説明

冷却装置

【課題】取付相手の省スペース化に適合する冷却装置を提供する。
【解決手段】水冷タンク32は、中央部のタンク取付空間部31を囲む3方に、矩形断面の管状部材により構成した冷却水収納部32a,32b,32cを凹形に配置する。この水冷タンク32のタンク取付空間部31に冷却水冷却用の冷却ユニット33を装着する。水冷タンク32の一側に、取付板34によって、水冷タンク32内の冷却水を汲み上げて水冷対象部に供給する電動式の水冷ポンプ35を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ハイブリッド仕様の車両には、モータ/ジェネレータや、モータ/ジェネレータを制御するためのインバータなどの電気装置が搭載されている。これらのモータ/ジェネレータやインバータは冷却する必要があり、水冷式のものが多く、水冷専用の冷却回路を設置する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、電気ハイブリッド仕様の油圧ショベルの旋回フレーム11に搭載された電気系統の冷却装置の概略配置を示し、旋回フレーム11上の空スペースに、水冷タンク12、水冷ポンプ13、水冷式インバータ14、水冷式旋回モータ/ジェネレータ15、水冷式メインモータ/ジェネレータ16および冷却ファン付き冷却ユニット(ラジエータ)17などを配置し、これらを水冷回路用ホース18で順次連通して冷却水を無端状に循環させる水冷専用の冷却回路を構成している。
【特許文献1】特開2005−35476号公報(第5頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旋回フレーム11上の限られたスペースに水冷回路用の各機器を分散配置することは困難な場合がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、取付相手の省スペース化に適合する冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、タンク取付空間部を囲む少なくとも3方に冷却水収納部を有する水冷タンクと、水冷タンクのタンク取付空間部に装着された冷却水冷却用の冷却ユニットとを具備した冷却装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の冷却装置における水冷タンクの冷却水収納部が、矩形断面の管状部材により凹形に構成されたものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の冷却装置における水冷タンクが、防錆処理された金属板により構成されたものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の冷却装置において、水冷タンクに取付けられ水冷タンク内の冷却水を汲み上げて水冷対象部に供給する水冷ポンプを具備したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、タンク取付空間部を囲む少なくとも3方に冷却水収納部を有する水冷タンクは、フレーム構造であるから、そのタンク取付空間部に冷却ユニットをコンパクトに一体化することができ、取付相手の省スペース化に適合する冷却装置を提供できる。さらに、冷却ユニット・水冷タンク間の配管を簡単にできる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、水冷タンクの冷却水収納部は、矩形断面の管状部材により凹形に構成されたので、冷却ユニット支持フレームとしての十分な強度を容易に確保できる。また、矩形断面の管状部材により凹形に構成された冷却水収納部を有する水冷タンクは、冷却水を収納した状態での安定性が高く、冷却ユニットの振動低減にも役立つ。
【0012】
請求項3に記載された発明によれば、防錆処理された金属板により構成された水冷タンクは、タンク内面での錆の発生を防止できる。
【0013】
請求項4に記載された発明によれば、水冷タンクと冷却ユニットと水冷ポンプとをコンパクトに一体化できるとともに、これらの間の配管を省略または簡単にできる。また、これらをサブ組みしてモジュール化することで、これらの取付相手への搭載も容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図4に示される作業機械21は、電気ハイブリッド仕様の油圧ショベルであり、下部走行体22上に上部旋回体23が旋回可能に設けられ、この上部旋回体23上に作業装置24などが搭載されている。
【0016】
図3は、電気ハイブリッド仕様の油圧ショベルの上部旋回体23を構成する機体フレーム23fを示し、機体フレーム23fの中心部には水冷式旋回モータ/ジェネレータ25が取付けられ、機体フレーム23fの後部一側には水冷式メインモータ/ジェネレータ26が搭載され、機体フレーム23fの後部他側には水冷式インバータ27と、冷却装置(ラジエータ)28が搭載されている。
【0017】
水冷式旋回モータ/ジェネレータ25は、下部走行体22に対し上部旋回体23を旋回駆動する電動モータとして機能するとともに、上部旋回体23が有する旋回エネルギを電気エネルギに変換しつつ制動を行なう発電機として機能する。
【0018】
水冷式メインモータ/ジェネレータ26は、機体フレーム23f上に設置されたエンジン(図示せず)の動力軸に接続され、蓄電器から供給された電気エネルギにより作動してエンジンの動力不足を補う際の電動モータとして機能するとともに、エンジンの余剰動力を電気エネルギに変換して蓄電装置に蓄える際の発電機として機能する。
【0019】
水冷式インバータ27は、これらの水冷式旋回モータ/ジェネレータ25や、水冷式メインモータ/ジェネレータ26を制御する
冷却装置28は、これらの水冷式旋回モータ/ジェネレータ25、水冷式メインモータ/ジェネレータ26および水冷式インバータ27を冷却水により冷却するものである。
【0020】
図1および図2に示されるように、この冷却装置28は、中央部のタンク取付空間部31を囲む3方に矩形断面の管状部材により構成された冷却水収納部32a,32b,32cを凹形に配置した水冷タンク32と、この水冷タンク32のタンク取付空間部31に装着された冷却水冷却用の冷却ユニット33とを備え、水冷タンク32の一側には、取付板34によって、水冷タンク32内の冷却水を汲み上げて水冷対象部に供給する電動式の水冷ポンプ35が取付けられている。
【0021】
水冷タンク32は、防錆処理された金属板、例えば亜鉛などでプレコートされたメッキ鋼板により構成されたタンクであり、横長形状の下側の冷却水収納部32aと、この下側の冷却水収納部32aの一側部上および他側部上にそれぞれ連通可能に立設された塔形の一側の冷却水収納部32bおよび他側の冷却水収納部32cとが、一連に連通された内空部を有している。
【0022】
下側の冷却水収納部32aは、底板36と、左右の端板37と、逆凹形断面のカバー板38とを溶接付けしたものである。底板36には、冷却装置28を機体フレーム23fに取付けるための取付穴36hが設けられている。また、カバー板38には水抜き用の排水口39および弁40が設けられている。
【0023】
一側の冷却水収納部32bおよび他側の冷却水収納部32cは、それぞれ、大きさの異なる2枚のL形断面の立板41,42を突合せて溶接付けし、それらの上端開口に天板43を溶接付けしたものである。
【0024】
一側の冷却水収納部32bの立板41の側面に、前記取付板34を介して水冷ポンプ35が取付けられ、天板43に給水口44および栓45が設けられている。他側の冷却水収納部32cの立板41の側面には、水冷ポンプ35の吸込口に接続された吸込管46を挿入する挿入口47と、冷却水の戻し口48とが設けられている。49は、水冷ポンプ35の吐出口である。
【0025】
冷却ユニット33は、水冷パイプおよび多数の放熱フィンがパネル状に構成された熱交換器51と、この熱交換器51に冷却風を供給する冷却ファン52とを備えている。熱交換器51の一側下部と他側上部とに冷却水口53,54がそれぞれ設けられている。
【0026】
熱交換器51の一側部および他側部にそれぞれ設けられた取付部55が、一側の冷却水収納部32bの立板41と、他側の冷却水収納部32cの立板41との間に、ボルト・ナット56によりそれぞれ固定されている。
【0027】
そして、これらの水冷タンク32、水冷ポンプ35、水冷式旋回モータ/ジェネレータ25、水冷式メインモータ/ジェネレータ26および水冷式インバータ27、冷却ユニット33、水冷タンク32を水冷回路用ホース(図示せず)で無端状に連通して、冷却水を無端状に循環させる水冷専用の冷却回路を構成する。
【0028】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0029】
水冷タンク32内の冷却水を水冷ポンプ35により汲み上げ、水冷式旋回モータ/ジェネレータ25に供給して、その電動発熱部を冷却し、さらに水冷式メインモータ/ジェネレータ26に供給して、その電動発熱部を冷却し、さらに水冷式インバータ27に供給して、その発熱部を冷却する。これらの冷却作用により温度上昇した冷却水は、冷却ユニット33に供給して、その冷却ファン52により冷却し、温度低下した冷却水を水冷タンク32に戻す。
【0030】
タンク取付空間部31を囲む少なくとも3方に冷却水収納部32a,32b,32cを有する水冷タンク32は、フレーム構造であるから、そのタンク取付空間部31に冷却ユニット33をコンパクトに一体化することができ、取付相手の省スペース化に適合する冷却装置28を提供できる。すなわち、水冷タンク32が、冷却ユニット33の支持フレームを兼用するため、省スペースでの配置が可能となる。さらに、冷却ユニット33・水冷タンク32間の配管を簡単にできる。
【0031】
水冷タンク32の冷却水収納部32a,32b,32cは、矩形断面の管状部材により凹形に構成されたので、冷却ユニット支持フレームとしての十分な強度を容易に確保できる。また、矩形断面の管状部材により凹形に構成された冷却水収納部32a,32b,32cを有する水冷タンク32は、冷却水を収納した状態での安定性が高く、冷却ユニット33の振動低減にも役立つ。
【0032】
防錆処理された金属板により構成された水冷タンク32は、タンク内面での錆の発生を防止できる。すなわち、亜鉛メッキ鋼板の採用により、防錆および製造容易化を図れるとともに、フレーム構造を簡単に形成できる。
【0033】
水冷タンク32と冷却ユニット33と水冷ポンプ35とをコンパクトに一体化できるとともに、これらの間の配管を省略または簡単にできる。また、これらをサブ組みしてモジュール化することで、これらの機体フレーム23fなどの取付相手への搭載も容易にできる。
【0034】
なお、作業機械は、油圧ショベルに限定されるものではなく、要するに、冷却装置28が搭載される機体に適用できる。
【0035】
上記水冷タンク32は、凹形に形成したが、タンク取付空間部31を囲む4方に冷却水収納部を有する4角枠状のフレーム構造にしても良い。
【0036】
本発明は、作業機械などの車両の水冷設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る冷却装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上冷却装置の反対側の斜視図である。
【図3】同上冷却装置の機体への搭載状態を示す斜視図である。
【図4】同上冷却装置を搭載した作業機械の側面図である。
【図5】従来の冷却装置の機体への搭載例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
28 冷却装置
31 タンク取付空間部
32 水冷タンク
32a,32b,32c 冷却水収納部
33 冷却ユニット
35 水冷ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク取付空間部を囲む少なくとも3方に冷却水収納部を有する水冷タンクと、
水冷タンクのタンク取付空間部に装着された冷却水冷却用の冷却ユニットと
を具備したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
水冷タンクの冷却水収納部は、
矩形断面の管状部材により凹形に構成された
ことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
水冷タンクは、防錆処理された金属板により構成された
ことを特徴とする請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
水冷タンクに取付けられ水冷タンク内の冷却水を汲み上げて水冷対象部に供給する水冷ポンプ
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−39206(P2008−39206A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210184(P2006−210184)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】