説明

冷却装置及び画像形成装置

【課題】ダクト上流側に屈曲部が設けられていても、ダクト下流側の空気流の流速を均一化して、流路抵抗を増大させずに冷却効率を高めることが可能な冷却装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】ダクト310は、定着部及びヒートパイプの位置や形状に応じて屈曲された形状に形成されており、一端に吸気口312が設けられ、他端に排気口314が設けられている。屈曲部330の下流に位置する送風流路340には、絞り構造350、送風装置320が配されており、送風装置320のファン322が回転駆動されると共に、吸気口312から吸引された空気がダクト310内の送風流路340及び絞り構造350を通過して排気口314から排出される。下流には、冷却対象物360が挿入されており、空気流によって冷却される。絞り構造350は、下流側流路344における空気流の速度分布のムラを抑制して冷却対象物360に対する冷却効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダクト内の冷却対象物を効率良く冷却する冷却装置及び冷却装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置、ファクシミリ機能と複写機能を有する複合機等の画像形成装置では、機内の温度上昇が、機器の機能不全を引き起こすおそれがあるので、内部の熱源を冷却する冷却装置が搭載されている。
【0003】
例えば、複写機などの画像形成装置においては、画像を記録媒体に定着する定着部からの熱伝達、現像部分の自己発熱などにより、画質の劣化、定着外の部位でのトナーの融着、紙のカールによる紙詰まり等が生じる。
【0004】
このような熱による異常を防ぐため、発熱する部位に直接、もしくは発熱部位と熱伝達率の高い熱伝導体(ヒートパイプ)で接続された放熱フィン等に対してファンなどにより生じた空気流を供給する冷却装置を設けて冷却している。
【0005】
また、冷却装置においては、例えば、(1)ファンの個数を減らすため、(2)機外からフレッシュエアを取り込むため、(3)確実な機外への排気を行うため、(4)余分な風の回りこみによるトナー飛散を防ぐためなど、様々な理由で機内(筐体内)にダクトを設置している。
【0006】
例えば、冷却装置としては、複数の熱源に対して共通したメインダクトを配し、当該メインダクトに各熱源から熱せられたエアが流れ込むようなダクト構造にし、少ないファン数で機内の一様な温度低減を図るものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、他の冷却装置としては、熱源とヒートパイプで連結された放熱フィンが、ダクト内に配され、放熱フィンの前後に配されたファンからの送風によって、放熱フィンを冷却するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、別の冷却装置としては、少ないファンで効率的に冷却・排気を行うためにトンネル効果を利用し、上下方向の冷却流路を想定したレイアウトとした上で、ダクトによる絞込みによって冷却対象物に空気流を供給するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜3のいずれの場合も、機内にダクト構造を配しようとすると、機体サイズの低減化(小型化、省スペース化)などにより、ダクトの配置スペースが十分確保できないため、ダクト自体の流路は複雑な形状になり、吸気口から排気口に至るまでのダクト系路は、屈曲を繰り返すことになる。
【0010】
しかしながら、冷却装置では、ダクトに屈曲部を設けることによりダクト内における流体抵抗が上がってファンの送風効率が低下してしまったり、更にダクト内の流れ(流速)にムラが出来て、ファンの送風効率が低下したりヒートパイプのフィンなどの冷却対象物に均一に空気流が当たらず、冷却効率が上がらないといった問題が生じている。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した冷却装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、送風流路に冷却対象物が配置されたダクトと、当該ダクトの送風流路に空気流を発生させる送風装置とを有する冷却装置において、
前記冷却対象物の上流に位置する部分に、流路断面積を絞る上流側絞り部分、絞り最小開口部、下流側絞り部分が連続する絞り構造を設け、
前記絞り構造は、
前記絞り最小開口部の流路断面積S1が、前記上流側絞り部分の上流及び前記下流側絞り部分の下流の流路断面積S2の1/2乃至3/4に設定され、
ダクト内壁面の位置から前記絞り最小開口部までの絞り高さをH、前記上流側絞り部分の流路延在方向の長さをL1、前記下流側絞り部分の流路延在方向の長さをL2とした場合、前記長さL1、L2が2×H乃至4×Hに設定されることを特徴とする。
(2)本発明は、前記絞り構造が、異なる曲率半径の曲面が連続形成されていることを特徴とする。
(3)本発明は、前記絞り構造が、前記ダクトの送風流路の内面に傾斜角の異なる複数の曲面もしくは平面が連続形成されていることを特徴とする。
(4)本発明は、記録媒体にトナー画像を転写、定着させる過程で発生した熱が伝導される冷却対象物と、該冷却対象物が挿入されたダクトと、当該ダクトの送風流路に空気流を発生させる冷却装置とを有する画像形成装置であって、
前記冷却対象物の上流に位置する部分に、流路断面積を絞る上流側絞り部分、絞り最小開口部、下流側絞り部分が連続する絞り構造を設け、
前記絞り構造は、
前記絞り最小開口部の流路断面積S1が、前記上流側絞り部分の上流及び前記下流側絞り部分の下流の流路断面積S2の1/2乃至3/4に設定され、
ダクト内壁面の位置から前記絞り最小開口部までの絞り高さをH、前記上流側絞り部分の流路延在方向の長さをL1、前記下流側絞り部分の流路延在方向の長さをL2とした場合、前記長さL1、L2が2×H乃至4×Hに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダクト上流側に屈曲部が設けられていてもダクト下流側の空気流の流速を均一化して流路抵抗を増大させずに冷却効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る冷却装置を備えた画像形成装置の一実施例の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】画像形成装置の筐体の骨組構造及びダクト室を説明するための斜視図である。
【図3】画像形成装置に取り付けられた冷却装置を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図3に示す冷却装置のダクト構造を拡大して示す縦断面図である。
【図5】冷却装置の変形例1を模式的に示す縦断面図である。
【図6】変形例1のダクト構造を拡大して示す縦断面図である。
【図7】冷却装置の変形例2を模式的に示す縦断面図である。
【図8】変形例2のダクト構造を拡大して示す縦断面図である。
【図9】冷却装置の変形例3を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明による冷却装置を備えた画像形成装置の一実施例の概略構成を示す図である。なお、画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置、ファクシミリ機能と複写機能を有する複合機等に適用することができる。
【0017】
図1に示されるように、画像形成装置10は、高速複合機であり、筐体11内に、原稿を読取位置に搬送する自動原稿搬送装置12と、原稿を読取るスキャナ部13と、記録紙(記録媒体)にトナー画像(可視像)を形成する現像部14と、スキャナ部13によって読取られた画像データが担持されるとともに、画像データ上にトナーが転写される感光体15と、感光体15に転写されたトナー画像を記録紙に転写する転写部16と、記録紙にトナー画像を熱定着するトナー定着部17と、画像形成用の記録紙が収納され、現像部14に記録紙を給紙する給紙部18とを備えている。
【0018】
本実施例では、スキャナ部13、現像部14、感光体15、転写部16およびトナー定着部17が画像形成部を構成している。
【0019】
図2に示されるように、筐体11は、底板19に起立された支柱20と、これらを相互に連結する梁材21とによって骨組が構成されている。筐体11の背面側にダクト室22が併設されており、それらの間には筐体11の後側板28が位置している。
【0020】
ダクト室22内には、冷却装置300が配置されている。また、ダクト室22は、前側が筐体11の後側板28により画成され、後側がダクト室22の外装カバー29によって覆われている。筐体11の後側板28に設けられた設置孔30には、定着部17から排紙された転写紙を冷却するヒートパイプ32が挿通されている。また、ヒートパイプ32はトナー定着部17から排紙される記録紙を冷却する際に記録紙に摺接して回転するように取り付けられている。
さらに、ヒートパイプ32の後側端部には、ダクト室22内に配置された冷却装置300によって冷却される放熱フィン(冷却対象物)が取付けられている。
【0021】
ここで、冷却装置300の構成について説明する。
【0022】
図3に示されるように、冷却装置300は、ダクト310と、送風装置320と、絞り構造350とを有する。ダクト310は、定着部17及びヒートパイプ32等の位置や形状に応じて屈曲された形状に形成されており、一端に吸気口312が設けられ、他端に排気口314が設けられている。また、吸気口312から排気口314に至る流路には、L字状に直角に曲げられた屈曲部330が設けられている。この屈曲部330は、周辺機器との位置関係によって複数箇所に設けることが多いが、本実施例においては説明の便宜上、1箇所のみ設けた構成を例示して説明する。
【0023】
屈曲部330の下流に位置する送風流路340には、絞り構造350、送風装置320が配されており、送風装置320のファン322が回転駆動されると共に、吸気口312から吸引された空気がダクト310内の送風流路340及び絞り構造350を通過して排気口314から排出される。さらに、送風装置320の下流の流路には、冷却対象物360が挿入されている。尚、本実施例において、冷却対象物360は、例えば、定着部17の排紙側のローラに結合されたヒートパイプ32(図2参照)の放熱フィンである。
【0024】
ダクト310内の送風流路340においては、吸気口312から流入した空気流は屈曲部330を通るとき、次のような流れになる。内側角部334付近の空気流Faは、内側角部334の形状に則して流れるのではなく、内側角部334で一旦剥がれて対向するダクト内壁に衝突した後、外側角部332から壁沿いに流れてきた空気流Fbと合流し90度方向転換して流れるため、流路340を流れる空気流の速度分布が一定で無くなる。すなわち、屈曲部330を通過した空気流は、内側角部334付近の剥がれのため外側部分に寄せられるため、空気流Faと外側角部332付近の空気流Fbとでは、流速が異なる。よって、吸気口312では一様だった流れが、屈曲部330を通過した後は、内側角部334の空気流Faは、流速が遅くなり、一方、外側角部332付近の空気流Fbは、流速が速くなる。
【0025】
このように、送風流路340の上流側流路342を流れる空気流の速度分布が不規則的に変動する場合、ダクト310の下流側流路344内に配された冷却対象物360を冷却する空気流にも流速にムラが生じ、冷却対象物360に対する冷却効率が一定しないといった問題が生じる。
【0026】
そこで、本実施例では、上流側流路342と下流側流路344との間に絞り構造350を設ける構成とすることにより、下流側流路344における空気流の速度分布のムラを抑制して冷却対象物360に対する冷却効率を高めている。
【0027】
ここで、図4を参照して絞り構造350の構成について説明する。図4に示されるように、絞り構造350は、下流(X方向)に向かって上流側流路342の流路断面積S2よりも徐々に流路断面積が小さくなるように、ダクト310の下側内壁及び上側内壁を傾斜させた上流側絞り部分370と、流路断面積が最も絞られた最小開口部380と、下流(X方向)に向かって最小開口部380の流路断面積S1よりも徐々に流路断面積が大きくなるように、ダクト310の下側内壁及び上側内壁を傾斜させた下流側絞り部分390とを有する。
【0028】
ダクト310の流路延在方向(X方向)において、絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲が上流側絞り部分370であり、最小絞り位置P2が最小開口部380であり、最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲が下流側絞り部分390である。
【0029】
上流側絞り部分370と下流側絞り部分390とは、最小開口部380を中心に流路延在方向にほぼ対称となるように形成されており、最小開口部380は上流側絞り部分370と下流側絞り部分390とが接続された三角形状の頂部により形成されている。
【0030】
本実施例の絞り構造350では、上流側絞り部分370のX方向の長さをL1、下流側絞り部分390のX方向の長さをL2、上流側流路342及び下流側流路344に対する最小開口部380の高さ寸法をHとすると、各寸法の比率は以下のように設定される。
【0031】
絞り最小開口部380の流路断面積S1は、上流側絞り部分370の上流及び下流側絞り部分390の下流の流路断面積S2の50%〜75%(1/2乃至3/4)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370の流路延在方向(X方向)の長さL1、及び下流側絞り部分390の流路延在方向(X方向)の長さL2は、最小開口部380と上流側流路342及び下流側流路344との高さ寸法Hの2倍〜4倍(2×H乃至4×H)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370、下流側絞り部分390の長さL1、L2は、L1≒L2であれば良いので、例えば、L1=2H、L2=4Hとしても良いし、あるいはその逆、L1=4H、L2=2Hとしても良い。
【0032】
上記条件を満足するように構成された絞り構造350を用いて送風実験を行なったところ、以下のような実験結果が得られた。例えば、絞り最小開口部380の流路断面積S1を流路断面積S2の60%となるように設定すると共に、上流側絞り部分370の上流及び下流側絞り部分390の長さL1、L2を最小開口部380の高さHの2倍(2×H)に設定した場合、絞りを設けない場合に対して送風流路340の空気流量が9%上昇し、冷却対象物360の排熱量は5%上昇することが分かった。
【0033】
すなわち、絞り構造350においては、屈曲部330から上流側流路342に流入する空気流の流速が、流路断面積S2で一定でない場合でも、上流側絞り部分370から最小開口部380までの間(絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲)を通過する過程で流速が加速され、さらに最小開口部380から下流側絞り部分390を通過する間(最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲)に流速が減速されながら整流されて流速分布が均一化される。
【0034】
そのため、下流側流路344に配された冷却対象物360に吹き付けられる空気流は、流速が断面積S2内で均一化されるため、冷却対象物360の表面のどの部分も同じように冷却して流路抵抗を増大させずに冷却効率を向上させることが可能になる。よって、ダクト310の下流側流路344内では、上流に屈曲部330が設けられていても定着部17から排紙された記録媒体の熱をヒートパイプ32及び冷却対象物360から効率良く奪うことができる。
【0035】
ここで、変形例について説明する。
(変形例1)
図5は冷却装置の変形例1を模式的に示す縦断面図である。図6は変形例1のダクト構造を拡大して示す縦断面図である。尚、図5、図6において、前述した上記実施例と同一部分には同一符合を付してその説明を省略する。
【0036】
図5及び図6に示されるように、変形例1の冷却装置300Aは、ダクト310Aの送風流路340Aに曲線が連続する絞り構造350Aが設けられている。絞り構造350Aは、下流(X方向)に向かって上流側流路342の断面積S2よりも徐々に断面積が小さくなるように、ダクト310Aの下側内壁及び上側内壁を曲線状に絞る上流側絞り部分370Aと、流路断面積が最も絞られた最小開口部380Aと、下流(X方向)に向かって最小開口部380Aの流路断面積S1よりも徐々に断面積が大きくなるように、ダクト310Aの下側内壁及び上側内壁を曲線状に広げた下流側絞り部分390Aとを有する。
【0037】
ダクト310Aの流路延在方向(X方向)において、絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲が上流側絞り部分370Aであり、最小絞り位置P2が最小開口部380Aであり、最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲が下流側絞り部分390Aである。本変形例1では、上記上流側絞り部分370A、最小開口部380A、下流側絞り部分390Aは、それぞれ連続する曲線形状に形成されており、空気流を滑らかな流れにガイドすることができる。
【0038】
すなわち、絞り構造350Aでは、上記実施例の直線状部分及び角部が曲線状に形成されており、上流側絞り部分370Aは、外側に湾曲した曲率半径r1の曲線R1と、内側に湾曲した曲率半径r2の曲線R2とを連続形成した曲面を有する。最小開口部380Aは、曲率半径r2の曲線R2による最小径の曲面を有する。下流側絞り部分390Aは、内側に湾曲した曲率半径r2の曲線R2と、外側に湾曲した曲率半径r3の曲線R3とを連続形成した曲面を有する。
【0039】
上流側絞り部分370Aと下流側絞り部分390Aとは、最小開口部380Aを中心に流路延在方向にほぼ対称となるように形成されており、最小開口部380Aは上流側絞り部分370Aと下流側絞り部分390Aとが接続された曲線形状の頂部により形成されている。上記曲率半径r1、r2、r3としては、例えば、r1:r2:r3=1:1:1となるように設定されることが望ましい。
【0040】
本変形例1の絞り構造350Aでは、上流側絞り部分370AのX方向の長さをL1、下流側絞り部分390AのX方向の長さをL2、最小開口部380Aと上流側流路342及び下流側流路344との高さ寸法をHとすると、各寸法の比率は上記実施例の場合と同様に設定される。
【0041】
すなわち、絞り最小開口部380Aの流路断面積S1は、上流側絞り部分370Aの上流及び下流側絞り部分390Aの下流の流路断面積S2の50%〜75%(1/2乃至3/4)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370Aの流路延在方向(X方向)の長さL1、及び下流側絞り部分390Aの流路延在方向(X方向)の長さL2は、最小開口部380Aと上流側流路342及び下流側流路344との高さ寸法Hの2倍〜4倍(2×H乃至4×H)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370A、下流側絞り部分390Aの長さL1、L2は、L1≒L2であれば良いので、例えば、L1=2H、L2=4Hとしても良いし、あるいはL1=4H、L2=2Hとしても良い。
【0042】
上記条件を満足するように構成された絞り構造350Aを用いて送風実験を行なったところ、以下のような実験結果が得られた。例えば、絞り最小開口部380Aの断面積S1を流路断面積S2の60%となるように設定すると共に、上流側絞り部分370Aの上流及び下流側絞り部分390Aの長さL1、L2を最小開口部380Aの高さHの2倍(2×H)に設定した場合、絞りを設けない場合に対して送風流路340Aの空気流量が12%上昇し、冷却対象物360の排熱量は7%上昇することが分かった。
【0043】
すなわち、絞り構造350Aにおいては、屈曲部330から上流側流路342に流入する空気流の流速が、流路断面積S2で一定でない場合でも、上流側絞り部分370Aから最小開口部380Aまでの間(絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲)を通過する過程で流速が加速され、さらに最小開口部380Aから下流側絞り部分390Aを通過する間(最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲)に流速が減速されながら整流されて流速分布が均一化される。
【0044】
そのため、下流側流路344に配された冷却対象物360に吹き付けられる空気流は、流速が流路断面積S2内で均一化されるため、冷却対象物360の表面のどの部分も同じように冷却して流路抵抗を増大させずに冷却効率を向上させることが可能になる。よって、ダクト310Aの下流側流路344内では、上流に屈曲部330が設けられていても定着部17から排紙された記録媒体の熱をヒートパイプ32及び冷却対象物360から効率良く奪うことができる。
(変形例2)
図7は冷却装置の変形例2を模式的に示す縦断面図である。図8は変形例2のダクト構造を拡大して示す縦断面図である。尚、図7、図8において、前述した上記実施例と同一部分には同一符合を付してその説明を省略する。
【0045】
図7及び図8に示されるように、変形例2の冷却装置300Bは、ダクト310Bの送風流路340Bに直線状の傾斜面が角度を変えながら連続する絞り構造350Bが設けられている。絞り構造350Bは、下流(X方向)に向かって上流側流路342の断面積S2よりも徐々に断面積が小さくなるように、ダクト310Bの下側内壁及び上側内壁を直線状に段階的に絞る上流側絞り部分370Bと、流路断面積が最も絞られた最小開口部380Bと、下流(X方向)に向かって上最小開口部380Bの流路断面積S1よりも徐々に断面積が大きくなるように、ダクト310Bの下側内壁及び上側内壁を段階的に広げた下流側絞り部分390Bとを有する。
【0046】
ダクト310Bの流路延在方向(X方向)において、絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲が上流側絞り部分370Bであり、最小絞り位置P2が最小開口部380Bであり、最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲が下流側絞り部分390Bである。上流側絞り部分370B、最小開口部380B、下流側絞り部分390Bは、それぞれ連続する直線状部分または曲線部分からなる接続部分La〜Leにより形成されており、空気流を滑らかな流れにガイドすることができる。
【0047】
本変形例2では、5箇所の接続部分La〜Leがそれぞれ流路延在方向(X方向)に対する角度を少しずつ変えながら連続する絞り構造350Bを構成している。すなわち、上流側絞り部分370Bは、接続部分La、Lbにより形成され、最小開口部380Bは接続部分Lcにより形成され、下流側絞り部分390Bは、接続部分Ld、Leにより形成される。また、上流側絞り部分370Bの接続部分Laの流路延在方向(X方向)に対する傾斜角度θa、接続部分Lbの傾斜角度θbは、θa<θbの関係にある。下流側絞り部分390Bの接続部分Ldの流路延在方向(X方向)に対する傾斜角度θd、接続部分Leの傾斜角度θeは、θe<θdの関係にある。尚、最小開口部380Bの流路延在方向(X方向)に対する角度は、ゼロである。
【0048】
絞り構造350Bは、上流側絞り部分370Bと下流側絞り部分390Bとが、最小開口部380Bを中心に流路延在方向にほぼ対称となるように形成されており、且つ最小開口部380Bは水平方向に延在する壁面により形成されている。そのため、絞り構造350Bは、中心部分が台形状に形成されている。
【0049】
また、接続部分La〜Leの流路延在方向(X方向)の長さは、例えば、La:Lb:Lc:Ld:Le=1:1:1:1:1となるように設定されることが望ましい。
【0050】
本変形例2の絞り構造350Bでは、上流側絞り部分370BのX方向の長さをL1、下流側絞り部分390BのX方向の長さをL2、最小開口部380Bと上流側流路342及び下流側流路344との高さ寸法をHとすると、各寸法の比率は上記実施例の場合と同様に設定される。
【0051】
すなわち、絞り最小開口部380Bの流路断面積S1は、上流側絞り部分370Bの上流及び下流側絞り部分390Bの下流の流路断面積S2の50%〜75%(1/2乃至3/4)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370Bの流路延在方向(X方向)の長さL1、及び下流側絞り部分390Bの流路延在方向(X方向)の長さL2は、最小開口部380Bと上流側流路342及び下流側流路344との高さ寸法Hの2倍〜4倍(2×H乃至4×H)に設定されることが望ましい。また、上流側絞り部分370B、下流側絞り部分390Bの長さL1、L2は、L1≒L2であれば良いので、例えば、L1=2H、L2=4Hとしても良いし、あるいはL1=4H、L2=2Hとしても良い。
【0052】
上記条件を満足するように構成された絞り構造350Bを用いて送風実験を行なったところ、以下のような実験結果が得られた。例えば、絞り最小開口部380Bの断面積S1を流路断面積S2の60%となるように設定すると共に、上流側絞り部分370Bの上流及び下流側絞り部分390Bの長さL1、L2を最小開口部380の高さHの2倍(2×H)に設定した場合、絞りを設けない場合に対して送風流路340Bの空気流量が11%上昇し、冷却対象物360の排熱量は6%上昇することが分かった。
【0053】
すなわち、絞り構造350Bにおいては、屈曲部330から上流側流路342に流入する空気流の流速が、流路断面積S2で一定でない場合でも、上流側絞り部分370Bから最小開口部380Bまでの間(絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲)を通過する過程で流速が加速され、さらに最小開口部380Bから下流側絞り部分390Bを通過する間(最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲)に流速が減速されながら整流されて流速分布が均一化される。
【0054】
そのため、下流側流路344に配された冷却対象物360に吹き付けられる空気流は、流速が流路断面積S2内で均一化されるため、冷却対象物360の表面のどの部分も同じように冷却して流路抵抗を増大させずに冷却効率を向上させることが可能になる。よって、ダクト310Bの下流側流路344内では、上流に屈曲部330が設けられていても定着部17から排紙された記録媒体の熱をヒートパイプ32及びから効率良く奪うことができる。
(変形例3)
図9は冷却装置の変形例3を模式的に示す縦断面図である。尚、図9において、前述した上記実施例と同一部分には同一符合を付してその説明を省略する。
【0055】
図9に示されるように、変形例3の冷却装置300Cは、ダクト310Cの上流側流路342が上記実施例や変形例1,2の場合よりも長く形成されており、上流側流路342には送風装置320が設けられている。送風装置320の下流側には、上記実施例の絞り構造350と同様な絞り構造350Cが配され、且つ絞り構造350Cの下流側流路344には、冷却対象物360が配されている。
【0056】
従って、冷却装置300Cでは、送風装置320のファン322が回転駆動されると、ダクト310Cの一端に設けられた吸気口312から吸引された空気流が屈曲部330を通過して上流側流路342に至り、さらにファン322により絞り構造350Cの流路340に流入される。そして、ファン322からの空気流は、絞り構造350Cを通過して冷却対象物360の周囲を通過しながら冷却対象物360の熱を奪って排気口314より排出される。
【0057】
絞り構造350Cを通過する空気流は、上流側絞り部分370から最小開口部380までの間(絞り開始位置P1から最小絞り位置P2までの範囲)を通過する過程で流速が加速され、さらに最小開口部380から下流側絞り部分390を通過する間(最小絞り位置P2から絞り終了位置P3までの範囲)に流速が減速されながら整流されて流速分布が均一化される。そのため、絞り構造350Cの下流に配置された冷却対象物360は、効率良く冷却される。よって、送風装置320が冷却対象物360から離れた場所に設けられた場合でも、冷却対象物360の上流側に絞り構造350Cを設けることにより、定着部17から排紙された記録媒体の熱をヒートパイプ32及び冷却対象物360から効率良く奪うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記実施例では、冷却対象物360として冷却装置300を定着部17から排紙された記録媒体Pの温度を低下させるためのヒートパイプ32の放熱フィンを例に挙げて説明したが、これに限らず、ヒートパイプ以外の熱伝導部材を冷却する場合にも本発明を適用することができるのは、勿論である。
【0059】
また、画像形成装置10の定着部17から排紙された記録媒体の熱以外の発熱部(例えば、現像部80など)を冷却する場合にも本発明を適用することができるのは、勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10 画像形成装置
11 筐体
12 自動原稿搬送装置
13 スキャナ部
14 現像部
15 感光体
16 転写部
17 トナー定着部
18 給紙部
19 底板
20 支柱
21 梁材
22 ダクト室
28 後側板
29 外装カバー
32 ヒートパイプ
300、300A〜300C 冷却装置
310、310A〜310C ダクト
320 送風装置
322 ファン
330 屈曲部
312 吸気口
314 排気口
330 屈曲部
340、340A〜340C 送風流路
342 上流側流路
344 下流側流路
350、350A〜350C 絞り構造
360 冷却対象物
370、370A〜370C 上流側絞り部分
380、380A〜380C 最小開口部
390、390A〜390C 下流側絞り部分
La〜Le 接続部分
S1、S2 流路断面積
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2003−208065
【特許文献2】特開2007−041541
【特許文献3】特開2005−043579

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風流路に冷却対象物が配置されたダクトと、当該ダクトの送風流路に空気流を発生させる送風装置とを有する冷却装置において、
前記冷却対象物の上流に位置する部分に、流路断面積を絞る上流側絞り部分、絞り最小開口部、下流側絞り部分が連続する絞り構造を設け、
前記絞り構造は、
前記絞り最小開口部の流路断面積S1が、前記上流側絞り部分の上流及び前記下流側絞り部分の下流の流路断面積S2の1/2乃至3/4に設定され、
ダクト内壁面の位置から前記絞り最小開口部までの絞り高さをH、前記上流側絞り部分の流路延在方向の長さをL1、前記下流側絞り部分の流路延在方向の長さをL2とした場合、前記長さL1、L2が2×H乃至4×Hに設定されることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記絞り構造は、異なる曲率半径の曲面が連続形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記絞り構造は、前記ダクトの送風流路の内面に傾斜角の異なる複数の曲面もしくは平面が連続形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
記録媒体にトナー画像を転写、定着させる過程で発生した熱が伝導される冷却対象物と、該冷却対象物が挿入されたダクトと、当該ダクトの送風流路に空気流を発生させる冷却装置とを有する画像形成装置であって、
前記冷却対象物の上流に位置する部分に、流路断面積を絞る上流側絞り部分、絞り最小開口部、下流側絞り部分が連続する絞り構造を設け、
前記絞り構造は、
前記絞り最小開口部の流路断面積S1が、前記上流側絞り部分の上流及び前記下流側絞り部分の下流の流路断面積S2の1/2乃至3/4に設定され、
ダクト内壁面の位置から前記絞り最小開口部までの絞り高さをH、前記上流側絞り部分の流路延在方向の長さをL1、前記下流側絞り部分の流路延在方向の長さをL2とした場合、前記長さL1、L2が2×H乃至4×Hに設定されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204571(P2010−204571A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52470(P2009−52470)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】