前記循環用パイプ22は、例えばステンレス管であり、この循環用パイプ22の吸入口および送出口は、冷凍槽13に連結されており、ポンプ23によって、冷凍槽13内の冷凍用液cを循環させることができる。
なお、循環用パイプ22の吸入口を冷凍槽13の上部に取り付け、循環用パイプ22の送出口を冷凍槽13の下部に取り付けるとよい。この場合、より低温の冷凍用液cを冷凍槽13の下部に送り出すことができるので、被冷凍物Wを効率的に冷却することができる。
【0016】
前記循環用パイプ22の送出口には、冷凍槽13内において、送出パイプ24が連結されている。この送出パイプ24には、多数の送出孔24hが形成されており、冷凍用液cを冷凍槽13内に送り出すことができる。
【0017】
上記のごとき構成の冷凍装置本体10によって、冷凍槽13内部に被冷凍物Wを入れておけば、被冷凍物Wを冷凍することができる。
【0018】
つぎに、気泡発生器30を説明する。
前記冷凍装置本体10には、気泡発生器30が設けられている。この気泡発生器30は、空気吸入部31、パイプ32、空気送出部33および気泡化部34から構成されたものである。
【0019】
前記空気吸入部31は、液体を吸引せず低温の空気のみ吸引できる吸引フィルターである。このため、液面上に浮上した気泡が破裂したときに飛散する液滴をパイプ32内に吸引するのを防止できる。また、空気のみを吸引できるので、パイプ32が冷凍層13で冷却されても、凝縮水の氷結によるパイプ結まりを抑制することができる。
【0020】
前記空気吸入部31は、冷凍槽13内における冷凍用液cの液面上における密閉空間内に配設されている。このため、冷却された低温の空気を冷凍槽13内の冷凍用液cに送り出すことができ、熱損失を防止でき効率的に冷凍することができる。
【0021】
前記空気吸入部31には、例えばステンレス管等のパイプ32によって、空気ポンプ等の空気送出部33が接続されている。このため、空気送出部33によって、前記空気吸入部31から吸入された空気を、パイプ32を通してその他端に送ることができる。なお、符号35はドレーンである。
【0022】
前記パイプ32の他端には、気泡化部34が連結されている。この気泡化部34は、例えば多数の気泡用孔34hが管部に形成された気泡発生管であり、前記冷凍槽13の内部に配設されている。
この気泡化部34によって、パイプ32内部の空気を気泡化して、冷凍槽13の内部に気泡aを発生させることができる。
【0023】
またこの気泡化部34は、冷凍槽13の底部に気泡化部34を配設するとよく、この場合、冷凍用液cの下部から上部まで全体に気泡を通過させることができ、気泡aによる対流を発生させやすくすることができるので好適である。
【0024】
前記気泡発生器30によれば、空気送出部33によって空気吸入部31から吸入した空気を、気泡化部34で気泡化して冷凍用液cに送り、冷凍用液c中に気泡aを発生させることができ、この気泡が大きな冷凍効果を生ずる。
【0025】
上記の装置を用いて、魚介類や食肉等の食品やその他種々の物品を冷凍するには、冷凍槽13内の冷凍用液c中に、被冷凍物Wを吊下げたり、網などの適当な容器に入れて漬けておけばよい。
また、被冷凍物Wを上下動させるようにすると、より冷凍効果が高くなる。
【0026】
上記の冷凍装置および冷凍方法によれば、以下の(1)〜(3)の効果を奏する。
(1)冷凍槽13内の冷凍用液c中を気泡aが上昇すると、図2に示すように、被冷凍物Wの外表面に沿って冷凍用液cを対流させ撹拌させることができ、また、気泡が被冷凍物の表面の温度境界層を撹乱することによって熱伝達性能が向上するので、冷凍槽13内の全ての被冷凍物Wに、冷温の冷凍用液cを接触させることができる。このため、冷凍槽13における被冷凍物Wの位置によらず、被冷凍物Wを均斉に冷却することができ、冷凍完了までの時間を短縮することができる。この結果、被冷凍物Wの細胞破壊を防止でき、被冷凍物Wの鮮度を容易に保持することができる。
(2)気泡発生器30の空気吸入部31が、冷凍槽13内における冷凍用液cの液面上における密閉空間内に配設されているので、低温の空気を吸引することができる。このため、低温の空気を冷凍槽13内の冷凍用液cに送り出すことができ、熱損失を抑制でき効率的に冷凍することができる。
(3)空気吸入部31によって液体を吸引せず空気のみ吸引できる。このため、液面上に浮上した気泡が破裂したときに飛散する液滴をパイプ32内に吸引するのを防止できる。また、冷却された空気のみを吸引できるので、パイプ32が冷凍層13で冷却されても、凝縮水の氷結によるパイプ結まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷凍装置1のブロック図である。
【図2】本発明による冷凍作用の説明図である。
【図3】従来の冷凍装置101のブロック図である。
【図4】従来装置による冷凍作用の説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 冷凍装置
10 冷凍装置本体
13 冷凍槽
30 気泡発生器
31 空気吸入部
34 気泡化部
a 気泡
c 冷凍用液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍槽内の冷凍用液で被冷凍物を冷凍させる装置において、
前記冷凍用液中で気泡を発生させる気泡発生器が設けられた
ことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記気泡発生器が、
空気を吸入する空気吸入部と、
前記冷凍槽内の冷凍用液中に配設され、空気を気泡化する気泡化部と、
前記空気吸入部で吸入された空気を、前記気泡化部に送り出す空気送出部とからなり、
前記空気吸入部が、
前記冷凍槽内における冷凍用液の液面上における密閉空間内に配設された
ことを特徴とする請求項1記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記空気吸入部が、
液体を吸引せず空気のみ吸引する吸引フィルターを備えた
ことを特徴とする請求項2記載の冷凍装置。
【請求項4】
冷凍槽内の冷凍用液で被冷凍物を冷凍させる方法において、
前記冷凍用液中に気泡を発生させる
ことを特徴とする冷凍方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−309556(P2007−309556A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137234(P2006−137234)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(591053085)仁尾興産株式会社 (2)
【Fターム(参考)】