説明

冷媒輸送用ホースおよびその製法

【課題】層間剥離を生じず、柔軟性等に優れ、冷媒に対する低透過性に優れる冷媒輸送用ホースおよびその製法を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂を主成分とする最内層1と、その外周に設けられたポリビニルアルコールからなる低透過層2と、上記低透過層2の外周に設けられるゴム層(内面ゴム層3aおよび外面ゴム層3b)とを備えたホースであって、上記最内層1に、厚み方向に延びる多数の貫通孔5が形成されている冷媒輸送用ホースとする。そして、上記最内層1形成材料をホース状に成形して得られたホース体の外周面に、表面に針がついたロールを押し当て、上記ホース体に、その層1の厚み方向に延びる多数の貫通孔5を形成し、その後上記ホース体の外周に、低透過層2、ゴム層(内面ゴム層3aおよび外面ゴム層3b)を順次形成することにより、上記冷媒輸送用ホースを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンホース等の冷媒輸送用ホースに関するものであり、詳しくは、二酸化炭素(CO2 ),フロン(フレオン),代替フロン,プロパン等の冷媒(液体またはガス)の輸送に用いられ、自動車のエンジンルーム内等での配管用ホース等として用いられる冷媒輸送用ホースおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のエンジンルーム内に配管用ホースとして用いられる冷媒輸送用ホースとしては、組み付け性、振動伝達抑制、柔軟性等の点から、ゴムホースが用いられており、例えば、冷媒を流通させる管状のゴム製内層の外周面に、補強層が形成され、さらにその外周面にゴム製外層が形成された構成のものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、フロン(フレオン)や代替フロン(R134a等)といった冷媒の透過を抑える(冷媒に対するバリア性を高める)ため、ポリアミド系樹脂(PA)からなる層をホース最内層として構成したものや、金属箔・金属蒸着ラミネートが施されたホースも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−68659号公報
【特許文献2】特開2001−241572公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車等のエアコンの冷媒として従来から使用されてきたフロン(フレオン)は、大気中のオゾン層破壊につながることから、既に、その使用が禁止されており、また、R134a等の代替フロンも、今後の排出削減の対象になりつつある。このような事情から、今後は、環境への悪影響が少ない二酸化炭素(CO2 )冷媒(液体またはガス)や化学冷媒が、エアコン冷媒の主流になると考えられている。
【0005】
しかしながら、二酸化炭素冷媒は、R134a等の従来の冷媒に比べ浸透性が高く、たとえ従来の冷媒に対し信頼性の高かったポリアミド6(PA6)系のバリア層であっても、透過してしまう。そのため、二酸化炭素冷媒輸送用ホースとして従来の冷媒輸送用ホースを用いると、冷房能力の低下につながる。また、PA6層の外周面に、さらにバリア性の高い層を設けることも検討されているが、このような層構成とした場合、PA6層を透過した二酸化炭素冷媒が上記二層(PA6層と、その外周の層)の層間に溜まり、その溜まった二酸化炭素冷媒が、エアコンのメンテナンス時のガス抜き(減圧)の際等に膨張し、層間剥離を生じさせることも懸念される。
【0006】
他方、金属箔等のラミネートが施されたホースは、耐久使用により、そのラミネートの剥離等が生じやすく、このことに起因し、冷媒ガスの低透過性が不安定となりやすい問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、層間剥離を生じず、柔軟性等に優れ、冷媒に対する低透過性に優れる冷媒輸送用ホースおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリアミド樹脂を主成分とする最内層と、その外周に設けられたポリビニルアルコールからなる低透過層と、上記低透過層の外周に設けられるゴム層とを備えたホースであって、上記最内層に、厚み方向に延びる多数の貫通孔が形成されている冷媒輸送用ホースを第一の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、上記第一の要旨の冷媒輸送用ホースの製法であって、最内層形成材料をホース状に成形して得られたホース体の外周面に、表面に針がついたロールを押し当て、上記ホース体に、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔を形成し、その後上記ホース体の外周に、低透過層、ゴム層を順次形成する冷媒輸送用ホースの製法を第二の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その過程で、ポリアミド樹脂を主成分とするホース最内層の外周に、ポリビニルアルコール(PVOH)を用いて層形成したところ、その層が薄膜であっても、冷媒(特に二酸化炭素冷媒)に対する低透過性に優れるようになり、また、上記PVOH層の外周にゴム層を設けることにより、振動吸収性や、外部からの機械的衝撃等に対するホース耐性にも優れるようになることも突き止めた。しかしながら、このような層構造のホースには、場合によってPVOH層と最内層との界面に剥離が生じるといった現象が生じていた。本発明者は、その原因を究明するため研究に研究を重ねた結果、ホース内を流れる冷媒の一部が、最内層(ポリアミド樹脂層)を透過してPVOH層面に到達し、そこで遮断され、最内層とPVOH層との界面に溜まり、それが原因で界面剥離が生じることを突き止めた。そして、上記最内層のみに、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔を形成することにより、最内層とPVOH層との層間に冷媒が溜まることもなくなったことから、エアコンのメンテナンス時のガス抜き(減圧)の際等に層間剥離を生じることもなくなり、所望のホース性能を発揮することができることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の冷媒輸送用ホースは、ポリアミド樹脂を主成分とする最内層と、上記最内層の外周に設けられたポリビニルアルコールからなる低透過層と、上記低透過層の外周に設けられるゴム層とを備えており、特に二酸化炭素冷媒に対して優れた低透過性能を得ることができ、冷媒透過に起因するエアコン等の冷房能力の低下を抑えることができる。そして、上記最内層には、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔が形成されていることから、最内層と低透過層との層間に二酸化炭素冷媒が溜まることもなく、エアコンのメンテナンス時のガス抜き(減圧)の際等に層間剥離を生じることもない。また、本発明の冷媒輸送用ホースは、柔軟性にも優れるため、配管の際に有利であるとともに、振動の激しい自動車のエンジンルーム内での配管用ホースとしても有利に用いることができる。
【0012】
特に、上記最内層に形成された多数の貫通孔の平均孔径が、10〜100μmの範囲に設定されていると、上記層間剥離の解消とともに、冷媒の低透過性能が良好に得られるようになる。
【0013】
また、上記低透過層が、けん化度90%以上のポリビニルアルコールを用いて形成されていると、その低透過層が薄層であっても、冷媒(特に二酸化炭素冷媒)に対する低透過性に優れるようになる。
【0014】
さらに、上記低透過層の厚みが、5〜100μmの範囲に設定されていると、よりホースの柔軟性に優れるようになる。
【0015】
また、上記低透過層の外周に形成されるゴム層が、ブチルゴムを用いて形成されていると、より冷媒の低透過性に優れるとともに、外からの耐水性に優れるようになる。
【0016】
そして、上記冷媒輸送用ホースの製法であって、その最内層形成材料をホース状に成形して得られたホース体の外周面に、表面に針がついたロール(以下、「スパイキングロール」という)を押し当て、上記ホース体に、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔を形成し、その後上記ホース体の外周に、低透過層、ゴム層を順次形成すると、本発明の冷媒輸送用ホースを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0018】
本発明の冷媒輸送用ホースは、例えば図1に示すように、最内層1と、上記最内層1の外周に設けられる低透過層2と、上記低透過層2の外周に設けられるゴム層(内面ゴム層3aおよび外面ゴム層3b)とを備えており、上記最内層1が、ポリアミド樹脂を主成分とする層であるとともに、上記低透過層2が、ポリビニルアルコールからなる層である。ここで、本発明において、「主成分とする」とは、最内層1材料の全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含める趣旨である。そして、図示のように、上記最内層1のみに、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔5が形成されている。なお、図1では、上記ゴム層が、内面ゴム層3aと外面ゴム層3bとの二層構造となっているが、特に限定はなく、単層であっても、三層以上であってもよい。また、図1に示すように、適宜、補強層4を設けてもよい。
【0019】
上記最内層1の形成材料として用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、層間接着性に優れることと、より冷媒の低透過性に優れることから、ポリアミド6が好適に用いられる。
【0020】
なお、上記最内層1の形成材料には、ポリアミド樹脂以外にも、必要に応じて、充填剤、可塑剤、老化防止剤等の添加剤を適宜に配合することができる。
【0021】
上記最内層1の外周に形成される低透過層2の形成材料は、先に述べたように、ポリビニルアルコール(PVOH)が用いられる。好ましくは、けん化度90%以上のポリビニルアルコールが用いられる。すなわち、けん化度90%未満のポリビニルアルコールであると、薄層とした際に、特に二酸化炭素冷媒に対して、所望のレベルの低透過性能が得にくくなるからである。ここで、ポリビニルアルコールのけん化度は、そのポリビニルアルコールを下記の化学式(1)に示した場合の、mとnとの値を、下記の数式(a)に当てはめることにより、求めることができる。
【0022】
【化1】

【0023】
【数1】

【0024】
そして、上記低透過層2の形成材料は、水やアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)に溶解等することにより、コーティング液として使用に供される。特に、上記低透過層2の形成材料に対する溶解性の点で、水(90〜95℃程度の熱水)を溶剤として用いることが好ましい。そして、このようにして得られるコーティング液は、粘度を10〜1000000(mPa・s/25℃)にすることが、貫通孔のない低透過層2を形成する点および良好な塗工性(濡れ性や作業性)が得られる点において好ましい。
【0025】
上記低透過層2の外周のゴム層(内面ゴム層3aおよび外面ゴム層3b)を形成する材料としては、特に限定はなく、例えば、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR),臭素化ブチルゴム(Br−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、アクリルゴム、シリコンゴム、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、ウレタンゴム等のゴム材料に、加硫剤、カーボンブラック等を適宜に配合したものが用いられる。なかでも、より冷媒の低透過性に優れるとともに、外からの耐水性に優れるようになることから、ブチルゴム(IIR)が好適に用いられる。
【0026】
なお、上記ゴム層は、図1では、内面ゴム層3aおよび外面ゴム層3bの二層であるが、このように二層以上の複数層からなるとき、その各層の形成材料は、同じであっても異なっていてもよい。また、図1のように、必要に応じ、補強層4を形成してもよい。上記補強層4は、図示のように、上記内面ゴム層3aと外面ゴム層3bとの間に介在させることが、その機能が充分発揮されることから、好ましい。上記補強層4は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),アラミド,ポリアミド(ナイロン),ビニロン,レーヨン,金属ワイヤ等の補強糸を、スパイラル編組,ニット編組,ブレード編組等によって編組することにより補強層として構成することができる。
【0027】
ここで、前記図1に示すような、本発明の冷媒輸送用ホースは、特に限定されるものではないが、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、先に述べた最内層1用材料を準備する。つぎに、図2に示すように、マンドレル8を用い、その上から、上記最内層1用材料をホース状に押し出し成形して、管状のホース体(最内層1)を形成し、このホース体(最内層1)の外周面に、スパイキングロール9を押し当てる。そして、上記スパイキングロール9を、図2に示すロール回転方向に回転させるとともに、上記ホース体を、図示の矢印方向に移動させる。これにより、図3に示すように、上記ホース体(最内層1)に、連続的に多数の貫通孔5を形成する。そして、その後、上記ホース体の外周に、低透過層2、ゴム層等を順次形成することにより、目的とする冷媒輸送用ホースを製造することができる。なお、上記マンドレル8は、必要に応じ用いられるものである。また、図2では、ホース体の側面に対し、三つのスパイキングロール9を、三方向から押し当てているが、この方法に限定されるものではない。
【0028】
上記最内層1に形成される多数の貫通孔の平均孔径は、10〜100μmの範囲に設定することが好ましい。また、上記貫通孔のピッチ(隣り合う貫通孔間の距離)は、10〜100mmの範囲に設定することが好ましい。すなわち、このような範囲内に貫通孔の平均孔径やピッチを設定することにより、最内層1と低透過層2との間に冷媒が溜まることによる層間剥離の問題が良好に改善されるとともに、冷媒の低透過性能が良好に得られるようになるからである。なお、上記貫通孔の平均孔径が200μmを超えると、その貫通孔を起点にして低い圧力でピンホール破裂となるおそれがある。
【0029】
上記低透過層2の形成は、その材料(コーティング液)を準備し、最内層1の外周面に塗工することにより行われる。この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、刷毛塗り等の従来の方法が適用できる。そして、上記塗工後、乾燥処理を行うことにより、貫通孔のない低透過層2を形成する。このようにして低透過層2を形成した後、その低透過層2の外周に、ゴム層の押し出し成形を行い、また、必要に応じ補強層4を構成する(図1では、内面ゴム層3aを形成した後、その外周面に補強層4を形成し、さらに上記補強層4の外周面に外面ゴム層3bを形成している)ことにより、目的とする層構造の冷媒輸送用ホースを作製することができる。
【0030】
なお、上記低透過層2の成膜前に、上記最内層1の外周面に、接着下地処理として、紫外線照射処理,プラズマ処理,コロナ放電処理等のエッチング処理を施しても差し支えない。これらのなかでも、層間接着性が向上する点で、最内層1の外周面をプラズマ処理により粗面化し、その粗面上に上記低透過層2を直接形成することが好ましい。
【0031】
また、上記低透過層2の成膜前に、上記最内層1の外周面に、接着剤層を形成してもよい。接着層用材料としては、特に限定はなく、例えば、ゴム糊系、ウレタン系、ポリエステル系、イソシアネート系、エポキシ系等の接着剤があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、上記最内層1と低透過層2との層間接着性に優れることから、ゴム糊系接着剤が好適に用いられる。
【0032】
本発明の冷媒輸送用ホースにおいて、ホース内径は5〜40mmの範囲内が好ましい。また、上記最内層1の厚みは、0.02〜2.0mmの範囲内が好ましい。
【0033】
また、上記低透過層2の厚みは、5〜100μmの範囲内とすることが好ましい。すなわち、上記低透過層2の厚みが5μm未満であると、冷媒に対する低透過性に劣るからであり、逆に、上記低透過層2の厚みが100μmを超えると、低透過層が硬くなり、ホースの柔軟性に支障をきたすこととなり、割れ(クラック)を生じるおそれがあるからである。
【0034】
また、上記低透過層2の外周に形成されるゴム層の厚みは、特に限定はないが、図1のように、内面ゴム層3aと外面ゴム層3bとの二層により構成する場合、上記内面ゴム層3aの厚みを0.5〜5mmの範囲内とし、外面ゴム層3bの厚みを0.5〜2.0mmの範囲内とすることが好ましい。
【0035】
本発明の冷媒輸送用ホースは、エアコン・ラジエター等に用いられる二酸化炭素,フロン,代替フロン,プロパン等の冷媒の輸送用ホースに好適に用いられる。なかでも、二酸化炭素冷媒の輸送用ホースとして、より好ましく用いられる。そして、上記冷媒輸送用ホースは、自動車用のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等にも好ましく用いられる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
TPX(合成樹脂)製のマンドレル(外径8mm)上に、PA6(宇部興産社製、ナイロン6 1030B)をホース状に押し出し成形して、管状の最内層(厚み0.15mm)を形成した。つぎに、この最内層の外周面に、プラズマ処理を行い、最内層の外周面を粗面化した。続いて、上記最内層の外周面に、スパイキングロール(東海ゴム工業社製)を、図2に示すように三方向から押し当て、そのロールを図示の矢印方向に回転させるとともに、上記最内層をマンドレルごと図示の矢印方向に移動させ、上記最内層に、連続的に多数の貫通孔(平均孔径10μm、ピッチ10mm)を形成した。その後、上記最内層の外周面に、ゴム糊系接着剤からなる接着剤層(厚み10μm)を形成し、その上から、ポリビニルアルコール(PVOH)(日本合成化学社製、ゴーセノール N−300、けん化度99%)を90℃の熱水に溶解してなるコーティング液(粘度:500mPa・s/25℃)をディッピングした。このようにして得られた積層ホース体を乾燥炉に装入して、乾燥させることにより、貫通孔のない低透過層(厚み10μm)を形成した。そして、上記低透過層の外周に、ブチルゴムの押し出し成形により、内面ゴム層を形成(厚み1.6mm)した後、その外周面にアラミド糸のブレード編組により補強層を形成し、さらに上記補強層の外周面にEPDMの押し出し成形により、外面ゴム層を形成(厚み1.0mm)した。そして、加硫後、この積層ホース体からマンドレルを抜き取り、長尺の成形品を切断することにより、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した(図1参照)。
【実施例2】
【0038】
上記低透過層(PVOH層)の厚みを100μmに形成した。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例3】
【0039】
上記低透過層(PVOH層)の厚みを5μmに形成した。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例4】
【0040】
上記低透過層(PVOH層)形成用のPVOHとして、けん化度90%のPVOH(日本合成化学社製、ゴーセノール AH−17)を用いた。そして、上記低透過層(PVOH層)の厚みを5μmに形成した。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例5】
【0041】
上記スパイキングロールの調整により、上記最内層に形成される貫通孔に関し、その平均孔径10μm、ピッチ100mmとなるようにした。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例6】
【0042】
上記スパイキングロールの調整により、上記最内層に形成される貫通孔に関し、その平均孔径100μm、ピッチ100mmとなるようにした。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例7】
【0043】
上記スパイキングロールの調整により、上記最内層に形成される貫通孔に関し、その平均孔径100μm、ピッチ150mmとなるようにした。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【実施例8】
【0044】
上記スパイキングロールの調整により、上記最内層に形成される貫通孔に関し、その平均孔径200μm、ピッチ100mmとなるようにした。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【0045】
〔比較例1〕
低透過層(PVOH層)の形成を行わず、スパイキングロールによる最内層への貫通孔の形成も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【0046】
〔比較例2〕
スパイキングロールによる最内層への貫通孔の形成を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にし、目的とする冷媒輸送用ホースを作製した。
【0047】
このようにして得られた実施例1〜8および比較例1,2のホースに関し、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。なお、後記の表において、評価を行っていないものについては、欄内に横線を引いた。
【0048】
〔CO2 透過性〕
低温(−35℃以下)で二酸化炭素(CO2 )をホース内に封入した状態で、ホースの両端開口部に栓をし、これを90℃のオーブン中に放置した。そして、ホースの二酸化炭素減量を時間とともにプロットし、その傾きにより、ホースの透過面積に対する、1日あたりのCO2 透過量(CO2 透過係数、mg・mm/cm2 ・day)を算出した。そして、PVOH層が形成されていない比較例1品におけるCO2 透過量の測定値を100とした場合の、この値に対する指数で示した。CO2 透過性の評価では、上記指数が50未満であるものを○、50を超えるものを×と評価した。
【0049】
〔成膜性〕
PVOH層形成時(ディッピング時)の塗膜成膜性を、目視にて評価した。すなわち、上記塗膜表面に、はじきや気泡がないものを○と評価した。
【0050】
〔クラック性〕
実施例および比較例において、内面ゴム層、補強層および外面ゴム層が形成される前のチューブ〔最内層(PA6層)の外周に低透過層(PVOH層)が形成され乾燥されたチューブ〕に対し、クラック性の評価を行った。すなわち、上記チューブを90°に折り曲げ、その低透過層(PVOH層)にクラックや剥離といった異常が確認されなかったものを○と評価した。
【0051】
〔層間剥離性〕
低温(−35℃以下)でCO2 をホース内に封入した状態でホース両端開口部に栓をし、これを90℃のオーブンに放置した。24時間後にオーブンからホースを取りだし、両端開口部の栓を外し、一気にホース内のCO2 を放出した。その後、ホースを半割し、PA6層/PVOH層間の層間剥離の有無を確認した。そして、層間剥離が確認されたものを×、やや層間剥離が確認されたが問題がなかったものを△、層間剥離が確認されなかったものを○と評価した。
【0052】
〔ホース耐圧性(ピンホール性)〕
ホース破裂試験機にホースを取付け、水圧にて160MPa/分の昇圧速度でホースに圧力を加え、破裂させた。そのときの破裂圧が40MPa以下となるものを△、40MPaを超えるものを○と評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
上記結果から、実施例品は、比較例1品に比べ、CO2 透過量を著しく低減させることができることがわかる。また、実施例品は、比較例2品のように、最内層と低透過層との層間に二酸化炭素冷媒が溜まることによる層間剥離を生じることもなかった。なお、実施例で行われている製法により、上記のように優れた実施例のホースが効率的に製造できることが、実験により確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の冷媒輸送用ホースは、エアコン・ラジエター等に用いられる二酸化炭素,フロン,代替フロン,プロパン等の冷媒の輸送用ホース等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の冷媒輸送用ホースの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の冷媒輸送用ホースの一製造工程を示す説明図である。
【図3】図2に示す製造工程により得られたマンドレル付きのホース体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 最内層
2 低透過層
3a 内面ゴム層
3b 外面ゴム層
5 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂を主成分とする最内層と、その外周に設けられたポリビニルアルコールからなる低透過層と、上記低透過層の外周に設けられるゴム層とを備えたホースであって、上記最内層に、厚み方向に延びる多数の貫通孔が形成されていることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
【請求項2】
上記最内層に形成された多数の貫通孔の平均孔径が、10〜100μmの範囲に設定されている請求項1記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項3】
上記低透過層が、けん化度90%以上のポリビニルアルコールを用いて形成されている請求項1または2記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項4】
上記低透過層の厚みが、5〜100μmの範囲に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項5】
上記ゴム層が、ブチルゴムを用いて形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項6】
二酸化炭素(CO2 )冷媒の輸送用ホースである請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷媒輸送用ホースの製法であって、最内層形成材料をホース状に成形して得られたホース体の外周面に、表面に針がついたロールを押し当て、上記ホース体に、その層の厚み方向に延びる多数の貫通孔を形成し、その後上記ホース体の外周に、低透過層、ゴム層を順次形成することを特徴とする冷媒輸送用ホースの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−137360(P2008−137360A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328514(P2006−328514)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】