説明

冷媒搬送用ホース

【課題】本発明の目的は、製造コストの増加と柔軟性の低下を招くことなく、圧力負荷時における冷媒の耐透過性を向上させると共に、ねじれ変形を防止するようにした冷媒搬送用ホースを提供する。
【解決手段】冷媒が通過する内面に配置された樹脂層1の外面に、中間ゴム層2、補強層3及び外面ゴム層4を順に被覆した冷媒搬送用ホースにおいて、樹脂層1を、断面が周方向に対して蛇行状であって、かつホース長手方向に直線的に延びる形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒搬送用ホースに関し、更に詳しくは自動車用のエアコンホースのような冷媒搬送用ホースにおいて、製造コストの増加と柔軟性の低下を招くことなく、圧力負荷時における冷媒の耐透過性を向上させると共に、ねじれ変形を防止するようにした冷媒搬送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のエアコンホースに代表される冷媒搬送用ホースは、エンジンルームのような狭い空間内に配置された種々の機器の間を縫って冷媒を搬送するため、冷媒に対する耐透過性に加えて、柔軟性も有することが求められる。そのため、一般に冷媒搬送用ホースは、冷媒の耐透過性に優れた樹脂層の外側に、補強層とゴム層を被覆した基本構造を有している。
【0003】
しかし、このような冷媒搬送用ホースにおいては、冷媒の通過時に圧力(内圧)が負荷されると樹脂層が径方向に膨張して薄肉化するため、冷媒の耐透過性が低下してしまうという問題があった。これを解決するには、樹脂層の肉厚を増加すればよいが、ホースの柔軟性の低下を招くことになってしまう。
【0004】
ホースの柔軟性を損なうことなく樹脂層の肉厚を増加するには、特許文献1又は2のように、樹脂層をホース長手方向に螺旋状に延びる蛇腹形状にすることが考えられる。しかし、特許文献1のホースでは、製造時において、蛇腹形状に対応した軸状の成形型を用いて樹脂層を成形した後に、成形型の螺旋形状に沿って回転させ、雄ネジと雌ネジの作用により離型させるので、例えば100mを超えるような長尺ホースでは離型が非常に困難になり、生産性が低下して製造コストが増加するという問題があった。また、特許文献1及び2のホースでは、冷媒の通過時に圧力が負荷されると、螺旋がほどける方向にねじれ変形が生じるため、例えば自動車のエンジンルーム内などに取り付けたときには、初期の配管経路と圧力負荷時の配管経路とが異なってホースが他の機器に干渉するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−252955号公報
【特許文献2】特開平1−202445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、製造コストの増加と柔軟性の低下を招くことなく、圧力負荷時における冷媒の耐透過性を向上させると共に、ねじれ変形を防止するようにした冷媒搬送用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の冷媒搬送用ホースは、冷媒の耐透過性を有する樹脂層の外面に、中間ゴム層、補強層及び外面ゴム層を順に被覆した冷媒搬送用ホースにおいて、前記樹脂層を、断面が周方向に対して蛇行状であって、かつホース長手方向に直線的に延びる形状にしたことを特徴とするものである。
【0008】
樹脂層の断面形状は、前記冷媒搬送用ホースの中心に対して点対称、又はその中心を通る直線に対して線対称な形状であることが望ましい。また、樹脂層の山部と谷部との外径差は、樹脂層の平均外径に対して2〜15%の大きさにすることが望ましい。更に、樹脂層の山部の数は3個以上とするのがよい。
【0009】
上記の冷媒搬送用ホースにおいては、樹脂層の内面に内面ゴム層を被覆し、中間ゴム層及び補強層を順に複数積層してもよい。
【0010】
本発明の冷媒搬送用ホースは、自動車用のエアコンホースに好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷媒搬送用ホースによれば、冷媒が通過する内面に配置された樹脂層の断面形状を、周方向に対して蛇行状になるようにしたので、圧力負荷時において樹脂層が略円形に変形して圧力を吸収するので、樹脂層が薄肉化することはない。そのため、圧力負荷時における冷媒の耐透過性を向上させることができると共に、樹脂層を厚肉にする必要がないため、柔軟性が低下しないようにすることができる。また、樹脂層の断面形状が蛇腹状に比べて単純であるため、成形型からの離型が容易になるので製造コストの増加を招くことはない。更には、蛇行する形状がホース長手方向へ直線的に延びているため、圧力負荷時においてねじれ等が生じることがないため、ホースのねじれ変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態からなる冷媒搬送用ホースの構造を示す斜視図である。
【図2】図1においてA−A矢視で示す断面図である。
【図3】図2の冷媒搬送用ホースに圧力が負荷されたときの変形状態を示す断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態からなる冷媒搬送用ホースの断面図である。
【図5】図4に示す冷媒搬送用ホースの別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態からなる冷媒搬送用ホースの例を示す。
【0015】
この冷媒搬送用ホースは、冷媒が通過する内面に樹脂層1を有すると共に、その樹脂層1の外面に中間ゴム層2、補強層3及び外面ゴム層4を順に被覆した構造を備えている。樹脂層1には、冷媒の耐透過性に優れたナイロン系樹脂等が用いられている。また、補強層はポリエステル等の有機繊維の編組から構成されている。
【0016】
このような冷媒搬送用ホースにおいて、樹脂層1の径方向の断面は、図2に示すように、周方向に対して蛇行する形状となっている。更に、この蛇行する形状は、ホース長手方向に螺旋状ではなく、実質的に平行な直線的に延びている。このように樹脂層1を構成することにより、冷媒搬送用ホースに圧力が負荷された時には、図3に示すように、樹脂層1が略円形状に変形して圧力を吸収し、樹脂層1の薄肉化を防ぐことができるため、圧力負荷時における冷媒の耐透過性を向上することができると共に、樹脂層1を厚肉にする必要がないので、冷媒搬送用ホースの柔軟性が低下することはない。また、樹脂層1の断面形状は単純であるため、成形型からの離型が容易になるので製造コストの増加を招くことはない。更には、蛇行する形状がホース長手方向へ直線的に延びているため、圧力負荷時においてねじれ等が生じることがないため、ホースのねじれ変形を防止することができる。
【0017】
また、このように樹脂層1の形状変化により弾性的に圧力を吸収しているため、樹脂層1自体の塑性変形(永久歪み)量を抑えることができるので、冷媒搬送用ホースの耐久性を向上することができる。
【0018】
樹脂層1の断面形状は、図2に示すように、冷媒搬送用ホースの中心に対して点対称、又はその中心を通る直線に対して線対称な形状であることが望ましい。そのようにすることで、圧力負荷時における樹脂層1の変形が径方向に対して均等となるため、樹脂層1の薄肉化を効果的に防止することができる。
【0019】
また、樹脂層1の山部(径方向の外側凸部)1aの内面側に接する円の直径Xと、谷部(径方向の内側凸部)1bの内面側に接する円の直径Yとの差(X−Y)は、直径Xと直径Yの平均値Z((X+Y)/2)に対して2〜15%の範囲内、望ましくは10%となるようにするのがよい。直径Xと直径Yとの差(X−Y)が平均値Zの2%未満になると圧力吸収の効果が不十分となって薄肉化を招き、15%超になるとホース製造時に成形型を引き抜きにくくなって製造コストが増加する。
【0020】
更に、樹脂層の形状を単純化して製造コストを効果的に抑えるためには、山部1aの数(=谷部1bの数)を3個以上、望ましくは6〜8個とするのがよい。なお、図2に示す実施形態は、山部1aが8個の場合である。
【0021】
図4は、本発明の別の実施形態からなる冷媒搬送用ホースの断面図を示す。
【0022】
この冷媒搬送用ホースは、第1の実施形態からなる冷媒搬送用ホースの樹脂層1の内面に内面ゴム層5を被覆したものである。このように構成することで、圧力負荷時に樹脂層1に加わる圧力をより吸収することができるので、冷媒の耐透過性とホースの耐久性とをより向上することができる。
【0023】
この実施形態の別の例として、図5に示すように、内面ゴム層5の内面を樹脂層1と同じ断面形状にすることもできる。このようにすることで、圧力負荷時における内面ゴム層5の薄肉化も防ぐこともできるため、ホースの耐久性を更に向上することができる。
【0024】
上記のいずれの実施形態においても、樹脂層1と外面ゴム層4との間には複数の中間ゴム層2と補強層3とを交互に積層して配置するようにしてもよい。
【0025】
本発明の冷媒搬送用ホースは、機器の間を通る曲部の多い経路を通じて冷媒を搬送するホース、例えば自動車用のエアコンホースに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0026】
1 樹脂層
1a 山部
1b 谷部
2 中間ゴム層
3 補強層
4 外面ゴム層
5 内面ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の耐透過性を有する樹脂層の外面に、中間ゴム層、補強層及び外面ゴム層を順に被覆した冷媒搬送用ホースにおいて、前記樹脂層を、断面が周方向に対して蛇行状であって、かつホース長手方向に直線的に延びる形状にした冷媒搬送用ホース。
【請求項2】
前記樹脂層の断面形状が、前記冷媒搬送用ホースの中心に対して点対称、又は該中心を通る直線に対して線対称な形状である請求項1に記載の冷媒搬送用ホース。
【請求項3】
前記樹脂層の山部の内面側に接する円の直径Xと、谷部の内面側に接する円の直径Yとの差(X−Y)が、該直径Xと直径Yの平均値((X+Y)/2)に対して2〜15%の大きさである請求項2に記載の冷媒搬送用ホース。
【請求項4】
前記樹脂層の山部の数が3個以上である請求項2又は3に記載の冷媒搬送用ホース。
【請求項5】
前記樹脂層の内面に内面ゴム層を被覆した請求項1〜4のいずれかに記載の冷媒搬送用ホース。
【請求項6】
前記中間ゴム層及び補強層を順に複数積層した請求項1〜5のいずれかに記載の冷媒搬送用ホース。
【請求項7】
自動車用のエアコンホースである請求項1〜6のいずれかに記載の冷媒搬送用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223315(P2010−223315A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70567(P2009−70567)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】