説明

冷陰極装置および放射線放射装置および電子線放出装置および発光装置

【課題】 冷陰極と電子引出電極との位置関係を一定のものに保持することが可能であって、装置ごとの出力を安定化することの可能な冷陰極装置を提供する。
【解決手段】 本発明の冷陰極装置は、棒状の冷陰極4と、該冷陰極4との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極4から電子が放出されるように前記冷陰極4に対して配置されている電子引出電極5と、前記棒状の冷陰極4と前記電子引出電極5とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極4の一方の端部とともに前記電子引出電極5を保持する保持部材2とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極装置および放射線放射装置および電子線放出装置および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば非特許文献1には、グラファイトロッドに水素プラズマ処理を施して凹凸が形成された冷陰極が示されている。
【非特許文献1】Applied Physics Letters 88,073511(2006) Field emission characteristics of a graphite nanoneedle cathode and its application to scanning electron microscopy
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような棒状(ロッド)の冷陰極から電子を放出させる構造のものとするのに、本願の発明者は、当初、図1(a),(b)に示すような構成を考えた。なお図1(a)は斜視図、図1(b)は上面図である。すなわち、図1(a),(b)に示す構成は、棒状の冷陰極104と、該冷陰極104との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極104から電子が放出されるように前記冷陰極104に対して配置されている電子引出電極(グリッド)105とを有している。
【0004】
ここで、冷陰極104,電子引出電極105は、例えばガラス管中で真空に排気され、真空に保たれる。このとき、電子引出電極105と該電子引出電極105の中心の直下数mmの位置に配置された冷陰極104との間に数kVの電圧を印加することにより、冷陰極104から電子引出電極105に向かって電子が放出される。
【0005】
また、例えば、それと同時に、図示されていないガラス管他端に金属などを配置し、正の電圧を金属に数十kVの電圧を印加することにより、電子引出電極105に向かう放出電子が金属に向かって加速されて、X線を発生させることが可能となる。
【0006】
ところで、図1の構造では、冷陰極104は、対向したステムピン103間にタングステンワイヤ等の冷陰極加熱用フィラメントをスポット溶接等の手法を用いて張り、そのワイヤにカーボン接着剤等を用いて、図示のように電子引出電極105の中心直下に配置されるよう接着される。ワイヤに2A程度の電流を通電することにより、冷陰極104が加熱され、冷陰極104から放出される電子の放出量が安定する。
【0007】
また、電子引出電極105は、銅メッシュ等の金属メッシュからなり、他のステムピン103と溶接されて、冷陰極104の直上に配置される。
【0008】
しかしながら、上記のように、冷陰極104,電子引出電極105をステムピン103を用いて固定しようとした場合、溶接を行う際、あるいはカーボン接着剤で冷陰極104を接着する際に、冷陰極104と電子引出電極105との間の距離を一定に保持することが非常に困難であることがわかった。特に、冷陰極104の接着は、接着剤が固化する際に向きを固定することが難しい。このように、従来では、接着の際、冷陰極104の先端の向きが変化してしまったり、また、冷陰極104とグリッド105との間の距離を一定にすることが困難であった。冷陰極104と電子引出電極105との間の距離が変化すると、同じ電圧を印加した場合でも、電子の放出量が著しく変化する。すなわち、X線管などのデバイスを製造した場合、同条件で動作させても管球ごとに出力が著しく変化するという問題があった。
【0009】
本発明は、冷陰極と電子引出電極との位置関係を一定のものに保持することが可能であって、装置(例えば管球)ごとの出力を安定化することの可能な冷陰極装置および放射線放射装置および電子線放出装置および発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材とを有していることを特徴とする冷陰極装置である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子が衝突する位置に配置され、前記冷陰極から放出された電子の衝突によって放射線を放射するターゲットとを有していることを特徴とする放射線放射装置である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の少なくとも一部を透過して電子線として外部に放出する電子線透過手段とを備えていることを特徴とする電子線放出装置である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の入射によって所定波長の光を発光する発光手段とを有していることを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至請求項4記載の発明によれば、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材とを有しているので、冷陰極と電子引出電極との位置関係を一定のものに保持でき(より具体的には、冷陰極と電子引出電極との間の距離を一定のものに保持でき)、また、冷陰極の向きを固定することができ、これにより、装置(例えば管球)ごとの出力を安定化することができる(ほぼ一定のものにすることができる)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の第1の形態は、冷陰極装置に関するものである。図2(a),(b),(c),(d)は本発明に係る冷陰極装置の構成例を示す図である。ここで、図2(a)は電子引出電極が設けられていない状態の斜視図、図2(b)は図2(a)の上面図、図2(c)は電子引出電極(帽子型)が設けられた状態の斜視図、図2(d)は図2(c)の上面図である。
【0017】
図2(a)乃至(d)を参照すると、この冷陰極装置は、ガラス管1内に、石英プレート2と、石英プレート2支持用のステムピン3と、冷陰極4と、電子引出電極(グリッド)5とが配置されている。
【0018】
冷陰極4は、棒状のものである。より具体的に、冷陰極4には、例えば、先端が三角錐になっている直径0.5mmの円柱状のグラファイトに水素プラズマ処理を施したものが用いられる。
【0019】
また、電子引出電極5は、例えば、帽子型の金属で、上部中心に直径1mmの穴6が開けられたものが用いられる。
【0020】
また、石英プレート2は、図3(a),(b)に詳しく図示されているように(図3(a)は平面図、図3(b)は断面図)、中心に冷陰極4を支持する溝11が設けられ、円周に沿って、ステムピン(5本のステムピン)3が挿入(例えば固定)される穴(5個の穴)12が設けられている。また、石英プレート2の外周には、帽子型の電子引出電極5が嵌合する嵌合溝13が設けられている。
【0021】
すなわち、図2,図3の例では、5本のステムピン3で石英プレート2を支持し(例えば固定し)、この石英プレート2に、冷陰極4と電子引出電極5とを保持させる(例えば固定する)構造となっている。換言すれば、ステムピン3および石英プレート2は、棒状の冷陰極4と電子引出電極5とが一定の位置関係を保持するように、棒状の冷陰極4の一方の端部とともに電子引出電極5を保持する保持部材としての機能を有している。
【0022】
このような構造にすることによって、冷陰極4と電子引出電極5との位置関係を一定のものに保持することができる(すなわち、より具体的には、石英プレート2を基準に、冷陰極4と電子引出電極5との位置関係を完全に固定することが可能となる)。
【0023】
これにより、図2の例では、冷陰極4を、電子引出電極5の穴6の中心直下の例えば0.5mmの位置に安定して配置することができる。
【0024】
図2,図3のような構造の冷陰極装置では、電子引出電極5を接地し、冷陰極4に負電圧を印加する。電子引出電極5と冷陰極4との電位差は、冷陰極4から電子が放出されるのに十分な大きさとする。冷陰極4から電子が放出される閾値は約3V/μmである。このため、冷陰極4に印加する電圧を−1500V以下(冷陰極4と電子引出電極5との電位差を1500V以上)にすれば、冷陰極4から電子を放出させることができる。
【0025】
図2,図3のような構造の冷陰極装置は、次のように作製される。すなわち、例えば26mmのガラス管1と、ステムピン5本を有するステム管(ガラス管1に嵌まるステム管)を用意する。
【0026】
石英プレート2を固定したいステムピン3の位置に、金属ワイヤ(短かく切った金属ワイヤ)等をスポット溶接し、それによってできた突起まで石英プレート2を嵌め込む。
【0027】
そして図4に示すように、冷陰極4に巻いたタングステン等の加熱用フィラメント(金属フィラメント)を対向配置するステムピン3にスポット溶接する。次いで、伝導性,堅牢性を高めるため、フィラメントに冷陰極4をカーボンペースト等を用いて接着する。
【0028】
そして、フィラメントを溶接していない1本(あるいは複数)のステムピン3に図2(a),(b),(c)に示すように、ニッケル等の金属箔15をスポット溶接する。
【0029】
次いで、石英プレート2に電子引出電極5を嵌め込み、固定する。そして、電子引出電極5の側面にステムピン3に溶接した金属箔15を溶接する。
【0030】
次いで、ステム管をガラス管1に融着させる。しかる後、ガラス管1内を真空排気して封止する。
【0031】
このように本発明では、石英プレート2を用いて、冷陰極4,電子引出電極5などの位置決めを行ない、その後に、これらを固定することで、これらの位置関係を一定のものに保持でき(より具体的には、冷陰極4と電子引出電極5との間の距離を一定のものに保持でき)、また、冷陰極4の向きを固定することができる。
【0032】
換言すれば、本発明の冷陰極装置は、棒状の冷陰極4と、該冷陰極4との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極4から電子が放出されるように前記冷陰極4に対して配置されている電子引出電極5と、前記棒状の冷陰極4と前記電子引出電極5とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極4の一方の端部とともに前記電子引出電極5を保持する保持部材(上記の例では、石英プレート)2とを有していることを特徴としている。
【0033】
これにより、冷陰極4と電子引出電極5との間の位置関係(距離)を一定のものに保持でき、また、冷陰極の向きを固定することができ、これにより、装置(例えば管球)ごとの出力を安定化することができる(ほぼ一定のものにすることができる)。
【0034】
また、本発明の第2の形態は、放射線放射装置に関するものであり、本発明の放射線放射装置は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子が衝突する位置に配置され、前記冷陰極から放出された電子の衝突によって放射線を放射するターゲットとを有している。
【0035】
すなわち、本発明の第2の形態としての放射線放射装置は、前述した本発明の第1の形態としての冷陰極装置(図2乃至図4に示した冷陰極装置)において、図5に示すように、冷陰極4から放出された電子が衝突する位置に、電子の衝突によって放射線を放射するターゲット(例えば金属ターゲット)20が配置されたものとなっている。換言すれば、ターゲット20は、より具体的には例えば銅(Cu)からなり、正電圧が印加される陽極となっている。
【0036】
より具体的に、図5において、図2のガラス管1の上方に、冷陰極4と対向して陽極としてのターゲット20が配置され、また、ガラス管1の管壁には(管壁に穴を開けて)、ターゲット20から放射された放射線(例えばX線)を外部に取り出すための放射線透過窓22が設けられている。ここで、放射線透過窓22は、X線の吸収係数の低い材料、例えばベリリウム、グラファイト、ポリイミド、アルミニウム、窒化ボロン等の薄膜で形成されている。具体的には、ガラス管1の管壁に穴を空け、Be箔等を貼り付けて形成されている(ガラス管を100μm程度に薄くしても可)。なお、ターゲット20から放射される放射線がX線である場合、図5の放射線放射装置は、X線管として構成されたものとなっている。
【0037】
このような構成では、電子引出電極5を接地し、冷陰極4に負電圧を印加する。電子引出電極5と冷陰極4との電位差は、冷陰極4から電子が放出されるのに十分な大きさとする。冷陰極4から電子が放出される閾値は約3V/μmである。このため、冷陰極4に印加する電圧を−1500V以下(冷陰極4と電子引出電極5との電位差を1500V以上)にすれば、電子を放出させることができる。そして、冷陰極4から放出されて正電圧が印加されている陽極としてのターゲット20に到達した電子のエネルギが陽極材料の特性X線のエネルギよりも大きい場合には、電子の入射位置からX線が放射される。陽極材料が銅(Cu)である場合、特性X線(CuKα)のエネルギは8.04keVである。このため、ターゲット20に入射する電子のエネルギを8.04keVよりも大きくすることにより、X線を発生させることができる。
【0038】
陽極20から発生したX線は、ガラス管1に設けられている放射線X線透過窓22から外部に放射される。ここで、X線透過膜22に例えばポリイミド膜を使用する場合、8.04keVのエネルギにおける吸収係数αが6.68cm−1であるため、ポリイミド膜の厚さを330μmにすることにより80%程度の透過率を得ることができる。
【0039】
また、冷陰極4と電子引出電極5とにパルス電圧を印加することにより、冷陰極4から電子をパルス的に放出させることができる。これにより、高輝度短パルスのX線を得ることができる。
【0040】
また、本発明の第3の形態は電子線放出装置に関するものであり、本発明の電子線放出は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の少なくとも一部を透過して電子線として外部に放出する電子線透過手段とを備えていることを特徴としている。
【0041】
すなわち、本発明の第3の形態としての電子線放出装置は、前述した本発明の第1の形態としての冷陰極装置(図2乃至図4に示した冷陰極装置)において、図6に示すように、ガラス管1の片側に、電子線透過部31を有する電子線透過膜30が設けられたものとなっている。なお、同6の構成は、電子線放出装置の具体例としての電子線照射管となっている。
【0042】
ここで、電子線透過膜30には、例えばSOIウエハが用いられる。具体的に、電子線透過膜30として、Si/SiO/Siの順に厚さが3μm/2μm/500μmのものを用い、500μmの層の中心(あるいは複数箇所)に直径100μmの穴をエッチング等の手法で開け、更に穴部のSiO層も除去し、これによって、電子線透過膜30に厚さ3μm、直径100μmの電子線透過部31を形成することができる。
【0043】
このような構成では、電子線透過膜30を接地し、電子引出し電極5に数十KVの負電圧を印加し、冷陰極4に更に小さい負電圧(冷陰極4と電子引出し電極5との電位差を1500V以上)を印加する。図2の冷陰極4から放出された電子線が電子線透過膜30に引き寄せられることにより、電子線透過膜30の電子線透過部31から外部に(大気中に)、電子線を放出することができる。
【0044】
ここで、電子線透過部31の上方に被照射物を配置することにより、出力の安定した電子線照射管として用いることが可能となる。この場合、本発明では、安定した出力の電子線により、出力の安定した電子線照射管を提供できる。
【0045】
また、本発明の第4の形態は、発光装置に関するものであり、本発明の発光装置は、棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の入射によって所定波長の光を発光する発光手段とを有していることを特徴としている。
【0046】
すなわち、本発明の第4の形態としての発光装置は、前述した本発明の第1の形態としての冷陰極装置(図2乃至図4に示した冷陰極装置)において、図7に示すように、ガラス管1の片側に、導電性薄膜付ガラス板40上に蛍光体41を塗布したものが設けられたものとなっている。なお、図7の構成は、発光装置の具体例としてのフィールドエミッションランプ(電界放出ランプ)となっている。
【0047】
このような構成では、導電性薄膜付ガラス板40に正電圧を印加し、図2の冷陰極4から放出された電子線を導電性薄膜付ガラス板40に引き寄せ、導電性薄膜付ガラス板40に塗布された蛍光体41を電子線が照射することにより、蛍光体41を発光させることができる。
【0048】
この場合、本発明では、安定した出力の電子線により、ばらつきの少ないフィールドエミッションランプ(電界放出ランプ)を提供できる。
【0049】
このように、本発明では(本発明の第1,第2,第3,第4の形態では)、冷陰極4を保持部材としての石英プレート2に保持させることにより、冷陰極の位置,高さ,向きを固定することができ、それと共に石英プレート2に電子引出電極5を保持させるので、冷陰極4と電子引出電極5との間の位置関係(距離)を一定に保持することが、簡単な構成によって可能になる。また、このように、冷陰極4と電子引出電極5との間の位置関係(距離)を一定に保持することができるので、従来技術と比較して,管球ごとの出力を安定化することが可能となる。
【0050】
なお、上述の例では、冷陰極4には、円柱状のものを用いているが、棒状のものであれば良く、円柱状以外の形状のものを用いることができる。また、冷陰極4には、先端が三角錐になっているものを用いているが、先端を三角錐以外の形状のもの(例えば、円錐や四角錐など)にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本願の発明者が当初案出した冷陰極装置を示す図である。
【図2】本発明に係る冷陰極装置の構成例を示す図である。
【図3】石英プレートの構造を示す図である。
【図4】冷陰極をステムピンに加熱用フィラメントにより取り付けた状態を示す図である。
【図5】本発明に係る放射線放射装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係る電子線放出装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る発光装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス管
2 石英プレート
3 ステムピン
4 冷陰極
5 電子引出電極
6 電子引出電極の穴
11 冷陰極支持用の溝
12 ステムピン挿入用の穴
13 電子引出電極嵌合用の溝
20 ターゲット
22 放射線透過窓
30 電子線透過膜
31 電子線透過部
40 導電性薄膜付ガラス板
41 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材とを有していることを特徴とする冷陰極装置。
【請求項2】
棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子が衝突する位置に配置され、前記冷陰極から放出された電子の衝突によって放射線を放射するターゲットとを有していることを特徴とする放射線放射装置。
【請求項3】
棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の少なくとも一部を透過して電子線として外部に放出する電子線透過手段とを備えていることを特徴とする電子線放出装置。
【請求項4】
棒状の冷陰極と、該冷陰極との間に所定の電位差を設けることによって前記冷陰極から電子が放出されるように前記冷陰極に対して配置されている電子引出電極と、前記棒状の冷陰極と前記電子引出電極とが一定の位置関係を保持するように前記棒状の冷陰極の一方の端部とともに前記電子引出電極を保持する保持部材と、前記冷陰極から放出された電子を引き寄せ、引き寄せられた電子の入射によって所定波長の光を発光する発光手段とを有していることを特徴とする発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−226760(P2008−226760A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66686(P2007−66686)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(596031240)株式会社鬼塚硝子 (11)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】