説明

冷蔵庫内の生産物のための湿度コントロール

本発明は、湿潤剤とシリカゲル吸着剤の混合物を含む生産物保存剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産物貯蔵において湿気コントロールのための物品である生産物保存剤に関する。特に本発明は、このような物品を冷蔵庫の生産物保管用引き出し内で用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫内での生産物の貯蔵において、材料は一般的に野菜や果物用の引き出しに収められる。この引き出しは、一般にシール材を有しており、このシール材が霜なし冷蔵庫の通常の乾燥空気から隔離する。しかし、このような引き出しでも、果物や野菜の保管について問題は残されている。野菜や果物は水分を放出し、湿度が高すぎる場合には引き出し内で凝縮して野菜を腐らせ、果物および野菜にカビや菌を繁殖させる。また、引き出しが冷蔵庫の他の箇所と同様に低湿度になり、果物や野菜が干からびるのを防ぐための十分に高い湿度を維持しなくなることもある。
【0003】
さらに引き出し内での果物および野菜の貯蔵に伴う困難として、多くの果物および野菜が熟する時にエチレンを放出することが挙げられる。バナナ、りんご、アボカド、洋梨等の果物は、かなりの高率でエチレンを放出する。多くの他の野菜は低率でエチレンを放出する。このエチレンは、これらフルーツや同じ容器や引き出し内に貯蔵されている他の生産物を急速に熟成させる。このような急速な熟成は腐敗を促進する。湿気の増加はこの腐敗に拍車をかける。
【0004】
野菜および果物が冷蔵庫内に貯蔵されている間、特に生産物保管用引き出しに貯蔵されている間において、より良い管理方法が求められている。引き出し内の湿度を所望範囲で維持することが求められている。生産物保管用引き出し内での湿度をコントロールすること、および急速な熟成、腐敗、悪臭等、引き出し内で生じる望ましくない現象をコントロールすることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の不利な点を克服することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、冷蔵庫の生産物保管用の引き出しにおいて生産物貯蔵期間を改善し長くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、湿潤剤(humectant)と吸着剤(sorbent)の混合を含む生産物保存剤(produce preserving article)を提供する。
【0008】
本発明の他の態様では、生産物保管用の引き出しを備えた冷蔵庫を提供する。この引き出しは、湿潤剤とシリカゲル吸着剤の混合を含む生産物保存剤、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、劣化なく生産物を長期貯蔵できるようにしている。
本発明は、冷蔵庫の生産物保管用引出しにおける凝縮を阻止する方法を提供する。
さらなる態様において、本発明はエチレンを吸収することにより、野菜および果物の熟成を抑制する。本発明は、野菜および果物を貯蔵するのに十分な範囲に湿度をコントロールする。さらに他の態様では、本発明は臭気を吸収する。これらの、および他の利点については、以下の詳細な説明で明らかになるであろう。
【0010】
生産物保存剤は、容器における有効な組み合わせで混合された湿潤剤と吸着剤を含んでおり、湿度(humidity)が約85または90%で過剰の湿気を吸収し、含水率(moisture content)が70又は80%を下回った時に容器の空気中に水分を放出する。こうすることにより、物品は、湿気を生産物材料にとって望ましい量にコントロールする。すなわち、容器内での湿度レベルを、凝縮が生じるには不十分であるが、生産物材料が張りがある状態で維持されるには十分な範囲でコントロールする。ここで用いる「生産物材料」は、果物と野菜の両方を意味する。蕪やパースニップ等の根菜も野菜に含まれる。
【0011】
本発明の物品は、一般に冷蔵庫の生産物保管用引き出し内に配置される。この冷蔵庫では、引き出しのための空気シールが、引き出しを冷蔵庫における通常の湿度から隔離する。
【0012】
本発明の湿潤剤は、吸着剤と協働して野菜保管用引き出し内での所望の湿度を得る。湿潤剤は、親水性(affinity for water)を有する物質であり、材料の水分含有量を安定化させる作用を有している。湿潤剤は、周囲環境の含水率を狭い範囲で維持する。本発明に適した湿潤剤は、塩化カリウム、塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,炭酸ナトリウムとこれらの混合物等の金属塩である。好ましい材料は硫酸カリウムである。所望の相対湿度で有効であるとともにコストが低いからである。
【0013】
吸着剤の材料は、物品内で水分と結合して保持するいかなる材料でもよい。これは、引き出し内における凝縮を禁じる。いかなる適宜な吸着剤でも用いることができる。吸着剤の代表例は、シリカゲル(silica gel)と活性炭(activated carbon)である。好ましい吸着剤はワイド孔(wide pore)のシリカゲルである。この材料は多孔質構造を失うことなく、多量の水分を吸収できるからである。ワイド孔のシリカは、350Å(オングストローム)より大きな孔径を有する孔(pore)を少なくとも15%有するものと考えられている。活性炭が吸着剤の材料として用いられる場合には、ワイド孔シリカゲルほど多くの水分を吸収することはできないが、生産物保管用引き出しから発生した臭いに対して有効である。吸着剤を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
ある種の果物および野菜が熟す過程でエチレンを放出することは知られている。ベリー、アボカドおよびパイナップル等の果物もエチレンを放出するが、バナナ、りんごおよび洋梨が、エチレンを多量に放出することは知られている。このエチレンは、生産物保管用の引き出しに捕捉されると、他の野菜および果物は勿論のこと、上記材料自身の熟成をも促進する。しかしながら、過剰な熟成が果物および野菜にとって有害であることは知られている。この影響は、果物や野菜の鮮度低下とビタミンおよびミネラルの減少を含む。それ故、果物や野菜を消費に適さないものにしてしまう。適したエチレン吸着剤は、活性炭,チオール(thiols),過マンガン酸カリウムおよび過酸化カルシウムである。これら材料は有効な量で用いられる。炭素(carbon)や活性炭は、生産物保存剤へのより良いブレンドのために、これら材料のキャリアとして用いることができる。
【0015】
前述したように、本発明の組成は、生産物保管用引き出しにおける比較的適切な相対湿度に維持するために、水分または蒸気を吸着し解放することができる。湿度コントロールの量は、生産物保存剤の水分保持能力によって変わる。硫酸カリウムは90〜95%の間の相対湿度を維持するが、ワイド孔シリカゲルとブレンドした時には、85%に近い湿度を維持する。引き出し内で放出される水分の量は勿論のこと、吸着剤と湿潤剤の量およびタイプと、吸着剤と湿潤剤が包装されている材料の透過能力(transmission capability)とが、全体的な湿気の吸着と解放の動作に影響を与え、生産物保存剤の寿命と効力を決定する。
【0016】
本発明の生産物保存剤は、いくつかの方法で冷蔵庫の生産物保管用容器内に配置される。保存剤は、Tyvek(登録商標)等の内容物を漏らさずに水蒸気通過可能な材料からなる、小袋の形状をなす包装を備えていてもよい。Polymer Group Inc.(PGI)によるPackline(登録商標)のような、水蒸気通過可能で液体の水が通過できない他のいかなる不織材も、このような小袋に適している。その代わりに、生産物保存剤は、接着剤でボードやシートに簡単に固定できる。生産物保存シートまたは小袋は、生産物と混じる可能性を最小限にするために、引き出しに固定してもよい。
冷蔵庫の生産物保管用引き出しは、引き出しに形成されたポケットを備えていてもよい。生産物保存剤はこのポケットに保管され、生産物と物理的に混じらない。
【0017】
本発明の製品は、他の活性な成分を含んでいてもよい。他の活性な成分は、バイオスタッツ(bio-stats)または殺菌剤、防カビ剤を含んでいてもよい。さらに、製品はクラブ油(clove oil),オレガノ油(oregano oil)、メントールやライムを含んでいてもよい。製品は活性炭のような脱臭剤を含んでいてもよい。
【0018】
生産物保存剤の成分は、効果的な量で混合される。通常、吸着剤と湿潤剤は、4−10重量部の吸着剤と0.5―1.5重量部の湿潤剤の量で混合される。
【0019】
本発明の製品は、冷蔵庫の引き出し内に配置される他に、輸送や販売のために生産物を包装する際に用いることができる。生産物の包装は、包装内に過剰な水蒸気をもたずに、湿度を維持する必要がある。
【0020】
酸素バリア材で包まれた生産物とともに用いられる生産物保存剤において、その材料は酸素吸収剤を含む。これは生産物の腐食を防止する。同時に、生産物を包装内で長期にわたって保存するよう、湿度が維持される。生産物保管用引き出し内で用いるために酸素吸収剤を追加しても、非常に効果的とはいえない。なぜなら、引き出しを開いたり閉じたりして酸素が入り込んだ時に酸素吸収剤は急速に消耗されるからである。二価鉄イオン(ferrous iron)または適した電解液を伴う二価鉄イオン等の酸素吸収剤が用いられる。アントラトラキノンをベースにした酸素除去成分等の抗酸化剤では、酸素除去はUVを用いて活性化することができる。上記酸素除去成分は、好ましくは母材ポリマーにおける二次ヒドロキシル官能基の存在下で、380nm未満の波長のUV光に晒されることによって、遷移金属をベースにした触媒なしに、効果的に活性化される。米国特許5,350,622号(Speer et al.)および米国特許6,569,506号のような酸素除去剤が適している。
【実施例】
【0021】
目的:野菜保管用容器内で凝縮を調節する。
方法:
配合物(Master batch):
1. 285gの硫酸カリウム(KSO)を2855mlの蒸留水に溶かし、44℃で加熱し、水溶液を作る。
2. 753.32gのワイド孔シリカゲル(WPSG)を台所用ミキサーに加え;工程1で作った502.48mlのKSO水溶液をゲルに非常にゆっくりと投じる。
3. さらに2分間、側壁をこそぎながらミックスする。
4. 56gの乾燥した硫酸カリウムを加えてブレンドし、5分間ミックスし、ボウルから取り出し、バリア袋内に密封する。これはKSOの飽和点にある。ブレンドは冷却された時に過飽和状態となる。
5. 垂直または水平の製袋充填包装機("form-fill-seal" machine)で、工程4の混合物15gが、Tyvek(登録商標)又はPackline(登録商標)の小袋に入れられ形成される。
6. 上記小袋は、635.6g(1.4ポンド)の6個の熟したりんごのために、生産物保管用引き出し内の相対湿度を90%未満に維持する。
【0022】
本発明の前述の実施例は、典型的な実施例であり、実例として提供された。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。変形例は前述の記載から明らかであり、本発明の範囲に含まれる。本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤剤とシリカゲル吸着剤の混合物を含む生産物保存剤。
【請求項2】
上記湿潤剤がアルカリ金属塩を含む請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項3】
上記アルカリ金属塩が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の生産物保存剤。
【請求項4】
上記湿潤剤が硫酸カリウムを含む、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項5】
さらに酸素吸着剤を含む、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項6】
上記シリカゲルが、ワイド孔シリカゲルを含むことを特徴とする請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項7】
活性炭を含む、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項8】
さらにエチレン吸着剤を含む、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項9】
上記エチレン吸着剤が過マンガン酸カリウムを含む、請求項8に記載の生産物保存剤。
【請求項10】
上記エチレン吸着剤が過酸化カルシウムを含む、請求項8に記載の生産物保存剤。
【請求項11】
上記エチレン吸着剤が、エチレン吸着剤でコーティングされた活性炭を含む、請求項9に記載の生産物保存剤。
【請求項12】
上記エチレン吸着剤がメルカプタンまたはチオールを含む、請求項8に記載の生産物保存剤。
【請求項13】
上記吸着剤が4〜10重量部存在し、上記湿潤剤が0.5〜1.5重量部存在する、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項14】
上記混合物が水蒸気を透過可能な小袋に収容されている、請求項1に記載の生産物保存剤。
【請求項15】
生産物保管用引き出しを備えた冷蔵庫であって、この引き出しが、湿潤剤と吸着剤の混合物を含む生産物保存剤を、装備していることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項16】
上記湿潤剤がアルカリ金属塩を含む請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項17】
上記アルカリ金属塩が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項18】
上記湿潤剤が硫酸カリウムを含む、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項19】
上記吸着剤がシリカゲルを含む、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項20】
上記シリカゲルが、ワイド孔シリカゲルを含むことを特徴とする請求項19に記載の冷蔵庫。
【請求項21】
上記吸着剤が活性炭を含む、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項22】
さらにエチレン吸着剤を含む、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項23】
上記エチレン吸着剤が過マンガン酸カリウムを含む、請求項22に記載の冷蔵庫。
【請求項24】
上記エチレン吸着剤が過酸化カルシウムを含む、請求項22に記載の冷蔵庫。
【請求項25】
上記エチレン吸着剤が、エチレン吸着剤でコーティングされた活性炭を含む、請求項22に記載の冷蔵庫。
【請求項26】
上記エチレン吸着剤がメルカプタンまたはチオールを含む、請求項25に記載の冷蔵庫。
【請求項27】
上記吸着剤が4〜10重量部存在し、上記湿潤剤が0.5〜1.5重量部存在する、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項28】
上記混合物が湿気を透過可能な小袋に収容されている、請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項29】
上記引き出しがシールを有することを特徴とする請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項30】
冷蔵庫内に空気循環があることを特徴とする請求項15に記載の冷蔵庫。
【請求項31】
上記引き出しが、生産物保存剤を配置するための、引き出しに形成されたポケットまたは場所を有することを特徴とする請求項15に記載の冷蔵庫。

【公表番号】特表2011−529342(P2011−529342A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521203(P2011−521203)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/051523
【国際公開番号】WO2010/014488
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(509196903)マルチソーブ テクノロジーズ インク (9)
【Fターム(参考)】