説明

冷却ユニットおよび電子機器

【課題】冷却対象となる発熱体の種類にフレキシブルに対応できると共に、狭小な実装空間においても高い冷却能力を有する冷却ユニットおよび電子機器を提供する。
【解決手段】中央部から端部に向けた熱拡散に優れる第1ヒートパイプ2と、第1ヒートパイプ2の表面に立設されると共に、第1端部8から第1端部8と対向する第2端部9に向けた熱拡散に優れる第2ヒートパイプ3を備え、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3のそれぞれは、蒸気拡散路4、6と毛細管流路5、7を一体に有して冷媒を封入すると共に封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイス、電子部品などの発熱体を冷却する冷却ユニットおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、産業機器および自動車などには、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの電子部品が使用されている。これらの電子部品は、内部を流れる電流によって発熱する発熱体になっている。発熱体の発熱が一定温度以上となると、動作保証ができなくなる問題もあり、他の部品や筐体へ悪影響を及ぼし、結果として電子機器や産業機器そのものの性能劣化を引き起こす可能性がある。
【0003】
このような発熱体を冷却するために、封入された冷媒の気化と凝縮による冷却効果を有するヒートパイプが提案されている。
【0004】
ヒートパイプは、内部に封入された冷媒が気化する際に、発熱体から熱を奪って移動する。気化した冷媒は、放熱によって冷却されて凝縮し、凝縮した冷媒は再び還流する。この気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。
【0005】
また、一方で、LED(Light Emiiting Device)などの発光素子や高密度の半導体集積回路は、コンピュータやワークステーションなどのハイエンドの電子機器のみならず、ノートブックパソコン、携帯電話機、携帯端末などの小型の電子機器にも、次々と実装されている。加えて、電子機器のみならず、LED(Light Emiiting Device)などの発行素子や高密度の半導体集積回路は、自動車、輸送用車両、航空機などのエンジン、制御装置、照明装置などにも次々と搭載されている。このような小型機器や自動車などにおいては、ヒートパイプに対する実装空間が小さかったり、実装空間の構造が複雑だったりすることが多い。
【0006】
ヒートパイプは、気化した冷媒の拡散により、発熱体からの受熱および拡散を容易に行えるが、気化した冷媒を十分に冷却できないことも多い。このため、ヒートパイプには、発熱体からの熱によって冷媒を気化するスペースと、気化した冷媒を伝達する管路と、管路から到達した冷媒を冷却して凝縮するスペースとを有する形態もある。このように機能に対応したスペースが分離した形態のヒートパイプは、小型機器や自動車などの狭小空間や複雑構造の空間において非常に実装しにくい。狭小空間や複雑構造の空間では、一体型や平板型のヒートパイプが適している。
【0007】
しかしながら、一体型や平板型のヒートパイプは、気化した冷媒を十分に拡散できなかったり、気化した冷媒を十分に冷却できなかったりする。このため、ベースプレートとなるヒートパイプにヒートシンクを組み合わせた冷却装置が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0008】
あるいは、封入した冷媒の気化と凝縮で発熱体を冷却できるヒートパイプを、ベースプレートとなる金属板にフィンのように立設した冷却装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。更には、複数の放熱フィンのそれぞれに電子部品を実装し、冷却ファンにより冷却する技術も提案されている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2001−244396号公報
【特許文献2】特開2007−333263号公報
【特許文献3】特開2007−335669号公報
【特許文献4】特開2001−237356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、背景技術において説明したように、近年では、高い発熱を生ずる発光素子、電子部品および半導体集積回路などは、電子機器や自動車などにおいて様々に使用される。加えて、多数および多種類の発光素子や電子部品が使用されるので、冷却装置は、発光素子や電子部品の種類や実装状態にフレキシブルに対応する必要を有する。例えば、単体での発熱量の大きな半導体集積回路を冷却する必要がある場合もあり、小型で多数の発光素子を冷却する必要がある場合もある。特に発光素子は、発光する光線の空間を確保する必要があるので、冷却装置の裏面ではなく、端部や端面に実装される必要を有する。
【0010】
更に実装空間が制限されるので、冷却対象の発熱体に応じて異なる冷却装置を用意するのは、実装上の面からもコストや製造工程の面からも適切でない。また、発光素子や電子部品の発熱量が次第に大きくなっている上に、実装空間は狭くなっているので、冷却装置は、更に高い冷却能力を有する必要もある。
【0011】
ここで、特許文献1、2は、冷媒を封入したヒートパイプの表面にフィンを立設させて、ヒートパイプとヒートシンクとが一体化された冷却装置を開示する。しかしながら、ベースプレートとなるヒートパイプからの熱を金属体であるフィンが放熱するだけであるので、特許文献1、2の冷却装置の冷却能力は高くない。ヒートパイプとフィンとの間で熱抵抗が高いことや、ヒートパイプから伝導した熱は、フィンにおいては拡散せず伝導するだけであるからである。
【0012】
また、特許文献1、2の冷却装置は、ベースプレートとなるヒートパイプにフィンを立設しているので、冷却装置は、ヒートパイプの裏面に配置された発熱体しか冷却できない。
【0013】
特許文献3は、ベースプレートとなる金属板に複数の板状のヒートパイプを立設する冷却装置を開示する。しかしながら、フィンにヒートパイプを用いたとしても、発熱体はベースプレートに配置されるので、ベースプレートにおける熱拡散が不十分でベースプレートからの熱が効果的にヒートパイプであるフィンに到達できない。このため、特許文献3に開示される冷却装置の冷却能力は高くない。また、特許文献3に開示される冷却装置におけるヒートパイプ(フィンとして使用されている)は、毛細管流路を有していないので、冷媒の拡散および還流を十分に行えない。このことからも、冷却装置の冷却能力は高くない。
【0014】
また、特許文献3に開示される冷却装置は、ベースプレートにフィンとしてのヒートパイプを立設しているので、冷却装置は、ベースプレートの裏面に配置された発熱体しか冷却できない。
【0015】
また、特許文献1〜3のように、ヒートパイプとヒートシンクを組み合わせた冷却装置は、金属板とヒートパイプとの間での熱伝導が悪い点や、金属板における熱拡散が悪い点で、組み合わせによる冷却能力を向上させるのが困難である。また、ベースプレートは、複数のフィンに最適に熱を拡散することが困難である。結果として、ベースプレートが金属板であってもヒートパイプであっても、ベースプレートの裏面に配置された発熱体からの熱を、効率的にフィンに伝導することが困難である。
【0016】
特に、ベースプレートの裏面に配置された発熱体からの熱を冷却することのみしかできず、従来技術の冷却装置は、電子機器や自動車に実装されうる種々の発光素子や電子部品に、フレキシブルに対応できない。このため、従来技術における冷却装置は、電子機器や自動車からの様々な要求に対応できない。
【0017】
特許文献4であっても同様である。
【0018】
本発明は、冷却対象となる発熱体の種類にフレキシブルに対応できると共に、狭小な実装空間においても高い冷却能力を有する冷却ユニットおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題に鑑み、本発明の冷却ユニットは、中央部から端部に向けた熱拡散に優れる第1ヒートパイプと、第1ヒートパイプの表面に立設されると共に、第1端部から第1端部と対向する第2端部に向けた熱拡散に優れる第2ヒートパイプを備え、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプのそれぞれは、蒸気拡散路と毛細管流路を一体に有して冷媒を封入すると共に封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷却ユニットは、ベースプレートおよびフィンの全てを、冷媒の気化・凝縮機能を有するヒートパイプで構成するので、高い能力で発熱体を冷却できる。特に、ベースプレートだけがヒートパイプであったりフィンだけがヒートパイプであったりする場合に比べて、本発明の冷却ユニットは、高い効率で発熱体を冷却できる。また、ベースプレートおよびフィンの全てがヒートパイプであるので、本発明の冷却ユニットは、発熱体の熱を、高い能力で拡散できる。また、
特に、熱拡散特性の異なるヒートパイプが組み合わされることで、発熱体からの熱伝導が最適に行われる。結果として、冷却ユニットは、発熱体からの熱をベースプレートからフィンの先端まであるいはフィンの先端からベースプレートに至るまで、熱を拡散する。
【0021】
また、本発明の冷却ユニットは、冷却対象となる発熱体の種類にフレキシブルに対応できる。特に、第1ヒートパイプに接触する発熱体であっても、第2ヒートパイプの先端に接触する発熱体であっても、冷却ユニットを構成する第1ヒートパイプおよび第2ヒートパイプ全体で効率的に冷却される。
【0022】
また、熱拡散特性の異なるヒートパイプが、ベースプレートとフィンとに組み入れられることによって、フィンの先端からでもベースプレートの裏側からでも、冷却ユニットは、その全体を用いて、熱を拡散できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る冷却ユニットは、中央部から端部に向けた熱拡散に優れる第1ヒートパイプと、第1ヒートパイプの表面に立設されると共に、第1端部から第1端部と対向する第2端部に向けた熱拡散に優れる第2ヒートパイプを備え、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプのそれぞれは、蒸気拡散路と毛細管流路を一体に有して冷媒を封入すると共に封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。
【0024】
この構成により、冷媒の気化・凝縮で熱を拡散できるヒートパイプによって、冷却ユニット全体を構成できる。このため、冷却ユニットは、その全体を効率よく使って、発熱体からの熱を拡散しつつ冷却できる。加えて、第1ヒートパイプから第2ヒートパイプにかけて(あるいはその逆)の高効率の熱伝導経路が形成されるので、冷却ユニット1は、高い効率で発熱体を冷却できる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る冷却ユニットでは、第1の発明に加えて、第1ヒートパイプの表面に第2ヒートパイプが取り付けられる場合には、第1端部および第2端部のいずれかが、表面側に位置して取り付けられる。
【0026】
この構成により、第1ヒートパイプから第2ヒートパイプに向けて、もしくは第2ヒートパイプから第1ヒートパイプに向けての熱伝導経路が形成される。
【0027】
本発明の第3の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第2のいずれかの発明に加えて、 第1ヒートパイプの裏面に発熱体が配置される場合には、第1端部が第1ヒートパイプの表面側に位置して、第2ヒートパイプが第1ヒートパイプに取り付けられる。
【0028】
この構成により、第1ヒートパイプの裏面から第2ヒートパイプの第2端部にかけた熱伝導経路が形成される。この形成される熱伝導経路により、冷却ユニットは、その全体を使って、第1ヒートパイプの裏面に配置された発熱体の熱を、第2ヒートパイプの先端である第2端部に拡散して発熱体を高い効率で発熱体を冷却する。
【0029】
本発明の第4の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第2のいずれかの発明に加えて、第2ヒートパイプの端部に発熱体が配置される場合には、第2端部が第1ヒートパイプの表面側に位置して、第2ヒートパイプが第1ヒートパイプに取り付けられる。
【0030】
この構成により、第2ヒートパイプの先端から第1ヒートパイプの裏面にかけた熱伝導経路が形成される。この形成される熱伝導経路により、冷却ユニットは、その全体を使って、第2ヒートパイプの先端に配置された発熱体の熱を、第1ヒートパイプの裏面にまで拡散して、高い効率で発熱体を冷却できる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る冷却ユニットでは、第3から第4のいずれかの発明に加えて、第1端部が第1ヒートパイプの表面側に位置して第2ヒートパイプが第1ヒートパイプに取り付けられる場合には、第1ヒートパイプの裏面から第1ヒートパイプの第2端部に向けての熱伝導経路が形成され、第2端部が第1ヒートパイプの表面側に位置して第2ヒートパイプが第1ヒートパイプに取り付けられる場合には、第2ヒートパイプの第1端部から第1ヒートパイプの裏面に向けての熱伝導経路が形成される。
【0032】
この構成により、第1ヒートパイプの裏面に配置されるのが適当な発熱体であっても、第2ヒートパイプの端部に配置されるのが適当な発熱体であっても、第2ヒートパイプの組み合わせ方向を変えるだけで、冷却ユニットは、熱伝導経路を形成できる。このため、冷却ユニットは、様々な種類の発熱体に対してフレキシブルに対応でき、効率よく冷却できる。
【0033】
本発明の第6の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、第1ヒートパイプは、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数又は複数の中間板を有し、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は、蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は、毛細管流路を形成し、切り欠き部は、中間板の中央部から端部に向けて形成される。
【0034】
この構成により、第1ヒートパイプは、薄型でありながら、中央部から端部にかけての熱拡散特性に優れ、全体を活用して、熱を拡散できる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、第1ヒートパイプは、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部いたとの間に積層される単数又は複数の中間板を有し、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は、中間板において、第2ヒートパイプが立設する位置に沿って形成される。
【0036】
この構成により、第1ヒートパイプは、薄型でありながら、中央部から第2ヒートパイプの立設位置にかけての熱拡散特性に優れ、全体を活用して、熱を拡散できる。
【0037】
本発明の第8の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、第2ヒートパイプは、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数又は複数の中間板を有し、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は、蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は、毛細管流路を形成し、切り欠き部は、中間板の一方の端部である第1端部から第1端部と対向する第2端部に向けて形成される。
【0038】
この構成により、第2ヒートパイプは、薄型でありながら、第1端部から第2端部に向けての熱拡散特性に優れ、全体を活用して、熱を拡散できる。
【0039】
本発明の第9の発明に係る冷却ユニットでは、第8の発明に加えて、第1端部側における切り欠き部の平面方向での幅は、第2端部側における切り欠き部の平面方向の幅よりも狭い。
【0040】
この構成により、第2ヒートパイプの第1端部から第2端部への熱拡散特性が更に向上する。
【0041】
本発明の第10の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、第2ヒートパイプは、第1ヒートパイプの表面に形成された取り付け溝に、嵌合して取り付けられる。
【0042】
この構成により、第2ヒートパイプは、強固かつ確実に第1ヒートパイプに取り付けられる。更に、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプとの間の熱抵抗も小さくなる。
【0043】
本発明の第11の発明に係る冷却ユニットでは、第10の発明に加えて、第2ヒートパイプが有する上部板および下部板の少なくとも一方は、第1端部および第2端部の少なくとも一方から突出する突出部を有し、突出部は、取り付け溝の外側の少なくとも一部を覆う。
【0044】
この構成により、第2ヒートパイプは、強固かつ確実に第1ヒートパイプに取り付けられる。更に、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプとの間の熱抵抗も小さくなる。
【0045】
本発明の第12の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第11のいずれかの発明に加えて、第1ヒートパイプの表面に、複数の第2ヒートパイプが立設する。
【0046】
この構成により、冷却ユニットは、更に高い冷却能力を有する。
【0047】
本発明の第13の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第12のいずれかの発明に加えて、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される。
【0048】
この構成により、製造工程の手間を抑えつつ、高い精度で、微小な毛細管流路を形成できる。
【0049】
本発明の第14の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第13のいずれかの発明に加えて、上部板および下部板のそれぞれは、毛細管流路および蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
【0050】
この構成により、放熱面に達した気化冷媒の還流が促進され、凝縮した冷媒が、凹部から毛細管流路へ、容易かつ確実に還流できる。また、気化した冷媒の冷却も促進される。
【0051】
本発明の第15の発明に係る冷却ユニットでは、第1から第14のいずれかの発明に加えて、蒸気拡散路は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散し、毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直もしくは垂直・平面方向に還流させる。
【0052】
この構成により、第1ヒートパイプおよび第2ヒートパイプが薄型となる。
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0054】
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。
【0055】
(実施の形態1)
(ヒートパイプの概念説明)
まず、ヒートパイプの概念について説明する。
【0056】
ヒートパイプは、内部に冷媒を封入しており、受熱面となる面を、電子部品をはじめとする発熱体に接している。内部の冷媒は、発熱体からの熱を受けて気化し、気化する際に発熱体の熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプの中を移動する。この移動によって発熱体の熱が運搬されることになる。移動した気化した冷媒は、放熱面などにおいて(あるいはヒートシンクや冷却ファンなどの二次冷却部材によって)冷却されて凝縮する。凝縮して液体となった冷媒は、ヒートパイプの内部を還流して再び受熱面に移動する。受熱面に移動した冷媒は、再び気化して発熱体の熱を奪う。
【0057】
このような冷媒の気化と凝縮の繰り返しによって、ヒートパイプは発熱体を冷却する。このため、ヒートパイプは、その内部に気化した冷媒を拡散する蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路を有する必要がある。
【0058】
ヒートパイプには、筒状の形状を有して垂直方向に気化した冷媒を拡散させると共に垂直方向に凝縮した冷媒を還流させる構造を有するものや、発熱体と接する受熱部と冷媒を冷却する冷却部とが別体であってパイプで接続される構造を有するものなどがある。
【0059】
これらの構造を有するヒートパイプは、その体積が大きく(特に垂直方向に体積が大きくなりやすい)、実装する空間が狭小である場合には不適である。このため、平板状で薄型のヒートパイプが望まれることも多い。
【0060】
しかし、平板状で薄型のヒートパイプは、冷媒の移動空間に限りがあり、ヒートパイプ内部での、気化した冷媒の拡散および凝縮した冷媒の還流が効率的でない。効率的でないとは、ヒートパイプの一部のみにおいて、気化した冷媒の拡散や凝縮した冷媒の還流が行われる状態である。平板状のヒートパイプは、狭小空間しか有さない電子機器への実装では優位であるが、冷却性能が不十分となりやすい。
【0061】
これに対して、本発明の冷却ユニットが備えるヒートパイプは、薄型でありながら優れた熱拡散性能(気化した冷媒の拡散)と凝縮した冷媒の還流性能を有している。このため本発明では、従来のベースプレートとフィンとを組み合わせた冷却ユニットにおけるベースプレートおよびフィンのいずれをもヒートパイプで置き換えることができる。更に、次に説明するように、ベースプレートを構成する第1ヒートパイプとフィンを構成する第2ヒートパイプの熱拡散特性の最適なマッチングにより、本発明の冷却ユニットは、高い冷却効果を実現できる。
【0062】
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1における冷却ユニットの側面図である。なお、図1は、冷却ユニットを構成するヒートパイプの中を透視状態として示している。
【0063】
冷却ユニット1は、第1ヒートパイプ2と、第1ヒートパイプ2に立設される第2ヒートパイプ3を備えている。すなわち、冷却ユニット1は、第1ヒートパイプ2がベースプレートであり、第2ヒートパイプ3がフィンである構成を有している。
【0064】
第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプのそれぞれは、蒸気拡散路4、6と毛細管流路6,7を備えており、内部に封入された冷媒の気化と凝縮によって熱を拡散して発熱体を冷却する。具体的には、発熱体からの熱により冷媒が気化して、気化した冷媒が蒸気拡散路4,6を経由して第1ヒートパイプ2、第2ヒートパイプ3の内部を拡散する。気化した冷媒は、冷却されて凝縮し、凝縮した冷媒が還流する。この冷媒の気化と凝縮の繰り返しにより、ヒートパイプは発熱体を冷却する。気化した冷媒は、拡散によって熱を拡散する。すなわち、気化した冷媒の拡散は、熱の拡散を示す。
【0065】
ここで、冷却ユニット1は、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3の2種類のヒートパイプを備えて発熱体を冷却する。第1ヒートパイプ2および第2ヒートパイプ3は、異なる気化した冷媒の拡散特性(熱拡散特性)を有する。例えば、第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けた熱拡散特性を有し、第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けた熱拡散特性を有している。
【0066】
このような熱拡散特性の異なる第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3が組み合わされる構成によって、冷却ユニット1は、ベースプレートおよびフィンの全てをヒートパイプで構成していることになり、高い冷却能力を有する。
【0067】
例えば、第1ヒートパイプ2の裏面に発熱体が設置されている場合には、まず第1ヒートパイプ2が発熱体から熱を奪う。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて熱を拡散するので、拡散した熱は、第1ヒートパイプ2の表面に立設されている第2ヒートパイプ3に伝導する。第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けた熱拡散特性を有するので、第1ヒートパイプ2から受けた熱を、第2ヒートパイプ3は先端(第2端部9)に向けて伝導する。すなわち、発熱体からの熱は、第1ヒートパイプ2から第2ヒートパイプ3の全体を使って拡散できる。熱拡散が十分であれば、気化した冷媒は効率的に凝縮される。従来技術のように、ベースプレートもしくはフィンのいずれかが金属板である場合には、当然ながら十分な熱拡散は行われない。あるいは、平面方向の熱拡散特性の弱いヒートパイプでは、十分な熱拡散が行われない。
【0068】
実施の形態1の冷却ユニット1は、ベースプレートおよびフィンがヒートパイプで構成されていることに加えて、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3の熱拡散特性の最適なマッチングによって、発熱体を効率的に冷却できる。
【0069】
(第1ヒートパイプ)
次に、第1ヒートパイプ2について説明する。
【0070】
図2は、本発明の実施の形態1における第1ヒートパイプの内面図である。図2は、第1ヒートパイプを平面方向から透視した状態を示している。図3は、本発明の実施の形態1における第1ヒートパイプの分解側面図である。
【0071】
第1ヒートパイプ2は、蒸気拡散路4と毛細管流路5を備える。蒸気拡散路4は、図2より明らかな通り、中央部から端部に向かって放射状に伸びている。気化した冷媒は、蒸気拡散路4を経由して平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向かって放射状に伸びる蒸気拡散路4を有しているので、気化した冷媒は、中央部から端部に向けて拡散する。すなわち、第1ヒートパイプ2が発熱体から奪った熱は、中央部から端部に向けて拡散する。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けた熱拡散特性を有している。
【0072】
蒸気拡散路4は、切り欠き部13により形成され、毛細管流路5は、内部貫通孔14により形成される。
【0073】
図3を用いて、第1ヒートパイプ2の構造を説明する。
【0074】
第1ヒートパイプ2は、冷媒の気化と凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプの機能を有する。第1ヒートパイプ2は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する蒸気拡散路4と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路5とを備える。図3より明らかな通り、第1ヒートパイプ2は、薄型で平板状を有するが、円形、楕円形、多角形など種々の形状を有してよい。勿論、湾曲していてもよい
第1ヒートパイプ2は、上部板10、上部板10と対向する下部板11および上部板10と下部板11との間に積層される単数又は複数の中間板12を備える。上部板10、下部板11および中間板12が積層されて接合されることで、冷媒を封入できる内部空間が形成される。中間板12は、蒸気拡散路4と毛細管流路5を形成する。
【0075】
また、ヒートパイプ2は、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
【0076】
一例として、第1ヒートパイプ2は、20mm角以上200mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや回路基板への実装上の容易性などから導入される。第1ヒートパイプ2がここで例として挙げたサイズを有することで、実装と冷却のバランスが適切に図られるからである。
【0077】
勿論、第1ヒートパイプ2のサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
【0078】
(上部板)
上部板10について、図3を用いて説明する。
【0079】
上部板10は、平板状であり、所定の形状、面積を有している。
【0080】
上部板10は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板10は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよい。
【0081】
上部板10は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路4および毛細管流路5の少なくとも一方と連通する凹部15を有していることも好ましい。凹部15が毛細管流路5と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板10から毛細管流路5へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部15が蒸気拡散路4と連通することで、気化した冷媒が、上部板10の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
【0082】
上部板10は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板10は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板11と特段に区別されるものでもない。また、上部板10が発熱体と接する面となっても、発熱体と対向する面となってもかまわない。
【0083】
また、上部板10は、冷媒の注入口16を備えている。上部板10、中間板12、下部板11が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板10などの接合後に注入口16から冷媒が封入される。注入口16は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
【0084】
なお、冷媒は、積層後に注入口16から封入されても良く、上部板10、下部板11、中間板12が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
【0085】
(下部板)
下部板11は、上部板10と対向して単数又は複数の中間板12を挟む。
【0086】
下部板11は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10と対向して第1ヒートパイプ2を形成するので、上部板10と同一の形状、面積であることが好ましい。
【0087】
下部板11は、その一方の面であって中間板12と対向する面に、蒸気拡散路4と毛細管流路5に連通する凹部15を有していることも好適である。凹部15は、毛細管流路5と連通することで凝縮した冷媒が、下部板11から毛細管流路5へ伝わりやすくなる。また、凹部15が蒸気拡散路4と連通することで、気化した冷媒が、下部板11の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板10に凹部15が設けられることと同様の意義を有する。
【0088】
下部板11は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板10と特段に区別されるものでもない。
【0089】
下部板11は、中間板12と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0090】
また、下部板11が、発熱体と接しても接しなくてもよい。
【0091】
(中間板)
中間板12は、単数又は複数の板材である。図3では、第1ヒートパイプ2は、4枚の中間板12を有している。中間板12は、上部板10と下部板11の間に積層される。
【0092】
中間板12は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板10および下部板11に挟まれて第1ヒートパイプ2を形成するので、上部板10および下部板11と同一の形状であることが好ましい。なお、上部板10および下部板11に挟まれるので、中間板12の面積は、上部板10および下部板11と同一でも良く、若干小さくてもよい。
【0093】
また、中間板12は、上部板10および下部板11と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板12は、微小な断面積を有する内部貫通孔14を有している。この内部貫通孔14は、毛細管流路5を形成する。
【0094】
最終的には、上部板10と下部板11の間に中間板12が積層されて接合されることで、第1ヒートパイプ2が形成される。中間板12は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路5を形成するためには、中間板12は、複数であることが好ましい。
【0095】
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、蒸気拡散路4および毛細管流路5について、図2、図3も参照しながら説明する。中間板12は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する蒸気拡散路4と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路5を形成する。
【0096】
まず、蒸気拡散路4について説明する。
【0097】
中間板12は、切り欠き部13と内部貫通孔14を有している。
【0098】
切り欠き部13は、第1ヒートパイプ2における蒸気拡散路4を形成する。上部板10と下部板11の間に中間板12が積層された場合に、切り欠き部13は空隙を形成する。この空隙が蒸気拡散路4となる。第1ヒートパイプ2は、その一例として図2に示されるような放射状の蒸気拡散路4を有する。
【0099】
ここで、切り欠き部13が、第1ヒートパイプ2の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成されることで、蒸気拡散路4も、第1ヒートパイプ2の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成される。このため、気化した冷媒は平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。勿論、切り欠き部13によって、下部板11と上部板10とがつながる場合には、下部板11で受熱して気化した冷媒は、平面方向および厚み方向に移動して、気化した冷媒(および熱)が下部板11から上部板10にまで達する。すなわち、蒸気拡散路4は、平面方向および厚み方向の両方に(もちろん、蒸気拡散路4の形状によっていずれか一方の場合もありえる)かけて、気化した冷媒を移動させる。
【0100】
特に、図2に示されるように、切り欠き部13が中間板12の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路4も第1ヒートパイプ2の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、第1ヒートパイプ2の略中央部に設置されることが多いので、冷媒は第1ヒートパイプ2の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、第1ヒートパイプ2の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路4が第1ヒートパイプ2の略中央部から放射状に形成されていることで、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する。なお、蒸気拡散路4が平面方向および厚み方向の両方に渡って形成されていれば、気化冷媒は、平面方向および厚み方向の両方に渡って拡散する。結果として、気化冷媒(発熱体から奪われた熱)は、発熱体と反対側の放熱面に到達する。発熱体と反対側の放熱面に到達した熱は、第2ヒートパイプ3に伝導する。
【0101】
このように、中間板12が切り欠き部13を有し、平面方向および厚み方向の少なくとも一方に広がる蒸気拡散路4が形成されることで、第1ヒートパイプ2の内部においては、気化した冷媒が平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、中央から周辺に向けて第1ヒートパイプ2内部を平面方向に拡散する。
【0102】
なお、図2にしめされるように、切り欠き部13(すなわち蒸気拡散路4)は、放射状でなくとも別の形状であってもよい。なお、蒸気拡散路4が放射状であることで、気化した冷媒が平面方向に拡散するとしても、拡散した後冷却されて凝縮した冷媒が高速に還流しなければ、発熱体の冷却能力は十分でない。第1ヒートパイプ2は、拡散した後で凝縮した冷媒を、第1ヒートパイプ2の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路5を有していることにより、高い平面方向および厚み方向の少なくとも一方の拡散(および還流)性能を実現している。更に、毛細管流路5と連通する凹部15によって、凝縮した冷媒は更なる効率で還流できる。凹部15は、凝縮した冷媒の還流を促進させる役割も有する。
【0103】
次に毛細管流路5について説明する。
【0104】
中間板12は、内部貫通孔14を有している。内部貫通孔14は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路5を形成する。中間板12が図2に示されるように切り欠き部13を有する場合には、切り欠き部13以外の部分に内部貫通孔14が形成される。
【0105】
ここで、中間板12が単数の場合には、中間板12に設けられている内部貫通孔14がそのまま毛細管流路5になる。
【0106】
これに対して、中間板12が複数である場合には、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔14の一部のみが重なって、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路5が形成される。このように、中間板12が複数である場合には、内部貫通孔14そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路5が形成されるので、毛細管流路5における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。毛細管の断面積が小さいことで、毛細管現象による液体の移動が促進されるからである。
【0107】
なお、ここで、中間板12のそれぞれには、複数の内部貫通孔14が設けられる。複数の内部貫通孔14が、複数の流路を有する毛細管流路5を形成できるからである。
【0108】
内部貫通孔14は、中間板12の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。但し、内部貫通孔14の一部同士が重なって毛細管流路5を形成することから、内部貫通孔14は方形であることが適当である。
【0109】
内部貫通孔14は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良い。
【0110】
中間板12が複数の場合には、内部貫通孔14は、複数の中間板12のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板12は、その内部貫通孔14の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔14の位置は、隣接する中間板12毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板12における内部貫通孔14の位置と、この中間板12と隣接する別の中間板12における内部貫通孔14の位置は、内部貫通孔14の断面の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板12毎に内部貫通孔14の位置がずれていることで、複数の中間板12が積層された場合に、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路5が形成される。
【0111】
毛細管流路5は、複数の中間板12が積層される際に、内部貫通孔14の一部同士が重なり合って、内部貫通孔14の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔14の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、第1ヒートパイプ2の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
【0112】
なお、内部貫通孔14の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔14よりも小さな断面積を有する毛細管流路5が形成される場合には、毛細管流路5を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
【0113】
なお、毛細管流路5は、凝縮した冷媒を還流するが、気化した冷媒を通すこともありえる。
【0114】
また、毛細管流路5、凹部15の角部や切り欠き部13の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路5の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路5の断面形状は、内部貫通孔14の形状と、内部貫通孔14同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0115】
以上のように、第1ヒートパイプの一例として、図2、図3およびその説明に示されるような中央部から端部に向けての熱拡散特性に優れた構成について説明した。
【0116】
(第2ヒートパイプ)
次に、第2ヒートパイプ3について、図4、図5を用いて説明する。図4、図5は、本発明の実施の形態1における第2ヒートパイプ3の内面図である。図4、図5は、第2ヒートパイプ3の内部構造を、示している。
【0117】
第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けて蒸気拡散路6を有しており、第1端部8から第2端部9に向けての熱拡散特性に優れる。蒸気拡散路6は、第1ヒートパイプ2と同様に中間板の切り欠き部13により形成される。
【0118】
ここで、第1端部8から第2端部9に向けての熱拡散特性を得るために、第2ヒートパイプ3では、第1端部8から第2端部9にかけて蒸気拡散路6が伸びている。これは、図4、5に示されるとおりである。毛細管流路7は、蒸気拡散路6以外の部分に形成され、蒸気拡散路6と毛細管流路7とは、第2ヒートパイプ3の内部でまるで横縞のように交互に並列する。
【0119】
例えば、図4は、第2ヒートパイプ3の一例を示しているが、蒸気拡散路6が、第1端部8から第2端部9にかけて末広がりの形状を有している。言い換えると、第1端部8側での平面方向の蒸気拡散路6の断面積よりも、第2端部9側での平面方向の蒸気拡散路6の断面積の方が広い。このように、第1端部8から第2端部9にかけて断面積が広がる形状の蒸気拡散路6によって、第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けての熱拡散特性を有する。なお、図4では、蒸気拡散路6が末広がりの形状を有しているが、第1端部8から第2端部9にかけての間で、屈曲や屈折があってもよく、断面積の増減の変動があってもよい。
【0120】
あるいは、図5に示されるように、蒸気拡散路6が、第1端部8から第2端部9にかけて一定の幅を維持して形成されてもよい。すなわち、一定幅の直線状として、蒸気拡散路6が形成されてもよい。この場合も、第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9にかけての熱拡散特性を有する。また、蒸気拡散路6以外の部分において毛細管流路7が形成される。これは図4に示される第2ヒートパイプ3の場合でも同様である。なお、蒸気拡散路6は、第1端部8から第2端部9にかけて同一幅の直線として形成されるが、曲線であってもよく、屈曲部を有していても良く、幅において多少の差異が生じてもよい。
【0121】
また、第2ヒートパイプ3においては、第1端部8から第2端部9に向けて蒸気拡散路6が形成されるが、第1端部8および第2端部9のそれぞれに到達するまで蒸気拡散路6が形成されている必要はなく、第1端部8の近辺と第2端部9の近辺同士を結ぶ蒸気拡散路6が形成されていればよい。
【0122】
以上のように、第1ヒートパイプ2と異なる熱拡散特性を、第2ヒートパイプ3は有し、その熱拡散特性は、第1端部8から第2端部9に向けて熱を拡散するのに優れている。一方、上述の通り、第1ヒートパイプ2は、中央部から端部にかけて、優れた熱拡散特性を有する。これらのように異なる熱拡散特性を有する第1ヒートパイプ2の表面に、第2ヒートパイプ3が立設されることで、冷却ユニット1の全てがヒートパイプで構成されるだけでなく、発熱体をより効率的に冷却できる熱伝導経路を形成できるようになる。
【0123】
なお、これら蒸気拡散路6は、中間板12の切り欠き部13によって形成される。
【0124】
第2ヒートパイプ3は、図3で説明したのと同様に、上部板10、上部板10と対向する下部板11と、上部板10と下部板11との間に積層される単数又は複数の中間板12を備える。中間板12は、切り欠き部13と内部貫通孔14を有しており、切り欠き部13が蒸気拡散路6を形成し、内部貫通孔14が毛細管流路7を形成する。
【0125】
上部板10、中間板12、下部板11が積層の後接合されて第2ヒートパイプ3が形成されるのは、第1ヒートパイプ2の場合と同様である。また、切り欠き部13による蒸気拡散路6、内部貫通孔14(あるいは内部貫通孔14の重なりによる)毛細管流路14の形成も、第1ヒートパイプ2の場合と同様である。
【0126】
(製造工程)
ここで、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3の製造工程について説明する。
【0127】
上部板10、下部板11、中間板12が積層されて接合されることで第1ヒートパイプ2および第2ヒートパイプ3が製造される。
【0128】
製造工程について図3を用いて説明する。
【0129】
上部板10、下部板11および複数の中間板12(図3では中間板12は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板12は、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔14のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0130】
上部板10、下部板11および複数の中間板12の少なくとも一つは、接合突起を有している。
【0131】
上部板10、下部板11、複数の中間板12は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
【0132】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
【0133】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm〜150kg/cmの範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0134】
次に、上部板10や下部板11の一部に空けられた注入口16を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口16が封止されて第1ヒートパイプ2および第2ヒートパイプ3が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、第1ヒートパイプ2の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0135】
(動作説明)
次に、冷却ユニット1の動作について説明する。
【0136】
まず、冷却ユニット1の全体像を、斜視図および側面図で示す。図6は、本発明の実施の形態1における冷却ユニットの斜視図であり、図7は、本発明の実施の形態1における冷却ユニットの側面図である。図6、図7に示されるように、第1ヒートパイプ2の表面に、複数の第2ヒートパイプ3が立設している。すなわち、第1ヒートパイプ2がベースプレートの役割を有し、第2ヒートパイプ3がフィンの役割を有している。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けた熱拡散特性に優れ、第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けた熱拡散特性に優れる。すなわち、異なる熱拡散特性を有するヒートパイプの組み合わせにより、冷却ユニット1は、構成される。
【0137】
第2ヒートパイプ3は、第1端部8および第2端部9のいずれかが、第1ヒートパイプ2の表面側に位置して取り付けられる。ここで、冷却ユニット1の冷却対象となる発熱体は様々である。発熱体の種類に応じて、発熱体の配置される位置は異なる。この発熱体の配置位置によって、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3の組み合わせ方が変えられる。
【0138】
第1の例として、発熱体が、単体で大きな発熱量を示す半導体集積回路や電子部品であるときには、第1ヒートパイプ2の裏面20に、発熱体が配置される。発熱体そのものが一定の大きさを有していることが多いので、発熱体は、冷却ユニット1のベースプレートの位置付けである第1ヒートパイプ2の裏面20に配置される。図8にこの状態を示す。図8は、本発明の実施の形態1における冷却ユニットの冷却状態を示す模式図である。
【0139】
発熱体25は、第1ヒートパイプ2の裏面に配置されている。裏面においても特に裏面の中央部付近に配置される。発熱体25は、半導体集積回路や電子部品など、単体での発熱量の高いサイズも比較的大きな電子素子である。このように、発熱体25が第1ヒートパイプ2の裏面に配置される場合には、第2ヒートパイプ3は、その第1端部8を第1ヒートパイプ2の表面側に位置して、立設する。すなわち、第2ヒートパイプ3は、第1ヒートパイプ2側から、第1端部8、第2端部9の順序で延伸する。第2端部9が、冷却ユニット1における発熱体25から最も遠い先端となる。
【0140】
第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて熱拡散するのに優れている。まず、第1ヒートパイプ2は、裏面の中央部に配置された発熱体25からの熱を奪う。熱を奪うことで、第1ヒートパイプ2内部の冷媒は、気化して気化冷媒となる。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて蒸気拡散路4を有しているので、気化冷媒は、中央部から端部にかけて平面方向および厚み方向に拡散する。この結果、発熱体25付近で奪われた熱は、第1ヒートパイプ2の表面27に広く拡散する。
【0141】
第1ヒートパイプ2の表面27に広がった熱は、表面27に立設する第2ヒートパイプ3に伝導する。第2ヒートパイプ3が複数であると、複数の第2ヒートパイプ3のそれぞれに、熱が伝導する。具体的には、第1ヒートパイプ2の表面27から第2ヒートパイプ3の第1端部8に、熱が伝導する。第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けての熱拡散特性に優れている。このため、第1端部8に伝導した熱は、効率よく、第2端部9に拡散する。第2端部9は、発熱体25から最も遠い先端であって、外部環境に熱を放散しやすい。この結果、第2端部9において(勿論、他の部位においても)熱が放散されて、気化冷媒は毛細管流路7を経由して還流する。
【0142】
ここで、第2ヒートパイプ3は、薄型であって、内部貫通孔14によって形成される毛細管流路7と毛細管流路7と連通する凹部15を有することによって、図8のように垂直方向に立設されている場合でも、凝縮した冷媒を還流できる。もちろん、同様の理由によって垂直方向に立設されている場合でも、第2ヒートパイプ3は、気化冷媒を拡散できる。
【0143】
また、第2ヒートパイプ3で熱が放散されると同様に、第1ヒートパイプ2においても、冷媒が冷却されて、凝縮した冷媒が還流する。
【0144】
図8における矢印によって示されるように、第1ヒートパイプ2の裏面に発熱体25が配置される場合には、第1ヒートパイプ2の裏面から第2ヒートパイプ3の第2端部に向かう熱伝導経路26が形成される。熱伝導経路26が形成されることで、冷却ユニット1全体が、発熱体の冷却に使用される。すなわち、冷却ユニット1は、ベースプレートからフィンの先端に至るまで、冷媒の気化・凝縮を用いて熱拡散を実現し、高い効率で発熱体を冷却できる。
【0145】
また、ベースプレートの役割を有する第1ヒートパイプ2と、フィンの役割を有する第2ヒートパイプ3とが別体であって、それぞれ別個に冷媒を封入していることで、冷媒の気化、拡散、凝縮、還流が、それぞれのヒートパイプの中で独立に行われる。このため、冷媒の拡散や還流における阻害要因が少ない。結果として、第1ヒートパイプ2における熱拡散と第2ヒートパイプ3における熱拡散は、それぞれ適切に行われる。
【0146】
更には、第1ヒートパイプおよび第2ヒートパイプが、蒸気拡散路4、6と毛細管流路5、7を形成する中間板12と上部板10および下部板11と積層される構成を有することで、優れた熱拡散能力を有する。また、凹部15が蒸気拡散路4、6や毛細管流路5、7と連通する構成により、気化冷媒の拡散能力や凝縮冷媒の還流能力を高める。第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3のそれぞれが、このような構造を有していることによって、ヒートパイプ単体での熱拡散と冷媒還流能力も高い。このため、第2ヒートパイプ3を第1ヒートパイプ2に立設しても、それぞれのヒートパイプは適切な熱拡散と還流を実現でき、冷却ユニット1全体での発熱体の冷却能力は優れている。
【0147】
従来技術のように、ベースプレートもしくはフィンのいずれかが金属板で形成されている場合には、ベースプレートもしくはフィンにおける熱拡散効率が低く、冷却ユニット全体としての十分な熱拡散が実現できない。また、ベースプレートの位置づけとなるヒートパイプとフィンの位置づけとなるヒートパイプとの熱拡散特性の組み合わせが不適であると、やはり十分な熱拡散が実現できない。熱拡散が不十分であると、発熱体の冷却も不十分である。当然ながら、単体のヒートパイプが薄い平板状を有している場合でも、冷媒の拡散能力や還流能力が低ければ、冷却ユニットとしての十分な冷却能力はない。
【0148】
実施の形態1における冷却ユニット1は、ベースプレートの位置づけたる第1ヒートパイプ2からフィンの位置づけたる第2ヒートパイプ3の先端への熱伝導経路を形成でき、発熱体25を高い効率で冷却できる。
【0149】
次に第2の例として、複数の小型の発光素子を冷却しなければならない場合がある。LED(Light Emitting Device)は、小型であるが、光を発光するために大きな発熱量を生じさせる。また、複数の発光素子が使用されることもある。このため、複数の発光素子全体を冷却しなければならないことが多い。
【0150】
ただし、発光素子は、素子そのものから光を発するので、ヒートパイプの裏面に隠すようにして冷却することは好ましくない。このような場合には、ヒートパイプの端部に発光素子を配置して、発光素子を冷却する必要がある。この場合には、第2ヒートパイプ3から第1ヒートパイプ2に向かう熱伝導経路の形成によって、冷却ユニット1は、発熱体を冷却する。
【0151】
図9は、本発明の実施の形態1における冷却ユニットの冷却状態を示す模式図である。図8と異なり、第2ヒートパイプの端部に、発熱体30が配置されている。このように、第2ヒートパイプ3の端部に発熱体30が配置される場合には、第2ヒートパイプ3の第2端部9が、第1ヒートパイプ2の表面側に位置して、第2ヒートパイプ3が立設する。なお、図9では、単数の第2ヒートパイプ3が立設しているが、複数の第2ヒートパイプ3が立設していてもよい。
【0152】
発熱体30は、LEDのような小型の発光素子や電子素子であり、第1端部8に配置される。第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けた熱拡散特性に優れているので、第2ヒートパイプ3は、発熱体30からの熱を第1端部8から第2端部9に伝導する。すなわち、発熱体30から第1ヒートパイプ2に向けて、熱が伝導する。第2端部9から伝導された熱は、第1ヒートパイプ2の中央部から端部に向けて拡散する。また、第1ヒートパイプ2の厚み方向においても拡散するので、熱はやがて第1ヒートパイプ2の裏面に到達して、裏面から外部環境に放散される。
【0153】
図9に示されるとおり、冷却ユニット1は、発熱体30から第1ヒートパイプ2への熱伝導経路を形成し、第2ヒートパイプ3の端部(第1端部8)に配置された発熱体30を、冷却ユニット1全体を使って冷却できる。このとき、第2ヒートパイプ3および第1ヒートパイプ2内部での熱拡散や冷媒の還流は、図8において説明したのと同様である。冷却ユニット1全体が、冷媒の気化・凝縮を行うヒートパイプで構成されているのに加えて、熱拡散特性の異なるヒートパイプの組み合わせによって、小型の発熱体30を冷却するのに最適な熱伝導経路が形成できる。結果として、冷却ユニット1は、複数の小型の発熱体も、確実かつ高い効率で冷却できる。
【0154】
なお、発熱体30は単数でも複数でもよく、複数の第2ヒートパイプ3の一部または全部に配置されてもよい。
【0155】
このように、冷却対象となる発熱体の特性に応じて、冷却ユニット1はフレキシブルに対応できる。特に、第1ヒートパイプ2に対する第2ヒートパイプ3の組み合わせる向きを変えるだけで、第1ヒートパイプ2→第2端部9、第2端部9→第1ヒートパイプ2の双方向の熱伝導経路が形成できる。このため、冷却ユニット1は、発熱体あるいは冷却ユニット1が実装される空間の内部構造に最適に対応できる。例えば、実装空間によっては、第1ヒートパイプ2の裏面に発熱体を配置しやすい場合もあるし、第2ヒートパイプ3の端部に発熱体を配置しやすい場合もある。このような場合に、例えば冷却ユニット1は、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3が別体で提供されて、実装の際に、第2ヒートパイプ3の立設方向を決定することも好適である。あるいは、第1端部8が第1ヒートパイプ2に接しているバージョンの冷却ユニット1と、第2端部9が第1ヒートパイプ2に接しているバージョンの冷却ユニット1とが用意されておいて、実装を行うユーザの選択に委ねられるという流通態様も考えられる。
【0156】
以上のように、実施の形態1における冷却ユニット1は、熱拡散特性の異なるヒートパイプを組み合わせることで、種々の発熱体にフレキシブルに対応しつつ、高い効率で発熱体を冷却できる。
【0157】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0158】
実施の形態2では、第1ヒートパイプ2の変形例および変形例を組み合わせた冷却ユニットの変形例について説明する。
【0159】
図10は、実施の形態1で説明したものと近似する第1ヒートパイプの内面図である。第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて放射状に延伸する蒸気拡散路4を有している。蒸気拡散路4は、中間板12の切り欠き部13により形成される。また、図10に示される第1ヒートパイプ2は、図2に示される第1ヒートパイプ2と異なり、中央部を略円形に囲むように蒸気拡散路4が形成されている。このような蒸気拡散路4を有する第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて熱拡散を実現し、第2ヒートパイプ3との間の熱伝導を実現する。
【0160】
ところで、冷却ユニットは、熱拡散特性の異なる第1ヒートパイプと第2ヒートパイプを組み合わせることで、高い冷却能力を実現する。このとき、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプとの間で熱のやり取りが行われる。熱のやり取りが行われるのは、第1ヒートパイプ2に第2ヒートパイプ3が立設している箇所なので、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3との接続部分での熱伝導を促進する熱拡散特性を、第1ヒートパイプ2が有していることも好適である。
【0161】
(例1)
第1ヒートパイプ2が、立設する第2ヒートパイプ3との接続位置に対して、熱拡散を行う一例を図11に示す。図11は、本発明の実施の形態2における第1ヒートパイプの内面図である。
【0162】
図11に示される第1ヒートパイプ40は、立設する第2ヒートパイプ3の立設位置に重点的に熱を拡散する。切り欠き部13は、蒸気拡散路42、43を形成する。蒸気拡散路42、43以外の部分においては、毛細管流路5が形成されている。蒸気拡散路42と蒸気拡散路43が一体となって、一つの蒸気拡散路を形成する。
【0163】
蒸気拡散路42は、第1ヒートパイプ40の縦方向に形成されている。更には、第1ヒートパイプ40に立設される第2ヒートパイプ3の立設位置41に沿って、蒸気拡散路42は、形成される。一方、蒸気拡散路43は、第1ヒートパイプ40の中央部から端部にかけて形成されると共に、蒸気拡散路42同士を接続する。このため、蒸気拡散路43から蒸気拡散路42にかけての気化冷媒の移動経路(熱伝導経路)が形成される。
【0164】
第1ヒートパイプ40の裏面中央部付近に発熱体が配置されているとする。この場合には、中央部において受熱し、冷媒が気化する。気化した冷媒は、中央部から蒸気拡散路43を経由して端部に向けて拡散する。端部に向けて拡散する気化冷媒は、蒸気拡散路43の途中で接続する蒸気拡散路42に入り込んで拡散する。蒸気拡散路42が立設位置41に沿って形成されているので、蒸気拡散路42に入り込んだ気化冷媒は、立設位置41に沿って拡散する。この結果、立設位置41に沿って熱が集中する。立設位置41に沿って集中した熱は、第2ヒートパイプ3に伝導し、第2ヒートパイプ3の第1端部8から第2端部9に拡散して、外部環境に放散される。
【0165】
このように、例1に表される第1ヒートパイプ40は、立設する第2ヒートパイプ3へ、高い効率で熱を伝導できるので、発熱体を高い効率で冷却できる。
【0166】
また、第2ヒートパイプ3の端部(第1端部8)に発熱体が配置される場合には、第2ヒートパイプ3の第1端部8から第2端部9へ熱が拡散し、立設位置41において、第2端部9から第1ヒートパイプ40に、熱が伝導する。伝導した熱は第1ヒートパイプ40の中で気化した冷媒の拡散に合わせて拡散する。拡散した熱は、第1ヒートパイプ40の裏面に到達して、外部環境に放散される。この場合でも、第1ヒートパイプ40の蒸気拡散路42が、第2ヒートパイプ3の立設位置41に沿って形成されているので、第2ヒートパイプ3から第1ヒートパイプ40への熱伝導の効率がよい。結果として、冷却ユニット1は、第2ヒートパイプ3の端部に配置された発熱体を、高い効率で冷却できる。
【0167】
また、毛細管流路5の一部が、蒸気拡散路の一部と交差するように設けられていることで、第1ヒートパイプ40での冷媒の還流が促進される。
【0168】
(例2)
次に図12を用いて、第1ヒートパイプの他の例を説明する。
【0169】
図12は、本発明の実施の形態2における第1ヒートパイプの内面図である。
【0170】
図12に示されるヒートパイプ50は、立設する第2ヒートパイプ3の立設位置41に重点的に熱を拡散する。切り欠き部13は、蒸気拡散路51、52を形成する。蒸気拡散路51、52以外の部分においては、毛細管流路5が形成される。蒸気拡散路51と蒸気拡散路52とが一体となって、一つの蒸気拡散路を形成する。
【0171】
蒸気拡散路51は、第1ヒートパイプ50の縦方向に形成されている。更には、第1ヒートパイプ50に立設される第2ヒートパイプ3の立設位置41に沿って、蒸気拡散路51は、形成される。一方、蒸気拡散路52は、蒸気拡散路51同士を接続する。このため、蒸気拡散路52から蒸気拡散路51にかけての気化冷媒の移動経路(熱伝導経路)が形成される。
【0172】
第1ヒートパイプ50の裏面中央部付近に発熱体が配置されているとする。この場合には、中央部において受熱し、冷媒が気化する。気化した冷媒は、中央部から蒸気拡散路52を経由して端部に向けて拡散する。端部に向けて拡散する気化冷媒は、蒸気拡散路52の途中で接続する蒸気拡散路51に入り込んで拡散する。蒸気拡散路51が立設位置41に沿って形成されているので、蒸気拡散路51に入り込んだ気化冷媒は、立設位置41に沿って拡散する。この結果、立設位置41に沿って熱が集中する。立設位置41に沿って集中した熱は、第2ヒートパイプ3に伝導し、第2ヒートパイプ3の第1端部8から第2端部9に拡散して、外部環境に放散される。
【0173】
このように、例1に表される第1ヒートパイプ40は、立設する第2ヒートパイプ3へ、高い効率で熱を伝導できるので、発熱体を高い効率で冷却できる。
【0174】
また、第2ヒートパイプ3の端部(第1端部8)に発熱体が配置される場合には、第2ヒートパイプ3の第1端部8から第2端部9へ熱が拡散し、立設位置41において、第2端部9から第1ヒートパイプ50に、熱が伝導する。伝導した熱は第1ヒートパイプ50の中で気化した冷媒の拡散に合わせて拡散する。拡散した熱は、第1ヒートパイプ50の裏面に到達して、外部環境に放散される。この場合でも、第1ヒートパイプ50の蒸気拡散路51が、第2ヒートパイプ3の立設位置41に沿って形成されているので、第2ヒートパイプ3から第1ヒートパイプ50への熱伝導の効率がよい。結果として、冷却ユニット1は、第2ヒートパイプ3の端部に配置された発熱体を、高い効率で冷却できる。
【0175】
以上のように、実施の形態2における冷却ユニットは、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプと間の熱伝導を効率化できる。結果として、ベースプレートの位置づけたる第1ヒートパイプとフィンの位置づけたる第2ヒートパイプとの組み合わせである冷却ユニットは、効率よく発熱体を冷却できる。特に、第1ヒートパイプおよび第2ヒートパイプそれぞれが有する冷媒による冷却能力が、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプが組み合わされることで最大限に発揮できる。加えて、ベースプレートの位置づけたる第1ヒートパイプに発熱体が配置される場合でも、フィンの位置づけたる第2ヒートパイプの端部に発熱体が配置される場合でも、いずれの方向からでも熱拡散が行われる。
【0176】
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
【0177】
実施の形態3では、第1ヒートパイプの表面に第2ヒートパイプが立設する際の構造について説明する。第2ヒートパイプ3は、第1ヒートパイプ2の表面に立設する。このとき、単数又は複数の第2ヒートパイプ3が、第1ヒートパイプ2の表面に立設する。
【0178】
第2ヒートパイプ3は、第1ヒートパイプ2の表面に、接着剤で接着されても良く、溶接されてもよく、熱接合されてもよい。また、第1ヒートパイプ2の表面に形成された取り付け溝に、第2ヒートパイプ3が嵌合して取り付けられてもよい。第2ヒートパイプ3が取り付け溝に嵌合して取り付けられる場合には、第2ヒートパイプ3の第1端部8および第2端部9の少なくとも一方から突出する突出部が、第1ヒートパイプ2との接合を補助する。
【0179】
図13は、本発明の実施の形態3における冷却ユニットの一部の側面図である。
【0180】
第1ヒートパイプ2は、その表面に取り付け溝60を有している。取り付け溝60は、第1ヒートパイプ2の表面であって、第2ヒートパイプ3の取り付け位置に設けられる。取り付け溝60は、例えば第1ヒートパイプ2の上部板10の所定位置が切削されたり、エッチングされたりして形成される。
【0181】
第2ヒートパイプ3は、取り付け溝60に嵌合して取り付けられる。この際に、第2ヒートパイプ3の第1端部8および第2端部9の少なくとも一方から突出する突出部62が、取り付けを補助する。突出部62は、第2ヒートパイプ3の上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが、他の板よりも面積が大きいことで形成される。図13においては、上部板10と下部板11から突出部62が突出している。突出部62は、取り付け溝60の外縁に沿って折り曲げられており、突出部62は、溶接剤、接着剤などで第1ヒートパイプ2に取り付けられる。なお、このとき突出部62と取り付け溝60との間に熱的接合剤61(サーマルグリースやサーマルグリースにフィラーなどを添加した素材)が介在してもよい。また、突出部62と取り付け溝60は、ヒートプレスによって接合されてもよい。取り付け溝60において突出部62によって第2ヒートパイプ3が取り付けられることで、第2ヒートパイプ3は、強固かつ確実に第1ヒートパイプ2に取り付けられる。
【0182】
また図13では、突出部62が、取り付け溝の側面および第1ヒートパイプ2の表面に渡って取り付けられているが、他の態様で取り付けられてもよい。また、突出部62は、中間板12の突出により形成されてもよい。
【0183】
以上のように、実施の形態3における冷却ユニットは、第1ヒートパイプ2の表面において、強固かつ確実に、第2ヒートパイプ3が立設する。
【0184】
また、第2ヒートパイプ3の上部板10、下部板11および中間板12の少なくとも一つが他よりも面積が大きいことで、突出部62が形成されるので、突出部62は第2ヒートパイプ3と一体であって相互間での熱抵抗は小さい。このため、第1ヒートパイプ2との熱のやり取りを行う突出部62と第2ヒートパイプ3との間の熱抵抗が小さくなって、突出部62と第2ヒートパイプ3との間の熱伝導の効率がよい。
【0185】
加えて、第1ヒートパイプ2と突出部62とは熱的接合剤によって広い面積で接しているので(図13のように、突出部62は折り曲げられて取り付け溝60に凹面からはみ出る面に至るまで突出部62は第1ヒートパイプ2と接触する)、第1ヒートパイプ2と突出部62との間の熱抵抗も小さくなる。このように、第1ヒートパイプ2、突出部62、第2ヒートパイプ3のそれぞれの接続部分における熱抵抗は小さく、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3とは、相互において高い効率で熱を伝導できる。この結果、異なる熱拡散特性を有する2種類のヒートパイプが組み合わされた冷却ユニット1は、高い効率で発熱体を冷却できると共に、双方向性を有して発熱体を冷却できる。
【0186】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1〜3で説明した冷却ユニットを実装した電子機器について説明する。
【0187】
図14は、本発明の実施の形態4における電子機器の内面図である。図14で示される電子機器70は、半導体集積回路、電子素子、電子部品、発光素子、光学素子などの発熱を伴う発熱体を有して、所定の処理を行う機能を有している。更に、電子機器70は、狭小空間や複雑空間を有しており、冷却ユニットや冷却装置の実装が容易でない。
【0188】
電子機器70は、カーテレビ、航空機のパーソナルモニター、カーナビゲーションシステム、携帯電話、携帯端末、ノートブックパソコン、PDA、電子手帳などの薄型、小型が要求される電子機器である。あるいは、自動車、輸送用車両、輸送用機器、医療機器、産業用機器、産業ロボットなどの、発熱への対応が不可避であると共に複雑な内部空間を有している機器である。
【0189】
電子機器70は、筐体71を有し、筐体71は、電子基板72、電子部品などの発熱体73および冷却ユニット1を格納している。冷却ユニット1は、実施の形態1〜3で説明したとおり、第1ヒートパイプ2と第2ヒートパイプ3の組み合わせを有している。具体的には、中央部から端部に向けた熱拡散に優れた第1ヒートパイプ2の表面に、第1端部8から第2端部9に向けた熱拡散に優れた第2ヒートパイプ3が立設している。このため、第1ヒートパイプ2がベースプレートの位置づけとなり、第2ヒートパイプ3がフィンの位置づけとなる。
【0190】
なお、図14では、複数の第2ヒートパイプ3が第1ヒートパイプ2の表面に立設しているが、単数でもよい。
【0191】
また、図14では第1ヒートパイプ2の裏面に発熱体73が配置されているが、熱的接合剤74を介して、発熱体73が配置されてもよい。また、配置されている発熱体73は、単数でも複数でもよい。
【0192】
第1ヒートパイプ2は、図15に示すように、中央部から端部に向けて優れた熱拡散特性を有する。図15は、本発明の実施の形態4における第1ヒートパイプの熱拡散特性を示す模式図である。
【0193】
第1ヒートパイプ2は、図15の矢印に示すように、中央部から端部に向けて優れた熱拡散特性を有する。この矢印に従う熱拡散特性は、実施の形態1,2で説明したように、蒸気拡散路4の少なくとも一部が、中央部から端部に向かう方向に沿って形成されていることによる。蒸気拡散路4の少なくとも一部が、放射状であったり、複数の蒸気拡散路を結びつける蒸気拡散路が形成されていたりすることで、第1ヒートパイプ2は、中央部から端部に向けて優れた熱拡散特性を有する。
【0194】
第1ヒートパイプ2のこの熱拡散特性により、裏面に配置された発熱体73から奪った熱は、第1ヒートパイプ2の中央部から端部に向けて拡散しつつ、熱は厚み方向にも拡散するので、第2ヒートパイプ3が立設する表面にまで、熱が拡散する。
【0195】
一方、第2ヒートパイプ3は、図16に示すように、第1端部8から第2端部9に向けて優れた熱拡散特性を有する。図16は、本発明の実施の形態4における第2ヒートパイプの熱拡散特性を示す模式図である。
【0196】
第2ヒートパイプ3は、図16の矢印に示すように、第1端部8から第2端部9に向けて優れた熱拡散特性を有する。この矢印に従う熱拡散特性は、実施の形態1,2で説明したように、蒸気拡散路4の少なくとも一部が、第1端部8から第2端部9に向かう方向に沿って形成されていることによる。第2ヒートパイプ3は、第1端部8から第2端部9に向けて優れた熱拡散特性を有する。
【0197】
第2ヒートパイプ3のこの熱拡散特性により、第1ヒートパイプ2の表面から伝導した熱は、第2ヒートパイプ3の内部を第1端部8から第2端部9にかけて拡散する。第1端部8が第1ヒートパイプ2の表面に接して立設している場合には、第2単部9が第2ヒートパイプ3の先端に位置するので、第2ヒートパイプ3の内部を拡散した熱は、第2ヒートパイプ3の先端から放散される。すなわち、第1ヒートパイプ2の裏面に配置された発熱体73の熱は、第1ヒートパイプ2の中央部から第1ヒートパイプ2の表面および第2ヒートパイプ3を介して、第2ヒートパイプ3の第2端部(冷却ユニット1の先端)から放散される。これは、図8を用いて説明した場合と同様である。
【0198】
発熱体73の熱は、第2ヒートパイプ3の先端から放散されるが、第2ヒートパイプ3は、冷却ユニット1においてあたかもフィンの位置づけであるので、第2ヒートパイプ3の第2端部9からの放熱が十分に行われる。更に、第1ヒートパイプ2および第2ヒートパイプ3という冷却ユニット1を構成すると共に熱伝導が行われる部材の全てが冷媒拡散を伴うヒートパイプであるので、冷却ユニット1は、高い熱拡散能力(これに伴う冷却能力)を有する。特に、発熱体73から最終的に熱を放散する位置にかけて熱伝導経路が形成されるので、冷却ユニット1は、高い効率で熱を拡散して発熱体73を冷却できる。
【0199】
なお、ここでは、第1ヒートパイプ2の裏面に発熱体73が配置される場合について説明したが、図9に示されるように第2ヒートパイプ3の先端(第1端部8)に、発熱体73が配置されてもよい。この場合には、発熱体73からの熱が、第1端部8、第1端部9、第1ヒートパイプ2の表面、第2ヒートパイプ2の裏面の順序で伝導し、最終的には第1ヒートパイプ2の裏面から熱が放散される。このとき、第2ヒートパイプ3が、第2端部9を第1ヒートパイプ2の表面に位置するように立設されればよい。
【0200】
このように冷却ユニット1は、全体を薄型のヒートパイプで構成することで、冷媒の気化と凝縮によって、高い効率で発熱体を冷却するだけでなく、第1ヒートパイプ2の裏面や第2ヒートパイプ3の端部に配置される様々な種類の発熱体にフレキシブルに対応して、発熱体を最適に冷却できる。
【0201】
また、第1ヒートパイプ2および第2ヒートパイプ3のそれぞれは薄型である上、効率的な熱拡散によって、冷却ファンなども要しないので、狭小空間や複雑空間を有する電子機器70にも最適に実装できる。例えば、自動車や輸送用機器のライトやエンジン周辺などにおける複雑空間にも、冷却ユニット1は、容易に実装できる。このため、冷却ユニット1は、従来の冷却装置に対する置き換え能力も高い。
【0202】
例えば、図17に示されるように、電子機器75において、横向き位置する複数の発熱体77を冷却するように冷却ユニット1が実装されることもある。自動車のヘッドランプなどでは、発光素子が横向きに位置していることがある。すなわち、図17に示される発熱体77のような状態である。図17は、本発明の実施の形態4における電子機器の内面図である。
【0203】
このように、発熱体77が横向きに位置している場合でも、冷却ユニット1を横向きに実装すれば、第1ヒートパイプ2から第2ヒートパイプ3の第2端部9にかけた熱伝導経路が形成される。この場合にも、発熱体77からの熱は、第1ヒートパイプ2の裏面から第1ヒートパイプ2の表面にかけて拡散し、次いで、第2ヒートパイプ3に熱が伝導して、第1端部8から第2端部9にかけて熱が拡散する。最終的には、第2ヒートパイプ3の先端である第2端部9から熱が外部環境に放散される。
【0204】
以上のように冷却ユニット1を実装した電子機器70は、狭小空間や複雑空間に位置する発熱体を、高い効率で冷却できる。また、電子機器70は、種々の発熱体にフレキシブルに対応することも可能である。
【0205】
電子機器の他の例を図18に示す。図18は、本発明の実施の形態4における電子機器の斜視図である。電子機器82は、カーテレビやパーソナルモニターなどの薄型、小型が要求される電子機器である。
【0206】
電子機器82は、ディスプレイ83、発光素子84、スピーカ85を備えている。この電子機器82の内部に冷却ユニット1が格納されており、発熱体の冷却を実現する。
【0207】
このような冷却ユニット1が使用されることにより、電子機器の小型化や薄型化を阻害せずに、発熱体の冷却が実現できる。
【0208】
このように考えると、冷却ユニット1は、ノートブックパソコン、携帯端末、コンピュータ端末などに実装されている放熱フィンや液冷装置などに置き換えられたり、自動車や産業機器のライト、エンジン、制御コンピュータ部に実装されている放熱フレームや冷却装置などに、好適に置き換えられたりすることが可能である。冷却ユニット1は、従来用いられている放熱フィンや放熱フレームよりも高い冷却能力を有するので、当然に小型化できる。更には発熱体へのフレキシブルな対応も可能であって、種々の電子部品を冷却対象にできる。結果として、冷却ユニット1は、広い適用範囲を有する。
【0209】
なお、実施の形態1〜4で説明された冷却ユニットや電子機器は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【0210】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。
【0211】
冷却ユニットやヒートパイプを実装する電子機器、輸送用機器や産業機器などは、狭小空間や複雑空間を有する。冷却ユニットやヒートパイプは、薄型であっても平板状であったりして、一定の面積を必要とする。
【0212】
このような狭小空間や複雑空間を有する電子機器や輸送用機器においては、発熱体の冷却のために、ヒートシンクや冷却ファンなどを実装する空間的な余裕を有していない。また、ヒートパイプを実装する空間的な余裕を有していない。特に、機器の中では各種部品や各種部材が複雑に格納されており、一定の広がり(厚みや面積において)を有する実装空間が非常に少ない。
【0213】
例えば、特開平11−101585号公報に提案される冷却機能を有する電子基板は、一定の面積を必要とするので、このような狭小空間や複雑空間においては、実装面から不適である。特に、この電子基板は、平面形状を有するが、冷却対象の発熱体は湾曲していたり、小さな発熱体がばらばらに存在していたり、発熱体が湾曲する筐体の一部と接していたりするので、平板状の電子基板は、これらの発熱体と接触しにくい問題を有する。
【0214】
特許3233808号公報に提案される冷却システムは、発熱体からの熱を放熱部材に移動して冷却する技術であり、放熱部材を電子機器内部に実装することを必要とする。しかし、狭小空間しか有さない電子機器においては、放熱部材(冷却ファンや液冷ジャケットなど)を実装することは困難である。また、この冷却システムは、発熱体から奪った熱を移動させる経路を実装することも困難である問題を有している。加えて、この冷却システムは、受熱部分と放熱部分とが別れているため、複雑空間の機器においては、実装が困難である。
【0215】
ここで、ヒートパイプや液冷ジャケットのように冷媒を利用した電子部品などの冷却システムにおいては、平板状の冷却装置、複数の部材の組み合わせ(特に、受熱して冷媒を気化する第1部材と、気化した冷媒を凝縮する第2部材と、第1部材と第2部材とを毛細管を有するパイプで接続する態様のヒートパイプが多い)の冷却装置が多い。
【0216】
これらいずれの態様の冷却装置であっても、狭小空間や複雑空間においては実装が困難である問題を有する。
【0217】
このような問題に対応するため、湾曲形状のヒートパイプを提案する。
【0218】
ヒートパイプが湾曲形状を有していれば、冷却対象の発熱体が湾曲していたり、複数の冷却対象の発熱体が湾曲平面上に位置していたり、他の部材を回避して実装する必要があったりする場合であっても、ヒートパイプを確実に発熱体と接触させつつ実装できる。
【0219】
実施の形態5では、このような複雑な実装要求に対応できる湾曲形状を有するヒートパイプについて説明する。
【0220】
(湾曲形状を有するヒートパイプ)
まず、湾曲形状を有するヒートパイプの一側面として、湾曲形状を有するヒートパイプは、次のような構成を有する。
【0221】
湾曲形状を有するヒートパイプは、湾曲状の上部板と、上部板と対向する湾曲状の下部板と、上部板と下部板との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路との少なくとも一部を形成する単数又は複数の湾曲状の中間板を有する本体部を備える。
【0222】
(第2側面)
第2側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、切り欠き部は蒸気拡散路を形成し、内部貫通孔は毛細管流路を形成し、蒸気拡散路は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散し、毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
【0223】
(第3側面)
第3側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第2側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、中間板は複数であって、複数の中間板のそれぞれに設けられた内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される。
【0224】
(第4側面)
第4側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面から第3側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、上部板および下部板のそれぞれは、毛細管流路および蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える。
【0225】
(第5側面)
第5側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面から第4側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つは、他の板と接合される突起を更に有する。
【0226】
(第6側面)
第6側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面から第5側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、上部板、下部板および中間板のそれぞれは、外部貫通孔を有し、上部板に設けられた外部貫通孔、下部板に設けられた外部貫通孔および中間板に設けられた外部貫通孔のそれぞれが重なり合ってビアホールが形成される。
【0227】
(第7側面)
第7側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第6側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、ビアホールに、上部板および下部板の表面同士を、電気的に接続する電気配線層を有する。
【0228】
(第8側面)
第8側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第7側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、上部板は第1電子部品を実装し、下部板は第2電子部品を実装し、第1部品と第2部品は、電気配線層を介して電気的に接続される。
【0229】
(第9側面)
第9側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面から第8側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、本体部の側面の一部もしくは全部から突出する延長板を更に備え、延長板は、上部板、下部板および中間板の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成される。
【0230】
(第10側面)
第10側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第9側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、延長板は、屈折部で折り曲げられて形成される第1放熱面および第2放熱面を有し、第1放熱面および第2放熱面の少なくとも一部が、電子機器の筐体に熱的に接触可能である。
【0231】
(第11側面)
第11側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第10側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、延長板は、第2屈折部で折り曲げられて形成される第3放熱面を更に有し、第1放熱面、第2放熱面および第3放熱面の少なくとも一部が、電子機器の筐体に熱的に接触可能である。
【0232】
(第12側面)
第12側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第9側面から第11側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、延長板は、電気配線を有する。
【0233】
(第13側面)
第13側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第1側面から第13側面のいずれかの湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、本体部の少なくとも2箇所の温度差を測定する温度測定部と、温度差を、所定の閾値と比較して比較結果を出力する比較部と、比較結果に基づいて、本体部の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定し、判定結果を出力する判定部を更に備える。
【0234】
(第14側面)
第14側面の湾曲形状を有するヒートパイプでは、第13側面の湾曲形状を有するヒートパイプに加えて、温度測定部は、本体部の表面における中央部と周辺部との温度差である水平温度差、および本体部の表面と裏面の温度差である垂直温度差の少なくとも一方を測定する。
【0235】
狭小空間や複雑空間への実装を容易とするために、以上のように湾曲形状を有するヒートパイプを提案する。以上のような湾曲形状を有するヒートパイプについて以下に説明する。
【0236】
図19は、本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの斜視図である。
【0237】
湾曲形状を有するヒートパイプ100は、湾曲状の上部板101、上部板101と対向する湾曲状の下部板102と、上部板101と下部板102との間に積層されると共に蒸気拡散路と毛細管流路との少なくとも一部を形成する単数又は複数の湾曲状の中間板103を有する本体部104を備える。図19は、ヒートパイプ100の外観からの斜視図を示しているので、内部は見えない。このため、図19では、蒸気拡散路および毛細管流路を示すことはできないが、本体部104の内部は、実施の形態1〜4で説明したように形成される蒸気拡散路と毛細管流路を備えている。
【0238】
図19から明らかな通り、本体部104は、全体として湾曲形状を有している。このように、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、狭小空間や複雑空間においても、容易に実装できる。
【0239】
例えば、図20に示すように、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、その湾曲形状を生かして、配置向きの異なる複数の発熱体を冷却できる。図20は、本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの実装図である。
【0240】
発熱体105は、それぞれ異なる配置向きを有している。例えば、実装基板が複雑に入り組んでいたり、フレームが複雑に入り組んでいたりする場合には、ヒートパイプが、図19、20に示すように湾曲形状を有していることで、複数の発熱体105のいずれにも接触できる。結果として、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、全ての発熱体105を冷却できる。
【0241】
このように、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、異なる配置向きを有する複数の発熱体を、冷却できる。
【0242】
あるいは、フレームが複雑に入り組んでいる場合に、平板状のヒートパイプの実装が困難な場合がある。このような場合にはフレームをよけつつ実装する必要があるが、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、これに対応できる。図21は、本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの実装図である。図21は、例えば電子機器や輸送機器が、内部に複雑な形状を有するフレーム106を有している場合を示している。このフレーム106の一部に、冷却対象となる発熱体105が実装されている。平板状のヒートパイプでは、発熱体105に接触できても、フレーム106の内部に実装が困難である。一方、湾曲形状を有するヒートパイプ100であれば、発熱体105に接触できる上に、フレーム106の内部に実装も可能である。
【0243】
このように、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、狭小空間や複雑空間に実装しやすいメリットを有する。
【0244】
次に、湾曲形状を有するヒートパイプ100の詳細について説明する。
【0245】
図22は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの分解図である。図22は、ヒートパイプ100を、上部板101、下部板102、中間板103に分解した様子を示している。
【0246】
上部板101、下部板102、中間板103は、それぞれ湾曲している。湾曲した上部板101とこれに対向する湾曲した下部板102との間に単数又は複数の湾曲した中間板103が積層される。図22では、4枚の中間板103が積層される。図23は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの分解図である。図23を用いて、湾曲形状を有するヒートパイプ100について更に詳細を説明する。
【0247】
湾曲した上部板101と湾曲した下部板102の間に、湾曲した中間板103が挟まれて積層される。中間板103は、切り欠き部110と内部貫通孔111を備え、切り欠き部110は、蒸気拡散路114を形成し、内部貫通孔111は、毛細管流路115を形成する。また、上部板101および下部板102の少なくとも一方は、凹部112を有する。
【0248】
上部板101、下部板102および中間板103の少なくとも一つは、突起部113を有しており、上部板101、下部板102および中間板103同士が接合される際に、突起部113が接着剤となる。突起部113を接着剤として接合されると、湾曲形状を有する本体部104が形成され、その内部には、蒸気拡散路114と毛細管流路115が形成される。このようにして、湾曲している上部板101、下部板102および中間板103が接合されることで、湾曲形状を有するヒートパイプ100が作られる。ヒートパイプ100は、内部に冷媒を封入し、気化した冷媒は蒸気拡散路114を経由して本体部104内部を拡散し、凝縮した冷媒は、毛細管流路115を経由して還流する。この冷媒の気化・凝縮の繰り返しにより、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、発熱体を冷却できる。
【0249】
このように、湾曲した上部板101、下部板102、中間板103を積層して接合することで、湾曲形状を有するヒートパイプ100を得ることができる。
【0250】
湾曲している以外では、上部板101、下部板102、中間板103は、実施の形態1で説明したのと同様の構造や機能を有している。
【0251】
(上部板)
上部板101について説明する。
【0252】
上部板101は、湾曲形状である。
【0253】
上部板101は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。なお、上部板101は、湾曲形状であればよく、全体としては円形や方形を示していてもよい。
【0254】
上部板101は、その一方の面であって中間板103と対向する面に、蒸気拡散路114および毛細管流路115の少なくとも一方と連通する凹部112を有していることも好ましい。凹部112が毛細管流路115と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板101から毛細管流路115へと伝わりやすくなる。あるいは、凹部112が蒸気拡散路114と連通することで、気化した冷媒が、上部板101の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。
【0255】
上部板101は、中間板103と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。上部板101は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板102と特段に区別されるものでもない。また、上部板101が発熱体と接する面となっても、発熱体と対向する面となってもかまわない。
【0256】
また、上部板10は、冷媒の注入口を備えている。上部板101、中間板102、下部板102が積層されて接合されると内部空間が形成される。この内部空間は、冷媒を封入する必要があるので、上部板101などの接合後に注入口から冷媒が封入される。注入口は、冷媒が封入されると封止されて内部空間は密封される。
【0257】
なお、冷媒は、積層後に注入口から封入されても良く、上部板101、下部板102、中間板103が積層される際に冷媒が封入されてもよい。
【0258】
(下部板)
下部板102は、上部板101と対向して単数又は複数の中間板103を挟む。更に、下部板101は、湾曲している。
【0259】
下部板102は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。
【0260】
下部板102は、その一方の面であって中間板103と対向する面に、蒸気拡散路114と毛細管流路115に連通する凹部112を有していることも好適である。凹部112は、毛細管流路115と連通することで凝縮した冷媒が、下部板102から毛細管流路115へ伝わりやすくなる。また、凹部112が蒸気拡散路114と連通することで、気化した冷媒が、下部板102の表面で広い面積で接しやすくなり、気化した冷媒の放熱が促進される。これは、上部板101に凹部112が設けられることと同様の意義を有する。
【0261】
下部板102は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板101と特段に区別されるものでもない。
【0262】
下部板102は、中間板103と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0263】
また、下部板102が、発熱体と接しても接しなくてもよい。
【0264】
(中間板)
中間板103は、単数又は複数の板材である。図23では、ヒートパイプ100は、4枚の中間板103を有している。中間板103は、上部板101と下部板102の間に積層される。
【0265】
中間板103は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。
【0266】
また、中間板103は、上部板101および下部板102と接続される際に用いられる突起や接着部を有していても良い。加えて、中間板103は、微小な断面積を有する内部貫通孔111を有している。この内部貫通孔111は、毛細管流路115を形成する。
【0267】
最終的には、上部板101と下部板102の間に中間板103が積層されて接合されることで、ヒートパイプ100が形成される。中間板103は、単数でも複数でもよい。但し、後述するように、より微小な断面積を有する毛細管流路115を形成するためには、中間板103は、複数であることが好ましい。
【0268】
(中間板と蒸気拡散路および毛細管流路)
次に、蒸気拡散路114および毛細管流路115について、説明する。中間板103は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する蒸気拡散路114と、凝縮した冷媒を垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる毛細管流路115を形成する。
【0269】
まず、蒸気拡散路114について説明する。
【0270】
中間板103は、切り欠き部110と内部貫通孔111を有している。
【0271】
切り欠き部110は、蒸気拡散路114を形成する。上部板101と下部板102の間に中間板103が積層された場合に、切り欠き部110は空隙を形成する。この空隙が蒸気拡散路114となる。
【0272】
ここで、切り欠き部110が、ヒートパイプ100の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成されることで、蒸気拡散路114も、ヒートパイプ100の平面方向および厚み方向の少なくとも一方に向けて形成される。このため、気化した冷媒は平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。勿論、切り欠き部110によって、下部板102と上部板101とがつながる場合には、下部板102で受熱して気化した冷媒は、平面方向および厚み方向に移動して、気化した冷媒(および熱)が下部板102から上部板101にまで達する。すなわち、蒸気拡散路114は、平面方向および厚み方向の両方に(もちろん、蒸気拡散路114の形状によっていずれか一方の場合もありえる)かけて、気化した冷媒を移動させる。
【0273】
特に、切り欠き部110が中間板103の中央部から放射状に形成されている場合には、蒸気拡散路114もヒートパイプ100の中央部から放射状に形成されることになる。発熱体は、ヒートパイプ100の略中央部に設置されることが多いので、冷媒はヒートパイプ100の略中央部でもっとも熱を受熱する。このため、ヒートパイプ100の中央部付近の冷媒が最初に気化する。このとき、蒸気拡散路114がヒートパイプ100の略中央部から放射状に形成されていると、中央付近で生じた気化冷媒は、放射状に、すなわち平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散する。なお、蒸気拡散路114が平面方向および厚み方向の両方に渡って形成されていれば、気化冷媒は、平面方向および厚み方向の両方に渡って拡散する。結果として、気化冷媒(発熱体から奪われた熱)は、発熱体と反対側の放熱面に到達する。発熱体と反対側の放熱面に到達した熱は、ヒートパイプ100に伝導する。
【0274】
このように、中間板103が切り欠き部110を有し、平面方向および厚み方向の少なくとも一方に広がる蒸気拡散路114が形成されることで、ヒートパイプ100の内部においては、気化した冷媒が平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散するようになる。結果として、発熱体からの熱は、中央から周辺に向けてヒートパイプ100内部を平面方向に拡散する。
【0275】
ヒートパイプ100は、拡散した後で凝縮した冷媒を、ヒートパイプ100の全面を効率よく活用して還流させる毛細管流路115を有していることにより、高い平面方向および厚み方向の少なくとも一方の拡散(および還流)性能を実現している。更に、毛細管流路115と連通する凹部112によって、凝縮した冷媒は更なる効率で還流できる。凹部112は、凝縮した冷媒の還流を促進させる役割も有する。
【0276】
次に毛細管流路115について説明する。
【0277】
中間板103は、内部貫通孔14を有している。内部貫通孔111は、微小な貫通孔であり、凝縮した冷媒が還流する毛細管流路115を形成する。中間板103が切り欠き部110を有する場合には、切り欠き部110以外の部分に内部貫通孔111が形成される。
【0278】
ここで、中間板103が単数の場合には、中間板103に設けられている内部貫通孔111がそのまま毛細管流路5になる。
【0279】
これに対して、中間板103が複数である場合には、複数の中間板103のそれぞれに設けられた内部貫通孔111の一部のみが重なって、内部貫通孔111の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路115が形成される。このように、中間板103が複数である場合には、内部貫通孔111そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路115が形成されるので、毛細管流路115における凝縮した冷媒の還流をより効果的にできる。毛細管の断面積が小さいことで、毛細管現象による液体の移動が促進されるからである。
【0280】
なお、ここで、中間板103のそれぞれには、複数の内部貫通孔111が設けられる。複数の内部貫通孔111が、複数の流路を有する毛細管流路115を形成できるからである。
【0281】
内部貫通孔111は、中間板103の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。但し、内部貫通孔111の一部同士が重なって毛細管流路115を形成することから、内部貫通孔111は方形であることが適当である。
【0282】
内部貫通孔111は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良い。
【0283】
中間板103が複数の場合には、内部貫通孔111は、複数の中間板103のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板103は、その内部貫通孔111の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔111の位置は、隣接する中間板103毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板103における内部貫通孔111の位置と、この中間板103と隣接する別の中間板103における内部貫通孔111の位置は、内部貫通孔111の断面の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板103毎に内部貫通孔111の位置がずれていることで、複数の中間板103が積層された場合に、内部貫通孔111の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路115が形成される。
【0284】
毛細管流路115は、複数の中間板103が積層される際に、内部貫通孔111の一部同士が重なり合って、内部貫通孔111の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔111の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、ヒートパイプ100の垂直方向に積層され、垂直方向の孔同士が接続することで、垂直方向の流路が形成される。また、垂直方向において階段状の孔となるので、垂直方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、凝縮した冷媒を、垂直方向もしくは垂直・平面方向に還流させる。
【0285】
なお、内部貫通孔111の一部のみが重なるようにして、内部貫通孔111よりも小さな断面積を有する毛細管流路115が形成される場合には、毛細管流路115を直接加工するよりも、容易に製造できるメリットもある。
【0286】
なお、毛細管流路115は、凝縮した冷媒を還流するが、気化した冷媒を通すこともありえる。
【0287】
また、毛細管流路115、凹部112の角部や切り欠き部110の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路115の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路115の断面形状は、内部貫通孔111の形状と、内部貫通孔111同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0288】
(製造工程)
ここで、ヒートパイプ100の製造工程について説明する。
【0289】
上部板101、下部板102、中間板103が積層されて接合されることでヒートパイプ100が製造される。
【0290】
製造工程について図23を用いて説明する。
【0291】
上部板101、下部板102および複数の中間板103(図23では中間板103は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板103は、複数の中間板12のそれぞれに設けられた内部貫通孔111のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0292】
上部板101、下部板102および複数の中間板103の少なくとも一つは、接合突起を有している。
【0293】
上部板101、下部板102、複数の中間板103は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
【0294】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。
【0295】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm〜150kg/cmの範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0296】
次に、上部板101や下部板102の一部に空けられた注入口を通じて、冷媒が注入される。その後、注入口が封止されてヒートパイプ100が完成する。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、ヒートパイプ100の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0297】
(ビアホールを有するヒートパイプ)
また、湾曲したヒートパイプ100は、上部板101、下部板102および中間板103のそれぞれが外部貫通孔を有して、この外部貫通孔同士が重なってビアホールを形成することも好適である。
【0298】
図24は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの側面図である。図24に示される通り、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、外部貫通孔同士が重なって形成されるビアホール120を有している。ビアホール120は、上部板101の表面から下部板102の表面まで貫通している。ビアホール120によって、例えば上部板101の表面に実装された電子部品と下部板102の表面に実装された電子部品とを、電気的に接続することができる。例えば、電気配線をビアホールの内部に通して、上部板101に実装された電子部品と下部板102に実装された電子部品とを電気的に接続する。
【0299】
あるいは、ビアホールに電気配線層を形成して、上部板101に実装された電子部品と下部板102に実装された電子部品とを電気的に接続してもよい。電気配線層は導電性のある膜やめっき層により形成される。
【0300】
ビアホール120は、湾曲形状を有するヒートパイプ100において表面から裏面に至るまで貫通されているので、湾曲形状を有するヒートパイプ100の両面に発熱体である電子部品を接触させたり実装したりできる。特に、表面の電子部品と裏面の電子部品同士を、電気的に接続させることもできる。あるいは、裏面の電子部品からの信号を、表面に引き出すことも可能となる。
【0301】
なお、外部貫通孔同士が重なってビアホール120が形成されるが、板状の部材同士が積層されるので、ビアホール120の内部の壁は、封止される。このため、湾曲形状を有するヒートパイプ100の内部空間の封止が損なわれることも生じない。勿論、封止を高めるために、予め外部貫通孔の外周が突出しており、突出部同士が重なるようにしておくことも適当である。
【0302】
(延長板を有するヒートパイプ)
また、湾曲形状を有するヒートパイプ100は、本体部104の側面の一部もしくは全部から突出する延長板121を更に備えることも好適である。延長板121は、上部板101、下部板102および中間板103の少なくとも一つが、他よりもその面積が大きいことで形成される。図25は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの側面図である。ヒートパイプ100は、本体部104から突出する延長板121を備える。
【0303】
図25では、延長板121は、中間板103が上部板101および下部板102よりもその面積が大きいことで形成されている。延長板121は、屈折部で折り曲げられて、第1放熱面122、第2放熱面123、第3放熱面124を有する。ヒートパイプ100は、電子機器の筐体125内部に実装可能であり、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部が、筐体125に熱的に接触可能である。熱的に接触可能であるとは、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部が筐体に直接接触していたり、熱的接合剤を介して接触していたりすることである。
【0304】
第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部が筐体125に熱的に接触可能であることにより、ヒートパイプ100は、発熱体から奪った熱を、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部を介して、筐体125に放熱できる。第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部は、一定の面積を有していることに加えて、中間板103の一部であるので、本体部104と延長板121との間での熱抵抗の増加はほとんど無い。このため、本体部104が発熱体から奪い取った熱は、効率的に、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部に伝導する。更に、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部は、筐体125と熱的に接触しているので、伝導された熱を、筐体125に排熱できる。すなわち、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124の少なくとも一部は、発熱体から奪った熱の放散を補強できる。
【0305】
結果として、延長板121とこの延長板121に形成される第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124によって、ヒートパイプ100は、狭小空間においても、発熱体を効率よく冷却できる。特に、第1放熱面11、第2放熱面123および第3放熱面124は、狭小空間にも実装可能であり、これらの放熱面から筐体125に直接的に熱を放散できるので、ヒートパイプ100は、冷却ファンや液冷ジャケットなどの二次冷却部材を必要としない。このことからも、狭小空間に、ヒートパイプ100は実装しやすく、冷却効果も損なわれない。
【0306】
また、延長板121は、電気配線を有していてもよい。
【0307】
例えば本体部104に実装された電子部品と外部の電子部品とを電気的に接続させる際に、延長板121に電気配線が形成されていることで、電子部品同士が確実に電気接続される。
【0308】
電気配線は、例えば延長板121に形成された配線パターンやプリントパターンなどを含む。あるいはフレキシブル基板が延長板121に貼り付けられても良く、延長板121そのものがフレキシブル基板で形成されてもよい。
【0309】
図26は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図である。図26に示されるヒートパイプ100は、フレキシブル基板で延長板121を形成している。加えて、延長板121は、電気配線130を有している。電気配線130は、本体部104の表面に実装された電子部品131と接続されている。電気配線130の他方は、外部の電子部品や電気スロットと接続可能であって、電子部品131との電気的やり取りを可能にする。
【0310】
このように、延長板121に電気配線130が形成されることで、本体部104に実装された電子部品と外部との電気的接続を可能とする。
【0311】
(自己診断機能を有するヒートパイプ)
次に、自己診断機能を有するヒートパイプについて図27を用いて説明する。
【0312】
図27は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプのブロック図である。湾曲形状を有するヒートパイプ100は、狭小空間や複雑空間に実装される。このような狭小空間や複雑空間を有する電子機器や産業機器は、ユーザにとっては開閉やメンテナンスが困難であることが多く、湾曲形状を有するヒートパイプ100の性能劣化や故障などを、ユーザが判断できることが好ましい。
【0313】
例えば、冷媒の(言い換えれば熱の)拡散性能の高いヒートパイプ100の冷却能力が高いとしても、狭小空間を有する筐体の中では不測の事態も生じうる。例えば、内部空間に熱がこもってしまい、発熱体の発熱がそのスペック以上になることもある。この場合には、発熱体の発熱スペックに合わせた湾曲形状を有するヒートパイプ100の冷却能力を超える発熱が生じてしまい、湾曲形状を有するヒートパイプ100の冷却能力が不十分となる。こうなってしまうと、電子機器や産業機器の動作不良の原因ともなる。あるいはヒートパイプ100そのものの動作不良や故障の原因ともなりうる。
【0314】
そこで、図27に示されるように、自己診断機能を有するヒートパイプが提案される。なお図27においては、湾曲形状を有するヒートパイプ100が平板状に見えるが、図面上の都合であって、本来は湾曲形状を有する。
【0315】
湾曲形状を有するヒートパイプ100は、本体部140、自己診断手段145、温度測定部146、比較部147、判定部148を備えている。湾曲形状を有するヒートパイプ100自身は、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。
【0316】
湾曲形状を有するヒートパイプ100は、発熱体を冷却するヒートパイプとしての機能を有する本体部140と、本体部140の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として診断する自己診断手段145を有している。自己診断手段145は、温度測定部146、比較部147、判定部148を備えている。
【0317】
本体部140は、湾曲形状を有するヒートパイプ100の有する冷却機能を発揮する部分であり、湾曲形状を有している。本体部140は、周囲が封止された内部空間を有しており、内部空間は、冷媒を封入する。本体部140は、気化した冷媒が拡散する蒸気拡散路141と凝縮した冷媒を還流させる毛細管流路142とを有している。ここで、蒸気拡散路141は、気化した冷媒を平面および厚み方向に拡散する。毛細管流路142は、垂直方向もしくは垂直・平面方向に凝縮した冷媒を還流させる。
【0318】
このため、本体部140は、冷媒を平面および厚み方向(平板状の本体部140の平面および厚み方向)に拡散させる。言い換えると、発熱体の熱は、本体部140において平面および厚み方向に拡散されて移動される。気化した冷媒は、本体部140の表面で放熱して冷却されるが、気化した冷媒が本体部140の平面方向に広く拡散するため、本体部140の表面は、隅々まで効率よく活用して、気化した冷媒を冷却できる。
【0319】
本体部140の表面には、少なくとも2箇所の温度検出部位143、144が設けられている。
【0320】
温度測定部146は、温度検出部位143,144の温度差を測定する。温度測定部146は、測定した温度差を比較部147に出力する。比較部147は、温度差を所定の閾値と比較して、比較結果を判定部148に出力する。
【0321】
判定部148は、比較結果に基づいて、本体部140の動作状態を判定して判定結果を出力する。このとき、判定部148は、本体部140の少なくとも2箇所の温度差に基づいて本体部140の動作状態を判定する。本体部140は、気化した冷媒の拡散と凝縮した冷媒の還流により、発熱体を冷却する。すなわち、その拡散性が冷却能力を生み出している。このため、異なる2箇所の温度差が高いということは、拡散性能が不十分であり、冷却能力が足りてないことを示す。このため、判定部148は、少なくとも2箇所の温度差に基づくことで、本体部140の拡散性能の状態、すなわち動作状態を判定できる。
【0322】
判定部148は、判定結果を出力する。湾曲形状を有するヒートパイプ100が実装されている電子機器やユーザは、判定結果を受け取ることができる。結果として、判定部148からの判定結果により、ユーザや電子機器は、その後の制御や処置を取ることができ、電子機器の動作不良や故障、あるいは湾曲形状を有するヒートパイプ100自体の動作不良や故障を未然に防止できる。
【0323】
自己診断手段145は、上記の通り説明した本体部140の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定する。各部の詳細について以下に説明する。
【0324】
(温度検出部位)
温度検出部位143、144では、温度センサーが設置されて、それぞれの部位の温度を温度測定部146に伝える。
【0325】
温度センサーとしては、市販の温度センサーや熱電対など種々のものが使用されるが、簡単には、例えば本体部140の表面に形成される金属めっきのパターンが利用される。
【0326】
なお、温度検出部位は、2箇所でも3箇所以上であってもよい。
【0327】
(温度測定部)
温度測定部146は、温度検出部位143、144での温度差を測定する。温度差の測定においては、温度検出部位143、144のそれぞれでの絶対値での温度を測定し、温度差を測定してもよく、最初から温度差を測定しても良い。
【0328】
温度測定部146は、温度検出部位143、144の設置位置によって、本体部140の様々な位置での温度差を測定できる。例えば、温度測定部146は、本体部140の表面における中央部と周辺部との温度差(水平温度差)を測定する。勿論、温度測定部146は、本体部140の表面における異なる位置である周辺部と周辺部の温度差を測定しても良い。
【0329】
このように、温度測定部146が、本体部140の特定の位置の絶対温度を測定するのではなく、少なくとも2箇所の温度差を測定するのは、本体部140が冷媒を拡散させることで発熱体を冷却する特性を有しているからである。本体部140のヒートパイプとしての冷却能力は、その拡散性能に依存しているので、拡散能力を測定することで、冷却能力が推測できる。ここで、拡散性能の優劣は、本体140における異なる位置での温度差で推定できる。
【0330】
例えば、本体部140の表面における中央部と周辺部の温度差が大きい場合は、中央部で受熱した熱が平面方向に十分に拡散できてないことを示す。これは、冷却能力が不十分(発熱体の発熱が、冷却能力を超えている)であることを示している。
【0331】
逆に、本体部140の表面における中央部と周辺部の温度差が小さいということは、中央部で受熱した熱が平面方向に十分に拡散できていることを示す。これは、発熱体の発熱が、本体部140の冷却能力を超えてないことを示している。
【0332】
このように、温度測定部146は、本体部140の特定箇所の絶対温度を冷却能力の判定材料として提供するのではなく、本体部140の少なくとも2箇所の温度差を、冷却能力の判定材料として提供する。このように、絶対温度ではなく、少なくとも2箇所以上の温度差に基づいて本体部140の動作状態が判定されることで、冷媒の拡散性能の高いヒートパイプの動作状態の判定がより正確に行える。
【0333】
温度測定部146は、測定した温度差を、比較部147に出力する。
【0334】
(比較部)
比較部147は、温度測定部146から受けた温度差を、所定の閾値と比較する。所定の閾値は、湾曲形状を有するヒートパイプ100に要求される冷却能力、湾曲形状を有するヒートパイプ100が実装される電子機器の仕様などに応じて定められる。
【0335】
例えば、あるヒートパイプに対して熱を与えて実験を行い、どの程度の温度差になれば、ヒートパイプの動作が事実上行われていないかを測定しておく。この温度差を基準に閾値を決定すればよい。
【0336】
所定の閾値は、本体部140の冷却能力が、発熱体の発熱に対して十分であるか否かを決定する基準として用意される。
【0337】
比較部147は、電気信号として受け取った温度差を、電気信号としてメモリなどに記憶されている閾値と、比較器やAND回路などを用いて比較する。比較の仕方については、種々の公知技術が適用されればよい。
【0338】
温度測定から比較までについて、簡単に実施する構成の一例を、図28を用いて説明する。図28は、本発明の実施の形態5における温度測定から比較までを行う回路の回路図である。
【0339】
温度検出部位143、144に、金属めっきのパターンが形成されており、このパターンの出力を、図28に示されるようにオペアンプ150に接続する。パターンから出力される電圧は、温度検出部位143、144での温度に比例するので、オペアンプ150に入力される2つの信号の電圧の差は、温度検出部位143、144での温度差を示している。
【0340】
オペアンプ150は、入力される2つの信号の電圧差が所定以上であるか否かで異なる信号を出力する。例えば、2つの信号の電位差が所定未満である場合(2箇所の温度差が所定の閾値未満である)には、プラス電位の信号が出力される。逆に、2つの信号の電位差が所定以上である場合(2箇所の温度差が所定の閾値以上である)には、マイナスの電位の信号が出力される。
【0341】
このように、図28に示される簡便な回路は、本体部2の少なくとも2箇所の温度差を測定した上で、閾値と比較することができる。
【0342】
(判定部)
次に、判定部148について説明する。
【0343】
判定部148は、比較部147からの比較結果に基づいて、本体部140の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定する。より具体的には、発熱体の発熱が、本体部140の(言い換えれば湾曲形状を有するヒートパイプ100の)冷却能力を超えているかいないかを、判定部148は判定する。発熱体の発熱が、本体部140の冷却能力を超えている場合には、電子機器の動作不良や故障、湾曲形状を有するヒートパイプ100自体の動作不良や故障の原因となるからである。
【0344】
判定部148は、比較結果に基づいて、発熱体の発熱が、本体部140の冷却能力を超えていることを示す信号および本体部140の冷却能力を超えていないことを示す信号のいずれかを、判定結果として出力する。判定結果は、電気信号として出力されれば良い。例えば、判定結果は1ビットの電気信号であるとすると、この電気信号の値が「0」の時には、発熱体の発熱が本体部140の冷却能力を超えていることを示し、電気信号の値が「1」の時には、発熱体の発熱が、本体部140の冷却能力を超えていないことを示す。
【0345】
判定結果は、信号としてユーザや電子機器にとって利用が可能となる。
【0346】
結果として、ユーザや電子機器そのものは、電子機器や湾曲形状を有するヒートパイプ100の動作不良や故障につながる情報を事前に入手でき、これら動作不良や故障を未然防止できる。
【0347】
なお、自己診断手段145は、電子回路で構成されて電子基板として本体部140と別体または一体にして提供されれば良い。
【0348】
また、自己診断手段145は、本体部140の動作状態を、ヒートパイプの冷却能力を基準として判定するが、これは湾曲形状を有するヒートパイプ100そのものの動作状態を、冷却能力を基準として判定することと同義である。
【0349】
以上のように、ヒートパイプの冷却能力の観点からの動作状態が、正確かつ適切に把握できる。結果として、電子機器やヒートパイプの動作不良や故障が未然防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0350】
【図1】本発明の実施の形態1における冷却ユニットの側面図
【図2】本発明の実施の形態1における第1ヒートパイプの内面図
【図3】本発明の実施の形態1における第1ヒートパイプの分解側面図
【図4】本発明の実施の形態1における第2ヒートパイプ3の内面図
【図5】本発明の実施の形態1における第2ヒートパイプ3の内面図
【図6】本発明の実施の形態1における冷却ユニットの斜視図
【図7】本発明の実施の形態1における冷却ユニットの側面図
【図8】本発明の実施の形態1における冷却ユニットの冷却状態を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態1における冷却ユニットの冷却状態を示す模式図
【図10】実施の形態1で説明したものと近似する第1ヒートパイプの内面図
【図11】本発明の実施の形態2における第1ヒートパイプの内面図
【図12】本発明の実施の形態2における第1ヒートパイプの内面図
【図13】本発明の実施の形態3における冷却ユニットの一部の側面図
【図14】本発明の実施の形態4における電子機器の内面図
【図15】本発明の実施の形態4における第1ヒートパイプの熱拡散特性を示す模式図
【図16】本発明の実施の形態4における第2ヒートパイプの熱拡散特性を示す模式図
【図17】本発明の実施の形態4における電子機器の内面図
【図18】本発明の実施の形態4における電子機器の斜視図
【図19】本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの斜視図
【図20】本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの実装図
【図21】本発明の実施の形態5における湾曲形状を有するヒートパイプの実装図
【図22】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの分解図
【図23】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの分解図
【図24】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの側面図
【図25】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの側面図
【図26】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの斜視図
【図27】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプのブロック図
【図28】本発明の実施の形態5における温度測定から比較までを行う回路の回路図
【符号の説明】
【0351】
1 冷却ユニット
2 第1ヒートパイプ
3 第2ヒートパイプ
4 蒸気拡散路
5 毛細管流路
6 蒸気拡散路
7 毛細管流路
8 第1端部
9 第2端部
10 上部板
11 下部板
12 中間板
13 切り欠き部
14 内部貫通孔
15 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部から端部に向けた熱拡散に優れる第1ヒートパイプと、
前記第1ヒートパイプの表面に立設されると共に、第1端部から前記第1端部と対向する第2端部に向けた熱拡散に優れる第2ヒートパイプを備え、
前記第1ヒートパイプと前記第2ヒートパイプのそれぞれは、蒸気拡散路と毛細管流路を一体に有して冷媒を封入すると共に封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する冷却ユニット。
【請求項2】
前記第1ヒートパイプの表面に前記第2ヒートパイプが取り付けられる場合には、前記第1端部および前記第2端部のいずれかが、前記表面側に位置して取り付けられる請求項1記載の冷却ユニット。
【請求項3】
前記第1ヒートパイプの裏面に発熱体が配置される場合には、前記第1端部が前記第1ヒートパイプの表面側に位置して、前記第2ヒートパイプが前記第1ヒートパイプに取り付けられる請求項1から2のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項4】
前記第2ヒートパイプの端部に発熱体が配置される場合には、前記第2端部が前記第1ヒートパイプの表面側に位置して、前記第2ヒートパイプが前記第1ヒートパイプに取り付けられる請求項1から2のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項5】
前記第1端部が前記第1ヒートパイプの表面側に位置して前記第2ヒートパイプが前記第1ヒートパイプに取り付けられる場合には、前記第1ヒートパイプの裏面から前記第1ヒートパイプの第2端部に向けての熱伝導経路が形成され、
前記第2端部が前記第1ヒートパイプの表面側に位置して前記第2ヒートパイプが前記第1ヒートパイプに取り付けられる場合には、前記第2ヒートパイプの第1端部から前記第1ヒートパイプの裏面に向けての熱伝導経路が形成される、請求項3から4のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項6】
前記第1ヒートパイプは、
上部板と、
前記上部板と対向する下部板と、
前記上部板と前記下部板との間に積層される単数又は複数の中間板を有し、
前記中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は、前記蒸気拡散路を形成し、前記内部貫通孔は、前記毛細管流路を形成し、前記切り欠き部は、前記中間板の中央部から端部に向けて形成される請求項1から5のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項7】
前記第1ヒートパイプは、
上部板と、
前記上部板と対向する下部板と、
前記上部板と前記下部いたとの間に積層される単数又は複数の中間板を有し、
前記中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は、前記中間板において、前記第2ヒートパイプが立設する位置に沿って形成される請求項1から5のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項8】
前記第2ヒートパイプは、
上部板と、
前記上部板と対向する下部板と、
前記上部板と前記下部板との間に積層される単数又は複数の中間板を有し、
前記中間板は、切り欠き部と内部貫通孔を有し、前記切り欠き部は、前記蒸気拡散路を形成し、前記内部貫通孔は、前記毛細管流路を形成し、前記切り欠き部は、前記中間板の一方の端部である第1端部から前記第1端部と対向する第2端部に向けて形成される請求項1から7のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項9】
前記第1端部側における前記切り欠き部の平面方向での幅は、前記第2端部側における前記切り欠き部の平面方向の幅よりも狭い請求項8記載の冷却ユニット。
【請求項10】
前記第2ヒートパイプは、前記第1ヒートパイプの表面に形成された取り付け溝に、嵌合して取り付けられる請求項1から9のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項11】
前記第2ヒートパイプが有する前記上部板および前記下部板の少なくとも一方は、前記第1端部および前記第2端部の少なくとも一方から突出する突出部を有し、前記突出部は、前記取り付け溝の外側の少なくとも一部を覆う請求項10記載の冷却ユニット。
【請求項12】
前記第1ヒートパイプの表面に、複数の前記第2ヒートパイプが立設する、請求項1から11のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項13】
前記中間板は複数であって、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成される請求項1から12のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項14】
前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路および前記蒸気拡散路の少なくとも一方と連通する凹部を更に備える請求項1から13のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項15】
前記蒸気拡散路は、気化した冷媒を平面方向および厚み方向の少なくとも一方に拡散し、前記毛細管流路は、凝縮した冷媒を垂直もしくは垂直・平面方向に還流させる請求項1から14のいずれか記載の冷却ユニット。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか記載の冷却ユニットと、
前記冷却ユニットにおいて、前記第1ヒートパイプの裏面および前記第2ヒートパイプの端部の少なくとも一方に配置された発熱体と、
前記冷却ユニットおよび前記発熱体を格納する筐体を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−40987(P2010−40987A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205502(P2008−205502)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】