説明

冷却ファン取付装置

【課題】 電子機器のCPUに冷却ファンを接合し、CPUの熱を冷却ファンに導き、冷却ファンのヒートシンク作用と、冷却ファンで生じる風で強制冷却するようにしているが、CPUと冷却フアンの取付部材の寸法バラツキがあるとき、CPUと冷却ファンとの接合が悪くなって良好な熱伝導、放熱ができない。
【解決手段】 ケースが熱伝導性材料よりなる冷却ファン5をCPU4の上面に熱伝導ラバー9を介して接合する構成であって、プリント回路基板8に雌ねじ部材14を取り付け、冷却ファン5における雌ねじ部材14に対応する部分に内周に突座17をもつ取付用孔15を形成し、外周にコイルばね18を装備した取付ピン16を前記取付用孔に挿入し、取付ピン16の先端の雄ねじ部21を雌ねじ部材14に螺合し、冷却ファン5をCPU4の上面の熱伝導ラバー9に付勢圧接させた冷却ファン取付装置とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パーソナルコンピュータ、その他の電子機器等におけるCPU等の発熱部品の冷却に用いる冷却ファン取付装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に多機能、高性能のパーソナルコンピュータ等の小型の電子機器には、機能部品としてCPUが用いているが、このCPUは発熱し、約90℃以上になると熱破壊することから、CPUに冷却装置を付設し、CPUで発生する熱を放熱して機器の安全を図るようにしている。
【0003】前記冷却装置としては小型なものが要望されるが、放熱フィンをもつ通常のヒートシンクでは十分な冷却ができなく、したがって、図4に示すように導熱材料であるアルミダイカストよりなる偏平なファンケーシング1内に、モータ部と前記モータ部によって回転駆動するインペラー2を有し、ファンケーシング1の底板3をCPU4の上面に接合する構成の冷却ファン5が用いられている。そして、CPU4の熱をファンケーシング1に導き、ファンケーシング1のヒートシンク作用と、インペラー2の回転で生じる風でファンケーシング1を強制冷却し、放熱冷却するようにしている。
【0004】ところで、前記CPU4は、機器の筐体6の内面に突設した取付ボス7に取り付けられたプリント回路基板8の上面に取り付けられており、冷却フアン5は、そのファンケーシング1の底面の一部が前記CPU4の上面に設けた熱伝導ラバー9に接触するように、取付部材10を用いて機器の筐体6の内面に取り付けた構成としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記CPU4と冷却フアン5の取付構成において、取付ボス7の高さ、プリント回路基板8の厚み、取付部材10の高さにはバラツキがあり、ファンケーシング1の底面の一部を前記CPU4の上面に設けた熱伝導ラバー9に圧接させて、CPU4の熱をファンケーシング1に良好に伝導させることができないことが多い。また、熱伝導ラバー9は、前記の寸法バラツキを吸収するために厚さ1.0mmのものを用い、0.3〜0.9mmの範囲に圧縮可能にしているが、前記0.3mm〜0.9mmの範囲では寸法バラツキが大きいため、CPU4の熱をファンケーシング1に良好に伝導させることができない。
【0006】本発明は前記問題に留意し、CPUをきわめて有効に冷却できる冷却ファン取付装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、冷却ファンをCPUの上面に熱伝導ラバーを介して接合配置する構成であって、取付基板に雌ねじ部材を取り付け、冷却ファンのファンケーシングにおける前記雌ねじ部材に対応する部分に内周に突座をもつ取付用孔を形成し、外周にコイルばねを装備した取付ピンを前記取付用孔に挿入し、前記取付ピンの先端に設けた雄ねじ部を前記雌ねじ部材に螺合し、前記コイルばねの下端を取付用孔の内周の突座に当接させ、冷却ファンのファンケーシングをCPUの上面の熱伝導ラバーに付勢圧接させた冷却ファン取付装置とする。
【0008】本発明によれば、取付ピンの外周に装備したコイルばねにより冷却ファンのファンケーシングをCPUの上面の熱伝導ラバーに付勢圧接させるので、雌ねじ部材の高さ、CPUの高さ、冷却ファンのファンケーシングの厚みにバラツキがあっても、これを吸収して熱伝導ラバーを薄くできるため、CPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られ、効果的にCPUの熱を放熱できる。また、冷却ファンのファンケーシングにおける取付用孔には、取付ピンおよび雌ねじ部材が嵌まり込むので、取付部材による冷却装置の高さが大きくならなく、機器の小型化に寄与することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、熱伝導性金属よりなるファンケーシングの内部に、モータ部およびこのモータ部によって回転駆動するインペラーを備えて構成された冷却ファンを、CPUの上面に熱伝導ラバーを介して接合配置する冷却装置であって、取付基板に雌ねじ部材を取り付け、冷却ファンのファンケーシングにおける前記雌ねじ部材に対応する部分に内周に突座をもつ取付用孔を形成し、外周にコイルばねを装備した取付ピンを前記取付用孔に挿入し、前記取付ピンの先端に設けた雄ねじ部を前記雌ねじ部材に螺合し、前記コイルばねの下端を取付用孔の内周の突座に当接させ、冷却ファンのファンケーシングをCPUの上面の熱伝導ラバーに付勢圧接させた冷却ファン取付装置であり、取付部材の寸法バラツキがあっても、これを吸収してCPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られ、効果的にCPUの熱を放熱できるという作用を有する。
【0010】本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷却ファン取付装置において、冷却ファンのファンケーシングにおける取付用孔を、取付ピンおよび雌ねじ部材が嵌まり込む形状に形成したものであり、CPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られとともに、取付部材による冷却装置の高さが大きくならなく、機器の小型化に寄与することができるという作用を有する。
【0011】本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の冷却ファン取付装置において、取付ピンは、取付用孔の突座より下部に位置する部分に頸溝を有し、前記頸溝に止め輪を嵌め合わせ構成であり、CPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られとともに、取付ピンの落脱がなく、安全な冷却ファンの取り付けができるという作用を有する。
【0012】本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の冷却ファン取付装置において、冷却ファンのファンケーシングにファンカバーを設けて取付用孔に嵌め入れた取付ピンおよびコイルバネをファンケーシングと一体にし、前記ファンカバーにおけるファンケーシングの取付用孔に対応する部分に取付ピンの頭部より小さな開口孔を形成したものであり、取付ピンおよびコイルバネが常にファンケーシングに付随しているので、冷却ファンの取り付けが容易であり、また、取付ピンおよびコイルバネが紛失することがない等の作用を有する。
【0013】本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の冷却ファン取付装置において、CPUおよび冷却ファンを取り付ける取付基板は、プリント回路基板としたものであり、CPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られとともに、CPUと冷却ファンの取付基板を共通化し、取付構造を簡易化するという作用を有する。
【0014】以下、本発明の冷却ファン取付装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】(実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1の冷却ファン取付装置の断側面図、図2は、同冷却ファン取付装置の要部の断面図である。なお、図1、図2において、前記図3に示す従来の技術と同じ構成部には、従来の技術と同じ符号を付与する。
【0016】まず、冷却装置の構成について説明する。図1および図2に示すように、ファンケーシング1は熱伝導性のよいアルミダイカストよりなり、全体として四角形で、かつ、偏平に形成され、ヒートシンクを兼ねている。前記ファンケーシング1内には、モータ部(図示せず)と前記モータ部によって回転駆動するインペラー2を有し、ファンケーシング1の底板3をCPU4の上面の熱伝導ラバー9に接合させ、熱的結合をもたせるようにしている。
【0017】上記の構成において、CPU4で生じる熱が熱伝導ラバー9を介してファンケーシング1に伝導し、ファンケーシング1のヒートシンク作用で放熱および、インペラー2の回転で生じる冷却風で強制的に冷却される。なお、前記熱伝導ラバー9は、熱伝導の機能以外に、ファンケーシング1のCPU4への過大な機械的加圧力の緩和機能および、取付寸法誤差を吸収する機能を有する。
【0018】つぎに、冷却ファン5およびCPU4の取付構成について説明する。
【0019】図1および図2に示すように、機器の筐体11の内側には、取付部材12により一定の高さになるようにプリント回路基板8を取り付けている。このプリント回路基板8の上面には、CPU4を実装しており、CPU4の上面には、厚さ0.3〓の熱伝導ラバー9を貼り付けている。また、プリント回路基板8の上面の4ヶ所(図2では1ヶ所を示している)には、雌ねじ孔13をもつ雌ねじ部材14を突設している。なお、この雌ねじ部材14の高さは、CPU4の高さよりやや大きいものとしている。
【0020】一方、前記CPU4の上方に配置される冷却ファン5は、ファンケーシング1における前記CPU4に対応する部分に接触用の突面部を形成してあり、また、各雌ねじ部材14に対応する部分に上面から下面に貫通する取付用孔15を形成している。この取付用孔15は、前記雌ねじ部材14および後述の取付ピン16が余裕をもって嵌まり合う径となっており、そして内周には突座17を有している。前記取付ピン16は、外周にピアノ線よりなるコイルばね18を装備しており、上部にドライバー係合溝19をもつ頭部20を有し、下部に雄ねじ部21を有している。さらに、下部近くに頸溝22を有し、この頸溝22に止め輪23を嵌め合わせている。
【0021】この構成において、取付ピン16をファンケーシング1における各取付用孔15に挿入し、取付ピン16の先端に設けた雄ねじ部21を雌ねじ部材14に螺合し、コイルばね18の下端を取付用孔15の内周の突座17に当接させることにより、冷却ファン5はプリント回路基板8に取り付けられるとともに、そのファンケーシング1はコイルばね18によりCPU4の上面の熱伝導ラバー9に付勢圧接させられ、ファンケーシング1とCPU4は熱伝導関係をもつ構成となるものである。
【0022】上記の構成において、雌ねじ部材14の高さ、CPU4の高さ、冷却ファン5のファンケーシング1の厚み、その他プリント回路基板8の厚みにバラツキがあっても、取付ピン16の外周に装備したコイルばね18により冷却ファン5のファンケーシング1をCPU4の上面の熱伝導ラバー9に付勢圧接させるので、熱伝導ラバー9による寸法誤差吸収範囲以上の寸法誤差吸収ができ、したがって、CPU4と冷却ファン5のファンケーシング1間の良好な熱伝導が得られ、効果的にCPUの熱を放熱できる。また、冷却ファン5のファンケーシング1における取付用孔15には、取付ピン16および雌ねじ部材14が嵌まり込むので、取付部材による冷却装置の高さが大きくならなく、機器の小型化に寄与することができる。また、止め輪23は取付用孔15の突座17の下に位置しており、突座17が取付ピン16の抜け止めをするので、取付ピン16の脱落がなく、安定した取付構成とすることができる。
【0023】(実施の形態2)図3は、本発明の実施の形態2の冷却ファン取付装置の要部断面図である。
【0024】この実施の形態2では、冷却ファン5と取付ピン16およびコイルばね18を一体化したことに特徴を有する。
【0025】すなわち、図3に示すようにファンケーシング1の上面にはファンカバー24を設けている。そして、このファンカバー24におけるファンケーシング1の取付用孔15に対応する部分には、取付用孔15に嵌め込まれた取付ピン16の頭部20より小さい開口孔25を形成している。
【0026】したがって、ファンケーシング1の取付用孔15に嵌め込まれた取付ピン16およびコイルバネ18はファンケーシング1と一体化され、取付用孔15から脱落することがなく、取付ピン16には前述の実施の形態1のように止め輪を設ける必要はない。また、取付ピン16のねじ込み作業は、ファンカバー24の開口孔25にドライバーを挿入して自由にすることができる。
【0027】なお、前記実施の形態では、ファンケーシング1をアルミダイカストで形成しているが、他の金属材料で形成してもよく、また、板金製としてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明は冷却ファンをCPUの上面に熱伝導ラバーを介して接合配置する構成であって、取付基板に雌ねじ部材を取り付け、冷却ファンのファンケーシングにおける前記雌ねじ部材に対応する部分に内周に突座をもつ取付用孔を形成し、外周にコイルばねを装備した取付ピンを前記取付用孔に挿入し、前記取付ピンの先端に設けた雄ねじ部を前記雌ねじ部材に螺合し、前記コイルばねの下端を取付用孔の内周の突座に当接させ、冷却ファンのファンケーシングをCPUの上面の熱伝導ラバーに付勢圧接させた冷却ファン取付装置としたので、雌ねじ部材の高さ、CPUの高さ、冷却ファンのファンケーシングの厚み等にバラツキがあっても、熱伝導ラバーによるバラツキ吸収範囲以上のバラツキを吸収することができ、したがつてCPUと冷却ファンのファンケーシング間の良好な熱伝導が得られ、効果的にCPUの熱を放熱できる。また、冷却ファンのファンケーシングにおける取付用孔には、取付ピンおよび雌ねじ部材が嵌まり込むので、取付部材による冷却装置の高さが大きくならなく、機器の小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の冷却ファン取付装置の断側面図
【図2】同冷却ファン取付装置の要部の断面図
【図3】本発明の実施の形態2の冷却ファン取付装置の要部断面図
【図4】従来の冷却ファン取付装置の断側面図
【符号の説明】
1 ファンケーシング
2 インペラー
3 底板
4 CPU
5 冷却ファン
6 筐体
7 取付ボス
8 プリント回路基板
9 熱伝導ラバー
11 筐体
12 取付部材
13 雌ねじ孔
14 雌ねじ部材
15 取付用孔
16 取付ピン
17 突座
18 コイルばね
19 ドライバー係合溝
20 頭部
21 雄ねじ部
22 頸溝
23 止め輪
24 ファンカバー
25 開口孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】熱伝導性金属よりなるファンケーシングの内部に、モータ部およびこのモータ部によって回転駆動するインペラーを備えて構成された冷却ファンを、CPUの上面に熱伝導ラバーを介して接合配置する冷却装置であって、取付基板に雌ねじ部材を取り付け、冷却ファンのファンケーシングにおける前記雌ねじ部材に対応する部分に内周に突座をもつ取付用孔を形成し、外周にコイルばねを装備した取付ピンを前記取付用孔に挿入し、前記取付ピンの先端に設けた雄ねじ部を前記雌ねじ部材に螺合し、前記コイルばねの下端を取付用孔の内周の突座に当接させ、冷却ファンのファンケーシングをCPUの上面の熱伝導ラバーに付勢圧接させたことを特徴とする冷却ファン取付装置。
【請求項2】冷却ファンのファンケーシングにおける取付用孔は、取付ピンおよび雌ねじ部材が嵌まり込む形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の冷却ファン取付装置。
【請求項3】取付ピンは、取付用孔の突座より下部に位置する部分に頸溝を有し、前記頸溝に止め輪を嵌め合わせたことを特徴とする請求項1記載の冷却ファン取付装置。
【請求項4】冷却ファンのファンケーシングにファンカバーを設けて取付用孔に嵌め入れた取付ピンおよびコイルバネをファンケーシングと一体にし、前記ファンカバーにおけるファンケーシングの取付用孔に対応する部分に取付ピンの頭部より小さな開口孔を形成したことを特徴とする請求項1記載の冷却ファン取付装置。
【請求項5】CPUおよび冷却ファンを取り付ける取付基板は、プリント回路基板であることを特徴とする請求項1記載の冷却ファン取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−85585(P2001−85585A)
【公開日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−258818
【出願日】平成11年9月13日(1999.9.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】