冷陰極電子源
【課題】電極配置領域の端部での電界集中を緩和して蛍光面端部での異常発光を防止し、かつ、電子放出層の放出電子に基づく絶縁基板表面のチャージアップを防止して電極や蛍光体に対するダメージを防止可能とする。
【解決手段】絶縁基板6に電界電子放出する電子放出層18を備えたカソード電極14を配置した冷陰極電子源20において、絶縁基板6の表面に高抵抗膜22を設け、この高抵抗膜22により、電極配置領域12端部での電界集中を緩和すると共に電子放出層18の放出電子に基づく絶縁基板6表面のチャージアップを防止して電極や蛍光体に対するダメージを防止する。
【解決手段】絶縁基板6に電界電子放出する電子放出層18を備えたカソード電極14を配置した冷陰極電子源20において、絶縁基板6の表面に高抵抗膜22を設け、この高抵抗膜22により、電極配置領域12端部での電界集中を緩和すると共に電子放出層18の放出電子に基づく絶縁基板6表面のチャージアップを防止して電極や蛍光体に対するダメージを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源に関する。
【背景技術】
【0002】
上記冷陰極電子源にはインプレーンゲート型冷陰極電子源と称するものがある。この冷陰極電子源は、絶縁基板上のカソード電極の両側それぞれに該カソード電極と同一面内でかつ絶縁部分を隔てて該カソード電極の電位と同電位ないしは負電位が印加されるゲート電極を配置したものである。
【0003】
この冷陰極電子源を図8を参照して説明すると、この冷陰極電子源は、絶縁基板6の電極配置領域12上にカソード電極14を配置し、このカソード電極14の両側それぞれに該カソード電極14と同一面内に該カソード電極14の電位と同電位ないしは負電位が印加されるゲート電極16を配置した構成になっている。
【0004】
図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を接地電位(0V)としたときに両電極8,14間に電界が印加される。この電界印加によりアノード電極8とカソード電極14との間の空間に上記電界に応じて図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、カソード電極14上の電子放出層18からはアノード電極8上の蛍光体10に向けて電子放出が行われ、蛍光体10はこの電子衝突により励起発光する。この励起発光状態を冷陰極電子源のON状態と言うことにする。
【0005】
ゲート電極16の電位をカソード電極14の電位よりも負の電位例えば−150Vにすると、図示しないが、電子放出層18上の電界が弱くなって、電子放出が小さくなって蛍光体10の励起発光強度が低下する。
【0006】
さらに、ゲート電極16の電位をカソード電極14の電位よりも負の電位例えば−300Vにすると、図示しないが、電子放出層18の電界が弱くなって、電子放出が停止し、蛍光体10は励起発光しなくなる。この状態を冷陰極電子源のOFF状態と言うことにする。
【0007】
以上の構成を備えた冷陰極電子源においては、アノード電極8とカソード電極14との間に電界が印加されているときに、図9で示すように、電極配置領域12の端部近傍では等電位線24がひずみ、カソード電極14から放出される電子の軌道26が曲げられて蛍光体10の蛍光面10aのエッジに集中衝突し、該蛍光面10aのエッジで発光(異常発光)するようになる。図10はこの蛍光面10aでの上記異常発光を概念的に示している。
【0008】
図11はカソード電極14の電位0V、アノード電極8の電位10kV、ゲート電極16の電位0Vとし、電界強度3V/μmのときの冷陰極電子源がON状態のときの透明基板4の前方からの撮影写真である。この写真で示すように、蛍光面10aは全体的に発光するのではなく部分的に発光(不均一発光)していると共に蛍光面10aのエッジに沿って発光が集中している。この蛍光面10aのエッジの発光の集中は異常発光である。
【0009】
また、図12の電子軌跡に示すようにカソード電極14の電子放出層18から放出した電子(e-)はアノード電極8に向けて放出される電子以外に一部の電子はカソード電極14とゲート電極16との間で露出している絶縁基板6表面にチャージアップするようになる。このチャージアップした電子は過剰に蓄積されてくると、図13で示すように、電子が絶縁基板6表面から放出され、ゲート電極16やカソード電極14に衝突したり、あるいは電子放出層18に衝突したりしてそれらにダメージを与えると共に一部は蛍光体10に衝突して蛍光体10がチャージアップしたり、分解、劣化したり等の現象が生じたり、あるいは蛍光体10を意図しない部分で自然と発光させ、カソード電極14側における選択性、すなわち、いずれのカソード電極14から電子を放出させるかを選択することが困難になる。なお、参考の特許文献1を下記に示す。
【特許文献1】特開2005−235748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明により解決すべき課題は、電極配置領域での電界集中を緩和し、蛍光面端部での異常発光を防止し、かつ、チャージアップした電子による蛍光面での異常発光を防止可能にし、蛍光面が意図した制御により均一発光可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明第1による冷陰極電子源は、基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極で覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の好ましい態様は、上記電子放出層から電子放出を制御するためのゲート電極を配置し、上記高抵抗膜をゲート電極で覆われていない基板表面に設けることである。この場合、より好ましくはゲート電極を、上記カソード電極とほぼ同一面内両側それぞれに該カソード電極から一定の距離を隔てた位置に配置することである。
【0013】
さらに好ましくは高抵抗膜は基板の表面全体に配置することである。
【0014】
本発明第1によれば、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたので、上記カソード電極とゲート電極とが配置された電極配置領域から当該電極配置領域の端部の外周に至り、絶縁部の浮遊電位による電位のゆがみが低減され、上記電界をアノード電極とカソード電極との対向空間で等電位線が平行ないしはほぼ平行となり、その結果、上記電極配置領域の端部での電界強度が緩和され、また、上記電子放出部から放出した電子の一部がカソード電極とゲート電極との間に露出している高抵抗膜に衝突してチャージアップしても当該高抵抗膜によりそのチャージアップした電荷は蓄積されることがないため(パスすること)、従来のように基板表面にチャージアップした電荷によりゲート電極やカソード電極や蛍光体にダメージを与えずに済む。
【0015】
上記高抵抗膜は、好ましくは、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている。導体材料としては特に限定しないが酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化インジウム(In2O3)、インジウムアンチモン酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)を例示することができる。絶縁材料は 特に限定しないが、導体材料と絶縁材料の合成抵抗値は104−1012Ω/cm2が好ましい。
【0016】
上記高抵抗膜は、好ましくは、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている。
【0017】
この上層の絶縁層は、チャージアップした電荷が所定量以上蓄積されると、下層の導体層にパスすることができる層厚さであることが好ましい。これは電荷がチャージアップ量が一定量を超えると導体材料側の下層に容易にパスできる層厚さが好ましいからである。下層の導体層は上層側がパスしてきた電荷を逃がすことができる通路を与えることができればよく、その層厚さは特に限定しない。上層の絶縁層の構成材料は特に限定しないが酸化シリコン(SiO2)を例示することができる。下層の導体層の構成材料としては特に限定しないが例えばインジウム錫酸化物(ITO)を例示することができる。
【0018】
上記高抵抗膜は、好ましくは、酸化物の膜で構成されている。
【0019】
この酸化物の膜材料には例えば酸化ニッケル(NiO:膜厚は例えば20−50nm)、酸化鉄(Fe2O3:膜厚は例えば50−300nm)、酸化亜鉛(ZnO:膜厚は例えば10−20nm)、酸化クロム(Cr2O3:膜厚は例えば50−300nm)、酸化錫(SnO2:膜厚は例えば10−20nm)がある。
【0020】
上記電子放出部を構成する電子放出材料は特に限定しないが、好ましくはナノサイズのカーボン系材料からなる。このカーボン系材料は特に限定しないが、ファイバ、粒子でもよい。ファイバとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノコイル、グラファイトナノファイバー、グラファイトリボン、などのファイバを例示することができる。また、ファイバの材料には、炭素ヘキサゴナル網面からなる炭素ナノ繊維素が複数ロッド状またはプレート状に積層してなる炭素ナノ繊維素群が繊維軸に対して垂直配列したプレートレット構造、あるいは傾斜して配列されたヘリングボーン構造、あるいは水平配列したチューブラ構造のファイバを含むことができる。このようなプレートレット、ヘリングボーン、チューブラ構造では、多数の炭素ナノ繊維素群の端面が、電子放出点として機能することができ、繊維軸に沿って多数の電子放出点が構成される。また、電子放出材料には上記ファイバだけに限定されず、例えば、粒子形態でもよく、この形態としては例えばグラファイト粒子を挙げることができる。
【0021】
本発明第2による冷陰極電子源は、基板上にアノード電極と対向して電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を、また、該カソード電極のほぼ同一面内両側にゲート電極を、それぞれ配置し、アノード電極を高電位にカソード電極を低電位に固定し、該カソード電極の両側のゲート電極の電位をカソード電極の電位に対して同電位ないしは負電位に制御する冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたことを特徴とするものである。
【0022】
上記低電位は接地電位を含むが、アノード電極の高電位に対して相対的に低い電位であればよく、また、ゲート電極の電位がカソード電極の電位に対して負電位とは、カソード電極の上記低電位よりも低い電位を含むものである。
【0023】
本発明第2によると、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたので、冷陰極電子源をON状態とするべくアノード電極に高電位、カソード電極を接地電位とし、かつ、ゲート電極の電位を接地電位として、アノード電極とカソード電極との間に電界が印加されているときに、電極配置領域の端部での電界強度は高抵抗膜により緩和されていて等電位線のひずみが軽減されている結果、当該電極配置領域端部近傍のカソード電極から放出される電子の軌道が曲げられにくくなり蛍光体の蛍光面エッジに特定して集中衝突することが抑制され当該蛍光面エッジでの異常発光を防止ないしは抑制することができるようになる。
【0024】
本発明第2ではまた、カソード電極から放出した電子の一部が曲げられてカソード電極とゲート電極との間の高抵抗膜に衝突したときは当該高抵抗膜により電子衝突により電荷がチャージアップせずパスするから、従来のようにカソード電極とゲート電極との間に露出する基板表面に上記放出した電子の一部が曲げられてその基板表面にチャージアップするようなことがなくなり、従来発生していたチャージアップ電荷の放電によるゲート電極やカソード電極のダメージや蛍光体への衝突による蛍光体のダメージや蛍光体の意図しない部分での発光を解消することができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板表面に設けた高抵抗膜により、電極配置領域端部での電界集中を緩和することができるので電極配置領域端部での電位のゆがみにより電子軌道が曲がって蛍光面に衝突して異常発光することが防止される結果、蛍光面を意図した制御により均一発光させることが可能となる。本発明ではまた、カソード電極の電子放出部が放出した電子の一部が曲げられてカソード電極とゲート電極との間に入り込んでも、その電子は高抵抗膜によりチャージアップすることが抑制されるので、この電子がチャージアップして蓄積後、放出されてゲート電極、カソード電極、蛍光面にダメージを与えることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る冷陰極電子源を説明する。図1に同冷陰極電子源の概略構成を示し、図2は、図1の電界放射型発光素子で冷陰極電子源から電子放出している状態を示し、図3は、図1の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部を示す。
【0027】
実施の形態の冷陰極電子源は、電界放射型発光素子2に適用している。この電界放射型発光素子2は、前面パネルを構成する平面視矩形形状の透明基板4と、背面パネルを構成する平面視が透明基板4と対応した矩形形状の絶縁基板6とを備える。これら透明基板4と絶縁基板6とは所定の間隔で平行に対向配置されている。両基板4,6を上記対向配置間隔状態に支持する側面基板の図示は略している。電界放射型発光素子2の内部は真空状態に密封されている。
【0028】
透明基板4の内面側にはアノード電極8と蛍光体10とが積層されている。なお、アノード電極8は蛍光体10の励起により生成された可視光を透過させるため透明金属例えばITOで構成することが好ましい。蛍光体10の表面にメタルバック効果により蛍光体10の発光強度を高める金属膜を配置させてもよい。この場合、この金属膜をアノード電極として、上記アノード電極8を省略することができる。
【0029】
絶縁基板6の電極配置領域12上にはアノード電極8との間で印加される電界により電子放出する電子を供給するカソード電極14が複数配置されている。各カソード電極14の両側それぞれにそれらとほぼ同一面内(インプレーン)でかつ一定の距離を隔ててゲート電極16が配置されている。
【0030】
カソード電極14上には電子放出層18が形成されている。この電子放出層18は、電子放出材料が配置されたものであり、この電子放出材料としては、電界印加により電界集中して電子放出することができる材料であれば、特に限定しない。例えば、材料の形態としてはファイバ、粒子でもよい。ファイバとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノコイル、グラファイトナノファイバー、グラファイトリボンなどのファイバを例示することができる。また、ファイバの材料には、炭素ヘキサゴナル網面からなる炭素ナノ繊維素が複数ロッド状またはプレート状に積層してなる炭素ナノ繊維素群が繊維軸に対して垂直配列したプレートレット構造、あるいは傾斜して配列されたヘリングボーン構造、あるいは水平配列したチューブラ構造のファイバを含むことができる。このようなプレートレット、ヘリングボーン、チューブラ構造では、多数の炭素ナノ繊維素群の端面が、電子放出点として機能することができ、繊維軸に沿って多数の電子放出点が構成される。また、電子放出材料には上記ファイバだけに限定されず、例えば、粒子形態でもよく、この形態としては例えばグラファイト粒子を挙げることができる。
【0031】
また、電子放出層18においては、カソード電極14上への電子放出材料の配置形態に限定しないが、例えば、カソード電極14に直接電子放出材料を配置して電子放出層18を構成してもよいし、あるいは、電子放出材料を含むペーストをカソード電極14上に配置し、そのペーストを焼成し、その焼成体とその焼成体表面から突出する電子放出材料とで電子放出層18を構成してもよい。
【0032】
以上のように絶縁基板6、カソード電極14、ゲート電極16とを備えた冷陰極電子源20において、実施の形態では、絶縁基板6の全体に高抵抗膜22を形成したことを特徴とするものである。この高抵抗膜22は、電極配置領域12を含めた上記電界の強度を電極配置領域12の端部でも均一に保ちかつ電極配置領域12上に帯電した電荷がパスできる通路を与える高抵抗値を提供することができる膜である。
【0033】
この高抵抗膜22は、カソード電極14とゲート電極16との間の電気的短絡を防止する抵抗値を持つ絶縁材料と、上記電界均一化と電荷パス通路とを与える抵抗値を持つ導体材料と、を混合した膜である。すなわち、絶縁材料は、絶縁基板6全体にわたり、カソード電極14とゲート電極16それぞれが電位的に短絡しないようにするものであり、導体材料は、電極配置領域12の端部で等電位線24が歪まないようにするものである。図8の従来例では、高抵抗膜22が存在しないため電極配置領域12の端部で等電位線24が傾斜して絶縁基板6内に入りこんでいる。そのため、従来の冷陰極電子源では、図9で示すように、その端部での等電位線24の形態により、カソード電極14の電子放出層18から放出される電子の軌道26は蛍光体10の蛍光面のエッジ側に向くのに対して、実施の形態の冷陰極電子源20では、図2で示す等電位線24の形態により、カソード電極14の電子放出層18から放出される電子の軌道26は蛍光体10の蛍光面のエッジ側に向くことはない。そのため、実施の形態では、蛍光面のエッジが異常発光することが防止される。
【0034】
上記絶縁材料と導体材料との合成抵抗値は、上記効果を与える抵抗値を提供することができればよいから、特に限定しないが、例えば104−1012Ω/cm2を挙げることができる。
【0035】
絶縁材料には、酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸カリウム等を例示することができる。
【0036】
導体材料には、酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化インジウム(In2O3)、インジウムアンチモン酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)等を例示することができる。
【0037】
以上の構成を備えた電界放射型発光素子2の動作を図2以降を参照して説明すると、まず、図2で示すように、図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を低電位である接地電位(0V)としてアノード電極8とカソード電極14との間に電界を印加すると、アノード電極8とカソード電極14との間の空間に図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、この電子放出層18における電界集中により当該電子放出層18から放出される電子は、等電位線24に従い矢印で示す電子軌道26でアノード電極8上の蛍光体10に向けて放出され、蛍光体10に電子衝突することにより当該蛍光体10を励起発光させる。この状態で冷陰極電子源20はONしている。
【0038】
この場合、実施の形態では高抵抗膜22を絶縁基板6上に配置している。この高抵抗膜22は、絶縁材料と導体材料とが混合されていて、全体の抵抗値としてはカソード電極14とゲート電極16とが電気的に短絡しない抵抗値(上記104―1012Ω/cm2)であるから、カソード電極14とゲート電極16との電位を共に互いに独立して接地電位に対して制御して維持することができる。そして図3で示すように電子放出層18からの放出される電子の一部が高抵抗膜22に衝突し、内部の絶縁材料により電荷がチャージアップしても、その高抵抗膜22内の導体材料によりその電荷はパスされてしまい、電荷が所定量以上に蓄積してくることが抑制される。この結果、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に絶縁基板6表面が露出してなる絶縁部分に電子放出層18から放出した電子の一部がチャージアップし、これにより、電荷が蓄積後、ゲート電極16やカソード電極14に向けて移動してこれら電極がダメージを受けたりすることがなくなる。
【0039】
以上の実施の形態では、絶縁基板6の表面に高抵抗膜22を設けたので、カソード電極14とゲート電極16とが配置された電極配置領域12から当該電極配置領域12の端部の外周に至り、電界をアノード電極8とカソード電極14との対向空間で等電位線24が平行ないしはほぼ平行となり、その結果、上記電極配置領域12の端部での電界強度が均一化され、また、上記電子放出層18から放出した電子の一部がカソード電極14とゲート電極16との間に露出している高抵抗膜22に衝突してチャージアップしても当該高抵抗膜22によりそのチャージアップした電荷は蓄積されることがないため、従来のように絶縁基板6表面にチャージアップした電荷によりゲート電極14やカソード電極16や蛍光体10にダメージを与えずに済む。
【0040】
図4は、本発明の他の実施の形態に係る電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、冷陰極電子源から電子放出している状態を示し、図5は、図4の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部を示し、図6は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を概念的に示し、図7は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を写真で示している。この実施の形態に係る冷陰極電子源20Aを電界放射型発光素子2に適用した例である。図4ないし図7において、図1ないし図3と対応する部分には同一の符号を付している。この実施の形態の冷陰極電子源20Aでは、高抵抗膜22が、上層である絶縁層22aと、下層である導体層22bとの2層からなることを特徴とするものである。
【0041】
この高抵抗膜では、図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を接地電位(0V)としてアノード電極8とカソード電極14との間に電界を印加すると、アノード電極8とカソード電極14との間の空間に図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、この電子放出層18における電界集中により当該電子放出層18から放出される電子は、等電位線24に従い矢印で示す電子軌道26でアノード電極8上の蛍光体10に向けて放出され、蛍光体10に電子衝突することにより当該蛍光体10を励起発光させる。この状態で冷陰極電子源20AはONしている。
【0042】
そして、上記高抵抗膜22は、上層の絶縁層22aと下層の導体層22bとの全体の抵抗値としてはカソード電極14とゲート電極16とが電気的に短絡しない抵抗値であるから、カソード電極14とゲート電極16との電位を共に互いに独立して接地電位に対して制御して維持することができる。一方、図5で示すように電子放出層18からの放出される電子の一部は絶縁層22aに衝突し、該絶縁層22a内にチャージアップするが、その絶縁層22aの層厚さが薄く設定されているので、絶縁層22aの蓄積電荷が所定量以上に蓄積してくると、その電荷は導体層22bにパスするようになる。この結果、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に絶縁基板6表面が露出してなる絶縁部分にカソード電極14から放出した電子の一部がチャージアップし、これにより、電荷が蓄積後、ゲート電極16やカソード電極14に向けて移動してこれら電極14,16がダメージを受けたり、あるいは蛍光体10に衝突して該蛍光体10にダメージを与えたりすることがなくなる。
【0043】
図6は、高抵抗膜22が上層の絶縁層22aと下層の導体層22bとの2層からなる場合の蛍光面10aを概念的に示す図である。図6と図10とを比較して明らかであるように、従来では蛍光面10aのエッジが異常発光しているのに対して、図6では蛍光面10a全体が均一に発光している。
【0044】
図7は実施の形態の高抵抗膜22を備えた冷陰極電子源20Aからの電子放出により発光している蛍光面の写真である。この場合、この冷陰極電子源20Aでは、その高抵抗膜22の絶縁層22aに酸化シリコン(SiO2)を選定し、下層の導体層22bにインジウム錫酸化物(ITO)を選定している。この写真で示すように高抵抗膜を配置することにより蛍光面全体が均一に発光することができるようになる。
【0045】
以上の実施の形態では、絶縁基板6表面に高抵抗膜22を設けたので、冷陰極電子源20AをON状態とするべくアノード電極8に高電位、カソード電極14を接地電位とし、かつ、ゲート電極16の電位を接地電位として、アノード電極8とカソード電極14との間に電界が印加されているときに、電極配置領域12の端部での電界強度は高抵抗膜22により均一化されていて等電位線24のひずみが軽減されている結果、当該電極配置領域22の端部近傍のカソード電極14から放出される電子の軌道が曲げられにくくなり蛍光体10の蛍光面10aのエッジに特定して集中衝突することが抑制され当該蛍光面10aのエッジでの異常発光を防止ないしは抑制することができるようになる。
【0046】
以上の実施の形態ではまた、電子放出層18から放出した電子の一部が曲げられてカソード電極14とゲート電極16との間の高抵抗膜22に衝突したときは当該高抵抗膜22により電荷がチャージアップせずパスするから、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に露出する絶縁基板6表面に上記放出した電子の一部が曲げられてその絶縁基板6表面にチャージアップするようなことがなくなり、チャージアップ電荷の放電によるゲート電極14やカソード電極16のダメージや蛍光体10への衝突による蛍光体のダメージや蛍光体の意図しない部分での発光を解消することができるようになる。
【0047】
なお、本実施の形態の冷陰極電子源は、フラットパネル形式の表示装置に適用することができる。例えば、フロントパネルの前面基板の内面側に配置されるアノード電極8および蛍光体10を行方向に複数配列し、また、背面基板の内面側に配置されるカソード電極14をアノード電極8に対して列方向に複数配列したマトリクス配列としてもよい。ゲート電極16を表示データ信号に応じて駆動することにより、各カソード電極14表面の電子放出層18から電子放出を行うことにより、アノード電極8とカソード電極14とが交差する部位をピクセルとし、そのピクセルに対応する蛍光体10の蛍光面10aを上記電子放出により励起発光させ、フラットパネルタイプの画像表示装置を構成してもよい。このゲート電極16の電位を上記表示データ信号に対応して接地電位あるいは負電位に制御することができる。また、上記ピクセル内に蛍光体10を赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体として配置し、カソード電極14を各色の蛍光体それぞれに対応して配置し、各カソード電極14の両側のゲート電極16を表示データ信号に応じて電位変化させて駆動することにより、各色対応の蛍光体を選択して発光駆動するカラー表示装置を構成することができる。
【0048】
本発明の冷陰極電子源は、液晶表示装置のバックライトに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る冷陰極電子源を適用した電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1の電界放射型発光素子で冷陰極電子源から電子放出している状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部の断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施の形態に係る電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、冷陰極電子源から電子放出している状態を示している。
【図5】図5は、図4の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部の断面図である。
【図6】図6は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を概念的に示す図である。
【図7】図7は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を示す写真である。
【図8】図8は、従来の冷陰極電子源を組み込んだ電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、アノード電極に高電位、カソード電極とゲート電極に接地電位を印加して冷陰極電子源から電子放出している状態を示している。
【図9】図9は、電極配置領域端部での電界集中により蛍光体に対する電子軌道を示す電界放射型発光素子の要部断面図である。
【図10】図10は、図9で蛍光体の蛍光面での発光状態を示す図である。
【図11】図11は、図10で蛍光体の蛍光面での発光状態を示す写真である。
【図12】図12は、従来の冷陰極電子源での絶縁基板上へのチャージアップの説明に供する図である。
【図13】図13は、図12でチャージアップした電子がカソード電極やゲート電極等に移動することの説明に供する図である。
【符号の説明】
【0050】
2 電界放射型発光素子
6 絶縁基板
8 アノード電極
10 蛍光体
12 電極配置領域
14 カソード電極
16 ゲート電極
18 電子放出層
20 冷陰極電子源
22 高抵抗膜
24 等電位線
26 電子軌道
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源に関する。
【背景技術】
【0002】
上記冷陰極電子源にはインプレーンゲート型冷陰極電子源と称するものがある。この冷陰極電子源は、絶縁基板上のカソード電極の両側それぞれに該カソード電極と同一面内でかつ絶縁部分を隔てて該カソード電極の電位と同電位ないしは負電位が印加されるゲート電極を配置したものである。
【0003】
この冷陰極電子源を図8を参照して説明すると、この冷陰極電子源は、絶縁基板6の電極配置領域12上にカソード電極14を配置し、このカソード電極14の両側それぞれに該カソード電極14と同一面内に該カソード電極14の電位と同電位ないしは負電位が印加されるゲート電極16を配置した構成になっている。
【0004】
図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を接地電位(0V)としたときに両電極8,14間に電界が印加される。この電界印加によりアノード電極8とカソード電極14との間の空間に上記電界に応じて図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、カソード電極14上の電子放出層18からはアノード電極8上の蛍光体10に向けて電子放出が行われ、蛍光体10はこの電子衝突により励起発光する。この励起発光状態を冷陰極電子源のON状態と言うことにする。
【0005】
ゲート電極16の電位をカソード電極14の電位よりも負の電位例えば−150Vにすると、図示しないが、電子放出層18上の電界が弱くなって、電子放出が小さくなって蛍光体10の励起発光強度が低下する。
【0006】
さらに、ゲート電極16の電位をカソード電極14の電位よりも負の電位例えば−300Vにすると、図示しないが、電子放出層18の電界が弱くなって、電子放出が停止し、蛍光体10は励起発光しなくなる。この状態を冷陰極電子源のOFF状態と言うことにする。
【0007】
以上の構成を備えた冷陰極電子源においては、アノード電極8とカソード電極14との間に電界が印加されているときに、図9で示すように、電極配置領域12の端部近傍では等電位線24がひずみ、カソード電極14から放出される電子の軌道26が曲げられて蛍光体10の蛍光面10aのエッジに集中衝突し、該蛍光面10aのエッジで発光(異常発光)するようになる。図10はこの蛍光面10aでの上記異常発光を概念的に示している。
【0008】
図11はカソード電極14の電位0V、アノード電極8の電位10kV、ゲート電極16の電位0Vとし、電界強度3V/μmのときの冷陰極電子源がON状態のときの透明基板4の前方からの撮影写真である。この写真で示すように、蛍光面10aは全体的に発光するのではなく部分的に発光(不均一発光)していると共に蛍光面10aのエッジに沿って発光が集中している。この蛍光面10aのエッジの発光の集中は異常発光である。
【0009】
また、図12の電子軌跡に示すようにカソード電極14の電子放出層18から放出した電子(e-)はアノード電極8に向けて放出される電子以外に一部の電子はカソード電極14とゲート電極16との間で露出している絶縁基板6表面にチャージアップするようになる。このチャージアップした電子は過剰に蓄積されてくると、図13で示すように、電子が絶縁基板6表面から放出され、ゲート電極16やカソード電極14に衝突したり、あるいは電子放出層18に衝突したりしてそれらにダメージを与えると共に一部は蛍光体10に衝突して蛍光体10がチャージアップしたり、分解、劣化したり等の現象が生じたり、あるいは蛍光体10を意図しない部分で自然と発光させ、カソード電極14側における選択性、すなわち、いずれのカソード電極14から電子を放出させるかを選択することが困難になる。なお、参考の特許文献1を下記に示す。
【特許文献1】特開2005−235748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明により解決すべき課題は、電極配置領域での電界集中を緩和し、蛍光面端部での異常発光を防止し、かつ、チャージアップした電子による蛍光面での異常発光を防止可能にし、蛍光面が意図した制御により均一発光可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明第1による冷陰極電子源は、基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極で覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の好ましい態様は、上記電子放出層から電子放出を制御するためのゲート電極を配置し、上記高抵抗膜をゲート電極で覆われていない基板表面に設けることである。この場合、より好ましくはゲート電極を、上記カソード電極とほぼ同一面内両側それぞれに該カソード電極から一定の距離を隔てた位置に配置することである。
【0013】
さらに好ましくは高抵抗膜は基板の表面全体に配置することである。
【0014】
本発明第1によれば、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたので、上記カソード電極とゲート電極とが配置された電極配置領域から当該電極配置領域の端部の外周に至り、絶縁部の浮遊電位による電位のゆがみが低減され、上記電界をアノード電極とカソード電極との対向空間で等電位線が平行ないしはほぼ平行となり、その結果、上記電極配置領域の端部での電界強度が緩和され、また、上記電子放出部から放出した電子の一部がカソード電極とゲート電極との間に露出している高抵抗膜に衝突してチャージアップしても当該高抵抗膜によりそのチャージアップした電荷は蓄積されることがないため(パスすること)、従来のように基板表面にチャージアップした電荷によりゲート電極やカソード電極や蛍光体にダメージを与えずに済む。
【0015】
上記高抵抗膜は、好ましくは、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている。導体材料としては特に限定しないが酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化インジウム(In2O3)、インジウムアンチモン酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)を例示することができる。絶縁材料は 特に限定しないが、導体材料と絶縁材料の合成抵抗値は104−1012Ω/cm2が好ましい。
【0016】
上記高抵抗膜は、好ましくは、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている。
【0017】
この上層の絶縁層は、チャージアップした電荷が所定量以上蓄積されると、下層の導体層にパスすることができる層厚さであることが好ましい。これは電荷がチャージアップ量が一定量を超えると導体材料側の下層に容易にパスできる層厚さが好ましいからである。下層の導体層は上層側がパスしてきた電荷を逃がすことができる通路を与えることができればよく、その層厚さは特に限定しない。上層の絶縁層の構成材料は特に限定しないが酸化シリコン(SiO2)を例示することができる。下層の導体層の構成材料としては特に限定しないが例えばインジウム錫酸化物(ITO)を例示することができる。
【0018】
上記高抵抗膜は、好ましくは、酸化物の膜で構成されている。
【0019】
この酸化物の膜材料には例えば酸化ニッケル(NiO:膜厚は例えば20−50nm)、酸化鉄(Fe2O3:膜厚は例えば50−300nm)、酸化亜鉛(ZnO:膜厚は例えば10−20nm)、酸化クロム(Cr2O3:膜厚は例えば50−300nm)、酸化錫(SnO2:膜厚は例えば10−20nm)がある。
【0020】
上記電子放出部を構成する電子放出材料は特に限定しないが、好ましくはナノサイズのカーボン系材料からなる。このカーボン系材料は特に限定しないが、ファイバ、粒子でもよい。ファイバとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノコイル、グラファイトナノファイバー、グラファイトリボン、などのファイバを例示することができる。また、ファイバの材料には、炭素ヘキサゴナル網面からなる炭素ナノ繊維素が複数ロッド状またはプレート状に積層してなる炭素ナノ繊維素群が繊維軸に対して垂直配列したプレートレット構造、あるいは傾斜して配列されたヘリングボーン構造、あるいは水平配列したチューブラ構造のファイバを含むことができる。このようなプレートレット、ヘリングボーン、チューブラ構造では、多数の炭素ナノ繊維素群の端面が、電子放出点として機能することができ、繊維軸に沿って多数の電子放出点が構成される。また、電子放出材料には上記ファイバだけに限定されず、例えば、粒子形態でもよく、この形態としては例えばグラファイト粒子を挙げることができる。
【0021】
本発明第2による冷陰極電子源は、基板上にアノード電極と対向して電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を、また、該カソード電極のほぼ同一面内両側にゲート電極を、それぞれ配置し、アノード電極を高電位にカソード電極を低電位に固定し、該カソード電極の両側のゲート電極の電位をカソード電極の電位に対して同電位ないしは負電位に制御する冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたことを特徴とするものである。
【0022】
上記低電位は接地電位を含むが、アノード電極の高電位に対して相対的に低い電位であればよく、また、ゲート電極の電位がカソード電極の電位に対して負電位とは、カソード電極の上記低電位よりも低い電位を含むものである。
【0023】
本発明第2によると、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けたので、冷陰極電子源をON状態とするべくアノード電極に高電位、カソード電極を接地電位とし、かつ、ゲート電極の電位を接地電位として、アノード電極とカソード電極との間に電界が印加されているときに、電極配置領域の端部での電界強度は高抵抗膜により緩和されていて等電位線のひずみが軽減されている結果、当該電極配置領域端部近傍のカソード電極から放出される電子の軌道が曲げられにくくなり蛍光体の蛍光面エッジに特定して集中衝突することが抑制され当該蛍光面エッジでの異常発光を防止ないしは抑制することができるようになる。
【0024】
本発明第2ではまた、カソード電極から放出した電子の一部が曲げられてカソード電極とゲート電極との間の高抵抗膜に衝突したときは当該高抵抗膜により電子衝突により電荷がチャージアップせずパスするから、従来のようにカソード電極とゲート電極との間に露出する基板表面に上記放出した電子の一部が曲げられてその基板表面にチャージアップするようなことがなくなり、従来発生していたチャージアップ電荷の放電によるゲート電極やカソード電極のダメージや蛍光体への衝突による蛍光体のダメージや蛍光体の意図しない部分での発光を解消することができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板表面に設けた高抵抗膜により、電極配置領域端部での電界集中を緩和することができるので電極配置領域端部での電位のゆがみにより電子軌道が曲がって蛍光面に衝突して異常発光することが防止される結果、蛍光面を意図した制御により均一発光させることが可能となる。本発明ではまた、カソード電極の電子放出部が放出した電子の一部が曲げられてカソード電極とゲート電極との間に入り込んでも、その電子は高抵抗膜によりチャージアップすることが抑制されるので、この電子がチャージアップして蓄積後、放出されてゲート電極、カソード電極、蛍光面にダメージを与えることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る冷陰極電子源を説明する。図1に同冷陰極電子源の概略構成を示し、図2は、図1の電界放射型発光素子で冷陰極電子源から電子放出している状態を示し、図3は、図1の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部を示す。
【0027】
実施の形態の冷陰極電子源は、電界放射型発光素子2に適用している。この電界放射型発光素子2は、前面パネルを構成する平面視矩形形状の透明基板4と、背面パネルを構成する平面視が透明基板4と対応した矩形形状の絶縁基板6とを備える。これら透明基板4と絶縁基板6とは所定の間隔で平行に対向配置されている。両基板4,6を上記対向配置間隔状態に支持する側面基板の図示は略している。電界放射型発光素子2の内部は真空状態に密封されている。
【0028】
透明基板4の内面側にはアノード電極8と蛍光体10とが積層されている。なお、アノード電極8は蛍光体10の励起により生成された可視光を透過させるため透明金属例えばITOで構成することが好ましい。蛍光体10の表面にメタルバック効果により蛍光体10の発光強度を高める金属膜を配置させてもよい。この場合、この金属膜をアノード電極として、上記アノード電極8を省略することができる。
【0029】
絶縁基板6の電極配置領域12上にはアノード電極8との間で印加される電界により電子放出する電子を供給するカソード電極14が複数配置されている。各カソード電極14の両側それぞれにそれらとほぼ同一面内(インプレーン)でかつ一定の距離を隔ててゲート電極16が配置されている。
【0030】
カソード電極14上には電子放出層18が形成されている。この電子放出層18は、電子放出材料が配置されたものであり、この電子放出材料としては、電界印加により電界集中して電子放出することができる材料であれば、特に限定しない。例えば、材料の形態としてはファイバ、粒子でもよい。ファイバとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノコイル、グラファイトナノファイバー、グラファイトリボンなどのファイバを例示することができる。また、ファイバの材料には、炭素ヘキサゴナル網面からなる炭素ナノ繊維素が複数ロッド状またはプレート状に積層してなる炭素ナノ繊維素群が繊維軸に対して垂直配列したプレートレット構造、あるいは傾斜して配列されたヘリングボーン構造、あるいは水平配列したチューブラ構造のファイバを含むことができる。このようなプレートレット、ヘリングボーン、チューブラ構造では、多数の炭素ナノ繊維素群の端面が、電子放出点として機能することができ、繊維軸に沿って多数の電子放出点が構成される。また、電子放出材料には上記ファイバだけに限定されず、例えば、粒子形態でもよく、この形態としては例えばグラファイト粒子を挙げることができる。
【0031】
また、電子放出層18においては、カソード電極14上への電子放出材料の配置形態に限定しないが、例えば、カソード電極14に直接電子放出材料を配置して電子放出層18を構成してもよいし、あるいは、電子放出材料を含むペーストをカソード電極14上に配置し、そのペーストを焼成し、その焼成体とその焼成体表面から突出する電子放出材料とで電子放出層18を構成してもよい。
【0032】
以上のように絶縁基板6、カソード電極14、ゲート電極16とを備えた冷陰極電子源20において、実施の形態では、絶縁基板6の全体に高抵抗膜22を形成したことを特徴とするものである。この高抵抗膜22は、電極配置領域12を含めた上記電界の強度を電極配置領域12の端部でも均一に保ちかつ電極配置領域12上に帯電した電荷がパスできる通路を与える高抵抗値を提供することができる膜である。
【0033】
この高抵抗膜22は、カソード電極14とゲート電極16との間の電気的短絡を防止する抵抗値を持つ絶縁材料と、上記電界均一化と電荷パス通路とを与える抵抗値を持つ導体材料と、を混合した膜である。すなわち、絶縁材料は、絶縁基板6全体にわたり、カソード電極14とゲート電極16それぞれが電位的に短絡しないようにするものであり、導体材料は、電極配置領域12の端部で等電位線24が歪まないようにするものである。図8の従来例では、高抵抗膜22が存在しないため電極配置領域12の端部で等電位線24が傾斜して絶縁基板6内に入りこんでいる。そのため、従来の冷陰極電子源では、図9で示すように、その端部での等電位線24の形態により、カソード電極14の電子放出層18から放出される電子の軌道26は蛍光体10の蛍光面のエッジ側に向くのに対して、実施の形態の冷陰極電子源20では、図2で示す等電位線24の形態により、カソード電極14の電子放出層18から放出される電子の軌道26は蛍光体10の蛍光面のエッジ側に向くことはない。そのため、実施の形態では、蛍光面のエッジが異常発光することが防止される。
【0034】
上記絶縁材料と導体材料との合成抵抗値は、上記効果を与える抵抗値を提供することができればよいから、特に限定しないが、例えば104−1012Ω/cm2を挙げることができる。
【0035】
絶縁材料には、酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸カリウム等を例示することができる。
【0036】
導体材料には、酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化インジウム(In2O3)、インジウムアンチモン酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)等を例示することができる。
【0037】
以上の構成を備えた電界放射型発光素子2の動作を図2以降を参照して説明すると、まず、図2で示すように、図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を低電位である接地電位(0V)としてアノード電極8とカソード電極14との間に電界を印加すると、アノード電極8とカソード電極14との間の空間に図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、この電子放出層18における電界集中により当該電子放出層18から放出される電子は、等電位線24に従い矢印で示す電子軌道26でアノード電極8上の蛍光体10に向けて放出され、蛍光体10に電子衝突することにより当該蛍光体10を励起発光させる。この状態で冷陰極電子源20はONしている。
【0038】
この場合、実施の形態では高抵抗膜22を絶縁基板6上に配置している。この高抵抗膜22は、絶縁材料と導体材料とが混合されていて、全体の抵抗値としてはカソード電極14とゲート電極16とが電気的に短絡しない抵抗値(上記104―1012Ω/cm2)であるから、カソード電極14とゲート電極16との電位を共に互いに独立して接地電位に対して制御して維持することができる。そして図3で示すように電子放出層18からの放出される電子の一部が高抵抗膜22に衝突し、内部の絶縁材料により電荷がチャージアップしても、その高抵抗膜22内の導体材料によりその電荷はパスされてしまい、電荷が所定量以上に蓄積してくることが抑制される。この結果、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に絶縁基板6表面が露出してなる絶縁部分に電子放出層18から放出した電子の一部がチャージアップし、これにより、電荷が蓄積後、ゲート電極16やカソード電極14に向けて移動してこれら電極がダメージを受けたりすることがなくなる。
【0039】
以上の実施の形態では、絶縁基板6の表面に高抵抗膜22を設けたので、カソード電極14とゲート電極16とが配置された電極配置領域12から当該電極配置領域12の端部の外周に至り、電界をアノード電極8とカソード電極14との対向空間で等電位線24が平行ないしはほぼ平行となり、その結果、上記電極配置領域12の端部での電界強度が均一化され、また、上記電子放出層18から放出した電子の一部がカソード電極14とゲート電極16との間に露出している高抵抗膜22に衝突してチャージアップしても当該高抵抗膜22によりそのチャージアップした電荷は蓄積されることがないため、従来のように絶縁基板6表面にチャージアップした電荷によりゲート電極14やカソード電極16や蛍光体10にダメージを与えずに済む。
【0040】
図4は、本発明の他の実施の形態に係る電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、冷陰極電子源から電子放出している状態を示し、図5は、図4の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部を示し、図6は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を概念的に示し、図7は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を写真で示している。この実施の形態に係る冷陰極電子源20Aを電界放射型発光素子2に適用した例である。図4ないし図7において、図1ないし図3と対応する部分には同一の符号を付している。この実施の形態の冷陰極電子源20Aでは、高抵抗膜22が、上層である絶縁層22aと、下層である導体層22bとの2層からなることを特徴とするものである。
【0041】
この高抵抗膜では、図示略の電源からアノード電極8にカソード電極14に対して高電位(例えば10kV)を印加し、カソード電極14および両ゲート電極16を接地電位(0V)としてアノード電極8とカソード電極14との間に電界を印加すると、アノード電極8とカソード電極14との間の空間に図示するごとき等電位線24が形成される。そして、この場合、カソード電極14表面には電界放射(フィールドエミッション)により電子を放出する電子放出層18が形成されており、この電子放出層18における電界集中により当該電子放出層18から放出される電子は、等電位線24に従い矢印で示す電子軌道26でアノード電極8上の蛍光体10に向けて放出され、蛍光体10に電子衝突することにより当該蛍光体10を励起発光させる。この状態で冷陰極電子源20AはONしている。
【0042】
そして、上記高抵抗膜22は、上層の絶縁層22aと下層の導体層22bとの全体の抵抗値としてはカソード電極14とゲート電極16とが電気的に短絡しない抵抗値であるから、カソード電極14とゲート電極16との電位を共に互いに独立して接地電位に対して制御して維持することができる。一方、図5で示すように電子放出層18からの放出される電子の一部は絶縁層22aに衝突し、該絶縁層22a内にチャージアップするが、その絶縁層22aの層厚さが薄く設定されているので、絶縁層22aの蓄積電荷が所定量以上に蓄積してくると、その電荷は導体層22bにパスするようになる。この結果、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に絶縁基板6表面が露出してなる絶縁部分にカソード電極14から放出した電子の一部がチャージアップし、これにより、電荷が蓄積後、ゲート電極16やカソード電極14に向けて移動してこれら電極14,16がダメージを受けたり、あるいは蛍光体10に衝突して該蛍光体10にダメージを与えたりすることがなくなる。
【0043】
図6は、高抵抗膜22が上層の絶縁層22aと下層の導体層22bとの2層からなる場合の蛍光面10aを概念的に示す図である。図6と図10とを比較して明らかであるように、従来では蛍光面10aのエッジが異常発光しているのに対して、図6では蛍光面10a全体が均一に発光している。
【0044】
図7は実施の形態の高抵抗膜22を備えた冷陰極電子源20Aからの電子放出により発光している蛍光面の写真である。この場合、この冷陰極電子源20Aでは、その高抵抗膜22の絶縁層22aに酸化シリコン(SiO2)を選定し、下層の導体層22bにインジウム錫酸化物(ITO)を選定している。この写真で示すように高抵抗膜を配置することにより蛍光面全体が均一に発光することができるようになる。
【0045】
以上の実施の形態では、絶縁基板6表面に高抵抗膜22を設けたので、冷陰極電子源20AをON状態とするべくアノード電極8に高電位、カソード電極14を接地電位とし、かつ、ゲート電極16の電位を接地電位として、アノード電極8とカソード電極14との間に電界が印加されているときに、電極配置領域12の端部での電界強度は高抵抗膜22により均一化されていて等電位線24のひずみが軽減されている結果、当該電極配置領域22の端部近傍のカソード電極14から放出される電子の軌道が曲げられにくくなり蛍光体10の蛍光面10aのエッジに特定して集中衝突することが抑制され当該蛍光面10aのエッジでの異常発光を防止ないしは抑制することができるようになる。
【0046】
以上の実施の形態ではまた、電子放出層18から放出した電子の一部が曲げられてカソード電極14とゲート電極16との間の高抵抗膜22に衝突したときは当該高抵抗膜22により電荷がチャージアップせずパスするから、従来のようにカソード電極14とゲート電極16との間に露出する絶縁基板6表面に上記放出した電子の一部が曲げられてその絶縁基板6表面にチャージアップするようなことがなくなり、チャージアップ電荷の放電によるゲート電極14やカソード電極16のダメージや蛍光体10への衝突による蛍光体のダメージや蛍光体の意図しない部分での発光を解消することができるようになる。
【0047】
なお、本実施の形態の冷陰極電子源は、フラットパネル形式の表示装置に適用することができる。例えば、フロントパネルの前面基板の内面側に配置されるアノード電極8および蛍光体10を行方向に複数配列し、また、背面基板の内面側に配置されるカソード電極14をアノード電極8に対して列方向に複数配列したマトリクス配列としてもよい。ゲート電極16を表示データ信号に応じて駆動することにより、各カソード電極14表面の電子放出層18から電子放出を行うことにより、アノード電極8とカソード電極14とが交差する部位をピクセルとし、そのピクセルに対応する蛍光体10の蛍光面10aを上記電子放出により励起発光させ、フラットパネルタイプの画像表示装置を構成してもよい。このゲート電極16の電位を上記表示データ信号に対応して接地電位あるいは負電位に制御することができる。また、上記ピクセル内に蛍光体10を赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体として配置し、カソード電極14を各色の蛍光体それぞれに対応して配置し、各カソード電極14の両側のゲート電極16を表示データ信号に応じて電位変化させて駆動することにより、各色対応の蛍光体を選択して発光駆動するカラー表示装置を構成することができる。
【0048】
本発明の冷陰極電子源は、液晶表示装置のバックライトに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る冷陰極電子源を適用した電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1の電界放射型発光素子で冷陰極電子源から電子放出している状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部の断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施の形態に係る電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、冷陰極電子源から電子放出している状態を示している。
【図5】図5は、図4の冷陰極電子源でチャージアップの説明に供する冷陰極電子源要部の断面図である。
【図6】図6は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を概念的に示す図である。
【図7】図7は、図4の冷陰極電子源の電子放出により蛍光面の発光状態を示す写真である。
【図8】図8は、従来の冷陰極電子源を組み込んだ電界放射型発光素子の概略構成を示す断面図であり、アノード電極に高電位、カソード電極とゲート電極に接地電位を印加して冷陰極電子源から電子放出している状態を示している。
【図9】図9は、電極配置領域端部での電界集中により蛍光体に対する電子軌道を示す電界放射型発光素子の要部断面図である。
【図10】図10は、図9で蛍光体の蛍光面での発光状態を示す図である。
【図11】図11は、図10で蛍光体の蛍光面での発光状態を示す写真である。
【図12】図12は、従来の冷陰極電子源での絶縁基板上へのチャージアップの説明に供する図である。
【図13】図13は、図12でチャージアップした電子がカソード電極やゲート電極等に移動することの説明に供する図である。
【符号の説明】
【0050】
2 電界放射型発光素子
6 絶縁基板
8 アノード電極
10 蛍光体
12 電極配置領域
14 カソード電極
16 ゲート電極
18 電子放出層
20 冷陰極電子源
22 高抵抗膜
24 等電位線
26 電子軌道
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極で覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とする冷陰極電子源。
【請求項2】
上記電子放出層から電子放出を制御するためのゲート電極を配置し、上記高抵抗膜を上記カソード電極およびゲート電極で覆われていない基板表面に設けた、ことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電子源。
【請求項3】
上記ゲート電極が、上記カソード電極の同一面内両側それぞれに該カソード電極から一定の距離を隔てた位置に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の冷陰極電子源。
【請求項4】
上記高抵抗膜を上記基板全体に配置した、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項5】
上記高抵抗膜が、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項6】
上記高抵抗膜が、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項7】
上記高抵抗膜が、酸化物の膜で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項8】
上記電子放出部がナノサイズのカーボン系材料からなる、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項9】
基板上に、アノード電極と対向して電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を、また、該カソード電極の同一面内両側にゲート電極を、それぞれ、配置し、アノード電極を高電位にカソード電極を低電位に固定し、該カソード電極の両側のゲート電極の電位をカソード電極の電位に対して同電位ないしは負電位に制御する冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とする冷陰極電子源。
【請求項10】
上記高抵抗膜が、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電子源。
【請求項11】
上記高抵抗膜が、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電子源。
【請求項12】
上記高抵抗膜が、酸化物の膜で構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載の冷陰極電子源。
【請求項1】
基板に電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を配置した冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極で覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とする冷陰極電子源。
【請求項2】
上記電子放出層から電子放出を制御するためのゲート電極を配置し、上記高抵抗膜を上記カソード電極およびゲート電極で覆われていない基板表面に設けた、ことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極電子源。
【請求項3】
上記ゲート電極が、上記カソード電極の同一面内両側それぞれに該カソード電極から一定の距離を隔てた位置に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の冷陰極電子源。
【請求項4】
上記高抵抗膜を上記基板全体に配置した、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項5】
上記高抵抗膜が、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項6】
上記高抵抗膜が、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項7】
上記高抵抗膜が、酸化物の膜で構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項8】
上記電子放出部がナノサイズのカーボン系材料からなる、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の冷陰極電子源。
【請求項9】
基板上に、アノード電極と対向して電界電子放出する電子放出層を備えたカソード電極を、また、該カソード電極の同一面内両側にゲート電極を、それぞれ、配置し、アノード電極を高電位にカソード電極を低電位に固定し、該カソード電極の両側のゲート電極の電位をカソード電極の電位に対して同電位ないしは負電位に制御する冷陰極電子源において、少なくとも上記カソード電極と上記ゲート電極とで覆われていない基板表面に高抵抗膜を設けた、ことを特徴とする冷陰極電子源。
【請求項10】
上記高抵抗膜が、導体材料と絶縁材料とを混合した膜で構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電子源。
【請求項11】
上記高抵抗膜が、積層された少なくとも2つの層からなり、上層が絶縁層で構成され、下層が導体層で構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載の冷陰極電子源。
【請求項12】
上記高抵抗膜が、酸化物の膜で構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載の冷陰極電子源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図7】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図7】
【図11】
【公開番号】特開2007−324066(P2007−324066A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155447(P2006−155447)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(505044451)ソナック株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(505044451)ソナック株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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